説明

流動性の向上した難燃性繊維強化組成物

繊維充填材を有し、1種以上の高Tg非晶質樹脂を含む改善された溶融加工性を示す組成物。組成物にスルホン酸塩を添加すると、臭素及び塩素を実質的に含まない組成物において、メルトフローの改善並びに難燃性の向上が与えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート又はポリアリーレートの1種以上を含む繊維強化熱可塑性樹脂組成物に関する。本熱可塑性樹脂組成物は、繊維を含まない組成物に比べて強度及び弾性率の向上した成形品を与える繊維が均一に分散している。本組成物は、耐着火性を改善し、メルトフローの向上に驚くほど有益な効果をもつスルホン酸塩も含んでいる。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチック樹脂を含む組成物では強度及び弾性率を向上させるためガラス繊維及び無機繊維が常用される。しかし、こうした繊維の添加は、組成物の重量増加、伸びの損失、異方性の出現、メルトフローの損失などの短所を有する。メルトフローの損失は、ガラス転移温度(Tg)の高い非晶質熱可塑性樹脂(すなわち、Tgが145℃を超えるもの)では特に問題である。有用な機械的性質をもつ高Tg非晶質熱可塑性樹脂は高分子量であり、流動性の高い結晶質樹脂よりも概して溶融加工が難しい。高Tg樹脂の繊維含有組成物では、繊維を含まないベース樹脂に比べてメルトフローはさらに低下する。多くの場合、こうした組成物から部材を成形する唯一の手段は成形装置内の温度を高めることである。しかし、非常に高い温度(概して300〜400℃)では熱可塑性樹脂が熱分解して特性の喪失及び/又は揮発性生成物の発生を招き、不良成形部材を生じることが多い。そのため、繊維添加高Tg非晶質熱可塑性樹脂組成物のメルトフロー及び加工性を向上させる必要がある。
【0003】
さらに、ある種の高Tg熱可塑性樹脂は他のものよりも着火し易く、繊維添加プラスチック部材の着火性及び燃焼性が問題とされる用途には不向きなことがある。このことは、米国特許第4548997号に記載されているようなポリカーボネート(PC)とポリエーテルイミド(PEI)のブレンド及び米国特許第4908418号及び同第4908419号に開示されたPEIとポリアリーレート樹脂を含む関連ブレンドに当てはまる。
【0004】
PC−PEIブレンドの難燃性を臭化ポリスチレン樹脂で改善する試みが米国特許第4629759号に開示されている。臭化難燃剤の使用は、こうしたブレンドの高い溶融加工温度で臭素化化合物が分解して酸性種を生じ、金型や機械装置を腐食しかねないという問題を起こすことが多い。さらに、ハロゲン化難燃剤は、潜在的な環境上の懸念から、一部の分野では敬遠される傾向が高まりつつある。
【0005】
他の幾つかの特許、例えば米国特許第5051483号及び同第6011122号には、PC−PEI組成物の難燃(FR)特性を高めるためシリコーンポリエーテルイミドコポリマーの添加について記載されている。この方法は有効ではあるが、シリコーンコポリマーのような追加の成分の使用は組成物の生産のコスト及び複雑さを増す。
【0006】
PCとPEIのブレンドのようなブレンドのもう一つの問題は、これらを約30〜70対70〜30の比で混合したときの溶融加工特性に劣ることである。これらのブレンドは押出機でのコンパウンディングが極めて困難で、サージング及び過度のダイスウェルを示し、溶融弾性に劣る。こうしたブレンドの押出物はストランドにしてペレットにカットするのが非常に難しい。そのため、かかるブレンドの用途は限られてしまう。一般に、ガラス繊維を少量でも添加すれば、メルトフローの不安定性は取り除かれる。ガラス繊維はブレンドの強度及び弾性率も高める。しかし、ブレンドのメルトフローは、その一貫性は高まるものの、低下してしまう。メルトフローが低下すると、部材の成形が難しくなる。したがって、この分野ではかなりの研究がなされているが、難燃性及び耐着火性の繊維添加高Tg非晶質熱可塑性樹脂組成物の製造には依然幾つかの問題が存在する。
【特許文献1】米国特許第4548997号明細書
【特許文献2】米国特許第4908418号明細書
【特許文献3】米国特許第4908419号明細書
【特許文献4】米国特許第4629759号明細書
【特許文献5】米国特許第5051483号明細書
【特許文献6】米国特許第6011122号明細書
【特許文献7】カナダ特許第847963号明細書
【特許文献8】米国特許第4176222号明細書
【特許文献9】米国特許第3634355号明細書
【特許文献10】米国特許第4008203号明細書
【特許文献11】米国特許第4108837号明細書
【特許文献12】米国特許第4175175号明細書
【特許文献13】米国特許第2991273号明細書
【特許文献14】米国特許第2999835号明細書
【特許文献15】米国特許第3028365号明細書
【特許文献16】米国特許第3148172号明細書
【特許文献17】米国特許第3153008号明細書
【特許文献18】米国特許第3271367号明細書
【特許文献19】米国特許第3271368号明細書
【特許文献20】米国特許第4217438号明細書
【特許文献21】米国特許第3169121号明細書
【特許文献22】米国特許第4487896号明細書
【特許文献23】米国特許第4123436号明細書
【特許文献24】米国特許第3153008号明細書
【特許文献25】米国特許第4001184号明細書
【特許文献26】米国特許第3671487号明細書
【特許文献27】米国特許第3723373号明細書
【特許文献28】米国特許第3383092号明細書
【特許文献29】米国特許第5521230号明細書
【非特許文献1】“Engineering Thermoplastics Properties and Applications” chapter 10, pp.255−281 edited by James M. Margolis, published by Marcel Dekker Inc.(1985)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、繊維添加高Tg非晶質熱可塑性樹脂組成物に驚くほど少量のスルホン酸塩を添加することによって、従前の組成物の問題が解消し、併せて樹脂組成物の他の望ましい特徴を保持しつつ、向上した流動性とFR特性が得られるという知見を得た。流動性の向上によって部材の成形が容易になる。繊維の添加で達成されるメルトフローの一貫性も保持される。
【0008】
さらに、スルホン酸塩は難燃剤として作用し、非晶質熱可塑性樹脂組成物の耐着火性が向上する。またスルホン酸塩では、臭化難燃剤でみられる熱分解の潜在的問題がなくなり、かかる添加剤を多量に使用する必要がなくなる。難燃性の向上は、PC量が高くガラス量の低く燃焼し易い傾向がある場合に特に顕著である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態では、メルトフローの向上した難燃性熱可塑性樹脂組成物であって、
(a)ポリイミド、ポリスルホン又はそれらの混合物と、
(b)ガラス繊維、炭素繊維及びセラミック繊維からなる群から選択される繊維強化材と、
(c)スルホン酸塩と
を含む組成物を提供する。
【0010】
本発明の別の実施形態では、メルトフローの向上した難燃性熱可塑性樹脂組成物であって、
(e)ポリイミド、ポリスルホン又はそれらの混合物と、
(f)次式の繰返し単位を含む非晶質ポリカーボネート、ポリエステルカーボネートもしくはポリアリーレート又はそれらの混合物と、
【0011】
【化1】

