説明

流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータ、情報処理装置

【課題】潤滑流体に含まれる気泡を効率よく外気へと排出しながら、ラジアル軸受部の軸方向長さを十分に確保することが可能な流体軸受装置を提供する。
【解決手段】流体軸受装置20では、スリーブ11に、潤滑流体26を貯留するための略環状の第1流体溜まり部27が内包されている。第1流体溜まり部27は、スリーブ11内において連通孔11bと一部が連通した状態で交差するとともに、換気路28を介して外気と連通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスク駆動装置等に搭載される流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータ、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスク駆動装置(以下、HDD)等のディスク駆動装置に搭載されるスピンドルモータは、非接触回転によって低NRRO(Non-Repetitive Run Out)や低騒音が実現できる動圧流体軸受(以下、流体軸受装置と示す。)が用いられている。
【0003】
このような流体軸受装置では、流体軸受装置の角度剛性を向上させるために、軸とスリーブとの間の隙間に形成されるラジアル軸受部の長さをできるだけ長く確保した構成を採用することが望ましい。一方で、スピンドルモータの薄型化の要求も存在することから、ラジアル軸受部の長さを十分に確保しながら、流体軸受装置の厚みが増大しないような構成が必要とされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、スリーブの開放端側の端面を覆うようにカバー部材を取り付け、このカバー部材の内周面とシャフトの外周面との間の隙間にテーパシール部を設けた構成が開示されている。この構成では、シャフトの外周面とスリーブの内周面との間の隙間に形成されるラジアル軸受部に近接した位置に配置されたテーパシール部から、流体軸受装置内を循環する潤滑流体に含まれる気泡を、効果的に外気へと排出することができる。
【特許文献1】特開2006−161988号公報(平成18年6月22日公開)
【特許文献2】特開2006−162029号公報(平成18年6月22日公開)
【特許文献3】特開2006−17153号公報(平成18年1月19日公開)
【特許文献4】特開2001−271838号公報(平成13年10月5日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の流体軸受装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された流体軸受装置では、シャフトの外周面とスリーブの内周面との間に形成されるラジアル軸受部に対して、軸方向に並ぶようにしてテーパシール部が配置されている。このため、潤滑流体に含まれる気泡を効率よく外気へ排出することができるものの、シャフトにおけるスリーブの開放端側の外周面の一部がテーパシール部によって占められるため、例えば、流体軸受装置の小型薄型化に対応した構成では、ラジアル軸受部の軸方向長さを十分に確保できないおそれがある。
【0006】
本発明の課題は、潤滑流体に含まれる気泡を効率よく外気へと排出しながら、ラジアル軸受部等の動圧軸受部の軸方向長さを十分に確保することが可能な流体軸受装置およびこれを備えたスピンドルモータ、情報処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る流体軸受装置は、軸と、略円筒状のスリーブと、連通路と、潤滑流体と、動圧軸受部と、略環状の第1潤滑流体溜まり部と、換気路と、を備えている。スリーブは、軸が相対回転可能な状態で装填される軸受孔を有する。連通路は、スリーブの一部に軸方向に沿って形成されており、スリーブにおける軸受孔の開放端側と閉塞端側とを連通させる。潤滑流体は、軸とスリーブとの間の微小隙間を含む空間に貯留される。動圧軸受部は、軸の外周面とスリーブの内周面との間に配置されている。第1潤滑流体溜まり部は、スリーブに内包されており、連通路に対して交差するように形成され、連通路と一部が連通するとともに、潤滑流体を貯留する。換気路は、第1潤滑流体溜まり部と外気とを連通させる。
【0008】
ここでは、軸とスリーブとの対向面間にラジアル軸受部等の動圧軸受部を含む流体軸受装置において、スリーブの一部に軸方向に沿って形成された連通路と、略円筒状のスリーブに内包される略環状の第1潤滑流体溜まり部とが設けられている。そして、この連通路と第1潤滑流体溜まり部とは、一部が連通した状態で交差するように配置されている。さらに、第1潤滑流体溜まり部は、例えば、スリーブの一部等に形成された換気路を介して外気と直接あるいは間接的に連通する。
【0009】
ここで、上記第1潤滑流体溜まり部としては、例えば、複数の部品を組み合わせて構成されるスリーブの内部の空洞部分等が考えられる。また、上記換気路は、スリーブに内包される第1潤滑流体溜まり部を、直接あるいは間接的に外気と連通させるように、例えば、スリーブの外周面等に形成されていればよい。さらに、上記動圧軸受部は、例えば、ラジアル軸受部やコニカル軸受部等であって、軸とスリーブとの対向面における少なくとも一方に動圧発生溝が形成されていればよい。なお、上記第1潤滑流体溜まり部が連通路に対して交差するとは、例えば、略環状の第1潤滑流体溜まり部が一部連通した状態で連通路に交差する平面に沿うように形成されていることをいう。
【0010】
これにより、スリーブ内に第1潤滑流体溜まり部を配置したことにより、ラジアル軸受部等の動圧軸受部と第1潤滑流体溜まり部とが軸方向に並ぶことがない。よって、流体軸受装置が小型薄型化された場合でも、動圧軸受部の長さを最大限確保して、流体軸受装置の角度剛性を向上させることができる。
【0011】
また、循環経路の一部を構成する連通路が、第1潤滑流体溜まり部と一部で連通しているため、循環中の潤滑流体に含まれる気泡を第1潤滑流体溜まり部へと送り込むことができる。よって、第1潤滑流体溜まり部に流入した気泡は、直接あるいは間接的に第1潤滑流体溜まり部を外気と連通させる換気路から外気へと排出されるため、潤滑流体に混入した気泡を効率よく外気へと排出することができる。この結果、軸受の角度剛性(外乱による軸の傾きに対する復元力の大きさ)を向上させて振れ回り(回転するコマによる歳差運動のような動作をいう。)を防止し、かつ潤滑流体内の気泡を効果的に排出することが可能な流体軸受装置を得ることができる。
【0012】
第2の発明に係る流体軸受装置は、第1の発明に係る流体軸受装置であって、第1潤滑流体溜まり部は、連通路に対して交差する位置において、径方向に沿った断面積が最小となる最小隙間部を有する。
【0013】
ここでは、スリーブに内包されるように形成された第1潤滑流体溜まり部が、連通路付近において径方向に沿った断面積(隙間)が最小となるように形成されている。
【0014】
これにより、流体軸受装置における潤滑流体の循環経路の一部を構成する連通路内を潤滑流体が流れた場合でも、潤滑流体の表面張力によって連通路側へ引き込む方向へ力が働くため、連通路から第1潤滑流体溜まり部側へ必要以上の潤滑流体が流出していくことを防止することができる。この結果、第1潤滑流体溜まり部から必要な分だけの潤滑流体を連通路へと供給しつつ、潤滑流体を円滑に循環させることができる。
【0015】
第3の発明に係る流体軸受装置は、第1または第2の発明に係る流体軸受装置であって、第1潤滑流体溜まり部は、換気路付近において、径方向に沿った断面積が最大となる最大隙間部を有する。
【0016】
ここでは、スリーブに内包されるように形成された第1潤滑流体溜まり部が、換気路付近において径方向に沿った断面積(隙間)が最大となるように形成されている。
【0017】
これにより、第1潤滑流体溜まり部が換気路を介して外気と連通している構成であっても、第1潤滑流体溜まり部内に貯留された潤滑流体には、隙間が小さい連通路側へ引き込む方向へ力が働く。このため、第1潤滑流体溜まり部に貯留された潤滑流体が換気路から流出していくことを防止することができる。この結果、第1潤滑流体溜まり部内に貯留された潤滑流体を確実に保持して、換気路からの漏れ出しを防止して耐衝撃性に優れた流体軸受装置を得ることができる。
