説明

流体動圧軸受装置、スピンドルモータ、及びディスク駆動装置

【課題】流体動圧軸受装置の組立を容易かつ短時間で行うことができる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】スリーブ12の下面12aの一部12aaに当接するように、スリーブハウジング11は、スリーブハウジング11から径方向内方に突出したフランジ部50を設ける構成としたことにより、スリーブ12を軸方向で保持することができるので、治具にてスリーブ12を保持することなく流体動圧軸受装置3の組み立てが容易になる。また、スリーブ12の下方に位置するスリーブスラスト軸受面に設けられた複数の下スラスト動圧発生溝45bを、スリーブ12の下面12aの径方向外側端部まで伸びた構成にしたことにより、本来のスラスト動圧軸受部の機能に加えて、潤滑オイル19の循環溝としての役割を持たせることができるため、新たに流路となる循環用溝を加工する必要がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体動圧軸受装置、当該流体動圧軸受装置を備えるスピンドルモータ、及び当該スピンドルモータを備えるディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータやカーナビゲーション等に使用される磁気ディスクや光ディスク等の記録ディスク駆動装置では、小型化、薄型化、及び軽量化に加えて、高密度化への要求が強いことから、ディスク回転に使用されるスピンドルモータの回転数の高速化や回転動作の高精度化が要請されている。このような要請に応えるために、スピンドルモータ用の軸受装置として、従来のボールベアリングに代わって、シャフトとスリーブとの間に潤滑オイルを充填させた流体動圧軸受装置が多く使用されている。
【0003】
また、ハードディスク駆動装置等の小形化に伴ってスピンドルモータの小形化が進み、その軸受構造ではシャフトとロータハブとの一体化が提案され実施が検討されている。
【0004】
このような従来の軸受装置については、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−90390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の課題として、流体動圧軸受装置の組立工程において、スリーブをスリーブハウジングに適切に接着するために、スリーブとスリーブハウジングとの位置関係を一定の位置に保持しておく必要があったが、各部材の相対位置を決めるために治具を使うのは時間的にも手間的にも面倒であった。
【0007】
そこで本発明は、上記問題を解決すべく、流体動圧軸受装置の組立を容易かつ短時間で行うことができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、前記スリーブの軸方向一方側の平面部の一部に当接するように、前記スリーブハウジングは、前記スリーブハウジングから径方向内方に突出したフランジ部を有し、前記スラスト動圧発生溝は、前記スリーブの軸方向一方側の平面部の径方向外側端部まで伸びて形成され、前記潤滑オイルの流路となることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の流体動圧軸受装置において、前記中心軸を含む断面における前記スラスト動圧発生溝内の軸方向の幅は、前記中心軸を含む断面における前記スラストプレートの軸方向他方側の面と前記スラスト動圧発生溝内の軸方向他方側の面との軸方向の幅よりも小さいことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の流体動圧軸受装置において、前記スリーブの外周面には、軸方向一方端部から軸方向他方端部にわたって、1つ又は複数の軸方向溝が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の流体動圧軸受装置において、前記スリーブ外周面と対向する前記スリーブハウジングの内周面には、軸方向一方端部から軸方向他方端部にわたって、1つ又は複数の軸方向溝が設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4に記載の流体動圧軸受装置において、前記スリーブの軸方向一方側の端面の外縁部分で、前記スラスト動圧発生溝が、前記軸方向溝と連通していることを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、前記中心軸を含む断面における前記スラスト動圧発生溝内の軸方向の幅は、前記中心軸を含む断面における前記軸方向溝内の径方向の幅よりも小さいことを特徴とする。
【0014】
請求項7に係る発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、前記フランジ部に隣接する前記スリーブハウジングの内周面に凹部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項8に係る発明は、請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、前記スリーブハウジングの内周面に前記スリーブハウジングと前記スリーブとを固定するための接着剤を塗布する接着溝が設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の流体動圧軸受装置において、前記スリーブハウジングと前記スリーブとを径方向に接着固定する前記接着剤は、エポキシ系接着剤であることを特徴とする。
【0017】
請求項10に係る発明は、請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、前記スリーブの軸方向一方側の面に設けられた前記スラスト動圧軸受部は、相対回転時に、前記スリーブと前記スラストプレート及び前記フランジ部との間に保持された前記潤滑オイルを径方向内方に流動させるポンプイン形状を有することを特徴とする。
【0018】
請求項11に係る発明は、請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、前記スリーブは、前記潤滑オイルを含浸した多孔質の含油焼結金属部材からなることを特徴とする。
【0019】
請求項12に係る発明は、請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、前記スリーブの軸方向の端面の縁部分には、全周にわたって面取り部が切り欠かれていることを特徴とする。
【0020】
請求項13に係る発明は、ベース部材と、前記ベース部材に固定された磁束発生部と、請求項1乃至請求項12のいずれか記載の流体動圧軸受装置によって前記ベースに対して回転自在に支持されたロータと、前記磁束発生部に対向して前記ロータに取り付けられたロータマグネットと、を備えることを特徴とする。
【0021】
