説明

洗浄装置

【課題】センサを取り付けることなく、吐出ノズル及び吸引ノズルの目詰まりを検知することができる洗浄装置を提供する。
【解決手段】ウェル14Aを有するマイクロプレート14と、ウェル14Aを洗浄するためにウェル14A内に液体を吐出する吐出ノズル12Bと、ウェル14A内の液体を吸引する吸引ノズル12Cと、マイクロプレート14を載せるプレート台16と、を有する洗浄装置10において、吸引ノズル12C及びプレート台16を、導電性材料を含ませて構成し、吸引ノズル12Cとプレート台16との間の静電容量を計測することで、ウェル14A内の液体の有無を検知して、吐出ノズル12B及び吸引ノズル12Cの目詰まりの有無を検知できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分注装置に備える洗浄装置に関し、より詳しくは、医療分野での血液等の検体の検査過程において、免疫測定法における反応済廃液の除去やその後の洗浄のために好適に用いることができる洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
病院等において患者を診察するに当たり、患者から血液または細胞の組織の一部である検体を採取して、血液検査や検体の病理学的検査が行われる。このような検査における免疫測定法では、固相化抗体の付着したマイクロプレートを使用し、固相化抗体と血液等の検体に含まれる抗原との反応後の反応済廃液を除去するB/F分離(Bound/Free分離)やB/F分離後の反応済廃液の残留を取り除くために、生理食塩水等の洗浄液を加えながら除去することを数回にわたって繰り返し行っている。B/F分離およびその後の洗浄は、酵素免疫測定法、放射免疫測定法、蛍光免疫測定法など広く免疫測定法に用いられるが、洗浄が十分でないと非特異反応により検査精度が低下することもあり、B/F分離およびその後の洗浄は重要な工程の1つである。
【0003】
このような洗浄作業を、多数回、短時間で能率よく行うための洗浄装置としては、例えば特許文献1に記載された洗浄装置がある。このような洗浄装置で洗浄する際には、反応済廃液などの吸引や洗浄液の吐出を、継続して、又は断続して行うが、洗浄のために用いる吐出ノズル又は吸引ノズルが目詰まりを起こすことがあり、この場合、洗浄が所期の通り行われなくなり、その後の抗原の正確な測定ができなくなるおそれがある。
【0004】
そこで、特許文献2に記載の洗浄装置では、吐出ノズルと吸引ノズルの両方またはいずれか一方に、洗浄液等の液体の流通を検知するセンサが設けられている。具体的には、吐出ノズルと吸引ノズルの両方またはいずれか一方に、一対の導線又は金属片からなる電極や光センサを差し込み、洗浄液等の液体の流通を検知する。吐出ノズルまたは吸引ノズルが目詰まりを起こして、センサで洗浄液等の液体の流通を検知できなくなると、アラームが発せられ、作業員に通知され、未然に不具合を回避するようにする。
【0005】
【特許文献1】特開2003−190899号公報
【特許文献2】特開平8−108160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の洗浄装置では、吐出ノズルと吸引ノズルの両方またはいずれか一方に、洗浄液等の液体の流通を検知するセンサを取り付ける必要がある。このため、洗浄装置を小型化することができないという問題とともに、洗浄液等の液体の流通の効率を悪くするという問題があった。
【0007】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、センサを取り付けることなく、吐出ノズル及び吸引ノズルの目詰まりを検知することができる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、センサを取り付けることなく、吐出ノズル及び吸引ノズルの目詰まりを検知するためには、洗浄のための吸引ノズル自体をセンサとして用いることが有効ではないかと考え、鋭意研究開発を進めた。その結果、洗浄のための吸引ノズル自体を液体検出のための一方の電極とし、マイクロプレートのプレート台を他方の電極として、両電極間の静電容量の変化を検出することにより、洗浄装置の吐出ノズル及び吸引ノズルの目詰まりを検知できることを見出し、本発明をするに至った。
【0009】
