説明

洗浄装置、排気再生設備及び溶液製膜方法

【課題】排気に含有の化合物を凝縮させる排気冷却コイルの洗浄を効率よく行う。
【解決手段】排気40aが流通する横設ダクト45には排気冷却コイル47cが配される。排気冷却コイル47cは排気40aの流れ方向に並べられる。添加剤洗浄装置48は、上流側供給機71と下流側供給機72と中間供給機73とを有する。上流側供給機71は最上流側冷却コイル47cuの上流側に洗浄液65を噴射する。下流側供給機72は最下流側冷却コイル47cdの下流側に洗浄液65を噴射する。中間供給機73は、横設ダクト45の天井部45uから、排気冷却コイル47cの隙間に向けて洗浄液65を噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気に含有の化合物を凝縮させる排気冷却コイルを洗浄するための洗浄装置、この洗浄装置を備えた排気再生設備、及び溶液製膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマーフィルム(以下「フィルム」とする)は、優れた光透過性や柔軟性を有し、軽量薄膜化が可能であることから、光学機能性フィルムとして多岐に利用されている。この中でも、セルロースアシレート等を用いたセルロースエステル系フィルムは、前述の特性に加えて、さらに強靭性や低複屈折率を有している。このセルロースエステル系フィルムは、近年市場が拡大している液晶表示装置(LCD)の構成部材である偏光板の保護フィルムや光学補償フィルムとして利用されている。
【0003】
このフィルムの製造方法として溶液製膜方法がある。溶液製膜方法では、溶剤、添加剤及びポリマーが含まれるドープを支持体に流出し、ドープからなる流延膜を支持体上に形成する膜形成工程と、流延膜または支持体から剥ぎ取った流延膜(以下、湿潤フィルムと称する)から溶剤を蒸発させる前乾燥工程と、溶剤をほとんど含まないものとなったフィルムから溶剤を蒸発させる後乾燥工程とが行われる。
【0004】
前乾燥工程や後乾燥工程の排気には溶剤が含まれるため、排気を外部へ放出できない。そこで、排気から溶剤を回収するための装置が別途必要になる。排気に含まれる溶剤の回収方法として、凝縮回収方法と吸着方法とが知られている。凝縮回収方法は、溶剤含有の排気を冷却することにより、溶剤の凝縮を生じさせ、溶剤と残りの気体と分離する方法であり、溶剤の含有量が大きい排気に適している。一方、吸着方法では、排気を溶剤の吸着剤に接触させて、溶剤と残りの気体とを分離する方法であり、溶剤の含有量が小さい排気に適している。したがって、前乾燥工程の排気から溶剤を回収する場合には、凝縮回収方法が用いられ(例えば、特許文献1)、後乾燥工程の排気から溶剤を回収する場合には、吸着方法が用いられていた(例えば、特許文献2)。
【0005】
凝縮回収方法を行う溶剤回収装置の概要を説明する。溶剤回収装置は、前乾燥工程の排気が導入されるダクトを備える。ダクトは、前乾燥工程の排気を処理できる程度の大きさとされ、排気流路の断面寸法は、例えば、縦2〜3m、横2m〜3mである。このため、耐震上の要請から、通常水平方向へ延設される。ダクト内には、ヒートパイプ式熱交換器(以下、熱交換器と称する)の冷却部と溶剤凝縮機と熱交換器の加熱部とが、排気の流れ方向上流側から下流側に向かって順次配される。ダクト内に導入された排気は、冷却部との接触により冷却された後、冷媒が流通する冷却管を備える溶剤凝縮機へ送られる。溶剤凝縮機へ送られた排気は、冷却管との接触により冷却され、排気から溶剤が凝縮する。凝縮した溶剤は、冷却管から落下して回収される。溶剤と共に凝縮した添加剤は、冷却管に付着し残ってしまう。このため、冷却管に残ってしまった添加剤を洗い流すために、溶液製膜設備の運転を一旦停止して、溶剤を冷却管に吹き付ける洗浄作業を定期的に行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−794号公報
【特許文献2】特開2008−162278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、冷却管よりも上流側に設けられた熱交換器の冷却部において、凝縮した添加剤が残留するようになった。これは、以下の(1)〜(3)により、排気の冷却により、添加剤の凝縮が起こりやすくなったものと考えられる。
(1)製造しようとするフィルムの光学特性の向上により、ドープに含まれる添加剤の量が増大したこと
(2)溶剤とともに流延膜や湿潤フィルムから蒸発する添加剤の量が、支持体の移動速度の高速化により増大したこと
(3)溶剤とともに流延膜や湿潤フィルムから蒸発する添加剤の量が、製造目的とするフィルムの厚みが薄くなったことと伴い、増大したこと
【0008】
冷却部に添加剤が残留すると、目詰まりを起こしやすい。そして、この目詰まりにより、冷却部の冷却能力及びダクトにおける風量は低下してしまう。このため、熱交換器の定期的な洗浄が必要になる。熱交換器の洗浄を行う場合、冷却管の洗浄の場合と同様に、溶液製膜設備の運転を停止しなければならない。また、熱交換器の洗浄作業の間、溶液製膜設備の運転を継続する場合には、その間に製造されるフィルムは製品として利用できないため、破棄せざるを得ない。
【0009】
さらに、冷却部に洗浄風をあてながら冷却部の洗浄風の流れ方向の上流側及び下流側へ溶剤をあてて添加剤を洗い流す洗浄作業を行っても、冷却部には未だ多量の添加剤が残留してしまう。そして、多量の添加剤が残留する冷却部は、目詰まりが再発しやすくなる。
【0010】