(式中、Arはジカルボン酸又はジカルボン酸混合物の二価芳香族残基であり、Ar′はジヒドロキシ置換芳香族炭化水素又はジヒドロキシ置換芳香族炭化水素混合物の二価芳香族残基であり、x及びyは各々0〜100モル%の値を有し、xとyの合計は100モル%である。)
(g)ガラス繊維、炭素繊維及びセラミック繊維からなる群から選択される繊維強化材と、
(h)スルホン酸塩と
を含む組成物を提供する。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態では、メルトフローの向上した難燃性熱可塑性樹脂組成物であって、
(j)ポリエステルカーボネート、ポリアリーレート又はそれらの混合物と、
(k)ガラス繊維、炭素繊維及びセラミック繊維からなる群から選択される繊維強化材と、
(l)スルホン酸塩と
を含む組成物を提供する。
【0013】
本発明の他の様々な特徴、態様及び利点は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲から明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の幾つかの実施形態では、熱可塑性非晶質樹脂はポリイミド及びポリスルホンからなる群から選択し得る。かかる非晶質樹脂は、概して、DSCで測定して145℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する。さらに耐熱性を高めるため、熱可塑性樹脂は170℃以上のTgを有するのが好ましい。Tgが200℃以上の非晶質樹脂が最も好ましい。
【0015】
本発明のポリスルホンは、実施形態によって、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン又はポリフェニレンエーテルスルホンであり、高温耐性、良好な電気的特性、良好な加水分解安定性などの数多くの魅力的な特徴をもつ熱可塑性ポリマーである。様々なポリアリールエーテルスルホンが市販されており、ポリエーテルスルホン(PES)樹脂として知られるジヒドロキシジフェニルスルホンとジクロロジフェニルスルホンの重縮合生成物、当技術分野では単にポリスルホン(PSF)樹脂とも呼ばれるポリエーテルスルホンであるビスフェノールAとジクロロジフェニルスルホンのポリマー生成物などが挙げられる。様々なポリエーテルスルホンコポリマー、例えばビスフェノールA部分とジフェニルスルホン部分とを1:1以外のモル比で含むコポリマーも当技術分野で公知である。
【0016】
他のポリアリールエーテルスルホンはポリビフェニルエーテルスルホン樹脂であり、Solvay社からRADEL R(登録商標)樹脂という商標で入手し得る。この樹脂はビフェノールと4,4′−ジクロロジフェニルスルホンの重縮合生成物と記載でき、当技術分野で公知であり、例えばカナダ特許第847963号に記載されている。
【0017】
ポリスルホンの製造方法は周知であり、カーボネート法、水酸化アルカリ金属法のような幾つかの適当な方法は文献に十分記載されている。水酸化アルカリ金属法では、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素のアルカリ金属複塩を、双極性非プロトン溶媒の存在下、ジハロベンゼノイド化合物と実質的に無水条件下で接触させる。カーボネート法では、例えば米国特許第4176222号のような文献に開示されているように、1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素及び1種以上のジハロベンゼノイド化合物を、例えば炭酸又は炭酸水素ナトリウム及び第二の炭酸又は炭酸水素アルカリ金属塩と共に加熱する。或いは、ポリビフェニルエーテルスルホン、PSF及びPES樹脂成分は、ポリアリールエーテル樹脂の製造方法として当技術分野で公知の様々な方法のいずれかで製造してもよい。熱可塑性ポリエーテルスルホン及びその製造方法は、米国特許第3634355号、同第4008203号、同第4108837号及び同第4175175号にも記載されている。
【0018】
塩化メチレン、クロロホルム、N−メチルピロリジノンのような適当な溶媒中での還元粘度データで示されるポリスルホンの分子量は、様々な実施形態で約0.3dl/g以上であり、好ましくは0.4dl/g以上であるが、通例約1.5dl/gを超えない。
【0019】
本発明の熱可塑性ポリイミド樹脂は、芳香族二無水物又は芳香族テトラカルボン酸又はその環状無水物を形成し得る誘導体と芳香族ジアミン又はその化学的に等価な誘導体との反応による環状イミド結合の形成によって得ることができる。
【0020】
様々な実施形態では、適当な熱可塑性ポリイミド樹脂は次の式(I)の構造単位を含む。
【0021】
【化2】

式中、「A」は1種以上の二無水物から誘導される構造単位を含み、「B」は1種以上の芳香族ジアミンから誘導される構造単位を含む。
【0022】
幾つかの実施形態では、「A」部分は次の式(II)を有する。
【0023】
【化3】

式中、Rはハロゲン、フルオロ、クロロ、ブロモ、C1〜32アルキル、シクロアルキル又はアルケニル、C1〜32アルコキシ又はアルケニルオキシ、シアノからなる群から選択され、「q」は0〜3の値を有する。ある特定の実施形態では、「q」の値は0である。
【0024】
式(II)において、「D」はジヒドロキシ置換芳香族炭化水素から誘導される二価芳香族基であり、次の一般式(III)を有する。
【0025】
【化4】

式中、「A」は芳香族基を表し、特に限定されないが、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレンなどが挙げられる。ある実施形態では、「E」はアルキレン又はアルキリデン基であり、特に限定されないが、メチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチレン、ブチリデン、イソブチリデン、アミレン、アミリデン、イソアミリデンなどが挙げられる。別の実施形態では、「E」がアルキレン又はアルキリデン基のときは、Eは2以上のアルキレン又はアルキリデン基が、アルキレン又はアルキリデンとは異なる原子団、例えば芳香族結合、第三窒素結合、エーテル結合、カルボニル結合、含ケイ素結合、シラン、シロキシ、含イオウ結合(スルフィド、スルホキシド、スルホンなど)又は含リン結合(ホスフィニル、ホスホニルなど)で連結したものであってもよい。他の実施形態では、「E」は脂環式基であってもよく、その非限定的な例には、シクロペンチリデン、シクロへキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、メチルシクロヘキシリデン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イリデン、1,7,7−トリメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イリデン、イソプロピリデン、ネオピンチリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン及びアダマンチリデン、特に限定されないが硫化物、スルホキシド又はスルホンなどの含硫黄結合、特に限定されないがホスフィニル又はホスホニルなどの含リン結合、エーテル結合、カルボニル基、第三窒素基、特に限定されないがシラン、シロキシなどの含ケイ素結合が挙げられる。Rは水素又は一価炭化水素基を表し、特に限定されないが、アルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリル又はシクロアルキルが挙げられる。様々な実施形態で、一価炭化水素基Rは、例えば式C=CZのジハロアルキリデン基(式中、各Zは、1以上のZが塩素又は臭素であることを条件として、水素、塩素又は臭素及びこれらの原子の混合物である。)のように、ハロゲン置換、特にフルオロ又はクロロ置換されていてもよい。特定の実施形態では、ジハロアルキリデン基は、ジクロロアルキリデン、特にgem−ジクロロアルキリデン基である。Yは、水素、無機原子、例えば特に限定されないがハロゲン(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)など、特に限定されないがニトロなどの2以上の無機原子を含有する無機基、有機基、例えば特に限定されないがアルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリル又はシクロアルキルなどの一価炭化水素基、又は特に限定されないがOR(式中Rは特に限定されないが、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリル、又はシクロアルキルなどの一価炭化水素基である)などのオキシ基などでよく、唯一必要とされることは、Yがポリマーの製造に使用される反応体及び反応条件に対して不活性で、それらの影響を受けないことである。ある特定の実施形態では、Yはハロゲン基又はC〜Cアルキル基を含む。文字「m」は、0からA上の置換可能な部位の数までの任意の整数を表し、「p」は0からE上の置換可能な部位の数までの整数を表し、「t」は1以上の整数を表し、「s」は0又は1の整数を表し、「u」は0を含めた任意の整数を表す。ある特定の実施形態では、「u」は0〜約5の値の整数である。
【0026】
「D」が上記の式(III)で表されるジヒドロキシ芳香族化合物で、2以上のY置換基が存在する場合、Yは同一でも異なるものでもよい。R置換基についても同様である。式(III)における「s」が零で、「u」が零でないときは、芳香族環同士がアルキリデンその他の橋かけ基を介さずに直接結合する。炭化水素残基の2以上の環炭素原子がY基及びヒドロキシル基で置換されている場合、芳香核残基A上のヒドロキシル基とYの位置はオルト位、メタ位又はパラ位で種々異なっていてもよく、これらの基同士はビシナル、対称又は非対称のいずれの関係にあってもよい。ある特定の実施形態では、パラメーター「t」、「s」及び「u」は各々1であり、A基は共に非置換フェニレン基であり、Eはイソプロピリデンのようなアルキリデン基である。ある特定の実施形態では、A基は共にp−フェニレンであるが、両方共o−又はm−フェニレンであってもよいし、或いは一方がo−又はm−フェニレンで、他方がp−フェニレンであってもよい。
【0027】
ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の幾つかの実施形態では、「E」は不飽和アルキリデン基でよい。このタイプの適当なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素としては、式(IV)のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素が挙げられる。
【0028】
【化5】

