説明

流体圧伝達装置及びロボットハンド装置

【課題】小型化及び軽量化を図ることができる流体圧伝達装置、及びこれを備えたロボットハンド装置を提供する。
【解決手段】流体圧伝達装置は、複数の主駆動流体圧シリンダ37,37と、主駆動流体圧シリンダ37,37のシリンダ室371,371と流体圧伝達路38,38を介してシリンダ室23a,24aが連通される複数の従動流体圧シリンダ23,24と、ピストン412で2つのシリンダ室41a,41bに区切られた副駆動流体圧シリンダ41とを備え、主駆動流体圧シリンダ37,37が発生した流体圧を従動流体圧シリンダ23,24に伝達する。ピストン371,371は主モータ40により、ピストン412は副モータ43により、夫々駆動される。流体圧伝達管38,38と副駆動流体圧シリンダの各シリンダ室41a,41bとは連通管42,42に介して連通する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動流体圧シリンダと従動流体圧シリンダとを備える流体圧伝達装置、及びこれを備えたロボットハンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人間の手を模した複数の指機構と、各指機構が接続されたハンド本体とを備えるロボットハンド装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のロボットハンド装置の指機構は、流体圧伝達装置により屈伸される。この流体圧伝達装置は、ハンド本体内に設けられた複数の従動流体圧シリンダと、ハンド本体の外部に設けられ、各従動流体圧シリンダに流体圧伝達管を介して夫々接続された複数の駆動流体圧シリンダとを備える。
【0003】
モータ等の駆動源により駆動流体圧シリンダで流体圧を発生させると、当該駆動流体圧シリンダに接続された従動流体圧シリンダに当該流体圧が付与される。そして、従動流体圧シリンダのピストンが進退し、このピストンに連結された指機構の関節の構成部品たる可動部材が可動する。このようにして、従動流体圧シリンダのピストンの進退により、指機構の関節の屈伸動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−126984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の駆動流体圧シリンダと従動流体圧シリンダと流体圧伝達管とで構成される流体圧伝達装置では、精密な動作を要求される関節等に用いられる従動流体圧シリンダには、これに対応する1つの駆動流体圧シリンダが接続される。
【0006】
この従動流体圧シリンダが複数設けられているものにおいては、当該従動流体圧シリンダに要求される最大圧力及び最大速度に対応可能な大きな定格出力を有する駆動源を用いる必要がある。このため、精密な動作が要求される関節等に用いられる従動流体圧シリンダの数の増加に比例して、流体圧伝達装置全体が大型化し軽量化が図れなくなってしまう。
【0007】
本発明は、小型化及び軽量化を図ることができる流体圧伝達装置、及びこれを備えたロボットハンド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]上記目的を達成するため、本発明の流体圧伝達装置は、複数の主駆動流体圧シリンダと、該主駆動流体圧シリンダのシリンダ室と流体圧伝達路を介してシリンダ室が連通される複数の従動流体圧シリンダとを備え、前記主駆動流体圧シリンダが発生した流体圧を前記従動流体圧シリンダに伝達する流体圧伝達装置であって、前記複数の主駆動流体圧シリンダのピストンを駆動する主駆動源と、ピストンで2つのシリンダ室に区切られた副駆動流体圧シリンダと、該副駆動流体圧シリンダのピストンを駆動する副駆動源と、前記流体圧伝達路と前記副駆動流体圧シリンダの各シリンダ室とを連通する連通路とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の流体圧伝達装置によれば、1つの主駆動源による複数の主駆動流体圧シリンダのピストンの進退と、副駆動源による副駆動流体圧シリンダのピストンの進退とにより、複数の従動流体圧シリンダのシリンダ室に流体圧を伝達させることができる。
【0010】
ここで、一般的に、複数の従動流体圧シリンダが必要とする流体圧が大きく相違することは少ない。そこで、1つの主駆動源による複数の主駆動流体圧シリンダのピストンの進退によって、複数の従動流体圧シリンダが必要とする流体圧の中間的な流体圧を発生させ、複数の従動流体圧シリンダが必要する流体圧の差分を調整するための流体圧を、副駆動源による副駆動流体圧シリンダのピストンの進退によって発生させる。
