説明

流体動圧軸受装置、スピンドルモータ、及びディスク駆動装置

【課題】シャフトに取り付けられたプレートがスリーブ側に反ることを低減する。
【解決手段】流体動圧軸受装置100は、中心軸に沿って配置されるシャフト110と、スリーブ120と、プレート130と、ロータハブ140とを備えている。シャフト110は、上から順に、小径部111と、中径部112と、大径部113とを有している。スリーブ120は、大径部113に取り付けられている。プレート130は、中径部112に配置され、大径部113の上面113bと接触する第一下面131aと、第一下面131aから径方向外側に延びる第二下面131bとを有する。ロータハブ140は、プレート130と接触する第一接触面140aを有する。大径部113の上面113bは、第一接触面140aと軸方向に重なり、プレート130を第一接触面140aとで挟む第二接触面113cを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体動圧軸受装置、スピンドルモータ、及びディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置や光ディスク装置には、ディスクを中心軸周りに回転させるモータが搭載されている。モータは、回転部と、静止部と、軸受装置とを有する。回転部は軸受装置を介して、静止部に対して相対的に回転させる。近年では、モータ用の軸受装置として流体動圧軸受装置が多用されている。流体動圧軸受装置では、シャフトとスリーブとの間に潤滑オイルを介在させ、潤滑オイルの動圧によりスリーブに対してシャフトを支持しつつ相対的に回転させる。
【0003】
本願発明に関連する先行技術としては、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1に記載されたモータは、スリーブに支持されて回転するシャフトと、シャフトに結合されたハブと、シャフトが挿入されてシャフトに結合されるプレートを備えている。プレートは、シャフトの径方向に突出する段差部分とハブとにより軸方向から挟まれている。プレートとスリーブとの間は、潤滑オイルが充填されており、シャフト回転時にスラストベアリングを構成する。
【特許文献1】特開2008−43193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記モータの場合、ハブのプレートと接触する面が、シャフトの段差部分よりも径方向外側に突出している。このため、ハブを挿入してプレートを固定する際や、ハブに衝撃が加わった際等に、ハブのプレートと接触する面が、上から押圧されることによって、下側(スリーブ側)に反ってしまう虞がある。そのため、プレートがスリーブ等の他部材と接触し、不具合が発生する虞がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、シャフトに取り付けられたプレートがスリーブ側に反ることを低減する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本願の第1の発明は、流体動圧軸受装置であって、上下に延びる中心軸に沿って配置されるシャフトと、前記シャフトと対向する内周面を有するスリーブと、前記スリーブの上側に配置され、前記シャフトの外周面から径方向に延びるプレートと、前記プレートよりも軸方向上側に配置され、前記シャフトに固定されるロータハブと、前記シャフトと前記スリーブとの間、及び、前記スリーブと前記プレートとの間に介在する潤滑流体とを備え、前記シャフトは、上から順に、小径部と、径方向に関して前記小径部よりも大きい中径部と、径方向に関して前記中径部よりも大きい大径部とを有し、前記スリーブの内周面は、前記シャフトの大径部と対向し、前記プレートは、前記中径部の径方向外側に配置され、前記大径部の上面と接触する第一下面と、該第一下面から径方向外側に延びる第二下面とを有し、前記ロータハブは、前記小径部に固定され、前記スリーブの上面または前記プレートの前記第二下面には、前記スリーブと前記プレートとの間に介在する前記潤滑流体に対して動圧を発生させるための動圧溝列が設けられ、前記ロータハブは、前記プレートと接触する第一接触面を有し、前記大径部の上面は、前記第一接触面と軸方向に重なり、前記プレートを前記第一接触面とで挟む第二接触面を有する。
【発明の効果】
【0007】
本願の例示的な第1発明によれば、シャフトは、径方向に関して前記中径部よりも小さい小径部を有し、プレートは中径部の外側に配置され、第一接触面と第二接触面とで挟む。そして、小径部が径方向に関して中径部より小さいので、ロータハブのプレートと接触する第一接触面の位置を径方向内側に移動させることが可能となり、第一接触面と第二接触面とを軸方向に重ならせることができる。これにより、第一接触面と第二接触面とでプレートを挟んで固定した際に、プレートがスリーブ側に反ってしまうことを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態に係る流体動圧軸受装置の概略断面図である。
