説明

波形整形回路及び無線受信装置

【課題】波形整形特性の低下を抑制しつつ、立ち上り特性を向上させることができる波形整形回路を提供すること。
【解決手段】入力信号Vinを基準信号Vrefに基づいて二値波形に整形した出力信号Voutを生成する波形整形回路1において、基準信号Vrefを生成する基準信号生成器2と、入力信号Vinと基準信号Vrefとの比較結果に応じて出力信号Voutを生成する比較器COMP1とを備え、基準信号生成器2は、入力信号Vinにおけるピークホールド値(Vp)とボトムホールド値(Vb)の中間電圧Vcを基準信号Vrefとして比較器COMP1に出力した後、入力信号Vinを積分した電圧を基準信号Vrefとして比較器COMP1に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号を基準信号に基づいて二値波形に整形して出力する波形整形回路及びこの波形整形回路を備えた無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、受信した無線信号からデータを復調する無線受信装置では、アナログ波形の入力信号を二値波形に整形する波形整形回路を有している。このような波形整形回路においては、入力信号と基準信号とを比較する比較器(コンパレータ)が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7に、従来の波形整形回路100を示す。同図において、入力信号Vinは、抵抗R100及びR101を介してそれぞれ比較器COMP100の非反転入力端子と反転入力端子に入力される。
【0004】
ここで、比較器COMP100の反転入力端子と接地電圧(グランド)間には容量素子C100が接続されており、抵抗R101と容量素子C100との間で積分回路が形成されることになる。この積分回路で生成された信号が基準信号Vrefとなり、入力信号Vinと比較されることになる。
【0005】
すなわち、抵抗R101と容量素子C100とからなる積分回路によって入力信号Vinを積分した信号を基準として、入力信号Vinが比較される。そして、入力信号Vinが基準信号Vrefよりも所定値以上大きいときにHighレベルの出力信号Voutが、入力信号Vinが基準信号Vrefよりも所定値以上小さいときにLowレベルの出力信号Voutが、それぞれ比較器COMP100から出力される。なお、比較器COMP100は所定のヒステリシス特性を有している。
【0006】
なお、積分回路よって生成される基準信号Vrefが入力信号Vinの動作点電圧近傍となるように、積分回路の時定数(抵抗R101及び容量素子C100の値)が設定される。
【0007】
【特許文献1】特開2002−135340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の波形整形回路では、基準信号Vrefを積分回路で生成しているため、基準信号Vrefが入力信号Vinの動作点電圧Vdcとなるまでに時間がかかってしまい、その間、所望の出力信号Voutを出力することができず、波形整形特性が悪くなる。
【0009】
そこで、図8に示すように、積分回路の容量素子の電圧を急速にチャージするチャージ回路201を追加することが考えられる。図8は、チャージ回路201を設けた波形整形回路200の構成を示す図である。
【0010】
このチャージ回路201は、比較器(コンパレータ)COMP200と、ダイオードD200とを有する回路であり、入力信号Vinを比較器COMP200の反転入力端子に入力し、比較器COMP200の出力をダイオードD200を介して比較器COMP200の非反転入力端子に入力している。
【0011】
そして、積分回路101の容量素子C100よりも入力信号Vinが低いときに、比較器COMP200の出力がHighレベルとなり、ダイオードD200を介して容量素子C100に電流が流れ込んで、基準信号Vrefを急速に上げるようにしている。このとき、比較器COMP200から出力されるHighレベルの信号が入力信号Vinの動作点電圧Vdc(入力信号Vinの直流成分の電圧)よりもダイオードD200の順方向電圧分高い電圧となるように比較器COMP200の電源電圧を調整することにより、容量素子C100の電圧が入力信号Vinの動作点電圧Vdcになる時間を短縮することができる。
【0012】