即ち、本発明に係る洗浄装置は、ウェルを有するマイクロプレートと、該ウェルを洗浄するために該ウェル内に液体を吐出する吐出ノズルと、前記ウェル内の液体を吸引する吸引ノズルと、前記マイクロプレートを載せるプレート台と、を有する洗浄装置において、前記吸引ノズル及び前記プレート台は導電性材料を含んで構成されており、前記吸引ノズルと前記プレート台との間の静電容量を計測することで、前記ウェル内の液体の有無を検知して、前記吐出ノズル及び前記吸引ノズルの目詰まりの有無を検知できるようにしたことを特徴とする。
【0010】
前記マイクロプレートとして、下面に凹凸を有するものを用い、前記プレート台として、前記マイクロプレートの下面の凹凸に対応した凹凸を上面に有するものを用いてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導電性材料を含んで構成した吸引ノズルとプレート台との間の静電容量を計測することで、前記ウェル内の洗浄液等の液体の有無を検知して、前記吐出ノズル及び前記吸引ノズルの目詰まりの有無を検知できるようにしたので、吸引ノズル及び吐出ノズルのどちらにもセンサを取り付けずに、吐出ノズル及び吸引ノズルに目詰まりがあるかどうかを検知できる。このため、本発明は洗浄装置の小型化に寄与することができるとともに、洗浄液等の液体をスムーズに流通させることができる。また、目詰まりがある場合、吐出ノズル、吸引ノズルのどちらに目詰まりがあるのかを検知することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る洗浄装置の一例を示す要部概略図である。
【0014】
洗浄装置10は、洗浄ヘッド部12と、洗浄の対象である複数のウェル14Aが形成されたマイクロプレート14と、マイクロプレート14を搭載するプレート台16と、マイクロプレート14及びプレート台16を搬送するプレート搬送部18と、洗浄ヘッドを洗浄するための洗浄壷(図示せず)と、静電容量検出装置20とを備えてなる。
【0015】
洗浄ヘッド部12は、本体12Aと、吐出ノズル12Bと、吸引ノズル12Cと、を有してなる。洗浄ヘッド部12は、位置制御が可能なステッピングモータ等により制御されて、上下に移動可能となっており、ウェル14A内に洗浄液を吐出するとき、及びウェル14A内の溶液を吸引するときは、吐出ノズル12B及び吸引ノズル12Cの先端部がウェル14A内に下降し、それ以外のとき(マイクロプレート14及びプレート台16を搬送するとき等)は、図2に示すように、洗浄ヘッド部12はノズル退避位置まで上昇している。
【0016】
マイクロプレート14には複数のウェル14Aが形成されている。ウェル14Aの内壁には試薬が塗られており、分注ヘッド(図示せず)により検体が分注される。マイクロプレート14は、プレート台16に載せられて、洗浄ヘッド部12の吐出ノズル12B及び吸引ノズル12Cがウェル14A内に入る位置まで、プレート搬送部18により搬送される。プレート搬送部18は、位置制御が可能なステッピングモータ等により制御されて、水平方向に移動可能となっている。
【0017】
マイクロプレート14は、下面が平坦なもの(図1及び図2参照)であっても、下面に凹凸を有するもの(図3参照)であってもよい。マイクロプレートの下面が平坦な場合は、プレート台は上面が平坦なものを用い、下面に凹凸を有するマイクロプレート15を用いる場合は、図3に示すように、その凹凸に対応した凹凸を上面に有するプレート台17を用いる。
【0018】
洗浄装置10では、洗浄ヘッド部12の吸引ノズル12Cを洗浄液等の液体の検出のための電極として用い、静電容量の変化を検出して、洗浄液等の液体の検出を行う。詳細には、吸引ノズル12Cとプレート台16を電極と考え、これらの電極間の静電容量の変化を静電容量検出装置20により検出する。静電容量を検出する方法自体は公知の方法でよいので、説明は省略する。
【0019】
吸引ノズル12Cをウェル14A内の洗浄液等の液体の検出のための電極として用いるため、吸引ノズル12Cには導電性が必要であり、吸引ノズル12Cは導電性材料を含ませて構成する。また、プレート台16も電極として用いるため、導電性が必要であり、プレート台16は導電性材料を含ませて構成する。導電性材料としては、ステンレス等の金属や、導電性プラスチックを用いることができる。なお、吸引ノズル12C及びプレート台16の全てを導電性材料で構成する必要はなく、例えば表面のみに導電性材料をコーティングしてもよい。
【0020】
次に、マイクロプレート14に形成された複数のウェル14Aに、分注ヘッド(図示せず)により検体が分注された後の動作について説明する。
【0021】
