説明

海水の淡水化装置及び含水物の脱水方法

【課題】
海水の淡水化にも、野菜や果実に含有している水分の淡水化にも使え、かつ濃縮物の回収もできる脱水法は蒸発法である。雰囲気の気圧を下げ、水蒸気蒸発が起こる現象を利用して海水を蒸発させることが第1処理であり、水蒸気を真水に還元することが第2処理である。この第1処理を低温化で行い、従来の熱エネルギーの必要性を無くし、第2処理では結露のために冷凍行程を無くすことが、本発明が解決しようとする課題である。
【解決手段】
空気中の水蒸気を飽和に達しさせないために、第1処理では、航空機の翼の上下を逆に取り付けた翼に高速空気を大量に流し、含水物に接する面の雰囲気気圧を下げ、含水物からの水分を蒸発させ、この水蒸気と空気とが混合した不飽和湿り空気を発生させる。そして、第2処理では凝縮室の気圧を上げ、不飽和湿り空気を飽和させ、親水性に表面改質した結露板に水蒸気を凝縮させて蒸留水を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空気流の作る気圧差を利用して含水溶液から真水と脱水物を分離回収する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油を使わず、洋上で得た風力や潮力による電力で、その場採取した海水から有用金属資源あるいは飲料水や工業用水を取り出すことができる。このため、輸入依存度が高い我が国の産業体質を改善し、体制を立て直すことができる。本願発明者による非特許文献1「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え<風力発電による海洋資源回収と洋上工場」の3章の冒頭である。2003年の我が国の水使用量は約839億mで、農業用水が66%、生活用水が19%、工業用水が14%を占めている。2003年の1人当たりの生活用水使用量は1日当り313リトッルである。一方、 世界では11億人が水不足を訴え、中国や中東では工業用水の不足が経済成長の障害要因となっている。これらの国に、洋上において海水から淡水化した真水を輸出する事も国際貢献の一つであろう。勿論、最近増加してきたこれらの国への海水淡水化プラント輸出をさらに増やしていくことも国際貢献である。従来、海水の淡水化装置は船舶用造水装置として発達し、その後、離島や砂漠地帯を皮切りに、陸上における淡水供給にも利用されるようになってきた。海水淡水化の方法には、海水から塩分を残して水のみを取り出す蒸発法、冷凍法、逆浸透法と、逆に塩分を除去して淡水を残す、イオン交換透析膜法などがある。蒸発法は海水を加熱、蒸発させ、発生する水蒸気を凝縮させて淡水を得る方法で、単蒸留法は海水を加熱して、水だけを蒸発させ、その水蒸気を凝縮して純水を取り出す方法である。この単蒸留装置を10段に並べ、淡水化エネルギーは真水1トンあたり63 kWhである。この蒸発法で最も普及しているのは、多段フラッシュ蒸発法で、これを直列に多数連結して多段式とし、室内の圧力を順次低くすることにより、各段で蒸発せずに残った海水を次の室でフラッシュ蒸発させ、熱効率をあげるように工夫されている。この方法は大形装置に適しており、もっとも多く実用されている装置である。このプロセスに必要な電力エネルギーは真水1トンあたり42 kWhである。
冷凍法、水の融点は0℃であるが、海水は−1.9℃と僅かに海水の方が低いため、この性質を利用して、海水を徐々に冷やしていくと、真水の部分だけ凍り氷ができる。氷自身には塩分は含まれていないが、氷の表面に付着している塩分を洗浄後、その氷を融解して淡水を得る方法でいたって簡単な製造方法である。このプロセスに必要な電力エネルギーは真水1トンあたり10.6 kWhと低いのが特徴である。
現在、蒸発法に次いで普及しているのが逆浸透法である。この方法は、水は通すが塩分は通さない半透膜を使って真水を作る方法で、半透膜で仕切られた容器の一方に真水を、他方に海水を入れ、海水の側からおよそ25kg/cm2以上の圧力が加えられると、海水側から半透膜を通って真水が押し出される。この方法は、蒸着法や冷凍法と異なり淡水採取に相の変化を伴わないので、所要エネルギーが少なくてすむ。このプロセスに必要な電力エネルギーは真水1トンあたり0.69〜3.5kWhと低い。
イオン交換透析膜法は、陽イオン交換膜と陰イオン交換膜を交互に並べて多くの室にくぎった電気透析槽に海水を入れ、直流を通すと、陽イオンは陰極側に、陰イオンは陽極側へ移動する。我が国ではこの濃縮の働きを利用して製塩が行われており、実用膜の開発、透析技術などの点で世界のトップレベルにある。この方法では真水1トンあたり8kWhと電力エネルギー消費量が比較的少なくて済むが、樹脂が交換容量分のイオンを吸着し能力が劣化すると再生を行う必要があり、この際、塩酸や苛性ソーダなどを必要とする。
【0003】
海水は約96%が水であり、その他に3.5%の塩と微量な金属から構成されている。本願発明者による非特許文献1「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え<風力発電による海洋資源回収と洋上工場」の2章で述べているように、海水を淡水化した残渣である濃縮塩水からは石膏(CaSO4)、方解石(CaCO3)、食塩(NaCl)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、塩化カリウム(KCl)、塩化マグネシウム(MgCl2)が析出する。我が、この海水から食塩を生産したのが天日製塩法であった。海岸の平坦な砂地に導入された海水は、太陽熱と風力とにより蒸発し、塩分だけが砂粒に付着する。これに再度海水を注ぎ、砂粒から分離した濾液を煮詰めて塩を析出させる入浜式塩田法や、海水が斜面を徐々に流下する間に水分が蒸発する方式でかん水を作り、このかん水を直接煮詰めて塩を抽出させる流下式塩田法などが古くから行われていた。これらの製塩法は全て塩田に引き込んだ海水の水分を太陽熱と風力とにより蒸発させて濃縮塩水(かん水)を作り、それを煮詰め、108℃内外で析出するカルシウム化合物結晶を除去し、約180℃で析出する食塩結晶を製品として回収し、残りの濾液(苦汁))からマグネシウム化合物を回収するものであった。しかし、近年になると、塩田を用いず、イオン交換樹脂を用いた電気分解法で濃縮かん水を製造するイオン交換樹脂法へと代わり、現在に至っている。
この濃縮塩水を洋上で得られた電力で電気分解して、これら洋上工場内で得られる送電ロスが無い電力と、その場採取した深層水や表層水などの海水を洋上電解工場で電気分解して、ナトリウム、マグネシウム、苛性ソーダあるいは塩酸、硫酸、塩素、水素、酸素などを生産する。この金属ナトリウムは、電力消費地の火力発電所で水を注ぎ水素を発生させ、その燃焼エネルギーで蒸気タービン発電を行う。ここで副産物として得られる苛性ソーダは、従来のソーダ工業の最終製品である。この苛性ソーダを再度風力発電で電気分解すれば、金属ナトリウムを再生産する。これは文字通り、エンドレスな“水素燃料サイクル”である。さらに、金属ナトリウム製造工程で副産物として得られる硫酸、塩酸、金属マグネシウムは、これまで大電力を使って製造していた代物である。この主製造物の金属ナトリウムは、水よりも軽い電力貯蔵固体として、枯渇の心配が全く無く、CO2も出さず、放射能も出さない持続可能で再生可能な化石燃料の代替エネルギーとなることが、本願発明者により、特許文献1「オンサイト統合工場」(WO/2008/142995)及び非特許文献2「Climate Change and sustainable Development (Chapter 19)」Edited by Ruth A. Reck, Ph.D. , Linton Atlantic Books, Ltd. に開示されている。
【0004】
