説明

消火装置

【課題】加圧ガスボンベを設置する必要がなく、点検にかかる人手が少なくてすみ、維持管理にかかるコストが低廉な消火装置を提供する。
【解決手段】消火装置本体1と、開放型噴射ヘッド2とが備えられている。消火装置本体1内には消火剤を貯留する貯留タンク4が設けられており、貯留タンク4は空気圧縮機5に接続されており、加圧可能とされている。また、貯留タンク4は配管6を介して開放型噴射ヘッド2に接続されており、配管6の途中には圧力スイッチ10が取付けられている。空気圧縮機5は、圧力スイッチ10のオン−オフによって駆動及び停止が行われ、貯留タンク4内の圧力が所定の範囲となるようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は小規模区画の火災の消火を行うための消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災の恐れがある小規模区画のための小型の消火装置として、消火剤の貯留タンクと、それを加圧するための加圧ガスボンベとを備えた、コンパクトな消火装置が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
これらの消火装置では、対象区域で火災が発生した場合に、加圧ガスボンベ内の高圧ガスを消火剤貯留タンクに供給し、貯留タンク内を昇圧させ、消火剤を放出する仕組みとなっている。加圧ガスボンベは、通常、封板で密閉されており、極めて気密性のよいものであるため、長期間経過してもガス圧はほとんど変化しない。このため、ガス圧の低下によるボンベ交換のスパンを長くできる利点がある。
【特許文献1】特開平6−292737号公報
【特許文献2】特開平8−215332号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、加圧ガスボンベは設置場所によっては法令規制の対象となることもあり、その場合には、設置にあたって種々の条件が義務づけられたり、廃棄の際の多くの制限が設けられていたりするため、管理が面倒となる。
【0004】
このため、消火剤の貯留タンク自体を常時加圧状態(蓄圧状態)に保持しておき、加圧ガスボンベをなくすることも考えられる。しかし、消火剤貯留タンクの気密性能は、加圧ガスボンベの封板による気密性能と比較して格段に劣っているため、ガス圧点検のための検査や最充填を頻繁に行わなくてはならない。このため、人手がかかり、維持管理コストが高くなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、加圧ガスボンベを設置する必要がなく、点検にかかる人手が少なくてすみ、維持管理にかかるコストが低廉な
消火装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の消火装置の第1の局面は、消火剤を貯留する貯留タンクと、該消火剤を所定の区域に散布するための噴射ヘッドと、該貯留タンクと該噴射ヘッドとを接続する配管と、該貯留タンク内の該消火剤を該配管を介して該噴射ヘッドへ輸送するための輸送手段とを備えた消火装置において、前記輸送手段は前記貯留タンク内を加圧可能とする空気圧縮機構であることを特徴とする。
【0007】
第1発明の消火装置の第1の局面では、輸送手段としての空気圧縮機構によって、貯留タンク内を加圧することができ、これにより、貯留タンク内の消火剤を噴射ヘッドへ輸送することができる。このため、消火剤の噴射ヘッドへの輸送のための加圧ガスボンベは不要であり、法令規制の対象となることがない。このため、より多くの防護対象に設置可能となる他、廃棄の際の多くの制限が課せられないことから、管理が極めて容易となる。
【0008】
第1発明の消火装置の第2の局面では、空気圧縮機構は、貯留タンク内の消火剤を噴射ヘッドに輸送するための圧縮空気の圧力が所定の範囲となるように圧力制御部によって制御されていることとした。こうであれば、いつでも貯留タンク内の消火剤を噴射ヘッドに輸送することが可能となり、ガス圧点検のための検査を頻繁に行うという必要はなく、維持管理に人手が少なくてすみ、維持管理コストを低廉なものとすることができる。