ところが、入力信号Vinの動作点電圧Vdcが大きく変動する入力信号Vinが入力されたとき、基準信号Vrefと入力信号Vinの動作点電圧Vdcとの間で誤差が生じてしまうことがある。そして、この誤差が大きいときには、基準信号Vrefが入力信号Vinの動作点電圧Vdcに移行するまでの時間を要してしまう。図9に、波形整形回路200が動作開始したときの入力信号Vin及び基準信号Vrefの状態遷移を示す。この図では、図示しない制御部によって波形整形回路200が動作開始したときにチャージ回路201がtaの期間だけ動作するように制御されている状態を示している。また、tbの期間は、入力信号Vinが積分回路101へ入力することによって、基準信号Vrefが入力信号Vinの動作点電圧Vdcに移行している状態を示している。なお、このtbの期間が開始すると、チャージ回路201は動作を停止し、積分回路101へ影響を与えない。
【0013】
ここで、上記期間tbにおいて、基準信号Vrefが入力信号Vinの動作点電圧Vdcに移行するまでの時間は、積分回路101の時定数に依存する。従って、積分回路101の時定数を小さくすることによって、基準信号Vrefが入力信号Vinの動作点電圧Vdcに移行するまでの時間を短くできることになる。
【0014】
ところが、積分回路101の時定数を小さくすると、入力信号Vinに対する基準信号Vrefの変動が大きくなってしまい、波形整形回路200における波形整形特性が低下してしまう。
【0015】
そこで、波形整形特性の低下を抑制しつつ、立ち上り特性を向上させることができる波形整形回路及び無線受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1に記載の発明は、入力信号を基準信号に基づいて二値波形に整形した出力信号を生成する波形整形回路において、前記基準信号を生成する基準信号生成器と、前記入力信号と前記基準信号との比較結果に応じて前記出力信号を生成する比較器と、を備え、前記基準信号生成器は、前記入力信号におけるピークホールド値とボトムホールド値の中間電圧を前記基準信号として前記比較器に出力した後、前記入力信号を積分した電圧を前記基準信号として前記比較器に出力することを特徴とする。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記基準信号生成器は、前記入力信号のピーク値をホールドして出力するピークホールド部と、前記入力信号のボトム値をホールドして出力するボトムホールド部と、前記ピークホールド部の出力と前記ボトムホールド部の出力の中間電圧を出力する中間電圧生成部と、前記比較器の入力に接続された容量素子と、前記入力信号を入力する抵抗と、前記中間電圧生成部から出力される前記中間電圧と、前記抵抗に入力される前記入力信号とをいずれか選択して前記容量素子に接続する切替部と、を有し、前記容量素子の電圧を前記基準信号としたことを特徴とする。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記ピークホールド部は、初期状態において最小出力電圧を出力し、前記ボトムホールド部は、初期状態において最大出力電圧を出力することを特徴とする。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記ピークホールド部は、前記最小出力電圧を調整可能としたことを特徴とする。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項3又は請求項4に記載の発明において、前記ボトムホールド部は、前記最大出力電圧を調整可能としたことを特徴とする。
【0021】
請求項6に記載の発明は、変調された無線信号を受信して復調する無線受信部を備えた無線受信装置において、前記無線受信部には、受信した前記無線信号から二値化データを生成する波形整形回路を有しており、前記波形整形回路は、前記基準信号を生成する基準信号生成器と、前記入力信号と前記基準信号との比較結果に応じた出力信号を生成する比較器と、を備え、前記基準信号生成器は、前記入力信号におけるピークホールド値とボトムホールド値の中間電圧を前記基準信号として前記比較器に出力した後、前記入力信号を積分した電圧を前記基準信号として前記比較器に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の波形整形回路及び無線受信装置によれば、入力信号のピークホールド値とボトムホールド値の中間電圧を入力信号と比較する基準信号としたので、波形整形特性の低下を抑制しつつ、立ち上り特性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本実施の形態に係る無線受信装置は、変調された無線信号を受信して復調する無線受信部を備えており、この無線受信部で復調した信号(データ)に基づいて動作する。なお、無線受信装置が携帯電話機などの場合には、無線受信部により復調される信号には、制御信号のほか音声信号も含まれる。
【0024】