【0011】
これにより、上記従来の流体圧伝達装置のように各別の駆動源によって主駆動流体圧シリンダのピストンを駆動する場合に比べて、駆動源の合計体積及び重量を減少させることが可能となり、流体圧伝達装置全体の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0012】
[2]本発明において、前記主駆動源は、前記副駆動源よりも定格出力が大きいことが好ましい。
【0013】
これによれば、上記従来の流体圧伝達装置のように複数の主駆動流体圧シリンダのピストンを各別に駆動する駆動源の合計定格出力に相当する、例えば従来の各駆動源の2倍の定格出力を有する主駆動源を用いた場合、主駆動源の体積及び重量は、従来の駆動源の合計に比べて、一般的に3割程度増加するに過ぎない。そのため、流体圧伝達装置全体の小型化及び軽量化を更に図ることができる。
【0014】
[3]本発明の流体圧伝達装置は、例えば、複数の関節部で屈伸自在な指機構を備えるロボットハンド装置に用いることができる。この場合、前記従動流体圧シリンダのピストンの進退に伴い、指関節の関節部が屈伸するように、従動流体圧シリンダのピストンと指機構の関節の可動部材とを連結させればよい。
【0015】
人間の手を模倣したロボットハンド装置の指機構において、各関節の動作は、独立しておらず、関連性がある。例えば、PIP関節(近位指節間関節)とMP1関節が逆方向に動作することは稀であり、掴む、握るなどの高負荷の動作を行う場合は、同方向に力が発生している。これは、人間の指に複数の関節に跨る筋が存在することからも理解される。そのため、複数の従動流体圧シリンダが必要とする流体圧が大きく相違しない場合に適した本発明の流体圧伝達装置を、ロボットハンド装置の指関節に適用することは好適である。なお、指関節の関節部が3以上存在する場合、複数の関節部に対して1つの従動流体圧シリンダを設け、これら関節部を一定の関連性を持たせて動作させてもよい。
【0016】
[4]更に、ロボットハンド装置が指機構を複数備え、該複数の指関節のうち少なくとも2以上の指関節の関節部が、前記従動流体圧シリンダのピストンの進退に伴い、屈伸することも好ましい。
【0017】
ロボットハンド装置が複数の指機構を備える場合、本発明の流体圧伝達装置を任意の指機構に適用してもよい。特に、指先でのつまみ動作を含む器用動作を行う器用指の動作に応じて握り動作を含む力動作を行う力指とされている指機構に、本発明の流体圧伝達装置を適用することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態のロボットハンド装置を示す概略構成図。
【図2】ハンド本体の各関節を模式的に示す説明図。
【図3】ハンド本体の内部構造を手の甲側から示す説明図。
【図4】ハンド本体に備える指機構の一つを示す説明的断面図。
【図5】ハンド本体に備える拇指機構を示す説明的断面図。
【図6】器用指とされる指機構における駆動手段の一部の構成を模式的に示す説明図。
【図7】力指とされる指機構における駆動手段の一部の構成を模式的に示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のロボットハンド装置1は、図1に示すように、人間の手を模倣したハンド本体2と、ハンド本体2を駆動する駆動手段3とにより構成され、所謂ヒューマノイドロボットに好適に用いることができるものである。
【0020】
ハンド本体2は、基部4と、5本の指に夫々対応する屈伸機能を有した5つの指機構である拇指機構5、示指機構6、中指機構7、環指機構8、及び小指機構9とを備えている。基部4は、各指機構を連結支持するフレーム10を備え、基部4の表側が手の甲とされ裏側が手の平とされる。図1は、ハンド本体2の手の平側を示している。
【0021】
各指機構は、各関節を露出させて指表皮部材11により被覆され、基部4は基部表皮部材12により被覆されている。
【0022】
各指機構は、図2に模式的に示すように、複数の指節及び関節を備えている。示指機構6、中指機構7、環指機構8、及び小指機構9は、夫々、指先側から順に、DIP関節(遠位指節間関節)13、PIP関節(近位指節間関節)14、MP1関節15、及びMP2関節16を備えて、各関節毎に回動自在とされている。
【0023】
