説明

流体の低温貯蔵用セルタンク

本発明はLNGのような極低温の流体を貯蔵するタンクに係り、タンクは天板と側壁と床部とを形成する外部プレートと、内部セル構造体とを備える。内部セル構造体はタンク底部のレベルでセル構造体のセル間で流体を連通させる。外部プレートの少なくとも一部が積層構造から成り、この場合内部セル構造体は外部プレートに対して自己平衡型支持体または固定部材として形成される。本発明はまた、流体貯蔵用タンクに使用するセル構造体にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の貯蔵用タンク、好適には流体の低温貯蔵用タンク、タンクに使用するサンドイッチ構造体、およびタンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化天然ガス(LNG)の貯蔵は、LNGバリューチェーン(価値連鎖)の全領域、すなわち、
a) 固定式及び浮遊式海上生産設備(液化設備)
b) 陸上生産及び貯蔵設備
c) 船舶による水上輸送
d) 固定式及び浮遊式海上インポートターミナル及び場合により設置可能な再ガス化設備
e) 陸上インポートターミナル及び再ガス化設備
において低温かつ大気圧近傍で行う必要がある。
【0003】
海上生産設備および輸入ターミナルは、LPGの価値連鎖における新たな領域であり、現時点においてもいくつかのプロジェクトや構想に関する研究が進められている。浮遊式生産設備および輸入ターミナルに関しては、貯蔵タンクはこれまでとは違った程度の充填率を経験することになり、このことがタンクシステムの種類によっては問題となろう。波によって引き起こされる構造体の運動により、部分的に充填されたタンクの内部に流体の波動や動的運動が生じ、タンク構造体に対して大きな動的圧力がかかる。この現象がスロッシングと呼ばれるもので、大半の既存タンクにおいて構造的な問題となり得るものである。
【0004】
海上生産設備の場合、タンクの形状が重要となる。これは、通常の場合、タンクはタンク上方のデッキに設置される処理装置とともに構造体の内部に設置されるためである。角柱状のタンクが好ましいとされるのは、タンクに対して使用可能とされる容積を最大限に利用できるためである。海上生産設備に関してもう一つ重要な側面は、タンクの製造と据付である。プレハブ式タンクは一体としてあるいはいくつかに分けた形で現場まで搬送することのでき、全体的な建設時間とコストを削減することができる。完全にプレハブ式のタンクの場合、据付前に漏れ試験を行うことも可能である。濾過タンクシステムの建設は複雑であり、建造現場において完成後の構造体の内部で行う必要があり、これには12ヶ月以上の建造時間を要するのが普通である。
【0005】
船舶による水上輸送については、フランスのGTT社(Gaz Transport et Technigaz)が開発したモス球形タンクシステムと濾過タンクシステムの2つのタンクシステムが市場を独占している。これに日本の石川島播磨重工(IHI)社が開発した自立式SPBタンクも加えられよう。今日納品されているLPG船舶の大きさは最大で138,000〜145,000mであるのに対し、市場では200,000〜250,000mの船舶が要求されている。このような大きさの船舶は、既存のタンクシステムに対して新たな設計上の問題を提起するものである。既存タンクシステムにとって主たる問題の一つが建造時間の長さである。145,000m級のLPG船舶の一般的な建造時間は、主たるネックとなるタンクシステムの建造および試験時間も含めて20ヶ月前後となる。現在計画されている海上での荷役作業の実施に関連して、部分的な充填とそれに伴う動的スロッシング圧力に対応するタンク設計の必要性という新しい問題が出て来ている。
【0006】
モス式球形タンクの概念は、当初1969年から1972年にかけて、アルミニウムを低温材料として使用して開発されたものである。その設計は、部分的な二次防壁を有する独立式タンクである。断熱は通常の場合、タンク壁の外面に発泡プラスチックを貼付して行う。船舶や海上設備に関しては、球形タンクの概念は容積が限られていることから使用率は低く、また海上設備のデッキが平坦である可能性があるため、使用に適さない。
【0007】
濾過タンクシステムの開発は1962年に開始され、その後もテクニガス社(Technigaz)によって開発が進められている。今日のシステムは、薄いステンレス鋼またはインバール鋼から成る一次防壁と、パーライトを充填した合板ボックスまたは発泡プラスチックからなる断熱層と、インバール鋼またはトリプレックスの二次防壁と、二次断熱層とで構成される。ステンレス鋼製の膜の場合、熱膨張および収縮に対応するように膜を波形とするのに対し、インバール鋼製の膜は波形にする必要はない。建造に関して言うと、このシステムは多くの専用部品を含む上に溶接個所も多いため、かなり複雑である。膜の溶接や波形成形によって、応力集中のばらつきやスロッシングによる応力のばらつきを生み、これら全てが疲労による亀裂につながる可能性があり、結果的に漏れを生じる危険性が高くなる。部分的に充填されたタンクの場合、波によって誘発される船舶の動きによる流体のスロッシングがこれらのタンクに対する制限事項となっている。通常の場合、10%から80%の無充填が海上航行において許容される。スロッシングは一般に、タンク内壁、特に隅の部分に大きな動的圧力を付与し、これが膜や下層の断熱材に損傷を与えることがある。もう一つの問題は、二次防壁の検査を行えないという点である。
【0008】
IHI社開発のSPBタンクは、部分的に二次防壁を備えた独立式角柱形タンクであり、伝統的な直交補強プレート・フレームシステムとして設計されている。このシステムは、プレートと補強システムから成り、補強システムは従来設計の船舶構造体と同様に、スチフナ(補強材)、フレーム、ガーダー、ストリンガー(縦材)、バルクヘッドから構成される。これらの構成要素により、スロッシングが問題視されることはないが、小部品の多さと局所的な応力の集中により、このタンクシステムに関しても疲労は問題視されたと思われる。タンク外表面に断熱材が取り付けられており、ウッドブロック支持体の上にタンクが載置される。
【0009】
モービル・オイル社では、特許文献1に記載のように、陸上または地上構造体に載置してLPGを貯蔵する箱形多角形タンクを開発している。このタンクはトラス補強の内部リジッドフレームから成り、フレーム上にカバーを備えてタンク内に貯蔵液を収容する構成としている。トラス補強の内部リジッドフレームによってタンク内部は完全に連続的となり、地震活動により生じる短い励起による貯蔵液のスロッシングから付与される動的荷重に耐えることができる。タンクはいくつかに分けて事前製造されており、現場で組立てられる。タンク構造体は多くの小部品と多くの応力集中個所があるため、耐用年数の点で課題が残る。