【0018】
第4の発明に係る流体軸受装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、第1潤滑流体溜まり部は、周方向において、換気路側から連通路側に向かって、径方向に沿った断面積が小さくなっていくように形成されている。
【0019】
ここでは、スリーブに内包されるように形成された第1潤滑流体溜まり部が、換気路側から連通路側に向かって徐々に隙間が小さくなるように形成されている。
【0020】
ここで、上記第1潤滑流体溜まり部の径方向に沿った断面積が小さくなる形態としては、例えば、平面視における隙間の大きさを周方向において変化させる形態であってもよいし、軸方向高さを周方向において変化させる形態であってもよい。
【0021】
これにより、換気路からの潤滑流体の漏れ出しを防止しつつ、連通路と交差する部分において連通路内を循環する潤滑流体が必要以上に第1潤滑流体溜まり部側へ流出してしまうことも回避することができる。
【0022】
第5の発明に係る流体軸受装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、第1潤滑流体溜まり部は、連通路に対して略垂直に交差する。
【0023】
これにより、例えば、複数のスリーブ部材を組み合わせて第1潤滑流体溜まり部に対して略直交する連通路を形成する際に、スリーブ部材に対して連通路を形成するための溝等を容易に加工することができる。よって、連通路用の溝加工の難易度を低下させて、効率よく連通路を含むスリーブを形成することができる。
【0024】
第6の発明に係る流体軸受装置は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、軸に対して固定され軸とともに回転するハブと、スリーブにおける開放端側の端面とハブとの対向面の間に形成されたスラスト軸受部と、をさらに備えている。
【0025】
ここでは、軸回転型の流体軸受装置において、回転側部材であるハブと固定側部材であるスリーブとの対向面間に、スラスト軸受部を配置している。
【0026】
ここで、スラスト軸受部を構成するスラスト動圧発生溝は、ハブ側に形成されていてもよいし、スリーブ側に形成されていてもよい。
【0027】
これにより、例えば、軸の一端に固定されたスラストフランジ等とスラスト板との間にスラスト軸受部を設けた構成と比較して、流体軸受装置の力点重心に近いスリーブの開放端側寄りにスラスト軸受部を配置することができる。よって、スラスト軸受部において動圧を発生させて、従来よりも効果的に振れ回りを防止することができる。
【0028】
第7の発明に係る流体軸受装置は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、軸に対して固定され軸とともに回転するハブと、スリーブにおける開放端側の端面とハブとの対向面の間に形成される第2潤滑流体溜まり部と、をさらに備えている。
【0029】
ここでは、軸回転型の流体軸受装置において、回転側部材であるハブと固定側部材であるスリーブとの対向面の間に、第2潤滑流体溜まり部を配置している。
【0030】
これにより、スリーブに内包される位置に配置された第1潤滑流体溜まり部に加えて、スリーブとハブとの間の隙間に第2潤滑流体溜まり部を配置することで、軸受部に対して十分な量の潤滑流体を供給することができる。さらに、装置内に2つ目の潤滑流体溜まり部を設けることで、第2潤滑流体溜まり部において潤滑流体溜まり部の液量の調整を実施することができる。
【0031】
第8の発明に係る流体軸受装置は、第6または第7の発明に係る流体軸受装置であって、ハブは、スリーブの外周側に近接する位置において、軸方向に向かって突出した垂下部を有している。垂下部とスリーブの外周面との間の隙間において潤滑流体を外気と連通させた状態で保持するテーパシール部をさらに備えている。
【0032】
ここでは、スリーブの下方端側の端面とハブとの対向面の間の隙間に、スラスト軸受部あるいは第2潤滑流体溜まり部が形成される流体軸受装置において、ハブの垂下部とスリーブの外周面との間の隙間に外気と連通した状態で潤滑流体を保持するテーパシール部を設けている。
【0033】
これにより、スラスト軸受部や第2潤滑流体溜まり部において潤滑流体を保持しつつ、潤滑流体に含まれる気泡を外気に対して効果的に排出することができる。さらに、テーパシール部において潤滑流体の界面の位置を調整することで、シール性を確保しつつ、装置内を循環する潤滑流体の液量の調整を行うことができる。
【0034】
第9の発明に係る流体軸受装置は、第8の発明に係る流体軸受装置であって、テーパシール部において保持される潤滑流体に働く表面張力と、第1潤滑流体溜まり部内に保持される潤滑流体に働く表面張力とが、釣り合っている。
【0035】
ここでは、上述した第1潤滑流体溜まり部における潤滑流体のシール部分と、ハブの垂下部とスリーブの外周面との間の隙間において潤滑流体を保持するテーパシール部との間において、液面バランスが取れた状態になるように、互いの隙間の大きさ等が設定されている。
【0036】
これにより、流体軸受装置内において2箇所の界面を設けた場合でも、それぞれの隙間において潤滑流体に働く表面張力が釣り合うことで、気泡を外気へと効果的に排出しつつ、安定した状態で潤滑流体を装置内に保持することができる。
【0037】
第10の発明に係る流体軸受装置は、第1から第9の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、動圧軸受部は、潤滑流体の循環経路の一部を介して、第1潤滑流体溜まり部に対して連通している。
【0038】
ここでは、ラジアル軸受部等の動圧軸受部と第1潤滑流体溜まり部とが、直接連通しないように構成されている。
【0039】
これにより、第1潤滑流体溜まり部において貯留された潤滑流体に含まれる気泡が、ラジアル軸受部等におけるアンバランスの影響を受けて、動作中に移動してしまうことを回避することができる。よって、気泡の移動による悪影響を低減して、より安定した状態で装置を動作させることができる。
【0040】
第11の発明に係る流体軸受装置は、第1から第10の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、スリーブは、金属製の部品である。
【0041】
ここでは、スリーブを形成する素材として、例えば、SUSや焼結金属、真鍮、鍛造品、プレス加工品等の金属製の部品を用いている。
【0042】
これにより、スリーブに対してスラスト動圧発生溝やラジアル動圧発生溝が形成される場合でも、精度よく、かつ耐熱性、耐油性等に優れたスリーブを構成することができる。
【0043】
第12の発明に係る流体軸受装置は、第1から第11の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、スリーブは、3つの部品を組み合わせて構成されている。
【0044】
ここでは、略円筒状のスリーブが、3つの部品を組み合わせて構成されている。
ここで、3つの部品としては、各部品を組み合わせた際に、スリーブ内に内包されるように第1潤滑流体溜まり部が形成されるとともに、スリーブの一部に連通路が形成される略円筒状の部品等を用いることができる。
【0045】
これにより、複雑な加工等を必要とすることなく、スリーブにおける所定の位置に連通路や第1潤滑流体溜まり部を形成することができる。さらに、2つの部品を組み合わせて構成されるスリーブと比較して、より複雑な加工を少なくし、かつ材料ロスも最小限とすることができる。
【0046】
第13の発明に係る流体軸受装置は、第1から第11の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、スリーブは、2つの部品を組み合わせて構成されている。
【0047】
ここでは、略円筒状のスリーブが、2つの部品を組み合わせて構成されている。
ここで、2つの部品としては、各部品を組み合わせた際に、スリーブ内に内包されるように第1潤滑流体溜まり部が形成されるとともに、スリーブの一部に連通路が形成される略円筒状の部品等を用いることができる。
【0048】