DIP関節13は1軸で回動し、PIP関節14はDIP関節13と平行の軸線回りに1軸で回動する。MP1関節15及びMP2関節16は2軸で回動する中手指節関節を構成するものであって、MP1関節15はPIP関節14と平行の軸線回りに回動し、MP2関節16はMP1関節15に交差する軸線回りに回動する。
【0024】
DIP関節13と、PIP関節14と、MP1関節15とは、基部4の手の平側に向かう方向に回動して握り動作等の屈伸運動が行えるようになっている。MP2関節16は、各指機構同士が近接・離間する方向に各指機構を揺動させ、例えば手を広げる動作等が行えるようになっている。
【0025】
拇指機構5は、図2に模式的に示すように、指先側から順に、IP関節(拇指指節間関節)17、MP関節(拇指中手指節関節)18、CM1関節19、及びCM2関節20を備えて、各関節毎に回動自在とされている。
【0026】
IP関節17は1軸で回動し、MP関節18はIP関節17と平行の軸線回りに1軸で回動する。CM1関節19及びCM2関節20は2軸で回動する手根中手関節を構成するものであって、CM1関節19はMP関節18と平行の軸線回りに回動し、CM2関節20はCM1関節19に交差する軸線回りに回動する。
【0027】
IP関節17と、MP関節18と、CM1関節19とは、基部4の手の平側或いは他の4つの指機構6,7,8,9の何れかの指腹側に向かう方向に回動して握り動作等の屈伸運動が行えるようになっている。CM2関節20は、拇指機構5を手の平側或いは他の4つの指機構6,7,8,9の何れかの指腹側に対向するように回動させる。
【0028】
5つの指機構のうち、拇指機構5、示指機構6、及び中指機構7の3つの指機構は、後述するように指先でのつまみ動作を含む器用動作を行う器用指とされ、環指機構8及び小指機構9は、器用指の動作に応じて握り動作を含む力動作を行う力指とされている。
【0029】
本発明者は、人間の手及び指の動きを分析した。その結果、本発明者は、拇指、示指、及び中指が比較的繊細な作業を行う際に用いられ、環指及び小指が物体を比較的強い力で握って保持したり、持ち替え時に一時的に保持したりする際に用いられていることを知見した。
【0030】
人間が机等に載置されている円柱状の物体をつかみ上げるときの動作を例にとって説明すると、先ず、拇指、示指、及び中指により物体に触れて物体の姿勢を確認すると共に、拇指、示指、及び中指における力の入れ具合により物体を握り易い姿勢に修正する。次いで、拇指、示指、及び中指の各指先で物体を挟んで物体をつまみ上げる(つまみ動作)。このとき、環指及び小指が物体の握り込みを開始し、拇指、示指、及び中指による把持から環指及び小指による把持に移行する。その後、環指及び小指が物体を比較的強い力でしっかり握り込み(握り動作)、それに添えるようにして拇指、示指、及び中指が物体を握って物体のつかみ上げ動作が完了する。以上のつかみ上げ動作は切れ目なく連続して迅速に行われる。
【0031】
器用指とされる拇指機構5、示指機構6、及び中指機構7は、図3及び図4に示すように、力センサである6軸力センサ21を備えている。6軸力センサ21は、拇指機構5、示指機構6、及び中指機構7の各指先部材22に傾斜する姿勢で取付けられている。6軸力センサ21は、器用指の指先部材22に作用する6軸力、即ち、互いに直交する3軸(x軸、y軸、z軸)方向の並進力と各軸周りのモーメントとを測定する。そして、6軸力センサ21から出力される6軸力の測定値に基づいて器用指における指先力の制御が行われる。
【0032】
示指機構6の構成を説明すれば、図4に示すように、示指機構6は、MP1関節15の回動軸151を回動させる第1の従動流体圧シリンダ23と、PIP関節14の回動軸141を回動させる第2の従動流体圧シリンダ24とを備えている。
【0033】
第1の従動流体圧シリンダ23のシリンダ本体231は、人間の中手骨に相当し、MP2関節16の回動軸161により回動自在に前記基部4のフレーム10(図1参照)に支持されている。第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241は、人間の基節骨に相当し、MP1関節15の回動軸151を介して第1の従動流体圧シリンダ23に回動自在に連結されている。
【0034】
第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241に流体を供給する配管244は、MP1関節15の回動軸151の内部に収容されている。これにより、MP1関節15の回動時に配管244が邪魔にならず、示指機構6の屈伸動作を円滑に行うことができる。なお、流体としては、特に作動油が好ましい。
