説明

波長変化補正システム及び波長変化補正方法

【課題】プラスチック成型品の回折格子やハウジングからなるポリクロメータの熱的、非熱的な変化に起因する分散幅変化及び一律な波長変化を共に補正する。
【解決手段】入射スリットからの入射光を回折格子により回折して入射スリットの分散像を作成しこの分散像の情報を出力する分光装置と、1つ又は複数の定電流により駆動されるLEDと、分光装置からの出力情報に基づき所定の演算を行うとともにLED駆動を制御する演算制御装置とを備え、演算制御装置により以下第1〜第3の演算を行い、該演算結果から分光装置の波長変化を補正する。第1の演算:1つ又は複数の順電圧値及び順電圧初期値を用いてLED単色光の波長変化量を算出。第2の演算:少なくとも2つの回折光出力値及び回折光出力初期値を用いて当該2つの回折光の波長変化量を算出。第3の演算:LED単色光の波長変化量及び上記2つの回折光の波長変化量を用いて分光装置の一律の波長変化量及び分散幅変化量を算出。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリクロメータ、特に、構成要素がプラスチック成型されたポリクロメータに生じる経時的、熱的な波長変化を補正することができる波長変化補正システム及び波長変化補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分光測色計や分光輝度計等の分光機器における分光装置として、回折格子による波長分散光を受光素子アレイで同時受光するポリクロメータが多用される。ポリクロメータは、コストダウンを考慮した場合、回折格子やハウジングなどの主要構成要素にプラスチック成型品を用いることが望まれるが、プラスチック成型品は成型後の熱的、経時的な変化が避けられず、これに伴う波長変化が避けられない。こうした波長変化には、回折格子の熱膨張による格子定数変化を主要因とする分散幅変化(波長に比例する変化)と、光学配置の変化を主要因とする一律の変化(波長に比例しない変化)とがあり、これらを補正する技術として、以下、2つの従来例が挙げられる。
【特許文献1】特開2005−69784号公報
【特許文献2】特開2000−298066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
第1の従来例として、特許文献1には、一次回折光(一次光)及び二次回折光(二次光)の波長を測定することで、低価格ながら波長が安定していないLED(Light Emitting Diode)の単色光を基準とすることを可能にする技術、すなわち、LEDの波長変化が二次光に一次光の倍の波長変化をもたらすのに対し、光学配置の変化が一次光及び二次光に同じ波長変化をもたらす、ということを利用し、LEDの波長変化を除去して光学配置の変化による波長変化を検知、補正する技術が開示されている。しかしながらこの技術は、いずれも二次光に一次光の倍の波長変化をもたらすLEDの波長変化と分散幅変化とを区別できず、したがって、熱膨張の大きい上記プラスチック製の回折格子を用いた場合に問題となる格子定数変化による分散幅変化を補正できない。
【0004】
第2の従来例として、特許文献2には、回折格子とハウジングとに同じプラスチック材料を用い、熱膨張による格子定数変化に起因する分散幅減少変化を、ハウジングの熱膨張による分散幅拡大によって打ち消すとともに、熱膨張による光学配置の変化がもたらす一律の波長変化を、ハウジングと異なる材料で構成される受光素子アレイ支持部材の熱膨張によって打ち消す技術が開示されている。しかしながらこの技術は、ポリクロメータ全体が一様に温度変化することを前提としており、不均一な温度変化に対応できないだけでなく、経時変化などの温度以外の原因による波長変化には対応できない。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、プラスチック成型品の回折格子やハウジングで構成されたポリクロメータの熱的或いは非熱的(経時的)な変化に起因する、分散幅変化及び一律な波長変化を共に補正することが可能な波長変化補正システム及び波長変化補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る波長変化補正システムは、入射スリットから入射した入射光を回折格子により回折して該入射スリットの分散像を作成し、該作成した分散像の情報を出力する分光装置と、1つ又は複数の定電流により駆動されるLEDと、前記分光装置からの出力情報に基づいて所定の演算を行うとともに前記LEDの駆動を制御する演算制御装置とを備える波長変化補正システムであって、前記演算制御装置は、前記LEDの駆動によるLED単色光が前記入射光として入射される場合の、前記分光装置から出力された分散像情報における次数の異なる少なくとも2つの回折光出力値及び前記LED駆動用の前記定電流による1つ又は複数の順電圧値と、前記少なくとも2つの回折光出力値における回折光出力初期値及び前記1つ又は複数の順電圧値における順電圧初期値と、を用いて下記第1〜第3の演算を行い、当該演算結果から前記分光装置における波長変化を補正することを特徴とする波長変化補正システム。
第1の演算:前記1つ又は複数の順電圧値及び順電圧初期値を用いて前記LED単色光の波長変化量を算出する。
