説明

洗浄装置および洗浄方法

【課題】被洗浄物が含む素子の破壊を効果的に防止する。
【解決手段】洗浄装置は、気体タンク22と、気体バルブ26と、薬液タンク20と、混合ノズル18と、電極10などと、演算部14などとを含む。気体タンク22は、気体を供給する。気体バルブ26は、気体の単位時間あたりの供給量を調整する。薬液タンク20は、薬液を供給する。混合ノズル18は、気体タンク22が供給した気体と薬液タンク20が供給した薬液とを混合し、洗浄液を噴出する。電極10などは、洗浄液の帯電量に対応する電流値を検出する。演算部14などは、電流の絶対値が閾値以上の場合、気体の単位時間あたりの供給量を減少させるように、調整手段を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置および洗浄方法に関し、特に、ガス流の使用を含む方法による洗浄装置および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TFT(Thin Film Transistor)素子などを含む基板の帯電は、素子の破壊不良を招くことがある。このため、そのような基板を洗浄する際における被洗浄物の帯電は、重要な問題となっている。
【0003】
被洗浄物を液体のみによって洗浄していた時代には、洗浄液が帯電することでこのような問題が生じることは少なくともなかった。しかしながら、液体と気体とを混合して高圧噴射洗浄を行うようになると、洗浄液が帯電することでこのような問題が生じるようになってきた。
【0004】
このような問題に対する従来の対策には、洗浄後にドライ環境の下で帯電量を確認する方法や、事前に電荷を中和する装置を用いる方法がある。
【0005】
特許文献1は、そのような対策の一つとして、被洗浄物の表面に付着している汚染物を除去する2流体噴出ノズルを開示する。2流体噴出ノズルは、気体供給流路と、電極部と、洗浄液供給流路と、冷却部とを備える。気体供給流路は、気体を供給する供給口と、この気体を噴出する噴出口とを有する。電極部は、気体供給流路の供給口と噴出口との間に設けられ、直流電圧または交流電圧のいずれかを印加して気体をプラズマ化する。洗浄液供給流路は、気体供給流路の供給口または噴出口のいずれかに洗浄液を供給する。冷却部は、電極部を冷却する。2流体噴出ノズルは、電極部により気体をプラズマ化して体積を膨張させ、洗浄液供給流路により供給した洗浄液を気体供給流路の噴出口からプラズマ/洗浄液2流体噴流として噴出させる。
【0006】
特許文献1に開示された発明によると、気体使用量を削減でき、半導体ウェーハ基板の表面に付着した汚染物質を帯電することなく除去できる。
【0007】
特許文献2は、基板面に向けて高周波を印加した洗浄液を供給する発振子付きノズルを備えた洗浄装置を開示する。洗浄装置は、圧電素子からなるセンサを、基板と同じ高さ、かつ基板から離隔した待機位置に配置する。ノズルからの洗浄液をセンサの上面に吐出させることにより、洗浄液の持つ高周波エネルギをセンサは測定する。洗浄装置は、その高周波エネルギ値に基づいて、ノズルが備えた発振子へ印加する電圧または電流を調整する。
【0008】
特許文献2に開示された発明によると、常に一定の高周波エネルギを洗浄液に印加できる。
【0009】
特許文献3は、試験片を用いて洗浄試験を行い、半導体ウェハのチャージアップダメージを検出し、チャージアップダメージが発生しない洗浄条件を設定する半導体ウェハの洗浄方法を開示する。
【0010】
特許文献3に開示された発明によると、歩留まりよく、かつ、高い信頼性で半導体ウェハを洗浄できる。
【0011】
特許文献4は、洗浄装置に配設され、洗浄水を噴射するスプレーチップを開示する。スプレーチップは、洗浄水を噴射する噴射口が、洗浄水の通過により負の静電気を発生させる材質で形成された第1のノズルチップと、洗浄水を噴射する噴射口が、洗浄水の通過により正の静電気を発生させる材質で形成された第2のノズルチップとを少なくとも備える。洗浄水は、第1のノズルチップと第2のノズルチップとを通過して噴射される。
【0012】
特許文献4に開示された発明によると、静電気の発生を防止して被洗浄物に静電気を帯電させないようにすることができる。なお、特許文献4では、洗浄液を構成する液体と気体との摩擦により生じる摩擦帯電を洗浄液が帯電する原因としている。この他、ノズルの噴出口でノズル内壁から液体が剥離することにより生じる剥離帯電などが帯電の原因として考えられる。
【0013】