請求項14に係る発明は、ディスクを回転させるディスク駆動装置であって、装置ハウジングと、前記装置ハウジングの内部に固定された請求項13記載のスピンドルモータと、前記ディスクに対して情報の読み出し及び/又は書き込みを行うアクセス部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1〜14に記載の発明によれば、前記スリーブの軸方向一方側の平面部の一部に当接するように、前記スリーブハウジングは、前記スリーブハウジングから径方向内方に突出したフランジ部を有し、前記スラスト動圧発生溝は、前記スリーブの軸方向一方側の平面部の径方向外側端部まで伸びて形成され、前記潤滑オイルの流路となる。従来の課題として、流体動圧軸受装置の組立工程において、スリーブをスリーブハウジングに適切に接着固定するために、スリーブとスリーブハウジングとの位置関係を一定の位置に保持しておく必要があったが、各部材の相対位置を決めるために治具を使うのは時間的にも手間的にも面倒であった。そこで、このように、スリーブハウジングの軸方向一方側から径方向内方に向かうようにフランジ部を設ける構成とした。そして、スリーブの軸方向一方側の平面部とフランジ部とが当接すると、従来の流路構成では潤滑オイルの流路を防ぐかたちになるが、スラスト動圧発生溝をスリーブの軸方向一方側の平面部の径方向外側端部まで伸ばして形成することにより、相対回転時に潤滑オイルに流体動圧を誘起する本来のスラスト動圧軸受部の機能に加えて、潤滑オイルの循環溝としての役割を持たせることができるため、そういった問題も解消することができる。また、新たに流路となる循環用溝を加工する必要がない。以上より、スリーブを軸方向で保持することができるので、治具にてスリーブを保持することなく流体動圧軸受装置の組み立てが容易になる。よって自動化ラインで必要な一方向組み立ても可能になる。また、接着剤も、強度のある熱硬化型接着剤であるエポキシ系接着剤が使用可能になる。また、従来は、円筒形状のスリーブハウジングにスリーブを固定する場合には、スリーブハウジングの内部においてスリーブの軸方向の移動を係止する部位が存在しなかったため、スリーブを所望の位置に接着により固定することが容易ではなかったが、スリーブハウジングの内部にスリーブを挿入したとき、フランジ部の軸方向他方側の面にスリーブの軸方向一方側の面が当接(係止)するので、所望の位置にスリーブを固定することができる。
【0023】
特に、請求項2に記載の発明によれば、前記中心軸を含む断面における前記スラスト動圧発生溝内の軸方向の幅は、前記中心軸を含む断面における前記スラストプレートの軸方向他方側の面と前記スラスト動圧発生溝内の軸方向他方側の面との軸方向の幅よりも小さい。このような構成にすることにより、スラストプレートの軸方向他方側の面とスラスト動圧発生溝内の軸方向他方側の面とがなす微小間隙を潤滑オイルが通過して、スリーブの軸方向一方側の平面部の一部とフランジ部上面との当接面の、潤滑オイルの循環溝となったスラスト動圧発生溝内に流れ込みにくくなる。このため、高められた圧力が軸受微小間隙から外部へと逃げにくい略閉空間となり、潤滑オイルは軸受微小間隙中で高い圧力を維持することができ、シャフト、スラストプレート、ロータハブを備える回転部材を安定して非接触状態で支持することができる。また、軸受微小間隙等を正圧に保つことができ、負圧の発生及び負圧の発生に起因する気泡の発生も防止することができる。
【0024】
特に、請求項3に記載の発明によれば、前記スリーブの外周面には、軸方向一方端部から軸方向他方端部にわたって、1つ又は複数の軸方向溝が設けられている。このような構成にすることにより、スリーブの軸方向一方側のスラスト動圧軸受部にて圧送された潤滑オイルを、スリーブ若しくはスリーブハウジングの軸方向他方側の微小間隙へ流すことができる。
【0025】
特に、請求項4に記載の発明によれば、前記スリーブ外周面と対向する前記スリーブハウジングの内周面には、軸方向一方端部から軸方向他方端部にわたって、1つ又は複数の軸方向溝が設けられている。このような構成にすることにより、スリーブの軸方向一方側のスラスト動圧軸受部にて圧送された潤滑オイルを、スリーブ若しくはスリーブハウジングの軸方向他方側の微小間隙へ流すことができる。
【0026】
特に、請求項5に記載の発明によれば、前記スリーブの軸方向一方側の端面の外縁部分で、前記スラスト動圧発生溝が、前記軸方向溝と連通している。このため、複数あるスラスト動圧発生溝のうち、1つ又はいくつかのスラスト動圧発生溝が、1つ又は複数の軸方向溝と連通していることにより、スムーズに潤滑オイルを案内することができる。
【0027】
特に、請求項7に記載の発明によれば、前記フランジ部に隣接する前記スリーブハウジングの内周面に凹部が形成されている。スリーブハウジングが、軸方向一方側の端部又は端部近傍から径方向内方に突出したフランジ部を有する円筒形状スリーブハウジングである場合、有底状にするためにフランジ部とカウンタープレートとをレーザー溶接によって固定するが、このような構成にすることにより、その際に発生する歪みは、凹部により吸収されるので、レーザー溶接によりスリーブハウジングの軸方向一方側内周面が溶接時の熱で変形して、スリーブを径方向に圧力をかけてスリーブが傾くといった不具合を防止している。
【0028】
特に、請求項8に記載の発明によれば、前記スリーブハウジングの内周面に前記スリーブハウジングと前記スリーブとを固定するための接着剤を塗布する接着溝が設けられている。このとき、スリーブハウジングの内周面にスリーブを挿入するとき、接着剤はスリーブにより摺れるが、接着溝内に収容されているため、例えば接着剤の塗布位置、塗布量等が不均一となっても、接着溝より軸方向他方側に移動することを防止することができる。また、接着溝を設けることにより、スリーブハウジングとスリーブとの締結強度を強固にすることができるため、外部からの衝撃等に対する強度を得ることができる。従って、モータが小型化、薄型化しても、スリーブハウジングとスリーブとを強固に固定することができる。
【0029】
特に、請求項9に記載の発明によれば、前記スリーブハウジングと前記スリーブとを径方向に接着固定する前記接着剤は、エポキシ系接着剤である。熱硬化型接着剤であるエポキシ系接着剤を使用することにより、スリーブハウジングとスリーブとを従来に比べて強固に接着固定することができる。また、油面でも接着力が優れており、また、固着スピードが速いため、スリーブを位置決め保持する時間を短くすることができる。
【0030】
特に、請求項10に記載の発明によれば、前記スリーブの軸方向一方側の面に設けられた前記スラスト動圧軸受部は、相対回転時に、前記スリーブと前記スラストプレート及び前記フランジ部との間に保持された前記潤滑オイルを径方向内方に流動させるポンプイン形状を有する。このため、モータによりスリーブが相対回転駆動すると、スラスト動圧軸受部のポンピング作用により、スラスト動圧軸受部のスラスト動圧発生溝と、そこを流れる潤滑オイルの粘性とにより発生する軸方向の流体動圧によって、スリーブの軸方向一方側の平面部とスラストプレート及びフランジ部の軸方向他方側の平面部とが非接触状態に支持される。そして、スラスト動圧軸受部はポンプイン形状を有しているため、シャフト側に潤滑オイルを押し込む圧力を誘起し、潤滑オイルを圧送することができる。
【0031】
特に、請求項11に記載の発明によれば、前記スリーブは、前記潤滑オイルを含浸した多孔質の含油焼結金属部材からなる。このため、モータ回転時、軸受面を構成するスリーブの内周面にはオイルが滲みだし、回転するロータハブの外周面とスリーブの内周面との間は、常に一定の油膜が形成されるため、ロータハブとスリーブとの間に高い摺動性能を得ることができる。従って、ロータハブの外周面に窒化処理等の硬化処理を行なわずとも、安定した回転性能を得ることができる。ロータハブの外周面に硬化処理を行わないことにより、安価に流体動圧軸受装置を製造することができ、且つ安価なモータを製造することができる。
【0032】
特に、請求項11に記載の発明によれば、前記スリーブの軸方向の端面の縁部分には、全周にわたって面取り部が切り欠かれている。このため、スリーブの軸方向の端面の縁部分が、全周にわたって面取り部が切り欠かれているので、ハウジングのフランジ部とスリーブとが当接したときにその面取り部が空間となり、スリーブ外周面のどこにでも軸方向溝を設けても、軸方向溝がスラスト動圧発生溝と連通させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、中心軸Oに沿ってディスク4側を「上」とし、コイル24側を「下」とする。しかしながら、これにより本発明に係る流体動圧軸受装置3、スピンドルモータ1、及びディスク駆動装置2の設置姿勢が限定されるものではない。