【0035】
また、第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241を示指機構6の長手方向に沿ってMP1関節15とPIP関節14との間に配設することにより、示指機構6をコンパクトに構成することができる。
【0036】
PIP関節14には、人間の中節骨に相当する連結部材25を介してDIP関節13が連結されている。DIP関節13の回動軸131には、前記指先部材22に連設された6軸力センサ21を支持する支持部材26が回動自在に連結されている。連結部材25は、その一端がPIP関節14の回動軸141に回動自在に連結され、他端がDIP関節13の回動軸131に連結されている。
【0037】
更に、PIP関節14とDIP関節13との間には、リンク部材27が設けられている。リンク部材27は、第2の従動流体圧シリンダ24のシリンダ本体241と指先部材22の6軸力センサ21を支持する支持部材26とを連結する。
【0038】
第1の従動流体圧シリンダ23は、シリンダ本体231内部のシリンダ室231aに流体が供給されることによりピストン232が摺動し、ピストンロッド233が伸縮してMP1関節15を回動させる。これにより、示指機構6がMP1関節15を介して屈伸する。
【0039】
第2の従動流体圧シリンダ24は、シリンダ本体241内部のシリンダ室241aに流体が供給されることによりピストン242が摺動し、ピストンロッド243が伸縮してPIP関節14を回動させる。このとき、PIP関節14とDIP関節13とが、連結部材25とリンク部材27とにより連結されているので、第2の従動流体圧シリンダ24によるPIP関節14の回動に追従してDIP関節13が回動する。
【0040】
DIP関節13は、第2の従動流体圧シリンダ24によるPIP関節14の回動に連動するように構成されているので、人間の指の動きに近い動作が得られるだけでなく、DIP関節13を駆動するためのシリンダ等が不要となり、示指機構6を軽量に構成することができる。
【0041】
以上の構成により、示指機構6は、第1の従動流体圧シリンダ23及び第2の従動流体圧シリンダ24のピストンロッド231,241を伸長させることにより折り曲げ状態となり、ピストンロッド231,241を収縮させることにより延ばし状態となる。
【0042】
示指機構6のMP2関節16は、図3に示すように、各指機構の配列方向に沿ってピストンロッド283が伸縮する第3の従動流体圧シリンダ28により回動される。第3の従動流体圧シリンダ28は、ピストンロッド283を伸長させることにより示指機構6を中指機構7に近接する方向に揺動させ、ピストンロッド283を収縮させることにより示指機構6を中指機構7から離反する方向に揺動させる。
【0043】
図4に示すように、PIP関節14、MP1関節15及びMP2関節16の夫々にはコイルばね14s,15s,16sが設けられている。PIP関節14及びMP1関節15の各コイルばね14s,15sは、示指機構6を延ばし方向に付勢する。MP2関節16のコイルばね16sは、示指機構6を中指機構7から離反させる方向に付勢する。言い換えれば、各コイルばね14s,15s,16sの付勢方向は、3つの従動流体圧シリンダ23,24,28のピストンロッド233,243,283の収縮方向と同じ方向とされている。
【0044】
以上、器用指とされる示指機構6の構成を詳しく述べたが、器用指とされる中指機構7の構成も示指機構6と同じである。
【0045】
力指とされる環指機構8及び小指機構9は、示指機構6の上述した構成のうち、6軸力センサ21と第3の従動流体圧シリンダ28とを備えないこと以外は、示指機構6と同じ構成である。環指機構8及び小指機構9は、第3の従動流体圧シリンダ28を備えないことにより、MP2関節16が力動作に応じて自在に回動し、MP2関節16のコイルばね16sの付勢により所定位置に自然復帰するようになっている。
【0046】
器用指とされる拇指機構5の構成を説明すれば、図5に示すように、拇指機構5は、CM1関節19の回動軸191を回動させる第1の従動流体圧シリンダ29と、MP関節18の回動軸181を回動させる第2の従動流体圧シリンダ30とを備えている。
【0047】
第1の従動流体圧シリンダ29のシリンダ本体291は、CM2関節20の回動軸とされており、回動自在に前記基部4のフレーム10に支持されている。