【0010】
陸上輸入ターミナルおよび再ガス化設備に関しては、円筒形タンクが市場を独占しており、シングル・コンテインメント・タンク(single containment tank)、フル・コンテインメント・タンク(full containment tank)、またはダブル・コンテインメント・タンク(double containment tank)として構成されている。シングル・コンテインメント・タンクは内側のタンクと外側の容器から成る。内側のタンクは低温材料、通常は9%ニッケル鋼で形成され、円筒形の壁部と平坦な底部から形成される。内側タンクにはプレストレス・コンクリートとアルミニウムも使用されている。外側容器は一般に炭素鋼で形成されるが、外側容器は断熱材を定位置に保つ機能しかなく、内側タンクが故障した場合でも特に保護するものではない。
【0011】
世界で最近建造されているLPG貯蔵タンクの大半は、ダブル・コンテインメント・タンクまたはフル・コンテインメント・タンクとして設計されたものである。これらのタンクでは、内側タンクが故障した場合、内側タンクの全量を外側タンクで収容する設計となっている。フル・コンテインメント・タンクの場合、外側タンクまたは外壁をプレストレス・コンクリート壁で形成し、内側タンクから1〜2メートルの間隔を空け、その間隙に断絶材を入れて構成するのが普通である。従来の陸上LPGタンクは高価であり、建設に約1年を要する上、相当の基礎構造を要する立地に建設する必要がある。
【0012】
【特許文献1】特許出願PCT/US99/22431号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の主たる目的は、高効率の自重支持式低温タンクであって、六面体または角柱形状を有し、完全に拡張可能な新型タンクを提供することにある。すなわち、本発明のタンクは原則的に任意の方向、任意の寸法、大きさに拡張可能であり、主に反復構造の原理に基づくものである。また、その耐用期間において受ける数多くの圧力および温度変動に耐え得るタンクを提供することを目的とする。
【0014】
本発明の別の目的は、容積効率の高いタンク、すなわち、一般的には六面体、矩形、角柱状に分断されてタンク周辺に残されている空間(例えば、船舶の貨物倉、水上プラットホームの格納スペース、陸上プラントの細分化された空間など)をできるだけ埋めることができるようなタンクを実現することにある。
【0015】
発明のさらに別の特長と目的は、船舶や海上施設に設置されたタンクに関して、内部流体スロッシングの問題を解決するタンクシステムを提供することにある。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、断熱式自重支持式タンクであって、パーツに分けて、あるいは全体を事前製造した上で最終的設置場所または設置位置まで運搬することのできるタンクを提供することにある。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、疲労性状、設計寿命、点検の簡便性という点で改善され、動作能力を強化した低温タンクを提供することにある。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、同様の用途の既存タンクシステムと経済的、技術的に競合できるタンクシステムを開発することにある。
【0019】
本発明のさらに別の目的は、内蔵式システムまたはセル構造のタンクであって、一つの場所で事前製造した後、別の場所、例えば船舶、浮遊式ターミナル、陸上の敷地などに輸送して配置することのできるタンクを提供することにある。
【0020】
本発明のタンクは、充填・排出システム、監視システムなど、動作上の目的にあわせて幅広く装備することができる。
【0021】
上記の目的は、請求の範囲に定める本発明によって達成されるものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、流体を極低温貯蔵するための角柱または六面体タンク、あるいは収容システムに関する。側壁、床板、天板の各要素を備える外部タンクの、少なくともいくつかの要素がプレート構造から成り、このプレート構造が構造要素の目的を果たしてタンクに液漏れ耐性を付与する。一実施形態では、プレート構造がタンクに必要とされる断熱性または断熱性の一部をも付与する。プレート構造(プレート)は、少なくともサンドイッチ構造を含む積層構造を有する。ここで言うサンドイッチ構造とは、少なくとも2つの層がコア材により結合または接合されており、層間で荷重を伝達する構造を指す。2層の間にコア材を挟んで成るサンドイッチ構造の特別な実施形態として、外層に多数の貫通凹部を形成し、これらの凹部を薄膜材料で被覆したものがある。
【0023】
壁部の外部プレート構造体は、自己平衡性の通常は薄い内部セル構造壁システムによって固定されており、この内部セル構造壁システムは、外壁が受ける静的および動的荷重に対して外壁を効果的に固定する。好適な実施形態では、積層プレート構造体は、金属または同様の性質を持つ他の材料から成る少なくとも2つの表面シートと、その間に挟まれたコア材とを有するサンドイッチ構造から成る。サンドイッチ構造のコア材は、連続した材料としても良いし、様々な形状のウェブで、2層のシートの間に該シートと概ね平行な方向にセルを形成する構造としても良い。このような内部構造の場合、シート間にハニカム状、その他同様の形状の構造とすることができる。重要なのは、サンドイッチ構造のコア材が2層のシート間で荷重を伝達することである。このサンドイッチ構造の外側および/または内側に断熱材を追加的に設けても良い。このように2層のシートとコア材とから成るサンドイッチ構造を用いた場合、サンドイッチ構造の2層のシート間にガス検出手段を配設することもできるという利点が得られる。
【0024】
タンクの形状は様々な角柱形状とすることができるが、定型的なものは六面体または“箱型”の形状である。外部側壁または側板と底床またはプレートは、静的・動的な流体圧に曝されるため、このような荷重に耐えるように設計される。サンドイッチ構造の金属シートまたはプレートがコア材に関して必要な曲げ強度を与えるが、コア材は剪断力を伝達する役割を主に果たす構造または材料で形成されている。サンドイッチ構造のコア材がタンク断熱材の一部を形成するようにしても良く、例えばコア材またはコア構造の少なくとも一部を熱伝導率の非常に低い材料で形成すれば良い。外部補強材を用いることで外部プレートに十分な強度と剛性を与えることができる。
