説明

洗浄方法

【課題】固化した油脂分やロジンなどの樹脂分、その他付着物が付着した被洗浄面を簡単な洗浄方法により水系の洗浄液で綺麗に除去可能な洗浄方法を提供する。
【解決手段】印刷配線基板に対してクリーム半田を印刷するために用いたメタル版などの被洗浄面に、植物性油からなる液状の前処理油を塗布した後、アルカリ電解水からなる水系洗浄液で被洗浄面を洗浄する。また、洗浄液と圧縮空気とを噴射ノズル内において混合して、洗浄液を微細粒化しながら、この微細粒化した洗浄液を噴射ノズルから被洗浄面に向けて高速で噴き付けて被洗浄面を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタル版の洗浄に好適に利用可能な洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷配線基板の半田付け部位にクリーム半田を塗着させる方法として、ステンレスやニッケル等からなるメタル版を用いたスクリーン印刷法により、クリーム半田を印刷して塗着させる方法が広く採用されている。ところが、このスクリーン印刷法によりクリーム半田を印刷する場合には、経時変化によりクリーム半田の溶剤が揮散して、クリーム半田が徐々に固化することから、印刷作業を行っているうちに、クリーム半田がメタル版の印刷パターンの穴内面、特に穴の端部内面に固化して堆積し、メタル版が目詰まりを起こして、所望の印刷品質が得られなくなるという問題が発生する。このため、印刷に用いたメタル版は、設定時間毎に洗浄して、穴内面に堆積したクリーム半田の固化物を除去している。
【0003】
メタル版の洗浄装置としては、洗浄ノズルから洗浄液を高圧で噴き付けてメタル版を洗浄する洗浄装置(例えば、特許文献1参照。)や、超音波振動子で洗浄液を振動させながらメタル版を洗浄する洗浄装置(例えば、特許文献2参照。)などが提案されている。
【0004】
しかし、前記特許文献1記載の洗浄方法では、グリコール系もしくはアルコール系の有機溶剤を洗浄ノズルから大量に噴射するためランニングコストが高くなるだけでなく、廃液を産業廃棄物として取り扱わねばならず環境負荷が非常に大きいという問題点があった。また、有機溶剤は強い臭気をともなうため、作業者の身体にかかる負荷も少なくはなく作業環境の改善が望まれている。一方、特許文献2記載の洗浄方法では、使用する洗浄液を大幅に少なくできるが、洗浄液として、特許文献1記載の洗浄方法と同様にグリコール系もしくはアルコール系の有機溶剤を用いる必要があり、やはり廃液を産業廃棄物として取り扱わねばならず環境負荷が大きくなってしまうという問題があった。
【0005】
そこで、本出願人は、上記のような問題を解決するため、特許文献3において、アルカリ性水と圧縮空気とを噴射ノズル内において混合して、アルカリ性水を微細粒化しながら、この微細粒化したアルカリ性水を噴射ノズルからメタル版に向けて高速で噴き付けてメタル版を洗浄するメタル版の洗浄方法を提案した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−71705号公報
【特許文献2】特開2000−107711号公報
【特許文献3】特開2008−297566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、前記特許文献3記載の洗浄方法においても、固化したクリーム半田が印刷パターンの穴内に残留したり、印刷時にスキージとメタル版間に挟まれてメタル版の表面に付着した、所謂潰れ半田がメタル版に残留したりすることがあり、本発明者はその改善策について鋭意検討した。その結果、クリーム半田が印刷パターンの穴内に残留するという洗浄不良に関しては、利用者によっては、メタル版洗浄の前処理として、工業用アルコールを含ませた布でメタル版を払拭する場合があり、そのような前処理を行なうと発生していることを見出した。洗浄不良の発生するメカニズムは、明確ではないが、工業用アルコールを含ませた布でメタル版を払拭する場合において、クリーム半田として吸水性の高いものを使用していると、クリーム半田が工業用アルコール中の水分を吸収して固化し易くなることによるものと思われる。