【0034】
<1.ディスク駆動装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るスピンドルモータ1を備えたディスク駆動装置2の縦断面図である。ディスク駆動装置2は、磁気ディスク4を回転させつつ、磁気ディスク4からの情報の読み出し及び磁気ディスク4への情報の書き込みを行うハードディスク装置である。図1に示したように、ディスク駆動装置2は、主として、装置ハウジング21、磁気ディスクや光ディスク等の記録ディスク(以下、単に「ディスク」という)4、アクセス部20、及びスピンドルモータ1を備えている。
【0035】
装置ハウジング21は、カップ状の第1ハウジング部材211と、板状の第2ハウジング部材212とを有している。第1ハウジング部材211は、上部に開口を有し、第1ハウジング部材211の内側の底面には、スピンドルモータ1とアクセス部20とが設置されている。第2ハウジング部材212は、第1ハウジング部材211の上部の開口を覆うように第1ハウジング部材211に接合され、第1ハウジング部材211と第2ハウジング部材212とに囲まれた装置ハウジング21の内部空間213に、ディスク4、アクセス部23、及びスピンドルモータ1が収容されている。装置ハウジング21の内部空間213は、塵や埃が少ない清浄な空間とされている。
【0036】
ディスク4は、いずれも中央部に孔を有する円板状の情報記録媒体である。ディスク4は、スピンドルモータ1のロータハブ15に装着されている。一方、アクセス部20は、ディスクの上面及び下面に対向する2つのヘッド201と、各ヘッド201を支持するアーム202と、アーム202を揺動させる揺動機構203とを有している。アクセス部20は、揺動機構203により2本のアーム202をディスク4に沿って揺動させ、2つのヘッド201をディスク4の必要な位置にアクセスさせることにより、回転するディスク4の記録面に対して情報の読み出し及び書き込みを行う。なお、ヘッド201は、ディスク4の記録面に対して情報の読み出し又は書き込みのいずれか一方のみを行うものであってもよい。
【0037】
<2.スピンドルモータの構成>
続いて、上記のスピンドルモータ1の詳細な構成について説明する。図2は、スピンドルモータ1の一部縦断面図であり、図3は、スピンドルモータ1の構成を示す縦断面図である。図2及び図3に示すように、スピンドルモータ1は、主として、ベース部材31に固定されるスリーブハウジング11及びこのスリーブハウジング11の内周部に固定されるスリーブ12を有してディスク駆動装置2(図1参照)の装置ハウジング21に固定されるステータ部6と、このステータ部6によって回転自在に支持されるロータ部5とから構成されている。
【0038】
<2−1.ステータ部の構成>
ステータ部6は、ステータ部6の各部を保持するベース部であるベース部材31、後述するロータ部5を回転可能に支持する軸受機構の一部である略円筒状のスリーブユニット10、および、スリーブユニット10の周囲にてベース部材31に取り付けられるステータ22を備える。
【0039】
ベース部材31は、第1ハウジング部材211(図1参照)の一部であり、アルミニウム、アルミニウム合金、又は、磁性もしくは非磁性の鉄系金属の板状部材をプレス加工することにより第1ハウジング部材211の他の部位と一体的に形成される。なお、本実施形態では、ベース部材31と第1ハウジング部材211とが単一の部材により構成されているが、ベース部材31と第1ハウジング部材211とが別体となっていてもよい。ベース部材31の中央部には、中心軸Oに沿ってベース部材31を貫通する貫通孔311が形成されている。また、ベース部材31の貫通孔311よりも外周側(中心軸Oに対する外周側。以下同じ。)には、軸方向(中心軸Oに沿った方向。以下同じ。)に突出した略円筒形状のホルダ部312が形成されている。
【0040】
次に、第1ハウジング部材211のベース部材31に圧入又は接着により固定されているステータ22について、図3に基づいて説明する。ステータ22は、先端を中心軸Oに向けて中心軸Oを中心に放射状に配置された複数のティース231及び、複数のティース231の径方向外側の端部同士を等間隔に接続する環状のコアバック232を有するステータコア23と、複数のティース231のそれぞれに導線を巻回することにより形成されたコイル24と、を有し、ロータマグネット17の外周面17aと径方向に微小間隙を介し対向している。ステータコア23は、金属薄板、例えば、略環状のケイ素鋼板等の電磁鋼板を複数枚軸方向に積層させた積層鋼板により形成されている。
【0041】
また、互いに隣接する2つのティース231・231間におけるコアバック232の内周辺には、導線の渡り線がコアバック232より径方向内側に侵入しないように、コアバック232から径方向内側に張り出した突起を軸方向上側に折り曲げて形成された複数の渡り線係止用の突出部25が設けられている。なお、渡り線は、一のコイル24から突出部25の径方向外方を経由して他のコイル24に到るように配線されている。各コイル24からの導線は、渡り線係止用の突出部25を介して回路基板26へと導かれ、回路基板26の電極に半田等にて接合される。
【0042】
スリーブユニット10は、中心軸Oを中心とする略円筒状であってシャフト16が挿入されるスリーブ12と、スリーブ12の外周に取り付けられる略円筒状のスリーブハウジング11とから構成され、ホルダ部312に挿入されてベース部材31に取り付けられる。
【0043】
<2−2.ロータ部の構成>
回転部材であるロータ部5は、スリーブ12の内周面と径方向に微小間隙を介し対向するシャフト16、シャフト16の下端外周面から径方向外側に張り出す環状かつ円板状のスラストプレート18、このシャフト16と一体に形成される略カップ状のロータハブ15を備える。
【0044】
ロータハブ15は、スピンドルモータ1における中心軸Oとなるシャフト16の周囲において径方向に広がる形状を有し、その中心部には、中心軸Oを中心とした貫通孔15aが形成されており、シャフト16に固定されている。その形状についてより詳細に説明すると、ロータハブ15は、シャフトの外周面に固定される第1円筒部151と、第1円筒部151の上端部から径方向外側へ向けて広がる平面部152と、平面部152の外周縁から垂下する第2円筒部153とを有している。第2円筒部153の外周面15bは、ディスク4の内周部(内周面又は内周縁)に当接する当接面となる。また、第2円筒部153の下端部付近には、径方向外側へ向けて突出し、その上面がディスク4を載置するフランジ面15cとなる台部154(ディスク載置部)が形成されている。このようなロータハブ15は、例えば、ステンレス等から形成される。また、台部154の下方で第2円筒部153の外周面には、円環状に形成されたロータマグネット17が接着剤等により固定されている。
【0045】
ロータマグネット17は、N極とS極とが周方向に交互に配列し、これら各磁極の磁束方向がロータマグネット17の径方向と略一致する所謂ラジアル異方性もしくは等方性のネオジウム磁石である。このロータマグネット17は、その外周面17aとティース231との間に一定の隙間を有するように位置している。
【0046】
ディスク4は、ロータハブ15のフランジ面15c上に水平姿勢に配置される。そして、ディスク4の上面は、ロータハブ15の平面部152に取り付けられた押さえ部材155により押圧固定される。このような構成にすることにより、ディスク4は、ロータハブ15のフランジ面15cと押さえ部材155とによって挟持され、ロータハブ15と一体的に回転することができる。
