説明

波長追従型分散補償器

【課題】光ファイバ内の波長分散の修正について、簡単な構成で大きい分散レンジと広い光帯域幅を持つ可変分散補償器を提供する。
【解決手段】モニタは分散補償器のフリースペクトルレンジ又はその約数若しくは倍数に一致するフリースペクトルレンジを持つマッハツェンダー干渉計を含む。モニタの2つの出力は差動検出制御回路の2つの光検出器に結合される。差動検出制御回路は光検出器間の電流差を用いて温度制御器を制御し、モニタ及び分散補償器の温度を設定する。このようにして、WT−DCは自動的に入力信号の波長に追従する。好適な実施例では、モニタ及び分散補償器は同じプレーナ光波回路チップに集積され、半波プレートを含む。モニタが分散補償器と同じチップ上に統合さるので、最小限のコストでモニタ及び分散補償器の波長が温度に追従することを確実にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に光分散補償器に関し、より具体的には波長追従型の分散補償器を実施するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光信号の分散補償器(DC)は光ファイバ内の色分散を修正し、特に10Gb/s以上のビットレートのものに対して有用である。さらに、分散補償器に対して調整可能な、いわゆる「可変」な量の分散を持つことは有利であり、システムの実施を容易にするものである。また、可変分散補償器(TDC)が無色(colorless)であれば有利である。即ち、1つのデバイスが多くのチャネルを同時に補償し、又はシステム内のどのチャネルも補償するよう選択可能なものとすることもできる。
【0003】
以前に提案された無色TDCはリング共振器、バーチャリ・イメージ・フェーズ・アレイ(VIPA)、カスケード型マッハツェンダー干渉計(MZI)、温度調整型エタロン、サーマルレンズ付き波長グレーティング・ルーター(WGR)、及び変形可能なミラー付きのバルクグレーティングを含む。
【0004】
発明者の最新の出願:発明の名称「TUNABLE DISPERSION COMPENSATOR」、2004年1月20日出願、シリアル番号10/760516において、発明者は無色マッハツェンダー干渉計に基づく可変分散補償器を実施するための方法及び装置を開示した。このTDCは非常に簡単な設計で大きな分散レンジを達成できるものの、非常に狭い光帯域幅しか持たないという欠点がある。それは、送信機の波長とTDCの中心波長との間で、TDCの1つのフリースペクトルレンジについて、約+/−20pmのずれを許容できる。このTDC光帯域幅は波長固定型の送信機には許容できるものであるが、多くのアプリケーションはいわゆるTDMと言われる波長固定型でない送信機を用いるものである。TDM送信機は通常、寿命期間に亘って+/−100pmの波長ドリフト仕様を有し、それはTDC光帯域幅に対して大き過ぎるものとなる。
【0005】
この光帯域幅の制限を克服し、TDM送信機に対する波長ドリフト仕様を満足するために、発明者は、3つのMZIステージを持つTDCのうち2つの外側のMZIにおいて位相シフターを調整することによってTDCをTDM送信機レーザー波長に固定することを開示した。例えば、2つの外側のMZIにおける長い方のアームの位相シフターに対する駆動を同時に増すことで、TDCはより長い波長に調整できる。この固定についてのフィードバック制御メカニズムは、これらの外側のMZI位相シフターを同時に特定の周波数でディザリングすることによって、及びTDCからの出力パワーをタップ及び光検出器を用いて測定することによって、標準ピーク検出フィードバック制御を用いて導かれる。
【0006】
しかし、ディザリングの使用によって、TDCを介して及びシステム上に伝送されるデータ変調された波長信号に光変調を付加してしまい、その波長信号上で変調されたデータを検出するための受信機の能力に影響を与えることになる。さらに、波長信号のデータ変調がディザリングとして現れるので、不利なことにTDCがその中心波長を変化させてしまい、分散補償に影響を及ぼす。さらに、そのようなディザリング技術は低い分散の設定に対しては充分には作用しない。
【0007】