【0008】
本発明の目的は、固化した油脂分やロジンなどの樹脂分、その他付着物が付着した被洗浄面を簡単な洗浄方法により水系の洗浄液で綺麗に除去可能な洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る洗浄方法は、被洗浄面に液状の前処理油を塗布した後、水系洗浄液で被洗浄面を洗浄するものである。尚、本発明において、水系洗浄液とは、アルカリ性水、イオン交換水、純水などの水を意味する。
【0010】
この洗浄方法によれば、水系洗浄液にて被洗浄面を洗浄する前に、前処理油を被洗浄面に塗布することで、被洗浄面に付着している固化した油脂分やロジンなどの樹脂分、その他付着物を水系洗浄液で綺麗に除去できる。被洗浄面に前処理油を塗布することにより、固化した油脂分やロジンなどの樹脂分、潰れ半田などの付着物を効果的に除去できるメカニズムについては、まだ明確ではないが、固化した油脂分やロジンなどの樹脂分に関しては、水分を吸収するなどして固化している場合であっても、前処理油を塗布することで軟化し、これにより容易に除去できるようになり、また付着物に関しては、付着物と被洗浄面間に前処理油が侵入することで、脱落し易くなったことによるものと推定できる。また、有機溶剤を使用しないで、アルカリ性水などの水系洗浄液で被洗浄面を洗浄するので、洗浄後の廃液は、産業廃棄物として取り扱う必要がなく、環境負荷を著しく低減することができ、また有機溶剤に比べ臭気がないので作業環境も改善することができる。また、アルカリ性水などの水系洗浄液は有機溶剤のように揮発性がないために常時補充する必要がなく、洗浄後も水洗いし、乾燥させるだけでよいのでランニングコストも安価である。
【0011】
ここで、前記被洗浄面が、印刷配線基板に対してクリーム半田を印刷するために用いたメタル版の表面であることが好ましい。本発明では、被洗浄面に、クリーム半田中の半田ボールや樹脂分であるロジンを含むフラックスが付着していたり、付着物として潰れ半田が付着していたりする場合でも、これらを綺麗に除去することができる。ただし、メタル版以外の洗浄に対しても本発明を同様に適用できる。
【0012】
前記前処理油を含ませた布で被洗浄面を拭いて被洗浄面に前処理油を塗布することができる。前処理油は、スプレー塗布などにより塗布することもできるが、前処理油を含ませた布で拭くことで、被洗浄面の全面に対して綺麗に且つ効率的に前処理油を塗布することができる。ただし、布に代えて刷毛やスポンジ等で塗布することも可能である。
【0013】
前記前処理油としては、工業用の潤滑油等を用いることもできるが、廃液が環境に易しいことから植物性油を採用することが好ましい。特に、植物性油のなかでも、安価に入手でき、工業用としても用いられていることから、なたね油を含む植物性油を用いることが好ましい。
【0014】
前記水系洗浄液としてアルカリ性水を用いることができる。アルカリ性水には油脂分を鹸化、分散する能力があるため、洗浄液として好適に利用できる。尚、本発明において、アルカリ性水とは、アルカリ電解水やアルカリ性水溶液やアルカリイオン水などからなるpHが7.5以上の水を意味する。
【0015】
アルカリ性水を洗浄液として用いる場合には、前記洗浄液の水素イオン指数をpH=10.5〜12.0に設定することが好ましい実施の形態である。即ち、pHが高すぎると、金属部分が腐食してしまい、pHが低すぎると長時間の洗浄が必要となり、廃液処理やランニングコストを考えると好ましくないので、pHは10.5以上12.0以下に設定することが好ましい。
【0016】
