説明

活性材料素子を用いた射出圧縮成形方法及び装置

【課題】射出成形用金型内の溶融物を圧縮し、且つ/又は溶融物の収縮を補償するための方法及び装置を提供する。
【解決手段】装置は、キャビティプレートに隣接したキャビティ金型部と、コアプレートに隣接したコア金型部と、金型部の間に形成される金型キャビティと、コアプレートとコア金型部との間、及びキャビティプレートとキャビティ金型部との間のうちの一方又は両方に配置される少なくとも1つの圧電セラミックアクチュエータとを備える。コントローラが少なくとも1つの圧電セラミックアクチュエータに接続されて圧電セラミックアクチュエータを作動させ、それによって金型キャビティ容積を低減させ、溶融物を圧縮させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型キャビティ内での溶融物の圧縮を提供するために、活性材料素子が射出成形機の機器(たとえば、インサートスタック(insert stack)又はホットランナーノズルアセンブリ)に使用され、それにより、表面仕上げ及び寸法精度を含む成形品の品質を向上させるとともに、プラスチックの収縮を補償する方法及び装置に関する。「活性材料」とは、圧電セラミック、電歪素子、磁歪素子、形状記憶合金等の形状可変材料群のことである。本発明では、活性材料をセンサとして使用することも可能である。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
活性材料は、或る形のエネルギーを別の形のエネルギーに変換できる変換器として見なされる。たとえば、圧電アクチュエータ(又はモータ)は、入力された電気エネルギーを機械エネルギーに変換して素子の寸法を変化させ、その一方で圧電センサ(又は発電機)は機械エネルギー(素子の寸法形状変化)を電気エネルギーに変換する。圧電セラミック変換器の一例が、Berghausに付与された米国特許第5,237,238号に示されている。圧電アクチュエータの一供給業者は、Marco Systemanalyse und Entwicklung GmbH(Hans-Bockler-Str. 2, D-85221 Dachau, Germany)であり、この業者の広告及びウェブサイトには、このような装置が示されている。通常、1000ボルトの電位を圧電セラミックインサートに印加すると、圧電セラミックインサートの厚みがおよそ0.0381mm(0.0015″/インチ)(0.15%)「成長」する。別の供給業者であるMide Technology Corporation(Medford, Maine)は、磁歪素子及び形状記憶合金を含む種々の活性材料を有しており、この業者の広告及びウェブサイトには、材料仕様及び他の公表されている詳細を含め、このような装置が示されている。
【0003】
射出圧縮成形は、成形中の品物の特性を向上させるために多くの用途に使用されている。Mausに付与された米国特許第4,828,769号には、そのようなコンパクトディスク成形用途が開示されている。Kawaguchiに付与された米国特許第4,420,454号には、そのようなプラスチック缶成形用途が開示されている。通常、油圧作動シリンダ又は機械アクチュエータを使用して、こういった例で製品圧縮を実現するために利用される最終クランプ作業を行う。
【特許文献1】米国特許第5237238号公報
【特許文献2】米国特許第4828769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、必要とされるのは、或る程度の調整可能な制御を提供するとともに、好ましくは、埋め込みセンサ及び圧縮成形プロセスの閉ループ制御を提供する圧縮成形可能な新規の技術である。
【0005】
[発明の概要]
本発明の利点は、上記問題を解決する射出成形機装置及び方法を提供すること、及び、射出成形機で圧縮成形を行う有効で効率的な手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、射出成形用金型キャビティ内の溶融物を圧縮するための構造及び/又はステップが提供され、当該構造及び/又はステップは、射出成形用金型内に少なくとも1つの固定面を設けるステップと、少なくとも1つの活性材料素子を少なくとも1つの固定面上に載せるステップと、少なくとも1つの活性材料素子に隣接して少なくとも1つの可動金型面を射出成形用金型に設けるステップと、射出成形用金型に溶融物を充填するステップと、少なくとも1つの活性材料素子を作動させるステップであって、それによって少なくとも1つの可動金型面を少なくとも1つの固定面から離すように付勢して溶融物を圧縮する、作動させるステップとを含む。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、射出成形用金型キャビティ内の溶融物を圧縮する装置のための構造及び/又はステップが提供され、当該構造及び/又はステップは、射出成形用金型内の少なくとも1つの安定面と、射出成形用金型内の少なくとも1つの可動面と、各安定面に固定され、各可動面に隣接する少なくとも1つの活性材料素子と、少なくとも1つの活性材料素子に電圧印加して可動面を安定面から離れるように移動させ、それによって射出成形用金型キャビティのサイズを低減させるとともに溶融物を圧縮させる制御手段とを備える。