特許文献5は、液滴を被洗浄物である半導体ウェーハ表面に向って噴射し、その表面に付着している汚染物質を除去する半導体ウェーハ洗浄装置を開示する。半導体ウェーハ洗浄装置は、半導体ウェーハの裏面に向って炭酸ガスを溶解させたリンス純水を噴射させ、帯電している液滴から半導体ウェーハに流れた電流をこのリンス純水を通して外部にアースさせる。
【0014】
特許文献5に開示された発明によると、洗浄用液滴噴射時に発生する静電気を効果的に除去することができるので、被洗浄物である半導体ウェーハおよびその上に形成されている配線類などに電気的ダメージを与えることなく洗浄作業を行うことができる。
【特許文献1】特開平11−345797号公報
【特許文献2】特開平10−303161号公報
【特許文献3】特開平6−275591号公報
【特許文献4】特開2003−243333号公報
【特許文献5】特開2000−277476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献1、特許文献3、特許文献4、および特許文献5に開示された発明では、被洗浄物の帯電を軽減するものの、素子の破壊の可能性を十分低くするには至らないことがあるという問題点がある。たとえば、特許文献1に開示された発明は、プラズマ化された気体によって被洗浄物の電荷を中和するものである。しかしながら、被洗浄物の現実の帯電量が分からないため、電荷が中和できていない可能性がある。洗浄条件の確認が行われないままに長期間洗浄が繰返された場合、帯電量を適切な水準に抑制できる条件が外乱その他の原因によって変化することがあるため、いつの間にか電荷が中和できなくなっている可能性は次第に高くなる。特許文献3、特許文献4、および特許文献5に開示された発明についても同様である。これが、前述した問題点の原因である。
【0016】
特許文献2に開示された発明では、被洗浄物の帯電についてまったく考慮されていないという問題点がある。
【0017】
本発明は上述の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、被洗浄物が含む素子の破壊を効果的に防止できる、洗浄装置および洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うと、洗浄装置は、気体供給手段と、調整手段と、液体供給手段と、ノズルと、検出手段と、制御手段とを含む。気体供給手段は、気体を供給する。調整手段は、気体の単位時間あたりの供給量を調整する。液体供給手段は、液体を供給する。ノズルは、気体供給手段が供給した気体と液体供給手段が供給した液体とを混合し、気体と液体との混合物を噴出する。検出手段は、混合物の帯電量に対応する対応量を検出する。制御手段は、対応量の絶対値が閾値以上の場合、気体の単位時間あたりの供給量を減少させるように、調整手段を制御する。
【0019】
また、上述の検出手段は、ノズルから噴出した混合物の拡散範囲内にある電極と、測定手段とを含むことが望ましい。測定手段は、混合物と電極との間で移動した電子の量に対応する値を測定する。併せて、制御手段は、調整手段をフィードバック制御するための手段を含むことが望ましい。
【0020】
もしくは、上述の測定手段は、電流計を含むことが望ましい。
もしくは、上述の測定手段は、クーロンメータを含むことが望ましい。
【0021】
また、上述した制御手段は、記録手段と、平均算出手段と、調整手段を制御するための手段とを含むことが望ましい。記録手段は、対応量を記録する。平均算出手段は、記録手段が記録した対応量に基づいて、対応量の平均値を算出する。調整手段を制御するための手段は、平均算出手段が算出した平均値の閾値に対する大小関係に応じて制御の内容が異なるように、供給量を制御する。
【0022】
また、上述した制御手段は、記録手段と、帯電幅算出手段と、供給量を制御するための手段とを含むことが望ましい。記録手段は、対応量を記録する。帯電幅算出手段は、記録手段が記録した対応量のうち供給量を最後に制御した後の対応量における最大値と最小値との差を算出する。供給量を制御するための手段は、平均値の絶対値が閾値以上の場合、気体の単位時間あたりの供給量を減少させるように、調整手段を制御する。
【0023】
本発明の他の局面に従うと、洗浄方法は、噴出ステップと、検出ステップと、制御ステップとを含む。噴出ステップは、気体と液体との混合物を噴出する。検出ステップは、噴出ステップにおいて噴出した混合物の帯電量に対応する対応量を検出する。制御ステップは、対応量の絶対値が閾値以上の場合、気体の単位時間あたりの供給量が減少するように、供給量を制御する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る洗浄装置および洗浄方法は、被洗浄物が含む素子の破壊を効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0026】