従って、大きな分散補償レンジを持ち、寿命に亘って+/−100pmのTDM送信機の波長ドリフト仕様を満足するTDCへの要求は絶えない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従って、発明者は、受信入力信号の波長を追従する波長追従型の分散補償器(WT−DC)を実施するための方法及び装置を開示する。WT−DCは入力信号光モニタ、差動検出制御回路、温度制御器、及び入力信号分散補償器(DC)を含む。モニタは、DCのフリースペクトルレンジ又はその整数倍若しくは約数に相当するフリースペクトルレンジを持つマッハツェンダー干渉計を含む。モニタの2つの出力は差動検出制御回路の2つの光検出器に結合される。差動検出制御回路は光検出器の間の差動電流を用いて、モニタ及びDCの温度を設定するための温度制御器を制御する。このようにして、WT−DCは自動的に入力信号の波長を追従する。好適な実施例において、モニタ及びDCは同じプレーナ光波回路チップ上に集積される。モニタはDCと同じチップに集積されるので、最小の追加コストで済み、モニタとDCの波長とが温度とともに追従することを保障する。他の好適な実施例では、更に性能を向上するためにDCが可変の分散を持つようにする。以降、用語「DC」は、発明の範囲を変えることなく、固定又は可変なものいずれかの分散補償器を特定するものとして用いる。
【0009】
より具体的には、本発明のWT−DCの一実施例において、補償器は、
時間に対して変動する波長を持つ入力信号を受信するための、温度依存性の波長特性を持ち基準波長で動作する色分散補償器(DC)、
入力信号を受信して2つの光出力信号を生成するための、温度依存性の波長特性を持ちDCと同じ基準波長で動作する波長モニタ、
2つの光出力信号を検出し、受信入力信号がDCの基準波長に対して不整合な場合にそれを示す制御信号を生成するための差動検出制御回路、及び
制御信号に応答して、DC及び波長モニタの基準波長を変化させて受信入力信号の波長に整合するように、DC及び波長モニタの温度を変化させるための温度制御器からなる。
【0010】
他の実施例では、波長モニタが1つの光出力信号のみを生成し、検出制御回路がその信号を検出し制御信号を生成する。他の実施例では、DC及び波長モニタ双方が同じチップ(又は基板)上に配置される。1つの特徴によると、Nを自然数として、DCのフリースペクトルレンジ(FSR)はモニタのFSRのN倍又は1/N倍に等しい。他の特徴によると、入力信号が複数波信号の場合、DCのFSRは、自然数Mで割られる複数波信号のチャネル間隔に等しい。さらに他の実施例では、WT−DCは、光送信機、光増幅器、光ファイバ、波長マルチプレクサ、波長ディマルチプレクサ及び光受信機等の光学部材の1以上のからなる光学装置の部分として統合される。
【0011】
本発明は、付随する図面を参照にして記載される以下の詳細な説明を検討することによって、より深く理解できるであろう。
以下の説明において、異なる図面における同一の符号は同一の要素を表すものである。さらに、符号について、上一桁はその要素が最初に示される図面を示すものである(例えば、101は最初に図1に示されるものである)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1を参照すると、本発明による波長追従型の分散補償器(WT−DC)の例示的ブロック図が示されている。本発明のWT−DC100は(1)温度依存性の波長光信号の分散補償器(DC)110、(2)温度依存性の波長モニタ120、(3)差動検出制御回路130、(4)DC110及び波長モニタ120双方の温度を変化させるための温度制御器140の4つの基本装置を含む。本発明のWT−DC、DC110及び波長モニタ120の好適な実施例は、共通の基板又はチップ上に実装される。他の実施例では、DC110は固定の分散補償のために設けられる。さらに他の実施例では、DC110及び波長モニタ120が偏波非依存となるように半波プレートが追加される。
【0013】
DC110は、発明者の係属中の出願:発明の名称「TUNABLE DISPERSION COMPENSATOR」、2004年1月20日出願、シリアル番号10/760516(以下、従来のTDC出願という)に記載されるどの実施例を用いても実施でき、ここに参照として取り込まれる。簡単に説明すると、その出願は、3個だけのMZIステージと1つの制御電圧に応答する2個の調整可能な結合器を有する無色マッハツェンダー干渉計に基づく可変分散補償器を実施するための方法及び装置について記載するもので、それにより装置を小型化、低電力化し、並びに製造、試験及び動作を簡単にするものである。TDCは、TE偏波をTM偏波に変換するための中間ステージMZIの2つの経路長の中間点を横切って位置する半波プレートを用いて偏波非依存を達成するものである。このようなMZIに基づくTDCの25GHzのフリースペクトルレンジを持つバージョンは、10Gb/s信号に対して2100ps/nmまでを補償することができる。フリースペクトルレンジ(FSR)を整数で割ったシステムチャネル間隔に等しくすることで、TDCが多くのチャネルを同時に補償し、また、波長が異なるチャネル間を跨いでいる場合についてTDCの調整なしに補償することが可能となる。