前記洗浄液と圧縮空気とを噴射ノズル内において混合して、前記洗浄液を微細粒化しながら、この微細粒化した洗浄液を噴射ノズルから被洗浄面に向けて高速で噴き付けて被洗浄面を洗浄することが好ましい実施の形態である。この場合には、噴射ノズル内において洗浄液と圧縮空気とを混合して、洗浄液を微細粒化した状態で、噴射ノズルから被洗浄面に噴き付けて、被洗浄面を効率的に洗浄できる。特に、被洗浄面に形成した微細な穴や隙間等を洗浄する際に、微細粒化した洗浄液をエネルギーロスなく、該穴や隙間に付着した付着物に直接的に衝突させて、該付着物を効果的且つ効率的に除去できる。例えば、メタル版の洗浄において、印刷パターンを通過可能な大きさにまで洗浄液を微細粒化した状態で、噴射ノズルからメタル版に対して噴き付けることで、微細粒化した洗浄液をエネルギーロスなく印刷パターン内部の半田ボールやフラックスに衝突させて、半田ボールやフラックスを効果的且つ効率的に除去することが可能となる。特に、アルカリ性水はイオン交換水や有機溶剤に比べると微細化されやすいという性質を有しており、0.22mm幅や0.14mm幅といった非常に狭い印刷パターンの穴よりも小径に微細粒化できるので、穴内の半田およびフラックスを効率的に除去できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る洗浄方法によれば、水系洗浄液にて被洗浄面を洗浄する前に、前処理油を被洗浄面に塗布することで、被洗浄面に付着している固化した油脂分やロジンなどの樹脂分、その他付着物を水系洗浄液で綺麗に除去できる。また、有機溶剤を使用しないで、アルカリ性水などの水系洗浄液で被洗浄面を洗浄するので、洗浄後の廃液は、産業廃棄物として取り扱う必要がなく、環境負荷を著しく低減することができ、また有機溶剤に比べ臭気がないので作業環境も改善することができる。また、アルカリ性水などの水系洗浄液は有機溶剤のように揮発性がないために常時補充する必要がなく、洗浄後も水洗いし乾燥させるだけでよいのでランニングコストも安価である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】油拭き後、洗浄液をノズルで噴き付けて洗浄した場合における、(a)は洗浄前のメタル版のスリット付近の画像データであり、(b)は洗浄後のメタル版のスリット付近の画像データである。
【図2】乾拭き後、洗浄液をノズルで噴き付けて洗浄した場合における、(a)は洗浄前のメタル版のスリット付近の画像データであり、(b)は洗浄後のメタル版のスリット付近の画像データである。
【図3】油拭き後、洗浄液に浸漬して超音波洗浄した場合における、(a)は洗浄前のメタル版のスリット付近の画像データであり、(b)は洗浄後のメタル版のスリット付近の画像データである。
【図4】乾拭き後、洗浄液に浸漬して超音波洗浄した場合における、(a)は洗浄前のメタル版のスリット付近の画像データであり、(b)は洗浄後のメタル版のスリット付近の画像データである。
【図5】油拭き後、洗浄液をノズルで噴き付けて洗浄した場合における、(a)は洗浄前のメタル版のスリット付近の画像データであり、(b)は洗浄後のメタル版のスリット付近の画像データである。
【図6】油拭き後、洗浄液をノズルで噴き付けて洗浄した場合における、(a)は洗浄前のメタル版の開口付近の画像データであり、(b)は洗浄後のメタル版の開口付近の画像データである。
【図7】油拭き後、洗浄液をノズルで噴き付けて洗浄した場合における、(a)は洗浄前のメタル版表面の画像データであり、(b)は第1回洗浄後のメタル版表面の画像データであり、(c)は第2回洗浄後のメタル版表面の画像データであり、(d)は第3回洗浄後のメタル版表面の画像データであり、(e)は第4回洗浄後のメタル版表面の画像データである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
本発明に係る洗浄方法は、被洗浄面に液状の前処理油を塗布した後、水系洗浄液で被洗浄面を洗浄するものである。
【0020】
被洗浄面としては、各種物品の表面を洗浄することができる。特に、本発明に係る洗浄方法では、固化した油脂分やロジンなどの樹脂分、その他付着物を綺麗に洗浄できるので、これらの付着物が付着した洗浄対象物の洗浄に好適に利用できる。具体的には、印刷配線基板に対してクリーム半田を印刷するために用いたメタル版の洗浄に好適で、このようなメタル版では、クリーム半田のフラックス中に含まれるロジンなどの樹脂分が吸水により固化したり、クリーム半田中の半田が印刷時にスキージでメタル版に押し付けられて潰れ半田が付着物として付着したりするので、これらの除去に好適である。
