説明

流体機械の旋回流防止装置

【課題】ラビリンスシール本来の意図する流体のシール効果を損なうことなく、ラビリンスシールに起因する自励振動を抑制するとともに、取付交換作業を容易にする流体機械の旋回流防止装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、回転部21と静止部20を備えるとともに、前記回転部21の先端を囲い、かつ前記静止部20を支持するダイアフラム26の前記回転部21の先端との間にラビリンスシール27を備えた流体機械において、前記ラビリンスシール27に臨む入口側であって、前記静止部20を支持する前記ダイアフラム26のコーナ部に案内羽根29を設けるとともに、前記案内羽根29を前記ダイアフラム26に着脱自在に取り付ける構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気タービン、ガスタービン、空気圧縮機等の流体機械に係り、特に内部流体漏出防止用として用いているラビリンスシールから誘起する旋回流によって発生する自励振動を効果的に抑制する流体機械の旋回流防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン、ガスタービン等の大形の流体機械では、最近、信頼性向上技術の見直し、強化が行われており、その一つに自励振動の抑制がある。
【0003】
この自励振動は、軸受のオイルホイップやオイルホワールによって発生するほかに、ラビリンスシール内の旋回流によっても発生することが知られている。
【0004】
図18は、ラビリンスシールを備えた蒸気タービンの一例である。
【0005】
図18において、タービンロータ等の回転部1には、この周方向に沿って多数の動翼2が植設され、植設された多数の動翼2は先端部にシュラウド3を設けて隣りの動翼と環状列に配置している。
【0006】
また、ノズル4は、ノズルダイアフラム内外輪5a,5bを介して動翼2と向き合うように、ケーシング6の内部に収容されている。
【0007】
これら動翼2とノズル4とを軸方向に向って多数配置して段落を構成し、段落に蒸気が通過する際、段落毎に蒸気の持つエンタルピが降下し、この降下分が動力に変換される。
【0008】
このように、各段落で蒸気の圧力、温度が降下し、そのエンタルピ差が有効に動力に変換されるためには、各段落間の蒸気漏れが完全に遮断されていることが必要とされる。
【0009】
しかし、実際には、ノズルダイアフラム5a,5bと回転部1との間、あるいはシュラウド3とケーシング6との間を通って圧力の低い側に蒸気が漏出しており、さらに、回転部1がケーシング6を貫通する部分であるグランド部7a,7bからも圧力の低い側に蒸気が漏出することがある。
【0010】
このような漏出は、タービン効率を低下させる要因となるので、蒸気の漏出をより一層抑制することが必要とされている。このため、図19に示すように、上述の部材間にラビリンスシール11を備え、蒸気の外部への漏出を防止している。
【0011】
ラビリンスシール11は、シール本体から回転部側に向って回転部表面に極めて近接した部分まで突出する環状のラビリンスフィン(歯)8を備えている。このラビリンスシール8と回転部1の外周部によって、絞り部9とチャンバ10とを形成している。蒸気は、チャンバ10で膨張し、絞り部9で絞られ、この繰返しによって蒸気の外部への漏出を防止している。
【0012】
なお、ラビリンスシール11において、回転軸と不安定状態にすることを抑制する技術には、特許文献1〜3等数多くの発明が開示されている。
【特許文献1】米国特許第4370094号明細書
【特許文献2】特開昭58−222902号公報
【特許文献3】実開昭60−16938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ラビリンスシール11は、上述の構成を備えているので、蒸気の漏出を効果的に抑制している。
【0014】
しかし、最近の流体機械では、蒸気の漏出防止を向上させているものの、その反面、回転部が自励振動の発生個所になっていることが指摘されている。
【0015】
自励振動は、今迄、スチームホワールとして知られている程度であったが、蒸気の圧力がより一層高圧化してくると、顕著に現われるようになった。
【0016】
この自励振動の発生を考察してみると、ラビリンスシール11には、流入する蒸気の流れに旋回成分があり、この旋回成分がラビリンスシール11のチャンバ10内の周方向の圧力分布を不均一にさせ、回転部1の振れ廻り振動を助長すると考えられている。
【0017】
図20は、回転部1が振れ廻っているとき、つまり回転部1の回転軸中心12aと実際の振れ廻り中心12bとが異なっているときのラビリンスシール11に設けたチャンバ10内の圧力分布13を示している。
【0018】
ここで、蒸気の流れに旋回成分があると、圧力のピーク値は、回転部1の振れ廻り方向に対し、遅れ方向に位置する。この不均一に分布する圧力が回転部1に作用する力は、回転部1の振れ廻り方向の力Fxと、この振れ廻り方向の力Fxと直交する方向の力Fyとに分解することができる。