図1は、本実施の形態に係る洗浄装置の構成を表わす図である。図1を参照して、本実施の形態に係る洗浄装置は、電極10と、電流計12と、演算部14と、信号生成部16と、混合ノズル18と、薬液タンク20と、COバブラー21と、気体タンク22と、液体ポンプ24と、気体ポンプ26と、薬液バルブ28と、気体バルブ30と、二酸化炭素タンク32と、二酸化炭素バルブ34とを含む。
【0027】
電極10は、混合ノズル18から噴出した洗浄液の拡散範囲内にあり、混合ノズル18が吐出した薬液と気体との混合物との間で電子をやりとりする金属製の棒である。本実施の形態においては、電極10の位置は、被洗浄物50に対して上方(混合ノズル18に近い位置)に配置されても下方(混合ノズル18から遠い位置)に配置されてもよい。図1は、電極10が被洗浄物50の上方に配置された状態を示している。下方に配置された場合には、電極10を用いた計測は被洗浄物50を搬送する前に実施する。この場合、計測の結果に応じて洗浄条件が調整された後、被洗浄物50の洗浄が実施されることとなる。なお、本実施の形態においては、この混合物を「洗浄液」と称する。電流計12は、電極10に流れる電流を計測する。電流計12が計測する電流値は、洗浄液の帯電量に対応する。電極10に流れる電流が、洗浄液が含む未中和の電子やイオンによって生じているためである。これにより、電極10と電流計12とは、洗浄液の帯電量に対応する値を検出することとなる。なお、本実施の形態においては、洗浄液が含む未中和の電子やイオンによる電荷の量を「帯電量」と称する。演算部14は、電流計12が計測した電流値に基づいて、信号生成部16が生成する制御信号の種類を選択する。信号生成部16は、薬液バルブ28、気体バルブ30、および二酸化炭素バルブ34の開閉のための制御信号を生成する。信号生成部16は、液体ポンプ24や気体ポンプ26の単位時間あたりの吐出量を変化させるための制御信号を生成する装置でもある。これにより、被洗浄物50に対する洗浄条件が変化する。また、信号生成部16は、図示しないテーブルによって被洗浄物50を移動させる(テーブルに代え、コロにより被洗浄物50を移動させてもよいし、被洗浄物50を回転させながら洗浄するスピン洗浄方式に従って被洗浄物50を移動させてもよいが、本実施の形態では、テーブルにより被洗浄物50を移動させることとする。)ための制御信号を生成する装置でもある。混合ノズル18は、上述したように、薬液と気体とを混合して洗浄液とする。混合ノズル18は、その洗浄液を被洗浄物50に対し噴射する。薬液タンク20は、薬液を貯蔵する。本実施の形態の場合、薬液として水が用いられる。この水は、混合ノズル18によって洗浄液として噴射された後、図示しない排水路および浄化装置を経て、再び薬液タンク20に供給される(ちなみに、被洗浄物50の清浄性が強く求められる場合には、噴射された洗浄液は使い捨てにしてもよい)。COバブラー21は、二酸化炭素を薬液に効率よく混合するためのものである。薬液の配管へ二酸化炭素をそのまま直接供給すると、ドライアイスを水中に投入した場合のように大きな泡が出るだけで、二酸化炭素はほとんど薬液と混ざらないため、COバブラー21において薬液中に二酸化炭素の細かい泡を噴出させ、薬液と二酸化炭素とを混合する。ちなみに、本実施の形態の場合、COバブラー21は、薬液を入れた水槽中に二酸化炭素の配管を挿入したものである。
【0028】
気体タンク22は、気体を貯蔵する。本実施の形態の場合、この気体は窒素ガスである。液体ポンプ24は、COバブラー21において二酸化炭素が混入された薬液に圧力を加える。気体ポンプ26は、気体タンク22の吐出口から流出した気体に圧力を加える。薬液バルブ28は、薬液が通る通路を開閉することにより、単位時間あたりの薬液の流量を調整する。気体バルブ30は、気体が通る通路を開閉することにより、単位時間あたりの気体の流量を調整する。二酸化炭素タンク32は、圧縮された二酸化炭素を貯蔵する。二酸化炭素バルブ34は、二酸化炭素が通る通路を開閉することにより、単位時間あたりの二酸化炭素の流量を調整する。
【0029】
ちなみに、二酸化炭素は、水の比抵抗値を下げるために混合する。二酸化炭素に代え、アンモニアなどの水に溶ける気体を混ぜることによって水の比抵抗を下げてもよいが、本実施の形態では、二酸化炭素を使用する。ただし、二酸化炭素を使用するのはあくまで薬液の比抵抗を調整するために過ぎない。
【0030】