海水の淡水化法として広く用いられているのは、蒸発法、電気透析法、逆浸透膜法である。これらの利点と欠点を揚げて見ると、蒸発法は大量に真水を作ることができ海水の質を問わないが、多量の熱エネルギーを必要とし、石油の豊富な産油国や火力発電所や原子力発電所の廃熱を利用して採算ベースを考慮するところが多い。石油原産国のサウジアラビアでは石油よりも高い水を多数のプラントで製造している。カザフスタン共和国には、カスピ海の塩湖水の淡水化(日産12万トン)を目的として、高速増殖型原子炉(BN-350)が1973年運転を開始し、原発の廃熱で淡水化を行う予定であった。しかし、原子炉本体の老朽化のため1999年廃止されている。
電気透析法は、電力の消費量は少なく、廃液として出る濃縮塩が金属ナトリウムや金属ナトリウムの原料になる利点は大きい。しかし、イオン交換樹脂が交換容量分のイオンを吸着し、能力劣化が起こり、その再生に大量の塩酸や苛性ソーダが必要なため、淡水コストが高くなる欠点を有している。
逆浸透膜法は海水側に高圧をかけて真水を透過させる方式であり、投入エネルギーが少ないことが特徴である。ただ、海水中のけん濁物は半透膜に付着して水の透過性を悪くするため、海水の前処理が必要である。
【0005】
果実や野菜は水の貯蔵庫である。 海水中の水分は96%、胡瓜も同じく96%である。 メロン96%、スイカ93%、キャベツ92%、みかん90%、トマト90%、冬瓜90%、キューイ85%と殆どが水の貯蔵庫である。草についても同様で、90%内外の水分を含んでいる。したがって、これらを飲料水に転換することができる。とくに家畜の餌になるサイレージは原料草の乾燥が不十分のままサイロに収納されると、多量の排汁が発生し、窒素や有機物などの汚染物質のため環境汚染を引き起こす。このため水分量を70%以下にすることが好ましい。一般に乳酸発酵の適水分域は60〜70%であるため、良好なサイレージ発酵につながり、家畜の飼料として効果的である。このように脱水は多くの分野で必要である。とくに風力が強い酪農地帯、例えば南米のアルゼンチンやチリなどのパンパ地方、あるいは北海道において風力エネルギーで圧縮空気を作り、その空気で88%が水分である牛乳や果実などの酪農製品の脱水や家畜の餌になるサイレージの製造に利用することができると考える。このように、淡水化は海水だけの物ではなく、果実も野菜も淡水化の価値があると考える。ブラウン・ランドーン博士は「蒸留水を飲むことにより、細胞の老化物を定期的に洗い流し、蒸留水の最たるものは果物や野菜の水である」と非特許文献3「蒸留水と肉体の浄化」で述べている。
水溶液を濃縮する方法として、濃縮還元がある。これは果汁の水分をいったん蒸発させ、1/4〜1/6程度に濃縮する。この濃縮された果汁の状態でドラム缶に密封保存する。この方法は、果汁の重量、容積を大幅に減らして運ぶことが可能になり、輸送費の削減につながる。そして、出荷時に、蒸発させた分の水分を補い、元の搾汁の状態(果汁100%)に戻したものが、濃縮還元である。一般的にはこの濃縮果汁に水道水を加えて還元したものを天然果汁と称しているが、本願発明で得られる野菜や果実から回収した再蒸留水で還元することが望ましいと考える。
これら野菜、草、果実などの脱水濃縮にも、海水の淡水化同様、蒸発法、冷凍法、逆浸透法などがある。しかし、これら植物は温度を上げられないため、真空蒸発法や冷凍して氷を結晶化して水分を取り除く方法、あるいは半透膜を利用する方法などがあり、これらを組み合わせることもある。これらの脱水法は、その他にも生体物質の血液、アミノ酸、脂肪、タンパク質、糖類、炭水化物、牛乳などの濃縮、賞味期限が切れた清涼飲料水、ビタミン類、あるいは健康飲料水などから真水と栄養分との分離回収、酸、塩基あるいは重金属などの濃縮などに利用できる。
【0006】
野菜、海産物、肉や果実は長期保存の為には乾燥や漬物などにするのが一般的である。長期保存するためには、塩漬が最も簡単であるが、塩漬けによる保存は塩分過剰摂取になり、高血圧、脳卒中や心筋梗塞につながる。乾燥させて食料を保存する利点は塩分過剰摂取にならず、さらに野菜に含まれるカリウムは食塩を対外に排出する効果がある。一般に、生鮮野菜や鮮魚は、賞味期間が短いため、輸送、冷蔵など経費がかかる。これを乾燥状態で消費地に送れば、含有水分が無い分だけ軽量化ができ輸送費が軽減され、かつ鮮度が落ちた食品の廃棄処分率も軽減できる。
【0007】
従来、蒸留法や逆浸透膜法は、海水から飲料水を採取した残りの濃縮水は廃棄していた。他方、電気透析法は海水を濃縮して塩を採取するが主で、水は廃棄していた。ところが最近これらの手法を組み合わせて、真水と濃縮水を共に利用する報告が多くなってきた。蒸留法を基に、他の手法を組み合わせた方法として、旭化成ケミカルズ株式会社の山村は特許文献2「塩水の処理方法」(特許公開2008-223115)において、逆浸透膜法による淡水化により、廃棄物として発生する濃縮塩水を更に電気透析法により濃縮し、更にこれを蒸発法で濃縮して得られた塩結晶を電気分解処理する方法を開示している。本願発明者の村原らは特許文献3「海洋資源エネルギー抽出・生産海洋工場」(特許公開2007-331681)において逆浸透膜法や蒸発法で淡水化した真水と濃縮塩水(かん水)とに分離した後、かん水をイオン交換透析により更に濃縮した結晶を太陽炉と風力発電や海流発電による電力とで溶融塩電気分解してナトリウムやマグネシウムを製造することを開示している。東レ株式会社の小岩らは特許文献4「複合ナノろ過膜」(特許公開2010-137192)において、海水を蒸発法で処理した時の欠点であるスケールの発生を防止するために、複合ろ過膜を用い、淡水を高率で回収する方法を開示している。
電気透析法による海水の淡水化する過程で陰極側に発生する水素ガスによる起電力を取り出し、電気透析に必要な電力の一部とする方法が、三菱電機株会社の森口らにより特許文献5「淡水化方法及び装置」(特許公開平9-57258)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】「オンサイト統合工場」(WO/2008/142995)
【特許文献2】「塩水の処理方法」(特許公開2008-223115)
【特許文献3】「海洋資源エネルギー抽出・生産海洋工場」(特許公開2007-331681)
【特許文献4】「複合ナノろ過膜」(特許公開2010-137192)
【特許文献5】「淡水化方法及び装置」(特許公開平9-57258)
【特許文献6】「海水淡水化装置」(特開平11−216459)
【特許文献7】「レーザーによるフッ素樹脂の表面改質方法」(特許1858351)
【特許文献8】「固体材料表面改質方法および固体材料表面改質装置」(特許第3316069)
【特許文献9】「C-H結合を有するプラスチック材料の表面改質方法」(特許第3467508号)
【特許文献10】「固体表面の改質方法および装置」(特許第3527969号)
【特許文献11】「Solid Surface Modification Method and Apparatus」(米国特許:USP- 6117497)
【特許文献12】「Solid Surface Modification Method and Apparatus」(欧州特許:EUP-0644227)
【特許文献13】「Solid Surface Modification Method and Apparatus」(米国特許:USP-6689426)
【特許文献14】「固体材料表面の光化学的改質方法」(特願2002-350311)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】村原正隆・関和市 「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え」パワー社出版(2007年12月発行)
【非特許文献2】「Climate Change and sustainable Development (Chapter 19)」Edited by Ruth A. Reck, Ph.D. , Linton Atlantic Books, Ltd.