式中、各Rは各々独立に水素、塩素、臭素、又はC1〜30の一価炭化水素もしくはハイドロカルボノキシ基であり、各Zは、1以上のZが塩素又は臭素であることを条件として、水素、塩素、又は臭素である。
【0029】
適当なジヒドロ置換芳香族炭化水素には、式(V)のジヒドロ置換芳香族炭化水素も含まれる。
【0030】
【化6】

式中、各Rは各々独立に水素、塩素、臭素、又はC1〜30の一価炭化水素もしくはハイドロカルボノキシ基であり、R及びRは各々独立に水素又はC1〜30の炭化水素基である。
【0031】
本発明の実施形態で使用できるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素には、米国特許第2991273号、同第2999835号、同第3028365号、同第3148172号、同第3153008号、同第3271367号、同第3271368号、及び同第4217438号に(総称の又は特定の)名称又は式が開示されているジヒドロキシ置換芳香族炭化水素が挙げられる。本発明の幾つかの実施形態では、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素としては、特に限定されないが、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,4−ジヒドロキシベンゼン、4,4′−オキシジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、3,5,3′,5′−テトラクロロ−4,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、C1−3アルキル置換レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、1,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、3,3−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン及びビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドが挙げられる。
【0032】
特定の実施形態では、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素はビスフェノールAを含む。
【0033】
「E」がアルキレン又はアルキリデン基であるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の幾つかの実施形態では、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素は、1個のヒドロキシ置換基を有する1以上の芳香族基と結合した1以上の縮合環の一部であってもよい。この種の適当なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素としては、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール及び1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オールのようなインダン構造単位を含むジヒドロキシ置換芳香族炭化水素が挙げられる。同様に、縮合環の一部として1以上のアルキレン又はアルキリデン基も挙げられる、このタイプの適当なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素には、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−1,1′−スピロビ[1H−インデン]ジオールがあり、その具体例としては、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール(「SBI」としても知られる。)が挙げられる。上述のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素のいずれかを含む混合物も使用できる。
【0034】
その他の実施形態では、「A」は、式(VI)又は式(VII)を有する。
【0035】
【化7】

式中、各R10〜R12は各々独立に水素、ハロゲン及びC1〜6アルキル基から選択され、「q」は、1から芳香族環上で置換可能な部位の数までの整数であり、「W」は連結基である。特定の実施形態では、Wは共有結合、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホン、ケイ素、カルボニル又はヘキサフルオロイソプロピリデンである。ある特定の実施形態では、ポリイミドは、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2−[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−2−[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物、4,4′−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、−4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物及び4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4′−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,3′,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−オキシジフタル酸無水物、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,2′,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリト酸二無水物、3,4,3′,4′−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]エーテル二無水物、及び2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物からなる群から選択される1種以上の二無水物から誘導される構造単位を含む。
【0036】
2種以上の二無水物を含む混合物から誘導される構造単位を有するポリイミドも、本発明の技術的範囲に属する。
【0037】
様々な実施形態では、適当な芳香族ジアミンは、炭素原子数6〜約22の芳香族炭化水素基及びその置換誘導体から選択される二価有機基を含む。様々な実施形態では、上記芳香族炭化水素基は、単環式でも、多環式でも、縮合環でもよい。
【0038】
幾つかの実施形態では、適当な芳香族ジアミンは、一般式(VIII)の二価芳香族炭化水素基を含む。
【0039】
【化8】

式中、芳香族環の位置が特定されていない位置異性体は、Qに対してメタ位又はパラ位のいずれかであり、Qは共有結合又は次の式(IX)に示すもの及び式C2y(式中、yは5を含めた1〜5の整数)のアルキレン又はアルキリデン基からなる群から選択される。
【0040】
【化9】

ある特定の実施形態では、yは1又は2の値を有する。連結基の例としては、特に限定されないが、メチレン、エチレン、エチリデン、ビニリデン、ハロゲン置換ビニリデン、及びイソプロピリデンが挙げられる。その他の特定の実施形態では、式(VIII)において芳香族環の位置が特定されていない位置異性体は、Qに対してパラ位である。
【0041】
様々な実施形態では、ジアミン誘導芳香族炭化水素基における2つのアミノ基の間には、2以上、時として3以上の環炭素原子が介在する。1以上のアミノ基が、多環式芳香族部分の別々の芳香族環に位置する場合、それらは、2以上、時として3以上の炭素原子によって、直接結合又は2つの芳香族環間の結合部分から離隔される。芳香族炭化水素基の非限定的な例としては、フェニル、ビフェニル、ナフチル、ビス(フェニル)メタン、ビス(フェニル)−2,2−プロパン及びこれらの誘導体が挙げられる。特定の実施形態では、置換基としては、フルオロ、クロロ、ブロモ又はこれらの混合物のような1以上のハロゲン基、炭素原子数1〜22の1以上の直鎖、枝分れ又はシクロアルキル基、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、tert−ブチル又はこれらの混合物が挙げられる。特定の実施形態では、芳香族炭化水素基の置換基が存在する場合、クロロ、メチル、エチル又はこれらの1種以上の混合物である。他の特定の実施形態では、上記芳香族炭化水素基は非置換である。ある特定の実施形態で適当なジアミンとしては、特に限定されないが、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、メタ及びパラフェニレンジアミンの混合物、2−メチル−及び5−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレンジアミン異性体又はそれらの混合物、ビス(4−アミノフェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−クロロ−4−アミノ−3,5−ジエチルフェニル)メタン、4,4′−ジアミノジフェニル、3,4′−ジアミノジフェニル、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル(4,4′−オキシジアニリンともいう。)、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,4′−ジアミノジフェニルスルホン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルケトン、3,4′−ジアミノジフェニルケトン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン(一般に4,4′−メチレンジアニリンともいう。)、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチルベンジジン、3,3−ジメトキシベンジジン、ベンジジン、m−キシリレンジアミン、1,3−ジアミノ−4−イソプロピルベンゼン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−メチル−o−アミノフェニル)ベンゼン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル及び2,4−トルエンジアミンが挙げられる。ジアミン混合物も使用し得る。最も好ましいジアミンは、メタ及びパラフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン及びオキシジアニリンである。最も好ましいポリイミド樹脂は、ポリエーテルイミド樹脂及びポリエーテルイミドスルホン樹脂である。
【0042】
一般に、有用なポリイミド樹脂は、25℃においてクロロホルム又はm−クレゾール中で測定して、約0.2dl/gを超える固有粘度、好ましくは約0.35〜約1.0dl/gの固有粘度を有する。
【0043】
好ましい実施形態では、本発明の高Tg非晶質樹脂は、ポリスチレン標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、約10000〜約75000g/mol、さらに好ましくは約10000〜約65000g/mol、さらに好ましくは約10000〜約55000g/molの重量平均分子量を有する。
【0044】
様々なポリカーボネート及びポリアリーレートを繊維及びスルホン酸塩とブレンドするとメルトフローの向上した難燃性組成物が得られる。ポリカーボネートという用語には、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素から誘導された構造単位を有する各種ポリカーボネート樹脂が挙げられる。適宜、構造単位は、ジカルボン酸ハロゲン化物のような芳香族ジカルボン酸又はその誘導体との共重合で得られる構造単位をさらに含んでいてもよい。したがって、ポリカーボネート樹脂という用語には、ポリカーボネートホモポリマー及びポリエステルカーボネートコポリマーが包含される。本発明の組成物において、スルホン酸塩及び繊維、及び適宜ポリイミド又はポリスルホンと組合せて使用されるポリカーボネート、ポリエステルカーボネート又はポリアリーレート樹脂は次の式(X)で表すことができる。
【0045】
【化10】