【図2】ディスク駆動装置の縦断面図である。
【図3】図2に示したシャフト上部近傍を拡大して示した部分拡大図である。
【図4】スリーブの上面図である。
【図5】変形例に係るロータハブとプレートとの接着部分を拡大して示した部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、流体動圧軸受装置の中心軸Qに沿う方向を上下方向と定義し、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、この定義は、あくまで説明の便宜のためのものであって、流体動圧軸受装置、スピンドルモータ、及びディスク駆動装置が実際の機器に搭載されたときの設置姿勢を限定するものではない。
【0010】
<1. 一実施形態に係る流体動圧軸受装置>
図1は、一実施形態に係る流体動圧軸受装置100の概略断面図である。流体動圧軸受装置100は、上下に延びる中心軸Qに沿って配置されるシャフト110と、スリーブ120と、プレート130と、ロータハブ140と、潤滑流体150とを含む。スリーブ120は、シャフト110と対向する内周面120aを有する。プレート130はスリーブ120の上側に配置され、シャフト110の外周面110aから径方向外側に延びる。ロータハブ140は、プレート130よりも軸方向(中心軸Qに沿う方向)上側に配置され、シャフト110に固定される。潤滑流体150は、シャフト110とスリーブ120との間、及びスリーブ120とプレート130との間に介在する。潤滑流体150は、好ましくは液体であるが、これに限らず気体でもよい。
【0011】
シャフト110は、上から順に、小径部111と、径方向に関して小径部111の径d11よりも大きい径d12の中径部112と、径方向に関して中径部112よりも大きい径d13を持つ大径部113とを有する(d11<d12<d13)。スリーブ120の内周面120aは、大径部113の外周面113aと対向している。プレート130は、中径部112の径方向外側に配置され、大径部113の上面113bと接触する第一下面131aと、第一下面131aから径方向外側に延びる第二下面131bとを含む。なお、本実施形態では、好ましくは、第一下面131aおよび第二下面131bとが径方向に略同一平面上に位置する。ただし、第一下面と第二下面とが略同一平面上に位置しなくてもよい。
【0012】
ロータハブ140は、小径部111に固定されている。ロータハブ140の内周面の下端部にはガイドあるいは面取り等が施される。スリーブ120の上面120bには、スリーブ120とプレート130との間に介在する潤滑流体に対して動圧を発生させる複数の動圧溝161Gが設けられている。なお、複数の動圧溝161Gは、プレート130の第二下面131bに設けられていてもよい。また、スリーブ120の上面120b及びプレート30の第二下面131bの両方に、複数の動圧溝161Gが設けられていてもよい。
【0013】
ロータハブ140は、プレート130の上側を向く面と接触する第一接触面140aを有する。第一接触面140aは、ガイドあるいは面取り等の径方向外側に配置される。大径部113の上面113bには、第一接触面140aと軸方向に重なり、かつ、プレート130を第一接触面140aとの間で挟む第二接触面113cが含まれる。換言すれば、プレート130は、平面視において重なり合う第一接触面140aと第二接触面113cとによって、挟まれている。なお、図1に示した例では、好ましくは上面113bと第二接触面113cとは略一致している。ただし、上面113bと第二接触面113cとが略一致していなくてもよく、例えば、上面113bの面積が第一接触面の面積より広くてもよく、また上面の一部に第一接触面が設けられていてもよい。
【0014】
シャフト110は、径方向に関して中径部112よりも小さい小径部111を有している。プレート130は、中径部112の外側に配置され、第一接触面140aと第二接触面113cとで挟まれている。ここで、小径部111が径方向に関して中径部112より小さく構成されることで、プレート130と接触するロータハブ140の第一接触面140aは所定の接触面積を得つつ、位置を径方向内側に移動できる。これにより、第一接触面140aと第二接触面113cとを、軸方向において、上下に重ならせることができる。したがって、第一接触面140aと第二接触面113cとでプレート130を挟んだ際に、プレート130がスリーブ120側に反ることを低減しつつ、安定して保持される。また、第一接触面140aの径方向内側にガイドや面取り等を有する場合でも、第一接触面140aと第二接触面113cとを軸方向において、上下に重ならせることができる。
【0015】
<2. より具体的な実施形態>
<2−1.ディスク駆動装置の構成>
続いて、本発明のより具体的な実施形態について説明する。
【0016】
