説明

洗浄装置

【課題】ドラム容器の洗浄を安定して行う。
【解決手段】2つの回転ローラが水平に設けられる。回転ローラは、ドラム容器18を横たわった状態で支持する。図示しない移動手段は、これらの回転ローラを移動する。この移動により、ノズル31b〜33bがドラム容器18内に挿入された状態となる。モータは、回転ローラを一方向へ回転させる。回転ローラの回転により、ドラム容器18は一方向へ回転する。ノズル31b〜33bは、鉛直の反対方向から回転方向へ角度θ1だけ移動した部分へ洗浄液を噴射する。角度θ1は、10°以上90°以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム状の容器を洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乳剤や塗料など液状の物質を収納する容器として、ドラム状の容器(以下、ドラム容器と称する)が用いられる。当該液状の物質をドラム容器から取り出した後、空となったドラム容器は、再利用のために洗浄される。
【0003】
従来から知られているドラム容器を洗浄する方法は、例えば、特許文献1に記載のように、横たわったドラム容器を回転させて、この回転するドラム容器内へノズルを挿入する。そして、ノズルは、洗浄剤をドラム容器の内面に向けて、所定の噴射圧で噴射する。このように、洗浄剤を噴射することにより、ドラム容器から付着物等を取り除くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−156300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1のような洗浄方法では、ドラム容器の内面のうち洗浄液が噴射される領域において、噴射された洗浄液が下方に流れずに滞留する結果、洗浄剤の膜ができる場合がある。このような洗浄液の膜の存在は、噴射された洗浄剤をドラム容器の内面に直接当てることを困難にする。したがって、特許文献1のような洗浄方法では、付着物を取り除くことが困難な場合があった。
【0006】
更に、特許文献1のような洗浄方法を行う場合、ドラム容器との付着力が大きい残留物を取り除く場合、洗浄剤の噴射圧を高くする必要がある。しかしながら、洗浄剤の噴射圧の増大によりドラム容器が安定して回転することができない。この結果、ドラム容器の洗浄を行うことができなかった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、回転するドラム容器の洗浄を行うことのできる洗浄装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の洗浄装置は、一端側が開口端のドラム容器を横たわった状態で保持するとともに、前記ドラム容器の軸又はこの軸に平行な軸を中心に一の方向へ前記ドラム容器を回転させる回転ユニットと、前記開口端を通して相対的に前記ドラム容器の内部に挿入され、前記ドラム容器の内周面へ洗浄液を噴射する内周面洗浄ユニットと、前記ドラム容器の内底面へ前記洗浄液を噴射する内底面洗浄ユニットとを有し、前記内周面洗浄ユニットは、前記回転軸に直交する面において、鉛直の反対方向から回転方向へ角度θ1だけ移動した部分へ前記洗浄液を噴射し、前記角度θ1は、10°以上90°以下であることを特徴とする。
【0009】
前記ドラム容器へ液を噴射する噴射ユニットは、前記液により前記ドラム容器が受ける力が、前記洗浄液により前記ドラム容器が受ける力の全てまたは一部を打ち消すような位置に配されることが好ましい。また、前記噴射ユニットは、前記ドラム容器の外部に設けられ、前記ドラムの外周面へ前記液を噴射する外周面洗浄ユニットを備えることが好ましい。更に、前記外周面洗浄ユニットは、前記内周面洗浄ユニットと対向する位置に配されることが好ましい。
【0010】