これにより、複雑な加工等を必要とすることなく、部品点数も最小限とし、スリーブにおける所定の位置に連通路や第1潤滑流体溜まり部を形成することができる。
【0049】
第14の発明に係る流体軸受装置は、第12または第13の発明に係る流体軸受装置であって、スリーブは、径方向に沿った断面が略L字型の略円筒状の部品を組み合わせて構成されている。
【0050】
ここでは、複数の部品を組み合わせて構成されるスリーブにおいて、径方向に沿った断面が略L字型の略円筒状部品を組み合わせている。
【0051】
これにより、スリーブ内に内包される第1潤滑流体溜まり部となる空間を容易に形成することができる。また、略L字型断面同士が一部で当接し合うことで、流体軸受装置に衝撃や振動等が付与された場合でも、互いの部品が軸方向にずれてしまうことを回避することができる。
【0052】
第15の発明に係る流体軸受装置は、第12から第14の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、スリーブは、上記部品のうちスラスト軸受部を含む部品が樹脂によって形成されており、スラスト動圧発生溝の部分は金属部品がインサート成形されている。
【0053】
ここでは、複数の部品を組み合わせて構成されるスリーブにおいて、複数の部品の一部を樹脂によって成形するとともに、スラスト動圧発生溝の部分を含む樹脂製の部品については溝部分を金属製の部品をインサート成形している。
【0054】
ここで、上記部品を成形する樹脂としては、例えば、ポリエーテルイミドやポリエーテルスルホン等を用いることができる。
【0055】
これにより、樹脂によって一部の部品を形成した場合でも、動圧発生溝部分には金属をインサートすることで、安定した状態で動圧を発生させることができる。また、例えば、樹脂成形部分に透光性(例えば、透明、半透明等)のある樹脂を用いることで、第1潤滑流体溜まり部内に注入した潤滑流体の界面の位置等を容易に確認することが可能になる。よって、流体軸受装置に対する注油作業時における注油量の制御を容易に実施することができる。
【0056】
第16の発明に係る流体軸受装置は、第1から第15の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、換気路は、第1潤滑流体溜まり部と連通路とが交差する部分に対して周方向において最も遠い位置に形成される。
【0057】
ここでは、第1潤滑流体溜まり部と外気とを連通させる換気路を、周方向において連通路から最も離れた位置に配置している。
【0058】
これにより、流体軸受装置内を循環する潤滑流体が連通路を通過する際に、第1潤滑流体溜まり部へと流れ込んだ場合でも、外気と連通する換気路が連通路から最も離れた位置に配置されているため、換気路からの漏れ出しを効果的に回避することができる。また、第1潤滑流体溜まり部における隙間の大きさを変化させることにより、潤滑流体の表面張力を利用して、さらに効果的に換気路からの潤滑流体の漏れ出しを防止して、耐衝撃性に優れた流体軸受装置を得ることができる。
【0059】
第17の発明に係る流体軸受装置は、第1から第16の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置であって、換気路は、スリーブの外周側面に形成されている。
【0060】
ここでは、上述した第1潤滑流体溜まり部と外気とを連通させる換気路を、スリーブの外周側面に形成している。
【0061】
これにより、第1潤滑流体溜まり部に貯留された潤滑流体は、スリーブの外周側面において呼吸しながら、効果的に混入した気泡を外気へと排出することができる。
【0062】
第18の発明に係るスピンドルモータは、第1から第17の発明のいずれか1つに係る流体軸受装置と、流体軸受装置の回転側部材に取り付けられた回転磁石と、回転磁石に対して回転力を付与するステータコイルと、を備えている。
【0063】
ここでは、上述した流体軸受装置をスピンドルモータに対して搭載している。
これにより、薄型化された流体軸受装置であってもラジアル軸受部等の動圧軸受部の軸方向長さを十分に確保して軸受の角度剛性を向上させることができるとともに、装置内を循環する潤滑流体内に含まれる気泡を効果的に外気へと排出することが可能なスピンドルモータを提供することができる。
【0064】
第19の発明に係る情報処理装置は、第18の発明に係るスピンドルモータを備えている。
【0065】
ここでは、上述したスピンドルモータを情報処理装置に対して搭載している。
ここで、上記情報処理装置には、記録再生装置としてのHDD(Hard Disc Drive)光ディスク装置、光磁気記録再生装置、各種再生専用装置等や、CPUに搭載される冷却用ファン等が含まれる。
【0066】
これにより、薄型化された流体軸受装置であってもラジアル軸受部等の動圧軸受部の軸方向長さを十分に確保して軸受の角度剛性を向上させることができるとともに、装置内を循環する潤滑流体内に含まれる気泡を効果的に外気へと排出することが可能な情報処理装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0067】
本発明に係る流体軸受装置によれば、薄型化された流体軸受装置であってもラジアル軸受部等の動圧軸受部の軸方向長さを十分に確保して軸受の角度剛性を向上させることができるとともに、装置内を循環する潤滑流体内に含まれる気泡を効果的に外気へと排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
本発明の一実施形態に係る流体軸受装置20を搭載したスピンドルモータ10について、図1〜図5を用いて説明すれば以下の通りである。
【0069】
[スピンドルモータ10全体の構成]
本実施形態に係るスピンドルモータ10は、図1に示すように、ロータマグネット16、複数のコイルが巻回されたステータ17、ベース18および流体軸受装置20を備えている。
【0070】
ロータマグネット16は、流体軸受装置20に含まれるロータハブ(ハブ)15の内周面側において、円周方向に多極着磁されて取り付けられている。そして、ロータマグネット16は、対向配置されたステータ17のコイルに順次通電させてステータ17との間に回転磁界を発生させることで、シャフト12を中心としてロータハブ15を回転させる。
【0071】
ベース18は、ステータ17やロータマグネット16等のモータ部品が配置されている。そして、その略中心部分には、スリーブ11を固着するための中空円筒部18aおよびその中心に開けられた穴18bが設けられている。そのベース18の穴18bを形成する部分には、コイルが巻線されたコアからなるステータ17が接着等によって固定されている。
【0072】
流体軸受装置20は、シャフト12を中心として磁気記録ディスクを回転させるために、磁気記録ディスクが搭載されたロータハブ15を含む回転側の部材を固定側の部材(スリーブ11等)に対して互いに非接触の状態でスムーズに回転させる。なお、流体軸受装置20の構成については、後段にて詳述する。
【0073】
[流体軸受装置20の構成]
流体軸受装置20は、図1および図2に示すように、スリーブ11、シャフト12、スラストフランジ13、スラスト板14、ロータハブ15、テーパシール部21、および第1流体溜まり部(第1潤滑流体溜まり部)27、第2流体溜まり部(第2潤滑流体溜まり部)22等を有している。
【0074】
(スリーブ11)
スリーブ11は、軸受孔11aを有し、鉄、鉄合金、銅、銅合金等の金属材料等によって形成される3つの部材(第1〜第3スリーブ部材31〜33)によって構成され、ベース18に対して固定されている。また、スリーブ11は、図2に示すように、軸方向に沿って形成された連通路11bと、シャフト12の外周面と対向する軸受孔11aの内周面側に形成されたラジアル動圧発生溝(ラジアル軸受部(動圧軸受部))11cと、ロータハブ15との対向面に形成されたスラスト動圧発生溝33aと、を有している。さらに、スリーブ11は、図2および図3に示すように、略円環状に形成される第1流体溜まり部(第1潤滑流体溜まり部)27を内包している。また、スリーブ11は、この第1流体溜まり部27を外気と連通させる換気路28を外周面に有している。
【0075】