【0019】
このような圧力のピーク値が発生する場合、回転部1は、常に振れ廻り方向にFxなる力で押圧され、このため回転部1の振れ廻りが助長され、自励振動が発生すると考えられる。
【0020】
ラビリンスシール入口部における旋回流成分が不安定化力に大きな影響を持っており、旋回流の増加によって不安定化力も増加し、自励振動が発生し易くなることは、経験やモデル試験により知られていた。
【0021】
近年の計算機および流体解析プログラムの進歩発展により、実機条件における旋回流と不安定化力の関係は、図21に示すように、定量的に把握できるようになった。
【0022】
図21は、計算で求めたラビリンスシール入口における旋回流成分と不安定化力とを表わした不安定化力線図であるが、この線図から、旋回流が増加すると不安定化力も増加することがわかった。具体的には、回転部1の周速比50%のときの5倍以上になっていた。
【0023】
蒸気タービンでは、ノズル4における出口の旋回流成分が回転部1の周速の120%〜150%と非常に大きい。このため、ノズル4を出た蒸気が流入する動翼2の先端部に設けられたラビリンスシール11の入口においても、旋回流成分が大きく、ラビリンスシール11で発生する不安定化力も、ノズル4を支持するダイアフラム5a,5bに設けたラビリンスシール11やグランド部7a,7bに設けたラビリンスシールに較べて大きい。
【0024】
このように、動翼2の先端部に設けられたラビリンスシール11で発生する大きな旋回流成分を低減することが、自励振動を抑制することにつながる。
【0025】
旋回流成分を低減させる手段には特許文献2および特許文献3に見られるように、ラビリンスシールのチャンバに高圧側に連通させる穴を回転方向側と逆方向側に設け、旋回流と逆方向に流体を噴出させたものや、特許文献1に見られるように、ラビリンスシール入口に案内羽根を設けた技術が開示されている。
【0026】
しかし、これらの技術は、ラビリンスシールの高圧側とチャンバ内との圧力差が小さく、噴出する蒸気の流速が高くないため、旋回流を抑制する利点が少なく、却って蒸気漏洩量が増加し、ラビリンスシール効果が少ない等の不具合、不都合がある。
【0027】
また、旋回流成分を低減させる他の手段には、特許文献1に見られる技術がある。
【0028】
この技術は、図22に示すように、動翼2の先端部に設けられたラビリンスシール11のうち、入口側のラビリンスフィン8に臨む側のコーナ部に薄板状の案内羽根(旋回流防止板)14を設け、この案内羽根14によって旋回流の低減化を図ったものである。すなわち、この技術によれば、漏洩蒸気は、図23に示すように、まず、案内羽根14とラビリンスシール11のラビリンスフィン8とで囲まれた空間に流れ込み、ここで、大幅に旋回流成分を低減させるため、ラビリンスシール11で発生する不安定化力が減少し、軸系の自励振動を抑制することができる。
【0029】
しかし、この技術は、案内羽根14の周辺での蒸気流速が速いために案内羽根14にとって侵食を受け易く、一定期間の運転継続後、交換が余儀なくされる等の不具合がある。
【0030】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、ラビリンスシール本来の意図する流体のシール効果を損なうことなく、ラビリンスシールに起因する自励振動を抑制するとともに、取付交換が容易な流体機械の旋回流防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部に案内羽根を設けるとともに、前記案内羽根を前記ダイアフラムに着脱自在に取り付ける構成にしたものである。
【0032】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項2に記載したように、案内羽根は、回転部の周方向に沿って配置する止め部材に植設するとともに、前記止め部材をダイアフラムに対し、締結具で接続させる構成にしたものである。
【0033】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項3に記載したように、止め部材に植設された案内羽根は、取付ピッチを10°以下の範囲に設定したものである。
【0034】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項4に記載したように、止め部材は、ダイアフラムに設けた突出し部に係合させる凹陥溝を備えたものである。
【0035】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項5に記載したように、回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部に止め部材に植設する案内羽根を設けるとともに、前記止め部材をI字形状に形成し、このI字形状を係合させる前記ダイアフラムにT字形状凹陥部を備えたものである。