前記内周面洗浄ユニットには、前記洗浄液を噴射し、他端側から前記一端側へ並ぶ複数の内周面噴射ノズルが設けられ、前記噴射は前記内底面洗浄ユニットから前記内周面洗浄ユニットへ順次切り替えて行なわれ、前記洗浄液の噴射は、他端側に配された前記内周面噴射ノズルから、前記一端側に配された前記内周面噴射ノズルへ順次切り替えて行なわれることが好ましい。また、前記内周面洗浄ユニット及び前記内底面洗浄ユニットには、それぞれ電磁弁が設けられ、この電磁弁の操作により前記噴射の切り替えを行うことが好ましい。更に、前記ドラム容器の内部及び外部との間で、前記内周面洗浄ユニット及び前記内底面洗浄ユニットを移動する移動部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗浄装置は、ドラム容器の内面のうち所定の部分に向けて、洗浄液を噴射する内面洗浄ユニットを有するため、ドラム容器の内面に、噴射された洗浄液を直接あてることができる。したがって、本発明によれば、ドラム容器の洗浄を確実に行うことができる。
【0012】
また、本発明の洗浄装置は、ドラム容器の内面へ内面用洗浄液を噴射する内面洗浄ユニットと、ドラム容器へ液を噴射する噴射ユニットとを有する。そして、噴射された液によりドラム容器が受ける力が、洗浄液によりドラム容器が受ける力の全てまたは一部を打ち消すような位置に、噴射ユニットが配される。このため、洗浄液の噴射圧を大きくしても、ドラム容器の回転を安定して行うことができる。したがって、本発明によれば、ドラム容器との付着力が大きい残留物を取り除くことが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】回転ユニットが移動自在に設けられ、退避状態の洗浄装置の概要を示す説明図である。
【図2】回転ユニットの概要を示す側面図である。
【図3】(A)はドラム容器が水平位置にあるときの概要を示す説明図であり、(B)はドラム容器が斜め位置にあるときの概要を示す説明図である。
【図4】挿入状態にあるときの洗浄装置の概要を示す説明図である。
【図5】洗浄装置が挿入状態であるときのドラム容器の内部の概要を示す断面図である。
【図6】内底面噴射ユニットによるドラム容器の洗浄の概要を示す説明図である。
【図7】内周面噴射ユニットによるドラム容器の洗浄の概要を示す説明図である。(A)は第1内周面噴射ユニットによるものであり、(B)は第2内周面噴射ユニット、(C)は第3内周面噴射ユニットによるものである。
【図8】洗浄ユニットが移動自在に設けられ、退避状態の洗浄装置の概要を示す説明図である。
【図9】内底面噴射ユニットと、内周面噴射ユニットと、外周面噴射ユニットとを備える洗浄ユニットの概要を示す説明図である。
【図10】内底面噴射ユニットと、内周面噴射ユニットと、外周面噴射ユニットとを備える洗浄ユニットの概要を示す断面図である。
【図11】内周面噴射ユニットと外周面噴射ユニットとからなる噴射ユニット対を複数対備える洗浄ユニットの概要を示す断面図である。
【図12】内周面噴射ユニットと外周面噴射ユニットとを備える洗浄ユニットの概要を示す断面図である。
【図13】内周面噴射ユニットと外周面噴射ユニットとを備える洗浄ユニットの概要を示す断面図である。
【図14】複数の内周面噴射ユニットを備える洗浄ユニットの概要を示す断面図である。
【図15】内底面噴射ユニットをドラム容器18内へ挿入し、内底面の洗浄を行う概要を示す断面図である。
【図16】内周面噴射ユニットをドラム容器18内へ挿入し、内周面及び外周面の洗浄を行う概要を示す断面図である。
【図17】内底面噴射ユニットと、内周面噴射ユニットと、外周面噴射ユニットとを備える洗浄ユニットの概要を示す断面図である。
【図18】内底面噴射ユニットと、内周面噴射ユニットと、外周面噴射ユニットとを備える洗浄ユニットの概要を示す断面図である。