発明者の鋭意検討の結果、洗浄作業が行われた冷却部の洗浄風の流れ方向中央部には、未だ多量の添加剤が残留することを突き止めた。更に、入り組んだ構造に起因して冷却部の洗浄風の流れ方向中央部には溶剤が行き届かないこと、及び、洗浄風の流れ方向における冷却部の長さが長くなると、流れ方向中央部に添加剤が残留しやすい傾向が強くなることを突き止めた。
【0011】
本発明は、排気に含有の化合物を凝縮させる排気冷却コイルを洗浄するための洗浄装置を提供することを目的とする。また、本発明は、流延膜や湿潤フィルム(これらを総称してウェブと称する)から溶剤を蒸発させる前乾燥工程の排気から乾燥風を再生することのできる排気再生設備を提供することを目的とする。更に、本発明は、効率よく連続的にフィルムを製造することのできる溶液製膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、処理室の排気が通る横設ダクト内を前記排気の流れ方向上流側及び下流側に仕切るように配された排気冷却コイルユニットを洗浄するための洗浄装置において、前記排気冷却コイルユニットにあてるための洗浄風を前記横設ダクト内へ通す送風機と、前記排気冷却コイルユニットに洗浄液をあてる洗浄液供給ユニットとを有し、前記洗浄液供給ユニットは、前記排気冷却コイルユニットの前記洗浄風の流れ方向上流側に前記洗浄液をあてる上流側ノズルと、前記排気冷却コイルユニットの前記洗浄風の流れ方向下流側に前記洗浄液をあてる下流側ノズルと、前記横設ダクトの天井部に設けられ、前記排気冷却コイルユニットをなし前記洗浄風の流れ方向に並ぶ冷却コイルの間に開口する中間ノズルとを備えたことを特徴とする。
【0013】
前記中間ノズルは前記天井部から突出する突出位置と前記突出位置から退避した退避位置との間で移動自在に設けられたことが好ましい。また、前記洗浄風は前記排気であることが好ましい。更に、前記排気冷却コイルユニットによる前記排気の温度低下量が10℃以上であることが好ましい。
【0014】
前記処理室の排気は、溶剤及び前記溶剤よりも高凝縮点の添加剤を含む樹脂成形物から前記溶剤が蒸発させる乾燥室の排気であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の排気再生設備は、上記の洗浄装置と、前記排気冷却コイルユニットと、前記横設ダクト及び前記処理室を接続し、前記溶剤及び前記添加剤が取り出された前記排気を再生気体として前記処理室へ戻す戻りダクトとを有することを特徴とする。
【0016】
前記排気冷却コイルユニットは、前記乾燥室の排気から前記添加剤を取り出す添加剤凝縮コイルを備えることが好ましい。また、前記排気冷却コイルユニットは、前記添加剤凝縮コイルよりも前記排気の流れ方向下流側に配され、前記添加剤を取り出された前記排気から前記溶剤を取り出す溶剤凝縮コイルを備えたことガ好ましい。更に、前記溶剤及び前記添加剤が取り出された前記排気を加熱する加熱機が、前記戻りダクト内に配されたことが好ましい。加えて、前記加熱機と前記添加剤凝縮コイルとにより熱交換器が構成されたことが好ましい。
【0017】
更に、本発明の溶液製膜方法は、ポリマー、前記溶剤及び前記添加剤を含むドープを支持体に向けて流出し、前記ドープからなる流延膜を前記支持体上に形成する膜形成工程と、前記流延膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、前記支持体から前記流延膜を剥ぎ取って湿潤フィルムとする剥ぎ取り工程と、前記湿潤フィルムから前記溶剤を蒸発させてフィルムとする湿潤フィルム乾燥工程とを有し、前記膜形成工程または前記湿潤フィルム乾燥工程の少なくとも一方が行われる前記乾燥室に上記の排気再生設備が接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の洗浄装置によれば、排気冷却コイルユニットの洗浄風の流れ方向上流側に洗浄液をあてる上流側ノズルと、排流れ方向下流側に洗浄液をあてる下流側ノズルと、横設ダクトの天井部に設けられ、流れ方向に並び排気冷却ユニットをなす冷却コイルの間に開口する中間ノズルとを備えたため、上流側ノズル及び下流側ノズルのみでは洗浄が困難であった排気冷却コイルユニットの中間部分へ、洗浄液を供給することができる。したがって、本発明によれば、1回の洗浄によって回復する排気冷却コイルユニットの冷却能力及びダクトにおける風量を増大させることができる。
【0019】
上述の効果は中間ノズルの追加により得られるため、既存の設備の改造に適している。
【0020】
本発明の排気再生設備によれば、排気冷却コイルユニットの洗浄頻度を抑えることが可能となる。したがって、本発明の溶液製膜方法によれば、品質の良いフィルムを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の溶液製膜設備及び排気再生設備の概要を示す側面図である。
【図2】排気再生設備の概要を示す平面図である。
【図3】排気冷却コイルの概要を示す斜視図である。
【図4】排気冷却コイルの概要を示すA−A線断面図である。
【図5】突出位置にある中間ノズルの概要を示すA−A線断面図である。
【図6】添加剤洗浄工程における添加剤洗浄装置の概要を示すA−A線断面図である。
【図7】第2の溶液製膜設備及び排気再生設備の概要を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(溶液製膜設備)