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、射出成形用金型内の溶融物の収縮を補償するための構造及び/又はステップが提供され、当該構造及び/又はステップには、コアインサート、コアプレート、キャビティインサート、及びマニホルドプレートを有する射出成形用金型を設けるステップと、少なくとも1つの活性材料素子をインサートとプレートとの間に置くステップと、少なくとも1つの活性材料素子と通信するコントローラを設けるステップと、コントローラを使用して少なくとも1つの活性材料素子と通信するステップであって、それによって充填中にコアインサートとキャビティインサートとの間の金型キャビティを拡張する、通信するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明を組み込んだ金型スタックを示す図である。
【図2】前方すなわち圧縮位置にある、本発明を組み込んだ金型スタックを示す図である。
【図3】後方すなわち金型充填位置にある、本発明を組み込んだコアロック式プレフォーム成形スタックを示す図である。
【図4】前方すなわち圧縮位置にある、本発明を組み込んだコアロック式プレフォーム成形スタックを示す図である。
【0010】
本発明の現時点で好ましい特徴の例示的な実施の形態について、添付図面を参照しつつこれより説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[好適な実施形態の詳細な説明]
1.はじめに
本発明について、プラスチック射出成形機に、射出成形用金型キャビティ内の溶融物を圧縮させる働きをする1つ又は複数の活性材料素子が供給されるいくつかの実施形態を参照しつつこれより説明する。このような活性材料素子の他の諸用途が、(1)「Method and Apparatus for Countering Mold Deflection and Misalignment Using Active Material Elements」(PCT/CA2005/000415)、(2)「Method and Apparatus for Adjustable Hot Runner Assembly Seals and Tip Height Using Active Material Elements」(PCT/CA2005/000416)、(3)「Method and Apparatus for Assisting Ejection from an Injection Molding Machine using Active Material Elements」(PCT/CA2005/000346)、(4)「Method and Apparatus for Controlling a Vent Gap with Active Material Elements」(PCT/CA2005/000348)、(5)「Method and Apparatus for Mold Component Locking Using Active Material Elements」(PCT/CA2005/000377)、(6)「Method and Apparatus for Vibrating Melt in an Injection Molding Machine Using Active Material Elements」(PCT/CA2005/000418)、及び(7)「Control System for Utilizing Active Material Elements in a Molding System」(PCT/CA2005/000492)と題する関連出願において考察されており、これらはすべて本願と同時出願されている。
【0012】
上述したように、当該技術分野では、活性材料素子を使用してコア等の金型部を作動させて、金型キャビティ内の溶融物を圧縮させる方法及び装置が必要とされている。以下の説明では、圧電セラミックインサートを好ましい活性材料として説明する。しかし、磁歪素子及び形状記憶合金等、活性材料群からの他の材料を本発明により使用することも可能である。可能な代替の活性材料及びそれぞれの性質のリストを以下の表1に掲げ、これら活性材料はいずれも本発明により使用することが可能である。
【0013】
【表1】

【0014】
2.第1の実施形態の構造
本発明の好ましい第1の実施形態を図1及び図2に示し、図1及び図2は、キャビティブロック701、コアブロック702、可動キャビティインサート703、及び可動コアインサート704を備えたコールドランナーエッジゲート(cold runner edge gated)金型スタックを示す。可動インサートは、座金706及びバネ座金707が嵌装されたボルト705によって保持され、それによりバネ座金707がインサートを各ブロックの各溝切り欠きに向けて常時付勢する。