式中、Arはジカルボン酸又はジカルボン酸混合物の二価芳香族残基であり、Ar′はジヒドロキシ置換芳香族炭化水素又はジヒドロキシ置換芳香族炭化水素混合物の二価芳香族残基である。ポリカーボネートホモポリマー樹脂では、xは0である。ポリエステルカーボネートコポリマー樹脂では、xは1〜99モル%で、yは99〜1モル%である。yが0のとき(すなわち、カーボネート結合が存在しない場合)、芳香族ポリエステル樹脂はポリアリーレート樹脂として知られる。ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート及びポリアリーレート樹脂は一連の関連構造体であり、すべて本発明の技術的範囲に属し、繊維、スルホン酸塩及び適宜本発明のポリスルホン及びポリイミドとブレンドすると特性が向上する。
【0046】
式Iの好ましいポリエステルカーボネート(PEC)又はポリアリーレート(PAr)樹脂では、yは0〜約80、好ましくは5〜約70であり、xは約20〜100、好ましくは約30〜約95モル%である。さらに好ましくはxは50〜約95、最も好ましくは60〜80モル%である。式(I)において、Arは最も好ましくはイソフタレート又はテレフタレート或いはそれらの混合物由来の残基であり、式(XI)を有する。
【0047】
【化11】

ポリカーボネートの合成に使用できるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素としては、特に限定されないが、上述のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素がすべて挙げられる。無論、2種以上の異なるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素、又は1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素とグリコールとの組合せを使用することも可能である。
【0048】
ある特定の実施形態では、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の二価残基であるAr′は、一般式(XII)で表すことができる。
【0049】
【化12】