【非特許文献3】「蒸留水と肉体の浄化」、ブラウン・ランドーン著、ブラウン・ランドーン協会編
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
蒸発脱水方は、海水の淡水化にも、野菜や果実に含有している水分の淡水化にも使え、かつ濃縮物の回収のも使える。しかし蒸発法を大気中で行なうには、水の蒸発温度(摂氏100度)近くにしなければならず、そのための石油の燃焼などの熱エネルギーが必要である。一方真空雰囲気での蒸発は脱水には効果があるが、電力消費量が多い大型真空装置が必要であり、しかも脱水した水分の回収は難しい。ところが自然は見事に海水を淡水化している。海水は太陽熱によって蒸発し、水蒸気となって上昇するが、次第に温度が下がると水蒸気は凝縮して空気中の塵が核となって水滴に成り雲を作り雨になって地上に戻る。このように、水は常温で放置して置けば、絶えず気化して水蒸気となる。そして密閉容器の中では、水蒸気は一定圧力に成るまでは蒸発するが、それ以上は蒸発しない。この蒸発が停止する圧力を飽和蒸気圧という。この飽和蒸気圧は温度と気圧に関係し、海水の温度が上昇すると飽和蒸気圧値は大きくなるから水の蒸発量は大きくなる。同様に、温度が低ければ飽和水蒸気圧値は低いため、蒸発量は少ない。一方、雰囲気の気圧を下げると、飽和蒸気圧値が下がるため、水の沸点温度も下がり、海水の温度が低い場合でも水の蒸発量は大きくなる。このように、例え海水温度が低くても、気圧を下げれば、水蒸気蒸発が起こる。この現象を利用して海水を蒸発させることが第1処理(第1機能)である。そして、蒸発した水蒸気を真水に還元することが第2処理(第2機能)である。この第1処理(第1機能)を低温化で行い、従来の熱エネルギーの必要性を無くし、第2処理(第2機能)では水蒸気を冷却して結露させるための冷凍するための電力エネルギーを軽減又は無くすことが、本発明が解決しようとする課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
海水は温度が低くても、気圧を下げれば、水蒸気蒸発が起こる。この現象を利用して低圧雰囲気を形成させて海水を蒸発させることが第1処理(第1機能)であり、蒸発した水蒸気を真水に還元することが第2処理(第2機能)である。西芝電機株式会社及び株式会社東芝の田辺らは「海水淡水化装置」特許文献6(特開平11−216459)において海水を入れた減圧容器を真空ポンプで吸引し、飽和水蒸気以下にした水蒸気を凝縮器に入れて冷却凝縮させ淡水を得る方法を開示している。しかし、この発明では真空ポンプを用いて減圧容器室を飽和水蒸気以下にするため、凝縮過程では空気の介在はなく、水蒸気のみを冷却凝縮させていると考える。
一般に、減圧容器室の気圧を下げると、飽和蒸気圧値は下がる。このため、水の沸点温度も下がり、海水の温度が低くても真水の蒸発量は多くなり空気中の湿度が上がる。したがって、本発明での、脱水条件は、第1処理(第1機能)では飽和水蒸気圧値に近づけることに努力し、かつ空気中の水蒸気を飽和に達しさせないことである。この飽和水蒸気圧値に近づけるためには、雰囲気気圧を低くすることが要求される。更に、淡水の製造量を多くするためには、空気中の水蒸気を飽和に達しさせないことである。そのため、高速空気を大量に供給することが必要であり、かつ空気の流れから気圧を下げ、含水物から水分と空気とが混合した不飽和湿り空気を発生させる必要がある。この空気流の流れから低圧域を発生させる方法として、ベルヌイの定理を応用する。
一般の航空機の翼で揚力を発生させる原理は、翼の上面を流れる空気の流速が下面より速くなると、上面の圧力が大気圧より低くなる現象を利用したものである。このため、翼体の形状は、上面(凸面アッパーキャンバー)は高速気流が流れ、下面(ロワーキャンバー)では低速気流が流れるような形状を採用している。
この飛行中の航空機の翼体上面に生ずる気圧降下現象を利用して、航空機が上面に気圧の低い領域を作るが、本発明ではそれとは正反対の翼の下面側に気圧降下を起こさせている。すなわち、下面に高速流を流し、上面に低速流が流れるようにした。実際には、航空機翼体の上面(凸面アッパーキャンバー)と下面(ロワーキャンバー)形状を反転させて風洞の中に固定し、風洞に固定された翼形状の板の下側の低圧部位に海水若しくは含水物を置く。
更に、真水の回収に係る第2処理(第2機能)では不飽和湿り空気を飽和又はそれ以上にすることである。これを満たすために、凝縮室の気圧を上げ、水蒸気を飽和状態にし、かつ結露を誘導するために雰囲気温度を下げ、更に、湿り空気の衝突板を備える。更に好ましくは、空気衝突板の表面は濡れ性を高くする材料を用いるか又は親水性表面処理を施しておくことが望ましい。この親水性処理又は撥水性処理については本願発明者の村原らによりプラスチックや金属あるいはセラミックスなどの材料表面に光化学的に水酸基又は撥水基を置換する方法が、特許文献7「レーザーによるフッ素樹脂の表面改質方法」(特許1858351)、特許文献8「固体材料表面改質方法および固体材料表面改質装置」(特許第3316069)、特許文献9「C-H結合を有するプラスチック材料の表面改質方法」(特許第3467508号)、特許文献10「固体表面の改質方法および装置」(特許第3527969号)、特許文献11「Solid Surface Modification Method and Apparatus」(米国特許:USP- 6117497)、特許文献12「Solid Surface Modification Method and Apparatus」(欧州特許:EUP-0644227)、特許文献13「Solid Surface Modification Method and Apparatus」(米国特許:USP-6689426)、特許文献14「固体材料表面の光化学的改質方法」(特願2002-350311)に開示されている。とくに本発明において、特筆すべきことは凝縮室の気圧を上げることである。この現象は、自然現象(気象学)では起こらない。すなわち、気象学的には、上昇した水蒸気は上空では気圧は下がるのみで気圧の上昇はありえない。そして、気圧が下がれば下がるほど飽和蒸気圧値は小さくなり、原理的には、結露は難しくなる筈である。ところが、幸いにも、上空では温度が氷点下近くまで下がるため結露が起こる。もし、上空の気圧を局所的に高くすることが可能であれば、温度に関係なく結露が起こる。本発明では、気象現象では決して起こらない、水蒸気の凝縮雰囲気の気圧を1気圧近くまで上げることを実証している。即ち、第1処理(第1機能)では、高速空気により低圧部位を形成することにより水分を蒸発させ、第2処理(第2機能)では、第1処理(第1機能)で蒸発し、湿り気を持った水蒸気の凝縮雰囲気の気圧を1気圧近くまで上げることにより結露し易くしたものである。
【0012】
請求項1に記載の発明は、空気の流れを利用して常温で海水又は含水物を蒸発蒸留させ、濃縮物と真水とを分離回収する装置に関するものである。空気中の水蒸気が飽和したとき湿度は100%になる。水の雰囲気温度が摂氏100度では全ての水が蒸発して湿度100%の気体に成る。この時の水蒸気の圧力は760mmHg(1気圧)であり、この760mmHgを飽和蒸気圧という。飽和蒸気圧は温度が低くなると下がり、摂氏70度では約220mmHg(0.3気圧)である。したがって、若し雰囲気気圧を220mmHgまで下げれば、水は摂氏70度で沸騰して湿度100%になる。このように、含水物の雰囲気気圧を下げれば、低い温度で水蒸気を発生させることができる。
