説明

流体加熱装置及びその装置を使用した熱媒体通流ローラ装置

【課題】 発熱体の発熱温度とその発熱体で加熱される流体の温度との差を小さくし、所定の熱量を流体に効率よく伝達できるようにすること。
【解決手段】 熱媒体通流ローラ装置などの流体循環路に配置し、前記流体循環路に流れる流体を加熱する流体加熱装置であって、閉磁路鉄心1に巻回した1次コイル2と2次コイル3とからなる変圧器構成における2次コイル3を、循環する流体を通流する貫通孔が形成されたSUSなどからなる導電体を巻回して構成し、その2次コイル3の両端同士を電気的に短絡し、その短絡によって発熱する2次コイル3の熱を2次コイルの貫通孔を流れる流体に伝達する。これにより、流体と接触する発熱面積を大きくすることができ、2次コイルの発熱温度とその2次コイルで加熱される流体の温度との差を小さくしても、所定の熱量を流体に伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体加熱装置及びその装置を使用した熱媒体通流ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムなどの処理物をローラに掛け、ローラに当接して通過する間に処理物を所定の温度に加熱したり、高温の処理物を所定の温度にまで奪熱することが行われている。加熱処理する場合、ローラは加熱処理に必要な温度に高められ、奪熱処理する場合、処理物からの奪熱作用によってローラ自体の温度が上昇するので、処理物の冷却に適応する温度までローラを冷却する。いずれの場合も熱をローラに移送する熱媒体を必要とし、その熱媒体として流体たとえば油が使用されている場合がある。
【0003】
そして、この場合のローラ装置として、ローラ本体を構成するロールシェルの表面近くの肉厚内に軸心方向と同方向に密閉室を形成し、その密閉室に気液二相の熱媒体を封入するとともに、流体からなる熱媒体が加熱装置を介して循環する循環路にロールシェルを配置し、そのロールシェル内に加熱された熱媒体を通流してロールシェルを所定の温度に維持するようにした熱媒体通流ローラ装置が開発されている。このローラ装置では、密閉室の気液二相の熱媒体による潜熱移動と相俟って、ロールシェル内を通流する熱媒体の流量、すなわち循環路に流す流量を低減することができ、配管の径やポンプの容量が低減され省エネルギーとすることができる。
【特許文献1】特開2004−195888号公報
【特許文献2】特開2004−116538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、循環する熱媒体を加熱する加熱源は発熱面積の小さい抵抗発熱線が用いられているため、多くの熱を流体に伝達するには、抵抗発熱線の温度を高く設定する、すなわち抵抗発熱線の発熱温度とこの抵抗発熱線で加熱される流体の温度との差を大きくする必要がある。しかし、流体の耐熱温度以上に抵抗発熱線の温度を上げることができず、所定の熱量を流体に伝達できない場合があるといった問題があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、発熱体の発熱温度とその発熱体で加熱される流体の温度との差を小さくし、流体の耐熱温度以下で所定の熱量を流体に伝達できるようにし、斯かる問題を解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体循環路に配置し、前記流体循環路に流れる流体を加熱する流体加熱装置であって、前記流体加熱装置は、閉磁路鉄心と前記鉄心に巻回された1次コイルと循環する流体を通流する貫通孔が形成された導電体を巻回した2次コイルを有し、前記2次コイルの両端同士を電気的に短絡して構成され、短絡した2次コイルに流れる電流により発生する熱を、前記貫通孔を流れる流体に伝達してなることを最も主な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、閉磁路鉄心に巻回した1次コイルと2次コイルとからなる変圧器構成における2次コイルを、循環する流体を通流する貫通孔が形成された導電体を巻回して構成し、その2次コイルの両端同士を電気的に短絡し、その短絡によって発熱する2次コイルの熱を2次コイルの貫通孔を流れる流体に伝達するので、流体と接触する発熱面積を大きくすることができ、2次コイルの発熱温度とその2次コイルで加熱される流体の温度との差を小さくしても、所定の熱量を流体に伝達することができる。また、閉磁路鉄心を備えた変圧器構成であるため、力率は70〜100%と高く小さい電源で効率よく流体を加熱することができ、特に小径の配管内を通流する加熱された熱媒体により加熱するローラ装置における熱媒体の加熱源として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発熱体の発熱温度とその発熱体で加熱される流体の温度との差を小さくし、流体の耐熱温度に関わらず所定の熱量を流体に伝達できるようにする目的を、閉磁路鉄心とこの鉄心に巻回された1次コイルと両端同士を電気的に短絡した2次コイルとからなる変圧器構成で、2次コイルを構成する導電体を管体とし、その管体の中空内部に流体を流し、短絡した2次コイルが発生する熱を、管内を流れる流体に伝達することにより実現した。