第1スリーブ部材31は、スリーブ11におけるシャフト12の外周面と対向する内側に配置されるインナースリーブとして用いられている。第1スリーブ部材31は、全体として略円環状の部材であって、径方向に沿った断面が略L字型の形状を有している。また、第1スリーブ部材31は、図4に示すように、シャフト12の外周面と対向する面に、ラジアル動圧発生溝11cを有している。
【0076】
第2スリーブ部材32は、第1スリーブ部材31の径方向外側に配置されるアウタースリーブとして用いられている。第2スリーブ部材32は、第1スリーブ部材31と同様に、全体として略円環状で、径方向に沿った断面が略L字型の形状を有している。そして、第2スリーブ部材32は、第1スリーブ部材31と組み合わされた状態において、第1スリーブ部材31との間に形成される隙間に、連通路11bや第1流体溜まり部27等を形成する。また、第2スリーブ部材32は、略L字型の断面を互いに当接させるようにして第1スリーブ部材31と組み合わせられる。これにより、例えば、流体軸受装置20に対して軸方向に大きな衝撃や振動が付与され、回転側部材が固定側部材に対して軸方向に急激に移動しようとした場合でも、シャフト12のスラストフランジ13部分によって第1スリーブ部材31が第2スリーブ部材32に対して軸方向にずれてしまうことを回避することができる。
【0077】
第3スリーブ部材33は、第1スリーブ部材31の外周側、第2スリーブ部材32の開放端側にそれぞれ当接するように配置される略円環状の部材である。第3スリーブ部材33は、図2および図5に示すように、ロータハブ15と対向する面における径方向外側の位置に、スラスト動圧発生溝33aを有している。また、第3スリーブ部材33は、第2スリーブ部材32との間の隙間に、後述する第1流体溜まり部27を外気と連通させる換気路28を形成する。さらに、第3スリーブ部材33は、対向配置されたロータハブ15との間の隙間に、後述する第2流体溜まり部22を形成する。
【0078】
連通路11bは、スリーブ11を軸方向に貫通するように形成された貫通穴であって、上述した第1スリーブ部材31と第2スリーブ部材32との間の隙間に形成される。連通路11bは、非対称なラジアル動圧発生溝11c等によって生成される潤滑流体26の循環力によって、軸受部を含む隙間内において潤滑流体26を循環させる。また、連通路11bは、第1〜第3連通路11ba,11bb,11bcによって構成されている。
【0079】
第1連通路11baは、縦溝が形成された第2スリーブ部材32の内周面と第1スリーブ部材31の外周面とを組み合わせた際に形成される穴部分であって、スリーブ11の閉塞端側から軸方向に沿って配置されている。第2連通路11bbは、縦溝が形成された第2スリーブ部材32および第3スリーブ部材33の内周面と第1スリーブ部材31の外周面とを組み合わせた際に形成される穴部分であって、スリーブ11の開放端側から軸方向に沿って配置されている。第3連通路11bcは、横溝が形成された第2スリーブ部材32の端面と第1スリーブ部材31の端面とを組み合わせた際に形成される穴部分であって、径方向に沿って配置されている。なお、連通路11bの替わりとして、スリーブ11に穴開け加工することによって連通孔を形成してもよい。
【0080】
ラジアル動圧発生溝11cは、図4に示すように、ヘリングボーン形状の動圧発生溝であって、回転側であるシャフト12が回転することにより動圧を発生させる。また、ラジアル動圧発生溝11cは、図4に示すように、軸方向において非対称のヘリングボーン形状となっている(図4において、a<bまたはc<d)。このため、スリーブ11とシャフト12との間の隙間(ラジアル軸受部)において所望の方向へ潤滑流体26の流れが形成される(図4の場合には、図2においてラジアル軸受部内においても上から下向きに循環する流れが形成される)。これにより、流体軸受装置20内において効率よく潤滑流体26を循環させて、潤滑流体26内に混入した気泡を効果的に外部空間へと排出することができる。
【0081】
スラスト動圧発生溝33aは、上述した第3スリーブ部材33におけるロータハブ15との対向面(上面)に円環状に形成されている。また、スラスト動圧発生溝33aは、第3スリーブ33の上面における径方向外側寄りに形成されている。これにより、本実施形態の流体軸受装置20では、スラストフランジ13とスラスト板14との対向面にスラスト動圧発生溝を形成した場合と比較して、さらに径方向外側の位置において動圧を発生させてシャフト12の傾きを補正して振れ回りを防止することができる。
【0082】
ラジアル動圧発生溝(ラジアル軸受部)11c(図2参照)およびスラスト動圧発生溝(スラスト軸受部)33aを含むシャフト12とスリーブ11の軸受孔11aとの間、およびロータハブ15とスリーブ11との間の隙間には、潤滑流体26が充填されている。この潤滑流体26は、シャフト12を含む回転側部材が回転すると、動圧発生溝内に流入してポンピング圧力を発生させる。
【0083】
なお、ラジアル動圧発生溝11cは、図4に示すスリーブ11側ではなく、シャフト12の外周面側に形成されていてもよい。また、ラジアル動圧発生溝11cとしては、ヘリングボーン形状ではなく、2つのスパイラル形状(略ハの字形状)であってもよい。さらに、ラジアル軸受部とスラスト軸受部の双方の特性を備える円錐軸受でもよい。
【0084】
(シャフト12)
シャフト12は、金属材料で構成された、直径が約2.0〜4.0mmの円筒状の外周面を有する部材(例えば、円柱状部材、円筒状部材)であって、軸受孔11a内に回転可能な状態で挿入されている。また、シャフト12の下端部には、中心部分に円形の開口を有する円板状のスラストフランジ13がカシメ、圧入、溶接等によって接合される。なお、スラストフランジ13は、シャフト12と一体成形されていてもよい。シャフト12は回転中心の軸として用いられることから、例えば、SUS等の比較的硬度が高いものが使われており、切削および研磨等によって加工される。
【0085】
(スラストフランジ13)
スラストフランジ13は、略円板状の部材であって、上述したように、シャフト12に対して固定、または一体的に設けられている。そして、スラストフランジ13は、スリーブ11とスラスト板14とで囲まれた空間に収納されている。
【0086】
スラストフランジ13の上面周辺部は、スリーブ11の下方に形成された段部(第1スリーブ部材31の底面部)に対向している。
【0087】
なお、スラスト軸受部がロータハブ15とスリーブ11との対向面間の隙間に配置されている場合には、スラストフランジ13は抜け止め機能だけを有していればよい。よって、この場合にはスラスト動圧発生溝を形成する必要がないため、比較的薄い円板状の部材として構成することができる。また、この場合には、抜け止めが別途設けられていれば、スラストフランジ13はなくてもよい(図10の抜け止め部材315a参照)。
【0088】
(スラスト板14)
スラスト板14は、流体軸受装置20の下部開口を覆うように取り付けられた略円板状の部材である。
【0089】
なお、スラスト軸受部がロータハブ15とスリーブ11との対向面間の隙間に配置されている場合には、スラスト動圧発生溝を形成する必要がないため、スラスト板14を比較的薄く形成することができる。
【0090】
(ロータハブ15)
ロータハブ15は、略カップ状の形状であって、略中心部分に貫通孔を有している。この貫通孔には、シャフト12の上端部が圧入接着工法等によって固着されている。ロータハブ15には、スピンドルモータ10のロータマグネット16が取り付けられており、ステータ17に対して半径方向において対向している。また、ロータハブ15には、磁気記録ディスク等の記録メディアが固定され、全体としてハードディスク装置のような磁気記録再生装置を構成する。さらに、ロータハブ15は、スリーブ11と対向する側の面から軸方向に沿って突出した垂下部15aを有している。
【0091】
垂下部15aは、スリーブ11(第3スリーブ部材33)の外周側に近接するように、軸方向に沿って突出している。そして、垂下部15aは、第3スリーブ部材33の外周面との間の隙間において、テーパシール部21を形成する。
【0092】
テーパシール部21は、図2に示すように、垂下部15aとの間の隙間が軸方向下向きに広がるように傾斜した第3スリーブ部材33の外周面とによって形成されている。テーパシール部21は、軸方向上向きに隙間が狭くなっていくため、第2流体溜まり部22に貯留された潤滑流体26を表面張力の作用によって保持することができる。