【0047】
シャフト16は、中心軸Oに沿って配置された略円柱形状の部材である。シャフト16の外周面には、ロータハブ15の第1円筒部151が径方向に密着し、また、シャフト16の下端面は、スリーブ12の下面よりの僅かに軸方向下側に配置されている。
【0048】
スリーブ12の下方には、スリーブ12と微小間隙を介して軸方向に対向し、シャフト16の外周面から径方向外側に張り出す環状かつ円板状のスラストプレート18が形成され、シャフト16のフランジを構成している。スラストプレート18は、スリーブ12の外径より僅かに小さい外径を有している。なお、本実施形態では、スラストプレート18とシャフト16とが単一部材から構成されたものを記載したが、図16に示すように、それぞれ別個に製造し、スラストプレート18の上面と、シャフト16の下端面とが隙間なく当接するように固定することも可能である。また、スラストプレート18は、必要とされる機械的強度や寸法安定性等から適宜選択できるが、スラストプレート18とシャフト16とをそれぞれ別個で製造していた場合、シャフト16の端部に固定されシャフト16と一体に回転することから、シャフト16と同程度の熱膨張係数を有する材質が好ましい。
【0049】
<3.スリーブユニットの構成>
ここで、上述したスリーブユニット10を構成しているスリーブハウジング11とスリーブ12について以下詳細に説明する。
【0050】
<3−1.スリーブ>
図4に示したように、スリーブハウジング11の内周面11aには、中心部に軸方向に貫通する軸受穴を有する円筒状のスリーブ12が接着等の手段によって固定されている。このスリーブ12は、潤滑オイル19が含浸された多孔質焼結体から成形され、その材質は特に限定するものではなく、各種金属粉末や金属化合物粉末、非金属粉末を原料として成型、焼結したものが使用される。原料としては、例えば、Fe−Cu、Cu−Sn、Cu−Sn−Pb、Fe−C等を含有する。オイルが含浸された多孔質焼結体から成形されているため、モータ1回転時、軸受面を構成するスリーブ12の内周面12bには潤滑オイル19が滲みだし、回転するロータハブ15の第1円筒部151の外周面151aとスリーブ12の内周面12bとの間は、常に一定の油膜が形成されるため、ロータハブ15とスリーブ12との間に高い摺動性能を得ることができる。従って、ロータハブ15の第1円筒部151の外周面151aに窒化処理等の硬化処理を行なわずとも、安定した回転性能を得ることができる。ロータハブ15の第1円筒部151の外周面151aに硬化処理を行わないことにより、安価に流体動圧軸受装置3を製造することができ、且つ安価なスピンドルモータ1を製造することができる。また、潤滑オイル19が、少なくともスリーブ12の周囲に形成される微小間隙を含む空間中に作動流体として充填されている。
【0051】
<3−2.スリーブハウジング、及びそのフランジ部>
次に、スリーブハウジング、及び本実施形態に係るスリーブハウジングのフランジ部について、図4に基づいて説明する。本実施形態に係るスリーブハウジング11は、例えば、ステンレスや樹脂部材等から形成され、中空円筒形状をなしている。そして、スリーブハウジング11は、スリーブハウジング11の下端部又は下端部近傍から径方向内方に所定幅突出したフランジ部50を有している。ここでいう「所定幅」とは、スリーブユニット10を構成するときに、スリーブハウジング11の内部に上方からスリーブ12を挿入したときに、スリーブ12を軸方向に係止できる程度の幅である。このとき、フランジ部50の上面50aとスリーブ12の下面12aとは当接しており、以下、スリーブ12の下面12aにおいて、フランジ部50の上面50aと当接している面12aaと、当接していない面12abとの総称を12aとする。また、フランジ部50の内周面50bは、スラストプレート18の外周面18cと径方向に微小間隙を介して対向している。
【0052】
以上より、フランジ部50にてスリーブ12を軸方向に保持することができるので、治具にてスリーブ12を保持することなく流体動圧軸受装置3の組み立てが容易になる。よって自動化ラインで必要な一方向組み立ても可能になる。また、接着剤も、強度のあるエポキシ系接着剤が使用可能になる。また、従来は、円筒形状のスリーブハウジングにスリーブを固定する場合には、スリーブハウジングの内部においてスリーブの軸方向の移動を係止する部位が存在しなかったため、スリーブを所望の位置に接着により固定することが容易ではなかったが、スリーブハウジング11の内部にスリーブ12を挿入したとき、フランジ部50の上面50aにスリーブ12の下面12aaが当接(係止)するので、所望の位置にスリーブ12を固定することができる。
【0053】
また、フランジ部50の下面50cの内縁部分には切り欠き部が形成され、そこに板状のカウンタープレート14の外端部がレーザー溶接や接着等で固定されている。その結果、中空円筒形状のスリーブハウジング11は、その軸方向下方が閉塞されている。
【0054】
なお、スリーブハウジング11、フランジ部50及びスリーブ12は、例えば、銅や銅合金等からも成形可能である。また、本実施形態では、中空円筒形状のスリーブハウジング11の下方を、フランジ部50を介してカウンタープレート14を固定し開口を閉塞していたが、図17に示すように、それらが一体となったスリーブハウジング、つまり、カップ状のスリーブハウジングを活用することも可能である。
【0055】
<3−3.軸方向溝>
また、スリーブ12の外周面12dには、図4に示したように、軸方向下方端部から軸方向上方端部にわたって、1つ又は複数の軸方向溝(オイル溝)13が形成されている(本実施形態では、図7や図8に示すように、軸方向溝13は3つ)。そして、スリーブ外周面12dに対向するスリーブハウジング11の内周面11aとで連通孔を形成する。このように構成することにより、スリーブ下面12aのスラスト動圧軸受部にて圧送された潤滑オイル19を、スリーブ上面12cの微小間隙若しくはスリーブハウジング上面11cの微小間隙へ流すことができる。また、本実施形態では、軸方向溝13をスリーブ外周面12dに形成したが、スリーブ外周面12dと対向するスリーブハウジング11の内周面11a(図18参照)や、スリーブ外周面12d及びスリーブハウジング内周面11aの両方に形成する構成にしてもよい。その場合も、対向するスリーブ外周面12dとで連通孔を形成する。
【0056】
<3−4.凹部(逃がし溝)>
また、フランジ部50に隣接するスリーブハウジング11の内周面11aに凹部(逃がし溝)51が形成されている。スリーブハウジング11が、その下端部又は下端部近傍から径方向内方に突出したフランジ部50を有する円筒形状スリーブハウジング11である場合、有底状にするためにフランジ部50とカウンタープレート14とをレーザー溶接によって固定するとき、このような構成にすることにより、その際に発生する歪みは、凹部51により吸収されるので、レーザー溶接によりスリーブハウジング11の軸方向一方側内周面11aが溶接時の熱で変形して、スリーブ12を径方向に圧力をかけてスリーブ12が傾くといった不具合を防止している。
【0057】
<3−5.接着溝、及び接着剤>