【0015】
可動キャビティインサート703及び可動コアインサート704には圧電セラミック素子708を設けることができ、それによりインサート703、704のうちの一方又は両方を作動させて、金型キャビティ内の溶融物を圧縮させることができる。圧電セラミック素子708はコンジット709によりコントローラ(図示せず)に接続される。
【0016】
可動キャビティインサート703及び可動コアインサート704は、圧電素子708に電圧印加する等してインサートを圧電セラミック素子708から離れて金型キャビティに向けて移動させることによって移動され、それによって移動中のキャビティ及び/又はコアインサートに隣接して成形中のパーツの壁厚を減じる。圧電セラミック素子708は、コンジット709を介してコントローラ(図示せず)に接続され、電圧印加されて溶融樹脂を圧縮させることができる。樹脂をキャビティ内に注入している間、及び/又はその直後のこのような圧縮は、完成した成形部の機械的特性を向上させる。
【0017】
プラスチックは、スプルー710、ランナー711、及びゲート712を介してキャビティ内に注入される。ブロック及びインサート内の冷却チャネル713が、素早く成形形状に固化するようにプラスチックを冷却する。金型が開いた後にエジェクタピン714が作動して、従来通りに成形部をコアから排出させる。代替の実施形態では、半分の成形スタックに1つのみの可動インサートが使用される。金型キャビティ内の溶融物の圧縮を満足のいくように行うには、1つのインサートで十分であり得る。単一インサートシステムを使用すれば、金型内の溶融物を圧縮する手段を設置するコストが低くなる。
【0018】
本発明の現時点で好ましい実施形態によれば、活性材料(たとえば、圧電セラミック)インサート708が、キャビティブロック701と可動キャビティインサート703との間、及びコアブロック702と可動コアインサート704との間に配置される。活性材料インサート708は好ましくは、配線コンジット709を通してコントローラ(図示せず)によって駆動されるアクチュエータであるが、無線制御法も可能である。また、素子を作動させて、金型に収容されている溶融樹脂を圧縮させるように射出成形部品を移動させることが可能な場所に限り、インサート708が金型アセンブリ内の他の場所に位置決めされることも考えられる。たとえば、アクチュエータは、キャビティブロック701とコアブロック702の境界に配置してもよく、図1に示す構成に代えて、又はこれに加えて、いくつかのアクチュエータを使用する代わりに単一アクチュエータを使用してもよい。
【0019】
圧電セラミックインサート708は好ましくは、矩形形状の単一アクチュエータである。現時点で好ましい一実施形態によれば、アクチュエータは約30.0mm厚であり、必要に応じた長さであることができる。1000Vの電圧がコンジット709を介して印加されると、およそ50マイクロメートル(50ミクロン)厚みが増す。しかし、複数のアクチュエータ及び/又は他の形状のアクチュエータの使用も本発明の範囲内であると意図され、したがって、本発明はインサート708のいずれの特定の構成にも限定されない。
【0020】
好ましくは、1つ又は複数の別個の圧電セラミックセンサをアクチュエータ708に隣接して(上述した関連する面のうちの任意の面の間に)設けて、可動キャビティインサート703と可動コアインサート704との間に溶融物があることによって生じる圧力を検出し、且つ/又は素子708の作動により溶融物に加えられている圧縮の程度を検出することができる。好ましくは、センサは感知信号をコントローラ(図示せず)に提供する。本発明の好ましい実施形態により使用される圧電素子(すなわち、圧電センサ及び/又は圧電アクチュエータ)は、Marco Systemanalyse und Entwicklung GmbH製のいずれの素子を含んでもよい。圧電センサは、素子708を使用して溶融物に印加されている圧力及び/又は圧縮を検出し、配線接続709を通して対応する感知信号を送ることにより、コントローラが閉ループフィードバック制御を行えるようにする。圧電アクチュエータ708は、配線接続709を通して作動信号を受け取り、作動信号に従って寸法を変え、対応する力をキャビティブロック701と可動キャビティインサート703との間、及びコアブロック702と可動コアインサート704との間に印加し、それにより可動キャビティインサート703と可動コアインサート704との間に配置された溶融物に加えられる圧縮の程度を調整可能に制御する。
【0021】
なお、圧電センサは任意の所望の位置での圧力を感知するように設けてもよい。同様に、2つ以上の圧電アクチュエータを設けて素子708を形成して(直列又は並列に搭載)、より大きな移動、角運動等を行ってもよい。さらに、各圧電アクチュエータを、様々な力を面間の様々な場所で提供するように別個に制御可能な1つ又は複数の弓形、台形、矩形等の形状に分けてもよい。さらに、圧電アクチュエータ及び/又はアクチュエータセグメントを2層以上に積層して、所望の通りに圧縮微制御(fine compression control)を行ってもよい。