そして、この無線受信部には、入力信号を基準信号に基づいて二値波形に整形した出力信号を生成する波形整形回路を備えている。この波形整形回路には、基準信号を生成する基準信号生成器と、入力信号と基準信号との比較結果に応じて出力信号を生成する比較器とが設けられている。
【0025】
しかも、基準信号生成器は、入力信号におけるピークホールド値とボトムホールド値の中間電圧を基準信号として比較器に出力した後、入力信号を積分した電圧を基準信号として比較器に出力する。
【0026】
従って、動作開始時に、ピークホールドした入力信号とボトムホールドした入力信号との中間電圧を基準信号とすることができ、入力信号を積分した電圧を基準信号とするのに比べ、波形整形特性の低下を抑制しつつ、立ち上り時の波形整形特性を向上させることができる。
【0027】
特に、基準信号生成器は、入力信号のピーク値を所定の時定数でホールドして出力するピークホールド部と、入力信号のボトム値を所定の時定数でホールドして出力するボトムホールド部と、ピークホールド部の出力とボトムホールド部の出力の中間電圧を出力する中間電圧生成部と、比較器の入力に接続された容量素子と、入力信号を入力する抵抗と、中間電圧生成部から出力される中間電圧と抵抗に入力される入力信号とをいずれか選択して容量素子に接続する切替部とを有しており、容量素子の電圧を基準信号としている。
【0028】
すなわち、入力信号を積分するCR積分回路における容量素子への充電を、まず中間電圧生成部によって生成した中間電圧によって行い、その後中間電圧生成部を容量素子から切り離し、この容量素子に抵抗を接続してCR積分回路を構成して、入力信号をこの抵抗を介して容量素子に入力してこの容量素子を充放電するようにしている。
【0029】
従って、基準電圧の生成をCR積分回路に切替えて行うときに、CR積分回路の容量素子はすでに入力信号の動作点電圧に近い電圧となっていることから、波形整形回路において、継続して適切な出力信号を生成することができる。
【0030】
また、ピークホールド部は、初期状態において最小出力電圧を出力し、ボトムホールド部は、初期状態において最大出力電圧を出力するようにして、波形整形回路の動作開始時に、この最小出力電圧と最大出力電圧との中間電圧を基準信号とすることができ、動作開始直後から、入力信号の動作点電圧に近い基準信号に基づいて出力信号を生成することができる。ここで、ピークホールド部における「最小出力電圧」とは、ピークホールド部がその動作時に出力しうる最小の電圧をいい、ボトムホールド部における「最大出力電圧」とは、ボトムホールド部がその動作時に出力しうる最大の電圧をいう。
【0031】
また、ピークホールド部は最小出力電圧を調整可能とし、ボトムホールド部は、最大出力電圧を調整可能としており、これにより中間電圧を調整することができ、汎用性のある波形整形回路を提供することができる。
【0032】
以下において、図面に基づいて本実施形態の無線受信装置Aにおける波形整形回路1について説明する。図1は本実施形態における波形整形回路1の具体的構成を示す図である。
【0033】
図1に示すように、本実施形態における波形整形回路1は、基準信号Vrefを生成する基準信号生成器2と、ヒステリシス特性を有し、入力信号Vinと基準信号Vrefとの比較結果に応じて出力信号Voutを生成する比較器COMP1と、入力信号Vinを入力して比較器3の非反転入力端子へ出力する入力抵抗R1とを備えている。
【0034】
基準信号生成器2は、入力信号Vinにおけるピークホールド値(Vp)とボトムホールド値(Vb)の中間電圧Vcを基準信号Vrefとして比較器COMP1の反転入力端子に出力した後、入力信号Vinを積分した電圧を基準信号Vrefとして比較器COMP1の反転入力端子に出力するものであり、以下の構成を有している。
【0035】
すなわち、基準信号生成器2は、中間電圧Vcを基準信号Vrefとして比較器COMP1の反転入力端子へ出力するために、入力信号Vinのピーク値を所定の時定数でホールドしたピークホールド値を有するピークホールド信号Vpを出力するピークホールド部10と、入力信号Vinのボトム値を所定の時定数でホールドしたボトムホールド値を有するボトムホールド信号Vbを出力するボトムホールド部11と、ピークホールド部10の出力であるピークホールド信号Vpとボトムホールド部11の出力であるボトムホールド信号Vbの中間電圧Vcを出力する中間電圧生成部12とを有している。なお、ピークホールド部10及びボトムホールド部11は、内部にコンパレータ、容量素子、抵抗などを有しており、ピーク値及びボトム値をホールドする時定数は、後述する容量素子C1及び抵抗R2からなる積分回路の時定数よりも小さな時定数で構成している。
【0036】