マイクロプレート14は、プレート台16に載せられて、洗浄ヘッド部12の吐出ノズル12B及び吸引ノズル12Cがウェル14A内に入る位置まで、プレート搬送部18により搬送される。次に、洗浄ヘッド部12の吐出ノズル12Bから、ウェル14A内に洗浄液が吐出される。吸引ポンプ(図示せず)を動作させ、洗浄ヘッド部12の吸引ノズル12Cによる吸引が可能な状態になったら、洗浄ヘッド部12を下降させ、ウェル14A内に吐出された洗浄液を吸引する。吸引が完了した後、洗浄ヘッド部12は、ノズル退避位置まで上昇する(図2参照)。
【0022】
この動作を1〜数回繰り返し行った後、マイクロプレート14はプレート搬送部18により搬送され、次に洗浄するウェル14Aが洗浄ヘッド部12の直下の位置に配置される。そして、前記洗浄動作が繰り返し行われる。洗浄が必要なウェル14Aの洗浄が終了したところで、洗浄動作は完了となる。
【0023】
本発明の実施形態に係る洗浄装置10においては、以上の動作を行う中で、洗浄ヘッド部12の吐出ノズル12B及び吸引ノズル12Cの目詰まりの検知を行う。この目詰まりの検知について、以下、詳細に説明する。
【0024】
前述のように、吐出ノズル12Bからウェル14A内に洗浄液を吐出した後、吸引ノズル12Cでウェル14A内の洗浄液等の液体を吸引するが、この吸引動作の際、吸引ノズル12Cはウェル14A内の洗浄液と接触する。一方、静電容量は電極間に配置された物質の誘電率に比例するが、洗浄液の誘電率は空気の誘電率より大きい。したがって、吸引ノズル12Cがウェル14A内の洗浄液と接触すると、検出される静電容量は大幅に大きくなる。したがって、吸引ノズル12Cがウェル14A内の洗浄液と接触したときの静電容量の変化を検出することで、ウェル14A内の液体の有無を検知できる。
【0025】
図4及び図5を用いて、目詰まりの検知について、さらに説明する。図4は、吐出ノズル12B、吸引ノズル12Cの目詰まりの有無による吸引前後の状態の違いを示す模式図であり、図4(A)は吐出ノズル12B、吸引ノズル12Cのどちらにも目詰まりがない場合であり、図4(B)は吐出ノズル12Bのみに目詰まりがある場合であり、図4(C)は吸引ノズル12Bのみに目詰まりがある場合である。図4(A)〜(C)で、吐出ノズル12B、吸引ノズル12Cの位置は吸引前後で変わっておらず、いずれの図においても、吸引のために下降した位置である。図5は、吸引ノズル12Cが下降して吸引を開始してから吸引を終了し、吸引ノズル12Cが上昇するまでの静電容量の変化を模式的に示すグラフ図であり、図5(A)は吐出ノズル12B、吸引ノズル12Cのどちらにも目詰まりがない場合であり、図5(B)は吐出ノズル12Bに目詰まりがある場合であり、図5(C)は吸引ノズル12Bに目詰まりがある場合である。
【0026】
吐出ノズル12B、吸引ノズル12Cのどちらにも目詰まりがない場合(図4(A)の場合)、ウェル14A内に洗浄液が吐出されているので、吸引ノズル12Cがウェル14A内を下降し(図5(A)のa点〜b点)、規定の高さ(洗浄液が吐出されていた場合のウェル内の液面高さ)に達すると、吸引ノズル12Cは洗浄液22と接触する(図4(A)の吸引前の図)。吸引ノズル12Cが洗浄液22と接触すると、前述のように、接触前と比べて、接触後は静電容量が大幅に大きくなる(図5(A)のb点〜c点)。そして、吸引によりウェル14A内に洗浄液22がなくなるまで、この静電容量の値を維持する(図5(A)のc点〜d点)。吸引により、ウェル14A内に洗浄液22がなくなると(図4(A)の吸引後の図)、静電容量は接触前の水準まで小さくなる(図5(A)のd点〜e点〜f点)。
【0027】
吐出ノズル12Bに目詰まりがある場合(図4(B)の場合)、吐出ノズル12Bからウェル14A内には洗浄液は吐出されない。したがって、吸引ノズル12Cがウェル14A内を下降し(図5(B)のa点〜b点)、規定の高さ(洗浄液が吐出されていた場合のウェル内の液面高さ)まで吸引ノズル12Cが下降しても、吸引ノズル12Cは洗浄液と接触せず(図4(B)の吸引前の図)、静電容量の値は変わらない(図5(B)のb点)。吸引ノズル12Cに目詰まりがなく吸引ノズル12Cによる吸引が可能であっても、もともとウェル14A内には洗浄液はないので、吸引後も吸引前と状況は同じであり(図4(B)の吸引後の図)、静電容量の値は変わらない(図5(B)のc点〜d点)。したがって、静電容量は吸引ノズル12Cの下降前と下降後、吸引ノズル12Cによる吸引前と吸引後で変わらず、一定値をとる(図5(B)のa点〜b点〜c点〜d点)。
【0028】