図1に示すように、溶液製膜設備10は、ポリマー14、添加剤15及び溶剤16を含むドープ17からフィルム18を製造するものであり、流延室21とテンタ室22と乾燥室23とを有する。流延室21は、水平軸を有する回転ドラム25と、回転ドラム25の周面に向けてドープ17を連続的に流出し、ドープ17からなる流延膜26を回転ドラム25の周面に形成するダイ27と、自立して搬送可能となった流延膜26を回転ドラム25の周面から剥ぎ取る剥ぎ取りローラ28とを有する。こうして、流延室21では、ドープ17からなる流延膜26を、回転ドラム25の周面上に形成する膜形成工程と、回転ドラム25の周面から流延膜26を剥ぎ取る剥ぎ取り工程とが行われる。
【0023】
回転ドラム25から剥ぎ取られた流延膜26は、湿潤フィルム29としてテンタ室22へ案内される。テンタ室22では、ピンを用いて湿潤フィルム29の耳部を貫通し、耳部を貫通したピンを移動させることで、湿潤フィルム29を搬送する。テンタ室22内の雰囲気における溶剤16の濃度が低く抑えられているため、テンタ室22では湿潤フィルム29から溶剤16が蒸発する。湿潤フィルム29から溶剤16を蒸発させる湿潤フィルム乾燥工程により、フィルム18を得ることができる。フィルム18は、テンタ室22から、乾燥室23へ送られる。
【0024】
乾燥気体で満たされた乾燥室23では、フィルム18がローラ32により搬送される。乾燥気体とフィルム18とを接触させることにより、フィルム18から溶剤16を蒸発させるフィルム乾燥工程が行われる。乾燥室23から送り出されたフィルム18は、巻取り装置により巻き芯に巻き取られる。
【0025】
(排気再生設備)
排気再生設備35は、テンタ室22の排気40aから添加剤15及び溶剤16を取り出して再生気体40bをつくった後、再生気体40bをテンタ室22へ戻すものである。テンタ室22と排気再生設備35との間には、テンタ室22からの排気40aを排気再生設備35へ送る送り配管37aと、排気再生設備35からの再生気体40bをテンタ室22へ戻す戻り配管37bとが設けられる。
【0026】
(排気再生設備)
図2に示すように、排気再生設備35は、横設ダクト45と、戻りダクト46と、熱交換器47と、添加剤洗浄装置48と、溶剤凝縮機49と、溶剤洗浄装置50とを有する。
【0027】
送り配管37aの一端は略水平方向へ延設される横設ダクト45の入口45iに開口し、送り配管37aの他端はテンタ室22に開口する。略水平方向へ延設される戻りダクト46の入口46iは、横設ダクト45の出口45oと接続する。戻り配管37bの一端は、戻りダクト46の出口46oに開口し、戻り配管37bの他端はテンタ室22に開口する。
【0028】
図2及び図3に示すように、熱交換器47は、ヒートパイプ60とフィン61とを有する。ヒートパイプ60は、横設ダクト45及び戻りダクト46を貫通する。ヒートパイプ60の一方の端部60cは横設ダクト45に露出し、ヒートパイプ60の他方の端部60hは戻りダクト46に露出する。ヒートパイプ60は、水平方向及び垂直方向にそれぞれ所定のピッチ(例えば、50mm)で並べられる。ヒートパイプ60の外径は、例えば、20mm〜30mm程度である。このように並ぶ複数のヒートパイプ60により、ガスが通過する面が熱交換器47に形成される。ガスが通過する面(以下、ガス通過面と称する)が排気40aの流れ方向に対して直交することが好ましい。図示する熱交換器47のガス通過面47gは、排気40aの流れ方向に直交する方向である(図4参照)。
【0029】
ヒートパイプ60には、一方の端部60cから他方の端部60hに向かって延設された中空部が形成される。中空部には差動流体(水、アルコール等)が封入される。冷却機能を発揮するヒートパイプ60の一方の端部60cは、加熱機能を発揮する当該ヒートパイプ60の他方の端部60hよりも高いことが好ましい。ヒートパイプ60の端部60cと接触するガスが、端部60cにある差動流体よりも高温である場合、差動流体は、ガスからの熱エネルギーを受け取り、ヒートパイプ60の端部60hへ向かって移動する。そして、ヒートパイプ60の端部60hと接触するガスが、端部60hにある差動流体よりも低温である場合には、端部60hと接触するガスは、差動流体からの熱エネルギーを受け取る。このように、ヒートパイプ60の端部60cと接触するガスと、ヒートパイプ60の端部60hと接触するガスとの温度差を利用して、端部60cに接触するガスの熱エネルギーを、端部60hに接触するガスへ伝えることができる。また、端部60cに接触する際のガスと端部60hに接触する際のガスとの温度差は、溶剤凝縮機49により生み出すことができる。
【0030】
フィン61は、端部60c及び端部60hにそれぞれ設けられる。フィン61は、排気40aの流れ方向と略平行となるように、所定のピッチ(例えば、1mm〜3mm)で並ぶ。排気冷却コイル47cは、端部60cと端部60cに設けられたフィン61とからなる。加熱機47hは、端部60hと端部60hに設けられたフィン61とからなる。排気冷却コイル47cは、横設ダクト45内を排気40aの流れ方向上流側及び下流側に仕切るように配される。同様に、加熱機47hは、横設ダクト45内を排気40aの流れ方向上流側及び下流側に仕切るように配される。
【0031】
熱交換器47は複数並べられる。したがって、横設ダクト45においては、排気冷却コイル47cが排気40aの流れ方向へ並べられ、戻りダクト46においては、加熱機47hが排気40aの流れ方向へ並べられる。排気40aの流れ方向に並ぶ複数の排気冷却コイル47cは、排気冷却コイルユニットをなす。
【0032】