【0025】
外壁は、垂直交差線において内部セル構造体の壁に効果的に固定され、プレート作用による荷重をこれらの支持体に実質的に伝達することが必要である。同様に、流体圧と共に自重にも曝される床板についても、積層構造、好ましくはサンドイッチ構造とするのが良い。床板または床部は、これらの荷重を、適宜に配置された支持手段、例えば内部セル構造壁システムの格子点に実質的に伝達する。これらの支持手段は、後述するが、基礎部分に関して相対的な熱運動を与えるものである。内部セル構造壁は、外壁から伝達される圧力荷重により、主に自身の平面において水平方向に圧力を受ける。陸地に設置されるタンクの場合、内部セル構造壁は「全応力設計」の原則による寸法の非常に薄いプレートとすると良い。非常に薄いプレートは取扱いが難しいかもしれないが、これを改善する方法については後述することにする。移動する基礎の上に設置されるタンクの場合、内部セル構造壁は貯蔵する流体から受ける動的荷重に対応する設計とする必要がある。
【0026】
サンドイッチ構造の場合、タンクの外部プレート部分におけるコア材は、部分的断熱と構造的な剛性の2つの機能を果たすことになるが、そのためには、これらの目的を達成するのに十分な強度と厚さが必要である。一実施形態では、断熱作用の大半をサンドイッチ構造のコア材によって行うようにすることができる。
【0027】
一実施形態では、コア材を連続的な材料層の形態とするが、コア材の材料としては、剛性、強度、熱伝導率、熱膨張(収縮)係数等の点で適した性質を有する種々の材料を用いることができる。一般には、細かい粒子成分と、より粗い粒子成分を母材中に混入させた混合材が用いられる。細かい粒子成分は、種々の砂、または種々の無機または有機材料が用いられる。粗い粒子成分として一般的に用いられるのが多孔質粒子であるが、これによって低重量で強度と断熱性が提供される。このような凝集体は、発泡ガラス、焼成発泡粘土でも良いし、あるいはその他土質材料またはプラスチック等の有機材料とすることができる。市販の凝集体材料の例としては、パーライト(Perlite)、リアベル(Liaver)、リアポール(Liapor)、レカ(Leca)などが挙げられる。軽量凝集体の代替として、結合前に母材の中に空気またはガスの気泡を導入する方法がある。結合材または母材としては、セメントペースト、珪酸、ポリマー等の典型的な結合材、あるいは本目的に適するその他の材料の中の一つまたは複数を用いることができる。所要の粘度、収縮低減または容積制御、適切な硬化速度、疲労性状等の特別な性質を達成する目的で特別な化学成分をペーストに加えても良い。混合物に金属繊維、無機繊維、有機繊維等を加えることにより、特に引張りにおける強度を高くすることができる。
【0028】
上述のように、コア材層は2つのシート層の間にウェブを挟んでシート間に様々な形状のセルを形成する構造とすることができる。これらのセルはその長手方向をシートと概ね平行に配列される。ウェブは、シートに関して概ね横断するように配列しても良いし、シートに関して90度以外の角度をもたせて配列しても良い。また、ハニカム構造のように形成しても良い。
【0029】
好適実施形態によりタンクの外部プレートにサンドイッチ構造を作成する方法はいくつかある。コア材は連続的材料の形態とすることができるが、この場合、コア材の流し込み成形を行う際に枠組みとなるシートの間に流体状に注入しても良い。あるいはコア材をプレートまたはブロックとして事前製造し、シートまたは相互に対してグラウトまたはグルーにより接着するようにしても良い。コア材は、その厚さ全体にわたって接着された材料層を積層したもので構成することもできる。材料についてもプレートにより異なるものにしても良い。
【0030】
サンドイッチ構造の変形例では、両シート層とコア材を一体として、全体構造として押出成形しても良い。あるいは、コア要素を押出成形した後、サンドイッチ構造の各シートに溶接しても良い。コア要素は、いくつかの別個の要素として形成した後、溶接してコア要素を形成するようにすることもできる。本発明のさらに別の変形例では、主にコア材料と寸法とが必要な構造的強度を実現するという目的を果たすと共に、さらに必要とされる断熱性は「サンドイッチ」構造の外側に設けられる概して非構造的な断熱層によって提供される。この場合、サンドイッチ構造のコア材は、良質のコンクリートのような比較的高強度の材料または構造体で形成することができる。連続的なコア材を用いる場合、コア材を例えば圧縮強度80MPa、1立方メートルあたりの重さ2400kgの「高強度」コンクリートとすることができる。外側に追加する絶縁材は、それほど大きな力に曝されることはないため、ロックウールやグラスウール等の安価な絶縁材を用いることができる。この場合、外部防壁のサンドイッチ部分は、内部の流体温度に相当する略均一な温度下におかれることとなる。したがって、このような壁部のサンドイッチ部分の収縮・膨張はやや均等なものとなる。外側の絶縁層が大部分の温度勾配を受けることになるが、塑性かつ非構造的材料から成るため、内側のサンドイッチ構造に生じる熱変形は吸収されて問題とはならない。
【0031】
タンク外部プレートのサンドイッチ積層構造体の内側表面シートは、十分な強度と共に、タンク内に貯蔵されている流体の熱的化学的環境に対する耐性を有する金属で形成されるのが一般的である。同様の特性を有する非金属材料で形成しても良い。LPG収容タンクの場合、その材料は、9%ニッケル鋼、または304、304L、316、316L、321、347等のオーステナイト系ステンレス鋼を用いることができる。その他の金属、アルミニウム合金、インバール鋼、あるいは複合材料を用いることもできる。外側表面シートは一般に、内側表面シートほど厳しい熱的、化学的環境に曝されることはないため、例えばより簡単な種類の炭素構造鋼などで形成することができる。内側表面シートにも外側表面シートにも言えることだが、その材料は溶接等の接合方法に適合することが必要であり、かつコア材が構造体であるかコア材料であるかを問わずコア材に対する結合性、あるいはコア材ブロックの結合剤に対する結合性に優れたものであることが必要である。
【0032】