【0022】
配線コンジット709は、圧電センサ信号を読み取り、且つ/又は作動信号を圧電アクチュエータに提供する任意の望ましい形態のコントローラ又は処理回路に結合される。たとえば、1つ又は複数の汎用コンピュータ、特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ゲートアレイ、アナログ回路、専用デジタルプロセッサ及び/又は専用アナログプロセッサ、ハードワイヤード回路等が、本明細書において述べる圧電素子31を制御又は感知することができる。1つ又は複数のプロセッサを制御する命令は、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードドライブ、CD−ROM、RAM、EEPROM、磁気媒体、光学媒体、光磁気媒体等、任意の望ましいコンピュータ可読媒体に、及び/又は任意の望ましいデータ構造で記憶することができる。
【0023】
本実施形態による素子708の使用により、上述した射出成形アセンブリの各種部品をより低い許容差で製造することも可能になり、それにより射出成形機部品自体の製造コストが低くなる。さらなる恩恵としては、金型内に収容されている溶融物の圧縮量をより効率的に調整可能なことが挙げられ、これにより製造している成形品の品質が向上する。
【0024】
3.第1の実施形態のプロセス
動作に際して、樹脂がスプルー710、ランナー711、及びゲート712を介して注入されてキャビティを充填する。圧電素子708はコンジット709を介して電圧印加されて互いに向かって移動し、それによって素子間のプラスチックの壁厚を減じる。図2は、圧電セラミック素子708をこのように電圧印加された、又は作動された位置で示し、こうして壁厚を減じたパネルが形成される。代替の実施形態によれば、金型キャビティの一方の側から作用する単一のインサートを使用して溶融物を圧縮し、より低い機器コストでパーツに壁のより薄い部分を形成してもよく、いくつかの用途では、この代替の実施形態が好ましい。パーツが固化し、金型が開かれ、パーツが排出された後、圧電セラミック素子708は電圧遮断されて、次のサイクルに備えて前の(退避)位置に戻る。この技法は、パーツの壁厚を、従来通りに射出成形することができるよりも薄くする必要がある用途に、又は局部的に圧力のないパネルを形成するために使用することができる。
【0025】
圧電素子708が閉ループ制御構成と併せて使用される場合、センサ素子は、可動キャビティプレート703と可動コアプレート704との間の圧力及び/又は圧縮に応答して信号を生成し、コンジット709を介してその信号をコントローラ(図示せず)に送る。センサから受け取った信号に基づいて、コントローラは適切な作動信号を生成し、コンジット709を介してその作動信号をアクチュエータ素子708に送り、センサから受け取ったデータに従ってアクチュエータ素子708に電圧印加し、可動キャビティプレート703と可動コアプレート704との間に収容されている溶融物の適宜圧縮を実現する。たとえば、コントローラは、圧縮力が一定のままであるように、又は所定のスケジュールに従って、時間、温度、及び/又はサイクル数に基づいて圧縮を増大し、且つ/又は低減するようにプログラムすることができる。
【0026】
4.第2の実施形態の構造
本発明の好ましい第2の実施形態を参照して、図3及び図4に、一対のネックリング622a及び622b、ロックリング624、コア623、コア冷却管660、コアシール640、コア圧電セラミック作動スリーブ631、電源接続633、コアバネセット661、及びロックリングボルト662を含むコア半体を備えるプレフォーム成形スタック601を示す。ロックリング624はフランジ625を有し、ボルト662がフランジ625を通ってロックリングをコアプレート629に固定する。コア623は、スピゴット664によってコアプレート629内に配置され、1つ又は複数の皿バネ座金を含むバネセット661によってコアプレート629に対して付勢される。
【0027】
圧電セラミック作動スリーブ631はコアプレートに位置決めされ、作動すると、力をコア623の基部に対して付与してコアプレート629から離し、それによってバネセット661を圧縮する。コアは、ロックリング624の内面の相補形面663に接触するテーパ状になった位置合わせ面639を有し、それにより、作動すると、コアは図4に示すように上記テーパに当接して前方向に保持される。圧電作動スリーブ631は、コア623をこの位置に保持するのに十分な力を提供して、成形サイクルの固化段階中のコアの安定性及び位置合わせを確保する。圧電セラミックインサート631は好ましくは、環状形及び/又は管状形である。現時点で好ましい一実施形態によれば、アクチュエータは約30.0mm長、25.0mm径であり、1000Vの電圧がコンジット633を介して印加されるとおよそ50マイクロメートル(50ミクロン)長さが伸びる。
【0028】