このように、排気冷却コイル47cが排気40aの流れ方向へ並べることにより、排気冷却コイル47cにおける排気40aの温度の降下量ΔTを増大することができる。例えば、排気40aの温度の降下量ΔTが10℃以上の場合は、排気冷却コイル47cが排気40aの流れ方向へ並べたほうが良い。
【0033】
図2に戻って、溶剤凝縮機49は、横設ダクト45において、排気冷却コイル47cよりも排気40aの流れ方向下流側に設けられる。溶剤凝縮機49は、横設ダクト45内を排気40aの流れ方向上流側及び下流側に仕切るように配される。
【0034】
溶剤凝縮機49は、伝熱媒体が流通する冷却管49aと温調機49bとフィン49cとを備える。横設ダクト45を横切るように設けられた冷却管49aは所定のピッチで並べられる。温調機49bは、冷却管49aから送り出された伝熱媒体を回収し、回収した伝熱媒体を所定の温度に調節した後、冷却管49aに戻す。フィン49cは排気40aの流れ方向と略平行となるように、所定のピッチ(例えば、1mm〜3mm)で並ぶ。伝熱媒体の温度は、以下の(条件1)〜(条件2)を満たすように調節されることが好ましい。(条件1)により、冷却管49aと接触した排気40aから溶剤16が凝縮する。また、(条件2)により、排気冷却コイル47cと接触した排気40aから添加剤15が凝縮する。
(条件1)冷却管49aに接触した排気40aの温度が、溶剤16の凝縮点よりも低いこと。
(条件2)冷却管49aに接触した排気40aと加熱機47hとの接触を経由して、排気冷却コイル47cにおける差動流体が添加剤15の凝縮点よりも低いこと。
【0035】
なお、上記(条件2)は、冷却管49aに接触した排気40aと加熱機47hとの接触を介して、排気冷却コイル47cにおける差動流体が、溶剤16の凝縮点よりも高く、添加剤15の凝縮点よりも低い、であってもよい。
【0036】
ここで、任意のガスに含まれる物質の凝縮点は、当該ガスにおける当該物質の蒸気圧が飽和蒸気圧と等しくなる温度をいう。
【0037】
図4に示すように、添加剤洗浄装置48は、所定の洗浄液65を排気冷却コイル47cにあてる洗浄液供給ユニット67と、洗浄風としての排気40aを排気冷却コイル47cにあてるブロワ68(図2参照)とを有する。
【0038】
洗浄液供給ユニット67は、上流側供給機71と、下流側供給機72と、中間供給機73とを有する。
【0039】
上流側供給機71は、洗浄液65が流通する洗浄管71aと、洗浄管71aに設けられたポンプ71bと、洗浄管71aを通った洗浄液65を送り出す上流側ノズル71cとが設けられる。洗浄管71aは、洗浄液65が貯留するタンク75に接続する。上流側ノズル71cは、横設ダクト45に配された排気冷却コイル47cのうち最も上流側のもの(以下、最上流側冷却コイルと称する)47cuよりも上流側に設けられる。上流側ノズル71cは、流出した洗浄液65が最上流側冷却コイル47cuのガス通過面47g全域にいきわたるように、縦方向及び横方向へ並べられることが好ましい。
【0040】
下流側供給機72は、洗浄液65が流通する洗浄管72aと、洗浄管72aに設けられたポンプ72bと、洗浄管72aを通った洗浄液65を送り出す下流側ノズル72cとが設けられる。洗浄管72aは、洗浄液65が貯留するタンク75に接続する。下流側ノズル72cは、横設ダクト45に配された排気冷却コイル47cのうち最も下流側のもの(以下、最上流側凝縮機)47cdよりも下流側に設けられる。下流側ノズル72cは、流出した洗浄液65が最下流側冷却コイル47cdのガス通過面47g全域にいきわたるように、縦方向及び横方向へ並べられることが好ましい。
【0041】
図4に示すように、中間供給機73は、洗浄液65が流通する洗浄管73aと、洗浄管73aに設けられたポンプ73bと、洗浄管73aを通った洗浄液65を送り出す中間ノズル73cとが設けられる。洗浄管73aの一端は洗浄液65が貯留するタンク75に接続する。洗浄管73aの他端には中間ノズル73cが設けられる。中間ノズル73cは、洗浄液65が流出する流出口を有する。横設ダクト45の天井部45uに設けられた中間ノズル73cは、横設ダクト45にて排気40aの流れ方向へ並ぶ排気冷却コイル47cの間に流出口が開口するように配される。また、図3に示すように、中間ノズル73cは、横方向へ並べられる。
【0042】
なお、中間ノズル73cを排気40aの流れ方向に複数段設けても良い。
【0043】
なお、洗浄管73aは、中間ノズル73cが天井部45uの流路面から突出する突出位置(図5参照)と、中間ノズル73cが突出位置から退避した退避位置(図4参照)との間で移動自在に設けられることが好ましい。退避位置は、天井部45uの内面と、中間ノズル73cの流出口とが面一となる位置であることが好ましい。そして、洗浄管73aを突出位置及び退避位置の間で洗浄管73aを移動させるシフト部73sを、中間供給機73に設けることが好ましい。
【0044】
各ノズル71c〜73cから流出する洗浄液65は、残留する添加剤15の溶解作用や、洗い流し効果を考慮すると、霧状よりも滴状であることが好ましい。また、各ノズル71c〜73cを用いて、洗浄液65を連続的に流出させても良い。
【0045】
洗浄液65は、排気冷却コイル47cに付着した添加剤15を洗い流すことができるものであれば良い、特に、添加剤15が溶解するものであることが好ましい。洗浄液65は、例えば、溶剤16と同一成分、または溶剤16と共通する成分であることが好ましい。
【0046】