また、スリーブハウジング11の内周面11aには、スリーブハウジング11とスリーブ12とを固定するための接着剤を塗布する接着溝52が、凹部51の上方位置に設けられている。このとき、スリーブハウジング11の内周面11bにスリーブ12を挿入するとき、接着剤はスリーブ12により摺れるが、接着溝52内に収容されているため、例えば接着剤の塗布位置、塗布量等が不均一となっても、接着溝より上方に移動することを防止することができる。また、接着溝52を設けることにより、スリーブハウジング11とスリーブ12との締結強度を強固にすることができるため、外部からの衝撃等に対する強度を得ることができる。従って、モータ1が小型化、薄型化しても、スリーブハウジング11とスリーブ12とを強固に固定することができる。また、スリーブハウジング11とスリーブ12とを径方向に接着固定する接着剤としては、嫌気性接着剤、紫外線硬化型接着剤、あるいは熱硬化型接着剤等を使用することができ、その他にも、紫外線硬化型及び嫌気性接着剤、紫外線硬化型及び熱硬化型接着剤、嫌気性及び熱硬化型接着剤等を使用することができるが、油面でも接着力が優れており、また、固着スピードが速いため、スリーブ12を位置決め保持する時間を短くすることができる熱硬化型接着剤であるエポキシ系接着剤を使用するのが好ましい。
【0058】
<4.動圧構造>
次に、軸受構造について、図4乃至図13に基づいて説明する。
【0059】
まず、本実施形態に係る流体動圧軸受装置内において、作動流体となる潤滑オイル19が充填されている空間、及びその空間を形成している各微小間隙について以下説明する。また、潤滑オイル19の流れを説明するために、中心軸Oを含む断面における各微小間隙の幅を、図5、図6、図10、図11に示すように記号を振り分ける。
【0060】
<4−1.第1微小間隙P:幅A>
まず、ロータハブ15の第1円筒部151の外周面151aとスリーブ12の内周面12bとの微小間隙(以下、この微小間隙を第1微小間隙Pとする)とし、中心軸Oを含む断面における第1微小間隙の幅をAとする。
【0061】
<4−2.スリーブ下面12aについて>
次に、スリーブ12の下面12aについて、図7乃至図11に基づいて説明する。図7は、スリーブ12の下面12aに設けられた複数の下スラスト動圧発生溝45b・45b・45b・・・を示した図で、図8は下方から見たスリーブ12の斜視図で、図9は、図2における矢印L−Lから見た図であり、スリーブハウジング内周面11aにスリーブ12を挿入し、フランジ部50がスリーブ下面12aaを係止した状態を下方からみた図である。図9において、波線50bはフランジ部内周面を表し、その内周面50bよりスリーブハウジング内周面11aまでの領域がフランジ部50であり、その領域においてスリーブ下面12aaとフランジ部50とが当接している。図10及び図11に示すように、スリーブ下面12aに設けられた下スラスト動圧発生溝45bは、スリーブ下面12aを凹めて形成された溝で、その凹めて形成された軸方向の面をスラスト動圧発生溝45bの天面45baとし、その溝の開口は下方に向けて開いている。
【0062】
<4−2−1.下スラスト動圧発生溝が端から端まで:軸方向溝と連通>
本実施形態に係る下スラスト動圧発生溝45bは、図7に示すように、中心軸Oを中心として設けられ、スリーブ下面12aの径方向外側端部まで伸びて形成されている。また、図8又は図9に示すように、下スラスト動圧発生溝45bは、フランジ部50と当接するスリーブ下面12aaの外縁部分にまで伸びており、複数の下スラスト動圧発生溝45b・45b・45b・・・のうち3つのスラスト動圧発生溝45b・45b・45bと、スリーブ12の外周面12dで軸方向下方端部から軸方向上方端部にわたって形成された3つの軸方向溝13・13・13とが、それぞれスリーブ下面12aの外縁部分で連通している。このため、相対回転時に潤滑オイル19に流体動圧を誘起する本来のスラスト動圧軸受部の機能に加えて、潤滑オイル19の循環溝としての役割を持たせることができる。よって、フランジ部上面50aとスリーブ下面12aaとが当接すると、従来の流路構成では潤滑オイル19の流路を防ぐかたちになるが、スラスト動圧発生溝45bをスリーブ12の下面12aの外縁端部まで設けたことにより、その当接面では、潤滑オイル19はスラスト動圧発生溝45bを通過して流れる。このため、スムーズに循環するように潤滑オイル19を案内することができる。
【0063】
<4−2−2.第2微小間隙Q(スラスト動圧発生溝45b):幅B>
図10は、図5における矢印M−Mから見た模式図で、スリーブ下面12aaとフランジ部上面50aとが当接し、中心軸O側からスリーブ下面12aの外縁部分まで伸びてきた下スラスト動圧発生溝45bと、スリーブ外周面12dの軸方向溝13とが連通している様子を示している。スラスト動圧発生溝45bの天面45baとフランジ部上面50aとがなす空間(連通孔)を潤滑オイル19が流れる第2微小間隙Qとすると、この第2微小間隙Qは実質的にはスラスト動圧発生溝45bであり、中心軸Oを含む断面における第2微小間隙Qの軸方向の幅Bは、スラスト動圧発生溝45bの溝深さに相当する。また、軸方向溝13の周方向の幅については、下スラスト動圧発生溝45bの周方向の幅より小さく又は大きく設定したり、若しくはそれに相当する大きさに設定したりすることも可能であるが、スリーブ外周面12dとスリーブハウジング内周面11aとを固定させることを考慮すると、スリーブ外周面12dに設けられる軸方向溝13の周方向の幅は、下スラスト動圧発生溝45bの周方向の幅より小さく設定することが望ましい。
【0064】
<4−2−3.第4微小間隙S:幅D>
図11は、図5における矢印N−Nから見た模式図で、スリーブ下面12aとスラストプレート上面18aとが微小間隙を介して対向し、スリーブ外周面12d側からスリーブ下面12aの内縁部分まで伸びてきたスラスト動圧発生溝45bを示している。スリーブ下面12aとスラストプレート上面18aとがなす微小間隙を第3微小間隙Rとし、スラストプレート上面18aとスラスト動圧発生溝45bの天面45baとがなす微小間隙を第4微小間隙Sとすると、中心軸Oを含む断面における第4微小間隙Sの軸方向の幅Dは、中心軸Oを含む断面における第3微小間隙Rの軸方向の幅Cと、第2微小間隙Qの軸方向の幅B(スラスト動圧発生溝45bの溝深さ)とを加算した大きさに相当する。
【0065】
<4−3.第5微小間隙T(軸方向溝13):幅E>
図5及び図6に戻る。下スラスト動圧発生溝45bと連通しているスリーブ外周面12dの軸方向溝13とスリーブハウジング内周面11aとが形成する空間(連通孔)を第5微小間隙Tとし、中心軸Oを含む断面における第5微小間隙Tの径方向の幅をEとする。
【0066】
<4−4.第6微小間隙U〜第9微小間隙X>
また、図5に示すように、スラストプレート外周面18cとフランジ部内周面50bとの微小間隙を第6微小間隙U、カウンタープレート上面14aとスラストプレート下面18bとの微小間隙を第7微小間隙V、スリーブ上面12cとロータハブ15の平面部152の下面152aとの微小間隙を第8微小間隙W、スリーブハウジング上面11bとロータハブ15の平面部152の下面152aとの微小間隙を第9微小間隙Xとする。
【0067】
<4−5.まとめ:微小間隙が連通>
以上より、本実施形態に係る流体動圧軸受装置3内では、第1微小間隙P、第2微小間隙Q、第3微小間隙R、第4微小間隙S、第5微小間隙T、第6微小間隙U、第7微小間隙V、第8微小間隙W、第9微小間隙Xが互いに連通して空間を形成し、その空間中に作動流体として連続的に潤滑オイル19が充填されている。その連通した微小間隙には、潤滑流体として潤滑オイル19が途切れることなく保持され、フルフィル構造を形成している。
【0068】
潤滑オイル19としては、例えば、ポリオールエステル系オイルやジエステル系オイル等のエステルを主成分とするオイルが使用される。エステルを主成分とするオイルは、耐摩耗性、熱安定性、及び流動性に優れているため、流体動圧軸受装置3の潤滑オイル19として好適である。
【0069】
<4−6.ラジアル動圧軸受部>