第2の演算:前記少なくとも2つの回折光出力値及び回折光出力初期値を用いて当該少なくとも2つの回折光の波長変化量を算出する。
第3の演算:前記算出したLED単色光の波長変化量及び少なくとも2つの回折光の波長変化量を用いて前記分光装置における一律の波長変化量及び分散幅変化量を算出する。
【0007】
上記構成によれば、分光装置によって、入射スリットから入射した入射光が回折格子により回折されて該入射スリットの分散像が作成され、該作成された分散像の情報が出力される。また、LEDが1つ又は複数の定電流により駆動される。また、演算制御装置によって、分光装置からの出力情報に基づいて所定の演算が行われるとともにLEDの駆動が制御される。この演算制御装置において、LEDの駆動によるLED単色光が入射光として入射される場合の、分光装置から出力された分散像情報における次数の異なる少なくとも2つの回折光出力値及びLED駆動用の定電流による1つ又は複数の順電圧値と、少なくとも2つの回折光出力値における回折光出力初期値及び1つ又は複数の順電圧値における順電圧初期値と、が用いられて上記第1〜第3の演算が行われ、当該演算結果から分光装置における波長変化の補正が行われるので、分光装置の回折格子やハウジングがプラスチック成型品からなるような場合の、熱的或いは非熱的(経時的)な変化に起因する、分散幅変化及び一律な波長変化を共に補正することができ、当該分光装置における任意波長の変化を補正する(波長変化補正を行う)ことができる。
【0008】
また、上記構成において、前記少なくとも2つの回折光は、一次回折光及び二次回折光であることが好ましい。
【0009】
これによれば、少なくとも2つの回折光は、一次回折光及び二次回折光であるので、回折光出力をより確実に得ることが可能となり、ひいては精度良く上記分散幅変化及び一律な波長変化の補正を行うことができる。
【0010】
また、上記構成において、前記第1の演算において算出される前記LED単色光の波長変化量をdλとし、前記第2の演算において算出される前記2つの回折光としての前記一次回折光及び二次回折光の波長変化量をそれぞれdλ、dλとすると、前記演算制御装置は、前記第3の演算において下記(1)式により前記一律の波長変化量dλを算出するとともに下記(2)式により前記分散幅変化量dλを算出し、当該第3の演算により得られたdλ及びdλを用いて下記(3)式により任意の波長λの波長変化量dλを算出することにより前記補正を行うことが好ましい。
dλ=2*dλ−dλ ・・・(1)
dλ=(dλ−dλ−dλ)/λ ・・・(2)
dλ=λ*dλ+dλ ・・・(3)
但し、記号「*」及び「/」はそれぞれ乗算及び除算を示す。
【0011】
これによれば、演算制御装置によって、第3の演算において上記(1)式により一律の波長変化量dλが算出されるとともに上記(2)式により分散幅変化量dλが算出され、当該第3の演算により得られたdλ及びdλが用いられて上記(3)式により任意の波長λの波長変化量dλを算出することにより補正が行われるので、一律の波長変化量dλ及び分散幅変化量dλを、上記(1)及び(2)式を用いて容易に算出することができ、ひいては任意波長λの波長変化の補正を容易に行うことができる。
【0012】
また、上記構成において、前記演算制御装置は、前記第1の演算において、前記LED単色光の波長変化量dλを、1つの順電圧値Vfにおける順電圧初期値Vfからの変化量である順電圧変化量dVfと所定の比例定数Kとを用いて下記(4)式により算出することが好ましい。
dλ=K*dVf ・・・(4)
【0013】
これによれば、演算制御装置によって、第1の演算において、LED単色光の波長変化量dλが、1つの順電圧値Vfにおける順電圧初期値Vfからの変化量である順電圧変化量dVfと所定の比例定数Kとを用いて上記(4)式により算出されるので、LED単色光の波長変化量dλを、LED駆動時の1つの順電圧値Vfを用いた簡易な方法によって容易に算出することができる。
【0014】
また、上記構成において、前記演算制御装置は、前記第1の演算において、前記LED単色光の波長変化量dλを、2つの順電圧値Vf、Vfの差Vf−Vfの値における初期値Vf10−Vf20からの変化量である順電圧差変化量d(Vf−Vf)と所定の比例定数K’とを用いて下記(5)式により算出することが好ましい。
dλ=K’*d(Vf−Vf) ・・・(5)
【0015】
これによれば、演算制御装置によって、第1の演算において、LED単色光の波長変化量dλが、2つの順電圧値Vf、Vfの差Vf−Vfの値における初期値Vf10−Vf20からの変化量である順電圧差変化量d(Vf−Vf)と所定の比例定数K’とを用いて上記(5)式により算出されるので、LED単色光の波長変化量dλを、LED駆動用の2つの順電圧値Vf、Vfを用いて精度良く算出することができる。
【0016】