横設ダクト45の底部45bには、回収孔81が設けられる。回収孔81の設置位置は、最上流側冷却コイル47cuの上流側や、最下流側冷却コイル47cdの下流側や、排気冷却コイル47cの間など、目的に応じて適宜決定すればよい。回収孔81は、添加剤回収タンク(図示しない)と接続する。
【0047】
図2に示すように、送風機であるブロワ68は、戻り配管37bに設けられる。ブロワ68は、戻りダクト46からの再生気体40bをテンタ室22へ送り出す。再生気体40bの送り出しにより、テンタ室22内の雰囲気の一部が排気40aとして、横設ダクト45へ送り出される。
【0048】
溶剤洗浄装置50は、溶剤凝縮機49の上流側及び下流側のそれぞれに設けられる。溶剤洗浄装置50は、洗浄液が流通する洗浄管と、洗浄管に設けられたポンプと、洗浄管を通った洗浄液を送り出すノズルとが設けられる。洗浄液を流出するノズルは、流出した洗浄液が冷却管49a全域にいきわたるように配されることが好ましい。洗浄液としては、冷却管49aに付着した溶剤16を洗い流すことができるものであれば良い。回収後の再利用を考慮すると、溶剤16と同一成分、または溶剤16と共通する成分であることが好ましい。
【0049】
戻り配管37bには、ヒータ85とフィルタ86とが設けられる。ヒータ85は、ブロワ68よりも戻りダクト46側に設けられ、フィルタ86はブロワ68よりもテンタ室22側に設けられる。ヒータ85は排気再生設備35から送り出された再生気体40bを加熱する。フィルタ86は、再生気体40bに含まれる塵などの異物を取り除く。
【0050】
次に、本発明の作用を説明する。図1に示すように、溶液製膜設備10の運転を開始すると、図示しない駆動部により回転ドラム25が回転する。回転ドラム25の周面の速度は、40m/分以上であることが好ましい。
【0051】
ダイ27は、所定の温度範囲に調節されたドープ17を、回転ドラム25に向けて流出する。流出したドープ17により、回転ドラム25の周面上には帯状の流延膜26が形成する。図示しない温調機により、回転ドラム25の温度が−20℃以上10℃以下の範囲内となるように調節されるため、流延膜26は冷却される。回転ドラム25による冷却により、流延膜26をなすドープ17は、ゲル状となる結果、流延膜26は自立して搬送可能な状態となる。
【0052】
その後、剥ぎ取りローラ28は、搬送可能となった流延膜26を回転ドラム25から剥ぎ取り、湿潤フィルム29としてテンタ室22へ案内する。流延膜26の剥ぎ取りタイミングは、含有溶剤量が200質量%以上300質量%以下であることが好ましい。なお、本発明では、流延膜や各フィルム中に残留する溶剤量を乾量基準で示したものを含有溶剤量とする。また、その測定方法は、対象のフィルムからサンプルを採取し、このサンプルの重量をx、サンプルを乾燥した後の重量をyとするとき、{(x−y)/y}×100で算出する。
【0053】
テンタ室22では、乾燥風が湿潤フィルム29にあてられ、湿潤フィルム29から溶剤16が蒸発する。乾燥風との接触により湿潤フィルム29の温度が高温となると、溶剤16の蒸発と共に、添加剤15も蒸発する。
【0054】
溶液製膜設備10の運転中、図2に示す排気再生設備35では排気再生工程が行われる。図示しない制御部により、ブロワ68が運転すると、テンタ室22からの排気40aは、送り配管37aを通じて、排気再生設備35へ送られる。
【0055】
(排気回収工程)
排気再生設備35では、排気40aから添加剤15及び溶剤16を取り出して、再生気体40bをつくる排気回収工程が行われる。排気回収工程では、添加剤凝縮工程と溶剤凝縮工程とが行われる。
【0056】
(添加剤凝縮工程)
横設ダクト45へ送られた排気40aは、入口45iから出口45oに向かって流れる。排気冷却コイル47cと接触した排気40aは冷却される。冷却の結果、排気40aの温度は添加剤15の凝縮点よりも低くなる。この冷却により、排気40aから添加剤15が凝縮する。こうして、排気冷却コイル47cは、添加剤15の凝縮により、排気40aから添加剤15を取り出す添加剤凝縮工程を行う。
【0057】
なお、排気40aと排気冷却コイル47cとの接触による冷却の結果、排気40aの温度は、添加剤15の凝縮点よりも低く、かつ、溶剤16の凝縮点よりも高い温度範囲となる場合、排気40aから添加剤15のみが凝縮することとなる。係る場合であっても、本発明の適用は可能である。
【0058】
(溶剤凝縮工程)
添加剤15が取り出された排気40aは、溶剤凝縮機49へ送られる。溶剤凝縮機49と接触した排気40aは、添加剤15の凝縮点よりも低い温度となるまで冷却される。この冷却により、排気40aから溶剤16が凝縮する。こうして、溶剤凝縮機49は、溶剤16の凝縮により、排気40aから溶剤16を取り出す溶剤凝縮工程を行う。なお、溶剤凝縮工程では、排気40aから溶剤16を凝縮するとともに、排気40aに残留する添加剤15を凝縮させても良い。
【0059】
添加剤15及び溶剤16が取り出された排気40aは、再生気体40bとなる。再生気体40bは加熱機47hによって加熱され、戻り配管37bを通って、テンタ室12へ戻される。戻り配管37bでは、ヒータ85により、再生気体40bが所定の温度となるまで加熱される。
【0060】
この回収工程により、テンタ室22の雰囲気における溶剤16の濃度を低く抑えることができるため、テンタ室22において、湿潤フィルム29から溶剤16を効率よく蒸発させることができる。
【0061】