次に、径方向に荷重を支持するラジアル動圧軸受部について説明する。図4乃至図6に示すように、ロータハブ15の第1円筒部151の径方向外側に位置するロータハブラジアル軸受面と、それに対向するスリーブ12のスリーブラジアル軸受面との微小間隙には、径方向の荷重を支持するラジアル動圧軸受部を備えており、ロータハブラジアル軸受面又はスリーブラジアル軸受面の少なくとも一方に、相対回転時に潤滑オイル19に流体動圧を誘起するヘリングボーン形状のラジアル動圧溝列30(後述する上ラジアル動圧溝列30a及び下ラジアル動圧溝列30bの総称として30とする)が形成されている。
【0070】
本実施形態では、図12に示すように、スリーブ12の内周面12bには、軸方向に間隔をおいて上下に、上ラジアル動圧溝列30a、下ラジアル動圧溝列30bが形成されており、上ラジアル動圧溝列30aは第1動圧発生溝35aaと第2動圧発生溝35baとから、下ラジアル動圧溝列30bは第1動圧発生溝35abと第2動圧発生溝35bbとからそれぞれ構成されている。以下、上ラジアル動圧溝列30aと下ラジアル動圧溝列30bの総称としてラジアル動圧溝列30、第1動圧発生溝35aaと第1動圧発生溝35abの総称として第1動圧発生溝35a、第2動圧発生溝35baと第2動圧発生溝35bbの総称として第2動圧発生溝35bとする。第1動圧発生溝35aによって誘起される潤滑オイル19を上方から下方に圧送する力と、第2動圧発生溝35bによって誘起される潤滑オイル19を下方から上方に圧送する力とが、その隣接点35c(「く」字状ラジアル動圧溝列30の屈曲部)においてぶつかり合い重畳して局所的に圧力が上昇し、径方向に対して強い支持力を発生させる。このため、モータ1の回転により、スリーブ12に対してロータハブ15とシャフト16とが一体的に回転駆動すると、ラジアル動圧溝列30のポンピング作用により、微小間隙中に充填された潤滑オイル19に流体動圧を誘起して、シャフト16と固定又は一体加工されたロータハブ15は、スリーブ12と非接触となりつつも径方向に支持され、スリーブ12に対して回転自在に支承される。
【0071】
上ラジアル動圧溝列30aにおいて、スリーブ12の内周面12bの周方向に沿って間隔をおいてそれぞれ複数並べられて軸方向に向き合った第1動圧発生溝35aaの数と第2動圧発生溝35baの数とが同数である場合、図12に示すように、第1動圧発生溝35aaの軸方向の溝スパンaを、第2動圧発生溝35baの軸方向の溝スパンbよりも大きく設定する。このとき、下ラジアル動圧溝列30bを構成する第1動圧発生溝35abの溝スパンcは、第2動圧発生溝35bbの溝スパンdと同じか、溝スパンcを溝スパンdよりも大きく設定する。但し、上ラジアル動圧溝列30aの軸方向の幅(溝スパンaと溝スパンbの和)は、下ラジアル動圧溝列30bの軸方向の幅(溝スパンcと溝スパンdの和)より大きく設定する。このため、第1動圧発生溝35aaにより発生する圧力は、第2動圧発生溝35baにより発生する圧力より高くなり、第1動圧発生溝35aaによって誘起された潤滑オイル19を上方から下方に圧送する圧力が、第2動圧発生溝35baによって誘起された潤滑オイル19を下方から上方に圧送する圧力に比べて大きく打ち勝って、第1微小間隙P中を上方から下方に向かって潤滑オイル19を圧送することができる。そして、潤滑オイル19は、第1微小間隙P、第3微小間隙R、第2微小間隙Q、第5微小間隙T、第8微小間隙W、を経て第1微小間隙Pに環流することとなる。この構成により、各微小間隙を正圧に保つことができ、負圧になることを防止でき、ひいては負圧による気泡の発生も防止できる。
【0072】
また、図示していないが、スリーブ12の内周面12bの周方向に沿って間隔をおいて並べられた第1動圧発生溝35aaの数を、第2動圧発生溝35baの数よりも多くする。この場合、第1動圧発生溝35aaの軸方向の溝スパンaと、第2動圧発生溝35baの軸方向の溝スパンbとが同じであっても、上記のような効果を得ることができる。
【0073】
なお、ラジアル動圧溝列30は、ヘリングボーン形状やスパイラル形状やテーパードランド形状に限らず、流体動圧軸受として機能すれば、どのような溝パターンでもよい。なお、本実施形態では、ラジアル動圧溝列30をスリーブラジアル軸受面に形成したが、ロータハブラジアル軸受面であるロータハブ15の第1円筒部151の外周面151aに形成する構成にしてもよい。また、本実施形態では、スリーブ12とシャフト16との間にロータハブ15の第1円筒部151を挟んだ構成になっているが、これに限定されず、ロータハブ15の第1円筒部151がない状態、つまり、スリーブスラスト軸受面に対向する面としてシャフトスラスト軸受面を設けることも可能である。
【0074】
<4−7.スラスト動圧軸受部>
次に、軸方向に荷重を支持するスラスト軸受部について説明する。
【0075】
ロータハブ15の平面部152の下方に位置するロータハブスラスト軸受面と、それに対向するスリーブ12の上方に位置する上スリーブスラスト軸受面との微小間隙には、スラスト軸受部を備えている。ロータハブスラスト軸受面又はスリーブスラスト軸受面の少なくとも一方に、相対回転時に潤滑オイル19に流体動圧を誘起する複数の上スラスト動圧発生溝45aが設けられ、上スラスト動圧溝列40aを構成している。
【0076】
また、同様に、スリーブ12の下方に位置する下スリーブスラスト軸受面には、スラスト軸受部を備えている。下スリーブスラスト軸受面に、相対回転時に潤滑オイル19に流体動圧を誘起する複数の下スラスト動圧発生溝45bが設けられて下スラスト動圧溝列40bを構成している。
【0077】
本実施形態では、図13に示すように、スリーブ12の上面12cには、ロータハブ15の平面部152とスリーブ12の上面12cとの間に充填される潤滑オイル19に流体動圧を発生させるための上スラスト動圧溝列40aが、ヘリングボーン形状に中心軸Oを中心として径方向外方へ設けられている。この場合、上スラスト動圧溝列40aを形成する複数のヘリングボーン形状の上スラスト動圧発生溝45aは、発生する動圧により潤滑オイル19が径方向内方に向かう効果を奏するアンバランスなヘリングボーン溝であることが望ましい。この径方向内方に向かうオイル動圧により、このアンバランスなヘリングボーン溝より径方向内方の潤滑オイル19全体の内圧を高め、負圧を防止することで、気泡発生を防止するためである。
【0078】
また、本実施形態では、スリーブ12の下面12aには、スリーブ12の下面12aとスラストプレート18の上面18aとの間に充填される潤滑オイル19に流体動圧を発生させるための下スラスト動圧溝列40bが、中心軸Oを中心として径方向外方へ放射状に設けられている。なお、前記スリーブ12の下面12aに設けられたスラスト動圧軸受部は、相対回転時に、スリーブ12とスラストプレート18及びフランジ部50との間に保持された潤滑オイル19を径方向内方に流動させるポンプイン形状を有する。このため、モータ1によりスリーブ12が相対回転駆動すると、スラスト動圧軸受部のポンピング作用により、スラスト動圧軸受部の下スラスト動圧発生溝40bと、そこを流れる潤滑オイル19の粘性とにより発生する軸方向の流体動圧によって、スリーブ12の下面12aと、スラストプレート上面18a及びフランジ部上面50aとが非接触状態に支持される。そして、スラスト動圧軸受部はポンプイン形状を有しているため、シャフト16側に潤滑オイル19を押し込む圧力を誘起し、潤滑オイル19を圧送することができる。
【0079】
なお、本実施形態では、上スラスト動圧溝列40aを上スリーブスラスト軸受面に、下スラスト動圧溝列40bを下スリーブスラスト軸受面それぞれに形成したが、上スラスト動圧溝列40aをロータハブスラスト軸受面に形成する構成にしてもよい。また、ロータハブスラスト軸受面に対向するスラスト軸受面として、本実施形態では、スリーブ12の上方に位置するスリーブスラスト軸受面としたが、同じくロータハブスラスト軸受面に対向するスラスト軸受面として、スリーブハウジング11の上方に位置するスリーブハウジングスラスト軸受面に上スラスト動圧溝列40aを形成してもよい。このとき、上スラスト動圧溝列40aを形成するのは、スリーブハウジングスラスト軸受面とスリーブスラスト軸受面のいずれか一方でも両方にでも構わない。
