説明

流体噴射装置

【課題】記録ヘッドの目詰まり回復のためのフラッシング動作においてインク受け部に吐出されたインク量を正確に検知することができる流体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズルからインクを噴射する記録ヘッド6と、上記記録ヘッド6から記録用紙13への印刷とは無関係のインク噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段42と、上記フラッシング動作によって噴射されたインクを受けるキャップ部材15と、上記キャップ部材15内に噴射されたインクの液面を検知する液面センサ20を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、流体噴射ヘッドの目詰まり回復のためのフラッシング吐出において流体受け部に吐出された流体量を正確に検知することができる流体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターゲットに対して流体を噴射させる流体噴射装置に利用されている。このような流体噴射装置としては、記録用紙上にインクを噴射させるインクジェット式の記録装置が知られている。
【0003】
このようなインクジェット式記録装置は、一般に、インクカートリッジからのインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に搬送させる紙送り手段を備え、記録ヘッドを主走査方向に移動させながら印刷データに基づいて記録用紙にインク滴を吐出させることで記録が行われる。上記したインクジェット式記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズル開口からインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行う関係上、ノズル開口からの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズル開口に目詰まりを発生し、印刷不良を起こすという問題を抱えている。
【0004】
このために、この種のインクジェット式記録装置には、非印刷時に記録ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャッピング手段を備えている。このキャッピング手段は、記録ヘッドにおけるノズル開口のインクの乾燥を防止する蓋体として機能するだけでなく、ノズル開口に目詰まりが生じた場合には、キャッピング手段によりノズル形成面を封止し、吸引ポンプからの負圧により、ノズル開口からインクを吸引排出させてノズル開口の目詰まりを解消させるインク滴の吐出能力回復機能をも備えている。
【0005】
記録ヘッドの目詰まり解消のために行う強制的なインクの吸引排出処理は、クリーニング操作と呼ばれ、装置の長時間の休止後に印刷を再開する場合や、ユーザが印刷不良を認識して例えばクリーニングスイッチを操作した場合などに実行され、吸引ポンプによる負圧を加えて記録ヘッドよりキャッピング手段内にインクを吸引排出させた後に、例えばゴム材料等により形成したワイピング部材により、ノズル形成面を払拭する操作が伴われる。
【0006】
また、記録ヘッドに印刷とは関係のない駆動信号を印加してインク滴を吐出させる機能も備えており、これはフラッシング操作と呼ばれ、上記ワイピング部材による払拭操作により、ヘッドのノズル開口近傍に生じた不揃いのメニスカスを回復させたり、また印刷動作中にインク滴の吐出の機会が少ないノズル開口において、インクの増粘による目詰まりを防止する目的で、一定周期ごとに実行されるように構成されている。
【0007】
このような、印刷動作中に定期的に行なわれるフラッシング動作では、従来から、フラッシング動作によるインク滴の吐出数を累積して計数するフラッシング量カウンタが具備され、このカウンタによる計数値が予め定められた値に達した時に、キャップ内に収容されたインク吸収材からインクの一部を吸引排出させる空吸引動作を実行するようにして、フラッシング動作により吐出されたインクがキャップ内で一杯になる前に空吸引で排出し、キャップからインクがあふれ出るのを防止するようになっている(例えば、下記の特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−347688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、フラッシング動作によりキャップ内に噴射されたインクの一部は、キャップに接続された排出チューブから自然流出して必ずカウント通りにキャップが満杯になるとは限らない。また、低温環境と高温環境ではインクの粘度も異なることから、自然流出の程度も時期によって一定ではなく、キャップが満杯になるまでの時間や吐出数も時期によって一定しない。さらに、長期間使用しているとキャップの内部や排出チューブの流路にインクが固化したものが堆積し、インクの排出性を低下させることもあり、この理由によってカウント数とキャップが満杯になる時期とが一致しないこともある。このように、カウンタのカウント数と実際にキャップが満杯になる時期とは様々な条件により一致しないことが常であるため、現状では、少なくともキャップからインクが溢れるのを防止するため、理論的に満杯になるカウント数によって空吸引時期を管理しており、実際に必要な頻度よりもかなり高い頻度で空吸引を行なっているのが実情である。空吸引は印字が停止しているフラッシング動作の際に行われるため、空吸引の頻度が高いと、それだけ印字停止時間が長くなり印字の時間効率が低下するという問題がある。また、空吸引が多いとそれだけ吸引ポンプの稼働頻度および稼動時間が長くなることから、吸引ポンプの劣化にも悪影響を及ぼし、結果的に寿命を縮めることになる。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、流体噴射ヘッドの目詰まり回復のためのフラッシング吐出において流体受け部に吐出された流体量を正確に検知することができる流体噴射装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の流体噴射装置は、ノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体噴射ヘッドからターゲットへの流体噴射とは無関係の流体噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段と、上記フラッシング動作によって噴射された流体を受ける流体受け部と、上記流体受け部内に噴射された流体の気相との境界面高さを検知する界面検知手段を備えたことを要旨とする。
【0011】
すなわち、本発明によれば、流体噴射ヘッドの噴射能力回復のためのフラッシング動作で実際に噴射された流体の気相との境界面高さを界面検知手段で検知するため、流体受け部に噴射された流体量を正確に検知することができる。したがって、例えば、フラッシング動作により流体受け部に噴射された流体の一部が排出流路から自然流出したとしても、境界面高さを正確に検知できる。また、環境により流体の粘度が変わって自然流出の程度が一定しなくても、流体受け部内に残存した流体の境界面高さを正確に検知できる。さらに、長期間使用により流体受け部や排出流路に流体が固化して堆積することによるインクの排出性の低下が生じたとしても、流体受け部に溜まった流体の境界面高さを正確に検知できる。そして、流体受け部に溜まった流体の境界面高さを正確に検知し、それに基づいて流体受け部の空吸引を実行可能となるため、流体受け部から流体が溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。したがって、従来問題となっていたターゲットに対する噴射効率の低下や、吸引手段の劣化に伴う短寿命化を大幅に改善することが可能となる。