演算部14は、記録装置40と、コンピュータ42とを含む。記録装置40は、電流計12が計測した電流値を時系列に従って記録する。コンピュータ42は、電流計12が計測し、記録装置40が記録した電流値に対する演算を行い、演算された値が閾値を上回るか否かを判断する。コンピュータ42は、その判断の結果に従って、薬液バルブ28や、気体バルブ30や、二酸化炭素バルブ34の開閉量を規定する信号、液体ポンプ24や気体ポンプ26の吐出圧力を規定する信号、およびその他の信号を信号生成部16に出力する装置でもある。
【0031】
コンピュータ42は、インターフェイス420と、キーボード422と、CPU(Central Processing Unit)424と、メモリ426とを含む。インターフェイス420は、記録装置40が記録した情報の入力を受付ける。インターフェイス420は、信号生成部16に対して信号を出力する装置でもある。キーボード422は、ユーザによる情報の入力を受付ける。CPU424は、各種の情報を処理する。メモリ426は、CPU424が処理した情報その他の情報を記憶する。
【0032】
図2を参照して、コンピュータ42で実行されるプログラムは、帯電の防止に関し、以下のような制御を実行する。
【0033】
ステップS50にて、CPU424は、インターフェイス420を介して、信号生成部16に信号を出力する。信号生成部16は、その信号に従い、液体ポンプ24と、気体ポンプ26と、薬液バルブ28と、気体バルブ30とに対して制御信号を出力する。CPU424がこの時出力する信号が表わす、薬液や気体の単位時間あたりの流量はメモリ426に予め記憶されている。それらの流量はキーボード422を介してオペレータにより入力されてもよいし、被洗浄物50に応じた許容帯電量に基づいてCPU424により予め算出されていてもよい。それらの流量を算出するための方法は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、被洗浄物50に応じた許容帯電量に所定の係数を乗算することで算出される。これにより、気体タンク22が貯蔵した気体と薬液タンク20が貯蔵した薬液とのうち少なくとも一方の単位時間あたりの供給量が制御されることとなる。それらが制御されると、薬液と気体とは混合ノズル18において混合され、洗浄液となる。洗浄液は混合ノズル18から噴出する。これにより、被洗浄物50の洗浄が開始される。
【0034】
ステップS52にて、CPU424は、自らが記憶したプログラムに従い、インターフェイス420を介して、上述したテーブルを動作させるための制御信号をそのテーブルの駆動装置(図示せず)に出力する。これにより、被洗浄物50が移動する。その間、電極10には洗浄液から電子が流入する。あるいは、洗浄液が含むイオンが電極10から電子を奪う。これにより、電極10に電流が流れる。電流計12は、電極10に流れる電流を計測する。記録装置40は、電流計12が計測した電流値を時系列に従って記録する。
【0035】
ステップS54にて、導電率センサ36は、二酸化炭素ガスが混入した薬液の導電率を測定する。測定された導電率のデータは、インターフェイス420に出力される。CPU424は、導電率が所定の範囲内の値となるように、信号生成部16に二酸化炭素バルブ34を開閉させる。導電率がその範囲よりも高い場合、二酸化炭素バルブ34は閉じられる。導電率がその範囲よりも低い場合、二酸化炭素バルブ34は開かれる。
【0036】
ステップS58にて、インターフェイス420は、記録装置40が記録した電流値のデータの入力を受付ける。CPU424は、そのデータに基づいて、記録装置40が記録した電流値の平均値を算出する。平均値は、例えば記録が開始された時以降のすべての電流値の平均値であってもよいが、本実施の形態の場合、その平均値は、単位時間あたりの気体の供給量を最後に制御した後の、記録装置40が記録した電流値の平均値であることとする。
【0037】
ステップS58にて、CPU424は、ステップS58にて算出された値が、被洗浄物50に応じて予め定められた範囲内か否かを判断する。本実施の形態の場合、CPU424は、算出された値の絶対値が閾値よりも小さいか否かに基づいて、その値が予め定められた範囲内か否かを判断する。その閾値は、メモリ426に記憶されている。本実施の形態の場合、閾値として用いられる値はメモリ426に複数個予め記憶されている。それらのうちどの値が閾値として使用されるかは、洗浄が開始される前にキーボード422を介してオペレータが入力した情報に基づいて定められる。これにより、閾値は洗浄の開始前に予め定められた値となる。ステップS58にて算出された値が予め定められた範囲内と判断した場合には(ステップS58にてYES)、処理はステップS60へと移される。もしそうでないと(ステップS58にてNO)、処理はステップS62へと移される。