図2は、ディスク駆動装置1の縦断面図である。また、図3は、図2に示したシャフト41上部近傍を拡大して示した部分拡大図である。ディスク駆動装置1は、磁気ディスク12(以下、単に「ディスク12」という)を回転させつつ、ディスク12に対する情報の読み出し及び書き込みの少なくとも一方を行う装置である。ディスク駆動装置1は、ハウジング11、2枚のディスク12,12、アクセス部13、及びスピンドルモータ2を備えている。
【0017】
ハウジング11は、2枚のディスク12,12、アクセス部13、及びスピンドルモータ2を内部に収容する筐体である。アクセス部13は、スピンドルモータ2に支持されたディスク12の記録面に沿ってヘッド13Hを移動させて、ディスク12に対する情報の読み出し及び書き込みの少なくとも一方を実行する。
【0018】
<2−2.スピンドルモータの構成>
スピンドルモータ2は、ディスク駆動装置1のハウジング11に固定された静止部3と、ディスク12,12を支持しつつ中心軸Qを中心として回転する回転部4とを備えている。
【0019】
静止部3は、ベース部材31、ステーターコア32、コイル33、及び静止軸受ユニット34を有している。
【0020】
ベース部材31は、ディスク駆動装置1のハウジング11の一部を構成している。ただし、ベース部材31とハウジング11とは、互いに固定された別体の部材であってもよい。ベース部材31は、径方向に広がる平板部311と、平板部311の内縁部から上側へ向けて突出した略円筒形状のホルダ部312とを有する。ベース部材31は、例えば、アルミニウム合金等の金属により形成される。
【0021】
ステーターコア32及びコイル33は、駆動電流に応じて磁束を発生させる磁束発生部である。ステーターコア32は、ベース部材31のホルダ部312の外周面に固定された円環状のコアバック321と、コアバック321から径方向外側に向けて突出する複数本のティース部322とを有している。ステーターコア32は、例えば、電磁鋼板を軸方向に積層させた積層鋼板からなる。
【0022】
コイル33は、ステーターコア32の各ティース部322の周囲に巻回された導線を含む。コイル33は、コネクターを介して図外の電源装置と接続されている。電源装置からコネクターを介してコイル33に駆動電流を与えると、ティース部322に磁束が発生し、中心軸Qを中心として、回転部4を回転させる。
【0023】
静止軸受ユニット34は、回転部4のシャフト41を相対的に回転可能な状態で支持する。静止軸受ユニット34、シャフト41、後述するロータハブ42、及びプレート44は、静止部3と回転部4とを中心軸Qを中心として相対的に回転可能な状態で接続する流体動圧軸受装置5を構成する。
【0024】
静止軸受ユニット34は、スリーブ341、閉塞部材342、及びキャップ343を備えている。
【0025】
スリーブ341は略円筒状に構成され、シャフト41の外周面を包囲する。スリーブ341は、ベース部材31のホルダ部312の内側に配置されている。スリーブ341は、例えば、ステンレスや銅合金などの金属で形成される。
【0026】
図4は、スリーブ341の上面図である。スリーブ341の上面には、複数の動圧溝341Gが配置されたスラスト軸受面341Sが設けられている。シャフト41が回転することにより、スリーブ341の上面とプレート44の下面(第二下面444)の間に介在する潤滑オイル51に動圧が発生し、スラスト軸受が構成される。
【0027】
図2に戻って、閉塞部材342は略円板状に構成され、シャフト41の下側に配置されている。閉塞部材342は、スリーブ341の下部を閉塞する。
【0028】
キャップ343は、スリーブ341の上部に取り付けられる。図3に示したように、キャップ343は、プレート44の上面441に対向する下面343aと、プレート44の外側面442に対向する内側面343bを有している。
【0029】
続いて、スピンドルモータ2の回転部4の構成について説明する。回転部4は、シャフト41、ロータハブ42、ロータマグネット43、及びプレート44を備えている。
【0030】
シャフト41は、上下に延びる中心軸Qに沿って配置される。図3に示したように、シャフト41は、上から順に、径d1を有する小径部411と、径d2を有する中径部412と、径d3を有する大径部413とを含む(d1<d2<d3)。
【0031】
シャフト41は、スリーブ341の中央に配置された軸受孔に挿入された状態で、静止軸受ユニット34に対して回転可能に支持される。このとき、スリーブ341の内周面341aは、シャフト41の大径部413の外周面413aに対向する。大径部413の上面413bは、プレート44と接触する第二接触面413cを有している。
【0032】
図示を省略するが、大径部413の外周面413aには、シャフト41とスリーブ341との間に介在する潤滑流体(本実施形態では潤滑オイル51)に動圧を発生させる複数のラジアル動圧溝が配置されている。ラジアル動圧溝は、いわゆるヘリングボーン状の溝となっている。シャフト41が回転する際には、ラジアル動圧溝列により潤滑オイルが加圧され、潤滑オイル51に発生する動圧によりシャフト41が径方向に沿うように支持されつつ回転する。なお、複数のラジアル動圧溝は、大径部413の外周面413aに対向するスリーブ341の内周面341aに配置されてもよい。