【0036】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項6に記載したように、回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部にブロック体を設け、このブロック体を前記回転体の周方向に沿って配置し、周方向に沿って配置した前記ブロック体と隣りのブロック体との間に案内羽根を介装させる構成にしたものである。
【0037】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項7に記載したように、ブロック体は、直方体に形成し、一側面側にダイアフラムに設けた突出し部に係合させる凹陥溝を備えたものである。
【0038】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項8に記載したように、案内羽根は、薄板の平板で作製するとともに、ダイアフラムに設けた突出し部に係合させる凹陥溝を備えたものである。
【0039】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項9に記載したように、回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部にブロック体を設け、このブロック体を前記回転部の周方向に沿って配置し、周方向に沿って配置した前記ブロック体と隣のブロック体との間にばねで支持された案内羽根を介装させる構成にしたものである。
【0040】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項10に記載したように、ブロック体は、ばね挿入溝を備えたものである。
【0041】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項11に記載したように、回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部にブロック体を設け、このブロック体を前記回転部の周方向に沿って配置し、周方向に沿って配置した前記ブロック体と隣のブロック体との間に板ばねで支持された案内羽根を介装させる構成にしたものである。
【0042】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項12に記載したように、板ばねは、案内羽根の一部分から切り出し、切り出した前記案内羽根の一部分を支点に開閉できるように構成したものである。
【0043】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項13に記載したように、回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部にブロック体を設け、このブロック体と隣のブロック体との間に案内羽根を介装させ、前記ブロック体の底面を前記回転部の回転方向に対し斜めに交差させる面形状に形成したものである。
【0044】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項14に記載したように、回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部にブロック体を設け、このブロック体と隣のブロック体との間に案内羽根を介装させ、前記ブロック体および前記案内羽根を前記回転部の回転方向と反対方向に向って傾斜させる構成にしたものである。
【0045】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項15に記載したように、請求項1〜14記載のものを蒸気タービンに適用するものである。
【0046】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項16に記載したように、回転部は、タービンロータに植設する動翼であることを特徴とする。
【0047】
また、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、上述の目的を達成するために、請求項17に記載したように、静止部は、両端をダイアフラムによって支持させたノズルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0048】
本発明に係る流体機械の旋回流防止装置は、ラビリンスシールに臨む上流側であって、ノズルを支持するダイアフラムのコーナ部に案内羽根を設けるとともに、この案内羽根をダイアフラムに自在に着脱できる構成にしたので、案内羽根によってラビリンスシールに向う流体の旋回流を打ち消すことと相俟って、案内羽根の交換作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置を組み込んだ、例示としての蒸気タービンの実施形態を図面および図面に付した符号を引用して説明する。
【0050】
図1は、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の旋回流防止装置を組み込んだ、例示としての蒸気タービンの第1実施形態を示す概念図である。