【0012】
本発明において、上記流体受け部には、噴射された流体を吸収する吸収材が収容されており、上記界面検知手段は、噴射された流体の気相との境界面が、上記吸収材の上面を上回ったときの反射率の変化を検知するものである場合には、流体受け部に溜まって吸収材の上面を上回った流体の境界面を確実かつ容易に検知できる。したがって、それに基づいて流体受け部の空吸引が実行可能となるため、流体受け部から流体が溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。
【0013】
本発明において、上記界面検知手段は、ターゲットの端部を検出する端部検出器を兼ねている場合には、ターゲットの端部を検出する端部検出器を界面検知手段に利用できることから設備効率がよく、もともと端部検出器を有する装置であれば特に新しく検知手段を増設する必要もない。
【0014】
本発明において、上記流体噴射ヘッドを主走査方向に往復動させるキャリッジを備え、上記界面検知手段は上記キャリッジに配置されている場合には、流体受け部の上まで流体噴射ヘッドを移動させるキャリッジに界面検知手段を配置することにより、例えば、境界面高さの検知をフラッシング動作のタイミングで行なうなど、検知タイミングの自由度が極めて高くなり、制御効率も高めることができる。
【0015】
本発明において、上記界面検知手段により検知した流体受け部内に噴射された流体の気相との境界面高さに基づいて、上記流体受け部内の流体を吸引排出する空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう構成されている場合には、流体受け部に溜まった流体の境界面高さを正確に検知し、それに基づいて流体受け部の空吸引を実行可能となるため、流体受け部から流体が溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。したがって、従来問題となっていたターゲットに対する噴射効率の低下や、吸引手段の劣化に伴う短寿命化を大幅に改善することが可能となる。
【0016】
本発明において、上記流体噴射ヘッドからフラッシング動作により噴射された流体量の累積値をカウントするカウント手段をさらに備え、上記カウント手段でカウントされた流体量の累積値と、界面検知手段で検知した流体受け部内に噴射された流体の気相との境界面高さとに基づいて、空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう構成されている場合には、カウント手段でカウントされた累積値と界面検知手段で検知した境界面高さとの双方に基づいて流体受け部の空吸引を実行可能となる。このため、より確実に適正なタイミングで空吸引を実行できるようになるうえ、例えば、カウント手段による累積値に基づいて界面検知手段の検知タイミングを決定するなど、検知の効率も向上させることが可能となる。
【0017】
本発明において、上記流体噴射ヘッドからフラッシング動作により噴射された流体量の累積値をカウントするカウント手段をさらに備え、上記カウント手段でカウントされた流体量の累積値と、界面検知手段で検知した流体受け部内に噴射された流体の気相との境界面高さとに基づいて、噴射装置自体の機能不足を判別するよう構成されている場合には、例えば、流体受け部の界面が十分な高さまで達しているにもかかわらず、カウント手段の累積値が異常に少ない場合や、前回の空吸引動作から次の空吸引動作までに吐出したショット数が異常に少ない場合は、前回の空吸引動作で十分に流体が排出されていないことであるので、流体受け部の排出路に目詰まりが生じたり、吸引手段が吸引不良を生じたりしている何らかの排出系の異常であるので、そのような異常を判別することが可能となる。このように、空吸引のタイミングを適正化するだけでなく、噴射装置自体の機能不足まで判別することが可能となり、修理を促す報知等を適切に行なうことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の流体噴射装置をインクジェット式記録装置に適用した一実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態のインクジェット式の記録装置を示す概略平面図であり、図2は上記記録装置の要部を正面から見た図である。
【0020】
図中符号1はキャリッジ1であり、このキャリッジ1はキャリッジモータ2によって駆動されるタイミングベルト3を介し、ガイド部材4に案内されて紙送り部材5の長手方向に沿って往復駆動されるように構成されている。
【0021】
上記キャリッジ1の紙送り部材5と対向する面には、ノズルから流体として液状のインクを噴射する流体噴射ヘッドとしての記録ヘッド6が搭載されており、上記記録ヘッド6を主走査方向に往復動させるようになっている。また、上記キャリッジ1の上面にはダンパー機能を備えたサブタンクユニット7が搭載されている。そして、記録装置の側端部(図1における右端部)に、カートリッジホルダ8が備えられており、このカートリッジホルダ8には、それぞれブラックインクを供給するブラックインクカートリッジ9B、シアン、マゼンタおよびイエローインクを供給する各カラーインクカートリッジ9C,9M,9Yがそれぞれ着脱可能に装着されている。
【0022】
そして、これら各カートリッジが装着されたカートリッジホルダ8よりサブタンクユニット7に対して、可撓性素材により構成されたインク供給チューブ10がそれぞれ接続されており、各インクカートリッジ9B,9C,9M,9Yからのインクがサブタンクユニット7に供給されるように構成されている。そして、印刷指令を受けた上記記録ヘッド6より、紙送り部材5上に搬送されるターゲットとしての記録用紙13に対してインク滴が吐出され、印刷が実行されるように構成されている。
【0023】
上記記録装置の非印刷領域であるホームポジションには、キャリッジ1が当該箇所に移動した時に上昇して記録ヘッド6のノズル形成面を封止することができるキャッピング手段11が配置されている。このキャッピング手段11は、記録装置の休止期間中において記録ヘッド6のノズル形成面を封止する蓋体として機能するキャップ部材15を備え、記録ヘッド6におけるノズル開口からインク溶媒が揮散するのを防止するように機能する。
【0024】
また、上記キャップ部材15の内底部には、インク排出口が形成され、このインク排出口には、吸引ポンプ14と接続されたチューブの一端が接続されている。これにより、クリーニング指令を受けた場合に、吸引ポンプ14による負圧をキャップ部材15の内部空間に印加し、記録ヘッド6のノズルからインクを強制的に吸引排出させるクリーニング動作を実行しうるように構成されている。
【0025】
さらに、上記キャップ部材15は、フラッシング動作によって噴射されたインクを受ける流体受け部としてのインク受けとしての機能も備えており、フラッシング動作時において上記記録ヘッド6に対して一定の間隙をもって対峙し、上記記録ヘッド6からフラッシング動作によるインク滴を受けるようにも機能する。上記フラッシング動作は、後述するフラッシング制御手段によって制御され、上記記録ヘッド6から記録用紙13へのインク噴射とは無関係のインク噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するための動作である。