【0009】
第1発明の消火装置の第3の局面では、噴射ヘッドは、通常時においてもノズルが開放状態とされている開放型噴射ヘッドであり、火災感知器と、配管の途中に設けられた開閉弁と、該火災感知器からの火災信号を受けて該開閉弁を閉状態から開状態に切り替える開閉弁制御部とを備えていることとした。
こうであれば、火災時において火災感知器からの火災信号に基づいて開閉弁制御部が開閉弁を開状態とし、自動的に噴射ヘッドから消火剤を放出させることができる。
なお、開放型噴射ヘッドは複数本設置することもできる。
【0010】
第1発明の消火装置の第4の局面では、通常時はノズルが閉鎖状態とされており、火災時に熱によって自動的に開放状態とされる閉鎖型噴射ヘッドであることを特徴とした。
こうであれば、閉鎖型噴射ヘッドが自動的に火災時の熱を感知して自動的に開放され、消火剤が噴射ヘッドから噴霧されるため、火災感知器や複雑な制御装置を設ける必要がない。このため、火災感知器や制御装置を駆動するための電源も不要となり、停電時のための蓄電池の設置を不要とすることができる。
【0011】
第1発明の消火装置の第5の局面では、閉鎖型噴射ヘッドは所定区域内に複数個設置されていることとした。こうであれば、火災の発生した箇所の閉鎖型噴射ヘッドが最初に開放される。このため、消火剤が最も必要な箇所に集中して噴霧させることができる。
【0012】
第1発明の消火装置の第6の局面では、停電時においても消火装置を駆動可能とするための蓄電池が備えられていることとした。こうであれば、火災が原因で停電したり、火災時の安全確保のために電気の供給が強制的に停止されたりした場合でも、消火装置による噴射ヘッドからの消火剤の噴霧を行うことができる。
【0013】
第1発明の消火装置の第7の局面では、消火剤は電気絶縁性を有する液体消火剤であることとした。消火剤として電気絶縁性を有する液体消火剤を用いれば、水を使って消火することができない電気系統の火災や、一般火災や油火災の消火を行うこともできる。また、水損がないので、万が一液体消火剤を誤放出した場合でも、通電状態の電気系統に影響を与えない。さらには、高い揮発性を有するため、ふき取り清掃や廃液処理も不要である。このようなハロゲン系の液体消火剤としては、ドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オン等が挙げられる。
【0014】
第2発明の消火装置の第1の局面は、消火剤を貯留する貯留タンクと、該消火剤を所定の区域に散布するための噴射ヘッドと、該貯留タンクと該噴射ヘッドとを接続する配管と、該貯留タンク内の該消火剤を該配管を介して該噴射ヘッドへ輸送するための輸送手段とを備えた消火装置において、前記輸送手段は液送ポンプであることを特徴とする。
【0015】
第2発明の消火装置の第1の局面では、輸送手段としての液送ポンプを駆動することによって、貯留タンク内の消火剤を噴射ヘッドへ輸送することができる。このため、消火剤の噴射ヘッドへの輸送のための加圧ガスボンベは不要であり、法令規制の対象となることがない。このため、より多くの防護対象に設置可能となる他、廃棄の際の多くの制限が課せられないことから、管理が極めて容易となる。
【0016】
第2発明の消火装置の第2の局面では、噴射ヘッドは通常時においてもノズルが開放状態とされている開放型噴射ヘッドであり、火災感知器と、配管の途中に設けられた開閉弁と、該火災感知器からの火災信号を受けて液送ポンプを駆動する液送ポンプ制御部とを備えていることとした。こうであれば、火災時において火災感知手段からの火災信号に基づいて液送ポンプ制御部が開閉弁を開状態とし、自動的に噴射ヘッドから消火剤を放出させることができる。
【0017】
第2発明の消火装置の第3の局面では、噴射ヘッドは通常時はノズルが閉鎖状態とされており、火災時に熱によって自動的に開放状態とされる閉鎖型噴射ヘッドであることを特徴とした。こうであれば、閉鎖型噴射ヘッドが自動的に火災時の熱を感知して自動的に開放され、消火剤が噴射ヘッドから噴霧されるため、火災感知器や複雑な制御装置を設ける必要がない。このため、火災感知器や制御装置を駆動するための電源も不要となり、停電時のための蓄電池の設置を不要とすることができる。