ところで、溶剤凝縮工程において添加剤15が凝縮した場合、凝縮した添加剤15は冷却管49aに付着する。溶剤凝縮工程においては、溶剤16も凝縮するため、冷却管49aに付着した添加剤15は凝縮した溶剤16との接触により、洗い流すことも可能である。しかしながら、溶剤凝縮工程を長時間継続して行えば、冷却管49aに多量の添加剤15が残留することとなる。また、添加剤凝縮工程において凝縮した添加剤15は排気冷却コイル47cに付着する。排気冷却コイル47cでは溶剤16がほとんど凝縮しないため、冷却管49aに比べ、添加剤が残留しやすい。
【0062】
(洗浄工程)
そこで、冷却管49aや排気冷却コイル47cに付着した添加剤15等を洗い流す洗浄工程が必要となる。排気再生設備35では、排気回収工程を停止して、洗浄工程を開始する。洗浄工程では、排気冷却コイル47cから添加剤15を洗い流す添加剤洗浄工程と、冷却管49aから溶剤16等を洗い流す溶剤洗浄工程とが行われる。なお、添加剤洗浄工程と溶剤洗浄工程とは、同時に行っても良いし、個別に行っても良い。
【0063】
(添加剤洗浄工程)
添加剤洗浄装置48は、排気冷却コイル47cに向けて洗浄液65を流出し、排気冷却コイル47cに残留する添加剤15を洗い流す添加剤洗浄工程を行う。添加剤洗浄装置48から流出した洗浄液65は、排気冷却コイル47cに到達し、排気冷却コイル47cに付着す添加剤を洗浄液65に溶解させて、洗い流す。このように、添加剤洗浄工程では、排気冷却コイル47cの洗浄を行うことができる。添加剤洗浄工程の詳細は後述する。
【0064】
(溶剤洗浄工程)
溶剤洗浄装置50は、冷却管49aに向けて洗浄液を流出し、冷却管49aに残留する溶剤16を洗い流す溶剤凝縮工程を行う。溶剤洗浄装置50から流出した洗浄液は、冷却管49aに到達し、冷却管49aに付着する溶剤16を洗い流す、または、冷却管49aに付着する添加剤15を洗浄液に溶解させて、洗い流す。このように、溶剤洗浄工程では、冷却管49aの洗浄を行うことができる。
【0065】
次に、図6を用いて、添加剤洗浄工程の詳細について説明する。上流側ノズル71cは、最上流側冷却コイル47cuの上流側へ洗浄液65をあてる。上流側ノズル71cから流出した洗浄液65は、洗浄風である排気40aによって、フィン61の隙間へ流入する。しかしながら、上流側ノズル71cから流出した洗浄液65は、重力により下方へ流れるため、最上流側冷却コイル47cuの下流側における上方部91に到達しない。この結果、上方部91の添加剤15は、洗い流されずに、残留したままとなる。
【0066】
また、洗浄液65は、最上流側冷却コイル47cuと最下流側冷却コイル47cdとの隙間では、最上流側冷却コイル47cuにあるときと比べて、下方に流れやすい。この結果、上流側ノズル71cから流出した洗浄液65は、最下流側冷却コイル47cdに到達したとき、最下流側冷却コイル47cdの下方を流れる。
【0067】
下流側ノズル72cは、最下流側冷却コイル47cdの下流側へ洗浄液65をあてる。下流側ノズル72cから流出した洗浄液65は、略逆向きに流れる排気40aの存在により、最上流側冷却コイル47cuの上流側の場合と比べ、フィン61の隙間へ流入しにくい。また、下流側ノズル72cから流出した洗浄液65は、重力により下方へ流れる。このため、下流側ノズル72cから流出した洗浄液65は、最下流側冷却コイル47cdの上流側へ到達しない。この結果、最下流側冷却コイル47cdの上流側における上方部92の添加剤15は、洗い流されずに、残留したままとなる。
【0068】
中間ノズル73cは、全方位または水平面における全方位に向けて洗浄液65を噴射する。中間ノズル73cから流出した洗浄液65のうち、最上流側冷却コイル47cuに向かうものは、上方部91に到達する。また、中間ノズル73cから流出した洗浄液65のうち、最下流側冷却コイル47cdに向かうものは、上方部92に到達する。
【0069】
このように、本発明では、上流側ノズル71cと下流側ノズル72cとともに、中間ノズル73cを併用するため、上流側ノズル71c及び下流側ノズル72cでは洗浄が困難であった上方部91及び92の洗浄が可能になる。
【0070】
なお、突出位置にある中間ノズル73cを用いて、洗浄液65を噴射してもよい。また、洗浄液65の噴射圧を時間の経過と共に漸増または漸減させてもよい。これにより、上方部91及び92における中間ノズル73cの洗浄可能な範囲を広げることができる。洗浄液65の噴射圧の漸増または漸減と中間ノズル73cの変位とを組み合わせても良い。
【0071】
排気40aの流れ方向において、排気冷却コイル47cを3つ以上並べても良い。この場合には、排気冷却コイル47c同士の隙間が複数形成されるが、当該隙間それぞれにおいて、中間ノズル73cを設ければよい。
【0072】
なお、添加剤洗浄工程では、洗浄風として排気40aを用いたが、本発明はこれに限られず、排気40aとは別の洗浄風を用いて、排気冷却コイルの洗浄を行っても良い。
【0073】
また、本発明は、添加剤洗浄装置48の他、溶剤洗浄装置50でも適用可能である。
【0074】
洗浄液65は添加剤を溶解可能であるため、各ノズル71c〜73cの開口は添加剤が閉塞しにくい。なお、各ノズル71c〜73cの開口が添加剤によって閉塞した場合は、当該開口における洗浄液65の噴射圧を利用する。洗浄液65の噴射圧の増大により、開口を閉塞する添加剤を吹き飛ばすことができる。
【0075】
上記実施形態では、図1に示すように、排気再生設備35をテンタ室22に接続させたが、本発明はこれに限られず、排気再生設備35を流延室21に接続しても良い。流延室21において溶剤16が流延膜26から蒸発する場合に有効である。
【0076】