式中、Aは炭素原子数1〜約15の置換もしくは非置換二価炭化水素基又は−S−、−SO−もしくは−O−のような連結基であり、各Xは各々独立に炭素原子数1〜約8のアルキル基、炭素原子数6〜約18のアリール基、炭素原子数7〜約14のアラルキル基及び炭素原子数1〜約8のアルコキシ基のような一価炭化水素基からなる群から選択され、mは0又は1であり、nは0〜約5の整数である。
【0050】
本発明の組成物に用いられるポリマーは、様々な方法で製造でき、例えば溶融重合又は界面重合で製造し得る。PC、PEC及びポリアリーレート樹脂の合成のための溶融重合法では、例えば、1種以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素と、例えばイソフタル酸及びテレフタル酸のジフェニル誘導体及びそれらの混合物のような1種以上のエステル前駆体とを含む各種混合物の共反応させてもよい。ジフェニルカーボネートを導入してポリエステルカーボネートコポリマーを製造してもよいし、或いは、ポリカーボネート樹脂を製造するためジフェニルカーボネートを単独で使用してもよい。また、重合反応を促進するため、例えば水酸化リチウムやステアリン酸リチウムのような各種の触媒又は触媒混合物を使用してもよい。ポリアリーレート樹脂及びその合成に関する詳細は、“Engineering Thermoplastics Properties and Applications”chapter 10, pp. 255−281 edited by James M. Margolis, published by Marcel Dekker Inc. (1985)に記載されている。好ましいポリアリーレートは、ビフェノールA及びイソフタル酸とテレフタル酸の混合物から誘導される。
【0051】
一般に、界面重合法では、二相水/有機溶媒系において、触媒を用いてジヒドロキシ置換芳香族炭化水素とジカルボン酸又はそのエステル前駆体及び/又はカーボネート前駆体とを反応させるが、ジカルボル酸及びカーボネート前駆体が二酸ハロゲン化物であるときは酸受容体も多用される。製造プロセスの反応条件は種々変更し得るが、幾つかの好ましい方法では、通例ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素反応体を苛性水溶液中に溶解又は分散させ、得られた混合物を水と非混和性の適当な溶媒媒体と混合し、適当な触媒の存在下、制御されたpH条件の下で、反応体をカーボネート前駆体及び二塩基酸又は二塩基酸塩化物のような誘導体と接触させることを含む。水と非混和性の溶媒の最も一般的な例としては、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、トルエンなどが挙げられる。代表的な触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリエチルアミンのような第三アミン、第四ホスホニウム化合物、第四アンモニウム化合物などが挙げられる。界面重合技術が記載された例として、例えば、米国特許第3169121号及び同第4487896号が挙げられる。
【0052】
カーボネート前駆体は、通常はハロゲン化カルボニル、ジアリールカーボネート、又はビスハロホルメートである。ハロゲン化カルボニルには、例えば、臭化カルボニル、塩化カルボニル及びこれらの混合物が挙げられる。ビスハロホルメートには、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパンのビスクロロホルメート、ヒドロキノンのようなジヒドロキシ置換芳香族炭化水素のビスハロホルメート、又はグリコールのビスハロホルメートなどが挙げられる。上記カーボネート前駆体は、すべて有用であるが、ホスゲンとしても知られる塩化カルボニルが好ましい。
【0053】
一般に、ポリエステルの製造に常用されるジカルボン酸であればどんなものでもポリエステルカーボネート樹脂の製造に利用し得る。ただし、本発明で使用されるPEC樹脂は、通常は芳香族ジカルボン酸、特にテレフタル酸、並びに重量比約5:95〜約95:5のテレフタル酸とイソフタル酸の混合物から誘導された構造単位を含む。
【0054】
ジカルボン酸を利用せずに、酸基の様々な誘導体を使用することも可能であり、時として好ましいこともある。こうした反応性誘導体の具体例は酸ハライドである。好ましい酸ハライドは、酸二塩化物及び酸二臭化物である。したがって、例えば、テレフタル酸又はテレフタル酸とイソフタル酸の混合物を使用する代わりに、二塩化テレフタロイル及びそれと二塩化イソフタロイルの混合物を使用することができる。
【0055】
ポリエステルカーボネート、ポリカーボネート及びポリアリーレートを製造するための従来の界面重合法では、カーボネート及び/又はエステル前駆体との重合反応の前又は重合反応の間に、反応混合物に分子量調整剤(すなわち、連鎖停止剤)を添加するのが一般的である。有用な分子量調整剤としては、例えば、フェノール、クロマン−I、パラ−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノールなど一価フェノールが挙げられる。あらゆるタイプのポリカーボネート、ポリエステルカーボネート及びポリアリーレート末端基が本発明の技術的範囲に属する。
【0056】
ポリエステルカーボネートの製造に用いられる反応体の割合は、生成物樹脂を含む本発明の組成物の所期の用途に応じて変わる。一般に、結合エステル単位の量は、カーボネート単位に対して約20重量%〜約100重量%であってよい。
【0057】
本発明の組成物に使用される好ましいポリエステルカーボネートは、ビスフェノールA及びホスゲンと塩化イソフタロイル及び塩化テレフタロイルとの反応で得られる固有粘度約0.5〜約0.65dl/g(25℃の塩化メチレン中で測定)のポリエステルカーボネートである。
【0058】
芳香族ポリカーボネートホモポリマーは公知の方法で製造でき、例えば、上述のように、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素を、上掲の文献及び米国特許第4123436号に記載の方法で、ホスゲンのようなカーボネート前駆体と反応させるか、或いは米国特許第3153008号に開示されたエステル交換反応法その他当業者に公知の方法で製造すればよい。
【0059】
本発明のポリカーボネート組成物の製造用に、2種以上の異なるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素、或いはホモポリマーよりカーボネートコポリマーが所望される場合は、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素と、グリコール、ヒドロキシ末端もしくは酸末端をもつポリエステル、二塩基酸もしくはヒドロキシ酸とのコポリマーを使用することもできる。米国特許第4001184号に記載されているような枝分れポリカーボネートも有用である。また、線状ポリカーボネートと枝分れカーボネートとのブレンドも利用できる。さらに、上記ポリカーボネートホモポリマー、ポリエステルカーボネートコポリマー及びポリアリーレートのどんなブレンドも、この組成物を供給するために本発明を実施する際に使用することができる。
【0060】
本発明の実施に際して好ましいポリカーボネートは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)とホスゲンから誘導される構造単位を含むものであり、これはGeneral Electric社からLEXAN(登録商標)という商品名で市販されている。
【0061】
このポリカーボネートホモポリマーは、高い分子量を有し、クロロホルム中25℃で求めた固有粘度が約0.3〜約1.5dl/gであり、約0.45〜1.0dl/gであるのが好ましい。これらのポリカーボネートは、枝分れしていてもいなくてもよく、一般に、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、約10000〜約200000の、好ましくは約20000〜約100000の重量平均分子量を有する。
【0062】
本発明の組成物は、組成物全体の重量に基づいて、1〜約50重量%の繊維を含んでいてもよい。特定の実施形態では、本発明の組成物は、組成物全体の重量に対して約10〜約40重量%の繊維をを含んでいてもよい。例えば、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維、セラミック繊維やホイスカーのような剛性繊維を使用し得る。本発明の一実施形態では、ガラス繊維を用いる。本発明の好ましい繊維は、一般に約6800MPa以上の弾性率を有する。繊維はチョップド型でも連続型でもよい。繊維は、例えば、円形、三日月形、二分裂、三分裂、長方形及び六角形の様々な断面を有していてよい。
【0063】
好ましい繊維は、約5〜25ミクロン、最も好ましくは約6〜17ミクロンの直径を有する。ある用途では、組成物の熱可塑性樹脂への接着性を改善するために、繊維の表面をカップリング剤で処理することが望ましいことがある。有用なカップリング剤の例としては、アルコキシシラン及びアルコキシジルコネートが挙げられる。アミノ、エポキシ、アミド又はチオ官能性アルコキシシランが特に有用である。組成物を成形部材に成形するのに必要とされる高い溶融温度での処理中に、発泡或いはガス生成を生じかねないコーティングの分解を防止するため、熱安定性の高いファイバーコーティングが好ましい。
【0064】
成形組成物を製造する際に、長さ約3mm〜約15mmのチョップドストランド形態のガラス繊維を使用すると好都合である。一方、組成物から得られた成形品では、コンパウンディング時にかなりの断片化が起こることがあるので、繊維の長さは概して短くなる。
【0065】
本発明の組成物は、熱安定性、密度増加、剛性及び/又はテクスチャーのような追加の有益な特性を組成物に付与し得る非繊維状無機充填剤をさらに含んでもよい。典型的な非繊維状無機充填剤としては、特に限定されないが、アルミナ、無定形シリカ、アルミノケイ酸塩、マイカ、クレー、タルク、ガラスフレーク、ガラス小球、例えば、二酸化チタン、硫化亜鉛、石英粉末のような金属酸化物が挙げられる。様々な実施形態では、非繊維状充填剤の量は、組成物全体に対して約1wt%〜約50wt%の範囲でよい。
【0066】
本発明の幾つかの実施形態では、ガラス繊維、炭素繊維又はセラミック繊維を、例えば、マイカ又はガラスフレークのような平板状充填剤と組合せると、特性が向上する可能性がある。通常、こうした平板状充填剤は、その厚さの10倍以上の長さと幅を有し、その厚さは1〜約1000ミクロンである。剛性繊維状充填剤と平板状充填剤との組合せは成形品のそりを低減する可能性がある。
【0067】
繊維強化材を含む本発明の組成物に対してスルホン酸の塩が難燃剤及び流動助剤として機能するという予想外の知見が得られた。様々な実施形態では、本発明の組成物は、フルオロアルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩及びアルキルアリールスルホン酸塩からなる群から選択される1種以上のスルホン酸塩を流動性が向上する量で含む。ある特定の実施形態では、適当なスルホン酸の塩は次式のスルホン酸塩から選択される。
【0068】
【化13】