【0018】
第2発明の消火装置の第4の局面では、閉鎖型噴射ヘッドは所定区域内に複数個設置されていることとした。こうであれば、火災の発生した箇所の閉鎖型噴射ヘッドが最初に開放される。このため、消火剤が最も必要な箇所に集中して噴霧させることができる。
【0019】
第2発明の消火装置の第5の局面では、火災時における配管圧力の低下によって火災信号を発生する圧力スイッチが設けられており、該圧力スイッチからの該火災信号によって液送ポンプが駆動することとした。こうであれば、火災が発生した場合、閉鎖型噴射ヘッドが作動して配管内の圧力が開放された場合に液送ポンプが作動し、消火剤を送り続けることができる。
【0020】
第2発明の消火装置の第6の局面では、停電時においても消火装置を駆動可能とするための蓄電池が備えられていることとした。こうであれば、火災が原因で停電したり、火災時の安全確保のために電気の供給が強制的に停止されたりした場合でも、消火装置による噴射ヘッドからの消火剤の噴霧を行うことができる。
【0021】
第2発明の消火装置の第7の局面では、消火剤は電気絶縁性を有する液体消火剤であることとした。消火剤として電気絶縁性を有する液体消火剤を用いれば、水を使って消火することができない電気系統の火災や、一般火災や油火災の消火を行うこともできる。また、水損がないので、万が一液体消火剤を誤放出した場合でも、通電状態の電気系統に影響を与えない。さらには、高い揮発性を有するため、ふき取り清掃や廃液処理も不要である。このようなハロゲン系の液体消火剤としては、ドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オン等が挙げられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態について、図面を参照しつつ詳述する。
(実施形態1)
実施形態1の消火装置は、図1に示すように、配電盤90内の壁に取付けられた継電器類91ならびに図示しない被覆電線を消火対象物とする消火装置である。この消火装置は、配電盤90の外側に近接して設けられた消火装置本体1と、配電盤90上の天井90aに取付けられた開放型噴射ヘッド2、火災感知器3a及び消火装置本体1の外部に取付けられたアラーム3bとが備えられている。
【0023】
消火装置本体1内には貯留タンク4が設けられており、貯留タンク4の中には消火剤としてドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オンが貯留されている。貯留タンク4は空気圧縮機5に接続されており、加圧可能とされている。また、貯留タンク4は配管6を介して開放型噴射ヘッド2に接続されており、配管6の途中には電磁式の開閉弁7が設けられている。さらに、貯留タンク4にはガス抜き管8を介して、貯留タンク内の圧力が貯留タンクの設計圧力未満となるようにするための、ガス抜き用の安全弁9が取付けられており、ガス抜き管8の途中には、圧力スイッチ10が取付けられている。空気圧縮機5は、圧力スイッチ10のオン−オフによって駆動及び停止が行われ、貯留タンク4内の圧力が所定の範囲となるようにされている。
【0024】
また、消火装置本体1の内部には、制御盤11が設置されており、制御盤11には、空気圧縮機5及び開閉弁7を制御するための制御部12と、蓄電池13とが設けられている。蓄電池13は配電盤90内から電力の供給を受け、消火装置に必要な電力を供給可能としている。また、制御部12は火災感知器3aからの火災信号を受けて、開閉弁7及びアラーム3bを駆動するとともに、空気圧縮機5への電気の供給を遮断するようになっている。
【0025】
次に、この消火装置の作用効果について説明する。
<通常時>
火災の発生していない通常の状態においては、開閉弁7は閉状態とされており、貯留タンク4は常時加圧状態で密閉されている。貯留タンク4内の密閉性は完全ではないため、内部の気体が少しづつ漏れる。そして、貯留タンク4内の圧力が所定の圧力以下になると、圧力スイッチ10がオン状態となり、空気圧縮機5が駆動する。これによって、貯留タンク4内の圧力が上昇し、所定の圧力に達したところで圧力スイッチ10がオフ状態となる。こうして、貯留タンク4内の圧力は再びもとの圧力に復帰する。このようにして、圧力スイッチ10のオン−オフが繰り返されて、貯留タンク4内の圧力は所定の範囲内で絶えず加圧状態とされる。