【0026】
さらに、後述するように、キャップ部材15内に噴射されたインクが所定量以上溜まったときに、制御される空吸引動作においても、吸引ポンプ14が駆動され、キャッピング手段11内に溜まったインクが吸引排出されるように作用する。
【0027】
上記クリーニング動作や空吸引動作等の際にキャップ部材15内から吸引ポンプ14で吸引排出された廃液は、吸収材17が充填された廃液タンク18に導入されるようになっている。
【0028】
また、上記キャップ部材15の内底部には、噴射されたインクを吸収する吸収材としてのシート状のインク吸収材16が収容され、クリーニング動作またはインク滴の大量吐出を伴うフラッシング動作によって記録ヘッド6から排出されたインクを、これにより保持することができるように構成されている。また、上記インク吸収材16は、少量の吐出を伴うフラッシング動作によって、記録ヘッド6から吐出されたインク滴を捕獲して吸収する機能も有する。
【0029】
上記インク吸収材16としては、例えば、スポンジ等に代表される発泡体や、フェルトや不織布等に代表される繊維の集合体等、液状のインクを吸収保持し得る連通状の微小空間を多数有する多孔状材料のものが用いられる。
【0030】
また、キャッピング手段11に隣接する印刷領域側には、ゴムなどの弾性素材を短冊状に成形したワイピング部材12が配置されていて、キャリッジ1がキャッピング手段11側に往復移動する際に、記録ヘッド6の移動軌跡に進出して、必要に応じて記録ヘッド6のノズル形成面を払拭して清掃するワイピング動作がなされるように構成されている。
【0031】
そして、上記キャリッジ1には、キャップ部材15内に噴射されたインクと気相との境界面すなわち液面の高さを検知する界面検知手段としての液面センサ20が搭載されている。上記液面センサ20は、キャップ部材15に収容されたインク吸収材16の上面と対面する位置に配置されている。そして、上記液面センサ20は、噴射されたインクの気相との境界面が、上記インク吸収材16の上面を上回ったときの反射率の変化を検知するものである。
【0032】
具体的には、上記液面センサ20は、発光ダイオードから成る発光部と、フォトトランジスタから成る受光部とを有し、発光部から発した光が検出対象の液面に当たって反射し、反射した光を受光部にて受光し、その受光量に応じて出力電圧が変化する構成を成す反射型フォトインタラプタである。したがって、キャップ部材15内に溜まったインクが少なくて多孔状材料から形成されたインク吸収材16の凹凸の多い表面に当った反射光と、キャップ部材15内に溜まったインクが多くなって液面がインク吸収材16の上面を上回ったときの液面に当った反射光とでは光量が異なることから、液面がインク吸収材16の上面を上回ったときの反射率の変化を検知しうるようになっている。
【0033】
上記のような液面の検知は、液面センサ20がキャップ部材15のインク吸収材16の上面と対面する位置(図2において鎖線Aで示した位置)までキャリッジ1を移動させ、発光部からの発光および反射光の受光を行なって液面がインク吸収材16の上面を上回っているか否かを検知する。凹凸が多いインク吸収材16の表面に当った反射光と、インク吸収材16の上面を上回った液面に当った反射光とで受光部で受光する光量が異なるので、受光量すなわち出力電圧が所定の閾値を超えることで液面がインク吸収材16の表面を上回ったことを検知できる。
【0034】
また、上記液面センサ20は、この例では、ターゲットである記録用紙13の端部を検出する端部検出器を兼ねている。
【0035】
インクジェット式記録装置では、記録用紙13を図示しない給紙トレイにセットする際に、記録用紙13の主走査方向Xの一端側(ホームポジション側)の紙端13aを給紙トレイのガイド部に当接させた状態でセットされる。このため、記録用紙13の紙端13aは、記録用紙13の紙幅に関係なく、必ずガイド部に当接した状態でその紙端位置が規制される。したがって、記録用紙13の紙幅を検出するには、記録用紙13の主走査方向Xの他端側(ホームポジションと反対側)の紙端13bだけをセンサで検出すれば良い。
【0036】
そして、紙幅を検知する場合は、発光部から発した光が検出対象の記録用紙13又は紙送り部材5に当たって反射した光を受光部で受光し、その反射率の変化による出力電圧の変化を検知する。すなわち、記録用紙13の表面と紙送り部材5の表面とでは反射率が異なり、受光部で受光する反射光の光量が異なるので、記録用紙13の上でキャリッジ1を移動させながら反射光の受光を行なう。このとき、液面センサ20が記録用紙13が途切れた位置すなわち紙端13bの位置(図2において鎖線Bで示した位置)まで移動したときに受光量すなわち出力電圧が変化するので、その変化が所定の閾値を超えたときに紙端13bの位置が検出できる。
【0037】
そして、発光部が発して反射した光を受光部で受光しながらキャリッジ1をホームポジションからその反対側に移動させ、紙端13bを検出するまでのキャリッジ1の移動量を、キャリッジ1を駆動しているステッピング・モータ等の駆動源の制御量から求めることによって、紙端13aから紙端13bまでの長さ、つまり記録用紙13の紙幅を算出することができる。
【0038】
図3は、本実施形態の記録装置の制御回路を示す機能ブロック図である。
【0039】
図に示す符号40は印刷制御手段40であり、この印刷制御手段40は、図示しないホストコンピュータから転送される印刷データを受けてドットパターンデータ(ビットマップデータ)を生成し、このデータに基づいてヘッド駆動手段41により駆動信号を発生させて、記録ヘッド6からインク滴を吐出させる機能を備えている。
【0040】
上記ヘッド駆動手段41は、印刷データに基づく駆動信号の他に、フラッシング制御手段42からのフラッシング指令信号を受けて、フラッシング操作のための駆動信号を記録ヘッド6に出力し、ターゲットである記録用紙13への印刷とは関係のないインク滴の空吐出を行なって、記録ヘッド6のノズルの噴射特性の回復を行なうことができるようにも構成されている。
【0041】
また、符号43はクリーニング制御手段43であり、このクリーニング制御手段43は、例えばクリーニング指令検知手段44からの制御信号を受けて、キャリッジ制御手段55やポンプ駆動手段45等を制御し、キャップ部材15で記録ヘッド6のノズル面をキャッピングするとともに、吸引ポンプ14を駆動させる機能を備えている。
【0042】
さらに、符号46は装置の操作パネル等に配置されたクリーニング指令スイッチ46を示し、ユーザが例えば印刷不良状態を認識した場合にこれを操作することにより、上記クリーニング指令検知手段44を介してクリーニング制御手段43を動作させて、マニュアル操作によるクリーニング動作が実行されるように構成されている。
【0043】
一方、上記した印刷制御手段40からは、休止タイマ47および累積印字タイマ48に対して制御信号が送出されるように構成されている。
【0044】
上記休止タイマ47は、印刷終了時においてゼロリセットされ、直ちにスタートして経過時間をカウントアップするように作用する。すなわち、休止タイマ47は印刷終了後からの連続キャッピング時間を計時する機能を果たす。
【0045】
また、累積印字タイマ48は、印刷を実施した場合の累積印字時間を計時するようになされ、上記したクリーニング制御手段43がクリーニング動作を実行した場合に、リセット信号が供給されるようになされる。これにより、累積印字タイマ48はクリーニング制御手段43からのリセット信号によって、累積時間がゼロリセットされ、且つ印刷制御手段40からの制御信号によって累積印字時間をカウントアップするように作用する。すなわち、累積印字タイマ48は、記録ヘッド6がキャップ部材15によりキャッピングされずに印字した累積時間を計時する機能を果たす。