【0014】
例えば、フリースペクトルレンジ20GHzと33.3GHzと同様に、25GHzのフリースペクトルレンジによって、TDCが100GHzグリッド上の複数のチャネルを補償することを可能とする。従来のTDC出願はTDCが調整可能な分散補償とするために設けられたTDCを記載するのに対し、本発明のWT−DC100の動作はDC110が調整可能な分散補償を持つことを必要としない。もっとも、調整可能な分散補償DC110は好ましい実施例ではある。さらに、従来のTDC出願はTDCが半波プレートを含むものとして記載しているのに対し、本発明のWT−DC100の動作はDC110が半波プレートを持つことを要しない。但し、本発明の好適に実施例においては、共通半波プレートがDC110及び波長モニタ120に追加され、それら双方を偏波非依存としている。
【0015】
従来のTDC出願は大きな分散レンジを非常に簡素な設計で達成するものであるが、非常に狭い光帯域幅しか持たないという欠点がある。それは、送信機の波長とTDCの中心波長との間で、TDCのフリースペクトルレンジのうちの1つにおいて、約+/−20pmのずれを許容できる。このことは波長固定型の送信機には許容できるものであるが、多くのアプリケーションはいわゆるTDMと言われる波長固定型でない送信機を用いるものである。このようなTDM送信機は通常、寿命期間に亘って+/−100pmの波長ドリフト仕様を有する。TDCにこの幅をカバーするだけの広い帯域幅を持たせ、それでも同じ分散レンジを達成するためには、TDCをより大型化してより複雑にする必要がある。
【0016】
従来のTDC出願において、波長固定型の送信機レーザーがシステム内で用いられる場合、光帯域幅は概して充分である。しかし、システムによっては、レーザー波長の不確定要素がTDC光帯域幅に対して大き過ぎるものとなる。そのような場合、従来のTDC出願において、発明者は、2つの外側のMZIにおける位相シフターを調整することによってTDCをレーザー波長に固定することができると述べた。例えば、2つの外側のMZIにおける長い方のアームの位相シフターの駆動を同時に増すことで、TDCをより長い波長に調整できる。この固定のためのフィードバックは、これらの外側のMZI位相シフターを同時に特定の周波数でディザリングすることによって、及びTDCからの出力パワーをタップ及び光検出器を用いて測定することによって、標準ピーク検出フィードバック制御を用いて導くことができる。
【0017】
しかし、ディザリングの使用によって、TDCを介して(システム上に)伝送されるデータ変調された波長信号に光変調を付加してしまい、その波長信号上で変調されたデータを検出するための受信機の能力に影響を与えることになる。さらに、波長信号のデータ変調がディザリングとして現れるので、不利なことにTDCがその中心波長を変化させてしまい、分散補償に影響を及ぼす。さらに、そのようなディザリング技術は低い分散の設定に対しては充分には作用しない。
【0018】
図1を参照すると、本発明の新規なWT−DC100によって、DC110を波長固定型でない送信機レーザーからもたらされる入力信号に対して調整するための独自の解決策が提供される。本発明のWT−DC100は、DC110及び光波長モニタ120を同じプレーナ光波回路チップ又は基板150上に統合するものである。DC110及び波長モニタ120双方が温度依存性の波長特性を持っているので、チップ150の温度を変化させて、DC110及び波長モニタ120の基準(又は中心)動作波長を変化させる。差動検出制御回路130は波長モニタ120からの出力をモニタして受信入力(INPUT)信号(例えば、受信される波長固定型でない送信機レーザーの信号)とDC110の基準動作波長との間の何らかの差を判定し、チップ150の温度を制御するのに用いられる制御信号138を生成する。この制御信号138によってチップ又は基板150の温度を変化させる温度制御器140を制御する。上述のようにして、光波長モニタ120、差動検出制御回路130及び温度制御器140を用いて、DC110の中心波長が受信入力(INPUT)信号に整合するようにチップ150の温度を調整する。
【0019】
温度センサー133によって制御回路132に温度読み込み値が供給される。制御回路132は温度読み込み値を用いて、WT−DC100が待機モードにある時、又は入力(INPUT)信号が受信されない時に温度が変動しないようにする。
【0020】