【0051】
蒸気タービンは、蒸気流れSの上流側にノズル(静翼)22を組み込んだ静止部20と、その下流側の動翼23を組み込んだ回転部21とで1組の段落24を備え、この段落24をタービンロータ等の回転部21の軸方向に沿って複数段にして配置する構成になっている。
【0052】
また、動翼23の先端部には、シュラウド25が固定されている。シュラウド25と静止部20としてのノズル22を支持するダイアフラム26との間には、蒸気の漏出を防止するラビリンスシール27が設けられている。
【0053】
このラビリンスシール27は、タービンロータ等の回転部21の周方向に沿って長く延びるとともに、高さ方向の長さが長短異なるラビリンスフィン28を備え、これらラビリンスフィン28をノズル22を支持するダイアフラム25に植設している。
【0054】
また、ダイアフラム26には、図1および図2に示すように、ラビリンスフィン28の入口側に臨む位置に案内羽根29が回転部21の周方向に沿って設けられている。
【0055】
回転部21の周方向に沿って設けられた案内羽根29は、そのピッチが角度10°以下の範囲内に設定されている。
【0056】
案内羽根29の取付ピッチを角度10°以下の範囲内に設定したのは、以下の理由に基づく。
【0057】
図3は、案内羽根29の取付ピッチと流体の旋回流抑制効果との関係を示す案内羽根の取付ピッチ線図である。
【0058】
図中、横軸は、案内羽根の取付ピッチ角度を示しており、縦軸は、ラビリンスシール入口の旋回流成分を、案内羽根が無かったときの入口旋回流成分に対する比で表したものである。
【0059】
この線図から、取付ピッチ角度を小さくすると、つまり案内羽根29の羽根枚数を増やすと、ラビリンスシール入口旋回流が減少し、案内羽根29の旋回流抑制効果が高くなることがわかった。
【0060】
また、羽根取付ピッチ角度を10°以下にすれば、旋回流が従来よりも1/3程度に低減できることがわかった。
【0061】
従来、ノズル(静翼)の出口の旋回流成分がタービンロータ周速の120〜150%であり、動翼23の先端部の隙間に流入する漏洩蒸気も同程度の旋回流成分を持つと考えられていたが、本実施形態では、案内羽根29の羽根取付ピッチを10°以下の範囲に設定したので、旋回流を従来に較べて1/3に低減することができ、動翼23の先端部のラビリンスシール入口旋回流成分をタービンロータ周速の50%以下にすることができ、不安定化力をほぼゼロにすることができる。
【0062】
また、回転部21の周方向に沿って設けられ、羽根取付ピッチを角度10°以下の範囲内に設定した案内羽根29は、薄板の平板で作製され、リング状に形成する止め部材30に植設される。
【0063】
この止め部材30は、例えばボルト等の締結具31を介してダイアフラム26に固設される。
【0064】
このように、本実施形態は、膨張仕事を終えノズル22から動翼23に向って流れる蒸気のうち、一部の分流蒸気が旋回流を伴ってラビリンスシール27のラビリンスフィン28に流れるとき、その旋回流を相殺して打ち消す案内羽根29を止め部材30を介装させてダイアフラム26自体に着脱できる構成にしたので、蒸気の旋回流に伴う自励振動の抑制と相俟って、長年の使用の結果、案内羽根29が侵食を受けても容易に交換することができる。
【0065】
図4および図5は、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第2実施形態を示す概念図である。
【0066】
なお、図4は、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置を示す一部切欠側面図であり、図5は、図4のB−B矢視方向から見て切断した切断面図である。
【0067】
また、第1実施形態の構成要素と同一構成要素には、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0068】
本実施形態は、図4に示すように、蒸気の旋回流に伴う自励振動を抑制する案内羽根29を植設する止め部材30に凹陥溝32を設けるとともに、この凹陥溝32を係合させるダイアフラム26に突出し部33を設け、この突出し部33に凹陥溝32を係合させ、案内羽根29のダイアフラム26への着脱を自在にできる構成にしたものである。
【0069】
そして、本実施形態は、案内羽根29を植設した止め部材30の凹陥溝32をダイアフラム26の突出し部33に係合させる際、図5に示すように、分割された止め部材30を矢印ARの方向に向って、順次挿通させて組み立てている。
【0070】
このように、本実施形態は、案内羽根29を植設する止め部材30に凹陥溝32を設け、ダイアフラム26に突出し部33を設け、この突出し部33に止め部材30の凹陥溝32を挿通、係合させる構成にしたので、蒸気の旋回流に伴う自動振動の抑制と相俟って、案内羽根29が侵食を受けても容易に交換することができる。
【0071】