式中、R′はC〜C40アルキル、又はC〜C40フルオロアルキルでよく、R′はC〜Cペルフルオロアルキル基であることが最も好ましい。Rは、各置換ごとに各々独立に、C〜C40アルキル基、アルキルエーテル−、アリールアルキルエーテル−又は芳香族エーテル基であり、Mはアルカリ金属及びアルカリ土類金属からなる群から選択される金属であり、xは金属Mの酸化状態であり、j、k、m及びnは各々0〜5の整数であるが、j+kが1以上であるとともにj+mが5以下でk+nが5以下であることを条件とする。ある特定の実施形態では、jは0であり、kは1である。Rは、好ましくは炭素原子数3〜40、さらに好ましくは4〜20、最も好ましくは4〜12のアルキル基である。連結基Qは通例−SO−又は−O−である。さらに好ましい金属は、周期表第IA族金属からなる群から選択され、最も好ましい金属はナトリウム及びカリウムである。流動性の向上及び耐火性効果のためスルホン酸塩をポリマーに配合する場合、一般に難燃性を生ずるのに有効な量で使用される。この量は、組成物全体の約0.01〜約5.0重量%、さらに好ましくは組成物全体の約0.02〜約1.0重量%、最も好ましくは組成物全体の約0.05〜約0.15重量%である。幾つかの特定の実施形態では、適当なスルホン酸塩として、ペルフルオロブチルカリウムスルホン酸塩(PFBKS)、スルホンスルホン酸カリウム(KSS)及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(NaDBS)が挙げられる。スルホン酸塩の混合物も使用することができる。
【0069】
本発明の幾つかの実施形態では、組成物は樹脂組成物にドリップ防止性を付与するのに有効な量のフルオロポリマーをさらに含む。フルオロポリマーが存在する場合、その量は通常は熱可塑性樹脂組成物100pbw当たり0.01〜2.0pbwである。適当なフルオロポリマー及びかかるフルオロポリマーの製造方法は公知である。例えば、米国特許第3671487号、同第3723373号及び同第3383092号参照。適当なフルオロポリマーとしては、1種以上のフッ素化α−オレフィンモノマーから誘導される構造単位を含むホモポリマー及びコポリマーが挙げられる。「フッ素化α−オレフィンモノマー」という用語は、1以上のフッ素原子置換基を含むα−オレフィンモノマーを意味する。適当なフッ素化α−オレフィンモノマーとしては、例えばCF=CF、CHF=CF、CH=CF、CH=CHFのようなフルオロエチレン、例えばCFCF=CF、CFCF=CHF、CFCH=CF、CFCH=CH、CFCF=CHF、CHFCH=CHF及びCFCF=CHのようなフルオロプロピレンが挙げられる。
【0070】
適当なフッ素化α−オレフィンコポリマーには、例えばポリ(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロエチレン)など、2種以上のフッ素化α−オレフィンモノマーから誘導される構造単位を含むコポリマー、並びに、例えばポリ(テトラフルオロエチレン−エチレン−プロピレン)コポリマーのようにフッ素化モノマーと1種以上の共重合性非フッ素化モノエチレン不飽和モノマーとから誘導される構造単位を含むコポリマーが挙げられる。適当な非フッ素化モノエチレン不飽和モノマーとしては、例えばエチレン、プロピレン、ブテン、例えばメチルメタクリレート、ブチルアクリレートのようなアクリレート−モノマーのようなα−オレフィンモノマーが挙げられる。好ましい実施形態では、フルオロポリマーはポリ(テトラフルオロエチレン)ホモポリマー(PTFE)である。
【0071】
フルオロポリマーは、熱可塑性樹脂生成物に直接導入するのが難しい傾向にあるので、フルオロポリマーを、例えば芳香族ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、ポリアリーレート、ポリスルホン、ポリイミド樹脂のような第二のポリマーと予めブレンドしておくのが好ましいことが多い。例えば、米国特許第5521230号に開示されている通り、例えばフルオロポリマー及びポリカーボネート樹脂の水性分散液を水蒸気沈殿させて、熱可塑性樹脂組成物のドリップ防止剤として用いられるフルオロポリマーコンセントレートを形成してもよい。
【0072】
さらに本発明の組成物は、成形装置からの成形部材の取り出しに役立つ離型剤を含んでいてもよい。離型剤の例としては、例えば、ステアリン酸、ベヘン酸、ペンタエリスリトールテトラステアレート、グリセリントリステアレート及びエチレングリコールジステアレートのようなアルキルカルボン酸又はエステルが挙げられる。脂肪族及び芳香族カルボン酸及びそのアルキルエステルはいずれも離型剤として使用し得る。高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンその他同様のポリオレフィンホモポリマーもしくはコポリマーも、離型剤として使用できる。離型剤が存在する場合、組成物中に組成物全体の0.05〜1.0重量%又は組成物全体の0.1〜0.5重量%存在する。好ましい離型剤は、溶融加工時に溶融ポリマー組成物から離型剤が損失するのを防止するため、約300を超える高い分子量を有する。
【0073】
本発明の組成物は、射出成形、圧縮成形、押出及びガスアシスト射出成形など、溶融ポリマーの様々な成形法で賦形品に成形できる。かかる賦形品としては、特に限定されないが、スナップ式コネクタに成形したものを始めとして、電気コネクタ、電気機器用筐体、自動車エンジン部材、照明ソケット及びリフレクタ、電気モータ部材、配電設備、通信設備などが挙げられる。
【0074】
さらなる詳細説明がなくとも、当業者なら本明細書の記載を使用して、本発明を完全に活用できると考えられる。以下の実施例は、特許請求の範囲に記載されている発明を実施する際に当業者に追加の手引きを提供するものである。提供された実施例は、本願の教示に寄与する仕事を代表するものにすぎない。したがって、それらの実施例は、添付の特許請求の範囲に定義する本発明をいかなる形でも限定するものではない。本発明の実施例は数字で、対照例は文字で示す。
【実施例】
【0075】
以下の表に示す組成物の成分をタンブルブレンディングし、次いでバレル及び押出ダイヘッド温度260〜315℃及びスクリュー速度約80rpmの64mm真空ベント式単軸押出機で押出した。押出物は水浴に通して冷却してから、ペレットにカットした。試験部材は設定温度約295〜340℃のNewberry150トン成形機で射出成形した。射出成形の前に、ペレットを約150℃の強制空気循環オーブンで3〜4時間乾燥した。
【0076】
ポリエーテルイミドは、General Electric社からULTEM1000(登録商標)として市販されているビスフェノールA二無水物とメタ−フェニレンジアミンの分子量34000のポリマーであった。
【0077】
ポリエステルカーボネートは、ビスフェノールAと、イソ−及びテレフタロイルクロライド及びホスゲンとの反応で合成したポリマーであった。ポリエステルカーボネートは、テレフタレートエステル30重量%、イソフタレートエステル30重量%及びカーボネート40重量%を含む分子量28350のものであった。ビスフェノールAポリカーボネートは分子量24000を有し、GE Plastics社から入手した。
【0078】
ガラス繊維OC165A(登録商標)は、Owens Corning社から入手した。これはアミノシランカップリング剤で処理した「E」ガラスであり、直径11ミクロンであった。
【0079】
試料を射出成形し、Underwriters Laboratory(UL)94試験を用いて燃焼性を試験した。この試験では、V−0評価の試料が最も優れた耐着火性を有する。試料は、相対湿度50%で3日間エージングした後、垂直燃焼試験に付した。
【0080】
メルトフローは、ASTM試験法D1238を用いて、2mmのオリフィスをもつ長さ8mm、幅9.5mmの押出ダイを用いて荷重6.7kg、337℃でMVR(メルトボリュームレート)として測定した。ペレットは試験前に150℃で1時間以上乾燥した。表中の成分量はすべて重量部(pbw)である。
【0081】
表1は、ポリエステルカーボネートとポリエーテルイミド(PEI)及び10pbwのガラス繊維とのブレンドを示す。パーフルオロブチルスルホン酸カリウム塩(PFBKS)を含む本発明の実施例1〜4はすべて、PEI/PECポリマー比が同じで同量のガラスを含むがPFBKSは含まない対照例よりも高いMVR(高いメルトフロー)を示す。Tgの低いPEC樹脂を高レベルで含むブレンドも流動性が向上した(対照例A、B及びCと対比されたい。)。PFBKSを含むブレンドは、1.6mm及び1.8mmの試験片を用いたUL−94試験で測定して、低い燃焼性を示した(実施例1及び2と対照例A、実施例3と対照例Bを対比されたい。)。
【0082】
ガラス繊維の添加によって、ブレンドの押出時のコンパウンディング及びストランド化が容易になった。これは、同量のPECとPEIポリマーを含む対照例B及び実施例3で特に顕著であった。
【0083】
【表1】