また、本発明に係る波長変化補正方法は、分光装置において、入射スリットから入射した入射光を回折格子により回折させて該入射スリットの分散像を作成し、該作成した分散像の情報を取得する第1の工程と、1つ又は複数の定電流によりLEDを駆動する第2の工程と、前記第1の工程により取得された分散像情報に基づいて所定の演算を行うとともに前記LEDの駆動を制御する第3の工程とを有する波長変化補正方法であって、前記第3の工程は、前記LEDの駆動によるLED単色光が前記入射光として入射される場合の、前記分散像情報における次数の異なる少なくとも2つの回折光出力値及び前記LED駆動用の前記定電流による1つ又は複数の順電圧値と、前記少なくとも2つの回折光出力値における回折光出力初期値及び前記1つ又は複数の順電圧値における順電圧初期値と、に基づく下記第4〜第6の工程を有するとともに、当該第4〜第6の工程により得られた結果から前記分光装置における波長変化を補正する第7の工程を有する工程であることを特徴とする。
第4の工程:前記1つ又は複数の順電圧値及び順電圧初期値を用いて前記LED単色光の波長変化量を算出する工程。
第5の工程:前記少なくとも2つの回折光出力値及び回折光出力初期値を用いて当該少なくとも2つの回折光の波長変化量を算出する工程。
第6の工程:前記算出したLED単色光の波長変化量及び少なくとも2つの回折光の波長変化量を用いて前記分光装置における一律の波長変化量及び分散幅変化量を算出する工程。
【0017】
上記構成によれば、第1の工程によって、分光装置において、入射スリットから入射した入射光が回折格子により回折されて該入射スリットの分散像が作成され、該作成された分散像の情報が出力される。また、第2の工程によって、1つ又は複数の定電流によりLEDが駆動され、第3の工程によって、第1の工程により取得された分散像情報に基づいて所定の演算が行われるとともにLEDの駆動が制御される。この第3の工程において、LEDの駆動によるLED単色光が入射光として入射される場合の、分散像情報における次数の異なる少なくとも2つの回折光出力値及びLED駆動用の定電流による1つ又は複数の順電圧値と、上記少なくとも2つの回折光出力値における回折光出力初期値及び1つ又は複数の順電圧値における順電圧初期値と、に基づいて上記第4〜第6の工程が実行されるとともに、第7の工程によって、当該第4〜第6の工程により得られた結果から分光装置における波長変化の補正が行われるので、分光装置の回折格子やハウジングがプラスチック成型品からなるような場合の、熱的或いは非熱的(経時的)な変化に起因する、分散幅変化及び一律な波長変化を共に補正することができ、当該分光装置における任意波長の変化を補正する(波長変化補正を行う)ことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、分光装置の光学要素やその相対位置の熱的或いは非熱的(経時的)な変化に起因する分散幅変化と一律な波長変化との双方を補正することができ、初期の波長校正時の波長精度を維持することができる。特に、回折格子を含む分光装置の構成要素を熱的或いは非熱的(経時的)に不安定なプラスチック成型品としても、波長精度を安定して維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(波長変化補正システムの全体的な説明)
図1は、本発明の一実施形態に係る波長変化補正システムの一例を示すブロック構成図である。波長変化補正システム100は、測定用照明部2、補正用照明部3、測定光学系4、ポリクロメータ5及び演算制御部6を備えている。測定用照明部2は、光源としての白熱ランプ21と白熱ランプ21の点消灯動作を制御するランプ制御部22とを有し、白熱ランプ21によって試料1又は白色基準試料10を照明するものである。補正用照明部3は、光源としての紫外LED31と紫外LED31の点消灯動作を制御するLED制御部32とを有し、紫外LED31によって試料1又は白色基準試料10を照明するものである。なお、LED制御部32は、紫外LED31を定電流Ifで駆動する定電流源と、駆動時の紫外LED31の順電圧Vfを測定する回路(順電圧測定回路)とを備えており(いずれも図示省略)、順電圧測定回路によって測定した順電圧測定値Vfをデジタル信号に変換して演算制御部6へ出力する。
【0020】
測定光学系4は、測定用照明部2や補正用照明部3により照明された試料1又は白色基準試料10それぞれからの法線方向の反射光1a、10aをポリクロメータ5の入射スリット51に導く各種レンズ等からなる光学系である。ポリクロメータ5は、入射スリット51の開口部51aを通過した光束の分光分布に応じた信号を出力するものである。演算制御部6は、測定用照明部2及び補正用照明部3の照明動作(点消灯動作)を、それぞれランプ制御部22及びLED制御部32を介して制御するとともに、ポリクロメータ5からの出力データに対する各種演算処理を行うものである。なお、測定用照明部2は、試料1又は白色基準試料10を試料面法線に対して約45°の角度で傾斜した方向(45°の方向という)から照明し、所謂45/0ジオメトリーを形成している。
【0021】
入射スリット51の開口部51aから入射した上記反射光1a又は反射光10aは、凹面回折格子(単に回折格子という)52によって波長毎に分散、収束され、受光素子アレイ53上に上記開口部51a(開口)の分散像をつくる。受光素子アレイ53は、複数の画素53nから構成されており、画素53nへの入射光強度に応じた画素信号を出力するものである。受光素子アレイ53からの出力信号は信号処理部55に入力される。信号処理部55は、受光素子アレイ53からの出力信号を処理してデジタル画素信号に変換し、このデジタル画素信号を演算制御部6に出力する。