【0026】
<火災発生時>
火災発生時には、火災の熱により火災感知器3aが働き、火災信号が制御部12に送られる。火災信号を受けた制御部12は、配電盤90からの電気の受給を停止する。これにより、少なくとも消火装置本体1が、火災を起こしている配電盤90から電力の供給を受けることを防止することができる。こうして、火災時において、制御部12は配電盤90からの電気の供給が停止され、蓄電池13から電力の供給を受けることとなる。そして、火災信号に基づいて、アラーム3bを駆動させて火災の発生をアラーム音で知らせるとともに、開閉弁7を開状態とする。これにより、貯留タンク4内の消火剤(ドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オン)が配管6を通って開放型噴射ヘッド2から噴霧されて、消火が行われる。
【0027】
上記実施形態1の消火装置では、貯留タンク4が空気圧縮機5の駆動によって常時所定の圧力範囲となるように加圧されている。このため、密閉性に優れた加圧ガスボンベは不要となり、法令規制の対象となることがない。
また、貯留タンク4が常時所定の圧力範囲となるように加圧されているため、貯留タンク4内の消火剤を噴射ヘッド2に輸送することが可能となり、ガス圧点検のための検査を頻繁に行うという必要はなく、維持管理に人手が少なくてすみ、維持管理コストを低廉なものとすることができる。
さらには、火災によって停電したとしても、蓄電池13からの電力の供給によって、噴射ヘッド2からの消火剤の噴霧を連続的に行うことができる。
また、ハロゲン系の液体消火剤を用いれば、水を使って消火することができない電気系統の火災や、一般火災や油火災の消火を行うこともできる。また、水損がないので、万が一、液体消火剤を誤放出した場合でも、通電状態の電気系統に影響を与えない。さらには、高い揮発性を有するため、ふき取り清掃や廃液処理も不要で早期復旧が可能である。
【0028】
(実施形態2)
実施形態2の消火装置は、図2に示すように、配電盤92内の壁に取付けられた複数の継電器93a、93b、93cや、図示しない電気部品類を消火対象物とする消火装置である。この消火装置は、配電盤92の外側に近接して設けられた消火装置本体21と、継電器93a、93b、93c上の天井92aに取付けられた閉鎖型噴射ヘッド22a、22b、22cとが備えられている。
【0029】
消火装置本体21内には貯留タンク24が設けられており、貯留タンク24の中には消火剤としてドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オンが貯留されている。貯留タンク24は空気圧縮機25に接続されており、加圧可能とされている。また、貯留タンク24は配管26を介して閉鎖型噴射ヘッド22a、22b、22cに接続されており、配管26の途中には圧力スイッチ27a、27bが取付けられている。圧力スイッチ27aは空気圧縮機25及び継電器93aや、図示しない電気部品類に接続されており、圧力スイッチ27aのオン−オフによって、空気圧縮機25が駆動したり停止したりするようにされている。また、圧力スイッチ27bは蓄電池28及び消火装置21の外部に取付けられたアラーム29に接続されており、圧力スイッチ27bのオン状態によりアラーム29が鳴動するようになっている。圧力スイッチ27bの作動圧力は、圧力スイッチ27aの作動圧力より低く設定されている。さらに、貯留タンク24にはガス抜き管30aを介して、貯留タンク24内の圧力が設計圧力未満となるように、ガス抜き用の安全弁30bが取付けられている。
【0030】