【図19】内底面噴射ユニットと、内周面噴射ユニットと、外周面噴射ユニットと、外底面噴射ユニットとを備える洗浄ユニットの概要を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、ドラム容器の洗浄装置10は、回転ユニット12と洗浄ユニット14とを有する。図1及び図2に示すように、回転ユニット12は、ドラム容器18を支持した状態で、一方向へ回転させるものであり、ドラム容器18を支持する回転ローラ21、22と、モータ24とを有する。回転ローラ21、22は、水平に設けられ、軸を中心に回動自在となっている。回転ローラ21、22には、モータ24がそれぞれ接続する。そして、モータ24の駆動により、回転ローラ21、22は同じ方向へ回転する。一端側に開口端18oを、他端側に閉塞端18cを備えるドラム容器18は、回転ローラ21、22の上に、横たわる状態で配される。この結果、回転ローラ21、22の上に配されたドラム容器18は、ドラム容器18の軸AXを中心に回転する。なお、ドラム容器18の閉塞端18c側を支えるストッパ26を設けても良い。
【0015】
図3に示すように、回転ローラ21、22上に配されたドラム容器18の下方には、シリンダ28が設けられる。シリンダ28は、ドラム容器18を押し上げる位置(押し上げ位置)と、押し上げ位置から退避した位置との間において、移動自在に設けられる。コントローラ29により、シリンダ28は、ドラム容器18が水平に配された水平位置(図3(A)参照)、及び開口端18oが閉塞端18cよりも低い状態となる斜め位置(図3(B)参照)の間で、ドラム容器18を移動させる。なお、シリンダ28の駆動に代えて、回転ローラ21、22の駆動により、水平位置及び斜め位置の間でドラム容器18を移動しても良い。また、斜め位置のドラム容器18の開口端18oを支持する支持部材(図示しない)を設けても良い。
【0016】
図1に戻って、洗浄ユニット14は、ドラム容器18へ所定の洗浄液を噴射して、ドラム容器18を洗浄するものであり、第1〜第3内周面噴射ユニット31〜33と、内底面噴射ユニット34と、各噴射ユニット31〜34へ洗浄液を送るポンプ36とを備える。
【0017】
第1内周面噴射ユニット31は、配管31aと、配管31aに設けられたノズル31bとを備える。ノズル31bは、配管31aの先端部分に並べられる。同様にして、第2内周面噴射ユニット32は、配管32aと、配管32aに設けられたノズル32bとを備え、第3内周面噴射ユニット33は、配管33aと、配管33aに設けられたノズル33bとを備える。また、内底面噴射ユニット34は、配管34aと、配管34aの先端に設けられたノズル34bとを備える。
【0018】
各噴射ユニット31〜34とポンプ36との間には、分岐管38が設けられる。また、フレキホース39は各噴射ユニット31〜34と分岐管38とをそれぞれ接続する。各フレキホース39には、電磁弁41〜44がそれぞれ設けられる。また、フレキホース48は分岐管38同士をそれぞれ接続し、フレキホース49は分岐管38とポンプ36とを接続する。
【0019】
電磁弁41は、ノズル31bの噴射のオン−オフを行うものであり、電磁弁42、43は、それぞれ、ノズル32b、33bの噴射のオン−オフを行うものである。また、電磁弁44は、ノズル34bの噴射のオン−オフを行うものである。
【0020】
ポンプ36と、洗浄液を貯留する洗浄液貯留部50及びリンスを貯留するリンス貯留部51との間には、三方弁52が設けられる。三方弁52と洗浄液貯留部50と、三方弁52とリンス貯留部51と、そして、三方弁52とポンプ36とは、それぞれ、配管54により接続される。なお、リンス貯留部51は省略しても良い。
【0021】
回転ユニット12は、ドラム容器18の内部及び外部において移動自在となっている。そして、シフト部56は、回転ユニット12を所定の位置へ移動する。この回転ユニット12の移動により、洗浄装置10は、各ノズル31b〜34bがドラム容器18内に相対的に挿入された挿入状態(図4参照)と、挿入位置から退避した退避状態(図1参照)との間で遷移自在となる。
【0022】
図4に示すように、洗浄装置10が挿入状態のとき、ノズル31bは閉塞端18c側に位置し、ノズル33bは開口端18o側に位置し、ノズル32bは、ノズル31b及びノズル33bの間に位置する。
【0023】