【0033】
ロータハブ42は、シャフト41に固定され、シャフト41とともに回転する。ロータハブ42は、中心軸Qの周囲において径方向外側に広がる形状を有している。ロータハブ42は、接合部421と、胴部422と、円筒部423とを有している。接合部421は、シャフト41の小径部411に圧入、焼き嵌め、溶接、または、接着剤等の手段により固定される。胴部422は、接合部421から径方向外側へ向けて広がる。円筒部423は、胴部422の外周縁から垂下する。ロータハブ42は、プレート44と接触する第一接触面421aを有している。
【0034】
ロータマグネット43は、ロータハブ42の円筒部423の内周面に取り付けられている。ロータマグネット43は、中心軸Qを中心とした円環形状を有している。ロータマグネット43の内周面は、ステーターコア32の複数のティース部322の外周面と径方向に対向する。また、ロータマグネット43の内周面は、N極とS極とが交互に配列された磁曲面となっている。
【0035】
プレート44は、スリーブ341の上側に配置され、シャフト41の中径部412の外周面から径方向に延びる円盤形状を有している。プレート44は、大径部413の上面413bと接触する第一下面443と、第一下面443から径方向外側に延びる第二下面444とを有する。
【0036】
プレート44を中径部412に取り付ける方法としては、例えば、リング状のプレート44を、中径部412に圧入する方法が挙げられる。プレート44の内径は、小径部411の径d1よりも大きい。また、プレート44の内径は、中径部412の径d2と同程度もしくは若干小さい径が好ましい。小径部411の径d1は、中径部412の径d2よりも小さいため、プレート44を中径部412に圧入する際に、小径部411の外側面やプレート44の内周面が傷つくことを抑制できる。そのため、シャフト41に対して、ロータハブ42やプレート44を高精度に固定できる。なお、プレート44の取り付け方法は圧入に限定されるものではなく、例えば、焼き嵌め、溶接、または、接着剤等の手段によって固定することもできる。
【0037】
プレート44は、例えば、ステンレス鋼または銅合金で形成される。小径部411の径d1が中径部412の径d2よりも小さいため、プレート44を中径部412に圧入する際に、プレート44の貫通孔を小径部411に対して容易に通すことができる。このため、ステンレス鋼または銅合金からなるプレート44の反りの発生が低減される。
【0038】
また、プレート44は、セラミックスで形成されていてもよい。セラミックスはステンレス鋼や銅合金等の金属と比べ、材料強度以上の応力が加わると脆性破壊しやすい。上述したのと同様に、プレート44の貫通孔を小径部411に対して容易に通すことができる。このため、プレート44をセラミックスで形成した場合に、プレート44の欠けの発生や割れの発生が低減される。
【0039】
なお、プレート44の素材は、上述したものに限定されるものではなく、その他の素材で形成されてもよい。
【0040】
プレート44は、第一接触面421aと第二接触面413cとで挟まれている。第一接触面421aと第二接触面413cとは、軸方向に重なった部分を有する。第一接触面421aと第二接触面413cとの重なり合う部分によって、プレート44が軸方向に対して安定して保持される。
【0041】
また、平面視において、第一接触面421aの径方向外側端部は、好ましくは第二接触面413cと軸方向に重なる。これにより、プレート44がスリーブ341側に反ってしまうことを抑制できる。
【0042】
特に図3に示した例では、第一接触面421aの径方向外側端部の位置と、第二接触面413cの径方向外側端部の位置とが、軸方向に略一致している。このため、第一接触面421a及び第二接触面413cでプレート44を挟んだ際に、第一接触面421aと第二接触面413cとでプレート44をバランスよく保持できるため、プレート44が上下のどちらか一方に反ってしまうことを抑制できる。
【0043】
また、中径部412の軸方向の長さは、好ましくはプレート44の内周面における軸方向の長さよりも短い。これにより、ロータハブ42と中径部412との軸方向の間には、長さd4の間隙が設けられる。これによれば、ロータハブ42が中径部412の上面に接触することが抑制されるため、ロータハブ42をプレート44に確実に接触させることができる。これにより、第一接触面421aと第二接触面413cとで確実にプレート44を挟むことができ、安定して保持される。
【0044】