閉鎖型噴射ヘッド22a、22b、22cは、図3に示すように、噴射ヘッド本体22dと、熱溶融ヒューズ22eとからなる。噴射ヘッド本体22dは、配管26(図2参照)に接続される管状のネジ部22fと、ネジ部22fの先に突出し、中央部が繰り抜かれたヒューズ保持部22gと、ヒューズ保持部22gの先端に取付けられた散水板22hとからなる。熱溶融ヒューズ22eはヒューズ保持部22gに取付けられており、管状のネジ部22fを塞ぐ閉塞板22iを支える構造とされている。熱溶融ヒューズ22eは約100°Cで溶解し、これによって閉塞板22iがネジ部22fから外れてネジ部22f内が配電盤92内と連通する構造とされている。
【0031】
次に、この消火装置の作用効果について説明する。
<通常時>
火災の発生していない通常の状態においては、貯留タンク24は常時加圧状態で密閉されているが、その密閉性は完全ではないため、内部の気体が少しづつ漏れる。そして、貯留タンク24内の圧力が所定の圧力以下になると、実施形態1の消火装置と同様に、圧力スイッチ27aがオン状態となり、空気圧縮機25が駆動する。これによって、貯留タンク24内の圧力が上昇し、所定の圧力に達したところで圧力スイッチ27aがオフ状態となる。こうして、貯留タンク24内の圧力は再びもとの圧力に復帰する。このようにして、圧力スイッチ27aのオン−オフが繰り返されて、貯留タンク24内の圧力は所定の範囲内で絶えず加圧状態とされる。
【0032】
<火災発生時>
一方、火災発生時には、閉鎖型噴射ヘッド22a、22b、22cの内、火元にもっとも近いヘッドの熱溶融ヒューズ22eが溶けて、閉塞板22iがネジ部22fから外れてネジ部22f内が配電盤92内と連通する(図3参照)。こうして、閉鎖型噴射ヘッド22a、22b、22cのいづれかが開放されて、貯留タンク24内のドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オンが配管26を通って開放された閉鎖型噴射ヘッドから噴霧されて、消火が行われる。これにより、配管26内の圧力が低下し、圧力スイッチ27a、27bがオン状態となる。これにより、アラーム29が鳴動し、消火剤が放出されていることを告知する。
【0033】
上記実施形態2の消火装置でも、実施形態1の消火装置と同様、貯留タンク24が空気圧縮機25の駆動によって常時所定の圧力範囲となるように加圧されているため、加圧ガスボンベは不要となり、法令規制の対象となることがない。
また、ガス圧点検のための検査を頻繁に行うという必要はなく、維持管理に人手が少なくてすみ、維持管理コストを低廉なものとすることができる。
さらには、噴射ヘッドとして、火災時に熱によって自動的に開放される閉鎖型噴射ヘッド22a、22b、22cを使用しているため、閉鎖型噴射ヘッド22a、22b、22cが自動的に火災時の熱を感知して自動的に開放され、消火剤が噴霧される。このため、火災感知器や複雑な制御装置を設ける必要がない。また、火災時において、火災の発生した箇所の閉鎖型噴射ヘッドのみが最初に開放されるため、消火剤を火元へ集中的に噴霧させることができる。
【0034】
なお、上記実施形態2の消火装置では、アラーム29を作動させるための蓄電池28が設けられていたが、アラーム29を設置しなければ、電源も不要となり、停電時のための蓄電池の設置を不要とすることができる。また、圧力スイッチ27aは、他の火災報知設備への信号を発信するために使用することもできる。
【0035】
また、閉鎖型噴射ヘッドの構造として、熱溶融ヒューズタイプのかわりに、ガラスバブルタイプ等を用いることも可能である。
【0036】
(実施形態3)
実施形態3の消火装置は、図4に示すように、配電盤94内の壁に取付けられた複数の継電器95a、95b、95cや、図示しない電気部品類を消火対象物とする消火装置である。この消火装置は、配電盤94の外側に近接して設けられた消火装置本体31と、継電器95a、95b、95cや図示しない電気部品類の上の天井94aに取付けられた閉鎖型噴射ヘッド33a、33b、33cとが備えられている。閉鎖型噴射ヘッド33a、33b、33cの構造は、実施形態2と同様である。
【0037】