図5に示すように、ノズル31b〜33bは、それぞれ、洗浄液を噴射する噴射口31o〜33oを有する。洗浄装置10が挿入状態のとき、各噴射口31o〜33oはドラム容器18の内周面18nsと対向する。各噴射口31o〜33oの向きは、噴射した洗浄液が、回転するドラム容器18の内周面18nsのうち上方から下方へ移動する部分にあたるような向きとなっていることが好ましい。各噴射ユニット31〜33は、それぞれ、内周面18nsに向けて洗浄液を噴射する。
【0024】
(0019)
各噴射口31o〜33oから噴射される洗浄液の噴射パターンは、円状、楕円状又は線状であることが好ましい。更に、線状の噴射パターンは、ドラム容器18の母線方向にのびるものであることが好ましい。
【0025】
ドラム容器18の軸AXから鉛直方向と反対のY方向にのびるものを第1線分L1とし、軸AXと各ノズル31b〜33bから噴射した洗浄液があたる部分とを結ぶものを第2線分L2とするときに、第1線分L1と第2線分L2とがなす角の角度θ1は、10°以上90°以下であることが好ましく、20°以上75°以下であることがより好ましく、30°以上45°以下であることが特に好ましい。なお、θ1は、第1線分L1からドラム容器の回転方向を正として表す。また、各ノズル31b〜33bから噴射した洗浄液があたる部分は、実際に洗浄液があたる領域のうち、回転方向下流端、回転方向上流端、またはこれらの中間位置のいずれであってもよい。
【0026】
図4に示すように、ノズル34bは、それぞれ、洗浄液を噴射する噴射口34oを有する。洗浄装置10が挿入状態のとき、内底面噴射ユニット34は、噴射口34oと閉塞端18c側に位置する内底面18ntとが対向するように配される。内底面噴射ユニット34は、内底面18ntに向けて洗浄液を噴射する。
【0027】
図5に示すように、内底面噴射ユニット34から噴射した洗浄液を、内底面18ntのうち底部以外の部分にあてることが好ましい。ここで、底部とは、各ノズル31b〜34bから噴射された洗浄液が溜まるドラム容器18内の部分をいう。なお、内底面噴射ユニット34から噴射した洗浄液を内底面18ntの全体にあててもよい。
【0028】
ノズル34bから噴射される洗浄液の噴射パターンは、円状、楕円状又は線状であることが好ましい。また、線状の噴射パターンは、ドラム容器18の軸AXを通るものであることが好ましい。
【0029】
図1に示すように、コントローラ29は、モータ24と、シリンダ28(図3参照)と、ポンプ36と、電磁弁41〜44と、シフト部56と、三方弁52と接続し、各部を独立して制御する。
【0030】
次に、本発明の作用について説明する。図1に示すように、洗浄の対象となるドラム容器18は、回転ローラ21、22の上で配され、水平位置となっている。また、シフト部56の制御の下、各噴射ユニット31〜34はドラム容器18の外部に位置する。
【0031】
シフト部56は、ドラム容器18の外部に位置する各噴射ユニット31〜34を、ドラム容器18の内部へ挿入する(図4参照)。これにより、ノズル34bの噴射口34oは、ドラム容器18の内底面18ntと対向し、各ノズル31b〜33bの噴射口31o〜33oはドラム容器18の内周面18nsと対向する(図5参照)。
【0032】
モータ24の駆動により、回転ローラ21、22により保持されたドラム容器18は、一方向に回転する。
【0033】
図1に示すように、コントローラ29は、電磁弁41〜43を閉状態とし、電磁弁44を開状態とする。そして、コントローラ29による三方弁52及びポンプ36の操作により、内底面噴射ユニット34は、内底面18ntへ洗浄液を噴射する。これにより、内底面18ntの洗浄が行われる(図6参照)。
【0034】