吐出ノズル12Bに目詰まりがなく、吸引ノズル12Cに目詰まりがある場合(図4(C)の場合)、ウェル14A内に洗浄液22が吐出されているので、吸引ノズル12Cがウェル14A内を下降し(図5(C)のa点〜b点)、規定の高さ(洗浄液が吐出されていた場合のウェル内の液面高さ)に達すると、吸引ノズル12Cは洗浄液22と接触する(図4(C)の吸引前の図)。吸引ノズル12Cが洗浄液22と接触すると、前述のように、接触前と比べて、接触後は静電容量が大幅に大きくなる(図5(C)のb点〜c点)。しかし、吸引ノズル12Cに目詰まりがあるため吸引できず、吸引ポンプ(図示せず)を動作させてもウェル14A内の洗浄液22の量は減少せず、規定の時間(吸引ポンプに目詰まりがない場合に吸引に要する時間)、吸引ポンプ(図示せず)を動作させても吸引ノズル12Cは洗浄液22と接触した状態を継続し(図4(C)の吸引後の図)、静電容量は減少しない(図5(C)のc点〜d点〜e点)。
【0029】
以上説明したように、吐出ノズル12B及び吸引ノズル12Cのどちらにも目詰まりがない場合、吐出ノズル12Bに目詰まりがある場合、吸引ノズル12Cに目詰まりがある場合で、図5(A)〜(C)に示すように、吸引ノズル12Cの下降動作、吸引動作に伴う静電容量の変化に違いが見られる。したがって、吸引ノズル12Cの下降動作、吸引動作に伴う静電容量の変化を計測することで、吐出ノズル12B及び吸引ノズル12Cに目詰まりがあるかどうか、目詰まりがある場合、吐出ノズル12B、吸引ノズル12Cのどちらに目詰まりがあるのかを判断することができる。
【0030】
したがって、本発明によれば、吸引ノズルを電極として用いて静電容量の変化を検出して、洗浄液等の液体を検出しているので、吸引ノズル及び吐出ノズルのどちらにもセンサを取り付けずに、吐出ノズル及び吸引ノズルに目詰まりがあるかどうかを検知できる。このため、本発明は洗浄装置の小型化に寄与することができるとともに、洗浄液等の液体をスムーズに流通させることができる。また、目詰まりがある場合、吐出ノズル、吸引ノズルのどちらに目詰まりがあるのかを検知することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る洗浄装置の一例を示す要部概略図
【図2】前記洗浄装置で洗浄ヘッド部がノズル退避位置まで上昇している場合を示す全体概略図
【図3】マイクロプレート及びプレート台を示す概略図
【図4】吐出ノズル、吸引ノズルの目詰まりの有無による吸引前後の状態の違いを示す模式図
【図5】吸引ノズルが下降して吸引を開始してから吸引を終了し、吸引ノズルが上昇するまでの静電容量の変化を模式的に示すグラフ図(図5(A)は吐出ノズル12B、吸引ノズル12Cのどちらにも目詰まりがない場合、図5(B)は吐出ノズル12Bに目詰まりがある場合、図5(C)は吸引ノズル12Bに目詰まりがある場合)
【符号の説明】
【0032】
10…洗浄装置
12…洗浄ヘッド部
12A…本体
12B…吐出ノズル
12C…吸引ノズル
14、15…マイクロプレート
14A…ウェル
16、17…プレート台
18…プレート搬送部
20…静電容量検出装置
22…洗浄液
24、26…目詰まり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェルを有するマイクロプレートと、該ウェルを洗浄するために該ウェル内に液体を吐出する吐出ノズルと、前記ウェル内の液体を吸引する吸引ノズルと、前記マイクロプレートを載せるプレート台と、を有する洗浄装置において、
前記吸引ノズル及び前記プレート台は導電性材料を含んで構成されており、
前記吸引ノズルと前記プレート台との間の静電容量を計測することで、前記ウェル内の液体の有無を検知して、前記吐出ノズル及び前記吸引ノズルの目詰まりの有無を検知できるようにしたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記マイクロプレートは下面に凹凸を有し、前記プレート台は、前記マイクロプレートの下面の凹凸に対応した凹凸を上面に有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−161833(P2008−161833A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−356302(P2006−356302)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】