また、d5(=d2−d1)は、好ましくはd6(=d3−d2)よりも短い。d5は、中径部412が小径部411に対して径方向に突出する部分の長さを示す。d6は、大径部413が中径部412に対して径方向に突出する部分の長さを示す。この構成により、小径部411の径方向の肉厚を確保しつつ、第一接触面421aと第二接触面413cとの間で、プレート44を良好に固定できる。例えば、シャフト41は、ハウジング11に結合させるためのボルト螺合孔が内部に形成される場合がある。このような場合に、小径部411の肉厚を確保することで、必要な強度を確保できる。そのため、小径部411にロータハブ42を固定する際に、小径部411の変形を防止できる。
【0045】
シャフト41とスリーブ341との間、スリーブ341とプレート44との間、及び、プレート44とキャップ343との間の微小な隙間と、スリーブ341の上下面に貫通する連通孔341Hとには、潤滑オイル51が充填されている。潤滑オイル51の充填空間は、互いに連通しており、潤滑オイル51は自由に流動できる。
【0046】
図3に示したように、キャップ343の内側面343bとプレート44の外側面442との間の間隙は、スリーブ341とプレート44との間の間隙と連続する。さらに、キャップ343の下面343aとプレート44の上面441との間の間隙は、キャップ343の内側面343bとプレート44の外側面442との間の間隙に連続する。そして、キャップ343の内側面343bとプレート44の外側面442との間の間隙、および、キャップ343の下面343aとプレート44の上面441との間の間隙には、連続して潤滑オイル51が充填される。キャップ343の下面343aは、傾斜面を含む。傾斜面とプレート44の上面441との間の隙間は、径方向内側に向かうにつれて、次第に大きくなる。そして、キャップ343の下面343aとプレート44の上面441との間の隙間に、潤滑オイル51の界面51Bが位置する。界面51Bは径方向内側を向いている。潤滑オイル51の界面51Bは、表面張力の作用によりメニスカス状となるため、潤滑オイル51が静止軸受ユニット34の外部へ漏れ出すことが抑制される。すなわち、キャップ343の下面343aとプレート44の上面441とによって、シール部52が構成されている。なお、プレート44の上面441を傾斜させることによって、プレート44とキャップ343との間の隙間を広げて、シール部52を構成するようにしてもよい。
【0047】
本実施形態では、小径部411を設けることによって、プレート44を挟むロータハブ42の第一接触面421aを径方向内側に配置することができる。これにより、相対的に、シール部52を径方向に長く構成させることができるため、潤滑オイル51の貯留量を増大させつつ、流体動圧軸受装置5を薄型化することができる。なお、例えば、プレート44の上面441とキャップ343の下面343aとの間の隙間は、略一定の寸法で構成されてもよい。
【0048】
潤滑オイル51は、例えば、ポリオールエステル系オイルやジエステル系オイル等のエステルを主成分とするオイルが使用される。なお、静止軸受ユニット34の内部は、気体等の潤滑流体によって充填されてもよい。
【0049】
<3. 変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。
【0050】
図5は、変形例に係るロータハブ42とプレート44と接着部分を拡大して示す部分拡大図である。図5に示した例では、ロータハブ42とプレート44との間を固定する際に、接着剤61が使用されている。図5に示したように、ロータハブ42の第一接触面421aの径方向外側の端部から径方向外側へ向かうにつれて、プレートとの間隙が広がる接着剤保持部62を設けてもよい。接着剤61によって、接着剤61を塗布した際に、液体状態の接着剤61が流体動圧軸受装置5内へ流れ混むことを抑制できる。
【0051】
また、本発明は、磁気ディスク以外の光ディスク等を回転させるためのスピンドルモータにも適用できる。ただし、磁気ディスク用のスピンドルモータは、回転特性について、特に高い性能が要求される。したがって、磁気ディスク用のスピンドルモータに本発明を適用する技術的意義は大きい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、流体動圧軸受装置、スピンドルモータ、及びディスク駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1 ディスク駆動装置
100,5 流体動圧軸受装置
11 ハウジング
110,41 シャフト
110a 外周面
111,411 小径部
112,412 中径部
113,413 大径部
113a,413a 外周面
113b,413b 上面
113c,413c 第二接触面
12 ディスク
120,341 スリーブ
120a,341a 内周面
120b 上面
13 アクセス部
130,44 プレート
113a,443 第一下面
131b,444 第二下面
140,42 ロータハブ
140a,421a 第一接触面
150 潤滑流体
161G,341G 動圧溝
2 スピンドルモータ
20 スリーブ
3 静止部
30 プレート
32 ステーターコア