次に、コントローラ29は、電磁弁42〜44を閉状態とし、電磁弁41を開状態とする(図1参照)。これにより、第1内周面噴射ユニット31による内周面18nsの洗浄が行われる(図7(A)参照)。第3に、コントローラ29は、電磁弁41、43〜44を閉状態とし、電磁弁42を開状態とする(図1参照)。これにより、第2内周面噴射ユニット32による内周面18nsの洗浄が行われる(図7(B)参照)。第4に、コントローラ29は、電磁弁41、42、44を閉状態とし、電磁弁43を開状態とする(図1参照)。これにより、第3内周面噴射ユニット33による内周面18nsの洗浄が行われる(図7(C)参照)。こうして、内底面18ntの洗浄の後に内周面18nsの洗浄が行われ、この内周面18nsの洗浄では、閉塞端18c側から開口端18o側に向かって、内周面18nsが順次洗浄される。
【0035】
同様にして、コントローラ29による三方弁52及びポンプ36の操作により、噴射ユニット34は内底面18ntへリンスを噴射し、その後、各噴射ユニット31〜33は内周面18nsへリンスを噴射する。各噴射ユニット31〜33によるリンスの噴射の順番は、洗浄液の場合と同様でよい。
【0036】
そして、図3(B)に示すように、シリンダ28により、ドラム容器18が斜め位置となる。この結果、ドラム容器18内に残留する洗浄液やリンスを、ドラム容器18外へ流し出すことができる。
【0037】
本発明では、各ノズル31b〜33bの噴射口31o〜33oの向きは、回転するドラム容器18の内周面18nsのうち上方から下方へ移動する部分に洗浄液があたる向きとなっているため、内周面18nsにあたった洗浄液は、スムーズに下方へ流れる。この結果、内周面18nsにおいて洗浄液の膜の形成を抑えることができるため、新鮮な洗浄液を内周面18nsへ確実に当てることができる。
【0038】
また、内周面18nsに洗浄液を噴射する場合において、内周面18nsにて形成される洗浄液の膜には、乳剤等の付着物(汚れ)が含まれる。このような膜に洗浄液を噴射すると、汚れがノズル31b〜33bへ飛散してしまう。そして、ノズル31b〜33bへ飛散した汚れが内周面18nsへ落下すると、結果として、内周面18nsの洗浄を確実に行うことができなくなる。本発明によれば、内周面18nsにおいて洗浄液の膜の形成を抑えることができるため、内周面18nsの再汚染の原因となる汚れの飛散を回避することができる。
【0039】
このように、本発明によれば、新鮮な洗浄液による噴射洗浄を確実に行うことができる。
【0040】
なお、上記実施形態では、ドラム容器18を移動させたが、本発明はこれに限られず、各噴射ユニットを移動させても良い。図8に示すように、洗浄装置60は、内周面噴射ユニット31と内底面噴射ユニット34とを有する。内周面噴射ユニット31と内底面噴射ユニット34とは、連結部材62により連結されている。コントローラ29の制御の下、シフト部64は、連結部材62を所定の位置へ移動する。シフト部64により、内周面噴射ユニット31と内底面噴射ユニット34は、ドラム容器18の内部及び外部の間を移動する。
【0041】
シフト部64により、各ノズル31b、34bは、ドラム容器18内にて洗浄液を噴射しながら、ドラム容器18の軸AXの方向(X方向)において閉塞端18c側から開口端18o側へ向かって移動する。これにより、内周面18ns及び外周面18gsを、閉塞端18c側から開口端18o側に向かって、順次洗浄することが可能となる。
【0042】
なお、図8では、噴射ユニットとして、1つの内周面噴射ユニット31を用いたが、本発明はこれに限られず、噴射ユニットとして、図1に示すような複数の内周面噴射ユニットを用いても良い。
【0043】
上記実施形態では、連結部材62により連結された各ノズルを一体として移動させたが、本発明はこれに限られず、各ノズルをそれぞれ移動自在に設け、各ノズルを個別に移動させても良い。
【0044】
上記実施形態では、内周面18ns及び内底面18ntに洗浄液を噴射したが、本発明はこれに限られず、図9に示すように、内周面18ns及び内底面18ntに加え、外周面18gsに洗浄液を噴射してもよい。洗浄ユニット80は、内周面噴射ユニット31と内底面噴射ユニット34とポンプ36(図1参照)と加え、外周面噴射ユニット81を有する。ポンプ36は、内周面噴射ユニット31と内底面噴射ユニット34とに加え、外周面噴射ユニット81へ洗浄液を送る。
【0045】