表2は、ポリエステルカーボネートとポリエーテルイミド及び30pbwのガラス繊維とのブレンドを示す。PFBKSを含む本発明の実施例5〜7はすべて良好なメルトフローを示す。実施例5、6及び7では、PFBKS塩は低レベルでも有効であり、塩の量を増やすと流動性はさらに向上する。すべての試料が0.8mmでの燃焼性に関するUL−94試験に合格した。ガラス繊維の添加によって、ブレンドの押出時のコンパウンディング及びストランド化が容易になった。
【0084】
【表2】

表3は、ポリエステルカーボネートとポリエーテルイミド及び40pbwのガラス繊維とのブレンドを示す。PFBKSを含む本発明の実施例8〜12はすべて、対照例よりも高いMVRを示す。PFBKSを含む試料はすべて、スルホン酸塩を含まない対照例よりも優れたUL−94試験結果を示す。ガラス繊維の添加によって、ブレンドの押出時のコンパウンディング及びストランド化が容易になった。これは、同量のPECとPEIポリマーを含む実施例11で特に顕著であった。
【0085】
【表3】

表4は、ガラスを30pbw充填したPEI/PEC組成物にPFBKSを用いると、PFBKSを含まない対照に比して流動性が向上する例を示す(対照例G及びHと実施例13及び14との対比)。PFBKS塩を含むPEC組成物(実施例14)では、対照例Hに比べてFR評価が向上している。
【0086】
【表4】

表5は、ガラスを30pbw充填したPEI/PECブレンド組成物にPFBKS、KSS(スルホンスルホン酸カリウム)又はNaDBS(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)を用いると、塩を含まない対照例Iに比して、流動性が向上する例を示す。これらのデータは、様々なスルホン酸塩で流動性及び難燃性の改善を達成できることを示している。
【0087】
【表5】

表6は、ガラス繊維を充填したポリスルホン樹脂とPEC(実施例18及び19)及びPEI(実施例20)のブレンドにPFBKS塩を用いると流動性が向上する例を示す。実施例21は、ガラスを30pbw充填したポリスルホン組成物にスルホン酸塩を使用すると、追加の熱可塑性樹脂がなくても流動性が向上することを示す。ポリスルホン樹脂はSolvay社から市販のUDEL M−200NT(登録商標)であった。
【0088】
【表6】

表7は対照例N〜Qを示し、ガラス繊維を含まないPEI組成物ではペルフルオロブチルスルホン酸カリウムによって認め得るほどの流動性の向上は得られないことを示す。
【0089】
【表7】

以上、典型的な実施形態で本発明を例示し説明してきたが、本発明の技術的思想の範囲内で様々な修正又は置換を加えることができ、本発明は本明細書に記載した詳細に限定されるものではない。本明細書に開示した以外の修正及び均等は、当業者が通常の実験を用いて想到し得る事項であり、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想及び技術的範囲に属する。本明細書で引用した特許及び報文はすべて援用によって本明細書の内容の一部をなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリイミド、ポリスルホン又はそれらの混合物と、
(b)ガラス繊維、炭素繊維及びセラミック繊維からなる群から選択される繊維強化材と、
(c)スルホン酸塩と
を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記スルホン酸塩がアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記スルホン酸塩がフルオロアルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記スルホン酸塩がペルフルオロブチルスルホン酸カリウム、スルホンスルホン酸カリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記繊維強化材が組成物全体の1〜50重量%のレベルで存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記繊維強化材が組成物全体の10〜40重量%のレベルで存在する、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリイミドがポリエーテルイミド及びポリエーテルイミドスルホンからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリスルホンがポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン及びポリフェニレンエーテルスルホンからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
試験部材厚1.6mm以下でV−0のUL94試験値を有する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
臭素及び塩素を実質的に含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
フルオロポリマーをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
前記フルオロポリマーが組成物全体の0.5〜5.0重量%のレベルで存在する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記フルオロポリマーがポリ(テトラフルオロエチレン)である、請求項11記載の組成物。
【請求項14】
組成物全体の1〜50重量%の非繊維状無機充填材をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記非繊維状充填材がマイカ、クレー、タルク、ガラスフレーク、ミルドガラス、硫酸バリウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、シリカ及びゼオライトからなる群から選択される、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
当該組成物が、2mmのオリフィスをもつ長さ8mm、幅9.5mmの押出ダイを用いて荷重6.7kg、337℃においてASTM試験法D1238で測定して、20〜60ml/10minのメルトフローを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
ポリオレフィン及びカルボン酸アルキルエステルからなる群から選択される離型剤をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
熱可塑性樹脂組成物であって、
(a)ポリエーテルイミド、ポリスルホン又はそれらの混合物と、
(b)ガラス繊維と、
(c)ペルフルオロブチルスルホン酸カリウム、スルホンスルホン酸カリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択されるスルホン酸塩と、
(d)カルボン酸アルキルエステルと
を含んでいて、当該組成物が2mmのオリフィスをもつ長さ8mm、幅9.5mmの押出ダイを用いて荷重6.7kg、337℃においてASTM試験法D1238で測定して、20〜60ml/10minのメルトフローを有する組成物。
【請求項19】
2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物,2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2−[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−2−[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物からなる群から選択される1種以上の二無水物から誘導される構造単位と、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン及びオキシジアニリンからなる群から選択される1種以上のジアミンから誘導される構造単位とを含むポリエーテルイミドを含む、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
(e)ポリイミド、ポリスルホン又はそれらの混合物と、
(f)次式の繰返し単位を含む非晶質のポリカーボネート、ポリエステルカーボネートもしくはポリアリーレートポリマー又はそれらの混合物と、
【化1】

(式中、Arはジカルボン酸又はジカルボン酸混合物の二価芳香族残基であり、Ar′はジヒドロキシ置換芳香族炭化水素又はジヒドロキシ置換芳香族炭化水素混合物の二価芳香族残基であり、x及びyは各々0〜100モル%の値を有し、xとyの合計は100モル%である。)
(g)ガラス繊維、炭素繊維及びセラミック繊維からなる群から選択される繊維強化材と、
(h)スルホン酸塩と
を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項21】
ポリイミドがポリエーテルイミド及びポリエーテルイミドスルホンからなる群から選択される、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
Ar′が次式で表される、請求項20記載の組成物。
【化2】