波長モニタ120は、DC110のフリースペクトルレンジ又はその整数倍に一致するフリースペクトルレンジを持つマッハツェンダー干渉計(MZI)装置を含む。なお、WT−DC100への入力(INPUT)信号は通常、時間に亘って変化し得る波長を持つ送信機からのレーザー信号又は他の光波長信号である。この入力(INPUT)信号は分波器又はタップ101に結合され、その一方の出力はDC110の入力に結合され、他方の出力は波長モニタ120の入力に結合される。波長モニタ120の2つの光出力102は差動検出制御回路130の差動検出器131の入力に結合される。光入力が2つの光検出器135及び136に結合され、その出力は減算器137において減算され、差動直流電流を形成する。差動直流電流は制御回路132に接続され、チップ(又は基板)150の温度を調整するために温度制御器130で用いられる制御信号138を生成する。従って、光検出器135と136間の差動直流電流は、DC110及び波長モニタ120双方の温度を制御するために用いられる。DC110及び波長モニタ120双方は好ましくは同じチップ(又は基板)150に配置されるが、そうでなくてもよい。DC110及び波長モニタ120双方は、同じ一般群遅延、透過率、及び温度依存性の波長特性を呈することにおいて双方が非常によく似たMZI装置を用いて実施される。
【0021】
DC110及び波長モニタ120双方が一致する温度依存性の波長特性を有し、双方が同じチップ150上に形成されているので、チップ150の温度を変化させることは、同様にDC110及び波長モニタ120の基準(中心)動作波長双方に影響を与える。結果として、チップ150の温度の何らかの上昇/低下による調整によって、WT−DC100がその基準波長を上昇/低下させて入力(INPUT)信号の波長におけるいかなる変化にも自動的に追従することを可能とする。本発明のWT−DC100はDC110と同じチップ150上に波長モニタ120を集積するので、波長モニタ120はチップ150に対して少ない追加コストしかもたらさない。
【0022】
さらなる改善として、半波プレート121がMZIの両アームに対して対称な位置に追加される。従って、例えば、受信光信号のTE偏波光波部分が、MZIの第1の片側部分122における長い方のアームを介して伝搬すると、半波プレート121はTE偏波光波を回転するので、それはTM偏波光波となり、MZIの第2の片側部分123を介して長い方のアームを伝搬する。それに対応して、受信光信号のTM偏波光波部分が、MZIの第1の片側部分122における短い方のアームを介して伝搬し、半波プレート121はTM偏波光波を回転するので、それはTE偏波光波となり、MZIの第2の片側部分123を介して短い方のアームを伝搬する。
【0023】
上記の説明とは逆に、TE光波部分とTM光波部分の役割を逆にすることもできる。即ち、MZIの第1の片側部分122において、TM光波部分が長い方のアームを介して伝搬し、TE光波部分が短い方のアームを介して伝搬するようにすることもできる。
【0024】
結果として、半波プレート121は、TE偏波の光波とTM偏波の光波との間の差動偏波依存波長シフト(PDW)を、それらがMZIを通過するにつれて、なくすことができる。
【0025】
本発明の他の側面によると、半波プレート121及び係属中の出願にも記載されたTDCの半波プレート111は、MZIとDC110双方に偏波非依存性を与える共通の半波プレートとして結合することができる。
【0026】
図1、2A及び2Bを併せて参照して、WT−DC100の特定の動作特性が記載される。図2A及び2Bは、入力(INPUT)信号がDC110の中心(基準)波長213に対して整合する場合(図2B)及び不整合な場合(図2A)のDC110の分散及び群遅延並びに波長モニタ120の透過率を示すものである。なお、波長モニタ120の分散及び群遅延特性(図示せず)はDC110に対して示すものとほぼ同じになる。図2Bに示すように、整合状態にある時は、入力(INPUT)信号はDC110の中心波長と同じ波長213を持ち、分散帯域幅214の中心に来る(ここで、DC110の分散値は最大レンジにある)。分散帯域幅214はDC110の動作波長幅を表している。整合状態においては、DC110の群遅延は211によって示すようにゼロである。整合状態においては、212に示すように、波長モニタ120の出力ポートO1とO2は等しい透過率レベルにある。結果として、減算器137の出力はゼロになり、制御回路132は、温度制御器140にチップ150を現在の温度レベルに維持させるような値の制御信号138を生成する。
【0027】