【0048】
このように、第1の従動流体圧シリンダ29のシリンダ本体291をCM2関節20の回動軸として兼用することにより、第1の従動流体圧シリンダ29とCM2関節20の回動軸とを別々に設けた場合に比べてコンパクトとなる。しかも、CM2関節20の回動に伴う第1の従動流体圧シリンダ29の揺動は全くなく、その揺動スペースが不要となるので極めてコンパクトに構成することができる。
【0049】
第2の従動流体圧シリンダ30のシリンダ本体301は、CM1関節19の回動軸191を介して第1の従動流体圧シリンダ29に回動自在に連結されている。
【0050】
第2の従動流体圧シリンダ30のシリンダ本体301に流体を供給する配管304は、CM1関節19の回動軸191の内部に収容されている。これにより、CM1関節19の回動時に配管304が邪魔にならず、拇指機構5の屈伸動作を円滑に行うことができる。
【0051】
MP関節18には、連結部材31を介してIP関節17が連結されている。IP関節17の回動軸171には、前記指先部材22が回動自在に連結されている。連結部材31は、その一端がMP関節18の回動軸181に回動自在に連結され、他端がIP関節17の回動軸171に連結されている。
【0052】
更に、MP関節18とIP関節17との間には、リンク部材32が設けられている。リンク部材32は、第2の従動流体圧シリンダ30のシリンダ本体301と指先部材22の6軸力センサ21を支持する支持部材33とを連結する。
【0053】
第1の従動流体圧シリンダ29は、シリンダ本体291内部のシリンダ室291aに流体が供給されることによりピストン292が摺動し、ピストンロッド293が伸縮してCM1関節19を回動させる。これにより、示指機構6がCM1関節19を介して屈伸する。
【0054】
第2の従動流体圧シリンダ30は、シリンダ本体301内部のシリンダ室301aに流体が供給されることによりピストン302が摺動し、ピストンロッド303が伸縮してMP関節18を回動させる。このとき、MP関節18とIP関節17とが、連結部材31とリンク部材32とにより連結されていることにより、第2の従動流体圧シリンダ30によるMP関節18の回動に追従してIP関節17が回動する。
【0055】
IP関節17は、第2の従動流体圧シリンダ30によるMP関節18の回動に連動するように構成されているので、人間の指の動きに近い動作が得られるだけでなく、IP関節17を駆動するためのシリンダ等が不要となり、拇指機構5を軽量に構成することができる。
【0056】
以上の構成により、拇指機構5は、第1の従動流体圧シリンダ29及び第2の従動流体圧シリンダ30のピストンロッド293,303を伸長させることにより折り曲げ状態となり、ピストンロッド293,303を収縮させることにより延ばし状態となる。
【0057】
拇指機構5のCM2関節20は、図3に示すように、各指機構の配列方向に沿ってピストンロッド343が伸縮する第3の従動流体圧シリンダ34により回動される。
【0058】
拇指機構5は、第3の従動流体圧シリンダ34のピストンロッド343を伸長させることにより、基部4の手の平側に回動し、第3の従動流体圧シリンダ34のピストンロッド343を収縮させることにより示指機構6に隣り合う方向に回動する。
【0059】
図5に示すように、第1の従動流体圧シリンダ29のシリンダ本体291への流体の供給は、CM2関節20の回動軸である第1の従動流体圧シリンダ29のシリンダ本体291の軸受け部101の内部に形成された流体路294を介して行われる。これにより、第1の従動流体圧シリンダ29のシリンダ本体291を円滑に回動させることができ、CM2関節20による拇指機構5の回動を円滑に行うことができる。
【0060】
図3及び図5に示すように、MP関節18、CM1関節19及びCM2関節20の夫々にはコイルばね18s,19s,20sが設けられている。MP関節18及びCM1関節19の各コイルばね18s,19sは、拇指機構5を延ばし方向に付勢する。CM2関節20のコイルばね20sは、第1の従動流体圧シリンダ29のシリンダ本体291の外周を包囲するようにして設けられ、拇指機構5を示指機構6に隣り合う方向に回動する方向に付勢する。言い換えれば、各コイルばね18s,19s,20sの付勢方向は、3つの従動流体圧シリンダ29,30,34の各ピストンロッド293,303,343の収縮方向と同じ方向とされている。
【0061】