そこで、ここでは、低圧下で水蒸気蒸発を起させる目的で、矩形筒型風洞内に高速空気を流し、低圧部位を形成させる。一般に、風洞の高速空気は、低速風洞や亜音速風洞あるいは遷音速風洞ではファン(圧縮比:1.1以下)又はブロワー(圧縮比:1.2〜2)により風を送り、超音速風洞ではコンプレッサー(圧縮比:2以上)を用いる。ただしコンプレッサーで作った圧縮空気をボンベに蓄圧した高気圧圧縮空気を使うと、風洞入り口で圧縮空気が大気開放されるため、断熱膨張を起こし温度が急激に下がるため、一般的には、ボイラーで予め空気を暖める。
この風洞の開口部で大気開放された圧縮空気は、高速空気として所望する低圧部を形成させ、かつ水蒸気蒸発を起させる。この目的で、第1機能(第1処理)として、矩形筒型風洞構造体内部に航空機翼体の上面(凸面アッパーキャンバー)と下面(ロワーキャンバー)形状を反転させた形状の上下逆向き翼を配備し、この翼の真下に矩形筒型風洞構造体と一体化させた海水若しくは含水物充填用の容器を配設して、矩形筒型風洞構造体の開口部から圧縮空気を送風する。
そして、含水物充填用の容器中の含水物から発生した水蒸気は、高速空気と混合して不飽和湿り空気となって、真水の回収に係る第2機能(第2処理)に送られる。この第2機能(第2処理)の役割は、第1処理で蒸発した水蒸気の凝集雰囲気の気圧を上げるために、矩形筒型風洞構造体中央部流路から高速空気の出口方向に拡開する末広がり状ホーン形状構造体を構成する。これにより、ホーン形状構造体内部は外気の大気圧(1気圧)に近づくと同時に、ホーン形状構造体に拡開した高速空気は断熱膨張して雰囲気温度を下げる働きもする。このため 不飽和湿り空気は、末広がり状ホーン形状構造体内では気圧が上がり、かつ温度が下がるため、湿度が100%の飽和湿り空気となる。そこで、ホーン形状構造体の任意の位置の風下側に、飽和湿り空気の衝突角度を調整可能とし、かつ風の流れが閉塞又は過度に抑制されないようにした(大気開放面積は確保)、複数枚の結露板を単層又は多重層に配設する。そして、結露板の開度を自在に調整する機構により、垂直真下方向に結露板に結露した結露水を自重落下させて真水を回収するドレン容器を配設させる。ここで結露板は結露を誘引するために、濡れ性の高い材料あるいは結露板表面を親水性に表面改質処理(親水基(-OH)を置換)することが望ましい。
【0013】
請求項2に記載の発明は、矩形筒型風洞構造体の内部に低圧部位を形成させる位置に、航空機翼体の上面(凸面アッパーキャンバー)と下面(ロワーキャンバー)形状を反転させた形状の翼体を配備させ、空気の流速を反転した翼の下面側(凸面アッパーキャンバー)と反転した翼の上面側(ロワーキャンバー)で調整し、反転した翼の下面側(凸面アッパーキャンバー)の空気の流速を反転した翼の上面側(ロワーキャンバー)より増大させて、海水若しくは含水物充填用の容器8を反転した翼の下面側(凸面アッパーキャンバー)の低圧形成部位に矩形筒型風洞構造体と一体化させて配設させたものである。又、翼体の固定方法に関するものである。反転させた翼体の迎え角及び含水物充填用の容器との距離を調整するために、翼体の重心部となる軸が矩形筒型風洞構造体の両壁面で固定され、かつ、該軸が上下及び翼体角度を自在に調整、変位可能とするハンドル機構を備えている。
重心部となる軸が矩形筒型風洞構造体の両壁面で固定された翼体が風上から風を受けると、空気の流れが速くなると、速さの2乗に比例して抵抗が大きくなる。この抵抗で最も大きいのが圧力抵抗である。若し空気の流がスムーズに翼の後方まで流れれば、流れの剥離が起きない。このため翼型を流線型にする。この翼型の上弦をアッパーキャンバー、下弦をロワーキャンバーと言い、風上側を前縁、風下側を後縁と言う。さらに前縁と後縁を結んだ線を翼弦線と言う。この翼弦線と風の流れとの角度を迎え角と言う。この角度が生じた時に、航空機の翼では上面(アッパーキャンバー)を流れる空気の流れは、下面(ロワーキャンバー)を流れる空気の流れより速くなる。この高速流が気圧を下げる。この結果として揚力が発生する。ここで翼を流線型ではなく平板にしても上面と下面では空気の流れの差が生じ、同様に揚力は発生する。しかし、平板では圧力抵抗が大きいので、翼は流線形形状を採用し、かつ上面(アッパーキャンバー)を凸面にし、高速流を起こし易くして、低圧部を形成する。本発明では、この気流が作る低圧部を利用して含水物から水分を蒸発させる。このため、風洞構造体内部に航空機翼体の上面(凸面アッパーキャンバー)と下面(ロワーキャンバー)形状を反転させた形状に配備し、形成された低圧部位の底面には風洞構造体と一体化させた海水若しくは含水物充填用の容器を具備させる。さらに、反転させた翼の迎え角及び含水物充填用の容器との距離を調整するために、翼体の重心部となる軸が矩形筒型風洞構造体の両壁面で固定され、かつ、該軸が上下及び翼角度を自在に調整、変位可能とするハンドル機構を備えている。
【0014】
請求項3に記載の発明は、地球上で吹く自然風を脱水装置のエネルギー源に使うための集風装置に関するものである。請求項1記載の矩形筒型風洞構造体の入り口に効率よく集風させるために、矩形筒型風洞構造体先端部には風上側が末広がりに拡開するホーン形状開口部としたものである。地球上では太陽エネルギー分布の違いで高気圧・低気圧が生まれ、高気圧から低気圧へと流れる空気流が風である。地球の中緯度地域の偏西風、熱帯地域の貿易風、南極や北極地域の極東風。大陸の辺縁部のモンスーン。海岸付近では日中の海風、夜間の陸風、夜間放射冷却によって山肌が冷やされ、山の斜面に沿って下降する冷たい山風、日中山肌が温められて山の斜面に沿って上昇する暖かい谷風。湿った風が山を登るときに起こる、断熱膨張による冷却と、山を下る時に起こる断熱圧縮による昇温により空気に含まれる水分が減少した乾いた風のことをフエーン。ヨーロッパ中部から東部に居座る大陸性の冷たい気団がアルプス山脈を越えて東西方向に吹き降ろす風速が40m/秒にも達する風のことをボラ。冬季に山から吹き降ろす風のことを颪。大きな建物の周囲の狭い範囲で発生する風がビル風である。これら、海風、陸風、山谷風、フエーン、ボラ、颪、ビル風などの自然風を集風するために、大口径の御椀状の風上側が末広がりに拡開するホーン形状構造体の開口部を請求項1記載の矩形形筒型風洞の先端部に取り付け、流路中央部付近に高速空気送風により所望する低圧部を形成するための自然風を利用した集風装置である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の脱水装置を利用して海水若しくは含水物から脱水し、真水を得る方法に関するものである。即ち、空気の流れを利用して常温で海水又は含水物を蒸発蒸留させ、濃縮物と真水とを分離回収する方法に関するものである。各物質の飽和蒸気圧値は温度によって変化し、温度が高いほど飽和蒸気圧値は高くなる。一方、気圧を下げれば、飽和蒸気圧値は降下させた気圧に等しいので、温度は低くなる。これは地上での水の沸点が摂氏100度であるのに対し、富士山(3776m)では、気圧が480Hg(640hPa、0.63気圧)であるから、沸点は摂氏88度である。しかるに、富士山頂では飽和蒸気圧値は480mmHgである。すなわち、摂氏88度で水は100%蒸発して湿度100%になる。とは言え、脱水だけを考えると、湿度を100%にする必要は無い。洗濯物を干しておくと自然に乾く。勿論富士山頂では洗濯物の乾きは更に早い。この乾燥現象は空気中の水蒸気が飽和に達していないからである。