【0021】
前処理油としては、常温にて液状の油であれば任意の油を採用することができるが、廃液が環境に優しいことから、例えば石油系の潤滑油等よりも植物性油の方が好ましい。植物性油としては、なたね油、大豆油、ごま油、綿実油、サフラワー油、ひまわり油、やし油、パーム核油、とうもろこし油、こめ油、オリーブ油、パーム油などを採用したり、これらの植物性油を任意の割合で配合したりしたものを採用できる。また、これらの植物性油に添加剤を加えた前処理油を採用することもできる。植物性油のみからなる前処理油を用いる場合には、人体への悪影響がないことから、食品機械器具の洗浄に本発明を好適に利用できる。特に、植物性油のなかでも、安価に入手でき、工業用としても用いられ、品質が安定していることから、なたね油を含む植物性油を用いることが好ましい。
【0022】
前処理油の塗布方法としては、スプレー塗布、刷毛やローラによる塗布、織布や不織布による塗布方法を採用することができる。被洗浄面が複雑な3次元形状である場合には、スプレー塗布することが好ましいが、被洗浄面が単純な3次元形状や2次元形状の場合には、刷毛やローラ、織布や不織布などにより塗布することが好ましい。ただし、洗浄対象物を前処理油にドブ漬けして、洗浄対象物の表面に前処理油を塗布することもできる。
【0023】
洗浄液としては、アルカリ性水、イオン交換水、純水などの水系洗浄液を好適に採用できる。アルカリ性水としては、電解補助剤を用いて水道水や軟水又は純水を電気分解して得られるアルカリ電解水(強還元水)や、電解補助材を用いないで水道水や軟水または純水を電気分解して得られるアルカリイオン水や、アルカリ性水溶液などからなるpHが7.5以上の水を採用できるが、アルカリ電解水を用いると、アルカリ電解水の生成時に生成される強酸性水で、洗浄後のアルカリ電解水を中和して、この中和した中和水を循環使用できるので、廃液を極力少なくする上で好ましい。アルカリ電解水としては、水素イオン指数がpH=10.5〜12.0のものを好適に利用できる。即ち、pHが高すぎると、金属部分が腐食してしまい、pHが低すぎると長時間の洗浄が必要となり、廃液処理やランニングコストを考えると好ましくないので、pHは10.5以上12.0以下に設定することが好ましい。このように、水系洗浄液を使用するので、洗浄後の廃液は、産業廃棄物として取り扱う必要がなく、環境負荷を著しく低減することができ、また有機溶剤に比べ臭気がないので作業環境も改善することができる。また、アルカリ性水などの水系洗浄液は有機溶剤のように揮発性がないために常時補充する必要がなく、洗浄後も水洗いし乾燥させるだけでよいのでランニングコストも安価である。
【0024】
洗浄方法としては、超音波洗浄、スプレー洗浄、シャワー洗浄、ジェット洗浄、真空洗浄、脱気洗浄、バレル・揺動ブラシ洗浄、浸漬・噴流バブリング洗浄などの任意の洗浄方法を採用することができる。メタル版を洗浄する場合には、メタル版の表面だけでなく、微細なスリットの内側にもクリーム半田が付着するので、これを効率的に除去するため、例えば洗浄液と圧縮空気とを噴射ノズル内において混合して、洗浄液を微細粒化しながら、この微細粒化した洗浄液を噴射ノズルから被洗浄面に向けて高速で噴き付けて被洗浄面を洗浄するジェット洗浄方法や、洗浄液を充填した超音波洗浄槽内に洗浄対象物を浸漬して、超音波洗浄する洗浄方法を好適に採用できる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
洗浄対象物として、ピッチ0.3で幅0.14mmのQFPパターンの複数本のスリット(図1(a)において細長い長孔状に示された部分)を形成したメタル版を用い、該メタル版にクリーム半田(日本スペリア社製 共晶半田 SN63 RA F M Q 86K)を付着させた。このクリーム半田は、吸水により固化し易く洗浄不良が発生し易いものである。また、洗浄装置としては、エコクリーンMM−7060(中村超硬製)を用い、前処理油としては、日清サラダ油(日清オイリオ製)を用いた。