【0038】
ステップS60にて、CPU424は、洗浄を終了するか否かを判断する。洗浄を終了すると判断した場合には(ステップS60にてYES)、処理は終了する。もしそうでないと(ステップS60にてNO)、処理はステップS52へと移される。
【0039】
ステップS62にて、CPU424は、洗浄条件を変更する。洗浄条件を変更するために、CPU424は、気体バルブ30を単位時間の間に通過する薬液の量を減少させるための信号を信号生成部16に出力する。信号生成部16は、その信号に従い、気体バルブ30を少し閉じさせるための制御信号を出力する。本実施の形態の場合、気体バルブ30の動作により減少する薬液の量は、ステップS58にて算出された平均値と閾値との差に関わらず一定である。
【0040】
以上のような構造およびフローチャートに基づく、洗浄装置の動作について説明する。
CPU424は、液体ポンプ24と、気体ポンプ26と、薬液バルブ28と、気体バルブ30とに対して信号生成部16に制御信号を出力させる(ステップS50)。これにより、被洗浄物50の洗浄が開始される。
【0041】
制御信号が出力されると、CPU424は、テーブルに対して信号生成部16に制御信号を出力させる。その間、電極10に電子が流入したり電極10から電子が流出したりする。電流計12は、電極10に流れる電流を計測する。記録装置40は、電流計12が計測した電流値を時系列に従って記録する(ステップS52)。
【0042】
電流値が記録されると、導電率センサ36は、二酸化炭素ガスが混入した薬液の導電率を測定する。CPU424は、導電率が所定の範囲内の値となるように、信号生成部16に二酸化炭素バルブ34を開閉させる(ステップS54)。これにより、薬液の導電率は一定の範囲に保たれる。
【0043】
本実施の形態の場合、薬液として水が使用されているので、特別な理由がない限り薬液の導電率は一定値になるはずである。しかしながら、薬液が繰返して使用されることにより、様々なイオンが薬液に混入する。イオンが混入すると、導電率は変化する。導電率が変化すると、洗浄液の帯電量と電流計12が測定した電流値との関係も変化する。この関係が変化すると、電流計12が測定した電流値に基づいて帯電量を推定することができなくなる。このため、二酸化炭素ガスを混入させることにより、薬液の導電率を一定の範囲に保っている。
【0044】
二酸化炭素バルブ34が開閉すると、CPU424は、記録装置40が記録した電流値のデータに基づいて、記録装置40が記録した電流値の平均値を算出する(ステップS58)。平均値が算出されると、CPU424は、記録装置40が記録した電流値の平均値が、予め定められた範囲内か否かを判断する(ステップS58)。この場合、電流値の平均値がその範囲外とすると(ステップS58にてNO)、CPU424は、気体バルブ30を単位時間の間に通過する薬液の量を減少させる(ステップS62)。これにより、被洗浄物50の洗浄条件が変更される。
【0045】
被洗浄物50の洗浄条件が変更されると、ステップS52〜ステップS58の処理が1度繰返される。その後、CPU424は、記録装置40が記録した電流値の平均値が、予め定められた範囲内か否かを判断する(ステップS58)。この場合、その平均値が予め定められた範囲内とすると(ステップS58にてYES)、CPU424は、洗浄を終了するか否かを判断する(ステップS60)。この場合、洗浄を終了しないとすると(ステップS60にてNO)、ステップS52〜ステップS60の処理が繰返される。その間、記録装置40が記録した電流値の平均値が予め定められた範囲外とすると(ステップS58にてNO)、ステップS62の処理を経て、ステップS52〜ステップS58の処理が1度繰返される。
【0046】
その後、洗浄を終了するとすると(ステップS60にてYES)、処理は終了する。
以上のようにして、本実施の形態に係る洗浄装置は、洗浄液の帯電量を洗浄中に測定し、その帯電量に基づいたフィードバック制御を行う。これにより、洗浄液の帯電状況を常時モニタリングすることが可能になる。帯電状況が常時モニタリングされているので、モニタリングの合間に被洗浄物に帯電した静電気によって素子が破壊されることは防止される。その結果、被洗浄物が含む素子の破壊を防止できる、洗浄装置を提供することができる。
【0047】
また、本実施の形態に係る洗浄装置は、記録装置40が記録した電流の平均値が予め定められた範囲外の場合、単位時間あたりの気体の供給量を減少させる。平均値に基づいて供給量が制御されるので、突発的に発生した要因によりオペレータの期待に反して洗浄条件が制御される事態を回避できる。