高強度であっても断熱性の低いコア材料を用いる場合、サンドイッチ層の外側表面シートも内側表面シートとほぼ同様の熱形態に曝されることになる。このような場合、外側表層も実際の温度形態で十分な強度を維持できる合金とする必要がある。
【0033】
プレートにおけるサンドイッチ構造に補強材を設けることにより、サンドイッチ構造の各要素間の結合を高めると同時にその構造的強度を高めることができる。一実施形態では、コア材料自体はサンドイッチ構造に対してほとんど構造的強度を与えておらず、主に補強材によってその目的を達成している。補強材は様々な形態とすることができるが、好ましくは、一方の表面シートから他方の表面シートまで延びる幅と、例えばタンク構造体の底部から頂部へ延びる長さを有するプレート状の部材とするのが良い。格子構造の間に連続的材料を設けても良いし、空隙のある格子構造でサンドイッチのコア構造を形成しても良い。特殊なケースとして、外壁をサンドイッチ型プレートの代わりに、補剛プレート構造または箱型構造として形成する場合がある。このような場合、内部および外側の断熱材は構造的特性を要求されない。
【0034】
タンクを構成する主な要素は、側壁と床板と天板とを含み断熱された積層プレートから成る外部プレートと、実質的に外部プレートの自己平衡型支持体または固定壁として作用する一組の内部セル壁である。
【0035】
内部セル構造体を形成する固定用内部セル壁は、先に述べた内部シートの場合と同じ要件を満たす必要がある。すなわち、固定用内部セル壁は一般に同一材料から形成される。固定用内部セル壁は、いくつかの方法で形成することができる。また、相互に交差してセルを形成する板状シートとしても良いが、このセル構造は波形シートを用いても形成することができる。
【0036】
別の好適実施形態では、一方の側壁から反対側の側壁まで延びる複数の梁要素によってセル構造体が形成される。このセル構造体の形成は、まず第1の梁を、それに隣接する第2の梁を横切るように配設し、第3の梁を第1の梁と同様に第2の梁を横切るように配設し、第4の梁を第3の梁を横切るように配設することを繰り返して格子構造を形成することによって行う。この格子構造は上下に配置された梁の間、すなわち第1、第3および第5の梁と第2、第4および第6の梁の間に開口部を備える。換言すると、「丸太小屋」式に、丸太と丸太の間に隙間をあけるようにして梁が組み合わされる。また、タンクの一方の外壁から反対側の外壁まで梁を延設するのが好ましい。
【0037】
本実施形態のセル構造は、側壁に交差する平面Aにおいて、全ての梁Aがその長手方向を平面Aの方向に、かつ相互に概ね平行に配列される。これらの第1の梁Aの直ぐ上に配列されるのが第2の梁で、その全ての梁が第2の平面Bにおいてその長手方向を概ね平行に配列される。このように平面Aと平面BがABABABABの順番で必要なセル構造の高さに達するまで繰り返される。例えば第3の梁の層も設けるなど、他のパターンの配列も可能である。
【0038】
第1の梁と第2の梁の角度は、長方形または正方形のセルを形成する90度前後が好ましいが、交差する梁が60度と120度を形成する構成やその他の構成も可能である。
【0039】
好ましくは、ある層の梁が他の層の梁と交差する接点を直線状に配置して、荷重を例えばタンクの天板から床部へと伝達できる位置とする。
【0040】
梁構造に使用する個々の梁は、その断面をT字状、I字状としたり、あるいは単に矩形、管状など、様々な形状とすることができる。T字状またはI字状の梁とした場合、タンクの運動の結果として流体の流れに乱流を生じさせることにより、スロッシングによる損傷を防止することができる。また、梁のフランジは積層された梁の層の間の接触面積を大きくすることでセル構造を支持し、異なる層の梁の間の接触位置に剛性を与える働きもする。以上が標準的な梁の形状であるが、その他の断面形状を有する梁を用いても、側壁の固定、スロッシング効果の低減と共に構造内のセル間の連通という目的を達成することは可能である。
【0041】
強度を持たせるということと製造を容易にするという目的から、内部セル壁の交差部は別個の部材に壁部分を取り付けるという形で構成しても良い。この方法は、双方のセル壁が平坦なプレートである場合や、上述のような梁構造壁の場合に使用することができる。例えば、前記別個部材を管状または正方形断面の垂直梁とすることができる。内部セル壁自体は非常に薄い(数ミリ程度)ため、プレート式のセル壁の場合は特に、動的運動が生じる用途では横方向の強度を補強する必要がある場合ある。これは、片側または両側補強材を適当な間隔で取り付けるか、あるいは薄い内部壁板に水平に波形をつけて横方向の強度を与えることで達成することができる。なお、内部壁部分は非常に薄いものであるため、座屈する恐れが高く、それ自身垂直方向の負荷能力をほとんど持たないため、これらの内部壁部分の交差部に配置される上述の管状部材が実質的にセル壁の重量を支持する必要がある。この管状部材はまた、タンク自体の天板構造の重量も支持しなければならない。
【0042】
スロッシング現象は、流体の自由表面積の大きさによるところが大きいが、本発明では、その自由表面積が内部セル壁システムにより小さく区分されている。例えば、5〜10平方メートルの内部セルを用いることによって、スロッシングの問題はほとんどの場合解消されると言って良い。この場合、内部セル壁は流体の緩やかな動態作用を受けるので、それに適した設計とする必要がある。例えば、波形として曲げ強度および剪断力に対する強度をもたせる、梁にフランジをつけるなどの方法が挙げられる。同様に、好ましくはサンドイッチ構造の積層プレートとして構成される外部プレートについても、やはり緩やかなスロッシングの動的荷重成分を含み易い流体圧力荷重に対応する設計とする。スロッシングの問題がタンクの充填度と比較的無関係であることは、本発明の特筆すべき特長であり、事実、充填度が低いほど全流体圧は低減されるのである。
【0043】
内部容積を個別のセルに分割しても、プレート式セル壁の場合、セル壁下部に開口穴が設けられていることで、各セル内の流体の液面高さを等しくすると共に、点検や修理に際してどのセルにも人の手が届くようになっている。梁構造のセル壁の場合、壁を形成する梁と梁の間に開口部があって、連通性を付与している。必要に応じて、床面付近に開口穴を設けて、人の手が届くようにしても良い。重要なのは、セル構造の全てのセルの間に連通性をもたせることである。これらの開口部は底床近傍に配置し、開口縁部に関連させた補強部材を設けても良い。
【0044】