【0026】
そして、メタル版を洗浄するに当り、先ず、洗浄装置外において、前処理油を含ませた布でメタル版の表面を拭いた。次に、メタル版を洗浄装置にセットしてから、洗浄装置の噴射ノズルを水平方向に往復移動させながら、水系洗浄液としてのアルカリ電解水と空気との混合体を噴射ノズルからメタル版に向けて噴き付けて、洗浄液によりクリーム半田が固化しないように、下側から順番にメタル版を洗浄した。図1はメタル版のスリットを含む要部拡大図で、(a)は洗浄前における要部拡大図、(b)は洗浄後における要部拡大図である。
【0027】
(比較例1)
メタル版の洗浄前に、前処置油を含ませていない布でメタル版の表面を乾拭きした以外は、実施例1と同様の洗浄方法で、メタル版を洗浄した。図2はメタル版のスリットを含む要部拡大図で、(a)は洗浄前における要部拡大図、(b)は洗浄後における要部拡大図である。なお、図1、図2において、クリーム半田は、フラックスを黒色で示し、半田粒子を複数の白い点で示した。
【0028】
図1、図2から、同じ洗浄装置を用いて洗浄する場合であっても、予めメタル版に対して前処理油を塗布しておくと、乾拭きした場合と比較して、メタル版の表面に付着していたクリーム半田が綺麗に除去されていることが分かる。
【0029】
(実施例2)
洗浄対象物として、実施例1と同様にクリーム半田を付着させたメタル版を用いた。洗浄装置として、超音波洗浄機(UT105:シャープマニファクチャリング社製)を用い、この洗浄装置の洗浄槽に、実施例1で使用したものと同じアルカリ電解水を水系洗浄液として充填した。また、前処理油としては、日清サラダ油(日清オイリオ製)を用いた。
【0030】
そして、メタル版を洗浄するに当り、先ず、洗浄装置外において、前処理油を含ませた布でメタル版の表面を払拭し、次に洗浄装置の洗浄槽にメタル版を浸漬して、5分間の超音波洗浄を行なった。図3はメタル版のスリットを含む要部拡大図で、(a)は洗浄前における要部拡大図、(b)は洗浄後における要部拡大図である。
【0031】
(比較例2)
メタル版の洗浄前に、前処置油を塗布しない布でメタル版の表面を乾拭きした以外は、実施例2と同様の洗浄方法で、メタル版を洗浄した。図4はメタル版のスリットを含む要部拡大図で、(a)は洗浄前における要部拡大図、(b)は洗浄後における要部拡大図である。なお、図3、図4において、クリーム半田は、フラックスを黒色で示し、半田粒子を複数の白い点で示した。
【0032】
図3、図4から、同じ超音波洗浄装置を用いて洗浄する場合であっても、予めメタル版に対して前処理油を塗布しておくと、乾拭きした場合と比較して、メタル版の表面に付着していたクリーム半田が綺麗に除去されていることが分かる。また、図1〜図4から、噴射ノズルから洗浄液と空気の混合体を噴射させる洗浄方法と、メタル版を洗浄液に浸漬させた状態で行う超音波洗浄方法とでは、前者の洗浄方法の方が、クリーム半田の洗浄残りを防止して綺麗に洗浄できることが分かる。
【0033】
(実施例3、4)
洗浄対象物として、メタル版に半田粒子を押し付けることによって、潰れ半田からなる付着物を付着させたメタル版を用いた。実施例3では、図5(a)に示すように、図中丸で囲んだ、メタル版の表面に、1粒の半田粒子を押し付けることによって、潰れ半田からなる付着物を付着させた。実施例4では、図6(a)に示すように、図中丸で囲んだ、メタル版表面の開口(黒色で図示)に跨った位置に、1粒の半田粒子を押し付けることによって、潰れ半田からなる付着物を付着させた。
【0034】
また、洗浄装置としては、エコクリーンMM−7060(中村超硬製)を用い、前処理油としては、日清サラダ油(日清オイリオ製)を用いた。
【0035】