【0093】
(第1流体溜まり部27)
第1流体溜まり部27は、図2、図3および図5に示すように、第1スリーブ部材31と第2スリーブ部材32とを組み合わせた状態で、スリーブ11に内包されるように形成された略円環状の隙間である。また、第1流体溜まり部27は、軸方向に沿って形成された連通路11bに対して一部が略垂直に交差している。さらに、第1流体溜まり部27は、図2および図3に示すように、周方向に沿って径方向における隙間の大きさが変化するように形成されている。
【0094】
具体的には、図3に示すように、第1流体溜まり部27を外気と連通させる換気路28に近接する位置から周方向に沿って離間していくほど、径方向における隙間(断面積)が小さくなるシール構造(シール部)30が形成されている。つまり、第1流体溜まり部27は、換気路28から最も離間した位置に最小隙間部27a、換気路28に最も近接する位置に最大隙間部27bを有している。
【0095】
最小隙間部27aは、径方向隙間が最小隙間dとなっている。一方、最大隙間部27bは、径方向隙間が最大隙間Dとなっており、両者の関係はD>dである。
【0096】
すなわち、第1流体溜まり部27は、図3に示すように、周方向において径方向隙間の大きさが、換気路28から徐々に小さくなっていくシール構造30を有している。このため、第1流体溜まり部27に貯留された潤滑流体26には、最も隙間が大きい換気路28側から最も隙間が小さい連通路11b側に向かって表面張力の作用によって毛管力(吸引力)が働く。よって、本実施形態では、第1流体溜まり部27内において、図3に示すように、気液境界面26aを境として、潤滑流体26を安定的に保持することができる。この結果、第1流体溜まり部27が換気路28を介して外気と連通している構成であっても、貯留された潤滑流体26が換気路28から外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【0097】
また、非対称なラジアル動圧発生溝11cによって生成される潤滑流体26の循環力によって連通路11b内において、潤滑流体26が循環している。そして、第1流体溜まり部27と連通路11bとは、最小隙間部27aの位置において一部が連通した状態で交差している。このとき、連通路11b内を循環する潤滑流体26は、第1流体溜まり部27内における径方向隙間の大きさの変化による潤滑流体26への吸引力によって、連通路11bから第1流体溜まり部27へと必要以上に流出してしまうことを抑制される。
【0098】
連通路11bは、第1流体溜まり部27における連通路11bと交差する部分における断面積の大きさに対して、断面積が小さくなるように形成される。これにより、連通路11b内を循環する潤滑流体26に含まれる気泡には、より隙間が大きい側へと移動しようとする力が働くため、効果的に循環経路内から第1流体溜まり部27へと気泡を送り込むことができる。
【0099】
なお、連通路11bと第1流体溜まり部27との交差部分における隙間の大小関係については、連通路11bの隙間の大きさが、少なくとも第1流体溜まり部27における最大隙間部27bの隙間の大きさよりも小さければよい。また、連通路11bと第1流体溜まり部27との交差部分における隙間の大小関係については、径方向隙間、軸方向隙間の大小関係だけでなく、連通路11bの等価直径と、連通路11bと第1流体溜まり部27との交差部分における等価直径との大きさによって設定されていてもよい。ここで、等価直径とは、その流路が、流動の点から直径いくらの円管の集合と等価であるかを示す代表長さをいう。
【0100】
(第2流体溜まり部22)
第2流体溜まり部22は、図2に示すように、スリーブ11とロータハブ15との対向面間の隙間に形成されている。また、第2流体溜まり部22に貯留された潤滑流体26は、上述した垂下部15aと第3スリーブ部材33との間に形成されたテーパシール部21において外気と連通している。よって、潤滑流体26は、第1流体溜まり部27内の気液境界面26a、および第2流体溜まり部22側のテーパシール部21において、それぞれ外気と連通した状態となり、より効果的に第2流体溜まり部22において潤滑流体26に含まれる気泡を外気へと排出することができる。
【0101】
本実施形態では、スリーブ11に内包される略円環状の第1流体溜まり部27に加えて、ロータハブ15とスリーブ11との対向面間にも第2流体溜まり部22を設けている。
【0102】
これにより、従来の流体軸受装置と比較して、潤滑流体溜まり部の容積を増大させ、より多くの潤滑流体26を装置内に貯留することができる。また、第1・第2流体溜まり部27,22の双方が、外気と連通するように形成されている。よって、装置内を循環する潤滑流体26が各潤滑流体溜まり部に流れ込んだ際には、潤滑流体26内に含まれる気泡を効果的に外気へと排出することができる。
【0103】
さらに、第2流体溜まり部22の開放側にテーパシール部21を設けているため、テーパシール部21において潤滑流体26の液面の位置を調整することで、装置内に貯留される潤滑流体26の液量を調整することができる。
【0104】
また、第2流体溜まり部22側におけるテーパシール部21の隙間の大きさは、第1流体溜まり部27内に貯留された潤滑流体26に働く表面張力と、テーパシール部21付近において潤滑流体26に働く表面張力とが釣り合うような大きさに設定される。これにより、装置内においてバランスよく、潤滑流体26を貯留することができる。
【0105】
<潤滑流体26の循環経路>
本実施形態の流体軸受装置20では、上述した各構成によって、装置内に潤滑流体26の循環経路を形成している。
【0106】
そして、潤滑流体26は、ラジアル動圧発生溝11cが形成されたラジアル軸受部から、第1連通路11ba(第1スリーブ部材31と第2スリーブ部材32間)、第3連通路11bc(第1スリーブ部材31と第2スリーブ部材32間)、第1流体溜まり部27、第2連通路11bb(第1スリーブ部材31と第2スリーブ部材32、第3スリーブ部材33の間)を経由して、第2流体溜まり部22の順に装置内を循環する。
【0107】
[本流体軸受装置20の特徴]
(1)
本実施形態の流体軸受装置20では、図2等に示すように、シャフト12が、スリーブ11の軸受孔11a内に回転可能な状態で装填されており、スリーブ11の一部には軸方向に沿った連通路11bが設けられている。シャフト12やスリーブ11等の間に形成される微小隙間には、潤滑流体26が充填されている。シャフト12の外周面と対向するスリーブ11の内周面には、図4に示すように、ラジアル動圧発生溝11cが形成されている。スリーブ11には、図3に示すように、潤滑流体26を貯留するための略円環状の第1流体溜まり部27が内包されている。第1流体溜まり部27は、スリーブ11内において連通路11bと一部が連通した状態で交差するとともに、換気路28を介して外気と連通する。
【0108】
これにより、スリーブ11に内包される位置に第1流体溜まり部27を配置したことで、軸方向におけるラジアル軸受部(ラジアル動圧発生溝11c)の近傍に第1流体溜まり部27が配置されることを回避することができる。よって、シャフト12の外周面とスリーブ11の内周面との間に形成されるラジアル軸受部を軸方向において最大限確保することができる。よって、流体軸受装置20を薄型化して軸方向における長さを十分に確保できない構成であっても、ラジアル軸受部の軸方向長さを十分に確保して、軸受の角度剛性を向上させ、振れ回りを効果的に防止することができる。
【0109】
また、本実施形態の流体軸受装置20では、スリーブ11内に設けた第1流体溜まり部27を、換気路28を介して外気と連通させている。
【0110】
これにより、スリーブ11に内包される第1流体溜まり部27に貯留された潤滑流体26は、換気路28を介して呼吸することができる。よって、装置内に十分な量の潤滑流体26を貯留しつつ、装置内を循環する際に潤滑流体26内において生じたり混入したりした気泡を効果的に外気へと排出することができる。
【0111】
(2)
本実施形態の流体軸受装置20では、図3および図5に示すように、第1流体溜まり部27が、連通路11bとの連通した状態で交差する位置に、径方向隙間が最小隙間dとなる最小隙間部27aを有している。
【0112】