そして図示しないが、ハンド本体2の指腹側を覆う指表皮部材11や手の平側を覆う基部表皮部材12には、所定位置に複数の接触センサが設けられている。
【0062】
以上、ハンド本体2の構成について説明したが、次に、ハンド本体2の各指機構を駆動するための駆動手段3について説明する。
【0063】
駆動手段3は、図1に示すように、ハンド本体2の外部に設けられた駆動シリンダユニット35と、この駆動シリンダユニット35を介してハンド本体2を制御するコントローラ36と、前述した各従動流体圧シリンダ23,24,28,29,30,34とにより構成される。
【0064】
駆動シリンダユニット35は、複数の駆動流体圧シリンダ37を備えている。駆動流体圧シリンダ37は、図6及び図7に示すように、内部に流体を収容するシリンダ本体371と、シリンダ本体371の内部を摺動するピストン372と、ピストン372と一体化されたピストンロッド373とを備えている。
【0065】
駆動シリンダユニット35の各駆動流体圧シリンダ37は、ハンド本体2に内蔵されている前述の従動流体圧シリンダ23,24,28,29,30,34に、1つずつ対応して計13個設けられている。図1に概略を示しているが、駆動シリンダユニット35の各駆動流体圧シリンダ37とハンド本体2の各従動流体圧シリンダ23,24,28,29,30,34とは夫々が流体圧伝達管(流体圧伝達路)38を介して各別に接続されている。
【0066】
器用指とされている拇指機構5、示指機構6、及び中指機構7においては、図6に模式的に示すように、各従動流体圧シリンダ23,24,28,29,30,34内部のシリンダ室23a,24a,28a,29a,30a,34aと駆動流体圧シリンダ37内部のシリンダ室37aとが夫々流体圧伝達管38を介して各別に接続されている。そして、各駆動流体圧シリンダ37のピストンロッド373には、該ピストンロッド373を進退させる駆動源であるモータ39が夫々各別に接続されている。なお、図6では、示指機構6の従動流体圧シリンダ23,24を代表として示している。
【0067】
この構成により、モータ39によってピストンロッド373を進退させて駆動流体圧シリンダ37のシリンダ室37aに流体を送出・吸入すれば、それに対応して、各流体伝達管38を介して各従動流体圧シリンダ23,24,28,29,30,34のシリンダ室23a,24a,28a,29a,30a,34aに流体が圧入・排出され、ピストンロッド233,243,283,293,303,343が進退する。これにより、従動流体圧シリンダ37による指機構5,6,7の駆動が行われる。
【0068】
コントローラ36がモータ39を介して、駆動流体圧シリンダ37における流体の送出量及び吸入量、具体的にはピストンロッド373の進退量を制御することにより、従動流体圧シリンダ23,24,28,29,30,34によって指機構5,6,7に所望の屈伸作動を行わせることができる。
【0069】
一方、力指とされている環指機構8及び小指機構9においては、図7に模式的に示すように、第1の従動流体圧シリンダ23内部のシリンダ室23aと駆動流体圧シリンダ37内部のシリンダ室37aとが流体圧伝達管38を介して接続され、第2の従動流体圧シリンダ24内部のシリンダ室24aと駆動流体圧シリンダ37内部のシリンダ室37aとが流体圧伝達管38を介して接続されている。そして、駆動流体圧シリンダ37,37のピストンロッド373,373には、これらピストンロッド373,373を一体的に進退させる主駆動源としての主モータ40が接続されている。
【0070】
そして、内部に流体を収容するシリンダ本体411と、シリンダ本体411の内部を摺動し、シリンダ本体411の内部を2つのシリンダ室411a,411bに区分するピストン412と、ピストン412と一体化されたピストンロッド413とを備える副駆動流体圧シリンダ41が設けられている。シリンダ411a,411bは、夫々内部に流体を収容し、シリンダ本体の内部を摺動するピストン412の進退によりその容積が変化するように構成されている。副駆動流体圧シリンダ41のシリンダ室411aは、連通管(連通路)42を介して流体圧伝達管38と、副駆動流体圧シリンダ41のシリンダ室411bは、連通管(連通路)42を介して流体圧伝達管38と夫々連通されている。そして、副駆動流体圧シリンダ41のピストンロッド413には、該ピストンロッド413を進退させる副駆動源としての副モータ43が接続されている。
【0071】