【0048】
また、本実施の形態に係る洗浄装置は、混合ノズル18から噴出した洗浄液の拡散範囲内にある電極10とその範囲の外にある電流計12とにより、洗浄液と電極10との間で移動した電子の量を電流値として測定する。洗浄液の拡散範囲外に設置したセンサで帯電量を測定するのではないため、飛散した洗浄液を基に電流などを測定する場合に比べ、測定された値は大幅に信頼性が高い値となる。その上、電極10は金属製の棒なので、何かのセンサを洗浄液にさらす場合に比べ絶縁が破壊されたりショートしたりすることでの故障を大幅に抑えることができる。
【0049】
その上、本実施の形態に係る洗浄装置は、電流計12により、電流値を測定し、フィードバック制御に利用する。一般的には、帯電量を測定する場合、帯電量に対応する値である電圧値を測定する。しかしながら、洗浄液中の帯電量を測定する場合、帯電により生じる電位差はわずかな値である。これにより、洗浄液中の帯電量を測定することは困難と考えられている。これに対し、本実施の形態に係る洗浄装置は、電流値を測定することにより、洗浄液中の帯電量を間接的に容易に測定する。洗浄液中の帯電量を容易に測定できるので、本実施の形態に係る洗浄装置は、洗浄液中の帯電量に基づくフィードバック制御を容易に実現できる。
【0050】
なお、薬液と気体との混合物から電極10に流入した電子による電流を電流計12にて計測することに代えて、電極10に流入した電子による電圧を電圧計によって電極10にて測定してもよい。ただしこの場合、測定される電圧値はかなり小さな値になるので、予め測定した電圧値などに基づいて選択された精度の高い電圧計を用いることが必要である。この他、電極10に流入した電子の量に対応する何らかの値がその値に応じた測定器によって測定されてもよい。そのような測定器の例として、クーロンメータ13がある。クーロンメータ13は、電極10に流れた電荷の量を測定する装置である。この場合、電極10に流入した電子の量に対応する値として、電子が運搬した電荷の量を測定することとなる。また、記録装置40は、クーロンメータ13が測定した電荷の量を時系列に従って記録することとなる。どの位の長さの期間における電荷の量を測定するかは任意に定め得る事項である。図3は、クーロンメータ13が用いられた場合の、洗浄装置の構成を表わす図である。
【0051】
また、電極10の形状は棒でなくてもよい。例えば、電極10の形状は平板状であってもよい。また、電極10の材質は、電流を流し得る限り、金属製に限定されない。たとえば、半導体製であってもよい。
【0052】
また、電極10と電流計12とを用いて洗浄液の帯電量に対応する量を検出することに代え、別の装置を用いてそのような量を検出してもよい。例えば、洗浄液が散布される空間に磁場を与え、その磁場内を洗浄液が通過することで生じる誘導起電力を測定してもよい。
【0053】
また、ステップS54にて導電率を一定に保つよう二酸化炭素ガスを混入させることに代えて、導電率センサ36が測定した導電率に基づいて、ステップS58にて用いる閾値を算出してもよい。算出のための式は、測定された導電率と電流計12が測定した電流値との関係をプロットし、最小二乗法に基づいて特定するとよい。この場合、電極10に洗浄液を噴射することに変えて、電流値が一定の電力を供給する。もちろん、その他の方法によりこの式を特定してもよい。
【0054】
また、ステップS58にて、CPU424は、平均値を算出する代わりに、混合ノズル18、液体ポンプ24、および気体ポンプ26ひいては気体と薬液とのうち少なくとも一方の単位時間あたりの供給量を最後に制御した後の、記録装置40が記録した電流値における最大値と最小値との差を算出してもよい。この場合、CPU424は、その差が予め定められた範囲内か否かを判断することとなる。これにより、帯電量が安定するため、一時的に帯電量が大きくなることで素子が破壊されることを効果的に防止できる。その結果、被洗浄物が含む素子の破壊、その中でも一時的な帯電量の変動により生じる素子の破壊を防止できる、洗浄装置を提供することができる。
【0055】
また、ステップS62にて、CPU424は、インターフェイス420に対し、気体バルブ30と共に、薬液バルブ28を閉じさせるための信号を出力させてもよい。この場合、信号生成部16は、それらの信号に従い、薬液バルブ28と気体バルブ30とを閉じるための制御信号を出力する。これにより、被洗浄物50の洗浄条件すなわち気体と薬液との単位時間あたりの供給量が変更される。変更の前後におけるこれらの供給量の差は、一定であってもよいし、ステップS58にて算出された平均値と閾値との差に比例してもよい。この差は、その他の値に対応していてもよい。