これにより、第1流体溜まり部27内に貯留された潤滑流体26には、表面張力の作用によって連通路11bと交差する位置に向かって吸引力が働く。よって、連通路11b内を循環する潤滑流体26は、第1流体溜まり部27と連通する位置にあっても、必要以上に第1流体溜まり部27へ流入してしまうことを回避することができる。この結果、潤滑流体26の循環経路の一部に連通するように、第1流体溜まり部27を配置した場合でも、潤滑流体26の循環を妨げることなく、かつ潤滑流体26が減少してきた際には円滑に循環経路内へ潤滑流体26を供給することができる。
【0113】
(3)
本実施形態の流体軸受装置20では、図3および図5に示すように、第1流体溜まり部27が、換気路28が形成された位置に、径方向隙間が最大隙間Dとなる最大隙間部27bを有している。
【0114】
これにより、表面張力の作用によって隙間が大きい換気路28側へ、潤滑流体26が移動しにくくすることができる。よって、潤滑流体26が貯留された第1流体溜まり部27を、換気路28を介して外気と連通させた場合でも、換気路28からの潤滑流体26の漏れ出しを効果的に防止することができる。
【0115】
(4)
本実施形態の流体軸受装置20では、図3および図5に示すように、第1流体溜まり部27が、換気路28から周方向に離間するにつれて径方向隙間(断面積)の大きさが小さくなるシール構造30を有している。
【0116】
これにより、シール構造30によって、換気路28付近の最大隙間部27b側から連通路11bと交差する最小隙間部27a側に向かって、潤滑流体26に対して毛管力による吸引力を付与することができる。よって、換気路28からの漏れ出しを防止しつつ、第1流体溜まり部27において、潤滑流体26を安定的に貯留することができる。
【0117】
また、換気路(換気孔)28は、最大隙間部27b付近に形成されているため、第1流体溜まり部27に溜まった気泡は、流体軸受装置20の姿勢に関わらず、常に、換気路28付近に形成されるため、衝撃等によって潤滑流体26が換気路28から外部へ漏れ出すことはない。
【0118】
(5)
本実施形態の流体軸受装置20では、図5に示すように、第1流体溜まり部27が、軸方向に沿って形成された連通路11bに対して略垂直に交差するように形成されている。
【0119】
これにより、例えば、軸方向に沿った連通路11bを形成する場合には、連通路11bを構成する第1・第2連通路11ba,11bbを、軸方向に沿った縦溝として形成することができる。よって、溝加工を容易化して、効率よく、かつ加工コストを抑えつつ所望の連通路11bを形成することができる。
【0120】
(6)
本実施形態の流体軸受装置20では、図2に示すように、ロータハブ15とスリーブ11との対向面間の隙間に、スラスト軸受部(スラスト動圧発生溝33a)を設けている。
【0121】
これにより、従来のスラストフランジ13とスラスト板14等との対向面間にスラスト軸受部を配置した構成と比較して、流体軸受装置20の力点重心に近い位置にスラスト軸受部を配置することができる。よって、シャフト12が傾いた際でも、スラスト軸受部において生じる動圧によって従来よりも軸受の角度剛性を向上させて効果的に振れ回りを防止することができる。
【0122】
(7)
本実施形態の流体軸受装置20では、図2に示すように、ロータハブ15とスリーブ11との対向面間の隙間に、第2流体溜まり部22を配置している。
【0123】
これにより、スリーブ11に内包される第1流体溜まり部27に加えて、第2流体溜まり部22を設けることで、流体軸受装置20内に十分な量の潤滑流体26を保持することができる。よって、潤滑流体26の不足による不具合の発生を効果的に防止して、流体軸受装置20の寿命を延長することができる。
【0124】
(8)
本実施形態の流体軸受装置20では、図2に示すように、ロータハブ15の一部に形成された垂下部15aとスリーブ11(第3スリーブ部材33)の外周面との間の隙間に、テーパシール部21を設けている。
【0125】
これにより、ロータハブ15とスリーブ11との対向面間に配置された第2流体溜まり部22に貯留される潤滑流体26に含まれる気泡を、テーパシール部21から効果的に排出しつつ、そこからの漏れ出しを効果的に抑制することができる。
【0126】
(9)
本実施形態の流体軸受装置20では、第1流体溜まり部27内に貯留された潤滑流体26に働く表面張力と、第2流体溜まり部22側のテーパシール部21付近の潤滑流体26に働く表面張力とがバランスするように、テーパシール部21等の隙間の大きさが設定されている。
【0127】
これにより、装置内に2つ以上の開放部を有する流体軸受装置20であっても、双方の開放部においてバランスするように潤滑流体26に対して表面張力を付与することで、潤滑流体26を装置内において安定して保持することができる。
【0128】
(10)
本実施形態の流体軸受装置20では、第1流体溜まり部27が、ラジアル軸受部(ラジアル動圧発生溝11c)に対して、潤滑流体26の循環経路の一部を構成する連通路11bを介して連通している。
【0129】
これにより、装置の動作中において、ラジアル軸受部におけるアンバランスによって第1流体溜まり部27に貯留された潤滑流体26に含まれる気泡が移動することを回避することができる。よって、装置の動作中において、気泡が装置内を移動することによる不具合の発生を容易に回避することができる。
【0130】
(11)
本実施形態の流体軸受装置20では、スリーブ11を形成する材料として、鉄、鉄合金、銅、銅合金等の金属材料を用いている。
【0131】
これにより、比較的安価な材料を用いて、耐熱性、耐油性に優れたスリーブ11を得ることができる。また、動圧発生溝を形成する場合でも、高精度な溝を形成して精度の高い動圧発生を実現することができる。
【0132】
(12)
本実施形態の流体軸受装置20では、図2および図5に示すように、第1スリーブ部材31、第2スリーブ部材32および第3スリーブ部材33という3つの部材を用いてスリーブ11を構成している。
【0133】
これにより、スリーブ11内に形成される連通路11bや第1流体溜まり部27を、比較的単純な形状の部材を組み合わせることで容易に形成することができる。よって、スリーブ11に対して複雑な加工等を必要とすることなく、簡素な構成によって上述したスリーブ11の構成を得ることができる。
【0134】
(13)
本実施形態の流体軸受装置20では、図2および図5に示すように、上述した3つの部材のうち、第1・第2スリーブ部材31,32には、径方向に沿った断面が略L字型形状の部材を組み合わせて用いている。
【0135】
これにより、互いの略L字型形状の部分が当接するように組み合わせることで、軸方向における抜け止めの役割を果たすことができる。よって、スリーブ11を複数の部材を組み合わせて構成した場合でも、流体軸受装置20への振動や衝撃によってシャフト12とともにスリーブ11の一部がずれてしまうことを効果的に防止することができる。
【0136】
(14)
本実施形態の流体軸受装置20では、図2、図3および図5に示すように、第1流体溜まり部27を外気と連通させる換気路28が、第1流体溜まり部27が連通路11bと交差する位置から最も離間した位置に形成されている。
【0137】
これにより、装置内を循環する潤滑流体26が連通路11b内を移動する場合でも、換気路28から最も離れた位置であるため、容易に換気路28から漏れ出すことはない。よって、第1流体溜まり部27の形状によるシール効果と併せることで、第1流体溜まり部27内に貯留された潤滑流体26が、換気路28から漏れ出してしまうことをより効果的に防止することができる。
【0138】
(15)
本実施形態の流体軸受装置20では、図2、図3および図5に示すように、第1流体溜まり部27を外気と連通させる換気路28が、スリーブ11の外周面側(第2・第3スリーブ部材32,33間の隙間)に形成されている。
【0139】
これにより、スリーブ11の外周面側において、第1流体溜まり部27内に貯留された潤滑流体26を呼吸させることができる。
【0140】
(16)
本実施形態のスピンドルモータ10は、上述した流体軸受装置20を搭載している。
【0141】