この構成により、主モータ40によってピストンロッド373,373を進退させて駆動流体圧シリンダ37,37のシリンダ室37a,37aに流体を送出・吸入すれば、それに対応して、各流体伝達管38,38を介して各従動流体圧シリンダ23,24のシリンダ室23a,24aに流体が圧入・排出され、ピストンロッド233,243が進退する。このとき、主モータ40によるピストンロッド373,373の進退は、進退方向が同じであり、進退量の比は一定である。そのため、主モータ40によるピストンロッド373,373の進退によっては、従動流体圧シリンダ23,24のピストンロッド233,243の進退は、進退方向が同じであり、進退量の比が一定のものに限定される。
【0072】
そこで、副モータ43によってピストンロッド413を進退させて、連通管42,42を介して副駆動流体圧シリンダ41のシリンダ室41a,41bに流体を送出・吸入すれば、それに対応して、各流体伝達管38,38を介して各従動流体圧シリンダ23,24のシリンダ室23a,24aに流体が圧入・排出され、ピストンロッド233,243が進退する。
【0073】
ところで、PIP関節14とMP1関節15の動作は、独立しておらず、関連性がある。即ち、PIP関節14とMP1関節15とが逆方向に動作することは稀であり、掴む、握るなどの高負荷の動作を行う場合は、同方向に力が発生している。そのため、環指機構8や小指機構9の動作時、従動流体圧シリンダ23,24のピストンロッド233,243の進退は、進退方向が同じであり、進退量の比もほぼ等しくなり、従動流体圧シリンダ23,24が必要とする流体圧も大きく相違することはない。そのため、副駆動圧シリンダ41は、シリンダ室41a,41bが大きな容積を必要としないので、小型となる。また、副モータ43は、定格出力が小さくてよいので、小型となる。更に、指関節の屈伸動作を行う程度の定格出力を有する小型モータは、コイルやマグネットなど定格出力と比例して大きくなる構成要素が少ない。そのため、上記従来の流体圧伝達装置のように複数の主駆動流体圧シリンダのピストンを各別に駆動するモータの合計定格出力に相当する、例えば従来の各モータの2倍の定格出力を有する主モータ40を用いた場合、主モータ40の体積及び重量は、従来のモータの合計に比べて、一般的に3割程度増加するに過ぎない。従って、流体圧伝達装置全体、具体的には、主駆動流体圧シリンダ37,37、副駆動圧シリンダ41、主モータ40、副モータ43などを格納する駆動シリンダユニット35の小型化及び軽量化を図ることができる。
【0074】
コントローラ36が主モータ40及び副モータ43を介して、主駆動流体圧シリンダ37,37及び副駆動圧流体シリンダ43における流体の送出量及び吸入量、具体的にはピストンロッド373,373,433の進退量を制御することにより、従動流体圧シリンダ23,24によって指機構8,9に所望の屈伸作動を行わせることができる。
【0075】
そして、駆動シリンダユニット35をハンド本体2の外部に設けたことにより、ハンド本体2を小型軽量として、例えば人間の標準的な手と同等の大きさのハンド本体2を得ることができる。更に、各駆動流体圧シリンダ37及び各従動流体圧シリンダ23,24,28,29,30,34の流体圧により各指機構5,6,7,8,9を作動させるので、小型であっても十分な把持力を得ることができる。
【0076】
また、コントローラ36は、信号線44を介して駆動シリンダユニット35に接続され、各駆動流体圧シリンダ37から各従動流体圧シリンダ23,24,28,29,30,34に伝達される作動用流体圧を調節することにより各指機構の屈伸を制御する。更に、コントローラ36は、信号線45を介してハンド本体2に接続され、器用指とされている拇指機構5、示指機構6、及び中指機構7の各6軸力センサ21や前記接触センサから得られる情報に基づいて、各駆動流体圧シリンダ37の制御を行う。これによって、コントローラ36は、前述した構成のハンド本体2の各指機構により人間の動作を模倣した把持動作を行うように制御する。
【0077】
コントローラ36は、例えば、ハンド本体2の各指機構により円柱状の物体(図示せず)をつかみ上げる動作を行うとき、次のようにして指機構を制御する。
【0078】