【0046】
そして、上記休止タイマ47および累積印字タイマ48による計時データは、記録装置の動作電源が投入された時に、休止タイマ47および累積印字タイマ48よりそれぞれクリーニング制御手段43およびフラッシング制御手段42に制御信号が送出され、それぞれの経過時間に対応して記述された図示しない回復動作選定テーブルを参照して、クリーニング動作またはフラッシング動作が実行されるようになされる。
【0047】
上記フラッシング制御手段42には、定期フラッシングタイマ49、定期まとめ打ちタイマ50、および休止時まとめ打ちタイマ51によって得られる計時データに基づく制御信号が送出されるように構成されている。
【0048】
上記定期フラッシングタイマ49は、印字中または待機中における所定の第1時間間隔(例えば10秒)を計時する機能を有しており、上記10秒を超えた場合においては、フラッシング制御手段42に制御信号を送出して、定期フラッシングを実行させるように機能する。すなわち、この定期フラッシングタイマ49は、印字中における不使用ノズル(インク滴の吐出の機会がないか、または少ないノズル)における増粘インクを排出させるために利用される。
【0049】
この場合、インクの種類(インクの色)に応じて増粘度合いが異なるため、例えば、6色のインクを用いる記録装置の場合、上記定期フラッシングにおけるインク滴の吐出数は、イエローインク、シアンインク、ライトシアンインク、マゼンタインク、ライトマゼンタインクのカラーインクは72ショット、ブラックインクは96ショットに設定される。
【0050】
一方、上記した定期まとめ打ちタイマ50は、所定の第2時間間隔(例えば2000秒)にわたって印字を行なった場合において、フラッシング制御手段42に制御信号を送出して、定期まとめ打ちフラッシングを実行させるように機能する。そして、この定期まとめ打ちフラッシングは、印字中または記録用紙の排紙時において実行される。この定期まとめ打ちタイマ50は、同様に印字中における不使用ノズルにおける増粘インクを排出させるために利用される。この時に噴射されるインク滴の吐出数は、上記した定期フラッシングの場合に比較して遥かに多くなるように設定され、例えば、6色のインクを用いる記録装置の場合、イエローインク、シアンインク、ライトシアンインク、マゼンタインク、ライトマゼンタインクのカラーインクは20000ショット、ブラックインクは40000ショットに設定される。
【0051】
さらに、上記した休止時まとめ打ちタイマ51は、記録装置の動作電源がオフされた場合における前回の動作電源のオフ時からの経過時間を計時する機能を備えている。そして、上記経過時間に応じた制御信号をフラッシング制御手段42に送出して、休止時まとめ打ちフラッシングが実行され、このフラッシングが実行された後に記録装置の電源がオフされるように制御される。
【0052】
この休止時まとめ打ちフラッシングは、主にキャッピング手段内を保湿させる目的で実行され、これにより記録装置の休止期間中に、記録ヘッド6のノズル開口からのインク溶媒の揮散を抑制するようになされる。この時に噴射されるインク滴の吐出数は、例えば、6色のインクを用いる記録装置の場合、イエローインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインクでは20000ショット、マゼンタインク、シアンインクでは30000ショット、ブラックインクでは50000ショットに設定される。
【0053】
また、この装置は、上記記録ヘッド6からフラッシング動作により噴射されたインク量の累積値をカウントするカウント手段としてのフラッシング量カウンタ52を備えている。すなわち、上記フラッシング制御手段42からフラッシング量カウンタ52に対してフラッシングの吐出数のデータが送出されるように構成されており、上記フラッシング量カウンタ52は、上記した定期フラッシング、定期まとめ打ちフラッシング、および休止時まとめ打ちフラッシングによってなされるフラッシングの吐出数を順次加算してカウントアップするように動作する。そして、フラッシング量カウンタ52より、しきい値判定手段53に対してカウントアップデータが送出されるように構成されている。
【0054】
上記しきい値判定手段53においては、フラッシング量カウンタ52より送出されるカウントアップデータが、しきい値判定手段53に格納された所定の値に達したか否かを判定し、所定の値に達したと判定した場合においては、液面判定手段56に対して制御信号が送出されるように構成されている。これと同時にしきい値判定手段53よりフラッシング量カウンタ52に対して、リセット信号が送出されるように構成されており、これにより、フラッシング量カウンタ52におけるカウントアップデータがゼロリセットされるようになされる。
【0055】
上記しきい値判定手段53に格納された所定の値は、フラッシング動作によってキャップ部材15内に吐出されるインク量が、キャップ部材15の内底部に配置された上記インク吸収材16を十分に覆う程度まで充填される値に設定されている。
【0056】
上記しきい値判定手段53から液面判定手段56に対して制御信号が送出されると、キャリッジ制御手段55に制御信号を送り、液面センサ20がキャップ部材15に収容されたインク吸収材16の上面に対面する位置までキャリッジ1を移動し、キャップ部材15内の液面を検知するように構成されている。そして、上記液面判定手段56では、上記液面センサ20からの検知信号を受けて、フラッシング動作によってキャップ部材15内に吐出されたインクの液面が、キャップ部材15の内底部に配置されたインク吸収材16を覆う高さまで達しているか否かを判定する。
【0057】
そして、上記液面判定手段56がキャップ部材15内のインクの液面がインク吸収材16を覆う高さまで達していると判定した場合に、空吸引制御手段54に対して制御信号が送出されるように構成されている。上記液面判定手段56から空吸引制御手段54に対して制御信号が送出されると、上記空吸引制御手段54よりポンプ駆動手段45に対して制御信号が送出されるように構成されており、キャップ部材15によるノズル形成面の封止が解除された状態において、吸引ポンプ14が所定時間駆動される。これにより、キャップ部材15内に溜まったインクを排出する空吸引動作が実行される。
【0058】
このように、この装置では、液面センサ20により検知したキャップ部材15内に噴射されたインクの気相との境界面高さに基づいて、上記キャップ部材15内のインクを吸引排出する空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう構成されている。
【0059】
また、上記フラッシング量カウンタ52でカウントされたインク量の累積値と、液面センサ20で検知したキャップ部材15内に噴射されたインクの気相との境界面高さとに基づいて、空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう構成されている。
【0060】
また、この装置は、上記フラッシング量カウンタ52でカウントされたインク量の累積値と、液面センサ20で検知したキャップ部材15内に噴射されたインクの気相との境界面高さとに基づいて、噴射装置自体の機能不足を判別する機能不足判別手段58を備えている。
【0061】