図2Aを参照する。不整合状態の時、入力(INPUT)信号は、DC110の中心波長2132の上223或いは下224の値に変化した(例えば、ドリフトした)波長を持つ。入力(INPUT)信号が、DCの中心波長213よりも高い波長223を持つとき、DC110の分散は、220で示すようにまだ最大レンジの値に収まるもののその帯域幅の右側231にオフセットされ、DC110の群遅延は221で示すようにその整合値233に対して負の値232となる。この不整合状態において、波長モニタ120では、その出力ポートO1が出力ポートO2の透過率レベル235よりも高い透過率レベル234となる。結果として、減算器137の出力は正の値となり、制御回路132は、DC110の中心波長213が入力(INPUT)信号の波長223に整合するところまで上昇されるまで、温度制御器140にチップ150を調整(上昇又は低下)させる値の制御信号138を生成する。DC110の中心波長213が再び入力(INPUT)信号の波長223に整合すると、減算器137の出力はゼロになり、制御信号138は温度制御器140にチップ150を現在の温度レベルに維持させるような値に留まる。
【0028】
同様にして、入力(INPUT)信号の波長がDCの中心波長213より低い値224まで変化した時、DC110の分散は220に示す通りまだその最大レンジ値内のものであるが、その帯域幅の左側にずれている。また、DC110の群遅延は221に示す通りその整合値に対して正の値となる。この不整合状態では、波長モニタ120はその出力ポートO2が出力ポートO1よりも高い透過率レベルになるようにする。結果として、減算器137の出力は負となり、制御回路132は、DC223の中心波長が入力(INPUT)信号の波長224に整合するところまで減少するまで、温度制御器140にチップ150の温度を適切に調整させるような値の制御信号138を生成する。DC110の中心波長213が入力(INPUT)信号の波長224に再び整合されると、減算器137の出力は再びゼロになり、制御信号138は再び、温度制御器140がチップ150を現在の温度レベルに維持させるような値となる。
【0029】
図3は、複数波のWT−DC100の構成について、WT−DC100のフリースペクトルレンジ(FSR)に亘る波長を持つ分散特性の変動をプロットしたものである。図示するように、入力(INPUT)信号が複数波信号(例えば、波長分割多重信号)である場合、WT−DC100のFSRは自然数Mによって割られた複数波信号のチャネル間隔に等しい間隔を持たなくてはならない。従って、図示された例において、WT−DC100のFSRは複数波信号のチャネル間隔に等しいので、波長チャネル1及び2はそれぞれFSRで離隔された異なる分散帯域幅に収まる。なお、このような複数波WT−DC100の構成では、FSRMon=N・FSRDCである。ここで、FSRMonはモニタ120のFSRであり、FSRDCはDC110のFSRであり、Nは自然数である。従って、FSRMonはN・Mの複数波信号のシステムチャネル間隔に等しい。DC110がシステムチャネル間隔に等しいFSRを持たせることによって、整数によって割られたFSRMonが、DC110が多くのチャネルを同時に補償し、あるいは波長が異なるチャネルを跨ぐ場合についてDC110の調整なしに補償することを可能とする。
【0030】
制御信号138について、2つの検出器135と136の差動を用いて上述した。代替の実施例では、135のような1つの検出器だけを用いて入力信号をモニタする。このような構成において、制御回路132は検出器135からの出力信号139を受信電力レベル信号160(例えば、内部のタップから(図示しない)光増幅器がWT−DCの前段又は後段いずれかに接続されるもの)に対して補償して制御信号138を決定する。他の代替の検出器の実施例は、入力信号が所定の変調方式(例えば、単一の変動周波数、固定の周波数、周期的な信号又はディザリングされた信号)で波長変調されている場合についてのものである。1つの例示的構成は、よくあることであるがディザリングされた信号が用いられる場合、入力レーザーが、それに印加された誘導ブリリュアン散乱抑圧トーンを持つ場合等についてのものである。そのような実施例では、135のような1つだけの検出器を用いて、制御信号138に対するディザリングされた信号の信号処理を用いることができる。これは、入力信号の波長の変調によって検出器135がその変調を検出し、そして検出された変調の振幅は信号とモニタとの間の波長整合性に依存するからである。
【0031】