外周面噴射ユニット81は、配管81aと、配管81aに設けられたノズル81bとを備える。図10に示すように、ノズル81bは、洗浄液を噴射する噴射口81oを有する。ノズル81bは、噴射口81oがドラム容器18の外周面18gsと対向するように配される。
【0046】
ノズル31b及びノズル81bは、互いの噴射口31o、81oが対向するように、配される。また、噴射口81oから噴射される洗浄液の噴射パターンは、円状、楕円状又は線状であることが好ましい。更に、線状の噴射パターンは、ドラム容器18の母線方向にのびるものであることが好ましい。
【0047】
なお、ノズル31bの洗浄液の噴射パターン及びノズル81bの洗浄液の噴射パターンとは、同一のものでもよいし、異なっていても良い。また、ノズル31bの洗浄液の噴射パターン及びノズル81bの洗浄液の噴射パターンが共に線状である場合、互いに交差していても良いし、重なっていても良い。
【0048】
ドラム容器18の洗浄において、ドラム容器18への付着物を取り除くために大きな噴射圧が必要となる場合には、洗浄液の噴射により大きな力がドラム容器18に作用する。このため、ノズル31bからの洗浄液の噴射により、ドラム容器18が、回転ローラ21、22上で動き、不安定となる。この結果、回転ローラ21、22上において、ドラム容器18の回転がスムーズに行われない、又は回転ローラ21、22上からドラム容器18が脱落するなどの理由により、ドラム容器18の洗浄を安定して行うことができない。
【0049】
本発明では、ノズル81bの噴射口81oがノズル31bの噴射口31oに対向するため、ノズル81bから噴射した洗浄液によりドラム容器18にかかる力が、ノズル31bから噴射した洗浄液によりドラム容器18にかかる力の全て又は一部を打ち消すことができる。この結果、ノズル31bを用いて大きな噴射圧で洗浄液を噴射した場合でも、回転ローラ21、22上にてドラム容器18が安定する結果、ドラム容器18の洗浄を安定して行うことができる。
【0050】
ノズル31bからの洗浄液に起因する力が、ノズル81bからの洗浄液に起因する力の全て又は一部を打ち消すようにするためには、各ノズル31b、81bの配置位置に応じて、各ノズル31b、81bにおける洗浄液の噴射圧を調節すること等により可能となる。
【0051】
上記実施形態では、外周面噴射ユニット81から洗浄液を噴射したが、本発明はこれに限られず、外周面噴射ユニット81から洗浄液を噴射したが、その他の液を噴射しても良い。
【0052】
上記実施形態では、ドラム容器18の回転軸をドラム容器18の軸AXとしたが、本発明はこれに限られず、ドラム容器18の軸AXと平行な軸で、ドラム容器18を回転させてもよい。
【0053】
上記実施形態では、水平位置(図3(A)参照)のドラム容器18に対し洗浄液等を噴射したが、本発明はこれに限られず、斜め位置(図3(B)参照)のドラム容器18に対し洗浄液等を噴射してもよい。
【0054】
上記実施形態では、内周面噴射ユニット31と外周面噴射ユニット81とを1つずつ設けたが、本発明はこれに限られず、内周面噴射ユニット31からの洗浄液によりドラム容器18が受ける力の全て又は一部を打ち消すような位置に外周面噴射ユニット81が配されればよい。このような、各ノズル31、32の配置例を、図11ないし図13に示す。
【0055】
図11に示すように、噴射口31o、81oが互いに対向する内周面噴射ユニットと外周面噴射ユニットからなるノズル対を、複数設けてもよい。図12に示すように、ノズル31bを有する内周面噴射ユニットを1つ設け、内周面噴射ユニット31からの洗浄液によりドラム容器18が受ける力を打ち消すような位置に、ノズル81bを有する外周面噴射ユニットを複数設けてもよい。なお、ノズル31bを有する内周面噴射ユニットを複数設けても良い。図13に示すように、ノズル31bを有する内周面噴射ユニットを2つ設け、内周面噴射ユニットからの洗浄液によりドラム容器18が受ける力を打ち消すような位置に、ノズル81bを有する外周面噴射ユニットを1つ設けてもよい。なお、ノズル81bを有する外周面噴射ユニットを複数設けても良い。