内部セル壁の格子は、全体かつ均等に応力方向に設けることができるが、プレート式セル壁に関しては非常に薄く(数ミリ)し、梁構造壁については重くならないようにする。内部のプレートには内部流体の低温および化学的環境に耐え得る高級で高価な合金を使用することが多いため、このことは重要である。前述のようにセル構造壁を非常に薄いプレートとした場合、セル構造壁の取扱いに問題が生じる。従って、本発明の一実施形態では、セル構造壁の両側に協同的端部要素を設け、これらの壁の両側がセル構造交差部において別のセル壁の片側と交わるように構成している。端部要素は、セル壁、ひいてはタンクのセル構造を補強する補強部材を形成する。梁式のセル壁構造の場合、梁を補強するためのフランジを梁に形成するのが好ましい。
【0045】
このようにして、セル構造体を合理的に製造および組立を行うことができる。外部プレートを積層サンドイッチ構造とした場合、側壁、床板および天板は、構造的要素として、または一部には絶縁要素として機能するため、経済的に非常に効果的である。さらに、タンクの外部だけでなく内部についても完全にモジュラー化され反復性のある構造となる。つまり、タンクの製造工程が高度に自動化されることになる。このこともまた経済性の向上に寄与することとなる。
【0046】
本発明の一変形例として、外壁の角部に丸みをもたせても良い。角部に丸みをもたせる理由の一つとして、構造モーメントの集中を低減できるということがある。もう一つの理由は、外壁の両側の間で熱的な応力を多少低減できるということである。
【0047】
タンクの製造方法は実際面だけでなく全体的経済性の観点からも重要である。モジュール化して、あるいは全体的に事前製造するということは、建設期間を短縮すると共に、タンクの製造と平行して船舶、プラットホーム、あるいはタンクを最終的に据え付ける現場の建設工事を行えるということを意味する。セル式タンクシステムは事前製造の度合いと製造工程の自動化度を非常に高いものにする。内部セル壁部分の全てが実質的に等しく、「組立ライン」式に大量生産することができる。その結合補強部材への取り付けについても、反復式に自動化して行うことができる。場合によっては、摩擦攪拌溶接、レーザまたはプラズマ溶接などの極めて効果的な溶接技術が考慮されても良い。また、外部プレートもセグメント式に製造した後、相互間と内部セル壁との間で結合しても良い。
【0048】
本発明によるタンクは、前述のように、異なる種類の流体の貯蔵に使用でき、+200℃から−200度の温度範囲で高性能を発揮するため、LPGの貯蔵に特に適するものである。本発明のタンクは、タンク内の超過圧力に耐えることができる。また、浮遊体上にも陸上の現場にも据付可能である。
【0049】
一つの固定点とタンクの回転を防止する手段とを有する支持システムの上にタンクを設置しても良い。また、砂地や同様の性質を有する場所に直接設置することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
図面を参照して、本発明の好適な実施形態に関して説明する。
【0051】
本発明によるタンク1は、外部プレートの形をとる側壁、天板および床板と、内部セル壁構造体とから成る。そのうち、図1では、3つの側板2と、床板4と、タンク1の内部空間を小さいセルに分割する内部セル壁構造体5が示されている。壁部、天板および床板、それらの接合部に関しては種々の構造が考えられるが、これらの全てを同様または異なる構成として良い。内部セル壁構造体についても、いくつかの構成方法が考えられる。これら各要素の各種実施形態について、以下に説明する。
【0052】
内部セル壁構造体5を形成する内部セル壁20は、平滑面を有する板状の形態をとり、床板4の高さの位置に、縁梁を備えることもある通路開口6を有し、セル間で内部連通するように構成されている。これによって、大型タンクの場合は点検・補修の際にセル間でのアクセスが得られるようになっている。タンクはこの他にも、図示されていない排出充填システム、検出監視システム、支持手段等を備える。
【0053】
図2は、側壁2と、セル壁20からなるセル構造5とを有する異なる実施形態のタンク1を示している。図1では、隅部の4つのセルが部分的に丸く形成され、その両端は直線となっているのに対し、本実施形態では、隅部の4つのセルが完全に丸みをつけて円弧状に形成されている。図3は、側壁2と、セル壁20からなるセル構造5とを有するさらに別のタンク1を示しており、ここでは側壁の角部が直角に形成されている。
【0054】
図4Aは、図1のタンクの細部を示す斜視図であり、外部プレート2が外側表面シート8と内側表面シート9との間にコア材10を挟んだサンドイッチ構造として形成されている実施形態を示す。このサンドイッチ構造には補強材11も含まれる。補強材はいくつかの形態をとることができるが、サンドイッチ構造の一方の表層から他方の表層まで延びるようにするのが好ましい。好適な実施形態では、補強材を板状要素とし、その幅をサンドイッチ構造の両表層間の距離に略等しくすると共に、長さは側壁の垂直方向に延びるように、好ましくは側壁の全高に亘って延びるようにする。図4Aでは、内部セル壁構造体を第1実施形態のセル壁構造と同様にし、セル壁を一重のプレート壁20で形成し、これらを交差部21において結合している。サンドイッチ構造が板状補強材11を有する個所で、例えば壁板20とサンドイッチ構造の内側表面シート9とを溶接するなどして、内側壁板20を側壁に固定するのが好ましい。これは、外壁と内部セル構造体との間で荷重が移動するという点で好ましい。壁板20は貫通孔(不図示)のパターンを有するように形成しても良い。
【0055】
図4Bは、内部セル壁構造体の第2実施形態を示す。本実施形態では、セル壁20が上下に配列された複数の梁要素28によって形成されている。梁28は、1組の梁28Aが第1層として配列され、第2層の梁28Bがこの第1層の梁28Aの上に、その長手方向の軸が第1層の梁28Aと交差するように配列される。第3層の梁28Aは、第1層の梁と主に平行になるように配列される。こうして、層ごとに長手軸の方向が異なるように配列された複数の層から成る格子構造が形成される。このようにしてセル壁が梁要素によって形成されるが、各セル壁の梁要素と梁要素の間に間隔をもたせている。これによって、セル間の連通を保証すると同時に、移動中の船舶に配置されたタンク内のスロッシングを防止する効果が得られる。セル壁20の交差部21においては、梁要素28Aと梁要素28Bが互いに上下に当接して各層の梁要素28A、28Bに対する支持部を形成すると共に、天板から床に荷重がかかった場合の伝達地点となる。
【0056】
