説明

流量制御弁

【課題】パイプ形状になっているウォームホイルの中空のパイプ状の部分内で生じた切粉などの塵埃がパイプ状の部分の他方から拡散し、磁気センサが誤検知することを防止する。
【解決手段】ウォームホイル4の回転中心部分に有底円筒状の袋部42を形成し、弁体2が一端に取り付けられて弁体を往復移動させるロッドの他端をウォームホイルの袋部の内部に収納して、ロッドの他端部分で生じる切粉などの塵埃が上記磁気センサの設置位置に移動しないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば給湯装置に内蔵され、給湯装置内の給水管内を流れる水の流量を連続して増減させる流量制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
上述のような流量制御弁は、水などの流体が通過する弁口と、この弁口を開閉すると共に、弁口との距離を増減することによって弁口を通過する流体の流量を変化させるように構成されている。この弁体の移動はモータによって自動で行われるように構成されている。例えば、モータの回転軸にウォームを取り付けると共に、このウォームにウォームホイルを噛合させ、ウォームホイルが回転することによって弁体を進退移動させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このものでは、ウォームホイルの中心を中空のパイプ状に形成して内周面にネジ部を形成すると共に、このネジ部に噛合する回り止めされた移動部材をパイプ状の内部に設けている。一方、弁体は弁軸の一端に取り付けられており、弁軸の他端にはこの移動部材が取り付けられている。
【0003】
ウォームホイルが回転すると、移動部材は回り止めされているのでウォームホイルの回転軸線に沿って直線移動する。移動部材には弁軸を介して弁体が連結されているので、移動部材が直線移動すると弁軸と共に弁体が直線移動する。なお、ウォームホイルが逆転すると弁体は逆方向に直線移動する。このようにウォームホイルを正逆回転させることにより弁体が往復移動し、弁体と弁口との距離が連続して変化することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−139065号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の流量制御弁では、ウォームホイルの中心部分が中空のパイプ形状になっているので、このパイプ状の部分の一方から可動部材が挿入され螺合するとパイプ状の部分の他方は開放されることになる。また、ウォームホイルの回転位相を検知するためにウォームホイルには磁石が埋め込まれており、その磁石が通過する位置に磁気センサが取り付けられている。この磁気センサはウォームホイルのパイプ状の部分の開放されている側に取り付けられているので、パイプ状の部分内で生じた切粉などの塵埃がパイプ状の部分の他方から拡散し、磁気センサの設置部分に移動する場合が生じる。この塵埃は必ずしも磁性体でなくても磁気センサの検知部分に作用すると、磁気センサが誤検知する恐れが生じる。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、切粉などの塵埃が発生しても磁気センサの設置位置に飛散しない流量制御弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明による流量制御弁は、ステッピングモータで回転するウォームにウォームホイルを噛み合わせてウォームホイルを回転させ、このウォームホイルの回転運動を直線運動に変換して弁体を往復移動させる流量制御弁であって、ウォームホイルに永久磁石を取り付けると共に、この永久磁石の磁界を検知してウォームホイルの回転位相を検出するための磁気センサを内部に組み込んだものにおいて、ウォームホイルの回転中心部分に有底円筒状の袋部を形成し、上記弁体が一端に取り付けられて弁体を往復移動させるロッドの他端をウォームホイルの袋部の内部に収納して、ロッドの他端部分で生じる切粉などの塵埃が上記磁気センサの設置位置に移動しないようにしたことを特徴とする。
【0008】
従来の流量制御弁ではウォームホイルのパイプ状の部分が開放されているので切粉等の塵埃が飛散したが、上記構成では他端が閉鎖された有底円筒状に形成した袋部としたため、袋部内で切粉が生じても底部によって他端が閉鎖され、袋部から外へと切粉が飛散しない。
【0009】