ここで、ピークホールド部10は、後述する制御部14による制御によって、初期状態において最小出力電圧Vpminを出力し、ボトムホールド部11は初期状態において最大出力電圧Vbmaxを出力することができるように構成している。例えば、波形整形回路1が接地電圧(グランド)を基準として電源電圧Vccで動作している場合には、最小出力電圧Vpminを接地電圧とし、最大出力電圧Vbmaxを電源電圧Vccとすることができ、中間電圧Vcは、{最大出力電圧Vbmax−最小出力電圧Vpmin}/2となり、電源電圧Vcc/2となる。
【0037】
このようにピークホールド部10及びボトムホールド部11を構成しているので、波形整形回路1の動作開始時に中間電圧Vcを{最大出力電圧Vbmax−最小出力電圧Vpmin}/2とすることができる。従って、最大出力電圧Vbmax及び最小出力電圧Vpminの設定により中間電圧Vcを入力信号Vinの動作点電圧Vdcと同等の電圧にすることができる。
【0038】
また、ピークホールド部10は最小出力電圧Vpminを調整可能としており、これにより初期状態での中間電圧Vcを容易に調整することができる。また、同様に、ボトムホールド部11は、最大出力電圧Vbmaxを調整可能としており、これによっても初期状態での中間電圧Vcを容易に調整することができる。
【0039】
中間電圧生成部12は、ピークホールド部10の出力とボトムホールド部11の出力との間に同一抵抗値の抵抗R3,R4が直列に接続されて設けられ、抵抗R3と抵抗R4との接続点は、ピークホールド信号Vpとボトムホールド信号Vbの中間の電位となる。そして、抵抗R3と抵抗R4との接続点の電圧がバッファアンプIC2によって中間電圧Vcとして出力される。
【0040】
また、基準信号生成器2は、入力信号Vinを積分した電圧を基準信号Vrefとして比較器COMP1の反転入力端子に出力するために、比較器COMP1の反転入力端子に第1スイッチSW1を介して接続された容量素子C1と、入力信号Vinを入力する抵抗R2とを備えている。
【0041】
基準信号Vrefを「中間電圧Vc」或いは「入力信号Vinを積分した電圧」のいずれかに切替えるために、中間電圧生成部12から出力される中間電圧Vcと、抵抗R2に入力される入力信号Vinとをいずれか選択して容量素子C1に接続する切替部である第1スイッチSW1を有している。そして、容量素子C1の電圧が基準信号Vrefとなる。
【0042】
この第1スイッチSW1は、入力信号Vinに基づいて動作する切替制御部13からの制御信号Vcontによって制御される。
【0043】
切替制御部13は、ヒステリシスを有する比較器COMP2,COMP3と、否定論理和(NOR)回路IC1とを有している。比較器COMP2の反転入力端子及び比較器COMP3の非反転入力端子に入力信号Vinが入力され、比較器COMP2の非反転入力端子には、ボトムホールド部11から出力されるボトムホールド信号Vbが入力され、比較器COMP3の反転入力端子には、ピークホールド部10から出力されるピークホールド信号Vpが入力される。また、比較器COMP2,COMP3から各々出力される信号が否定論理和回路IC1に入力されて否定論理和回路IC1によって論理演算が行われ、否定論理和回路IC1から制御信号Vcontが出力される。
【0044】
従って、ピークホールド信号Vpが入力信号Vinよりも高い電圧となり、かつボトムホールド信号Vbが入力信号Vinよりも低い電圧になったときに、制御信号VcontがHighレベルとなり、それ以外の場合は制御信号VcontがLowレベルとなる。
【0045】
以上のように構成された波形整形回路1において、その動作を図2を参照して具体的に説明する。図2は本実施形態における波形整形回路1の動作を説明するための図であり、動作停止状態、初期状態、第1動作状態及び第2動作状態における、入力信号Vin、基準信号Vref及び出力信号Vout等の状態を示している。
【0046】
まず、波形整形回路1が動作停止状態(図2中で「t0」になるまでの間)においては、入力信号Vin及び基準信号Vrefはいずれも0V(接地電圧)となっている。また、出力信号VoutはLowレベルとなっている。
【0047】
その後、波形整形回路1の動作が開始する(図2中の「t1」)と、入力信号Vinを入力するまでの間、制御部14は、ピークホールド部10とボトムホールド部11の初期状態にする。すなわち、制御部14からHighレベルの制御信号Vout2が出力されて、ピークホールド部10は最小出力電圧Vpminを出力し、ボトムホールド部11は最大出力電圧Vbmaxを出力する。従って、初期状態において、中間電圧生成部12からは、最大出力電圧Vbmaxと最小出力電圧Vpminとの中間の電圧が中間電圧Vcとして出力される。
【0048】