したがって、含水物を速い速度で脱水するには、雰囲気の気圧を下げても、あるいは雰囲気温度を上げても、何れか一方又は両方でも湿度100%は簡単に達成する。そこで本発明では気圧を下げる方法を採用する。しかし、注意しなければ成らないことは、湿度を100%にしてしまっては、それ以上の蒸発は起こらない。そこで本願請求項4では、空気が静止した状態では湿度が100%になるように設定した後、空気中の水蒸気が飽和蒸気圧に達しないように、大量の空気を流す。請求項4の脱水方法の説明は請求項1の脱水装置で詳しく説明してあるので、本願発明が含アルコール溶液の濃縮もできることを記載する。例えばバイオエタノールは本願発明者村原による非特許文献1「“風力よ”エタノール化からトウモロコシを救え<風力発電による海洋資源回収と洋上工場」の5章で述べているように、アルコール発酵の酵母菌は酸素が少ない状態でのみアルコール発酵が進み、かつアルコール濃度が18〜20%を超えないことが発酵条件である。これを95%の濃度に濃縮し、更に脱水して100%の燃料用アルコールは完成する。この95%までの脱水に本願発明の方法が使用できる。ただし、エタノールの1気圧における沸点は摂氏78度だから、水よりも早く蒸発する。したがってアルコール水溶液の濃縮はアルコール水溶液が入った容器中のエタノールを蒸発させて飽和湿りアルコール空気を結露させて回収し、最後に、容器の中に残た液体が真水である。
本発明による海水若しくは含水物からの脱水方法は、第1処理では高速空気の流れを利用して低圧部位を作り、含水物からの蒸発気体を空気に混合させて不飽和湿り空気を作り、第2処理では、送風された不飽和湿り空気の雰囲気気圧を高くして、飽和湿り空気に変えて、結露を誘発させる方法が採られている。とくに第2処理の雰囲気気圧を高くすることが本発明の特徴である。この請求項1記載の脱水装置及び請求項4記載の脱水方法の脱水方法では、雰囲気気圧をホーン形状構造体を使っているが、その代わりに、機械的にコンプレッサーにより断熱圧縮して、高気圧にして水蒸気を液化することができる。一般に断熱圧縮すると雰囲気温度が上がり、飽和蒸気圧値を摂氏100度付近まで上がってしまうことが懸念されるが、スクリュー型ロータリーコンプレッサーを採用すれば空気の排気温度も摂氏60度内外に抑えられるので、真水の回収は比較的楽である。更に、このスクリュー型ロータリーコンプレッサーの回転軸と風洞(矩形又は円形)の開口部の吸入空気ファンの回転軸を同一軸としてモーターで回転させるターボファン・エンジン型風洞を構成すると構造を簡略化することができる。このターボファン・エンジン型風洞を用い、第1処理において、含水物からの蒸発気体と高速空気の混合した不飽和湿り空気とした後、第2処理のコンプレッサー内部で圧縮されて生じた飽和湿り空気を、更に圧縮・液化させ、水として回収することが可能である。該矩形筒型風洞構造体流路中央部から高速空気の出口方向には、拡開する末広がり状ホーン形状構造体を有し、前記拡開するホーン形状構造体の任意の位置の風下側に飽和湿り空気の衝突角度を調整可能とする複数枚の結露板を多重層に配備し、該結露板の開口度に応じた垂直真下方向に該結露板に結露した結露水を自重落下させて真水を回収するためのドレン容器を配備させた。これが請求項1記載の海水の淡水化又は含水物の脱水装置を用いた海水の淡水化又は含水物の脱水方法に関するものである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、海水若しくは含水物から脱水させる処理対象物として、飲用に供する真水の回収と脱水された濃縮物を鉱物資源、工業薬品、長期保存食料、長期保存飼料などを分離回収するための目的物に関するものである。海水は真水と濃縮水から金属ナトリウム、金属マグネシウム、塩酸、硫酸を回収するために使われる。南米のアタカマ塩湖、ウニュー塩湖、ボリビア塩湖、アルゼンチン・オラロス塩湖、チベット塩湖などの塩湖はリチウムの埋蔵量が多い。その多くが塩田において天日と風を利用して濃縮している。その期間は半年以上である。飲料水採取を目的にしているのはカスピ海・塩湖である。源泉の温度が摂氏25度以上を温泉と呼び、それ以下を鉱泉と呼ぶ。温泉水は海水に比べて金属成分が多く、水溶液の温度が高いため、蒸留には都合が良い。有馬温泉はリチウムが多く、玉川温泉はアルミニウムが多い。塩酸や硫酸は海水の電気透析中に生成するが、これらは濃度が低いため、脱水し濃度を高めることができる。果汁は水分をいったん蒸発させ、1/4〜1/6程度に濃縮する。この濃縮された果汁の状態でドラム缶に密封保存する。消費地で製品化する時、この濃縮果汁を原料として蒸発させた分の水分を補い、元の搾汁の状態(果汁100%)に戻したものが、濃縮還元ジュースであり、輸送費の削減や長期保存に長けている。牛乳も88.7%が水のため、濃縮牛乳は、果汁同様輸送費の削減や長期保存に長けている。発酵アルコールの濃度は18〜20%である。これを蒸留濃縮して25%〜35%が焼酎で、50%から70%がウイスキー、ブランデー、中国酒、コニャック、ウオッカなどである。燃料用バイオエタノールは100%が必要であるため、本発明の方法で95%まで濃縮する。更に脱水して100%の燃料用アルコールは完成する。ただし、エタノールの1気圧における沸点は摂氏78度だから、水よりも早く蒸発する。したがってアルコール水溶液の濃縮はアルコール水溶液が入った容器中のエタノールを蒸発させて飽和湿りアルコール空気を結露させて回収し、容器の中に残った液体が真水である。色素を乾燥させ保存する時に脱水が必要である。生体物質(アミノ酸、脂肪、タンパク質、糖類、炭水化物)、あるいは血液などを濃縮して長期保存を行なう。
固体の含水物としての果実や野菜は水の貯蔵庫である。 海水中の水分は96%、胡瓜も同じく96%である。 メロン96%、スイカ93%、キャベツ92%、みかん90%、トマト90%、冬瓜90%、キューイ85%と殆どが水の貯蔵庫である。草についても同様で、90%内外の水分を含んでいる。野菜のレタスも96%の水分を含む。地下茎のジャガイモ中の水分は83%澱粉12.1%、ごぼう中の水分78.6%。熱帯地方で生育する椰子。海岸の砂地でも育ち、1個の椰子のみの中には1リットルもの水が含まれている。この水も淡水である。これら植物は土壌から水分を汲みあげ、葉や、実や茎に貯えている。それらの水が全て蒸留水である。海水や湖水あるいは河川から蒸発した水分が、雨となって地上に降注ぐ。正しくこれも蒸留水である筈である。しかし大気汚染の影響をもろに受け、純粋な蒸留水とは言い難い。ところが植物が保存する水は紛れも無く蒸留水である。硬い皮で被われた椰子、比較的長期間水を貯蔵できるイモ類は除き、その他の果実や野菜は収穫後直ぐに大気中に水を発散し腐敗する。水を保持している期間は極短い。虫が食っているとか鮮度が落ちたからと言って、廃棄される野菜や果実も多い。これら蒸留水を回収し飲料として供給すれば、飲用に適さない水を飲んでいる水不足の国々の人々を救うことになる。肉類の供給源で欠かせないのは動物への飼料供給である。牧草が常時採取できるところ以外は、冬季の飼料を確保しておく必要がある。その際たる物がサイレージである。秋口になると、家畜の餌になるサイレージは原料草の乾燥が不十分のままサイロに収納されることが多い。ところが不十分の乾燥は、結果として、多量の排汁が発生し、窒素や有機物などの汚染物質のため環境汚染を引き起こす。このため水分量を70%以下にすることが好ましい。一般に乳酸発酵の適水分域は60〜70%であるため、良好なサイレージ発酵につながり、冬季の家畜の飼料として効果的である。さらにサイレージ製造中の30%の水分を飲料水に転用できる。とくに肉や魚は鮮度が要求されるため冷凍は欠かせない。しかし冷凍は冷凍時、保存期間及び解凍のために電力を消費する。もし乾燥肉や乾燥魚類の調理法が更に進めば長期保存が可能になり、塩を母体とした長期保存から塩を使わない保存法として、本発明が、世界の飢えと水不足を救う手段になると考える。