そして、メタル版を洗浄するに当り、先ず、洗浄装置外において、前処理油を含ませた布でメタル版の表面を拭いた。次に、メタル版を洗浄装置にセットしてから、洗浄装置の噴射ノズルを水平方向に往復移動させながら、水系洗浄液としてのアルカリ電解水と空気との混合体を噴射ノズルからメタル版に向けて噴き付けて、下側から順番にメタル版を洗浄した。図5はメタル版のスリットを含む要部拡大図で、(a)は洗浄前における要部拡大図、(b)は洗浄後における要部拡大図である。また、図6はメタル版表面の要部拡大図で、(a)は洗浄前における要部拡大図、(b)は洗浄後における要部拡大図である。
【0036】
図5、図6から、予めメタル版に対して前処理油を塗布しておくと、メタル版の表面に潰れ半田からなる付着物が付着していても綺麗に除去できることが分かる。なお、図示していないが、メタル版の洗浄前に、前処置油を塗布しない布でメタル版の表面を乾拭きした以外は、実施例3、4と同様の洗浄方法で、メタル版を洗浄した比較例についても洗浄試験を行なったが、この場合には潰れ半田を除去できなかった。
【0037】
(実施例5)
洗浄対象物として、図7(a)に示すように、メタル版表面に隣接配置させて複数粒の半田粒子を押し付けることによって、連続する潰れ半田からなる付着物を付着させたメタル版を用いた。それ以外は、実施例3、4と同様の洗浄方法で、同一メタル版について4回の洗浄処理を行なった。図7はメタル版の表面の要部拡大図で、(a)は洗浄前における要部拡大図、(b)は第1回目の洗浄後における要部拡大図で、(c)は第2回目の洗浄後における要部拡大図で、(d)は第3回目の洗浄後における要部拡大図で、(e)は第4回目の洗浄後における要部拡大図である。
【0038】
図7から、予めメタル版に対して前処理油を塗布しておくと、メタル版の表面に複数の潰れ半田が連なって付着している場合でも、複数回の洗浄を行なうことで、段階的に潰れ半田を除去できることが分かる。なお、図示していないが、メタル版の洗浄前に、前処置油を塗布しない布でメタル版の表面を乾拭きした以外は、実施例5と同様の洗浄方法で、メタル版を洗浄した比較例についても試験を行なったが、この場合には潰れ半田を除去できなかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄面に液状の前処理油を塗布した後、水系洗浄液で被洗浄面を洗浄することを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
前記被洗浄面が、印刷配線基板に対してクリーム半田を印刷するために用いたメタル版の表面である請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記前処理油を含ませた布で被洗浄面を拭いて被洗浄面に前処理油を塗布する請求項1又は2記載の清掃方法。
【請求項4】
前記前処理油が植物性油である請求項1〜3のいずれか1項記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記植物性油がなたね油を含む請求項4記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記水系洗浄液としてアルカリ性水を用いた請求項1〜5のいずれか1項記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記洗浄液の水素イオン指数をpH=10.5〜12.0に設定した請求項6記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記洗浄液と圧縮空気とを噴射ノズル内において混合して、前記洗浄液を微細粒化しながら、この微細粒化した洗浄液を噴射ノズルから被洗浄面に向けて高速で噴き付けて被洗浄面を洗浄する請求項1〜7のいずれか1項記載の洗浄方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−207768(P2010−207768A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59349(P2009−59349)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(302018053)株式会社中村超硬 (16)
【Fターム(参考)】