梁要素28A、28Bは平坦な板状としてもよいし、あるいは断面形状をI字、T字、H字状としてもよい。I字、T字、H字状などのように端部に突縁をつけた断面形状とした場合、あるいは矩形管状、すなわち矩形の断面形状とした場合でも、ある層の梁の端部突縁が次の層の梁の端部突縁に当接して配置されるため、内部セル壁構造体をより安定した構造とすることができる。梁と梁を溶接するか機械的に固定することにより、内部セル壁構造体をより安定した構造にすることができる。セル壁構造体の1本の梁要素は、一方の外壁から反対側の外壁に達している。すなわち、1本の梁要素が複数のセル壁の一部を形成することになる。
【0057】
各セル壁20は、図4Aに示す実施形態のような平坦なプレート要素、複数の梁要素で形成され、補強手段(不図示)を備えるプレート要素、あるいは図5Aに示すような波形23を備えたプレート20とすることができる。波形プレート20の場合、その波形23は主に水平方向に伸びる。内部セル構造体は、交差部21において交差するセル壁23を含む。好適実施形態によると、交差部21は少なくとも1つの補強部材24を備える。補強部材は、全体的または部分的に管状(円形、矩形)とするか、相互に直角に配置された主要素から構成し、図5Aに示すように2つの隣接するセル壁の表面側に当接させる。壁板20の交差部の1つの角部にのみ補強部材を設けてもよし、1つ以上の角部または全部の角部に補強材を設けても良い。
【0058】
本発明によると、内部セル構造体をタンク外壁に固定するが、固定方法としていくつか考えられる。その一つが図4Aに示すもので、セル壁20を補強材の位置でサンドイッチ構造の内側表面シートに結合する。この方法では、サンドイッチ構造を通過してサンドイッチ構造の外側表面シートまで荷重を伝達することになる。もう一つの方法が図5Aに示すもので、固定要素14をサンドイッチ構造に配置する。この方法でも、外壁のサンドイッチ構造の外部に荷重が伝達される。もう一つの方法として、サンドイッチ構造の内部表層にセル壁20を溶接するだけの方法がある(図示せず)。
【0059】
この他、梁要素を含むセル壁構造体として特に適する実施形態を示したのが図5B〜図5Eであり、これらの方法は、平坦プレートを接合してセル壁構造体を構成した場合でも、波形プレートを接合して構成した場合でも利用可能である。
【0060】
図5Bでは、梁要素28Aが外壁2に取り付けられたフランジ40’に取り付けられており、外壁を横切る方向にタンクの空間内に向かって突出している。フランジ40’は梁要素28Aに接合する個所で大きく突出し、梁要素28Aと梁要素28Aの間で小さく突出する形状となっている。
【0061】
図5C〜図5Fでは、セル壁がいくつかの梁要素28Aで形成され、これらの梁要素28Aが接合要素40で結合された2つの要素2Aと2Bから成る外壁2に取り付けられている。図5C〜図5Eに示す接合要素40は、外壁2の要素を挿入するための概ねU字状の溝を備える。
【0062】
接合要素40はさらに、外部セル壁2を横切る方向にタンク空間内に延びるフランジ45を有して形成される。内部セル壁構造体、すなわち梁要素28Aをフランジ45に取り付ける方法はいくつか考えられる。図5Cに示す一実施形態では、梁要素28Aがフランジ45に溶接されている。図5Dに示す別の実施形態では、梁要素28Aが接合片41を介してフランジ45に取り付けられており、接合片41は梁要素28Aの一部とフランジ45の一部を配置するためのU字状の溝を2つ備え、ボルト孔42を貫通するボルトによってこれらの要素に接合されている。図5Eに示す第3の実施形態では、各梁要素にフランジ45を挿入するためのU字状の溝を形成し、例えば溶接等で接合している。
【0063】
図6A〜図6Bおよび図7A〜図7Bは、セル壁20のそれぞれ異なる実施形態を示しており、端部要素25と他の端部要素25が協同してセル構造の交差部において補強部材24を形成するように構成されている。
【0064】
図6Aは、セル壁20の断面を示す。セル壁の両端が、細長いL字状の断面を有する端部要素25に取り付けられている。
【0065】
L字の立ち上がり部分26において端部要素25がセル壁20に取り付けられ、下の部分27はセル壁と反対の方を向く。図6Aから分かるように、2つの端部要素25、25’の下部分27、27’はセル壁20の両側に位置するのが好ましい。
【0066】
図6Bは、図6Aに関連して説明した実施形態のセル壁20を4つ交差させた交差部の断面図である。4つ全てのセル壁の端部要素25(立ち上がり部分26と下部分27とを有するL字状)が交差部において作用し合って補強部材24を形成している。一つの端部要素25の立ち上がり部分26が別の端部要素25の下部分27に結合され、4つ全部が合わさって矩形の要素を形成する。L字状要素の接合は、溶接、螺子、ボルト、爆発鋲等を用いて行うことができる。
【0067】
図7A〜図7Bはさらに別の実施形態を示しており、図7Aでは、V字状の端部要素25’を両端に有するセル壁20’が示されている。
【0068】
図7Bでは、図7Aに示したのと同様のセル壁4つが交差部を形成し、その4つの端部要素25’が補強部材24’を形成する状態を示している。
【0069】
本発明によるタンク1の外部プレート、すなわち天板、側壁、および床板は、外側表面シート8と内側表面シート9との間にコア材を挟んだサンドイッチ構造とするのが好ましい。コア材は図8Aに示すように連続した材料とするか、あるいは図8Bと図8Cに示すような構造とすることができる。コア材は、少なくとも部分的に壁部の強度とタンクの断熱性を提供するものである。サンドイッチ構造は、外側表面シート8と内側表面シート9との間に構造体または補強材11を含む。これらは図8A〜図8Cに示すように種々の形状とすることができ、図8Aでは、直線状に横断する補強材であるのに対し、図8Bでは直線補強材が表層に対して90度以外の角度を成すように配列されている。また、表面層8、9と補強材とを一体として押出し成形しても良い。勿論、図8Aに示すような補強材の構造体の間に連続的な材料を配しても良い。
【0070】
図8Dに示す別の実施形態では、サンドイッチ構造がさらに、側部、上部または底部いずれかのプレートから外向きに突出する外部補強材12と外部断熱層13とを含んでも良い。外部補強材12は、図示のように外部断熱層13を部分的に通るように突出させても良いし、外部断熱層13を完全に貫通して突出させても良い。図8Dに示すように、内部セル構造体のプレート壁20と、サンドイッチ構造の補強材11と外部補強材12との間を接合しても良いし、補強材11と外部補強材12とでプレート壁20の長手方向の一部を形成するようにしても良い。補強材には、切り込みまたは凹部を形成するか、絶縁材を設けて補強材の熱伝達を低下させるようにしても良い。