【0056】
上記実施形態では、ノズル31bを有する内周面噴射ユニットとノズル81bを有する外周面噴射ユニットとを設けたが、本発明はこれに限られず、ノズル31bを有する複数の内周面噴射ユニットを設け、一方の内周面噴射ユニットからの洗浄液によりドラム容器18が受ける力の全て又は一部を打ち消すような位置に、他方の内周面噴射ユニットが配されればよい。このような、各ノズル31bの配置例を、図14に示す。図14において、右側のノズル31bはドラム容器18の洗浄用のものであり、左側のノズル31bは、右側のノズル31bからの洗浄液によりドラム容器18が受ける力の全て又は一部を打ち消すためのものである。左側のノズル31bは、噴射した洗浄液が右側のノズル31bの噴射エリアに到達する前に流下するような位置に設けられることが好ましい。こうして、左側のノズル31bから噴射した洗浄液は、右側のノズル31bの噴射エリアに到達する前に流下するため、右側のノズル31bによる洗浄の阻害要因とならない。このように、図14に示す実施形態も、ドラム容器18の洗浄と、ドラム容器18の回転の安定化とを両立することができる。
【0057】
上記実施形態では、内底面噴射ユニット34を内周面噴射ユニット31に連結させて移動させたが、本発明はこれに限られない。例えば、最初に、内底面噴射ユニット34をドラム容器18内へ挿入した後、内底面18ntの洗浄を行なう(図15参照)。洗浄後、内底面噴射ユニット34をドラム容器18の外へ移動させる。次に、内周面噴射ユニット31をドラム容器18内へ挿入した後、内周面18neの洗浄を行っても良い。なお、必要に応じて、外周面噴射ユニット81を併用して、内周面18ne及び外周面18gsの洗浄を行っても良い(図16)。
【0058】
図17に示すように、軸AXから内底面噴射ユニット34から洗浄液が噴射する方向にのびる第3線分L3と第1線分L1とがなす角の角度θ2は、10°以上90°以下であることが好ましく、20°以上75°以下であることがより好ましく、30°以上45°以下であることが特に好ましい。なお、θ2は、第1線分L1からドラム容器の回転方向を正として表す。また、図18に示すように、θ1とθ2とは等しいことが好ましい。
【0059】
更に、図19に示すように、ドラム容器18の外底面18gtへ洗浄液を噴射する外底面噴射ユニット100を併用しても良い。外底面噴射ユニット100は、配管100aと、この配管100aに設けられたノズル100bとを有する。ノズル100bは、噴射口100oを有する。外底面噴射ユニット100は、洗浄液が噴射される噴射口100oが外周面18gtと対向するように配される。外底面噴射ユニット100の洗浄液の噴射パターンは、円状、楕円状又は線状であることが好ましい。また、外底面噴射ユニット100の噴射パターンは、内底面噴射ユニット34の噴射パターンと重なることが好ましい。
【0060】
上記実施形態では、分岐管により分岐させた洗浄液を複数の噴射ノズルへ送ったが、本発明はこれに限られず、ポンプ36から複数の噴射ノズルへ洗浄液を個別に送っても良い。
【0061】
(洗浄液)
洗浄液としては、ドラム容器18の付着物の組成にもよるが、ドラム容器18内の残留物を溶かせるものであることが好ましい。洗浄液としては、例えば、水、中でも温度が60℃以上90℃以下の水を用いることが好ましい。また、ドラム容器18の付着物に、ゼラチンを含む乳剤が含まれる場合には、75℃以上85℃の水を用いることが好ましい。また、リンスとしては、水、特に純水を用いることが好ましい。
【実施例】
【0062】
(実験1)
ノズル31bを用いて、回転ローラ21、22上で回転するドラム容器18の内周面18nsへ洗浄液を噴射し、ドラム容器18の洗浄を行った。ドラム容器18の内周面18nsの移動速度は、400mm/秒であった。洗浄液には、80℃以上の水を用いた。洗浄液の噴射圧P1は3MPaであり、洗浄液の噴射量は14L/分であった。θ1は0°であった。
【0063】