すなわち、上記機能不足判別手段58は、上記液面判定手段56がキャップ部材15内のインクの液面がインク吸収材16を覆う高さまで達していると判定したときに、フラッシング量カウンタ52の累積カウント値を読み取るように構成されている。また、上記機能不足判別手段58は、上記液面判定手段56がキャップ部材15内のインクの液面がインク吸収材16を覆う高さまで達して空吸引動作を実行してから、次にキャップ部材15内のインクの液面がインク吸収材16を覆う高さまで達して空吸引動作を実行するまでの間に吐出したショット数すなわちカウント値を読み取るように構成することもできる。
【0062】
このように、キャップ部材15の液面が十分な高さまで達しているにもかかわらず、フラッシング量カウンタ52のカウント値が異常に少ない場合や、前回の空吸引動作から次の空吸引動作までの間に吐出したショット数が異常に少ない場合は、前回の空吸引動作で十分にインクが排出されていないことであるので、キャップ部材15の排出路に目詰まりが生じたり、吸引ポンプ14が吸引不良を生じたりしている何らかの排出系の異常であるので、そのような異常を判別するように構成されている。
【0063】
そして、上記のようなキャップ部材15の目詰まりや吸引ポンプ14の吸引不良等の機能不足を判別した場合、機能不足判別手段58から報知手段59に制御信号が送られる。報知手段59では、図示しない表示パネルに故障あるいは機能低下の報知メッセージや、適切な修理を促すメッセージ等を表示するように構成されている。
【0064】
また、この装置では、上記液面センサ20は、記録用紙13の紙幅を検出する紙幅検出器を兼ねており、液面センサ20から検知信号を受信して、ホームポジションから紙端13bを検出するまでのキャリッジ1の移動量から、紙端13aから紙端13bまでの長さすなわち、記録用紙13の紙幅を判定する紙幅判定手段57を備えている。上記紙幅判定手段57で判定した紙幅は印刷制御手段40に送られて印刷の際のキャリッジ1の往復移動制御等に用いられる。
【0065】
図4は、上記記録装置によって定期フラッシングを行なうときの制御方法を説明するフローチャートである。
【0066】
図におけるステップS11においては、定期フラッシングタイマ49が所定時間(10秒)を計時したか否かが判定される。そして、所定時間を計時した場合(Yesの場合)には、ステップS12に進み、定期フラッシングが実行される。これは上述した定期フラッシングタイマ49より、フラッシング制御手段42に制御信号が送出されることで実行される。
【0067】
そして、ステップS13において、定期フラッシングタイマ49の計時は、ゼロリセットされ、スタートされる。続いてステップS14に示すようにフラッシング量カウンタ52に対して、前記した定期フラッシングによるインクの吐出数が加算される。これは、上述したフラッシング制御手段42よりフラッシング量カウンタ52に対して吐出数のデータを送出することによってなされる。
【0068】
そして、ステップS15においては、フラッシング量カウンタ52の計数値(累積値)が所定の値に達したか否かが検証される。これは、上述したフラッシング量カウンタ52よりしきい値判定手段53に対してフラッシング量カウンタ52の計数値が送出されることによって判定される。すなわち、しきい値判定手段53には、予め定められたインク滴の吐出数(例えば60000ショット)が格納されており、前記フラッシング量カウンタ52における計数値が前記値に達していない(No)と判定した場合には、リターンされる。
【0069】
一方、ステップS15において、フラッシング量カウンタ52の計数値が、前記した所定の値に達した(Yes)と判定した場合には、ステップS16に移行して、液面センサ20による液面の検出を行なって、キャップ部材15内に噴射されたインクの液面がインク吸収材16の上面を上回っているか否かが判定される。これは、上述した液面判定手段56により行なわれる。すなわち、液面判定手段56には、予め定められた反射光による出力電圧値のしきい値が格納されており、液面センサ20が出力した電圧値がしきい値に達していない(No)と判定した場合には、リターンされる。
【0070】
一方、ステップ16において、液面センサ20が出力した電圧値が、前記した所定の値に達した(Yes)と判定した場合には、ステップS17に移行して、前記した空吸引動作が実行される。
【0071】
この空吸引動作の実行にあたっては、液面判定手段56より空吸引制御手段54に対して制御信号が送出され、空吸引制御手段54よりポンプ駆動手段45に対して制御信号が送出され、ポンプ駆動手段45は、吸引ポンプ14を所定時間駆動させる。これにより、キャップ部材15に貯留されたインク廃液は、吸引ポンプ14を介して廃液タンク18に廃棄される。
【0072】
上記空吸引動作が終了すると、ステップS18に移行し、フラッシング量カウンタ52のカウンタ値をリセットし、リターンする。
【0073】
このとき、ステップS18でフラッシング量カウンタ52のカウンタ値をリセットする前に、ステップS16で液面判定手段56によりキャップ部材15内に噴射されたインクの液面がインク吸収材16の上面を上回ったと判断されたときのカウント値を記憶して、しきい値判定手段53におけるしきい値としてのカウント値に置き換えて、ステップ15の判定に用いるようにすることもできる。
【0074】
このようにすることにより、例えばキャップ部材15内からインクが自然流出し、しきい値判定手段53でしきい値として設定していたカウント値よりも多いカウント数でキャップ部材15内の液面がインク吸収材16を覆う状態のときに、その実体に合わせたカウント値をしきい値にフィードバックできて、カウント値の精度が高くなる。そして、このように、空吸引動作を行なうたびにそのときのカウント値をしきい値にフィードバックすることにより、装置の状態に経時変化があっても、そのときの状態に適したカウント値をしきい値にすることができ、より適切なタイミングで空吸引動作を実行できる。なお、しきい値にフィードバックするカウント値は、そのときのカウント値そのままでもよいし、いくらか安全率を割り引いたカウント値とすることもできる。
【0075】
また、ステップS15の判定に用いるしきい値判定手段53におけるしきい値としてのカウント値は、そのつどフィードバックすることもできるし、例えば、最初に装置を使用したときからの経過時間や印字枚数をカウントしておいて、経過時間や印字枚数に対応して予め設定されたテーブルを参照して変化させるようにすることもできる。例えば、経過時間が長くなったり印字枚数が多くなったりすれば、キャップ部材15の排出路の目詰まり度合も徐々に進行するため、それに合わせてしきい値としてのカウント値を徐々に小さくして空吸引頻度を徐々に高くするようにすることも可能である。このようにすることにより、装置の状態に経時変化があっても、そのときの状態に適したカウント値をしきい値にすることができ、より適切なタイミングで空吸引動作を実行できる。
【0076】
図5は、上記記録装置によって定期まとめ打ちフラッシングを行なうときの制御方法を説明するフローチャートである。
【0077】
図におけるステップS21においては、定期まとめ打ちタイマ50が所定時間(2000秒)を計時したか否かが判定される。ここで、前記所定時間を計時していない(No)と判定された場合においては、リターンされる。一方、定期まとめ打ちタイマ50が前記した所定の時間を計時した(Yes)と判定した場合には、ステップS22に進み、フラッシング量カウンタ52の計数値(累積値)が所定の値に達したか否かが検証される。このステップS22における検証機能は、前記したステップS15と同様である。
【0078】