式中、Aは炭素原子数1〜約15の置換もしくは非置換二価炭化水素基又は−S−、−SO−もしくは−O−からなる群から選択される連結基であり、各Xは各々独立に一価炭化水素基、炭素原子数1〜約8のアルキル基、炭素原子数6〜約18のアリール基、炭素原子数7〜約14のアラルキル基及び炭素原子数1〜約8のアルコキシ基からなる群から選択され、mは0又は1であり、nは0〜約5の整数である。
【請求項23】
xが0であり、前記非晶質ポリマーがポリカーボネート樹脂である、請求項20記載の組成物。
【請求項24】
前記ポリカーボネート樹脂がビスフェノールAから誘導される構造単位を含む、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
yが0であり、前記非晶質ポリマーがポリアリーレート樹脂である、請求項20記載の組成物。
【請求項26】
前記ポリアリーレート樹脂がビスフェノールAから誘導される構造単位を含む、請求項23記載の組成物。
【請求項27】
前記非晶質ポリマーがポリエステルカーボネート樹脂である、請求項20記載の組成物。
【請求項28】
Arがイソフタル酸、テレフタル酸又はそれらの混合物の芳香族残基から誘導される、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
前記スルホン酸塩がアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である、請求項20記載の組成物。
【請求項30】
前記スルホン酸塩がフルオロアルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩及びアルキルアリールスルホン酸塩からなる群から選択される、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
前記スルホン酸塩がペルフルオロブチルスルホン酸カリウム、スルホンスルホン酸カリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項30記載の組成物。
【請求項32】
繊維強化材が組成物全体の1〜50重量%のレベルで存在する、請求項20記載の組成物。
【請求項33】
繊維強化材が組成物全体の10〜40重量%のレベルで存在する、請求項32記載の組成物。
【請求項34】
前記ポリイミドがポリエーテルイミド及びポリエーテルイミドスルホンからなる群から選択される、請求項20記載の組成物。
【請求項35】
前記ポリスルホンがポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルスルホン及びポリフェニレンエーテルスルホンからなる群から選択される、請求項20記載の組成物。
【請求項36】
試験部材厚1.6mm以下でV−0のUL94試験値を有する、請求項20記載の組成物。
【請求項37】
臭素及び塩素を実質的に含まない、請求項20記載の組成物。
【請求項38】
フルオロポリマーをさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項39】
前記フルオロポリマーが組成物全体の0.5〜5.0重量%のレベルで存在する、請求項38記載の組成物。
【請求項40】
前記フルオロポリマーがポリ(テトラフルオロエチレン)である、請求項38記載の組成物。
【請求項41】
組成物全体の1〜50重量%の非繊維状無機充填材をさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項42】
前記非繊維状充填材がマイカ、クレー、タルク、ガラスフレーク、ミルドガラス、硫酸バリウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、シリカ及びゼオライトからなる群から選択される、請求項41記載の組成物。
【請求項43】
当該組成物が2mmのオリフィスをもつ長さ8mm、幅9.5mmの押出ダイを用いて荷重6.7kg、337℃においてASTM試験法D1238で測定して、20〜60ml/10minのメルトフローを有する、請求項20記載の組成物。
【請求項44】
ポリオレフィン及びカルボン酸アルキルエステルからなる群から選択される離型剤をさらに含む、請求項20記載の組成物。
【請求項45】
熱可塑性樹脂組成物であって、
(e)ポリエーテルイミド、ポリスルホン又はそれらの混合物と、
(f)次式の繰返し単位を含む非晶質ポリエステルカーボネートと、
【化3】

(式中、Arはジカルボン酸又はジカルボン酸混合物の二価芳香族残基であり、Ar′はジヒドロキシ置換芳香族炭化水素又はジヒドロキシ置換芳香族炭化水素混合物の二価芳香族残基であり、x及びyは各々1〜99モル%の値を有し、xとyの合計は100モル%である。)
(g)ガラス繊維と、
(h)ペルフルオロブチルスルホン酸カリウム、スルホンスルホン酸カリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択されるスルホン酸塩と、
(i)カルボン酸アルキルエステルと
を含んでいて、2mmのオリフィスをもつ長さ8mm、幅9.5mmの押出ダイを用いて荷重6.7kg、337℃においてASTM試験法D1238で測定して、20〜60ml/10minのメルトフローを有する組成物。
【請求項46】
2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2−[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]−2−[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物からなる群から選択される1種以上の二無水物から誘導された構造単位と、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン及びオキシジアニリンからなる群から選択される1種以上のジアミンから誘導される構造単位とを含むポリエーテルイミドを含む、請求項45記載の組成物。
【請求項47】
(j)ポリエステルカーボネート、ポリアリーレート又はそれらの混合物と、
(k)ガラス繊維、カーボン繊維及びセラミック繊維からなる群から選択される繊維強化材と、
(l)スルホン酸塩と
を含む難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項48】
前記スルホン酸塩がアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩である、請求項47記載の組成物。
【請求項49】
前記スルホン酸塩がフルオロアルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩からなる群から選択される、請求項48記載の組成物。
【請求項50】
前記スルホン酸塩がペルフルオロブチルスルホン酸カリウム、スルホンスルホン酸カリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択される、請求項49記載の組成物。
【請求項51】
前記繊維強化材が組成物全体の1〜50重量%のレベルで存在する、請求項47記載の組成物。
【請求項52】
前記繊維強化材が組成物全体の10〜40重量%のレベルで存在する、請求項51記載の組成物。
【請求項53】
試験部材厚1.6mm以下でV−0のUL94試験値を有する、請求項47記載の組成物。
【請求項54】
臭素及び塩素を実質的に含まない、請求項47記載の組成物。
【請求項55】
フルオロポリマーをさらに含む、請求項47記載の組成物。
【請求項56】
前記フルオロポリマーが組成物全体の0.5〜5.0重量%のレベルで存在する、請求項55記載の組成物。
【請求項57】
前記フルオロポリマーがポリ(テトラフルオロエチレン)である、請求項55記載の組成物。
【請求項58】
組成物全体の1〜50重量%の非繊維状無機充填材をさらに含む、請求項47記載の組成物。
【請求項59】
前記非繊維状充填材がマイカ、クレー、タルク、ガラスフレーク、ミルドガラス、硫酸バリウム、二酸化チタン、硫化亜鉛、シリカ及びゼオライトからなる群から選択される、請求項58記載の組成物。
【請求項60】
当該組成物が2mmのオリフィスをもつ長さ8mm、幅9.5mmの押出ダイを用いて荷重6.7kg、337℃においてASTM試験法D1238で測定して、20〜60ml/10minのメルトフローを有する、請求項47記載の組成物。
【請求項61】
ポリオレフィン及びカルボン酸アルキルエステルからなる群から選択される離型剤をさらに含む、請求項47記載の組成物。
【請求項62】
難燃性熱可塑性樹脂組成物であって、
(j)ポリエステルカーボネートと、
(k)ガラス繊維と、
(l)ペルフルオロブチルスルホン酸カリウム、スルホンスルホン酸カリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムからなる群から選択されるスルホン酸塩と、
(m)カルボン酸アルキルエステルと
を含んでいて、2mmのオリフィスをもつ長さ8mm、幅9.5mmの押出ダイを用いて荷重6.7kg、337℃においてASTM試験法D1238で測定して、20〜60ml/10minのメルトフローを有する組成物。
【請求項63】
請求項1記載の組成物から作られた物品。
【請求項64】
請求項18記載の組成物から作られた物品。
【請求項65】
請求項20記載の組成物から作られた物品。
【請求項66】
請求項45記載の組成物から作られた物品。
【請求項67】
請求項47記載の組成物から作られた物品。
【請求項68】
請求項62記載の組成物から作られた物品。

【公表番号】特表2007−502347(P2007−502347A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523216(P2006−523216)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/024767
【国際公開番号】WO2005/017043
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】