また、初期状態においては、切替制御部13から出力される制御信号VcontはLowレベルであることから、第1スイッチSW1は容量素子C1と中間電圧生成部12とを接続する状態となっており、中間電圧生成部12から出力される中間電圧Vcが容量素子C1に印加される。従って、容量素子C1は急速に充電され、その電圧レベルは中間電圧Vcと同じになる。
【0049】
その後、制御部14は、入力信号Vinの入力を開始する(図2中「t2」)ときに、ピークホールド部10とボトムホールド部11の初期状態を解除して第1動作状態に移行する。これにより、入力信号Vinに応じて、ピークホールド部10からピークホールド信号Vpが出力され、ボトムホールド部11からボトムホールド信号Vbが出力されることになる。そして、入力信号Vinに応じたピークホールド信号Vp及びボトムホールド信号Vbの中間電圧Vcが容量素子C1に印加されることになる。
【0050】
その後、入力信号Vinがピークホールド信号Vpよりも低い電圧となり、かつボトムホールド信号Vbよりも高い電圧になったとき、切替制御部13からHighレベルの制御信号Vcontが出力されて第2動作状態に移行し、第1スイッチSW1は容量素子C1と中間電圧生成部12とを接続する状態から容量素子C1と抵抗R2とを接続する状態に切替えられ、入力信号Vinが抵抗R2を介して容量素子C1に印加される。従って、抵抗R2及び容量素子C1からなる積分回路が構成され、入力信号Vinがこの積分回路によって積分される。
【0051】
このように、第1スイッチSW1を中間電圧生成部12側へ切替えることによって、容量素子C1に急速充電を行った後に、第1スイッチSW1を抵抗R2側へ切替えることによって、基準信号Vrefを抵抗R2及び容量素子C1からなる積分回路によって生成するようにしているので、波形整形回路1の動作開始時の波形整形特性を向上させることができ、その後も継続して波形整形特性を安定させることができる。また、ピークホールド信号Vpとボトムホールド信号Vbの中間電圧Vcを基準信号Vrefに設定しているため、中間電圧生成部12を容量素子C1から切り離したときの誤差も信号振幅の約1/4以下に抑えられ、入力信号Vinにおいて動作点電圧が変動する問題に対しても波形整形特性を向上させることができる。
【0052】
また、上記基準信号生成器2に代えて、図3に示すように、初期電圧調整回路15を加えた基準信号生成器2’を用いるようにしてもよい。図3は本実施形態における他の波形整形回路1’の具体的構成を示す図である。なお、この波形整形回路1’は、上記波形整形回路1と同一部分については同一符号を付しており、ここでは、波形整形回路1と異なる部分について説明することとする。
【0053】
この初期電圧調整回路15は、図3に示すように、波形整形回路1’の電源電圧Vccと接地電圧(グランド)との間に、スイッチSW5と、抵抗R5と、抵抗R6と、ダイオードD1と、抵抗R7と、スイッチSW6とが直列に接続されている。なお、ダイオードD1のアノード側は抵抗R6に接続され、カソード側は抵抗R7に接続される。
【0054】
また、抵抗R5と抵抗R6との接続点とボトムホールド部11の出力との間にはスイッチSW3が設けられており、抵抗R6とダイオードD1との接続点とピークホールド部10との間にはスイッチSW4が設けられている。
【0055】
また、上記各スイッチSW3〜SW6は、制御部14から出力される制御信号Vout2によって制御される。すなわち、制御部14からHighレベルの制御信号Vout2が出力されたとき、各スイッチSW3〜SW6が閉状態(短絡状態)となり、初期電圧調整回路15によって中間電圧生成部12における中間電圧Vcが調整される。また、ピークホールド部10及びボトムホールド部11は、制御部14から出力されるHighレベルの制御信号Vout2によって動作を停止(出力停止し、出力をハイインピーダンスとする。)する。
【0056】
以上のように構成された波形整形回路1’において、その動作を図4を参照して具体的に説明する。図4は本実施形態における波形整形回路1’の動作を説明するための図であり、動作停止状態、初期状態、第1動作状態及び第2動作状態における、入力信号Vin、基準信号Vref及び出力信号Vout等の状態を示している。
【0057】
この波形整形回路1’においては、上述の波形整形回路1と初期状態動作が異なる以外は、波形整形回路1と同様の動作をするため、ここでは初期状態動作について説明する。
【0058】
波形整形回路1’の動作が開始する(図4中の「t1」)と、入力信号Vinを入力するまでの間(すなわち、「初期状態」)、制御部14は、ピークホールド部10とボトムホールド部11の非動作状態にすると共に、初期電圧調整回路15を動作させる。すなわち、制御部14からHighレベルの制御信号Vout2が出力されて、ピークホールド部10及びボトムホールド部11は出力を停止する。一方、初期電圧調整回路15は、スイッチSW3〜SW6が閉状態となり、ピークホールド部10がダイオードD1及び抵抗R7を介して接地電圧に接続され、ボトムホールド部11が抵抗R5を介して電源電圧Vccに接続される。