更に、本発明による脱水を目的とする処理対象物として、生ごみの脱水による嵩の縮小、鮮度を保持させる目的で食品を乾燥状態にした状態での輸送、干物作り、洗濯物の乾燥等日常生活に適用できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、飽和湿り空気を結露させ、蒸留水として、あるいはアルコール液として回収する手段に関するものである。気象学では、上昇気流によって空気が上空に上がり、断熱膨張により温度が下がり、空気中の塵が核と成って水滴が成長し、雲になり、降水に至ると説明されている。問題なのはこの核である。若し大気中に塵が存在し無かったら、水滴の表面張力が強いため、空気中の水分子は凝縮できない。もし、この水滴の表面張力を小さくすることができれば、結露は容易になる。この表面張力を小さくすることは、水と被結露剤(塵、結露板)の濡れ性高くする(接触角を小さくする)ことである。本発明者は材料表面の所望の場所に光化学的手法で親水基(-OH)を置換する方法を、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13に開示している。とくに特許文献14では、全てのプラスチック、金属、セラミックなどの固体材料の被改質表面に、予め1〜3分ぐらいの弱いプラズマ前処理を施した後、被改質表面に水を塗布し水の薄液層を形成させ、193nm以下の波長の紫外線を照射すると恒久的な親水性が維持されることを開示している。このような親水性処理面は大面積の結露板を形成でき、塵が核と成って雲を作る現象よりも、大量の水滴を直接生成させるため効果的である。この結露板をホーン形状構造体の任意の位置の風下側に複数枚配置し、大気開放される空気の出口が閉塞されず、かつ乾燥空気となって大気開放されるように注意を払い、飽和湿り空気流が結露板に接触する際の衝突角度を調整可能とするブラインド状結露板を複数枚単層又は複数層に並べた結露装置を構成する。
一般に、結露は低温の方が進行が早い。そこで、空気の流れる方向と平行な向きに親水性処理が施された複数枚の金属板製フィンが等間隔に並ぶ、冷却水が流れるパイプ付ラジエーターを複数本配置する。この方法は結露雰囲気温度が低くなり、結露板の間を空気が流れるため、空気の流れが阻害されず、しかも大気開放される空気は乾燥空気となるので効果的である。
本発明の矩形筒型風洞構造体大気開放される末端部でも風力は強いので風力発電を行ない、濃縮された食塩の電気分解に使われる。この風力発電は、飽和湿り空気中での回転であるから、風車プロペラ(ブレード)は結露板の役割を兼ね備え、親水性が施された幅広のプロペラが望ましい。そしてブレードに当たった水蒸気は結露水として遠心力で弾かれ風車のフードを伝わってドレン容器に導かれる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、含水溶液充填用の容器内にヒーターで加熱し、飽和蒸気圧値を上げて蒸気の発生量を多くするための手段に関するものである。本発明では高速空気流により低圧部を発生させ、飽和蒸気圧値を下げているが、含水物の温度は高い方が蒸発量は多くなる。そこで海水若しくは含水溶液を電気ヒーターで加熱することもできる。この電力は、矩形筒型風洞構造体大気開放される末端部の風力発電によりえられた電力を使用する。
【発明の効果】
【0019】
上記のように、本発明によれば、自然風や風力発電で得られた圧搾空気を脱水装置の高速空気源として用い、風洞型脱水装置の中央部に上下を逆にして取り付けた航空機用翼とその翼の真下に供えた海水または含水物を、高速空気流により発生する低気圧により、含水物から発生する水蒸気と空気の混合体である不飽和湿り空気を、通路を徐々に拡大させて気圧を高め、飽和湿り空気にして結露させ、蒸留水として回収する。この蒸留水は、飲用に適さない水を飲んでいる世界中の水不足で苦しむ人々を救うことになる。また家畜の飼料であるサイレージの製造に使えば冬季の家畜の飼料として効果的である。さらにサイレージ製造中の30%の水分を飲料水に転用できる。このように食にまつわる栄養不足や水不足を解消し、かつ脱水によって副産物として、海水の濃縮物から得られる金属ナトリウムは石油の代替エネルギーとして世界のエネルギー経済あるいは食料生産の活性化に優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】高速空気で海水又は含水物を蒸発蒸留させ、濃縮物と真水とを分離回収する装置の概略図である(請求項1、請求項4の説明図)。
【図2】矩形筒型風洞構造体の内部に低圧部位を形成させる位置に、上下を反転させた形状の航空機翼体(上下逆向き翼)を取り付け、かつ矩形筒型風洞構造体開口部に自然風を集風するフード(請求項3)を取り付けた概念図である(請求項1、請求項2、請求項3、請求項4の説明図)。
【図3】真水の回収に係る第2機能(第2処理)に、複数の結露板を配置する概念図である。
【図4】真水の回収に係る第2機能(第2処理)に、冷却水が流れるパイプ付ラジエーターを複数本配置する概念図である(請求項6の説明図)。
【図5】真水の回収に係る第2機能(第2処理)の結露板を風力発電用プロペラとし、結露板と発電を兼ね合わせた装置概念図である(請求項6、請求項7の説明図)。
【図6】矩形筒型風洞構造体の内部に低圧部位を形成させる位置に、互いが凸面で向かい合わせた航空機翼体を取り付けた概念図である。(請求項1、請求項4の説明図)。
【図7】コンプレッサーを用いた脱水装置の概念図(含水物を上面から見た図)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の効果的な実施の形態を図1〜図7に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
図1は高速空気で海水又は含水物を蒸発蒸留させ、濃縮物と真水とを分離回収する装置の概略図である(請求項1の説明図)。
矩形筒型風洞1の開口部2で大気開放された圧縮空気3は高速空気として所望する低圧部を形成させて水蒸気蒸発を起させる目的で、第1機能4(第1処理)として、矩形筒型風洞構造体内部に航空機翼体の上面(凸面アッパーキャンバー5)と下面(ロワーキャンバー6)形状を反転させた形状の上下逆向き翼7を配備し、この翼7の真下に矩形筒型風洞構造体と一体化させた海水若しくは含水物充填用の容器8を配設して、矩形筒型風洞構造体の開口部2から圧縮空気3を導入する。
そして、含水物充填用の容器8の含水物9から発生した水蒸気は、高速空気と混合して不飽和湿り空気10となって、真水の回収に係る第2機能11(第2処理)に送られる。この第2機能11(第2処理)の役割は、第1処理4で蒸発した水蒸気の凝集雰囲気の気圧を上げるために、矩形筒型風洞構造体1の中央部流路から高速空気の出口方向に拡開する末広がり状ホーン形状構造体12を構成する。これにより、ホーン形状構造体12の内部は外気の大気圧(1気圧)に近づくと同時に、ホーン形状構造体12に拡開した高速空気は断熱膨張して雰囲気温度を下げる働きもする。このため 不飽和湿り空気10は、末広がり状ホーン形状構造体12の内部では気圧が上がり、かつ温度が下がるため、湿度が100%の飽和湿り空気13となる。そこで、ホーン形状構造体12の任意の位置の風下側に飽和湿り空気13の衝突角度を調整可能とし、かつ風の流れが閉塞又は過度に抑制されないように大気開放面積は確保しながら、複数枚の結露板14を単層又は多重層に配設する。そして、結露板の開度を自在に調整する機構により、垂直真下方向に結露板に結露した結露水を自重落下させて真水を回収するドレン容器15を配設させる。ここで結露板は結露を誘引するために濡れ性の高い材料あるいは結露板表面を親水性に表面改質処理(親水基(-OH)を置換)することが望ましい。