【0080】
従って、下スラスト動圧溝列40bによるロータ部5に対する浮上作用と、上スラスト動圧溝列40aによるスラストプレート18に対する押し下げ作用とにより、ロータ部5は上下方向に押圧される。そしてこれらの動圧力がバランスする位置においてロータ部5の回転浮上位置が安定する。上スラスト動圧溝列40a及び下スラスト動圧溝列40bを形成することにより、上スラスト動圧溝列40a及び下スラスト動圧溝列40bで発生する軸支持力が軸方向に相対向する方向から協働して作用することになるので、ロータハブ15の回転を安定して支持することができる。
【0081】
なお、本実施形態では、上スラスト動圧溝列40aを構成する複数の上スラスト動圧発生溝45aをヘリングボーン形状に、下スラスト動圧溝列40bを構成する複数の下スラスト動圧発生溝45bをスパイラル形状にそれぞれ設けていたが、これに限らず、複数の上スラスト動圧発生溝45aをスパイラル形状に、複数の下スラスト動圧発生溝45bをヘリングボーン形状に構成することも可能である。また、上スラスト動圧発生溝45a及び下スラスト動圧発生溝45bの両方を、ヘリングボーン形状若しくはスパイラル形状に形成することも可能である。
【0082】
また、本実施形態では、スリーブ12の上面12cに設けられた複数の上スラスト動圧発生溝45aは、中心軸Oを中心として設けられ、スリーブ12の上面12cの径方向外側端部まで伸びて形成されている。このため、上スラスト動圧発生溝45aをスリーブ上面12cの外縁部分にまで設けたことにより、相対回転時に潤滑オイル19に流体動圧を誘起する本来のスラスト動圧軸受部の機能に加えて、上スラスト動圧発生溝45aを潤滑オイル19の循環溝としての役割を持たせることができる。そして、スリーブ12の上面12cの外縁部分で上スラスト動圧発生溝45aと、スリーブ12の下面12aの外縁部分で下スラスト動圧発生溝45bと、スリーブ12の外周面12dで軸方向下方端部から軸方向上方端部にわたって形成された軸方向溝13とが連通している。このため、複数ある上スラスト動圧発生溝45a・45a・45a・・・のうち3つの上スラスト動圧発生溝45a・45a・45aと、複数ある下スラスト動圧発生溝45b・45b・45b・・・のうち3つの下スラスト動圧発生溝45b・45b・45bとが、3つの軸方向溝13・13・13それぞれを介して連通していることにより、潤滑オイル19をスムーズに循環するように案内することができる。
【0083】
<5.まとめ>
以上説明したように、本実施形態に係る流体動圧軸受装置3は、スリーブ12の下面12aの一部12aaに当接するように、スリーブハウジング11は、スリーブハウジング11から径方向内方に突出したフランジ部50を設ける構成とした。そして、スリーブ12の下面12aaとフランジ部50とが当接すると、従来の流路構成では潤滑オイル19の流路を防ぐかたちになるが、スリーブ12の下方に位置するスリーブスラスト軸受面に設けられた複数のスラスト動圧発生溝45bを、スリーブ12の下面12aの径方向外側端部まで伸びた構成にしたことにより、相対回転時に潤滑オイル19に流体動圧を誘起する本来のスラスト動圧軸受部の機能に加えて、潤滑オイル19の循環溝としての役割を持たせることができるため、そういった問題も解消することができる。また、新たに流路となる循環用溝を加工する必要がない。以上より、スリーブ12を軸方向で保持することができるので、治具にてスリーブ12を保持することなく流体動圧軸受装置3の組み立てが容易になる。よって自動化ラインで必要な一方向組み立ても可能になる。また、接着剤も、強度のあるエポキシ系接着剤が使用可能になる。
【0084】
<6.潤滑オイルの流れについて>
次に、スリーブ下面12aの径方向外側端部まで伸びた下スラスト動圧発生溝45b、及びスリーブ下面12aと当接するフランジ部50の周囲の潤滑オイル19の挙動について、図6に基づいて説明する。
【0085】
スリーブ12の材料として多孔質焼結体から成形した場合、このような多孔質焼結体は、その表面には多数の細孔を有するため、上述した動圧作用によって高められた圧力がその細孔を介してスリーブ12の内部に逃げていってしまう可能性があり、その結果、所定の圧力が得られず、モータ1の相対回転時に、回転体であるロータ部5が非接触(浮上)状態になりにくくなる問題があった。そこで、以下のように各微小間隙の幅に大小関係を設定することで、そのような問題を解消した。
【0086】
つまり、第2微小間隙Qの幅Bを、第2微小間隙Qの幅Bと第3微小間隙Rの幅Cとを加算した大きさに相当する第4微小間隙Sの幅Dよりも小さくなるように設定する。そして、第2微小間隙Qの幅Bを、第5微小間隙Tの幅Eよりも小さくなるように設定する。例えば、第2微小間隙Qの幅Bが5乃至15μm程度であれば、第3微小間隙Rの幅Cは10乃至40μm程度で、第5微小間隙Tの幅Eは100μm程度とされる。
【0087】
このような構成にすることにより、第1微小間隙P内のラジアル軸受部のポンピング作用により第4微小間隙Sに流入してきた潤滑オイル19は、第4微小間隙Sを通過して、スリーブ下面12aaとフランジ部50との当接面の第2微小間隙Q(スラスト動圧発生溝45bの天面45baとフランジ部上面50aとがなす空間)に流れ込んで第5微小間隙Tに流れにくくなる。このため、高められた圧力が第3微小間隙Rから外部へと逃げにくい略閉空間となり、潤滑オイル19は第3微小間隙R中や第7微小間隙V中で軸方向に高い圧力を維持することができ、ロータ部5を安定して非接触状態で支持することができる。また、第7微小間隙V等を正圧に保つことができ、負圧の発生及び負圧の発生に起因する気泡の発生も防止することができる。
【0088】
以上のように構成したことで、スリーブ12を成形している多孔質焼結体が有する多数の細孔を介して逃げていった圧力を補うだけの、若しくはそれ以上の圧力をロータ部5に加えることができる。
【0089】
<7.その他>
上記実施形態で用いられているスリーブ12の他の実施形態として、図14及び図15に示すように、スリーブ12の下面12a及び/又は上面12cそれぞれの内縁部分及び/又は外縁部分に、全周にわたって面取り部12eが切り欠かれた構成にしてもよい。このように構成することにより、スリーブハウジング11のフランジ部50とスリーブ12とが当接したときにその面取り部12eが空間となり、スリーブ外周面12dのどこにでも軸方向溝13を設けても、軸方向溝13が上スラスト動圧発生溝45a及び/又は下スラスト動圧発生溝45bそれぞれと連通させることができる。
【0090】
上記の実施形態では、ステータ22の径方向内側でロータ部5が回転するインナーロータ型スピンドルモータについて説明したが、本発明は、ステータ22の径方向外側でロータ部5が回転するアウターロータ型スピンドルモータにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】ディスク駆動装置の縦断面図である。
【図2】スピンドルモータの一部縦断面図である。
【図3】スピンドルモータの構成を示す縦断面図である。
【図4】スリーブ及びその周囲の構成を示した拡大縦断面図である。
【図5】各微小間隙が互いに連通する構成を示した拡大縦断面図である。
【図6】各微小間隙の幅の大小関係を示す図である。
【図7】スリーブの下面図である。
【図8】下方から見たスリーブの斜視図
【図9】図2における矢印L−Lから見た図である。
【図10】図5における矢印M−Mから見た模式図である。