【0056】
また、ステップS62にて、気体バルブ30の動作により減少する薬液の量は、ステップS58にて算出された平均値と閾値との差に比例してもよいし、その他の値に対応していてもよい。
【0057】
また、図1に示す洗浄装置の場合、混合ノズル18は被洗浄物50の上面から洗浄液を噴出しているが、混合ノズル18は被洗浄物50の下面から洗浄液を噴出してもよい。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施の形態に係る洗浄装置の構成を表わす図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る帯電の防止処理の制御の手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態の変形例に係る洗浄装置の構成を表わす図である。
【符号の説明】
【0060】
10 電極、12 電流計、13 クーロンメータ、14 演算部、16 信号生成部、18 混合ノズル、20 薬液タンク、21 COバブラー、22 気体タンク、24 液体ポンプ、26 気体ポンプ、28 薬液バルブ、30 気体バルブ、32 二酸化炭素タンク、34 二酸化炭素バルブ、36 導電率センサ、40 記録装置、42 コンピュータ、50 被洗浄物、420 インターフェイス、422 キーボード、424 CPU、426 メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体を供給するための気体供給手段と、
前記気体の単位時間あたりの供給量を調整するための調整手段と、
液体を供給するための液体供給手段と、
前記気体供給手段が供給した気体と前記液体供給手段が供給した液体とを混合し、前記気体と前記液体との混合物を噴出するノズルと、
前記混合物の帯電量に対応する対応量を検出するための検出手段と、
前記対応量の絶対値が閾値以上の場合、前記気体の単位時間あたりの供給量を減少させるように、前記調整手段を制御するための制御手段とを含む、洗浄装置。
【請求項2】
前記検出手段は、
前記ノズルから噴出した前記混合物の拡散範囲内にある電極と、
前記混合物と前記電極との間で移動した電子の量に対応する値を測定するための測定手段とを含み、
前記制御手段は、前記調整手段をフィードバック制御するための手段を含む、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記測定手段は、電流計を含む、請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記測定手段は、クーロンメータを含む、請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記対応量を記録するための記録手段と、
前記記録手段が記録した対応量に基づいて、前記対応量の平均値を算出するための平均算出手段と、
前記平均値の絶対値が閾値以上の場合、前記気体の単位時間あたりの供給量を減少させるように、前記調整手段を制御するための手段とを含む、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記対応量を記録するための記録手段と、
前記記録手段が記録した対応量のうち前記供給量を最後に制御した後の前記対応量における最大値と最小値との差を算出するための帯電幅算出手段と、
前記帯電幅算出手段が算出した差の絶対値が閾値以上の場合、前記気体の単位時間あたりの供給量を減少させるように、前記調整手段を制御するための手段とを含む、請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項7】
気体と液体との混合物を噴出する噴出ステップと、
前記噴出ステップにおいて噴出した前記混合物の帯電量に対応する対応量を検出する検出ステップと、
前記対応量の絶対値が閾値以上の場合、前記気体の単位時間あたりの供給量が減少するように、前記供給量を制御する制御ステップとを含む、洗浄方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−141049(P2008−141049A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327147(P2006−327147)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】