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の実施例に係る流体加熱装置の構成を示す構成図で、(a)は上面図、(b)は側面図、図2はコイル断面図である。 図1および図2において、1は鉄心、2は1次コイル、3は2次コイル、4は循環する流体を通流する母管である。鉄心1はヨーク鉄心の両端に脚鉄心を備えた閉磁路をなし、1次コイル2は鉄心1の両端の脚鉄心の夫々に巻回されている。2次コイル3は、貫通孔が形成された管状のSUS(ステンレススチール)などの導電体からなり、各1次コイル2の外周に沿ってそれぞれ巻回され、本実施例では図2に示すように、各2次コイル3は、2つのコイル3−1、3−2が並列に巻回され、各2次コイル3の両側の端部は図示しない短絡用の導体によって電気的に短絡されている。
【0010】
このように構成した流体加熱装置は、流体循環路に配置するとき各2次コイル3の端部に設けたフランジ3a、3bと母管4のフランジ4aと合わせて連結する。この連結により循環する流体は各2次コイル3の貫通孔を経由して循環する。本実施例では各1次コイル2は並列に接続されており、各1次コイル2に単相(U−V)の交流電圧を印加すると、短絡用の導体を経て2次コイル3に短絡電流が流れ、その電流で2次コイル3は抵抗発熱し、この熱は貫通孔を通過する流体に伝達され、その流体は貫通孔を通過する間加熱される。
【0011】
なお、図1に示す実施例は、閉磁路鉄心1に2つの1次コイル2を巻回し、各1次コイル2の夫々に両端を短絡した2つの2次コイル3、すなわち2つの並列流路を設けているが、1次コイル2の数や2次コイル3の数は任意である。また、1次コイルの一部を短絡して2次コイルとする、いわゆる単巻きとしても良い。
【実施例2】
【0012】
図3は本発明の他の実施例に係る流体加熱装置の構成を示す構成図で、(a)は上面図、(b)は側面図、図4はコイル断面図である。この実施例は三相の交流電圧を用いる場合の流体加熱装置で、図1に示す実施例と対応する部分には同一の符号を付している。鉄心1はヨーク鉄心の両端と中央部に脚鉄心を備えた閉磁路をなし、各脚鉄心の夫々に1次コイル2が巻回されている。2次コイル3は、貫通孔が形成された管状のSUS(ステンレススチール)などの導電体からなり、各1次コイル2の外周に沿ってそれぞれ巻回され、本実施例では図3に示すように、各2次コイル3は1つのコイルとされ、各2次コイル3の両側の端部は図示しない短絡用の導体によって電気的に短絡されている。
【0013】
このように構成した流体加熱装置は、流体循環路に配置するとき各2次コイル3の端部に設けたフランジ3a、3bと母管4のフランジ4aと合わせて連結する。この連結により循環する流体は各2次コイル3の貫通孔を経由して循環する。この実施例では各1次コイル2はΔ結線されており、各1次コイル2の夫々に三相(U−V,V−W,W−U)の交流電圧を印加すると、短絡用の導体を経て2次コイル3に短絡電流が流れ、その電流で2次コイル3は抵抗発熱し、この熱は貫通孔を通過する流体に伝達され、その流体は貫通孔を通過する間加熱される。
【0014】
なお、図3に示す実施例は、閉磁路鉄心1に3つの1次コイルを巻回して各1次コイルをΔ結線しているが、各1次コイルをY結線とし、各1次コイルの一部を短絡して2次コイルとする、いわゆる単巻きとしても良い。また、1次コイルを2つとし、1つの1次コイルの一端を他の1つの1次コイルの中間に接続し、他端および他の1つの1次コイルの両端を夫々に三相の交流電源の各相(U,V,W)に接続するようにしても良い。この場合、2つの閉磁路鉄心に各1次コイルと2次コイルを巻回するように構成することができる。
【0015】
以上、実施例1および実施例2のいずれにおいても、閉磁路鉄心に巻回した1次コイルと2次コイルとからなる変圧器構成における2次コイルを、循環する流体を通流する貫通孔が形成された導電体を巻回して構成し、その2次コイルの両端同士を電気的に短絡し、その短絡によって発熱する2次コイルの熱を2次コイルの貫通孔を流れる流体に伝達するので、流体と接触する発熱面積を大きくすることができ、2次コイルの発熱温度とその2次コイルで加熱される流体の温度との差を小さくしても、所定の熱量を流体に伝達することができる。また、閉磁路鉄心を備えた変圧器構成であるため、漏洩磁束が少なく力率は70〜100%と高く小さい電源で効率よく流体を加熱することができる。
【実施例3】
【0016】
図5は、以上のように構成した流体加熱装置を熱媒体通流ローラ装置に使用した例を示すもので、図5において、2は図示しない閉磁路鉄心に巻回された1次コイル、3は 管状の2次コイル、11はローラ本体を構成するロールシェル、12は図示しないモータにより回転してロールシェルを回転する回転駆動軸、13は中子、14はロータリジョイント、15は貯油タンク、16は油(熱媒体)、17はポンプ、18はサイリスタなどからなる電力制御回路、である。
【0017】