【0022】
本実施形態では、演算制御部6による演算処理によってポリクロメータ5の波長変化を補正すること(波長変化補正)が主な特徴点であるが、ここで、この波長変化補正の原理について説明する。
【0023】
本実施形態の波長変化補正技術は、定電流駆動された紫外LEDの順電圧によって、出力波長をモニタされた紫外LED出力光を用いて、上記特許文献1の技術を用いる。ここでは、可視域(380nm〜780nm;図1の符号301〜302の範囲)を測定域とするポリクロメータの短波長端を360nmまで拡張し、波長375nmの紫外LED出力の一次光(λ=375nm;符号303で示す位置)と二次光(λ=750nm;符号304で示す位置)とを同時測定可能にして特許文献1の技術を適用する。
【0024】
このポリクロメータの紫外LED出力の一次光及び二次光それぞれの重心波長λ、λの初期値λ10、λ20からの変化量dλ、dλ(以下(1)、(2)式参照)には、以下の3つの要因がある。
dλ=λ−λ10 ・・・(1)
dλ=λ−λ20 ・・・(2)
【0025】
(要因1)紫外LEDの初期からの波長変化(dλ)。この変化は主として紫外LEDの温度変化による。
(要因2)分散幅の初期からの変化(変化率dλ/nm)。この変化の場合、波長1nm当たりdλだけ変化するので、波長λ全体の変化量はλ*dλとなる。この変化は主として回折格子の熱膨張に伴う格子定数変化による。
(要因3)光学配置の変化(dλ)。この変化はハウジングや接着剤などの経時的、熱的な変化による。
【0026】
これら要因のうち、要因1及び2によって一次光及び二次光で観察される波長変化が、1:2(一次光での波長変化量を1とすると、二次光での波長変化量はこの1の2倍である2となる)であるのに対し、要因3による変化は波長に依らず一律であって、一次光及び二次光で等しい波長変化dλが観察される。
【0027】
すなわち、紫外LEDの発光波長をλとすると、一次光及び二次光の初期からの波長変化dλ、dλは以下の(3)、(4)式で表される。
dλ=[dλ+(λ+dλ)*dλ]+dλ≒(dλ+λ*dλ)+dλ ・・・(3)
dλ=2*[dλ+(λ+dλ)*dλ]+dλ≒2*(dλ+λ*dλ)+dλ ・・・(4)
但し、記号「*」は乗算を示す。また、これら各式における近似(上記≒)は、dλ*dλの項が微小な量同士の乗算値であることからこれを無視する(ゼロとする)ことによる。換言すれば、分散幅の変化dλは波長に比例するが、この波長を変化前の波長(λ)とするか変化後の波長(λ+dλ)とするかの違いであり、ここでは変化前の波長(λ)を用いている(λ*dλ)。
【0028】
これを波長変化補正システム100の場合で説明する。図2は、波長変化補正の原理について説明するための模式図であって、紫外LED31の単色光が、変化前のポリクロメータ5に入射したときに受光素子アレイ53上に結像する一次分散像311及び二次分散像312と、変化後のポリクロメータ5に入射したときに受光素子アレイ53上に結像する一次分散像321及び二次分散像322とを概念的に示すものである。この図に示すように、変化の前後で一次分散像の重心波長は、一次分散像311におけるλ10から一次分散像321におけるλまでdλだけ変化し、一方、二次分散像の重心波長は、二次分散像312におけるλ20から二次分散像322におけるλまでdλだけ変化している。これらdλ、dλは、それぞれ共通(一律)の変化dλと、波長に依存するすなわち次数(一次光、二次光・・・)に比例する変化dλ+λ*dλ、2*dλ+2*λ*dλ(=2*(dλ+λ*dλ))とからなる。すなわち上記(3)、(4)式に示すdλ=dλ+(dλ+λ*dλ)、dλ=dλ+2*(dλ+λ*dλ)となる。
【0029】
したがって、(3)、(4)式から、要因3による一律な波長変化dλは、以下の(5)式によって求めて補正することができる。
dλ=2*dλ−dλ ・・・(5)
【0030】
一方、要因1によるdλと、要因2によるλ*dλとは互いに分離して扱うことができず、したがって、分散幅変化による波長変化(dλ)を求めて補正することができない。
【0031】
ところで、定電流駆動された紫外LEDの発光波長λと温度との間には一定の関係があり、温度と順電圧(Vfとする)との間にも一定の関係があるので、発光波長λ(nm)と順電圧Vf(V)との間には、例えば図3に示すような略直線的な関係がある。したがって、この関係が既知であれば、ポリクロメータの波長校正時に、一次光及び二次光の重心波長初期値λ10、λ20とともに順電圧初期値(Vfとする)を測定しておき、波長補正時にも変化後の一次光及び二次光の重心波長λ、λとともに順電圧Vfを測定することによって、初期からの紫外LEDの波長変化dλを推定することができる。
【0032】
例えば、図3に示す順電圧Vfと発光波長λとの関係を、傾きKの直線で近似すると、以下(6)式で示す順電圧の変化dVf(順電圧変化dVf)に伴う紫外LEDの発光波長の変化dλ(発光波長変化dλ)は、以下の(7)式で近似できる。
dVf=Vf−Vf ・・・(6)
dλ=K*dVf ・・・(7)
【0033】