本発明の排気再生設備35は、図1に示す溶液製膜設備10に限られず、図7に示す溶液製膜設備100にも適用できる。図7に示すように、溶液製膜設備100は、ドープ17からフィルム18を製造するものであり、流延室21とテンタ室22と乾燥室23とを有する。流延室21は、同一水平面において平行に配された回転ローラ102,103と、回転ローラ102,103に掛け渡され、回転ローラ92の駆動により循環移動するエンドレスバンド104と、回転ローラ102が支持するエンドレスバンド104に向けてドープ17を連続的に流出し、ドープ17からなる流延膜26をエンドレスバンド104に形成するダイ27と、流延膜26に向けて乾燥風をあてる乾燥機105、106と、剥ぎ取りローラ28とを有する。乾燥機105は、回転ローラ102から回転ローラ103に向かって移動するエンドレスバンド104の近傍に設けられる。乾燥機106は、回転ローラ103から回転ローラ102に向かって移動するエンドレスバンド104の近傍に設けられる。排気再生設備35は流延室21に接続するため、流延室21内の雰囲気における溶剤16の濃度を低く抑えることができる。
【0077】
なお、溶液製膜設備100におけるテンタ室22と排気再生設備35とを接続しても良い。
【0078】
テンタ室22では、湿潤フィルム29の耳部を把持するクリップを移動させることにより、湿潤フィルム29を搬送させても良い。更に、一方の耳部を把持するクリップと、他方の耳部を把持するクリップとの間隔が広がるように、両クリップを移動させて、湿潤フィルム29を拡幅させてもよい。湿潤フィルム29の拡幅により、湿潤フィルム29のシワやカールの防止や、レターデーション等の光学特性を所望の範囲に調整することができる。
【0079】
(ドープ)
ドープ17は、ポリマー14、添加剤15及び溶剤16を含む液である。ドープ17には、溶剤16にポリマー14が溶解しているポリマー溶液、及び溶剤16にポリマー14が分散している分散液の両方が含まれる。ドープ17におけるポリマー14の濃度は、15質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0080】
(ポリマー)
フィルム18の原料となるポリマー14としては、例えば、セルロースアシレート、ラクトン環含有重合体、環状オレフィン、ポリカーボネイト等が挙げられる。中でも好ましいのがセルロースアシレート、環状オレフィンであり、中でも好ましいのがアセテート基、プロピオネート基を含むセルロースアシレート、付加重合によって得られた環状オレフィンであり、さらに好ましくは付加重合によって得られた環状オレフィンである。セルロースアシレートとしては、トリアセチルセルロース(TAC)が特に好ましい。
【0081】
(溶剤)
溶剤16としては、例えば、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン,トルエンなど)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン,クロロベンゼンなど)、アルコール(例えば、メタノール,エタノール,n−プロパノール,n−ブタノール,ジエチレングリコールなど)、ケトン(例えば、アセトン,メチルエチルケトンなど)、エステル(例えば、酢酸メチル,酢酸エチル,酢酸プロピルなど)及びエーテル(例えば、テトラヒドロフラン,メチルセロソルブなど)などが挙げられる。
【0082】
これらの中でも炭素原子数1〜7のハロゲン化炭化水素が好ましく用いられ、ジクロロメタンが最も好ましく用いられる。TACの溶解性、流延膜の支持体からの剥ぎ取り性、フィルムの機械的強度など及びフィルムの光学特性などの物性の観点から、ジクロロメタンの他に炭素原子数1〜5のアルコールを1種ないし数種類混合することが好ましい。アルコールの含有量は、溶剤全体に対し2重量%〜25重量%が好ましく、5重量%〜20重量%がより好ましい。アルコールの具体例としては、メタノール,エタノール,n−プロパノール,イソプロパノール,n−ブタノールなどが挙げられるが、メタノール,エタノール,n−ブタノールあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
【0083】
ところで、最近、環境に対する影響を最小限に抑えることを目的に、ジクロロメタンを使用しない場合の溶剤組成についても検討が進み、この目的に対しては、炭素原子数が4〜12のエーテル、炭素原子数が3〜12のケトン、炭素原子数が3〜12のエステル、炭素原子数1〜12のアルコールが好ましく用いられる。これらを適宜混合して用いることがある。例えば、酢酸メチル,アセトン,エタノール,n−ブタノールの混合溶剤が挙げられる。これらのエーテル、ケトン,エステル及びアルコールは、環状構造を有するものであってもよい。また、エーテル、ケトン,エステル及びアルコールの官能基(すなわち、−O−,−CO−,−COO−及び−OH)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶剤として用いることができる。
【0084】
なお、溶剤16としては、ポリマー14の良溶媒であることが好ましい。ある物質がポリマー14の貧溶媒であるか良溶媒であるかの判断は次のようにして行う。まず、温度5℃以上30℃以下の範囲内において、ポリマー14が全重量の5質量%となるように当該物質とポリマーとを混合する。そして、その混合物中に不溶解物が有る場合には当該物質は貧溶媒であり、その混合物中に不溶解物がない場合には当該物質は良溶媒であると判断することができる。
【0085】