図4は図1のWT−DC100の一実施例における断面図を示すものである。図示するように、チップ又は基板150は金属又は他のタイプの放熱要素401上に実装される。温度−電気変換又は他のタイプの冷却要素である温度制御器140が放熱要素401に熱的に結合される。WT−DC100が待機モードにある場合、又は入力(INPUT)信号が受信されない場合、制御回路132は温度読み取り値を温度センサー133から及び入力を減算器137から受信し、それに応答して制御器140を制御するための制御信号138を生成する。このように、制御回路132は、WT−DC100が待機モードにある時又は入力(INPUT)信号が受信されない時にチップ又は基板150の温度を制御する。
【0032】
図5は、図1のWT−DC100の小型プレーナ導波路のレイアウトを示すものである。図示するように、入力(INPUT)信号がコネクタ501を介して分波器又はタップ101に結合され、その出力の一方がDC110の入力に結合され、他方の出力が波長モニタ120の入力に結合される。波長モニタ120の2つの光出力102がコネクタ501を介して差動検出器131の入力に結合される。DC110の出力(OUTPUT)がコネクタ501を介して結合されてWT−DC100の出力(OUTPUT)となる。分波器101、波長モニタ120及びDC110について示されるレイアウト構成を用いることにより、WT−DC100に対する小型なプレーナ導波路レイアウトが得られる。
【0033】
図6A及び6Bは、例示的光伝送システムにおける本発明のWT−DCの使用を示すものである。図6Aは、第1の場所600が光送信装置601、送信前の分散補償のために用いるWT−DC602、光増幅器603及び必要であれば波長マルチプレクサ604を含む送信前分散補償システムを示す。出力信号は光学設備610を介して、(必要な場合は)波長ディマルチプレクサ621、増幅器623及び光受信装置622を含む第2の場所620へ送信される。例示的光伝送システムは双方向のものなので、第1の場所はまた、(必要であれば)ディマルチプレクサ621、増幅器623及び光受信装置622を含み、光学設備630を介して第2の場所に接続される。第2の場所は光送信装置601、送信前の分散補償のために用いられるWT−DC602、光増幅器603及び(必要に応じて)マルチプレクサ604を含む。なお、光送信装置601及び光受信装置622は、トランスポンダー装置640として通常は一体化されている。
【0034】
図6Bは、第1の場所600が光送信装置601、光増幅器603及び(必要であれば)波長マルチプレクサ604を含む送信後分散補償システムを示す。出力信号は光学設備610を介して、(必要な場合は)波長ディマルチプレクサ621、増幅器623、送信後の分散補償のために用いるWT−DC602、光フィルタ605(例えば、拡大自然放出(ASE)フィルタ)及び光受信装置622を含む第2の場所620へ送信される。例示的光伝送システムは双方向のものなので、第1の場所はまた、(必要であれば)ディマルチプレクサ621、増幅器623、WT−DC602、光フィルタ605及び光受信装置622を含み、光学設備630を介して第2の場所に接続される。第2の場所は光送信装置601、光増幅器603及び(必要に応じて)マルチプレクサ604を含む。WT−DC602とASEフィルタ605の順序はシステムの性能に影響することなしに入れ替えることができる。
【0035】
なお、約80kmより短い長さの標準単一モードファイバ(SSMF)光設備を持つシステムに対しては、通常、分散補償は必要ではない。約80〜135kmの範囲のSSMF光設備610対しては、図6Aに示す送信前分散補償システムが適している。約135〜160kmの範囲のSSMF光設備610対しては、図6Bに示す送信後分散補償システムが適している。
【0036】
なお、図6A及び6Bのシステム構成では、WT−DC602を、光送信装置601、光増幅器603、光フィルタ605、波長マルチプレクサ604、波長ディマルチプレクサ621及び光受信機622等の1以上の光学部材と統合してもよい。例えば、WT−DC602をモノリシックにレーザー及び光変調器とInGaAsPで集積して、組み込み型分散前段補償を持つ光送信機を形成してもよい。
【0037】