消火装置本体31内には貯留タンク34が設けられており、貯留タンク34の中には消火剤としてドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オンが貯留されている。貯留タンク34には液送ポンプ35が接続されており、配管36を介して消火剤を閉鎖型噴射ヘッド33a、33b、33cへ輸送可能とされている。配管36の途中には逆止弁36aが設けられている。また、配管36の途中は、枝分かれして蓄圧タンク37が取付けられており、蓄圧タンク37には圧力スイッチ38a、38bが取付けられている。また、貯留タンク34の上部には、逆止弁34aが付いた吸気口34bが取付けられており、貯留タンク34内が負圧になった場合の外気の取り入れを可能にしている。
【0038】
液送ポンプ35は、圧力スイッチ38bのオン−オフによって駆動及び停止が行われ、蓄圧タンク37内、及び配管36内の圧力が所定の範囲となるようにされている。また、圧力スイッチ38aは蓄電池39及び配電盤94内に設けられたアラーム40に接続されており、圧力スイッチ38aのオン状態によりアラーム40が鳴動するようになっている。圧力スイッチ38aの作動圧力は、圧力スイッチ38bの作動圧力より低く設定されている。
【0039】
次に、この消火装置の作用効果について説明する。
<通常時>
火災の発生していない通常の状態においては、液送ポンプ35が配管36内を加圧した状態で停止されているため、配管36内及び蓄圧タンク37内は常時加圧状態で密閉されている。しかし、その密閉性は完全ではないため、蓄圧タンク37内の気体が少しづつ漏れる。そして、蓄圧タンク37内の圧力が所定の圧力以下になると、圧力スイッチ38bがオン状態となり、液送ポンプ35が駆動する。これによって、配管36内及び蓄圧タンク37内の圧力が上昇し、所定の圧力に達したところで圧力スイッチ38bがオフ状態となる。こうして、配管36内及び蓄圧タンク37内の圧力は再びもとの圧力に復帰する。このようにして、圧力スイッチ38bのオン−オフが繰り返されて、配管36内及び蓄圧タンク37内の圧力は所定の範囲内で絶えず加圧状態とされる。
【0040】
<火災発生時>
一方、火災発生時には、閉鎖型噴射ヘッド33a、33b、33cの内、火元にもっとも近いヘッドのみが開放される。そして、配管36内の消火剤が配管36を通って開放された閉鎖型噴射ヘッドから噴霧されて、消火が行われる。これにより、蓄圧タンク37内の圧力が急激に低下し、圧力スイッチ38a、38bがオン状態となる。これにより、液送ポンプ35が駆動するとともに、アラーム40が鳴動し、消火剤が放出されていることを告知する。
【0041】
上記実施形態3の消火装置では、配管36内の消火剤が蓄圧タンク37によって常時所定の圧力範囲となるように加圧されているため、加圧ガスボンベは不要となり、法令規制の対象となることがない。また、ガス圧点検のための検査を頻繁に行うという必要はなく、維持管理に人手が少なくてすみ、維持管理コストを低廉なものとすることができる。さらには、噴射ヘッドとして、閉鎖型噴射ヘッド33a、33b、33cを使用しているため、自動的に消火剤が噴霧され、火災感知器や複雑な制御装置を設ける必要がない。また、複数の閉鎖型噴射ヘッド33a、33b、33cが設置されており、そのうちの火災の発生した箇所の閉鎖型噴射ヘッドが最初に開放されるため、消火剤が最も必要な箇所に集中して噴霧させることができる。
【0042】
この発明は上記発明の実施の態様の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、小規模区域の火災の消火に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施形態1の消火装置の模式図である。
【図2】実施形態2の消火装置の模式図である。
【図3】実施形態2で用いた閉鎖型噴射ヘッドの正面図である。
【図4】実施形態3の消火装置の模式図である。
【符号の説明】
【0045】
4、24、34…貯留タンク
2…噴射ヘッド(2…開放型噴射ヘッド、22a、22b、22c、33a、33b、33c…閉鎖型噴射ヘッド)
6、26、36…配管
5、25、35…輸送手段(5、25…空気圧縮機構(空気圧縮機)、35…液送ポンプ)
10、27a、38b…圧力制御部(圧力スイッチ)
3a…火災感知器
7…開閉弁
12…開閉弁制御部
13、28、39…蓄電池