上記(7)式により得られたdλと、上記(3)、(4)式とから、すなわち(4)式−(3)式にdλを代入することで、以下の(8)式に示すように分散幅の初期からの変化(dλ/nm;分散幅変化dλ)を求めることができる。
dλ=(dλ−dλ−dλ)/λ ・・・(8)
【0034】
したがって、これら(5)式及び(8)式から求められたdλ、dλを用いて、任意の波長λの変化量つまり補正量dλは、以下の(9)式で与えられることになる。
dλ=λ*dλ+dλ ・・・(9)
【0035】
なお、上記傾きKには典型的な値を用いることができる。上記図3に示すように紫外LED31の発光波長の温度による変化は10℃で0.5nm程度であり、傾きKの当該典型値からのずれが例えば20%あったとしても、それによる補正誤差は0.1nmであって十分小さい。
【0036】
図1に戻って、演算制御部6は、中央処理部61、記憶部62及び操作表示部63を備えている。中央処理部61はCPU(中央演算処理装置)等を備え、後述の処理プログラム等をROMから読み出して各種演算処理を行うものである。記憶部62は、ROMやRAMからなり、上記演算処理に関する各種処理プログラム等を記憶したり、当該演算処理におけるデータを一時的に格納したりする。本実施形態では、記憶部62には、製造時等における波長校正によって予め求められた、受光素子アレイ53の各画素53nの画素番号nと、この画素番号nの画素(画素nという)における重心波長λn(又は中心波長λn;重心と中心とが一致する場合に重心波長の代わりに中心波長としてもよい)との対応関係の情報を有する対応表(n−λn対応表という)が記憶されている。また記憶部62は、紫外LED31の一次光及び二次光の重心波長の初期値(重心波長初期値という)λ10、λ20とこの初期値取得時の順電圧初期値Vf、及び紫外LED31の順電圧Vfと発光波長λとの関係を近似する直線(図3参照)の傾き「K」の値が記憶されている。演算制御部6(中央処理部61)は、このn−λn対応表を用いて、デジタル画素信号を分光情報に変換する。操作表示部63は、ユーザからの各種の操作指示が入力される入力キーとして機能したり、演算処理等に関する各種情報を表示するものである。
【0037】
(全体的な処理フローの説明)
演算制御部6は、補正フローにおいて、試料1の測定に先立って、分光反射率係数が既知の白色基準試料10を測定用照明部2により照明し、ポリクロメータ5で測定した分光出力(分光分布)から、公知の方法で校正係数を求めて記憶する。そして、測定フローにおいて、同様に試料1を測定用照明部2により照明して得られた分光出力(分光分布)と上記記憶しておいた校正係数とから、公知の方法で試料1の分光反射率係数を算出する。以下に補正フロー及び測定フローについて説明する。
【0038】
<補正フロー>
本実施形態では、当該波長変化補正を白色校正時に行う。演算制御部6は、測定用照明部2が点灯していない状態で、補正用照明部3の紫外LED31をLED制御部32の定電流源によって定電流Ifで点灯して、波長変化補正システム100の測定開口に置かれた白色基準試料10を照明し、上記(9)式に基づいて各画素nの重心波長λnの波長シフト量dλnを推定(算出)する(以下の(10)式参照)。
dλn=λn*dλ+dλ ・・・(10)
このdλnを用いてn−λn対応表におけるλnの値をλn+dλnに更新して波長変化補正を終了する。
【0039】
すなわち、図4の補正フローに示すように、先ず中央処理部61は、記憶部62から初期の(n−λn)対応表と、紫外LED31の一次光及び二次光の重心波長初期値λ10、λ20と、このときの順電圧初期値Vfと、順電圧Vfと発光波長λとの関係を近似する直線の傾きKの値とを読み出す(ステップS1)。次に上記測定開口に白色基準試料10を置いた状態で、紫外LED31を点灯する(ステップS2)。中央処理部61(演算制御部6)は、白色基準試料10で反射された紫外LED31の単色光に対するポリクロメータ5のデジタル画素出力と紫外LED31の順電圧Vfの測定値とを取り込み(ステップS3)、このデジタル画素出力と(n−λn)対応表とから、紫外LED31の一次分散像及び二次分散像の重心波長λ、λを求める(ステップS4)。そして、中央処理部61は、上記(1)、(2)式及び(6)式によってそれぞれ重心波長初期値λ10、λ20からの変化量dλ、dλと、順電圧変化dVfとを算出し(ステップS5)、上記(7)式によって順電圧変化dVfを発光波長変化dλに変換する(ステップS6)。次に、上記(5)式によって一律の波長変化dλを算出するとともに、上記(8)式によって分散幅変化dλを算出する(ステップS7)。そして、これら波長変化dλ及び分散幅変化dλを用いて、上記(10)式によって波長シフト量dλnを算出し、このdλnによって(n−λn)対応表を補正して記憶部62の現在のn−λn対応表を更新する(ステップS8)。紫外LED31を消灯して(ステップS9)フロー終了となる。
【0040】
<測定フロー>