そして、ステップS22において、フラッシング量カウンタ52の計数値が前記した所定の値に達した(Yes)と判定された場合には、ステップS23に進み、液面センサ20による液面の検出を行なって、キャップ部材15内に噴射されたインクの液面がインク吸収材16の上面を上回っているか否かが判定される。このステップS23における判定機能は、前記したステップS16と同様である。
【0079】
ステップS23において、液面センサ20が出力した電圧値が、前記した所定の値に達した(Yes)と判定した場合には、ステップS24およびステップS25を順に実行する。この時のステップS24およびステップS25は、前記したステップS17およびステップS18と同様である。そして、これに続くステップS26に移行して定期まとめ打ちフラッシングが実行される。一方、ステップS23において、液面センサ20が出力した電圧値がしきい値に達していない(No)と判定した場合にも、ステップS26に移行して、定期まとめ打ちフラッシングが実行される。
【0080】
ステップS26における定期まとめ打ちフラッシングが終了すると、ステップS26によってなされたインクの吐出数が、ステップS27においてカウンタ値に加算される。これは、上述したフラッシング制御手段42よりフラッシング量カウンタ52に対して吐出数のデータを送出することによってなされる。そして、ステップS28において、定期まとめ打ちタイマ50の計時は、ゼロリセットされ、スタートされる。
【0081】
この場合も、上述したのと同様に、ステップS25でフラッシング量カウンタ52のカウンタ値をリセットする前に、ステップS23で液面判定手段56によりキャップ部材15内に噴射されたインクの液面がインク吸収材16の上面を上回ったと判断されたときのカウント値を記憶して、しきい値判定手段53におけるしきい値としてのカウント値にフィードバックさせることができる。
【0082】
また、ステップ23の判定に用いるしきい値判定手段53におけるしきい値としてのカウント値を、例えば、最初に装置を使用したときからの経過時間や印字枚数をカウントしておいて、経過時間や印字枚数に対応して予め設定されたテーブルを参照して変化させるようにすることもできる。
【0083】
図6は、上記記録装置によって定期フラッシングを行なうときの制御方法の第2例を説明するフローチャートである。
【0084】
この例では、フラッシング量カウンタ52のカウント値が所定のしきい値に達したときに液面センサ20によるキャップ部材15内の液面検知を行なうのではなく、定期フラッシングを実行する毎に液面センサ20によるキャップ部材15内の液面検知を行なうようにした例である。
【0085】
図におけるステップS31においては、定期フラッシングタイマ49が所定時間(10秒)を計時したか否かが判定される。そして、所定時間を計時した場合(Yesの場合)には、ステップS32に進み、定期フラッシングが実行される。
【0086】
そして、ステップS33において、定期フラッシングタイマ49の計時は、ゼロリセットされ、スタートされる。続いてステップS34において、液面センサ20による液面の検出を行なって、キャップ部材15内に噴射されたインクの液面がインク吸収材16の上面を上回っているか否かが判定される。液面センサ20が出力した電圧値がしきい値に達していない(No)と判定した場合にはリターンされ、ステップS34において、液面センサ20が出力した電圧値が、前記した所定の値に達した(Yes)と判定した場合には、ステップS35に移行して、前記した空吸引動作が実行される。
【0087】
図7は、上記記録装置によって定期まとめ打ちフラッシングを行なうときの制御方法の第2例を説明するフローチャートである。
【0088】
この例も、フラッシング量カウンタ52のカウント値を利用せず、定期まとめ打ちフラッシングを実行する毎に液面センサ20によるキャップ部材15内の液面検知を行なうようにした例である。
【0089】
図におけるステップS41においては、定期まとめ打ちタイマ50が所定時間(2000秒)を計時したか否かが判定される。ここで、前記所定時間を計時していない(No)と判定された場合においては、リターンされる。一方、定期まとめ打ちタイマ50が前記した所定の時間を計時した(Yes)と判定した場合には、ステップS42に進み、液面センサ20による液面の検出を行なって、キャップ部材15内に噴射されたインクの液面がインク吸収材16の上面を上回っているか否かが判定される。
【0090】
ステップS42において、液面センサ20が出力した電圧値が、前記した所定の値に達した(Yes)と判定した場合には、ステップS43で空吸引動作を実行し、これに続くステップS44に移行して定期まとめ打ちフラッシングが実行される。一方、ステップS42において、液面センサ20が出力した電圧値がしきい値に達していない(No)と判定した場合にも、ステップS44に移行して、定期まとめ打ちフラッシングが実行される。ステップS44における定期まとめ打ちフラッシングが終了すると、ステップS45において、定期まとめ打ちタイマ50の計時は、ゼロリセットされ、スタートされる。
【0091】
図8は、キャップ部材15の排出系に異常が生じているか否かの判定を行なうときの制御方法を説明するフローチャートである。
【0092】
まず、ステップS51において、液面センサ20によってキャップ部材15内のインクの液面の検知を行なう。ついで、ステップS52において、液面判定手段56により液面がインク吸収材16の上面を覆う高さに達したか否かが判定され、達していない(No)の場合はリターンし、達している(Yes)の場合は次のステップS53に進む。
【0093】
ステップS53では、フラッシング量カウンタ52のカウンタ値を読み取り、ステップS54では、機能不足判別手段58により、読み取ったカウンタ値が正常か否かが判定される。すなわち、このときのカウンタ値が、キャップ部材15に対して液面がインク吸収材16の上面を覆うまでインクを吐出した吐出数に見合う吐出数であるか、異常に小さい値であるかを判定する。具体的にはあらかじめ設定したしきい値よりも大きいか小さいかで判定する。
【0094】
ステップS53での、フラッシング量カウンタ52のカウンタ値が正常値であればリターンし、異常値であればステップS55に進んで、報知手段59による異常報知を行なって終了する。
【0095】
ステップS54で異常値か正常値かの判定に使用するしきい値としてのカウンタ値は、上述と同様に、定期フラッシング動作や定期まとめ打ちフラッシング動作の際に、液面判定手段56によりキャップ部材15内に噴射されたインクの液面がインク吸収材16の上面を上回ったと判断されたときのカウント値を記憶して、しきい値としてのカウント値にフィードバックさせることができる。また、上記しきい値としてのカウント値を、例えば、最初に装置を使用したときからの経過時間や印字枚数をカウントしておいて、経過時間や印字枚数に対応して予め設定されたテーブルを参照して変化させるようにすることもできる。
【0096】
このようなキャップ部材15の排出系の異常の判定は、定期まとめ打ちフラッシングの前や、装置の電源をオフにする前等の所定のタイミングで行なうことができる。
【0097】
図9は、キャップ部材15の排出系に異常が生じているか否かの判定を行なうときの制御方法の第2例を説明するフローチャートである。
【0098】
まず、ステップS61では、第1の空吸引動作が実行されたか否かが判定される。ここで、空吸引動作が実行されていない(No)と判定された場合においては、リターンされる。一方、空吸引動作が実行された(Yes)と判定した場合には、ステップS62に進み、カウンタ値をリセット、再スタートさせて次の空吸引動作までのショット数のカウントを開始する。