【0071】
図9Aと図9Bに外壁2を角部で結合する方法の例を示す。図9Aに示す例では、外壁部分を挿入するための概ねU字状の溝を形成したコーナー要素16を備え、外壁部分はコーナー要素16に溶接される。図9Bに示す例では、外壁2のサンドイッチ構造の外側シートが、鋭角を形成するように溶接によって直接結合されている。
【0072】
図10Aと図10Bは、本発明のタンクを、サンドイッチ構造の外側表面シートとコア材とを除去して示す斜視図であり、内側表面シート9と、板状の補強材11とを示している。補強材11は、天板3と底板4の上を格子状に延びるとともに、側板2上を底部4から上部3に向かって延びている。また、床板4の補強材11の全ての端部および交差部には支持手段30が配されている。これらについては後に詳述することにする。
【0073】
図11は、本発明によるタンクを、側壁および天板を除去した状態で示し、図12は、図10のタンクの細部を示す図である。本実施形態では、タンクの側壁2は外部補強材12を備えており、補強材12は概ね水平方向と垂直方向に延びて格子状を形成している。これらの図から分かるように、内部セル構造体5のプレート壁20が外部補強材12の位置に沿って側壁2に接合されており、これによってタンクの構造的一体性という有益な効果が実現されている。本発明のこの実施形態の補強システムは、十分な強度を有するように設計されているため、断熱層には構造的強度を必要としない。
【0074】
本発明の一実施形態では、外部プレートと既存の隣接する構造システムを、一点または複数の地点で、あるいは線状の接触域に沿って、接合しても良い。接合の方法としては、弾性リンク、線形または非線形の機械装置、空気圧および/または油圧装置、またはそれらの組合せを用いることができる。これについては、どの図面にも示されていない。具体的な実施形態の一つとして、前記の支持手段を用いてタンク側壁を支持することがあるが、この他にも上述のように多くの実施形態が考えられる。セル壁を形成する梁構造体は、管状または矩形断面の輪郭を閉じた形状のものとしても良い。
【0075】
以上、本発明を様々な実施形態に基づいて詳細に説明してきたが、下記の特許請求の範囲に定める発明の範囲から逸脱することなく、上記実施形態には多くの変更および修正が可能である。セル構造体については種々の形状とすることができる。外部構造体は、例えば船舶のように構造体を取り囲むことによって横方向に支持しても良い。品質の異なる断熱層を複数層設けても良く、タンクを形成する異なる種類のプレートごとに断熱層を変えても良い。支持手段はタンクを横方向に支持するように配置しても良く、あるいはまた、他の側壁支持体、例えば船穀のような外部構造体としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一全体的実施形態に係るタンクを天板と側壁の一つを取り除いた状態で示す。
【図2】本発明に係るタンクの第2の全体的実施形態を示す。
【図3】本発明に係るタンクの第3の全体的実施形態を示す。
【図4A】図1のタンクの隅部の詳細を示す図であり、内部セル構造体の第1実施形態を示す。
【図4B】図1のタンクの隅部の詳細を示す図であり、内部セル構造体の第2実施形態を示す。
【図5A】第3実施形態の内部セル壁構造体を外部プレートに取り付けたタンクの細部を示す。
【図5B】第2実施形態の内部セル壁構造体を外部プレートに取り付けた第1の接続例の詳細を示す。
【図5C】第2実施形態の内部セル壁構造体を外部プレートに取り付けた第2の接続例の詳細を示す。
【図5D】第2実施形態の内部セル壁構造体を外部プレートに取り付けた第3の接続例の詳細を示す。
【図5E】第2実施形態の内部セル壁構造体を外部プレートに取り付けた第4の接続例の詳細を示す。
【図6A】第1実施形態のセル構造のセル壁の一実施形態を示す断面図である。
【図6B】図6Aに示した実施形態による4つのセル壁の交差部を示す断面図である。
【図7A】第1実施形態のセル構造のセル壁の別の実施形態を示す断面図である。
【図7B】図7Aに示した実施形態の4つのセル壁の交差部を示す断面図である。
【図8A】本発明によるタンクの外部プレートの第1の実施形態を示す断面図である。
【図8B】本発明によるタンクの外部プレートの第2の実施形態を示す断面図である。
【図8C】本発明によるタンクの外部プレートの第3の実施形態を示す断面図である。
【図8D】本発明によるタンクの外部プレートの第4の実施形態を示す断面図である。
【図9A】本発明によるタンクの外壁隅部の第1の変形例を示す立面図である。
【図9B】本発明によるタンクの外壁隅部の第2の変形例を示す立面図である。
【図10A】本発明によるタンクを、サンドイッチ構造の外側表層を除去した状態で示す図である。
【図10B】本発明によるタンクを、サンドイッチ構造の外側表層を除去した状態で示す、図10Aとは異なる方向から見た図である。
【図11】外部補強材を備えた本発明のタンクを、天板と一つの側壁を除去した状態で示す。
【図12】図8のタンクの一部を詳細に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクの充填排出を行う手段と、タンクを熱収縮および熱膨張させるタンク支持手段と、天板、側壁又は床板の少なくとも一部を形成する外部プレートとを備え、特に低温の流体を貯蔵するタンクであって、
タンク内部に設けられた内部セル構造体は、全部のセル間で流体が連通するように構成されており、
前記外部プレートの少なくとも一部が積層サンドイッチ構造を有し、
前記内部セル構造体は前記外部プレートに対して、自己平衡張力支持体および/又は固定部材として形成されていることを特徴とするタンク。
【請求項2】
前記外部プレートが、金属又は類似の性質を有する材料からなる2層の表面シート層と、該シート層の間に挟まれてシート層間で荷重を伝達するコア材とを含むサンドイッチ構造から成り、前記コア材は2層のシート層間に延びる材料又は1組のリブ又はウェブから成ることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
前記セル構造体の壁が、相互に交差するように上下に配置されて格子を形成する梁要素で形成され、前記梁のうち、ある層の梁はある配向を有し、次の層の梁は別の配向を有し、セル壁を形成する梁の間に開口部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタンク。