35…液送ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火剤を貯留する貯留タンクと、該消火剤を所定の区域に散布するための噴射ヘッドと、該貯留タンクと該噴射ヘッドとを接続する配管と、該貯留タンク内の該消火剤を該配管を介して該噴射ヘッドへ輸送するための輸送手段とを備えた消火装置において、
前記輸送手段は前記貯留タンク内を加圧可能とする空気圧縮機構であることを特徴とする消火装置。
【請求項2】
空気圧縮機構は、貯留タンク内の消火剤を噴射ヘッドに輸送するための圧縮空気の圧力が所定の範囲となるように圧力制御部によって制御されていることを特徴とする請求項1記載の消火装置。
【請求項3】
噴射ヘッドは、通常時においてもノズルが開放状態とされている開放型噴射ヘッドであり、火災感知器と、配管の途中に設けられた開閉弁と、該火災感知器からの火災信号を受けて該開閉弁を閉状態から開状態に切り替える開閉弁制御部とを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の消火装置。
【請求項4】
噴射ヘッドは、通常時はノズルが閉鎖状態とされており、火災時に熱によって自動的に開放状態とされる閉鎖型噴射ヘッドであることを特徴とする、請求項1又は2記載の消火装置。
【請求項5】
閉鎖型噴射ヘッドは所定区域内に複数個設置されていることを特徴とする請求項4記載の消火装置。
【請求項6】
停電時においても消火装置を駆動可能とするための蓄電池が備えられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の消火装置。
【請求項7】
消火剤は電気絶縁性を有する液体消火剤であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の消火装置。
【請求項8】
消火剤を貯留する貯留タンクと、該消火剤を所定の区域に散布するための噴射ヘッドと、該貯留タンクと該噴射ヘッドとを接続する配管と、該貯留タンク内の該消火剤を該配管を介して該噴射ヘッドへ輸送するための輸送手段とを備えた消火装置において、
前記輸送手段は液送ポンプであることを特徴とする消火装置。
【請求項9】
噴射ヘッドは通常時においてもノズルが開放状態とされている開放型噴射ヘッドであり、火災感知器と、配管の途中に設けられた開閉弁と、該火災感知器からの火災信号を受けて液送ポンプを駆動する液送ポンプ制御部とを備えていることを特徴とする請求項8記載の消火装置。
【請求項10】
噴射ヘッドは、通常時はノズルが閉鎖状態とされており、火災時に熱によって自動的に開放状態とされる閉鎖型噴射ヘッドであることを特徴とする請求項8記載の消火装置。
【請求項11】
閉鎖型噴射ヘッドは所定区域内に複数個設置されていることを特徴とする請求項10記載の消火装置。
【請求項12】
火災時における配管圧力の低下によって火災信号を発生する圧力スイッチが設けられており、該圧力スイッチからの該火災信号によって液送ポンプが駆動することを特徴とする請求項10又は11記載の消火装置。
【請求項13】
停電時においても消火装置を駆動可能とするための蓄電池が備えられていることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか1項記載の消火装置。
【請求項14】
消火剤は電気絶縁性を有する液体消火剤であることを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項記載の消火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−56044(P2009−56044A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224715(P2007−224715)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000192338)深田工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】