試料1の測定時には、上記更新されたn−λn対応表に基づいて、以下の図5に示す測定フローに従って試料1の分光反射率係数が求められる。すなわち、先ず中央処理部61は、記憶部62から最新のn−λn対応表を読み出す(ステップS21)。次に測定開口に試料1を置いた状態で、白熱ランプ21(白熱光源)を点灯する(ステップS22)。中央処理部61(演算制御部6)は、試料1による反射光(試料反射光)に対するポリクロメータ5のデジタル画素出力を取り込み(ステップS23)、このデジタル画素出力とn−λn対応表とから、試料反射光の分光分布を求める(ステップS24)。そして、上記白色校正時にポリクロメータ5で白色基準試料10を上記と同様の手順で測定して得られた分光分布から求めておいた校正係数を用いて、上記ステップS24における試料1の測定により得られた分光分布情報から、試料1の分光反射率係数を算出して出力する(ステップS25)。白熱ランプ21を消灯して(ステップS26)フロー終了となる。
【0041】
なお、上記実施形態では、紫外LED31の順電圧変化dVfと発光波長変化dλとの関係を傾きKの直線、すなわち一次関数で近似したが、これに限らず、より高次の関数で近似してもよい。この場合、順電圧変化dVfと発光波長変化dλとの関係(関数)を変換テーブル情報として持つようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、紫外LED31を1つの定電流Ifで駆動したときの順電圧Vfを利用しているが、これに限らず、2つ(2種類)の定電流で駆動したときの順電圧を利用してもよい。すなわち、紫外LED31を2つの定電流I、Iで駆動したときの順電圧をそれぞれVf、Vfとすると、これら順電圧の差Vf−Vfと紫外LED31の温度Tとの関係は、以下の(11)式で近似することができ、また、温度Tと発光波長λとの間にも略比例関係があることから、発光波長変化dλを、Vf−Vfの変化量d(Vf−Vf)を用い、比例定数をK’として以下の(12)式より求めるようにしてもよい。なお、この順電圧変化量d(Vf−Vf)は、Vf−Vfの値から、このVf−Vfの変化前の初期値であるVf10−Vf20を減算して得られるものである。
Vf−Vf=(k/q)*T*Ln(I/I) ・・・(11)
但し、記号「k」はボルツマン定数、記号「q」は電子の電荷を示す。
dλ=K’*d(Vf−Vf) ・・・(12)
【0043】
この変形例の場合、温度と順電圧との関係の比例関係からの乖離による誤差を排除することが可能となる。すなわち先の実施形態における上記(7)式で示すdλ=K*dVfでは、Vfと温度とが近似的に直線関係であることを前提にしているが、ここでの(12)式の場合は、Vf−Vfと温度とは、理論的に直線関係であるので、(7)式の場合よりも精度が高いものとなる。
【0044】
なお、上記実施形態では、波長変化量の違いを調べる(比較する)ためのポリクロメータ5の紫外LED31による回折光(分散像)として、符号303で示す一次光及び符号304で示す二次光を利用しているが、これに限らず、例えば二次光及び三次光(二次回折光及び三次回折光)というように利用してもよい。また、このように次数が連続したものでなくともよく、例えば一次光及び三次光というように次数に飛びがあるように利用してもよいし、マイナス(−)一次光及びマイナス二次光というようにマイナス値として得た回折光を利用してもよい。また、このように必ずしも2つの回折光でなくともよく、3つ以上の回折光を利用してもよい。さらに、一次光及び二次光からなるグループを第一回折光、二次光及び三次光からなるグループを第二回折光などと、グループ毎に纏めてなる回折光を少なくとも2つ利用するようにしてもよい。要は、少なくとも2つ(2種類)の回折光を利用できればよい。
【0045】
以上のように、本実施形態における波長変化補正システム100によれば、ポリクロメータ5(分光装置)によって、入射スリット51から入射した入射光が回折格子52により回折されて該入射スリット51(開口部51a)の分散像が作成され、該作成された分散像の情報が出力される。また、紫外LED31(LED)が1つ又は複数の定電流(If又はI、I)により駆動される。また、演算制御部6(演算制御装置)によって、分光装置からの出力情報に基づいて所定の演算が行われるとともにLEDの駆動が制御される。この演算制御装置において、LEDの駆動によるLED単色光が入射光として入射される場合の、分光装置から出力された分散像情報における次数の異なる少なくとも2つの回折光出力値(λ、λ)及びLED駆動用の定電流による1つ又は複数の順電圧値(Vf又はVf、Vf)と、少なくとも2つの回折光出力値における回折光出力初期値(λ10、λ20)及び1つ又は複数の順電圧値における順電圧初期値(Vf又は(Vf−Vf)と、が用いられて下記第1〜第3の演算が行われ、当該演算結果から分光装置における波長変化の補正が行われるので、分光装置の回折格子52(光学要素)やハウジングがプラスチック成型品からなるような場合の、熱的或いは非熱的(経時的)な変化(相対位置の変化等)に起因する、分散幅変化(dλ)及び一律な波長変化(dλ)を共に補正することができ、当該分光装置の任意波長λにおける変化(dλ)を補正する(波長変化補正を行う)ことができる。すなわち初期の波長校正時の波長精度を維持することができる。なお、当該波長精度を維持するためのコストが、紫外LED31とその駆動回路であるLED制御部32(順電圧測定回路を含む)だけであるので、コストダウンというプラスチック成型品導入のメリットを損なわない。
【0046】