なお、本実施形態は、案内羽根29を植設した止め部材30に凹陥溝32を設け、この凹陥溝32を係合させるダイアフラム26に突出し部33を設けたが、この例に限らず、例えば、図6に示すように、止め部材30を高さ方向の中間部をくびれ状に形成したI字形状34にし、相手側のダイアフラム26をT字形状凹陥部35に形成し、T字形状凹陥部35にI字形状34を係合させてもよい。
【0072】
図7〜図10は、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第4実施形態を示す概念図である。
【0073】
なお、図7は、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置を示す一部切欠側面図であり、図8は、図7のC−C矢視方向から見て切断した切断面図であり、図9は、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置に適用する案内羽根の概念図であり、図10は、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置に適用するブロック体の概念図である。
【0074】
また、第1実施形態の構成要素と同一構成要素には、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0075】
本実施形態は、図7に示すように、蒸気の旋回流に伴う自励振動を抑制する案内羽根29とブロック体36とをダイアフラム26に設けた突出し部33に、順次、回転部21の周方向に沿って列状に配置させたものである。
【0076】
また、案内羽根29は、図9に示すように、薄板状の平板で作製し、一側面側に凹陥溝32を形成する。
【0077】
また、ブロック体36は、図10に示すように、直方体の形状にし、一側面側に凹陥溝32を形成する。
【0078】
そして、本実施形態は、案内羽根29およびブロック体36を、ダイアフラム26に設けた突出し部33に係合させる際、図8に示すように、まず、分割されたブロック体36を矢印ARの方向に向って突出し部33に係合、挿通させ、次に、案内羽根29を突出し部33に挿通させ、この作業を繰り返し、組み立てている。
【0079】
このように、本実施形態は、案内羽根29およびブロック体36のそれぞれに凹陥溝32を設け、ダイアフラム26に突出し部33を設け、この突出し部33にブロック体36と案内羽根29とのそれぞれの凹陥溝32を順番に交互に繰り返して係合、挿通させる構成にしたので、蒸気の旋回流に伴う自励振動の抑制と相俟って、案内羽根29が侵食を受けても容易に交換することができる。
【0080】
図11は、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第5実施形態を示す概念図である。
【0081】
本実施形態は、直方体として形成するブロック体36を、第3実施形態と同様に、凹陥溝(図示せず)を備え、この凹陥溝をダイアフラムに設けた突出し部33(ともに図示せず)に係合させるとともに、分割されたブロック体36を回転部21の周方向に沿って列状に配置するとき、一方のブロック体36と隣のブロック体36との間にばね37を介装させて薄板状の平板で作製した案内羽根29を配置したものである。
【0082】
また、ブロック体36は、ばね37を装着させるばね挿入溝38を備え、このばね挿入溝38に装着したばね37の弾性力を利用して案内羽根29を支持する構成にしている。
【0083】
なお、ブロック体36を回転部の周方向に沿って列状に配置する際、第3実施形態と同様に、まず、分割されたブロック体36をダイアフラムに設けた突出し部に係合させて挿通した後、次に、ブロック体36のばね挿入溝38にばね37を装着し、さらに分割された別のブロック体36を突出し部33に係合させながら挿通し、案内羽根29に押圧力を与えて支持する。
【0084】
このように、本実施形態は、ブロック体36を回転部の周方向に沿って列状に配置するとき、ブロック体36,36間にばね37を介装させて案内羽根29を備えたので、蒸気の旋回流に伴う自励振動の抑制と相俟って、案内羽根29が侵食を受けても容易に交換することができる。
【0085】
なお、本実施形態は、回転部の周方向に沿って列状に配置したブロック体36と隣のブロック体36との間にばね37を介装させて案内羽根29を備えたが、この例に限らず、例えば、図12および図13に示すように、一側面に凹陥溝32を備えた案内羽根29を薄板状の平板で作製するとともに、案内羽根29の一部分から切り出し、切り出した案内羽根の一部分を支点に開閉できるように板ばね39として構成し、この板ばね39の弾性力を利用してブロック体36,36間に設けた案内羽根29を支持させてもよい。
【0086】
図14および図15は、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第7実施形態を示す概念図である。
【0087】
なお、図14は、本発明に係る流体機械の旋回流防止装置を示す一部切欠側面図であり、図15は、図14のD−D矢視方向から見た平面展開図である。
【0088】