ところで、袋部を回転中心に形成したのでウォームホイルの回転軸線がぶれないように規制する部分を別途設けることが望まれる。そこで、上記磁気センサはウォームホイルの一側に対峙するように取り付けられ、上記ウォームホイルの袋部は底部が一側に突出するように形成され、ウォームホイルの他側にウォームホイルの回転軸線がぶれないように規制する筒状のガイド部を形成し、このガイド部の端面と上記袋部の底部外面とでウォームホイルのスラスト方向の移動を規制することが望ましい。
【0010】
その際、上記袋部の底部外面にグリス溜まりとなる凹部を形成すると共に、袋部の円筒部外周面をケーシングで受けてウォームホイルの中心軸の傾きを防止すると、ウォームホイルの回転状態が更に安定する。
【発明の効果】
【0011】
以上の説明から明らかなように、本発明は、ウォームホイルの回転中心に形成する中空部分を有底円筒状の袋部としたので、袋部内で切粉等が生じても袋部から外へ切粉等が飛散せず、磁気センサの誤作動が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】ウォームホイルの形状を示す斜視図
【図3】磁気センサの固定構造を示すIII-III矢視図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照して、1は本発明による流量制御弁であり、本実施の形態では、給湯装置に組み込まれ、出湯量を増減制御するため通水経路の途中に設置されている。この流量制御弁1の上流には流量計Fが直列に設けられており、流量制御弁1を通過する流水量を流量計Fが検知して流水量を図外の制御装置によってフィードバック制御するように構成されている。
【0014】
流量制御弁1には水が通過する弁口11が設けられており、この弁口11を開閉する弁体2が弁軸21の一端に取り付けられている。この弁軸21は自己の長手方向に沿って進退するように構成されており、図において下側に移動すると弁体2が弁口11を閉鎖して水が流れなくなる。逆にその状態から弁軸21が上方に移動すると弁体2が弁口11から離れて開弁し、水は弁口11を通って下流へと流れる。弁軸21を更に上方に移動させると弁体2が弁口11から離れ、弁口11を通過する流水量が増加する。弁軸21を進退させて弁体2と弁口11との距離を増減させることにより弁口11を通過する流水量が増減する。
【0015】
弁軸21の他端には可動部材22が取り付けられている。弁軸21と可動部材22とは相互に回り止めされている必要はないが、可動部材22が弁軸21から外れないように止め金具であるeリング21aが弁軸21に取り付けられている。この可動部材22の外周面は上下2段に分かれており、下部にネジ部22aが形成され、上部にセレーション部22bが形成されている。ネジ部22aは固定側の保持部材6に螺合しており、セレーション部22bはウォームホイル4の袋部42の内周面に形成したセレーション部4aに係合している。このため、ウォームホイル4が回転すると可動部材22も回転し、ネジ部22aの作用によって可動部材22が上下する。上述のように、可動部材22は弁軸21の他端に固定されているので、可動部材22が上下すると弁軸21を介して弁体2が上下することになる。
【0016】
図2を併せて参照して、ウォームホイル4の外周面にはウォームギヤ部41が形成されており、モータの回転軸3に固定されたウォーム31と螺合している。従って、モータの回転軸3が正逆回転するとウォームホイル4も正逆回転する。ウォームホイル4の回転中心に位置するように有底円筒状の袋部42を形成した。この袋部42の内周面には上述の通りセレーション部4aを形成した。また、袋部42の外周面に傾きを防止するためのラジアル軸部42aを設けた。
【0017】
また、袋部42の底部42cは図において上側に突出しており、この底部42cの外面にグリス溜まり42bを設けた。一方、このウォームホイル4の下部にはウォームホイル4の回転軸線がぶれないように規制する円筒状のガイド部43を形成し、このガイド部43の内周面43aを円柱状の回転基準部10aに被せて摺動させることによりウォームホイル4の回転軸線がラジアル方向にぶれないようにした。また、このガイド部43の端面43bと袋部の底部42cとでウォームホイル4を上下方向から挟んでウォームホイル4のスラスト方向の位置決めを行うようにした。
【0018】