【0099】
ステップS63では、次の空吸引動作が実行されたか否かが判定される。ここで、次の空吸引動作が実行されていない(No)と判定された場合においては、リターンされる。一方、次の空吸引動作が実行された(Yes)と判定した場合には、ステップS64に進み、フラッシング量カウンタのカウント値を読み取って一時記憶した後ステップ65でリセットする。
【0100】
次に、ステップS66では、機能不足判別手段58により、読み取った計時タイムが正常か否かが判定される。すなわち、このときの計時タイムが、一旦空吸引されて空になったキャップ部材15に対して再び液面がインク吸収材16の上面を覆うまでインクを吐出した吐出数に見合う吐出数であるか、異常に小さい値であるかを判定する。具体的にはあらかじめ設定したしきい値よりも大きいか小さいかで判定する。
【0101】
ステップS64での、フラッシング量カウンタ52のカウンタ値が正常値であればリターンし、異常値であればステップS67に進んで、報知手段59による異常報知を行なって終了する。
【0102】
ステップS66で異常値か正常値かの判定に使用するしきい値としてのカウンタ値は、上述と同様に、定期フラッシング動作や定期まとめ打ちフラッシング動作の際に、液面判定手段56によりキャップ部材15内に噴射されたインクの液面がインク吸収材16の上面を上回ったと判断されたときのカウント値を記憶して、しきい値としてのカウント値にフィードバックさせることができる。また、上記しきい値としてのカウント値を、例えば、最初に装置を使用したときからの経過時間や印字枚数をカウントしておいて、経過時間や印字枚数に対応して予め設定されたテーブルを参照して変化させるようにすることもできる。
【0103】
このようなキャップ部材15の排出系の異常の判別動作は、例えば、空吸引動作を実行する毎に行なったり、電源を投入して使用開始してから最初の2回の空吸引動作において実行し、装置を使用する毎に判別したりすることができる。
【0104】
以上のように、本実施形態によれば、記録ヘッド6の噴射能力回復のためのフラッシング動作で実際に噴射されたインクの液面高さを液面センサ20で検知するため、キャップ部材15に噴射されたインク量を正確に検知することができる。したがって、例えば、フラッシング動作によりキャップ部材15に噴射されたインクの一部が排出流路から自然流出したとしても、液面高さを正確に検知できる。また、環境によりインクの粘度が変わって自然流出の程度が一定しなくても、キャップ部材15内に残存したインクの液面高さを正確に検知できる。さらに、長期間使用によりキャップ部材15や排出流路にインクが固化して堆積することによるインクの排出性の低下が生じたとしても、キャップ部材15に溜まったインクの液面高さを正確に検知できる。そして、キャップ部材15に溜まったインクの液面高さを正確に検知し、それに基づいてキャップ部材15の空吸引を実行可能となるため、キャップ部材15からインクが溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。したがって、従来問題となっていた印刷効率の低下や、吸引ポンプ14の劣化に伴う短寿命化を大幅に改善することが可能となる。
【0105】
また、上記キャップ部材15には、噴射されたインクを吸収する吸収材が収容されており、上記液面センサ20は、噴射されたインクの液面が、上記吸収材の上面を上回ったときの反射率の変化を検知するものであるため、キャップ部材15に溜まって吸収材の上面を上回ったインクの液面を確実かつ容易に検知できる。したがって、それに基づいてキャップ部材15の空吸引が実行可能となるため、キャップ部材15からインクが溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。
【0106】
また、上記液面センサ20は、記録用紙13の端部を検出する紙幅検出器を兼ねているため、記録用紙13の端部を検出する紙幅検出器を液面センサ20に利用できることから設備効率がよく、もともと紙幅検出器を有する装置であれば特に新しく検知手段を増設する必要もない。
【0107】
また、上記記録ヘッド6を主走査方向に往復動させるキャリッジを備え、上記液面センサ20は上記キャリッジ1に配置されているため、キャップ部材15の上まで記録ヘッド6を移動させるキャリッジ1に液面センサ20を配置することにより、例えば、液面高さの検知をフラッシング動作のタイミングで行なうなど、検知タイミングの自由度が極めて高くなり、制御効率も高めることができる。
【0108】
また、上記液面センサ20により検知したキャップ部材15内に噴射されたインクの液面高さに基づいて、上記キャップ部材15内のインクを吸引排出する空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう構成されているため、キャップ部材15に溜まったインクの液面高さを正確に検知し、それに基づいてキャップ部材15の空吸引を実行可能となるため、キャップ部材15からインクが溢れることもなく、確実に適正なタイミングで空吸引を実行でき、従来に比べて空吸引の頻度を大幅に低下できる。したがって、従来問題となっていた印刷効率の低下や、吸引ポンプ14の劣化に伴う短寿命化を大幅に改善することが可能となる。
【0109】
また、上記記録ヘッド6からフラッシング動作により噴射されたインク量の累積値をカウントするフラッシング量カウンタ52をさらに備え、上記フラッシング量カウンタ52でカウントされたインク量の累積値と、液面センサ20で検知したキャップ部材15内に噴射されたインクの液面高さとに基づいて、空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう構成されているため、フラッシング量カウンタ52でカウントされた累積値と液面センサ20で検知した液面高さとの双方に基づいてキャップ部材15の空吸引を実行可能となる。このため、より確実に適正なタイミングで空吸引を実行できるようになるうえ、例えば、フラッシング量カウンタ52による累積値に基づいて液面センサ20の検知タイミングを決定するなど、検知の効率も向上させることが可能となる。
【0110】
また、上記記録ヘッド6からフラッシング動作により噴射されたインク量の累積値をカウントするフラッシング量カウンタ52をさらに備え、上記フラッシング量カウンタ52でカウントされたインク量の累積値と、液面センサ20で検知したキャップ部材15内に噴射されたインクの液面高さとに基づいて、記録装置自体の機能不足を判別するよう構成されているため、例えば、キャップ部材15の液面が十分な高さまで達しているにもかかわらず、フラッシング量カウンタ52のカウント値が異常に少ない場合や、前回の空吸引動作から次の空吸引動作までの間に吐出したショット数が異常に少ない場合は、前回の空吸引動作で十分にインクが排出されていないことであるので、キャップ部材15の排出路に目詰まりが生じたり、吸引ポンプ14が吸引不良を生じたりしている何らかの排出系の異常であるので、そのような異常を判別することが可能となる。このように、空吸引のタイミングを適正化するだけでなく、噴射装置自体の機能不足まで判別することが可能となり、修理を促す報知等を適切に行なうことが可能となる。
【0111】
なお、本発明は、上記各実施形態に限定するものではなく、下記のような変形例を包含する趣旨である。
【0112】
上述した説明では、定期フラッシング動作および定期まとめ打ちフラッシング動作において、液面検知による空吸引タイミングの決定を行なう例を説明したが、動作電源がオフ操作された場合の休止時フラッシング動作や、記録用紙13の排出動作時に行なわれる排紙時フラッシング動作において液面検知による空吸引タイミングの決定を行なうようにすることもできる。