第1の演算:上記1つ又は複数の順電圧値及び順電圧初期値を用いて上記LED単色光の波長変化量(dλ)を算出する。
第2の演算:上記少なくとも2つの回折光出力値及び回折光出力初期値を用いて当該少なくとも2つの回折光の波長変化量(dλ、dλ)を算出する。
第3の演算:上記算出したLED単色光の波長変化量及び少なくとも2つの回折光の波長変化量を用いて上記分光装置における一律の波長変化量(dλ)及び分散幅変化量(dλ;分散幅変化率)を算出する。
【0047】
また、少なくとも2つの回折光は一次回折光(例えば符号303で示す一次光)及び二次回折光(例えば符号304で示す二次光)であるので、回折光出力をより確実に得ることが可能となり、ひいては精度良く上記分散幅変化及び一律な波長変化の補正を行うことができる。
【0048】
また、演算制御装置によって、上記第3の演算において上記(5)式により一律の波長変化量dλが算出されるとともに上記(8)式により分散幅変化量dλが算出され、当該第3の演算により得られたdλ及びdλが用いられて上記(9)式により任意の波長λの波長変化量dλを算出することにより補正が行われるので、一律の波長変化量dλ及び分散幅変化量dλを、上記(5)及び(8)式を用いて容易に算出することができ、ひいては任意波長λの波長変化補正を容易に行うことができる。
【0049】
また、演算制御装置によって、上記第1の演算において、LED単色光の波長変化量dλが、1つの順電圧値Vfにおける順電圧初期値Vfからの変化量である順電圧変化量dVfと所定の比例定数Kとを用いて上記(7)式により算出されるので、LED単色光の波長変化量dλをLED駆動用の1つの順電圧値Vfを用いた簡易な方法によって容易に算出することができる。
【0050】
また、演算制御装置によって、上記第1の演算において、LED単色光の波長変化量dλが、2つの順電圧値Vf、Vfの差Vf−Vfの値における初期値Vf10−Vf20からの変化量である順電圧差変化量d(Vf−Vf)と所定の比例定数K’とを用いて上記(12)式により算出されるので、LED単色光の波長変化量dλをLED駆動用の2つの順電圧値Vf、Vfを用いて精度良く算出することができる。
【0051】
さらに、本実施形態における波長変化補正方法によれば、第1の工程によって、分光装置において、入射スリットから入射した入射光が回折格子により回折されて該入射スリットの分散像が作成され、該作成された分散像の情報が出力される。また、第2の工程によって、1つ又は複数の定電流によりLEDが駆動され、第3の工程によって、第1の工程により取得された分散像情報に基づいて所定の演算が行われるとともにLEDの駆動が制御される。この第3の工程において、LEDの駆動によるLED単色光が入射光として入射される場合の、分散像情報における次数の異なる少なくとも2つの回折光出力値(λ、λ)及びLED駆動用の定電流による1つ又は複数の順電圧値(Vf又はVf、Vf)と、上記少なくとも2つの回折光出力値における回折光出力初期値(λ10、λ20)及び1つ又は複数の順電圧値における順電圧初期値(Vf又はVf10、Vf20)と、に基づいて下記第4〜第6の工程が実行されるとともに、第7の工程によって、当該第4〜第6の工程により得られた結果から分光装置における波長変化の補正が行われるので、分光装置の回折格子52やハウジングがプラスチック成型品からなるような場合の、熱的或いは非熱的(経時的)な変化(相対位置の変化等)に起因する、分散幅変化(dλ)及び一律な波長変化(dλ)を共に補正することができ、当該分光装置における任意波長λの変化(dλ)を補正する(波長変化補正を行う)ことができる。すなわち初期の波長校正時の波長精度を維持することができる。
【0052】
第4の工程:前記1つ又は複数の順電圧値及び順電圧初期値を用いて前記LED単色光の波長変化量(dλ)を算出する工程。
第5の工程:前記少なくとも2つの回折光出力値及び回折光出力初期値を用いて当該少なくとも2つの回折光の波長変化量(dλ、dλ)を算出する工程。
第6の工程:前記算出したLED単色光の波長変化量及び少なくとも2つの回折光の波長変化量を用いて前記分光装置における一律の波長変化量(dλ)及び分散幅変化量(dλ)を算出する工程。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係る波長変化補正システムの一例を示すブロック構成図である。
【図2】波長変化補正の原理について説明するための模式図である。
【図3】紫外LEDのVf−λ特性を示すグラフ図である。
【図4】本実施形態に係る波長変化補正動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】試料の反射特性測定動作の一例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1 試料
2 測定用照明部
21 白熱ランプ
22 ランプ制御部
3 補正用照明部
31 紫外LED(各請求項に記載のLED)
32 LED制御部
4 測定光学系
5 ポリクロメータ(分光装置)
51 入射スリット
52 回折格子
53 受光素子アレイ
55 信号処理部
51a 開口部
6 演算制御部(演算制御装置)
61 中央処理部
62 記憶部