【請求項4】
相互に隣接する2つの平面に位置する前記梁要素はそれぞれ異なる2つの方向、好ましくは相互に横断する方向に配向されていることを特徴とする請求項3に記載のタンク。
【請求項4】
前記梁の構造がセル構造体に矩形又は正方形のセルを形成していることを特徴とする請求項3又は4に記載のタンク。
【請求項5】
前記梁構造体の各梁がT字状又はI字状の断面を有することを特徴とする請求項3又は4又は5に記載のタンク。
【請求項6】
前記各梁が、タンクの一方の側壁から反対側の側壁まで延びることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載のタンク。
【請求項7】
前記セル構造体の各壁がプレート要素によって形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタンク。
【請求項8】
前記セル構造体の壁の一部又は全部が片面又は両面の水平補強材を備えていることを特徴とする請求項7に記載のタンク。
【請求項9】
前記セル構造体の壁の一部又は全部が水平方向に延びる波形を備えていることを特徴とする請求項7又は8に記載のタンク。
【請求項10】
前記セル構造体を形成する壁の交差部の少なくとも一部が補強部材を備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のタンク。
【請求項11】
前記補強部材が前記セル構造体の全高にわたって延びており、セル壁およびタンク天板の重量を支えるように形成されていることを特徴とする請求項10に記載のタンク。
【請求項12】
前記交差部が、セル構造体の隣接する2つの壁の表面側に当接して配置された少なくとも1つの補強部材を備えることを特徴とする請求項10又は11に記載のタンク。
【請求項13】
前記補強部材は、交差部において交差するセル壁のうち少なくとも一部のセル壁の端部に接合されている協同的端部要素によって構成されていることを特徴とする請求項10又は11に記載のタンク。
【請求項14】
前記端部要素はL字状断面を有する細長い要素であって、交差部において交差する4つのセル壁全てに接合されており、前記端部要素は、L字形状の立ち上がり部分においてセル壁端部に接合される一方、L字形状の下部はセル壁と反対側を向くことを特徴とする請求項13に記載のタンク。
【請求項15】
前記外部プレートが、内部セル壁を固定するための個別の固定部材又は接合要素を備えていることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のタンク。
【請求項16】
前記内部セル壁の少なくとも1つが、少なくとも1つの前記外部プレートのサンドイッチ構造の外面シート層と構造的に接合されていることを特徴とする請求項2〜15のいずれかに記載のタンク。
【請求項17】
前記外壁を介しての前記内部セル構造壁の構造的接合部が、該構造的接合部からの熱漏れを低減する手段を備えることを特徴とする請求項16に記載のタンク。
【請求項18】
前記外部プレートが、前記サンドイッチ構造の外側に外部断熱層を備えることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載のタンク。
【請求項19】
前記外部プレートが、隣接して配置された既存の他の構造システムと、一つ又は複数の地点において、あるいは線状の接触域に沿って、弾性リンク、線形又は非線形機械装置、空気圧又は油圧装置、あるいはその組合せのいずれかにより接合されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載のタンク。
【請求項20】
前記サンドイッチ構造の外部プレートが貫通凹部を備えることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載のタンク。
【請求項21】
前記凹部が薄膜材料によって被覆されていることを特徴とする請求項20に記載のタンク。
【請求項22】
前記サンドイッチ構造が内部ウェブ構造体を備え、前記凹部が該ウェブ構造体を形成する要素と要素の間に形成されていることを特徴とする請求項20又は21に記載のタンク。
【請求項23】
流体貯蔵タンクに使用されるセル構造体であって、セル壁から成り、該セル壁が交差部において交差して格子状を形成しているセル構造体において、前記セル壁が、セル壁を貫通して隣接するセルに達する少なくとも一つの開口部を有するプレート要素、又は相互に上下に配置されて互いの間にセル壁を貫通して隣接するセルに達する開口部を形成している複数の梁要素で形成されていることを特徴とするセル構造体。
【請求項24】
ある層の前記梁要素がその長手軸を概ね平行に配列され、前記第1層の次の層の梁の平面は、その長手軸を前記第1層の梁を横切るように配列された梁を含み、この積層を繰り返して前記セル壁が形成されており、前記第1層の梁が第1セル壁の一部を形成し、前記第2層の梁が、前記第1セル壁を横断して交差部において交差する第2セル壁の一部を形成していることを特徴とする請求項23に記載のセル構造体。
【請求項25】
前記梁要素がT字状又はI字状の断面を有することを特徴とする請求項24に記載のセル構造体。
【請求項26】
前記セル構造壁、好ましくはプレートで形成されたセル壁が、少なくとも交差部に対向する一端において、交差部補強のための端部要素を備えることを特徴とする請求項23に記載のセル構造体。
【請求項27】
前記端部要素が断面L字状の細長い要素であり、交差部においてセル壁の側部全部に沿って延びるように配設されていることを特徴とする請求項26に記載のセル構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2008−503703(P2008−503703A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517990(P2007−517990)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【国際出願番号】PCT/NO2005/000232
【国際公開番号】WO2006/001711
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(505201146)デ ノルスケ ヴェリタス アクティーゼルスカブ (3)
【Fターム(参考)】