先ず、器用指とされている拇指機構5、示指機構6、及び中指機構7の指先で物体をつまむ動作を行う。次いで、拇指機構5、示指機構6、及び中指機構7により手の平側の基部表皮部材12に接触するまで物体を把持する。このとき、コントローラ36は、各6軸力センサ21、及び指腹側の指表皮部材11や手の平側の基部表皮部材12に設けられている接触センサの情報に基づき、物体の位置・大きさ・姿勢等を演算する。コントローラ36は、その演算結果に基づいて拇指機構5、示指機構6、及び中指機構7を動作させるので、つまむ動作から把持する動作に連続的に移行する際に物体のバランスを取りながら物体の姿勢を器用に操ることができる。続いて、コントローラ36は、環指機構8及び小指機構9を作動させ、力指とされる環指機構8及び小指機構9により比較的強い力で物体を握り込み、その後、拇指機構5、示指機構6、及び中指機構7により比較的強い力で物体を握り込む。このような動作がコントローラ36の制御により行われることにより、人間を模倣して物体の把持動作を行うことができる。また、各指機構に、器用指と力指との役割分担を設定したことにより、器用指とされている拇指機構5、示指機構6、及び中指機構7にのみ6軸力センサ21を設ければよく、環指機構8及び小指機構9を小型軽量に形成することができる。
【0079】
なお、モータ39,主モータ40、副モータ43が、ピストンロッド373,373,373,413を夫々進退させる構成は限定されないが、例えば、ボールネジ機構やプーリ・ベルト機構を用いることができる。
【0080】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、実施形態では、5つの指機構5,6,7,8,9を備えて人の手を模したロボットハンド装置1について説明したが、例えば、指機構の数や器用指と力指との使い分けを必要に応じて変更してもよい。また、器用指とされる指機構5,6,7に副駆動流体圧シリンダ41を用いた流体圧伝達装置を適用してもよい。
【0081】
また、本発明の流体圧伝達装置は、ロボットハンド装置に限らず、ロボットの腕や脚など、或いはロボット以外の装置における複数の関節部の屈伸動作に用いてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…ロボットハンド装置、8…環指機構(指機構)、9…小指機構(指機構)、14…PIP関節(関節部)、15…MP1関節(関節部)、23…第1の従動流体圧シリンダ、23a…シリンダ室、24…第2の従動流体圧シリンダ、24a…シリンダ室、37,37…駆動流体圧シリンダ(主駆動流体圧シリンダ)、37a,37a…シリンダ室、38,38…流体圧伝達管(流体圧伝達路)、40…主モータ(主駆動源)、41…副駆動流体圧シリンダ、41a…シリンダ室、411…ピストン、42,42…連通管(連通路)、43…副モータ(副駆動源)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の主駆動流体圧シリンダと、
該主駆動流体圧シリンダのシリンダ室と流体圧伝達路を介してシリンダ室が連通される複数の従動流体圧シリンダとを備え、前記主駆動流体圧シリンダが発生した流体圧を前記従動流体圧シリンダに伝達する流体圧伝達装置であって、
前記複数の主駆動流体圧シリンダのピストンを駆動する主駆動源と、
ピストンで2つのシリンダ室に区切られた副駆動流体圧シリンダと、
該副駆動流体圧シリンダのピストンを駆動する副駆動源と、
前記流体圧伝達路と前記副駆動流体圧シリンダの各シリンダ室とを連通する連通路とを備えることを特徴とする流体圧伝達装置。
【請求項2】
請求項1記載の流体圧伝達装置であって、
前記主駆動源は、前記副駆動源よりも定格出力が大きいことを特徴とする流体圧伝達装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流体圧伝達装置を用いたロボットハンド装置であって、
該ロボットハンド装置は、複数の関節部で屈伸自在な指機構を備え、
前記従動流体圧シリンダのピストンの進退に伴い、前記指関節の関節部が屈伸することを特徴とするロボットハンド装置。
【請求項4】
請求項3記載の流体圧伝達装置を用いたロボットハンド装置であって、
該ロボットハンド装置は、前記指機構を複数備え、
該複数の指関節のうち少なくとも2以上の指関節の関節部が、前記従動流体圧シリンダのピストンの進退に伴い、屈伸することを特徴とするロボットハンド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−64215(P2011−64215A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213061(P2009−213061)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】