また、第1実施形態の構成要素と同一構成要素には、同一符号を付して重複説明を省略する。
【0089】
本実施形態は、第3実施形態と同様に、蒸気の旋回流に伴う自励振動を抑制する案内羽根29とブロック体36とをダイアフラム26に設けた突出し部33に、順次、回転部21の周方向に沿って列状に配置させるとともに、案内羽根29およびブロック体36を、ダイアフラム26に設けた突出し部33に係合させるとき、図15に示すように、底面40を回転部21の回転方向に対し斜めに交差させる面形状を持つブロック体36を矢印ARの方向に向って突出し部33に係合、挿通させた後、案内羽根29を突出し部33に係合、挿通させて列状に配置したものである。
【0090】
なお、案内羽根29は、第3実施形態と同様に、薄板状の平板で作製し、一側面に凹陥溝を形成する。
【0091】
また、ブロック体36を、第3実施形態と同様に、直方体の形状にし、一側面側に凹陥溝を形成する。
【0092】
このように、本実施形態は、底面40を、回転部21の回転方向に対し斜めに交差させる面形状を持つブロック体36と案内羽根29とを回転部21の周方向に沿って列状に配置させる構成にしたので、蒸気の旋回流に伴う自励振動のより一層の抑制と相俟って、案内羽根29が侵食を受けても容易に交換することができる。
【0093】
なお、本実施形態は、底面39を、回転部21の回転方向に対し斜めに交差させる面形状を持つブロック体36と案内羽根29とを回転部21の周方向に沿って列状に配置させたが、この例に限らず、例えば、図16および図17に示すように、ブロック体36および案内羽根29のそれぞれを、回転部21の回転方向と反対方向に向って傾斜させて、列状に配置する構成にしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第1実施形態を示す概念図。
【図2】図1のA−A矢視方向から見て切断した切断面図。
【図3】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置において、案内羽根の取付ピッチと流体の旋回流抑制効果との関係を示す案内羽根取付ピッチ線図。
【図4】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第2実施形態を示す概念図。
【図5】図4のB−B矢視方向から見て切断した切断面図。
【図6】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第3実施形態を示す概念図。
【図7】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第4実施形態を示す概念図。
【図8】図7のC−C矢視方向から見て切断した切断面図。
【図9】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置に適用する案内羽根の概念図。
【図10】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置に適用するブロック体の概念図。
【図11】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第5実施形態を示す概念図。
【図12】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第6実施形態を示す概念図。
【図13】図12のX部を抜き出した平面図。
【図14】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第7実施形態を示す概念図。
【図15】図14のD−D矢視方向から見た平面展開図。
【図16】本発明に係る流体機械の旋回流防止装置の第8実施形態を示す概念図。
【図17】図16のE−E矢視方向から見て切断した切断面図。
【図18】従来の蒸気タービンの上半部分を示す縦断面図。
【図19】従来の蒸気タービンにおいて、静止部と回転部との間に設けたラビリンスシールを示す部分図。
【図20】従来の蒸気タービンにおいて、回転部廻りの圧力分布を示す図。
【図21】従来の蒸気タービンにおいて、ラビリンスシール入口部における旋回流成分と不安定力とを表わした不安定化力線図。
【図22】従来の蒸気タービンにおいて、ラビリンスシールに流入する漏洩蒸気の流れ挙動を示す図。
【図23】図22のF−F矢視方向から見て切断した切断面図。
【符号の説明】
【0095】
1 回転部
2 動翼
3 シュラウド
4 ノズル
5a ノズルダイアフラム内輪
5b ノズルダイアフラム外輪
6 ケーシング
7a,7b グランド部
8 ラビリンスフィン
9 絞り部
10 チャンバ
11 ラビリンスシール
12a 回転軸中心
12b 実際の振れ廻り中心
13 圧力分布
14 案内羽根
20 静止部
21 回転部
22 ノズル
23 動翼
24 段落
25 シュラウド
26 ダイアフラム
27 ラビリンスシール
28 ラビリンスフィン
29 案内羽根
30 止め部材
31 締結具
32 凹陥溝
33 突出し部
34 I字形状
35 T字形状凹陥部