コアは円筒部666も有し、円筒部666は、ロックリング623の相補円筒部667に接触して摺動しながら封止し、それにより、面666と667との間の相対的な軸方向の移動を可能にしながら、成形材料がこの円筒境界を通って面666と667との間から漏れ出ることを防止する。
【0029】
オプションとして、1つ又は複数の別個の圧電セラミックセンサを設けて、コア623とキャビティ665との間にある溶融物によって生じる圧力及び/又は圧縮を検出してもよい。こういったセンサもまたコンジット633によりコントローラに接続してもよい。本発明により使用される圧電素子(すなわち、圧電センサ及び/又は圧電アクチュエータ)は、Marco Systemanalyse und Entwicklung GmbH製のいずれの素子も含むことができる。圧電センサは、コア623とキャビティ665との間に収容されている溶融物の圧力/圧縮を検出し、コンジット633を通して対応する感知信号を送り、それにより閉ループフィードバック制御を行うことができる。次いで、圧電アクチュエータはコンジット633を通して作動信号を受け取り、対応する力を印加する。なお、圧電センサは、任意の所望の位置から圧力及び/又は圧縮を感知するように設けることができる。同様に、2つ以上の圧電アクチュエータを、本明細書において述べるいずれの単一アクチュエータに代えて設けてもよく、アクチュエータを、より広い移動、角運動等を行うように直列又は並列に取り付けてもよい。
【0030】
上述したように、上記活性素子インサートを使用することの大きな利点の1つは、射出成形用金型の部品に用いられる製造許容差を広げることができ、それにより部品加工コストが大幅に低減することである。上述した構成に圧電セラミックインサートを使用することの別の利点は、圧電セラミックインサートは溶融物の圧縮を向上させ、これにより嵩張る又は高価な圧縮装置を必要とすることなくより高い品質の成形品が得られることである。
【0031】
5.第2の実施形態のプロセス
第1の実施形態のプロセスと同様に、動作に際して、圧電セラミック作動スリーブ631への電圧を遮断するとともに、バネセット661にコア623をコアプレートに当接して保持させることにより、コア623が図3に示すように後方位置に保持される。円筒相補面666及び667が、入ってくる樹脂がそれぞれの境界から漏れ出るのを防止する。充填時間中、又は金型キャビティ充填直後のいずれかに、圧電セラミック作動スリーブ631が作動してコア623を前方向に付勢し、金型キャビティ内の溶融物を圧縮する。コアは、相補テーパ状面636及び639によって位置合わせされて、その最終前方向位置で、求められる寸法構成を有するように成形品を形成させるのに望ましい位置にセンタリングされ位置合わせされる。パーツが十分に冷却した後、金型が開かれ、パーツは従来通りに排出される。
【0032】
代替の動作は、圧電セラミック作動スリーブ631を使用して、成形サイクルの冷却部分中に金型コアインサートを進めて、成形品の局所により薄い壁部を持たせることである。このような一用途は、内蔵される電子チップを収容するためにプラスチックカードに局所凹部が形成される「スマートカード」の製造であり得る。
【0033】
代替の実施形態では、センサ(図示せず)として機能する圧電セラミック素子を、作動素子と併せて使用して、上述したように閉ループフィードバック構成を提供する。センサ素子は、コア623とキャビティ665との間にある溶融物の圧力及び/又は圧縮に応答して信号を生成し、電源接続633を介してその信号をコントローラに送る。センサから受け取った信号に基づいて、コントローラは別の信号を生成し、接続633を介してその信号をアクチュエータに送り、センサから受け取ったデータに従ってアクチュエータに電圧印加して、金型内に収容されている溶融物の効果的な圧縮を実現する。
【0034】
プレフォーム成形での射出圧縮を利用することによりプラスチック収縮を補償することができ、それにより、収縮した分を埋め合わせるために追加材料を金型キャビティ内に供給する間、金型ゲートを開いているように保持する必要がないため成形サイクルが短縮される。充填中にコアを退避位置に保持することによって提供される追加容積がこの「収縮補償」分を提供し、それによってゲートをサイクルのより早い時点で閉じることが可能になる。第2の利点は、プレフォームの上部シーリング面(TSS)がコアが進むにつれて溶融物を圧縮することにより形成され、それによってプレフォームにおいてこの重要な特徴である表面仕上げの品質が向上するとともに、寸法精度が向上することである。
【0035】
6.おわりに
したがって、説明してきたのは、活性材料素子を射出成形機に別個に又は組み合わせて使用して、射出圧縮成形用の射出成形装置に有用な改良を行うための方法及び装置である。
【0036】
本発明による有利な特徴としては、1.金型コアを移動させるための圧電セラミック素子が単独で、又は組み合わせて使用され、それによって収縮の補償に使用することができる充填のために追加の金型キャビティ容積が提供されること、2.閉ループ制御される力発生ユニットを使用して、金型キャビティ内の射出圧縮成形プロセスを提供すること、3.局所力発生ユニットを使用して、コアインサートを進めて、最終成形品の周壁部よりも薄い、局所形成された壁部を提供させること、及び4.局所力発生ユニットを使用して壁部の厚さを動的に調整することが挙げられる。