【0059】
従って、ピークホールド部10の出力側の電圧(Vp)は、初期電圧調整回路15から出力される所定の電圧となり(図4の“初期電圧High”を参照)、ボトムホールド部11の出力側の電圧(Vb)は、初期電圧調整回路15から出力される所定の電圧となる(図4の“初期電圧Low”を参照)。従って、中間電圧生成部12から出力される中間電圧Vcは、初期電圧Highと初期電圧Lowとの中間の電圧となる。
【0060】
そして、初期状態においては、切替制御部13から出力される制御信号VcontはLowレベルであることから、第1スイッチSW1は容量素子C1と中間電圧生成部12とを接続する状態となっており、中間電圧生成部12から出力される中間電圧Vcが容量素子C1に印加される。従って、容量素子C1は急速に充電され、その電圧レベルは中間電圧Vcと同じになる。
【0061】
このように、波形整形回路1’においては、初期電圧調整回路15によって、容量素子C1の電圧(基準信号Vref)を入力信号Vinの動作点電圧Vdcに近づけておき、その電圧からピークホールド部10及びボトムホールド部11におけるホールド動作を開始することにより、さらに容量素子C1の充電時間を短縮することができ、立ち上り時の波形整形特性を向上させることができる。
【0062】
なお、上述の実施形態においては、切替制御部13からHighレベルの制御信号Vcontが出力されたときに、第1スイッチSW1を切替えるようにしたが、切替制御部13を設けずに、制御部14が初期状態を解除するタイミング(図2中の「t2」)や初期状態を解除するタイミングから所定時間経過後のタイミングで第1スイッチSW1を抵抗R2側に切替えるようにしてもよい。このようにすることにより構成が簡易なものとなり、波形整形回路1の実装面積を低減させることができる。
【0063】
なお、本発明は比較器の比較基準の決定に限定されるものでなく、入力信号Vinの信号レベルに応じて回路の動作点を変動させる必要のある回路への適応も可能である。
【0064】
次に、上述の波形整形回路1を備えた無線受信装置Aの構成について、図面を参照して具体的に説明する。図5は本実施の形態における波形整形回路1を備えた無線受信装置Aを示す構成図である。なお、波形整形回路1’を備えた無線受信装置についても同等の構成であるため、ここでは説明を省略する。
【0065】
本実施の形態に係る無線受信装置Aは、変調された無線信号を受信するアンテナ20、このアンテナ20から出力される信号を復調する無線受信部30、この無線受信部30によって復調された信号を処理する信号処理部40などから構成される。
【0066】
無線受信部30は、アンテナ20から出力される信号を増幅する低雑音増幅回路(LNA:Low Noise Amplifier)31と、PLL(Phase Locked Loop)を介して発振器から出力される信号(RF Local信号)と低雑音増幅回路31からの出力とをミキシングするミキサ32と、このミキサ32から出力される信号をフィルタリングするIFフィルタ33と、このIFフィルタ33から出力される信号を増幅するLIMアンプ(リミッタアンプ)34と、このLIMアンプからの出力を検波する検波器35と、この検波器35からの出力される信号をフィルタリングするLPF(Low Pass Filter)36と、上述した波形整形回路1とを備える。
【0067】
アンテナ20によって受信した無線信号は、上記各ブロック31〜36を介して、入力信号Vinとして波形整形回路1に入力され、この入力信号Vinが波形整形回路1により基準信号Vrefに基づいて二値波形に整形されて出力され、信号処理部40に出力される。
【0068】
ここで、検波器35から出力される信号の振幅及び動作点電圧は、検波器35に入力される信号の周波数によって変化する(例えば、図6参照)。従って、アンテナ20で受信する無線信号の周波数や検波器35よりも前段の回路の特性によって検波器35から出力される信号の振幅及び動作点電圧が変化することになる。しかし、無線受信部30において、上述した波形整形回路1を備えることによって、動作点電圧などの変化があった場合でも、波形整形特性の低下を抑えることができ、無線受信部30における受信感度の悪化を防ぐことができるという利点もある。
【0069】
本実施の形態に係る無線受信装置としては、FSK(Frequency Shift Keying)やASK(Amplitude Shift Keying)を用いた無線受信装置以外に、携帯電話装置、キーレスエントリ装置、タイヤの空気圧を監視するTPMS(Tire Pressure Measurement System)装置、赤外線リモコン用装置、非接触型ICカード装置、弱電力無線装置等に適用することができる。