36 ブロック体
37 ばね
38 ばね挿入溝
39 板ばね
40 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部に案内羽根を設けるとともに、前記案内羽根を前記ダイアフラムに着脱自在に取り付ける構成にしたことを特徴とする流体機械の旋回流防止装置。
【請求項2】
案内羽根は、回転部の周方向に沿って配置する止め部材に植設するとともに、前記止め部材をダイアフラムに対し、締結具で接続させる構成にしたことを特徴とする請求項1記載の流体機械の旋回流防止装置。
【請求項3】
止め部材に植設された案内羽根は、取付ピッチを10°以下の範囲に設定したことを特徴とする請求項2記載の流体機械の旋回流防止装置。
【請求項4】
止め部材は、ダイアフラムに設けた突出し部に係合させる凹陥溝を備えたことを特徴とする請求項2または3記載の流体機械の旋回流防止装置。
【請求項5】
回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部に止め部材に植設する案内羽根を設けるとともに、前記止め部材をI字形状に形成し、このI字形状を係合させる前記ダイアフラムにT字形状凹陥部を備えたことを特徴とする流体機械の旋回流防止装置。
【請求項6】
回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部にブロック体を設け、このブロック体を前記回転体の周方向に沿って配置し、周方向に沿って配置した前記ブロック体と隣りのブロック体との間に案内羽根を介装させる構成にしたことを特徴とする流体機械の旋回流防止装置。
【請求項7】
ブロック体は、直方体に形成し、一側面側にダイアフラムに設けた突出し部に係合させる凹陥溝を備えたことを特徴とする請求項6記載の流体機械の旋回流防止装置。
【請求項8】
案内羽根は、薄板の平板で作製するとともに、ダイアフラムに設けた突出し部に係合させる凹陥溝を備えたことを特徴とする請求項6記載の流体機械の旋回流防止装置。
【請求項9】
回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部にブロック体を設け、このブロック体を前記回転部の周方向に沿って配置し、周方向に沿って配置した前記ブロック体と隣のブロック体との間にばねで支持された案内羽根を介装させる構成にしたことを特徴とする流体機械の旋回流防止装置。
【請求項10】
ブロック体は、ばね挿入溝を備えたことを特徴とする請求項9記載の流体機械の旋回流防止装置。
【請求項11】
回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部にブロック体を設け、このブロック体を前記回転部の周方向に沿って配置し、周方向に沿って配置した前記ブロック体と隣のブロック体との間に板ばねで支持された案内羽根を介装させる構成にしたことを特徴とする流体機械の旋回流防止装置。
【請求項12】
板ばねは、案内羽根の一部分から切り出し、切り出した前記案内羽根の一部分を支点に開閉できるように構成したことを特徴する請求項11記載の流体機械の旋回流防止装置。
【請求項13】
回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部にブロック体を設け、このブロック体と隣のブロック体との間に案内羽根を介装させ、前記ブロック体の底面を前記回転部の回転方向に対し斜めに交差させる面形状に形成したことを特徴とする流体機械の旋回流防止装置。
【請求項14】
回転部と静止部を備えるとともに、前記回転部の先端を囲い、かつ前記静止部を支持するダイアフラムの前記回転部の先端との間にラビリンスシールを備えた流体機械において、前記ラビリンスシールに臨む入口側であって、前記静止部を支持する前記ダイアフラムのコーナ部にブロック体を設け、このブロック体と隣のブロック体との間に案内羽根を介装させ、前記ブロック体および前記案内羽根を前記回転部の回転方向と反対方向に向って傾斜させる構成にしたことを特徴とする流体機械の旋回流防止装置。
【請求項15】
請求項1〜14記載のものを蒸気タービンに適用することを特徴とする流体機械の旋回流防止装置。
【請求項16】
回転部は、タービンロータに植設する動翼であることを特徴とする請求項1,2,5,6,9,11,13,14のうち、少なくともいずれか1項記載の流体機械の旋回流防止装置。
【請求項17】
静止部は、両端をダイアフラムによって支持させたノズルであることを特徴とする請求項1,2,5,6,9,11,13,14のうち、少なくともいずれか1項記載の流体機械の旋回流防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2007−120476(P2007−120476A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317484(P2005−317484)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】