【0037】
本発明は、プレフォーム軸に垂直な略円形の断面形状を有する射出成形PETプラスチックプレフォームに明確な利点を提供するが、本発明は、バケツ、塗料缶、運搬箱、及び他の同様の製品等、場合によっては非円形の断面形状を有する他の成形製品にも等しく適用できることを当業者は認識するであろう。このような成形製品はすべて添付の特許請求の範囲内にある。
【0038】
添付図面中に略図で示す、すなわちブロックで示す個々の部品はすべて、射出成形分野において既知のものであり、それぞれの固有の構造及び動作は、本発明を実施するための動作又は最良の形態にとって重要ではない。
【0039】
本発明について、好ましい実施形態であると現時点で考えられるものを参照して説明したが、本発明は開示された実施形態に限定されないことを理解されたい。それどころか、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる各種変更及び均等構成を包含するものである。以下の特許請求の範囲は、このような変更及び均等構造及び機能をすべて包含するように最も広い解釈に従うべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形用金型内の溶融物の収縮を補償する方法であって、
コア(623)を後方位置に保持するステップと、
樹脂を金型内のキャビティに流し込むステップと、
圧電セラミックアクチュエータ(631)を作動させるステップであって、それによってロックリング(624)を変位させて、該ロックリング(624)の相補テーパ状位置合わせ面(636)を前記コア(623)のテーパ状位置合わせ面(639)と係合させ、前記樹脂の固化段階中にコアの安定性及び位置合わせを提供する、作動させるステップと
を含む、射出成形用金型内の溶融物の収縮を補償する方法。
【請求項2】
射出成形用金型のキャビティ内の溶融物の収縮を補償する装置であって、
コアプレート(629)に隣接するコア(632)と、
前記コア(632)の表面に配置されたテーパ状位置合わせ面(639)と、
前記コア(632)の一部の周囲に配置されるロックリング(624)と、
前記ロックリング(624)の表面に配置された相補テーパ状位置合わせ面(636)と、
前記コアプレート(629)と前記コア(632)との間に配置される少なくとも1つの圧電セラミックアクチュエータ(631)と
を備え、
前記圧電セラミックアクチュエータ(631)の作動により、前記ロックリング(624)が変位して、前記相補テーパ状位置合わせ面(636)を前記テーパ状位置合わせ面(639)と係合させ、固化段階中にコアの安定性及び位置合わせを提供する、射出成形用金型のキャビティ内の溶融物の収縮を補償する装置。
【請求項3】
前記ロックリング(624)と前記コア(623)との間に配置されるコアバネセット(661)をさらに備え、該コアバネセット(661)は、使用中に、前記相補テーパ状位置合わせ面(636)を前記テーパ状位置合わせ面(639)から係合離脱させる、請求項2記載の射出成形用金型のキャビティ内の溶融物の収縮を補償する装置。
【請求項4】
使用中に、溶融物の圧力を検出するセンサをさらに備える、請求項2又は3記載の射出成形用金型のキャビティ内の溶融物の収縮を補償する装置。
【請求項5】
使用中に、圧縮を検出するセンサをさらに備える、請求項2又は3記載の射出成形用金型のキャビティ内の溶融物の収縮を補償する装置。
【請求項6】
前記圧電セラミックアクチュエータ(631)は、直列に搭載された複数の活性材料素子である、請求項2〜5のいずれか1項記載の射出成形用金型のキャビティ内の溶融物の収縮を補償する装置。
【請求項7】
前記圧電セラミックアクチュエータ(631)は、縦続に搭載された複数の活性材料素子である、請求項2〜5のいずれか1項記載の射出成形用金型のキャビティ内の溶融物の収縮を補償する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−42684(P2010−42684A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261655(P2009−261655)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【分割の表示】特願2007−508689(P2007−508689)の分割
【原出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(595155303)ハスキー インジェクション モールディング システムズ リミテッド (88)
【氏名又は名称原語表記】HUSKY INJECTION MOLDING SYSTEMS LIMITED
【Fターム(参考)】