63 操作表示部
10 白色基準試料
1a、10a 反射光
100 波長変化補正システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射スリットから入射した入射光を回折格子により回折して該入射スリットの分散像を作成し、該作成した分散像の情報を出力する分光装置と、
1つ又は複数の定電流により駆動されるLEDと、
前記分光装置からの出力情報に基づいて所定の演算を行うとともに前記LEDの駆動を制御する演算制御装置とを備える波長変化補正システムであって、
前記演算制御装置は、
前記LEDの駆動によるLED単色光が前記入射光として入射される場合の、前記分光装置から出力された分散像情報における次数の異なる少なくとも2つの回折光出力値及び前記LED駆動用の前記定電流による1つ又は複数の順電圧値と、
前記少なくとも2つの回折光出力値における回折光出力初期値及び前記1つ又は複数の順電圧値における順電圧初期値と、を用いて下記第1〜第3の演算を行い、当該演算結果から前記分光装置における波長変化を補正することを特徴とする波長変化補正システム。
第1の演算:前記1つ又は複数の順電圧値及び順電圧初期値を用いて前記LED単色光の波長変化量を算出する。
第2の演算:前記少なくとも2つの回折光出力値及び回折光出力初期値を用いて当該少なくとも2つの回折光の波長変化量を算出する。
第3の演算:前記算出したLED単色光の波長変化量及び少なくとも2つの回折光の波長変化量を用いて前記分光装置における一律の波長変化量及び分散幅変化量を算出する。
【請求項2】
前記少なくとも2つの回折光は、一次回折光及び二次回折光であることを特徴とする請求項1に記載の波長変化補正システム。
【請求項3】
前記第1の演算において算出される前記LED単色光の波長変化量をdλとし、
前記第2の演算において算出される前記2つの回折光としての前記一次回折光及び二次回折光の波長変化量をそれぞれdλ、dλとすると、
前記演算制御装置は、
前記第3の演算において下記(1)式により前記一律の波長変化量dλを算出するとともに下記(2)式により前記分散幅変化量dλを算出し、
当該第3の演算により得られたdλ及びdλを用いて下記(3)式により任意の波長λの波長変化量dλを算出することにより前記補正を行うことを特徴とする請求項2に記載の波長変化補正システム。
dλ=2*dλ−dλ ・・・(1)
dλ=(dλ−dλ−dλ)/λ ・・・(2)
dλ=λ*dλ+dλ ・・・(3)
但し、記号「*」及び「/」はそれぞれ乗算及び除算を示す。
【請求項4】
前記演算制御装置は、
前記第1の演算において、前記LED単色光の波長変化量dλを、1つの順電圧値Vfにおける順電圧初期値Vfからの変化量である順電圧変化量dVfと所定の比例定数Kとを用いて下記(4)式により算出することを特徴とする請求項3に記載の波長変化補正システム。
dλ=K*dVf ・・・(4)
【請求項5】
前記演算制御装置は、
前記第1の演算において、前記LED単色光の波長変化量dλを、2つの順電圧値Vf、Vfの差Vf−Vfの値における初期値Vf10−Vf20からの変化量である順電圧差変化量d(Vf−Vf)と所定の比例定数K’とを用いて下記(5)式により算出することを特徴とする請求項3に記載の波長変化補正システム。
dλ=K’*d(Vf−Vf) ・・・(5)
【請求項6】
分光装置において、入射スリットから入射した入射光を回折格子により回折させて該入射スリットの分散像を作成し、該作成した分散像の情報を取得する第1の工程と、
1つ又は複数の定電流によりLEDを駆動する第2の工程と、
前記第1の工程により取得された分散像情報に基づいて所定の演算を行うとともに前記LEDの駆動を制御する第3の工程とを有する波長変化補正方法であって、
前記第3の工程は、
前記LEDの駆動によるLED単色光が前記入射光として入射される場合の、前記分散像情報における次数の異なる少なくとも2つの回折光出力値及び前記LED駆動用の前記定電流による1つ又は複数の順電圧値と、
前記少なくとも2つの回折光出力値における回折光出力初期値及び前記1つ又は複数の順電圧値における順電圧初期値と、に基づく下記第4〜第6の工程を有するとともに、当該第4〜第6の工程により得られた結果から前記分光装置における波長変化を補正する第7の工程を有する工程であることを特徴とする波長変化補正方法。
第4の工程:前記1つ又は複数の順電圧値及び順電圧初期値を用いて前記LED単色光の波長変化量を算出する工程。
第5の工程:前記少なくとも2つの回折光出力値及び回折光出力初期値を用いて当該少なくとも2つの回折光の波長変化量を算出する工程。
第6の工程:前記算出したLED単色光の波長変化量及び少なくとも2つの回折光の波長変化量を用いて前記分光装置における一律の波長変化量及び分散幅変化量を算出する工程。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−185565(P2008−185565A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−21956(P2007−21956)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】