なお、添加剤15としては、可塑剤が挙げられる。可塑剤としては、リン酸エステル系(例えば、トリフェニルホスフェート(以下、TPPと称する)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート(以下、BDPと称する)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等)、フタル酸エステル系(例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート等)、グリコール酸エステル系(例えば、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等)及びその他の可塑剤を用いることができる。この中で、セルロースアシレートをフィルムとするために特に好ましいものとしてはTPPが挙げられる。
【0086】
ドープには、可塑剤以外の添加剤を各種含ませても良い。他の添加剤としては、紫外線吸収剤、離型剤、剥離促進剤、フッ素系界面活性剤、レタデーション制御剤等がある。紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物が好ましく、中でも、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物が特に好ましい。
【符号の説明】
【0087】
35 排気再生設備
45 横設ダクト
46 戻りダクト
47 熱交換器
47c 排気冷却コイル
47h 加熱機
48 添加剤洗浄装置
49 溶剤凝縮機
50 溶剤洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室の排気が通る横設ダクト内を前記排気の流れ方向上流側及び下流側に仕切るように配された排気冷却コイルユニットを洗浄するための洗浄装置において、
前記排気冷却コイルユニットにあてるための洗浄風を前記横設ダクト内へ通す送風機と、
前記排気冷却コイルユニットに洗浄液をあてる洗浄液供給ユニットとを有し、
前記洗浄液供給ユニットは、
前記排気冷却コイルユニットの前記洗浄風の流れ方向上流側に前記洗浄液をあてる上流側ノズルと、
前記排気冷却コイルユニットの前記洗浄風の流れ方向下流側に前記洗浄液をあてる下流側ノズルと、
前記横設ダクトの天井部に設けられ、前記排気冷却コイルユニットをなし前記洗浄風の流れ方向に並ぶ冷却コイルの間に開口する中間ノズルとを備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記中間ノズルは前記天井部から突出する突出位置と前記突出位置から退避した退避位置との間で移動自在に設けられたことを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄風は前記排気であることを特徴とする請求項1または2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記排気冷却コイルユニットによる前記排気の温度低下量が10℃以上であることを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記処理室の排気は、溶剤及び前記溶剤よりも高凝縮点の添加剤を含む樹脂成形物から前記溶剤が蒸発させる乾燥室の排気であることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項6】
請求項5項記載の洗浄装置と、
前記排気冷却コイルユニットと、
前記横設ダクト及び前記処理室を接続し、前記溶剤及び前記添加剤が取り出された前記排気を再生気体として前記処理室へ戻す戻りダクトとを有することを特徴とする排気再生設備。
【請求項7】
前記排気冷却コイルユニットは、前記乾燥室の排気から前記添加剤を取り出す添加剤凝縮コイルを備えることを特徴とする請求項6記載の排気再生設備。
【請求項8】
前記排気冷却コイルユニットは、前記添加剤凝縮コイルよりも前記排気の流れ方向下流側に配され、前記添加剤を取り出された前記排気から前記溶剤を取り出す溶剤凝縮コイルを備えたことを特徴とする請求項7記載の排気再生設備。
【請求項9】
前記溶剤及び前記添加剤が取り出された前記排気を加熱する加熱機が、前記戻りダクト内に配されたことを特徴とする請求項8記載の排気再生設備。
【請求項10】
前記加熱機と前記添加剤凝縮コイルとにより熱交換器が構成されたことを特徴とする請求項9記載の排気再生設備。
【請求項11】
ポリマー、前記溶剤及び前記添加剤を含むドープを支持体に向けて流出し、前記ドープからなる流延膜を前記支持体上に形成する膜形成工程と、
前記流延膜から前記溶剤を蒸発させる膜乾燥工程と、
前記支持体から前記流延膜を剥ぎ取って湿潤フィルムとする剥ぎ取り工程と、
前記湿潤フィルムから前記溶剤を蒸発させてフィルムとする湿潤フィルム乾燥工程とを有し、
前記膜形成工程または前記湿潤フィルム乾燥工程の少なくとも一方が行われる前記乾燥室に、請求項6ないし10のうちいずれか1項記載の排気再生設備が接続することを特徴とする溶液製膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−192309(P2012−192309A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56384(P2011−56384)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】