図7Aは、エルビウム増幅器とともに構成された本発明のWT−DCの例示的設計を示すものである。この構成では、たとえWT−DCデバイス705自身が偏波依存性であってもWT−DC機能が偏波に依存しないようにするために、WT−DC705が偏波ダイバーシティ手法において構成される。この構成において、偏波保持ファイバ(PMF)702及び703がサーキュレータ/偏波分波器(CPS)701に公知のやり方で接続(スプライス)される。動作については、サーキュレータによって受信された入力光信号700が偏波分波器に分波され、PMF702を介してWT−DC705に結合される。WT−DC705からの分散補償された光信号は、偏波分波器及びサーキュレータへのPMF703を介してエルビウム増幅器710に結合される。サーキュレータ/偏波分波器(CPS)701によってエルビウム増幅器710における入力信号アイソレータ711が必要でなくなる。従って、エルビウム増幅器710は、エルビウムファイバ出力アイソレータ713、並びに順方向ポンプ及び結合器714又は逆方向ポンプ及び結合器715のいずれかを含むだけでよい。なお、図1のWT−DC100が(前述で参照される出願で記載されたように)3つのMZIステージだけで実施される場合、それ自身の偏波非依存性によって比較的簡単に構成され、それゆえPMF702及び703並びにサーキュレータ/偏波分波器(CPS)701を用いる偏波ダイバーシティ手法は必要とはならない。
【0038】
図7Bは、エルビウム増幅器710とともに構成された偏波非依存性の反射型の(前記で参照される出願で記載されたような)WT−DC751を示すものである。サーキュレータ750を用いて、入力光信号700をWT−DC751に結合し、分散補償された光信号をエルビウム増幅器710に結合する。
【0039】
当業者であれば本発明の様々な変更例を想到するであろう。それでもなお、発明の原理に基本的に従うこの明細書の具体的な教示から逸れたもの、及びそれによって技術が洗練された同等物は、明細書及び特許請求の範囲に記載された発明の範囲内のものとみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は本発明による波長追従型の分散補償器(WT−DC)を示す図である。
【図2A】図2Aは温度依存型波長モニタのいくつかの動作特性を示す図である。
【図2B】図2Bは温度依存型波長モニタのいくつかの動作特性を示す図である。
【図3】図3は、複数波WT−DC構成について、波長に対する分散の変化をWT−DCのフリースペクトルレンジに亘ってプロットした図である。
【図4】図4はWT−DCの一実施例の断面図である。
【図5】図5は、図1のWT−DCの小型プレーナ導波路のレイアウトを示す図である。
【図6A】図6Aは、例示的光伝送システムにおける本発明のWT−DCの使用を示す図である。
【図6B】図6Bは、例示的光伝送システムにおける本発明のWT−DCの使用を示す図である。
【図7A】図7Aは、エルビウム増幅器とともに構成された本発明の波長追従型DCを示す図である。
【図7B】図7Bは、エルビウム増幅器とともに構成された本発明の波長追従型DCを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
100.WT−DC
101.タップ、
102.光出力
110.DC
111.半波プレート
120.波長モニタ
121.半波プレート
122.第1の片側部分
123.第2の片側部分
130.差動検出制御回路
131.差動検出器
132.制御回路
133.温度センサー
135.光検出器
136.光検出器
137.減算器
138.制御信号
139.出力信号
140.温度制御器
150.チップ又は基板
213.DC110の中心波長
214.分散帯域幅
401.放熱要素
501.コネクタ
600.第1の場所
601.光送信装置
602.WT−DC
603.光増幅器
604.波長マルチプレクサ
605.光フィルタ
610.光学設備
620.第2の場所
621.ディマルチプレクサ
622.光受信装置
623.増幅器
630.光学設備
640.トランスポンダー装置
700.入力光信号
701.サーキュレータ/偏波分波器(CPS)
702.偏波維持ファイバ(PMF)
703.偏波維持ファイバ(PMF)
705.WT−DC
710.エルビウム増幅器
711.入力信号アイソレータ
713.エルビウムファイバ出力アイソレータ
714.順方向ポンプ及び結合器
715.逆方向ポンプ及び結合器
750.サーキュレータ
751.WT−DC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長追従型分散補償器「WT−DC」であって、
時間に対して変動する波長を持つ入力信号を受信するための、温度依存性の波長特性を持ち基準波長で動作する色分散補償器、
該入力信号を受信して2つの光出力信号を生成するための、温度依存性の波長特性を持ち該分散補償器と同じ基準波長で動作する波長モニタ、
該2つの光出力信号を検出し、該受信入力信号が該分散補償器の該基準波長に対して不整合な場合にそれを示す制御信号を生成するための差動検出制御回路、及び