(実験2〜9)
実験2〜9では、θ1を表1に示すものにしたこと以外は、実験1と同様にしてドラム容器18の洗浄を行った。
【0064】
【表1】

【0065】
(ドラムの洗浄評価)
以下基準に基づいて評価した。実験1〜21における評価結果を表1に示す。
◎:ドラム容器に乳剤が残っていなかった。また、ノズル31bに乳剤が残っていなかった。
○:ドラム容器に乳剤が残っていなかったが、ノズル31bに乳剤が若干残っていた。
△:ドラム容器に乳剤が残っていなかったが、ノズル31bに乳剤が残っていた。
×:ドラム容器には乳剤が残っており、ノズル31bには乳剤が残っていた。
【符号の説明】
【0066】
10、60 洗浄装置
12 回転ユニット
14、80 洗浄ユニット
18 ドラム容器
21、22 回転ローラ
24 モータ
31〜33 内周面噴射ユニット
34 内底面噴射ユニット
81 外周面噴射ユニット
100 外底面噴射ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が開口端のドラム容器を横たわった状態で保持するとともに、前記ドラム容器の軸又はこの軸に平行な軸を中心に一の方向へ前記ドラム容器を回転させる回転ユニットと、
前記開口端を通して相対的に前記ドラム容器の内部に挿入され、前記ドラム容器の内周面へ洗浄液を噴射する内周面洗浄ユニットと、
前記ドラム容器の内底面へ前記洗浄液を噴射する内底面洗浄ユニットとを有し、
前記内周面洗浄ユニットは、前記回転軸に直交する面において、鉛直の反対方向から回転方向へ角度θ1だけ移動した部分へ前記洗浄液を噴射し、
前記角度θ1は、10°以上90°以下であることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記ドラム容器へ液を噴射する噴射ユニットは、前記液により前記ドラム容器が受ける力が、前記洗浄液により前記ドラム容器が受ける力の全てまたは一部を打ち消すような位置に配されることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記噴射ユニットは、前記ドラム容器の外部に設けられ、前記ドラムの外周面へ前記洗浄液を噴射する外周面洗浄ユニットを備えることを特徴とする請求項2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記外周面洗浄ユニットは、前記内周面洗浄ユニットと対向する位置に配されることを特徴とする請求項3記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記内周面洗浄ユニットには、前記洗浄液を噴射し、他端側から前記一端側へ並ぶ複数の内周面噴射ノズルが設けられ、
前記噴射は前記内底面洗浄ユニットから前記内周面洗浄ユニットへ順次切り替えて行なわれ、
前記洗浄液の噴射は、他端側に配された前記内周面噴射ノズルから、前記一端側に配された前記内周面噴射ノズルへ順次切り替えて行なわれることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記内周面洗浄ユニット及び前記内底面洗浄ユニットには、それぞれ電磁弁が設けられ、
この電磁弁の操作により前記噴射の切り替えを行うことを特徴とする請求項5記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記ドラム容器の内部及び外部との間で、前記内周面洗浄ユニット及び前記内底面洗浄ユニットを移動する移動部を有することを特徴とする請求項1ないし6のうちいずれか1項記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−255315(P2011−255315A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132078(P2010−132078)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】