これにより、薄型化された流体軸受装置20であってもラジアル軸受部の軸方向長さを十分に確保して軸受の角度剛性を向上させることができるとともに、装置内を循環する際に潤滑流体26内において生じたり混入したりした気泡を、効果的に外気へと排出することができる、という効果を得ることが可能なスピンドルモータ10を提供することができる。
【0142】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0143】
(A)
上記実施形態では、連通路11bや第1流体溜まり部27を内包するスリーブ11が、3つの部材(第1〜第3スリーブ部材31〜33)によって構成される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0144】
例えば、図6および図7に示すように、第1・第2スリーブ部材131,132という2つの部材によって構成されるスリーブ111を用いてもよい。この場合でも、ロータハブ15との対向面間に第2流体溜まり部22を形成し、連通路111bや第1流体溜まり部(第1潤滑流体溜まり部)127を内包するスリーブ111を容易に構成することができる。また、上記実施形態と同様に、径方向断面が略L字型の部材同士を組み合わせて用いることで、略L字型の部分同士が当接し合って抜け止め防止部材としても機能させることができる。
【0145】
なお、第2スリーブ部材132は、上記実施形態の第3スリーブ部材33と同様に、ロータハブ15との対向面側にスラスト動圧発生溝132aを有していることが好ましい。これにより、流体軸受装置120の力点にできる限り近い位置であって、かつ回転側部材の支持点を径方向距離が最大になる位置に配置することで、軸受の角度剛性を向上させて効果的に振れ回りを防止することができる、という上記と同様の効果を得ることができる。
【0146】
ただし、2つの部材の組合せと比較して、1つ1つの部材の形状を単純化することで加工を容易化し、材料ロスを低減することができるという点では、上記実施形態のように、3つの部材を組み合わせてスリーブを構成することがより好ましい。
【0147】
(B)
上記実施形態では、スリーブ11を構成する3つの部材について、全て金属製の部材を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0148】
3つの部材のうち、例えば、第3スリーブ部材33については、耐熱性や耐油性等に優れた樹脂によって成形されていてもよい。
【0149】
この場合、ロータハブ15に対するスリーブ11の対向面側にスラスト動圧発生溝を形成する際には、図8に示すように、樹脂製の部材133aの一部に金属製の部材133bをインサート成形し、金属製の部材133bの部分に動圧発生溝を形成した第3スリーブ部材133とすればよい。これにより、スリーブを構成する一部材として樹脂製の部品を用いた場合でも、精度よく動圧を発生させることができる。
【0150】
(C)
上記実施形態では、ロータハブ15とスリーブ11との対向面の間の隙間にスラスト軸受部(スラスト動圧発生溝33a)を配置した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0151】
例えば、ロータハブ15とスリーブ211との対向面の間にスラスト軸受部を配置することなく、図9に示すように、シャフト212と一体的に回転するスラストフランジ213とスラスト板214との対向面の間(ここでは、スラストフランジ213側にスラスト動圧発生溝233aを形成)にスラスト軸受部を配置してもよい。あるいは、さらにスラストフランジ213とスリーブ211との対向面の間にスラスト軸受部を配置してもよい。
【0152】
ただし、流体軸受装置20における力点にできる限り近い位置、かつ径方向において最大の位置において動圧を発生させることで回転側部材の振れ回りを防止するという点では、上記実施形態のように、ロータハブ15とスリーブ11との対向面の間にスラスト軸受部を配置することがより好ましい。
【0153】
(D)
上記実施形態では、シャフト12に対してスラストフランジ13が取り付けられた、いわゆるフランジタイプの流体軸受装置20を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0154】
例えば、図10に示すように、シャフト312に対してフランジ部がない、いわゆるフランジレスタイプの流体軸受装置320、およびこれを搭載したスピンドルモータ310であってもよい。この場合には、抜け止め部材315aをロータハブ315に対して取り付けることにより、抜け止め部材315aが第3スリーブ部材311cの段差部分に対して当接させることで、シャフト312がスリーブ311の軸受孔311a内から抜けてしまうことを回避することができる。
【0155】
(E)
上記実施形態では、第1流体溜まり部27におけるシール機能を、径方向隙間の大きさを周方向において変化させることで付与した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0156】
例えば、上記シール機構としては、第1潤滑流体溜まり部の径方向に沿った断面積の大きさを周方向において変化させることで付与すればよい。すなわち、周方向において大きさを変化させるのは、径方向隙間の大きさ以外にも、軸方向隙間の大きさであってもよいし、径方向および軸方向の双方の隙間であってもよい。
【0157】
(F)
上記実施形態では、流体軸受装置20内の隙間に充填された潤滑流体26を循環させる循環力を付与するために、ラジアル動圧発生溝11cを非対称溝として形成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0158】
例えば、スラスト動圧発生溝を非対称溝として形成してスラスト軸受部側において循環力を発生させるような構成であってもよい。あるいは、ラジアル・スラスト動圧発生溝の双方を非対称溝として形成し、潤滑流体26に対して装置内で循環する力を付与するような構成であってもよい。
【0159】
(G)
上記実施形態では、スリーブ11を構成する材料として、鉄、鉄合金、銅、銅合金等の金属材料を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0160】
例えば、上記金属材料以外にも、焼結金属やSUS、真鍮、鍛造品等を用いることができる。
【0161】
(H)
上記実施形態では、ラジアル軸受部およびスラスト軸受部を含む流体軸受装置を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0162】
例えば、コニカル軸受を含む流体軸受装置に対して、本発明を適用することも可能である。
【0163】
(I)
上記実施形態では、本発明に係る流体軸受装置20を、スピンドルモータ10に対して搭載した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0164】
例えば、図11に示すように、記録再生ディスク151に対して記録再生を行う記録ヘッド152を有する磁気記録再生装置(記録再生装置、情報処理装置)150に搭載されるスピンドルモータ110(流体軸受装置120)に対しても本発明の適用は当然に可能である。
【0165】
また、記録再生装置としては、磁気記録再生装置に限らず、例えば、光ディスク等の他の記録再生装置に対しても搭載可能である。
【0166】
さらには、情報処理装置として、CPUに搭載される冷却ファンを回転させるスピンドルモータに含まれる流体軸受装置としても本発明の適用は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の流体軸受装置は、薄型化された流体軸受装置であってもラジアル軸受部の軸方向長さを十分に確保して軸受の角度剛性を向上させることができるとともに、装置内を循環する潤滑流体内に含まれる気泡を効果的に外気へと排出することができるという効果を奏することから、各種情報処理装置に搭載される流体軸受装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明の一実施形態に係る流体軸受装置を搭載したスピンドルモータの構成を示す断面図。
【図2】図1のスピンドルモータに搭載された流体軸受装置の構成を示す拡大断面図。
【図3】図2のA−A線矢視断面図。