ロールシェル11は円筒状をなし、この例ではその肉厚内部にロールシェル11の軸方向と同方向に延びる密閉室11aと温度センサ挿入孔11cが形成され、密閉室11a内には、潜熱移動によってロールシェル1の表面の温度を均一化する水などの気液二相の熱媒体が封入され、温度センサ挿入孔11cには、ロールシェル11の表面温度を検出する温度センサ19が配置されている。そして、ロールシェル11の中空内部に中子13が配置され、中子13の中央部を貫通して熱媒体の通流路13aが形成されている。熱媒体の通流路13aは回転駆動軸12内を経てロータリジョイント14の流入口に連結され、ロールシェル11の内周壁と中子13の外周壁との間で形成された熱媒体の通流路11cは回転駆動軸2内を経てロータリジョイント14の出口に連結されている。なお、熱媒体はロールシェル1の一方の端部から他方の端部へ通流する場合もある。
【0018】
貯油タンク15の油(熱媒体)16は管状の2次コイル3を通り、所定の温度に加熱され、その油16がポンプ17によってロールシェル11内に送られ、熱媒体16の通流路13aおよび11cを通流し、貯油タンク15へ排出される。21は管状の2次コイル3からロールシェル11へ供給する熱媒体16の温度を検出する温度センサであり、この温度センサ21の検出温度と、回転体のロールから固定体の外部へ取り出すたとえばロータリ変成器20を介して取り出した温度センサ19の検出温度とを適宜目標値S1とS2と比較し、その偏差に応じた制御信号を電力制御回路18へ送り、1次コイル2に流す電流を制御し、2次コイル3内を通流する熱媒体16の温度を制御する。
【0019】
このように構成した熱媒体通流ローラ装置では、循環する熱媒体16は管状の2次コイル3内を通流する間にその内壁全面で加熱されるので、熱媒体16への伝熱面積が大きくなり、ローラ内部へ送る熱媒体16の温度制御がし易く高効率な加熱が可能となる。また、管状の2次コイル3内の熱媒体16の流速を上昇させることができ、熱媒体がオーバーヒートしにくい構造とすることができる。
【0020】
なお、以上の熱媒体通流ローラ装置では、ロールシェルの肉厚内部に気液二相の熱媒体を封入する密閉室を有するが、斯かる密閉室を備えていない熱媒体通流ローラ装置においても同様の効果を享受することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係る流体加熱装置の構成を示す構成図で、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図2】図1に示す流体加熱装置のコイルの断面図である。
【図3】本発明の他の実施例に係る流体加熱装置の構成を示す構成図で、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図4】図3に示す流体加熱装置のコイルの断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る熱媒体通流ローラ装置全体の構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0022】
1 閉磁路鉄心
2 1次コイル
3、3−1、3−2 管状の2次コイル
3a、3b フランジ
4 母管
4a フランジ
11 ロールシェル
11a 密閉室
12 回転駆動軸
13 中子
14 ロータリジョイント
15 貯油タンク
16 熱媒体
17 ポンプ
18 電力制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体循環路に配置し、前記流体循環路に流れる流体を加熱する流体加熱装置であって、前記流体加熱装置は、閉磁路鉄心と前記鉄心に巻回された1次コイルと循環する流体を通流する貫通孔が形成された導電体を巻回した2次コイルを有し、前記2次コイルの両端同士を電気的に短絡して構成され、短絡した2次コイルに流れる電流により発生する熱を、前記貫通孔を流れる流体に伝達してなることを特徴とする流体加熱装置。
【請求項2】
循環する流体路に加熱装置を配置し、前記加熱装置で加熱された流体をローラ内部に通流して前記ローラを加熱し、前記ローラの表面に当接する処理物を熱処理してなる熱媒体通流ローラ装置において、前記加熱装置を請求項1に記載の加熱装置としてなることを特長とする請求項1に記載の加熱装置を使用する熱媒体通流ローラ装置。
【請求項3】
ローラの肉厚内に前記ローラの軸方向と同方向に伸びる密閉室を形成し、前記密閉室に気液二相の熱媒体を封入してなることを特徴とする請求項2に記載の熱媒体通流ローラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−128751(P2007−128751A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320604(P2005−320604)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000110158)トクデン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】