33 コイル
341a 内周面
341S 動圧発生面
343 キャップ
343a 下面
343b 内側面
4 回転部
43 ロータマグネット
51 潤滑オイル
52 シール部
61 接着剤
62 接着剤保持部
Q 中心軸
d11〜d13,d1〜d3 径
d4〜d6 長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸に沿って配置されるシャフトと、
前記シャフトと対向する内周面を有するスリーブと、
前記スリーブの上側に配置され、前記シャフトの外周面から径方向に延びるプレートと、
前記プレートよりも軸方向上側に配置され、前記シャフトに固定されるロータハブと、
前記シャフトと前記スリーブとの間、及び、前記スリーブと前記プレートとの間に介在する潤滑流体と、
を備え、
前記シャフトは、上から順に、小径部と、径方向に関して前記小径部よりも大きい中径部と、径方向に関して前記中径部よりも大きい大径部とを有し、
前記スリーブの内周面は、前記シャフトの大径部と対向し、
前記プレートは、前記中径部の径方向外側に配置され、前記大径部の上面と接触する第一下面と、該第一下面から径方向外側に延びる第二下面と、を有し、
前記ロータハブは、前記小径部に固定され、
前記スリーブの上面または前記プレートの前記第二下面には、前記スリーブと前記プレートとの間に介在する前記潤滑流体に対して動圧を発生させるための動圧溝列が設けられ、
前記ロータハブは、前記プレートと接触する第一接触面を有し、
前記大径部の上面は、前記第一接触面と軸方向に重なり、前記プレートを前記第一接触面とで挟む第二接触面を有する、流体動圧軸受装置。
【請求項2】
請求項1に記載の流体動圧軸受装置において、
平面視において、前記第一接触面の径方向外側端部が、前記第二接触面と軸方向に重なる流体動圧軸受装置。
【請求項3】
請求項2に記載の流体動圧軸受装置において、
平面視において、前記第一接触面の径方向外側端部と、前記第二接触面の径方向外側端部とが、軸方向に略一致する流体動圧軸受装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、
中心軸方向に関して、前記ロータハブと前記中径部との間に間隙を有する流体動圧軸受装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、
前記プレートが、前記中径部に圧入されている流体動圧軸受装置。
【請求項6】
請求項5に記載の流体動圧軸受装置において、
前記プレートが、ステンレス鋼または銅合金からなる流体動圧軸受装置。
【請求項7】
請求項5に記載の流体動圧軸受装置において、
前記プレートが、セラミックスからなる流体動圧軸受装置。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれかに記載の流体軸受装置において、
前記プレートの上面に対向する下面、及び、前記プレートの外側面に対向する内側面を有するキャップと、
前記キャップと前記プレートとの隙間が径方向内側に向かうにつれて大きくなるシール部と、
をさらに含み、
前記潤滑流体が、前記シャフトと前記スリーブとの間、前記スリーブと前記プレートとの間、及び、前記プレートと前記キャップとの間、に連続して介在する流体動圧軸受装置。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、
前記中径部の前記小径部から突出する部分の径方向の長さが、前記大径部の前記中径部から突出する部分の径方向の長さよりも短い流体動圧軸受装置。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれかに記載の流体動圧軸受装置において、
前記第一接触面と前記プレートの上面との間には、接着剤が介在しており、
前記第一接触面は、前記第一接触面の径方向外側端部から径方向外側へ向かうにつれて、前記プレートとの間隙が広がる接着剤保持部を有する流体動圧軸受装置。
【請求項11】
静止部と、
前記静止部に、請求項1から10までのいずれかに記載の流体動圧軸受装置を介して、回転可能に支持される回転部と、
前記静止部に対して前記回転部を回転させる回転駆動部と、
を含むスピンドルモータ。
【請求項12】
請求項11に記載のスピンドルモータと、
前記スピンドルモータの前記回転部に支持されたディスクに対し、情報の読み出し及び書き込みの少なくとも一方を行うアクセス部と、
前記スピンドルモータ及び前記アクセス部を収容するハウジングと、
を備えたディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−97780(P2012−97780A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244090(P2010−244090)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】