【図4】図2の流体軸受装置に含まれるスリーブ表面に形成された非対称のラジアル動圧発生溝を示す展開図。
【図5】図2の流体軸受装置に含まれるスリーブ内に形成される連通路と第1流体溜まり部とが交差する構成を示す概念図。
【図6】本発明の他の実施形態に係る流体軸受装置を搭載したスピンドルモータの構成を示す断面図。
【図7】図6のスピンドルモータに搭載された流体軸受装置の構成を示す拡大断面図。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係る流体軸受装置に含まれるスリーブを構成する部材の断面図。
【図9】本発明のさらに他の実施形態に係る流体軸受装置の構成を示す断面図。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係る流体軸受装置を搭載したスピンドルモータの構成を示す断面図。
【図11】上記流体軸受装置を搭載した磁気記録再生装置の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0169】
10 スピンドルモータ
11 スリーブ
11a 軸受孔
11b 連通路
11ba 第1連通路
11bb 第2連通路
11bc 第3連通路
11c ラジアル動圧発生溝(ラジアル軸受部(動圧軸受部))
12 シャフト(軸)
13 スラストフランジ
14 スラスト板
15 ロータハブ(ハブ)
15a 垂下部
16 ロータマグネット
17 ステータ
18 ベース
18a 中空円筒部
18b 穴
20 流体軸受装置
21 テーパシール部
22 第2流体溜まり部(第2潤滑流体溜まり部)
26 潤滑流体
26a 気液境界面
27 第1流体溜まり部(第1潤滑流体溜まり部)
27a 最小隙間部
27b 最大隙間部
28 換気路
30 シール構造(シール部)
31 第1スリーブ部材
32 第2スリーブ部材
33 第3スリーブ部材
33a スラスト動圧発生溝(スラスト軸受部)
110 スピンドルモータ
111 スリーブ
111b 連通路
120 流体軸受装置
127 第1流体溜まり部(第1潤滑流体溜まり部)
128 換気路
131 第1スリーブ部材
132 第2スリーブ部材
132a スラスト動圧発生溝(スラスト軸受部)
133 第3スリーブ部材
133a 樹脂製の部材
133b 金属製の部材
150 磁気記録再生装置(情報処理装置)
151 記録再生ディスク
152 記録ヘッド
211 スリーブ
212 シャフト(軸)
213 スラストフランジ
214 スラスト板
220 流体軸受装置
233a スラスト動圧発生溝
310 スピンドルモータ
311 スリーブ
311a 軸受孔
311b 連通穴
311c 第3スリーブ部材
312 シャフト
315 ロータハブ(ハブ)
315a 抜け止め部材
320 流体軸受装置
d 最小隙間
D 最大隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、
前記軸が相対回転可能な状態で装填される軸受孔を有する略円筒状のスリーブと、
前記スリーブの一部に軸方向に沿って形成されており、前記スリーブにおける前記軸受孔の開放端側と閉塞端側とを連通させる連通路と、
前記軸と前記スリーブとの間の微小隙間を含む空間に貯留される潤滑流体と、
前記軸の外周面と前記スリーブの内周面との間に配置されている動圧軸受部と、
前記スリーブに内包されており、前記連通路に対して交差するように形成され、前記連通路と一部が連通するとともに、前記潤滑流体を貯留する略環状の第1潤滑流体溜まり部と、
前記第1潤滑流体溜まり部と外気とを連通させる換気路と、
を備えている流体軸受装置。
【請求項2】
前記第1潤滑流体溜まり部は、前記連通路に対して交差する位置において、径方向に沿った断面が最小となる最小隙間部を有する、
請求項1に記載の流体軸受装置。
【請求項3】
前記第1潤滑流体溜まり部は、前記換気路付近において、径方向に沿った断面が最大となる最大隙間部を有する、
請求項1または2に記載の流体軸受装置。
【請求項4】
前記第1潤滑流体溜まり部は、周方向において、前記換気路側から前記連通路側に向かって、径方向に沿った断面が小さくなっていくように形成されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項5】
前記第1潤滑流体溜まり部は、前記連通路に対して略垂直に交差する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項6】
前記軸に対して固定され前記軸とともに回転するハブと、
前記スリーブにおける開放端側の端面と前記ハブとの対向面の間に形成されたスラスト軸受部と、
をさらに備えている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項7】
前記軸に対して固定され前記軸とともに回転するハブと、
前記スリーブにおける前記開放端側の端面と前記ハブとの対向面の間に形成される第2潤滑流体溜まり部と、
をさらに備えている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項8】
前記ハブは、前記スリーブの外周側に近接する位置において、軸方向に向かって突出した垂下部を有しており、
前記垂下部と前記スリーブの外周面との間の隙間において前記潤滑流体を外気と連通させた状態で保持するテーパシール部をさらに備えている、
請求項6または7に記載の流体軸受装置。
【請求項9】
前記テーパシール部において保持される前記潤滑流体に働く表面張力と、前記第1潤滑流体溜まり部内に保持される前記潤滑流体に働く表面張力とが、釣り合っている、
請求項8に記載の流体軸受装置。
【請求項10】
前記動圧軸受部は、前記潤滑流体の循環経路の一部を介して、前記第1潤滑流体溜まり部に対して連通している、
請求項1から9のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項11】
前記スリーブは、金属製の部品である、
請求項1から10のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項12】
前記スリーブは、3つの部品を組み合わせて構成されている、
請求項1から11のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項13】
前記スリーブは、2つの部品を組み合わせて構成されている、
請求項1から11のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項14】
前記スリーブは、径方向に沿った断面が略L字型の略円筒状の部品を組み合わせて構成されている、
請求項12または13に記載の流体軸受装置。
【請求項15】
前記スリーブは、前記部品のうちスラスト軸受部を含む部品が樹脂によって形成されており、スラスト動圧発生溝の部分は金属部品がインサート成形されている、
請求項12から14のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項16】
前記換気路は、前記第1潤滑流体溜まり部と前記連通路とが交差する部分に対して周方向において最も遠い位置に形成される、
請求項1から15のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項17】
前記換気路は、前記スリーブの外周側面に形成されている、
請求項1から16のいずれか1項に記載の流体軸受装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の流体軸受装置と、
前記流体軸受装置の回転側部材に取り付けられた回転磁石と、
前記回転磁石に対して回転力を付与するステータコイルと、
を備えたスピンドルモータ。
【請求項19】
請求項18に記載のスピンドルモータを備えた情報処理装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−43654(P2010−43654A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−206158(P2008−206158)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】