【0113】
上述した実施形態では、キャップ部材15が常に水平状態を維持していることを前提に説明したが、本発明はこれに限定するものではなく、キャップ部材15が開放時に傾斜するものにも適用することができる趣旨である。この場合、液面センサ20による検知位置は、キャップ部材15に収容されたインク吸収材16の上面のうち、最も高さが低くなる位置において液面を検知するのが好ましい。
【0114】
また、上述した実施形態では、液面センサ20は、キャリッジ1において記録ヘッド6よりもホームポジション側に配置した例を説明したが、これに限定するものではなく、キャップ部材15のインク吸収材16の表面を検出可能であれば、各種の位置に配置することが可能である。
【0115】
また、上述した実施形態では、流体受け部としてのインク受け器がキャップ部材15である例を説明したが、これに限定するものではなく、キャップ部材15以外に設けられてフラッシング吐出のインクを受けるフラッシングボックスにおいて本発明を適用することも可能である。もちろん、キャップ部材15とフラッシングボックスを併用した装置に本発明を適用することも可能である。
【0116】
また、上述した実施形態では、紙幅検出器としての液面センサ20により、ホームポジションの反対側の紙端13bのみを検出して紙幅を判定するようにしたが、これに限定するものではなく、記録用紙13の両サイドの紙端13a,13b双方を検出して紙幅を判定するようにすることもできる。
【0117】
上記実施形態において、記録ヘッド6としては、圧力発生手段として軸方向に伸縮する圧電振動子を適用したものや、面方向でたわみ振動する圧電振動子を使用したもの、あるいは、圧力発生室にインクを加熱し気化させる発熱素子を設けたもの等を適用することができる。
【0118】
また、本発明の流体噴射装置が対象とする流体としては、上述したインク等の流体に限定するものではなく、金属ペースト,粉体,液晶その他の高い粘度材料等、各種の流体を対象とする趣旨である。そして、流体噴射装置の代表例としては、上述したような画像記録用のインクジェット式記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置があるが、本発明の流体供給装置は、その他の流体噴射装置として、例えば液晶ディスプレー等のカラーフィルタ製造に用いられる色材噴射ヘッドを備えた装置、有機ELディスプレー、面発光ディスプレー(FED)等の電極形成に用いられる電極材(導電ペースト)噴射ヘッドを備えた装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物噴射ヘッドを備えた装置、精密ピペットとしての試料噴射ヘッドを備えた装置等、各種の流体噴射装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の一実施形態としてのインクジェット式記録装置を示す平面図。
【図2】上記記録装置の要部を示す正面図。
【図3】上記記録装置の制御回路を示す機能ブロック図。
【図4】上記記録装置の作用を示すフローチャート。
【図5】上記記録装置の作用を示すフローチャート。
【図6】上記記録装置の作用を示すフローチャート。
【図7】上記記録装置の作用を示すフローチャート。
【図8】上記記録装置の作用を示すフローチャート。
【図9】上記記録装置の作用を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0120】
1 キャリッジ,2 キャリッジモータ,3 タイミングベルト,4 ガイド部材,5 紙送り部材,6 記録ヘッド,7 サブタンクユニット,8 カートリッジホルダ,9B ブラックインクカートリッジ,9C,9M,9Y カラーインクカートリッジ,10 インク供給チューブ,11 キャッピング手段,12 ワイピング部材,13 記録用紙,13a,13b 紙端,14 吸引ポンプ,15 キャップ部材,16 インク吸収材,17 吸収材,18 廃液タンク,20 液面センサ,40 印刷制御手段,41 ヘッド駆動手段,42 フラッシング制御手段,43 クリーニング制御手段,44 クリーニング指令検知手段,45 ポンプ駆動手段,46 クリーニング指令スイッチ,47 休止タイマ,48 累積印字タイマ,49 定期フラッシングタイマ,50 定期まとめ打ちタイマ,51 休止時まとめ打ちタイマ,52 フラッシング量カウンタ,53 しきい値判定手段,54 空吸引制御手段,55 キャリッジ制御手段,56 液面判定手段,57 紙幅判定手段,58 機能不足判別手段,59 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから流体を噴射する流体噴射ヘッドと、上記流体噴射ヘッドからターゲットへの流体噴射とは無関係の流体噴射を行ってノズルの噴射特性を回復するフラッシング動作を行なうフラッシング制御手段と、上記フラッシング動作によって噴射された流体を受ける流体受け部と、上記流体受け部内に噴射された流体の気相との境界面高さを検知する界面検知手段を備えたことを特徴とする流体噴射装置。
【請求項2】
上記流体受け部には、噴射された流体を吸収する吸収材が収容されており、上記界面検知手段は、噴射された流体の気相との境界面が、上記吸収材の上面を上回ったときの反射率の変化を検知するものである請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項3】
上記界面検知手段は、ターゲットの端部を検出する端部検出器を兼ねている請求項1記載の流体噴射装置。
【請求項4】
上記流体噴射ヘッドを主走査方向に往復動させるキャリッジを備え、上記界面検知手段は上記キャリッジに配置されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項5】
上記界面検知手段により検知した流体受け部内に噴射された流体の気相との境界面高さに基づいて、上記流体受け部内の流体を吸引排出する空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう構成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の流体噴射装置。
【請求項6】
上記流体噴射ヘッドからフラッシング動作により噴射された流体量の累積値をカウントするカウント手段をさらに備え、上記カウント手段でカウントされた流体量の累積値と、界面検知手段で検知した流体受け部内に噴射された流体の気相との境界面高さとに基づいて、空吸引動作を実行するタイミングを決定するよう構成されている請求項5記載の流体噴射装置。
【請求項7】
上記流体噴射ヘッドからフラッシング動作により噴射された流体量の累積値をカウントするカウント手段をさらに備え、上記カウント手段でカウントされた流体量の累積値と、界面検知手段で検知した流体受け部内に噴射された流体の気相との境界面高さとに基づいて、噴射装置自体の機能不足を判別するよう構成されている請求項5記載の流体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−229863(P2008−229863A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−68118(P2007−68118)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】