ところで、ウォームホイル4の回転軸線は上述の通り、ガイド部43の内周面43aと回転基準部10aとによってぶれないように規制されるが、傾き防止のためのラジアル軸部42aが回転軸線に対して偏心していると、ラジアル軸部42aとケース10とが接触して抵抗となる。そこで、ガイド部43の内周面43aと回転基準部10aとのクリアランスに対して、ラジアル軸部42aとケース10とのクリアランスのほうが大きくなるように設定した。但し、ラジアル軸部42aとケース10とのクリアランスが多少大きくなっても、グリス溜まり42bからのグリスがこのクリアランス内に存在することになるので底部42c近傍で生じた切粉等の塵埃はグリスに捕捉されてそれ以上飛散することはない。
【0019】
ウォームホイル4は樹脂製であり、射出成形した後に永久磁石52をはめ込み、熱溶着して固定した。そして、この永久磁石52に図において上方から対向する位置に磁気センサ51を配設した。この磁気センサ51は基板5上に取り付けられており、基板5はケース10に固定されている。ウォームホイル4が回転すると1回転ごとに永久磁石52が磁気センサ51の直下を通過する。磁気センサ51は永久磁石52が通過すると、それを検知して検知信号を出力する。この検知信号から図外の制御装置はウォームホイル4の回転位相を1回転ごとに検知し、かつ位相を補正することができる。
【0020】
図示のごとく基板5はウォームホイル4の袋部42に近接して取り付けられるので、基板5と袋部42とが接触し、あるいは干渉する恐れがある。そこで、図3に示すように、ケース10に位置決め用として1対の突起10bを設けて、基板5が正規の取付位置より袋部42に近づかないようにした。
【0021】
上記の構成による流量制御弁1では、可動部材22が昇降する際、可動部材22はウォームホイル4と共に回転するが、可動部材22と弁軸21とが回り止めされていない状態では弁軸21は必ずしも可動部材22に同期して一緒に回転するとは限らない。そのため、可動部材22の上面とeリング21aとの間に滑りが生じ、切粉が発生する恐れがある。ところが、その切粉が発生する箇所を袋部42が上方から覆っているので、磁気センサ51の設置位置まで切粉が飛散することはない。
【0022】
なお、袋部42の外周面に形成したラジアル軸部42aによってウォームホイル4が傾かないように構成されているが、ラジアル軸部42aにはグリス溜まり42bからグリスが供給されるので、上述したように袋部42の上部画面周辺で発生した切粉等の塵埃はグリスによって捕捉され同じく磁気センサ51の設置位置まで飛散することはない。
【0023】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0024】
1 流量制御弁
2 弁体
31 ウォーム
4 ウォームホイル
42 袋部
51 磁気センサ
52 永久磁石
F 流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモータで回転するウォームにウォームホイルを噛み合わせてウォームホイルを回転させ、このウォームホイルの回転運動を直線運動に変換して弁体を往復移動させる流量制御弁であって、ウォームホイルに永久磁石を取り付けると共に、この永久磁石の磁界を検知してウォームホイルの回転位相を検出するための磁気センサを内部に組み込んだものにおいて、ウォームホイルの回転中心部分に有底円筒状の袋部を形成し、上記弁体が一端に取り付けられて弁体を往復移動させるロッドの他端をウォームホイルの袋部の内部に収納して、ロッドの他端部分で生じる切粉などの塵埃が上記磁気センサの設置位置に移動しないようにしたことを特徴とする流量制御弁。
【請求項2】
上記磁気センサはウォームホイルの一側に対峙するように取り付けられ、上記ウォームホイルの袋部は底部が一側に突出するように形成され、ウォームホイルの他側にウォームホイルの回転軸線がぶれないように規制する筒状のガイド部を形成し、このガイド部の端面と上記袋部の底部外面とでウォームホイルのスラスト方向の移動を規制したことを特徴とする請求項1に記載の流量制御弁。
【請求項3】
上記袋部の底部外面にグリス溜まりとなる凹部を形成すると共に、袋部の円筒部外周面をケーシングで受けてウォームホイルの中心軸の傾きを防止することを特徴とする請求項2に記載の流量制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−122506(P2012−122506A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271582(P2010−271582)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】