【図11】図5における矢印N−Nから見た模式図である。
【図12】上ラジアル動圧溝列と下ラジアル動圧溝列それぞれを構成している第1動圧発生溝と第2動圧発生溝の関係図である。
【図13】スリーブの上面図である。
【図14】スリーブの端面の縁部分に面取り部を設けた場合のスリーブ下面図である。
【図15】スリーブの端面の縁部分に面取り部を設けた場合のスリーブ上面図である。
【図16】シャフトとスラストプレートとがそれぞれ別個に構成した場合のスピンドルモータの縦断面図である。
【図17】スリーブハウジングがカップ状の場合のスピンドルモータの縦断面図である。
【図18】スリーブハウジングの内周面に軸方向溝を設けた場合のスピンドルモータの縦断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 スピンドルモータ
2 ディスク駆動装置
3 流体動圧軸受装置
4 ディスク
11 スリーブハウジング
11a 内周面
11b 上面
12 スリーブ
12a 下面
12aa 当接面
12ab 非当接面
12b 内周面
12c 上面
12d 外周面
12e 面取り部
13 軸方向溝
15 ロータハブ
15a 貫通孔
151 第1円筒部
151a 外周面
152 平面部
152a 下面
153 第2円筒部
15b 外周面
15c フランジ面
154 台部
16 シャフト
18 スラストプレート
18a 上面
18b 下面
18c 外周面
19 潤滑オイル
30 ラジアル動圧溝列
30a 上ラジアル動圧溝列
30b 下ラジアル動圧溝列
35a 第1動圧発生溝
35b 第2動圧発生溝
40 スラスト動圧溝列
40a 上スラスト動圧溝列
40b 下スラスト動圧溝列
45a 上スラスト動圧発生溝
45b 下スラスト動圧発生溝
45ba 天面
50 フランジ部
50a 上面
50b 内周面
50c 下面
51 凹部
52 接着溝
A 中心軸を含む断面における第1微小間隙の幅
B 中心軸を含む断面における第2微小間隙の幅
C 中心軸を含む断面における第3微小間隙の幅
D 中心軸を含む断面における第4微小間隙の幅
E 中心軸を含む断面における第5微小間隙の幅
O 中心軸
P 第1微小間隙
Q 第2微小間隙
R 第3微小間隙
S 第4微小間隙
T 第5微小間隙
U 第6微小間隙
V 第7微小間隙
W 第8微小間隙
X 第9微小間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸としてシャフトを配置する流体動圧軸受装置であって、
スリーブハウジングと、
前記スリーブハウジングの内周面に固定された中空円筒形状のスリーブと、
ディスクが載置されるディスク載置面を有するロータハブと、
前記スリーブの軸方向一方側の平面部と微小間隙を介して軸方向に対向し、前記シャフトの外周面から径方向外方に張り出したスラストプレートと、
前記スリーブの軸方向一方側の面に形成され、中心軸を中心として設けられた複数のスラスト動圧発生溝を有するスラスト動圧軸受部と、
少なくとも前記スリーブの周囲に形成される微小間隙を含む空間中に作動流体として充填される潤滑オイルと、
を備え、
前記スリーブの軸方向一方側の平面部の一部に当接するように、前記スリーブハウジングは、前記スリーブハウジングから径方向内方に突出したフランジ部を有し、
前記スラスト動圧発生溝は、前記スリーブの軸方向一方側の平面部の径方向外側端部まで伸びて形成され、前記潤滑オイルの流路となることを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体動圧軸受装置において、
前記中心軸を含む断面における前記スラスト動圧発生溝内の軸方向の幅は、前記中心軸を含む断面における前記スラストプレートの軸方向他方側の面と前記スラスト動圧発生溝内の軸方向他方側の面との軸方向の幅よりも小さいことを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の流体動圧軸受装置において、
前記スリーブの外周面には、軸方向一方端部から軸方向他方端部にわたって、1つ又は複数の軸方向溝が設けられていることを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の流体動圧軸受装置において、
前記スリーブ外周面と対向する前記スリーブハウジングの内周面には、軸方向一方端部から軸方向他方端部にわたって、1つ又は複数の軸方向溝が設けられていることを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の流体動圧軸受装置において、
前記スリーブの軸方向一方側の端面の外縁部分で、前記スラスト動圧発生溝が、前記軸方向溝と連通していることを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、
前記中心軸を含む断面における前記スラスト動圧発生溝内の軸方向の幅は、前記中心軸を含む断面における前記軸方向溝内の径方向の幅よりも小さいことを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、
前記フランジ部に隣接する前記スリーブハウジングの内周面に凹部が形成されていることを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、
前記スリーブハウジングの内周面に前記スリーブハウジングと前記スリーブとを固定するための接着剤を塗布する接着溝が設けられていることを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項9】
請求項8に記載の流体動圧軸受装置において、
前記スリーブハウジングと前記スリーブとを径方向に接着固定する前記接着剤は、エポキシ系接着剤であることを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、
前記スリーブの軸方向一方側の面に設けられた前記スラスト動圧軸受部は、相対回転時に、前記スリーブと前記スラストプレート及び前記フランジ部との間に保持された前記潤滑オイルを径方向内方に流動させるポンプイン形状を有することを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、
前記スリーブは、前記潤滑オイルを含浸した多孔質の含油焼結金属部材からなることを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、
前記スリーブの軸方向の端面の縁部分には、全周にわたって面取り部が切り欠かれていることを特徴とする流体動圧軸受装置。
【請求項13】
ベース部材と、
前記ベース部材に固定された磁束発生部と、
請求項1乃至請求項12のいずれか記載の流体動圧軸受装置によって前記ベースに対して回転自在に支持されたロータと、
前記磁束発生部に対向して前記ロータに取り付けられたロータマグネットと、
を備えることを特徴とするスピンドルモータ。
【請求項14】
ディスクを回転させるディスク駆動装置であって、
装置ハウジングと、
前記装置ハウジングの内部に固定された請求項13記載のスピンドルモータと、
前記ディスクに対して情報の読み出し及び/又は書き込みを行うアクセス部と、
を備えることを特徴とするディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−204019(P2009−204019A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44732(P2008−44732)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】