【0023】
図2は矩形筒型風洞構造体の内部に低圧部位を形成させる位置に、上下を反転させた形状の航空機翼体(上下逆向き翼)を取り付け、かつ矩形筒型風洞構造体開口部に自然風を集風するフード(請求項3)を取り付けた概念図である(請求項1、請求項2、請求項3、請求項4の説明図)。矩形筒型風洞構造体1の内部に低圧部位(第1機能4)を形成させる位置に、航空機翼体の上面(凸面アッパーキャンバー5)と下面(ロワーキャンバー6)形状を反転させた形状の上下逆向き翼7を配備させ、空気の流速を翼7の下面側(凸面アッパーキャンバー5)と翼7の上面側(ロワーキャンバー6)で調整し、翼7の下面側(凸面アッパーキャンバー5)の空気の流速を翼7の上面側(ロワーキャンバー6)より増大させて、海水若しくは含水物充填用の容器8を翼7の下面側(凸面アッパーキャンバー5)の低圧形成部位(第1機能4)に矩形筒型風洞構造体1と一体化させて配設させたものである。又、翼体の固定方法に関するものである。反転させた翼体(上下逆向き翼7)の迎え角16及び含水物充填用の容器8との距離を調整するために、翼体の重心部となる軸17が矩形筒型風洞構造体1の両壁面で固定され、かつ、該軸が上下及び翼体角度を自在に調整、変位可能とするハンドル機構18を備えている。第1機能(第1処理)4の低圧部位の底面には風洞構造体と一体化させた海水若しくは含水物充填用の容器8を備え、内部の含水物9は不飽和湿り空気10として、第2機能(第2処理)11で飽和湿り空気13になり、親水性処理された結露板14で結露し、ドレン容器15に真水が回収される。含水溶液9が海水の場合はドレン容器15に真水が回収され、含水物充填用容器8には濃縮食塩水が残る。含水溶液9がアルコールの場合はドレン容器15に約95%アルコールが回収され、含水物充填用容器8には水が残る。
請求項3には海風、陸風、山谷風、フエーン、ボラ、颪、ビル風などの自然風を集風する集風装置を示しているが、図2ではホーン形状構造体(集風装置)19である。図1で示した矩形筒型風洞構造体1の開口部2(図2では矩形点線(開口部2))に大口径風上側が末広がりに拡開するホーン形状構造体(集風装置)19を取り付け、海風、陸風、山谷風、フエーン、ボラ、颪、ビル風などの自然風を集風して、流路中央部の第1機能(第1処理)4付近に高速空気送風により所望する低圧部を形成させ、含水物の大量淡水化及び濃縮を行なう。
【0024】
図3は真水の回収に係る第2機能(第2処理)に、複数の結露板を配置する概念図である。
複数の結露板14はホーン形状構造体12の任意の位置の風下側に複数枚配置し、大気開放される空気の出口が閉塞されず、かつ乾燥空気となって大気開放されるように注意を払い、飽和湿り空気流が結露板に接触する際の衝突角度を調整可能とするブラインド状結露板を複数枚単層又は複数層に並べた結露装置20を構成する。
図4は真水の回収に係る第2機能(第2処理)に、冷却水が流れるパイプ付ラジエーターを複数本配置する概念図である。一般に、結露量は低温の方が多い。そこで、図4に示すように空気の流れる方向と平行な向きに親水性処理が施された複数枚の金属板製フィン21が等間隔に並ぶ、冷却水が流れるパイプ付ラジエーター22を複数本配置する。この方法は結露雰囲気温度が低くなり、結露板の間を空気が流れるため、空気の流れが阻害されず、しかも大気開放される空気は乾燥空気となるので効果的である。
図5は真水の回収に係る第2機能(第2処理)の結露板を風力発電用プロペラとし、結露板と発電を兼ね合わせた装置概念図である。本発明の矩形筒型風洞構造体1で大気開放される末端部でも風力は強い。そこでこの飽和湿り空気13により風車プロペラ(ブレード)23を回転させ風力発電を行なう。この風力発電は、飽和湿り空気中での回転であるから、風車プロペラ(ブレード)23は結露板の役割を兼ね備え、親水性が施された幅広のプロペラが望ましい。そして風車プロペラ23に衝突した水蒸気は結露水として遠心力で弾かれ末広状ホーン形構造体12に当たり、ドレン容器15に導かれる。ここで発生した電力は、濃縮海水の電気分解用電力としてあるいは請求項7に記載のように、含水溶液充填用の容器8内の含水物9を加熱用ヒーター24として使い、飽和蒸気圧値を上げて蒸気の発生量を多くするために使用する。
【0025】
図6は矩形筒型風洞構造体の内部に低圧部位を形成させる位置に、互いが凸面で向かい合わせた航空機翼体を取り付けた概念図である。(請求項1、請求項4の説明図)。
2枚の航空機翼体の上面(凸面アッパーキャンバー5)を互いに向き合わせ、含水物9が入っている含水物充填用容器8の面に垂直に立て、風上から高速空気を流して低圧部を形成させて水蒸気蒸発を起させる第1機能(第1処理)4領域を形成する。これにより翼のアッパーキャンバー5に挟まれた空間の気圧が下がり、含水物9から水蒸気を引き上げ、不飽和湿り空気が、水回収のための第2機能(第2処理)11におくられ、2つの翼の夫々の背面(ロワーキャンバー6)を通過してきた低速空気と混合し、気圧が高くなり、更に断熱膨張も手伝って飽和湿り空気13が生成し、結露板14に衝突して真水を生成する。
図7はコンプレッサーを用いた脱水装置の概念図(含水物を上面から見た図)である。
本発明では海水若しくは含水物を脱水するために、第1処理では高速空気の流れを利用して低圧部位を作り、含水物からの蒸発気体を空気に混合させて不飽和湿り空気を作り、第2処理では、送風された不飽和湿り空気の雰囲気気圧を高くして飽和湿り空気に変えて、結露を誘発させる方法が採られている。とくに第2処理の雰囲気気圧を高くすることが本発明の特徴である。この雰囲気気圧をホーン形状構造体を使う代わりに、機械的にコンプレッサーにより断熱圧縮して、高気圧にして水蒸気を液化することができる。一般に断熱圧縮すると雰囲気温度が上がり、飽和蒸気圧値を摂氏100度付近まで上がってしまうことが懸念されるが、スクリュー型ロータリーコンプレッサー25を用すれば、空気の排気温度も摂氏60度内外に抑えられるので、真水の回収は比較的楽である。更に、このスクリュー型ロータリーコンプレッサー25の回転軸と風洞(矩形又は円形)の開口部の吸入空気ファン26の回転軸を同一軸としてモーター27で回転させるターボファン・エンジン型風洞28を構成すると構造を簡略化することができる。このターボファン・エンジン型風洞を用い、第1処理において、2枚の航空機翼体の上面(凸面アッパーキャンバー5)を互いに向き合わせ、含水物9が入っている含水物充填用容器8の面に垂直に立て、風上から高速空気を流して低圧部を形成させて水蒸気蒸発を起させる第1機能(第1処理)4領域を形成する。これにより翼のアッパーキャンバー5に挟まれた空間の気圧が下がり、含水物9から水蒸気を引き上げ、不飽和湿り空気が、水回収のための第2機能(第2処理)11におくられ、2つの翼の夫々の背面(ロワーキャンバー6)を通過してきた低速空気と混合し、含水物からの蒸発気体と高速空気の混合した不飽和湿り空気とした後、第2処理のコンプレッサー26で圧縮されて生じた飽和湿り空気を、更に圧縮・液化させ、ドレン容器15で水として回収する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