該制御信号に応答して、該分散補償器及び該波長モニタの該基準波長を変化させて該受信入力信号の波長に整合するように、該分散補償器及び該波長モニタの温度を変化させるための温度制御器
からなるWT−DC。
【請求項2】
請求項1記載のWT−DCにおいて、偏波非依存性を達成するために該分散補償器及び波長モニタ各々が、個別の半波プレートを含み、又は共通の半波プレートを共有するWT−DC。
【請求項3】
請求項1記載のWT−DCにおいて、Nを自然数として、該分散補償器のフリースペクトルレンジ(FSR)が該モニタのFSRのN倍又は1/N倍であるWT−DC。
【請求項4】
請求項1記載のWT−DCであって、さらに
基板の温度を判定する温度センサーからなり、該WT−DCが待機モードにある時、又は入力信号が受信されない時、該差動検出制御回路が該温度センサーからの信号を用いて該温度制御器の温度を決定するWT−DC。
【請求項5】
請求項1記載のWT−DCにおいて、該差動検出制御回路が、
該可変の波長モニタからの該2つの光出力信号を検出し、2つの電気信号を生成するための2つの光検出器、
該2つの電気信号から差動信号を生成して、該差動電気出力信号を出力するための減算器、及び
該差動電気出力信号を受信し、そこから該制御信号を生成するための制御回路
からなるWT−DC。
【請求項6】
波長追従型分散補償器「WT−DC」を動作させる方法であって、
温度依存性の波長特性を持ち、基準波長で動作する色分散補償器において、入力信号を受信するステップ、
温度依存性の波長特性を持ち、該分散補償器と同じ基準波長で動作する波長モニタにおいて、該入力信号を受信して2つの光出力信号を生成するステップ、
該2つの光出力信号を検出し、該受信入力信号の波長が該分散補償器の基準波長に対して不整合な場合にそれを示す制御信号を生成するステップ、及び
該制御信号に応答して、該分散補償器及び該波長モニタの該基準波長を変化させて該受信入力信号の波長に整合するように、該分散補償器及び該波長モニタの温度を変化させるステップ
からなる方法。
【請求項7】
波長追従型分散補償器「WT−DC」であって、
時間に対して変動する波長を持つ入力信号を受信するための、温度依存性の波長特性を持ち基準波長で動作する色分散補償器、
該入力信号を受信するために及び光出力信号を生成するための、温度依存性の波長特性を持ち該分散補償器と同じ基準波長で動作する波長モニタ、
該モニタからの光出力信号を検出し、該受信入力信号が該分散補償器の該基準波長に対して不整合な場合にそれを示す制御信号を生成するための差動検出制御回路、及び
該制御信号に応答して、該分散補償器及び該波長モニタの該基準波長を変化させて該受信入力信号の波長に整合するように、該分散補償器及び該波長モニタの温度を変化させるための温度制御器
からなるWT−DC。
【請求項8】
請求項7記載のWT−DCにおいて、偏波非依存性を達成するために該分散補償器及び波長モニタ各々が、個別の半波プレートを含み、又は共通の半波プレートを共有するWT−DC。
【請求項9】
請求項7記載のWT−DCにおいて、Nを自然数として、該分散補償器のフリースペクトルレンジ(FSR)が該モニタのFSRのN倍又は1/N倍であるWT−DC。
【請求項10】
請求項7記載のWT−DCであって、さらに
基板の温度を判定する温度センサーからなり、該WT−DCが待機モードにある時、又は入力信号が受信されない時、該差動検出制御回路が該温度センサーからの信号を用いて該温度制御器の温度を決定するWT−DC。
【請求項11】
請求項7記載のWT−DCにおいて、該検出制御回路が、該受信入力信号が該入力信号の基準波長に対して不整合な場合にそれを示す制御信号を生成するために、該入力信号のパワーに比例する受信パワーレベル信号及び該検出された光出力信号を用いるWT−DC。
【請求項12】
請求項7記載のWT−DCにおいて、該入力信号が所定の変調方式で変調された波長であり、該検出制御回路がその変調を検出し、それを、該受信入力信号が該入力信号の基準波長に対して不整合な場合にそれを示す制御信号を生成するために用いるWT−DC。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公開番号】特開2006−72354(P2006−72354A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238069(P2005−238069)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(596092698)ルーセント テクノロジーズ インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】