【0070】
本発明の無線受信装置は、各機能を集積したICとして作成してもよいし、もしくは各機能を備えた部品を基板上に搭載して作成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施の形態における波形整形回路の構成を示す図である。
【図2】図1における波形整形回路の動作を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態における他の波形整形回路の構成を示す図である。
【図4】図3における波形整形回路の動作を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態における無線受信装置の基本的な構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態における無線受信装置のFM検波器の特性を示す図である。
【図7】従来の波形整形回路の構成を示す図である。
【図8】従来の波形整形回路にチャージ回路を追加した構成を示す図である。
【図9】図8における波形整形回路の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0072】
1 波形整形回路
2 基準信号生成器
3 比較器
10 ピークホールド部
11 ボトムホールド部
12 中間電圧生成部
13 切替制御部
14 制御部
15 初期電圧調整回路
20 アンテナ
30 無線受信部
40 信号処理部
COMP1〜COMP3 比較器
IC1 否定論理和回路
IC2 バッファアンプ
C1 容量素子
R1〜R7 抵抗
SW1〜SW6 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を基準信号に基づいて二値波形に整形した出力信号を生成する波形整形回路において、
前記基準信号を生成する基準信号生成器と、
前記入力信号と前記基準信号との比較結果に応じて前記出力信号を生成する比較器と、を備え、
前記基準信号生成器は、
前記入力信号におけるピークホールド値とボトムホールド値の中間電圧を前記基準信号として前記比較器に出力した後、前記入力信号を積分した電圧を前記基準信号として前記比較器に出力する
ことを特徴とする波形整形回路。
【請求項2】
前記基準信号生成器は、
前記入力信号のピーク値をホールドして出力するピークホールド部と、
前記入力信号のボトム値をホールドして出力するボトムホールド部と、
前記ピークホールド部の出力と前記ボトムホールド部の出力の中間電圧を出力する中間電圧生成部と、
前記比較器の入力に接続された容量素子と、
前記入力信号を入力する抵抗と、
前記中間電圧生成部から出力される前記中間電圧と、前記抵抗に入力される前記入力信号とをいずれか選択して前記容量素子に接続する切替部と、を有し、
前記容量素子の電圧を前記基準信号とした
ことを特徴とする請求項1に記載の波形整形回路。
【請求項3】
前記ピークホールド部は、初期状態において最小出力電圧を出力し、
前記ボトムホールド部は、初期状態において最大出力電圧を出力する
ことを特徴とする請求項2に記載の波形整形回路。
【請求項4】
前記ピークホールド部は、前記最小出力電圧を調整可能とした
ことを特徴とする請求項3に記載の波形整形回路。
【請求項5】
前記ボトムホールド部は、前記最大出力電圧を調整可能とした
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の波形整形回路。
【請求項6】
変調された無線信号を受信して復調する無線受信部を備えた無線受信装置において、
前記無線受信部には、受信した前記無線信号から二値化データを生成する波形整形回路を有しており、
前記波形整形回路は、
前記基準信号を生成する基準信号生成器と、
前記入力信号と前記基準信号との比較結果に応じた出力信号を生成する比較器と、を備え、
前記基準信号生成器は、
前記入力信号におけるピークホールド値とボトムホールド値の中間電圧を前記基準信号として前記比較器に出力した後、前記入力信号を積分した電圧を前記基準信号として前記比較器に出力する
ことを特徴とする無線受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−187346(P2008−187346A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17826(P2007−17826)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】