海水は96%が水であり、4%が塩類である。水は飲料水として、塩類の中で最も多いのがナトリウムである。本発明は風の流れが作る低圧と、風の流れ断熱膨張して温度を下げ、断熱圧縮して温度を上げる現象を使いわけ、かつ航空機の翼が作る気圧差を利用して、海水を淡水化し、脱水された濃縮物はエネルギー資源にする。しかも脱水のエネルギー源は風力から得るものである。この海水の淡水化と濃縮は、海水に止まらず、塩湖水、温泉水、鉱泉水、酸、塩基、塩、果汁、牛乳、有機物(砂糖水)、無機物、アルコール、色素、生体物質(アミノ酸、脂肪、タンパク質、糖類、炭水化物)、健康飲料水及びビタミン類や薬品、果実、野菜、肉、魚貝類など多くの含水物から蒸留水の形で飲料水を回収し、濃縮物は資源の再利用につながるため、産業のみならず、食料不足や水不足解決の手段として利用が広がるものと考える。本発明は、世界的資源の枯渇と資源高騰あるいはこれに伴う資源供給国の新規台頭や国際社会に影響力を拡大させている現況を沈静化させることは勿論のこと、無尽蔵にある海洋資源及びクリーンで再生可能な自然エネルギーを使って、化石燃料の代替エネルギー源を確保することは、四面を海に囲まれた我が国の産業にとっても地球環境上、更には経済的にも重要な手段になり得ると考える。
【符号の説明】
【0027】
1 矩形筒型風洞
2 開口部
3 圧縮空気
4 第1機能(第1処理)
5 アッパーキャンバー
6 ロワーキャンバー
7 翼(上下逆向き)
8 含水物充填用の容器
9 含水物
10 不飽和湿り空気
11 第2機能(第2処理)
12 ホーン形状構造体
13 飽和湿り空気
14 結露板
15 ドレン容器
16 迎え角
17 翼体の重心部となる軸
18 軸が上下及び翼体角度を自在に調整、変位可能とするハンドル機構
19 ホーン形状構造体(集風装置)
20 結露装置
21 金属板製フィン
22 パイプ付ラジエーター
23 風車プロペラ(ブレード)
24 ヒーター
25 スクリュー型ロータリーコンプレッサー
26 ファン
27 モーター
28 ターボファン・エンジン型風洞




【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水若しくは含水物から水蒸気を蒸発させる第1機能と、該蒸発した水蒸気を結露させ、真水に変える第2機能とを備えた矩形筒型風洞構造体において、含水物から水蒸気を蒸発させる前記第1機能が前記矩形筒型風洞構造体内部に圧縮空気を送風させる開口部から流路中央部にかけて高速空気送風により所望する低圧部位を形成させるに、前記矩形筒型風洞構造体内部に航空機翼体の上面(凸面アッパーキャンバー)と下面(ロワーキャンバー)形状を反転させた形状若しくは2つの翼体の凸面であるアッパーキャンバー部を対向させた位置に配備し、形成された該低圧部位の底面には前記矩形筒型風洞構造体と一体化させた海水若しくは含水物充填用の容器を具備させる前記第1機能と、蒸発した水蒸気の凝縮雰囲気の気圧を上げ、更に 温度を下げるための前記第2機能として、該矩形筒型風洞構造体流路中央部から高速空気の出口方向には、拡開する末広がり状ホーン形状構造体を有し、前記拡開するホーン形状構造体の任意の位置の風下側に飽和湿り空気の衝突角度を調整可能とする複数枚の結露板を配備し、該結露板の開口度に応じた垂直真下方向に該結露板に結露した結露水を自重落下させて真水を回収するドレン容器を配備させたことを特徴とする海水の淡水化又は含水物の脱水装置。
【請求項2】
前記矩形筒型風洞構造体内部には低圧部を形成する目的で配備された航空機翼体の重心部となる軸が矩形筒型風洞構造体の両壁面で固定され、かつ、該軸が上下及び翼角度を自在に調整、変位可能とするハンドル機構を有することを特徴とする請求項1記載の海水の淡水化又は含水物の脱水装置。
【請求項3】
前記圧縮空気が海風、陸風、山谷風、フエーン、ボラ、颪、ビル風などの自然風を集風して脱水装置のエネルギー源として供するために、前記矩形筒型風洞の両先端部には風上側が末広がりに拡開するホーン形状構造体を設け、流路中央部付近には高速空気送風により所望する低圧部を形成する構造体であることを特徴とする請求項1記載の含水物の脱水装置。
【請求項4】
海水若しくは含水物から水蒸気を蒸発させる前記第1機能である第1ステップと、該蒸発した水蒸気を結露させ、真水に変える前記第2機能である第2ステップとを備えた矩形筒型風洞構造体において、含水物から水蒸気を蒸発させる前記第1ステップが前記矩形筒型風洞構造体内部に圧縮空気を送風させる開口部から流路中央部にかけて高速空気送風により所望する低圧部位を形成させるに、前記矩形筒型風洞構造体内部に航空機翼体の上面(凸面アッパーキャンバー)と下面(ロワーキャンバー)形状を反転させた形状若しくは2つの翼体の凸面であるアッパーキャンバー部を対向させた位置に配備し、形成された該低圧部位の底面には前記矩形筒型風洞構造体と一体化させた海水若しくは含水物充填用の容器を具備させる第1ステップと、蒸発した水蒸気の凝集雰囲気の気圧を上げるための前記第2ステップとして、該矩形筒型風洞構造体流路中央部から高速空気の出口方向には、拡開する末広がり状ホーン形状構造体を有し、前記拡開するホーン形状構造体の任意の位置の風下側に飽和湿り空気の衝突角度を調整可能とする複数枚の結露板を多重層に配備し、該結露板の開口度に応じた垂直真下方向に該結露板に結露した結露水を自重落下させて真水を回収するドレン容器を配備させたことを特徴とする請求項1、請求項2及び請求項3記載の海水の淡水化又は含水物の脱水装置による海水の淡水化又は含水物の脱水方法。
【請求項5】
前記脱水を目的とする含水物が海水、塩水、塩湖水、温泉水、鉱泉水、酸、塩基、塩、果汁、牛乳、有機物(砂糖水)、無機物、アルコール、色素、生体物質(アミノ酸、脂肪、タンパク質、糖類、炭水化物)、健康飲料水及びビタミン類や薬品、果実、野菜、肉、魚貝類であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3及び請求項4記載の海水の淡水化及び含水物の脱水方法。
【請求項6】
前記結露板に結露水を得るために各結露板の開口度を自在に調整可能とする複数枚の多重層結露板に飽和水蒸気を衝突させ、若しくは冷却水が流れるパイプ付ラジエーター部材および/又は飽和湿り空気により回転するプロペラ部材であり、前記該部材の表面が親水性を有し、かつ、プロペラの回転により発電することを特徴とする請求項1及び請求項2及び請求項3記載の含水物の脱水装置。
【請求項7】
前記海水若しくは含水溶液充填用の容器内にヒータを具備し、前記プロペラの回転により発電した電源をヒータに供することを特徴とする請求項1、請求項2及び請求項3記載の含水物の脱水装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−40454(P2012−40454A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180884(P2010−180884)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(308026724)株式会社エム光・エネルギー開発研究所 (10)
【Fターム(参考)】