説明

液体及び気体燃料の燃焼を使用する溶融プロセス

本発明は、装填物を、オキシ燃料燃焼バーナーを用いて、少なくとも1つの上流の煙道ガス出口(3)を含んだ炉において溶融させる方法であって、炉内部の装填物の溶融領域において、上流の煙道ガス出口の近傍に配置された複数のバーナー(41−44)は、液体燃料を燃やし、バーナーのうち、上流の煙道ガス出口から離れて配置された少なくとも1つ(51−54)は、気体燃料を燃やすことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、装填物を、液体燃料及び気体燃料を燃やす燃焼バーナーを用いて溶融させる方法に関する。
【0002】
工業的な炉において、使用する燃料の性質の選択、例えば液体燃料と天然ガスとの間の選択は、幾つかのパラメータに依存する。第1のパラメータは、使用する燃料の運転費用である。他のパラメータは、装填物へのエネルギーの伝達であり、天然ガスの火炎は、液体燃料の火炎よりも放射性が低いことが知られている。他のパラメータは、装填物の上方での燃焼によって生成する水蒸気の濃度であり、これは、製品の品質に影響を及ぼし得る。最後に、NOx又はSOxなどの汚染排出物を考慮に入れなければならず、これらは、一般に、液体燃料の場合、天然ガスの場合よりも量が多い。
【0003】
両方の種類の燃料を使用するハイブリッド運転は、各々の種類の燃料の利点の利益を最大にすることと、それらの欠点を制限することとを可能にするであろう。それ故に、最近、多くの研究が、天然ガスの火炎の放射率を高めるための様々な方法を扱ってきている。例えば、A.J. Faber及びM. Van Kersbergenは、Glass Technology Vol. 46, No. 2, April 2005において、可視及び近赤外領域での天然ガスの火炎の放射率は、少量のディーゼルを添加するか又は煤の生成に資するプロピレン若しくはアセチレンなどのガスを注入することによって高められ得ることを示した。しかしながら、注入されるディーゼルの量は、燃料の総流量の20%未満のままである。液体燃料の天然ガスに対する比率を高める1つの方法は、天然ガスを噴霧ガスとして使用する注入器を開発することにある。例えば、L.S. Messias、M.M. Dos Santos及びH.F.D. Schettiniは、Proceedings of Clean Air 2005, April 2005において、50%の液体燃料と50%の天然ガスとを注入する噴霧器を提案しており、空気−燃料の火炎について、このシステムの使用のおかげで窒素酸化物及び硫黄酸化物などの汚染排出物が相当に削減されることを示している。また、このタイプの2つの燃料を用いる(dual-fuel)噴霧器は、酸素を燃料として使用するバーナーの場合にも存在する。B. Leroux、F. Lacas、P. Recourt及びO. Delabroyは、Proceedings of AFRC − JFRC International Symposium, Hawaii, September 2001において、天然ガスを噴霧ガスとして使用し得る外側噴霧注入器を説明している。しかしながら、オキシ燃焼専用のこれらのタイプの注入器については、天然ガスの可能な流量の範囲は狭いままである。天然ガスの質量流量は、一般には、液体燃料の質量流量の15%乃至30%である。15%未満であると、噴霧の質が非常に劣るようになり、不完全燃焼となる。反対に、30%を超えると、噴霧ガスの過度に高い速度のせいで、火炎が不安定になり得る。
【0004】
本発明の1つの目的は、現在のハイブリッドオキシ燃料システムの汎用性に関するこの欠陥に対しての解決策を見つけることにある。
【0005】
この目的のために、本発明は、装填物を、複数のオキシ燃料燃焼バーナーを用い、少なくとも1つの上流煙道ガス出口を含んだ炉において溶融させる方法であって、炉の内部の装填物の溶融領域において、
−上流煙道ガス出口の近傍に配置された複数のバーナーは、液体燃料を燃やし、
−前記複数のバーナーのうち、上流煙道ガス出口から離れて配置された少なくとも1つは、気体燃料を燃やす
方法に関する。
【0006】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の説明を読むことで明らかになるであろう。本発明の実施の態様及び方法は、非制限的な例として示されており、添付の図面に図示されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】内部で本発明に従うプロセスが行われる炉の概略図。
【図2】本発明に従うプロセスを実施する或る代わりの方法。
【図3】本発明に従うプロセスを実施する他の代わりの方法。
【0008】
本発明に従うプロセスは、装填物を、オキシ燃料燃焼バーナー、即ち酸素リッチガスからなる酸化剤を使用するバーナーを用いて加熱することに関する。用語「酸素リッチガス」は、70%を超える酸素含有量を有するガスを意味すると理解される。このプロセスは、少なくとも1つの燃焼煙道ガスの出口を炉の上流部分に備えた炉内で実施される。この文脈では、用語「上流」は、炉のうち、加熱されるべき装填物が導入される部分を意味していると理解され、用語「下流」は、炉のうち、加熱された装填物が取り出される部分を意味していると理解される。煙道ガス出口は、炉の端部に又はその側面のうちの1つに位置し得る。一般には、上流煙道ガス出口は、炉の長さの最初の四半分のところに位置している。上流煙道ガス出口は、好ましくは、炉の1つ以上の側面に位置している。炉は、1つ以上の上流煙道ガス出口を含んでもよい。煙道ガス出口が幾つかある場合、炉の長さに亘って同じ高さに配置されていてもよいし、互い違いにされていてもよい。本発明に従うバーナーをどのように配置するかについての法則は、全ての上流の出口に対して適用される。本発明のプロセスは、炉内でのオキシ燃料バーナーを、それらが燃やす燃料の性質に従って配置することに関する。従って、この炉の溶融領域において、
−上流煙道ガス出口の近傍に配置された複数のバーナーは、液体燃料を燃やす。この文脈では、炉に関する表現「或る要素又は領域の近傍に配置されたバーナー」は、前記要素又は前記領域から4m未満離れているバーナーを意味していると理解される。好ましくは、「或る要素又は領域の近傍に配置されたバーナー」は、前記要素又は前記領域から8m未満離れて配置されたバーナーを意味していると見なされる。実際、当業者は、典型的には、炉の全長に応じて、4又は8mを選択するであろう。
【0009】
−複数のバーナーのうち、上流煙道ガス出口から離れて配置された少なくとも1つは、気体燃料を燃やす。表現「或る要素又は領域から離れて配置されたバーナー」は、前記要素又は前記領域の近傍に配置されていないバーナー、即ち前記要素又は前記領域から少なくとも4mか、又は少なくとも8m離れて配置されたバーナーを意味していると理解され、この選択は、典型的には、上述したように、炉の全長に応じて為される。
【0010】
この炉は、3つの領域を備えている。
【0011】
−固体材料と溶融された材料との境界を定める線の上流にある領域として定義された、炉の溶融領域。一般には、ガラスを溶融させるために、この溶融領域は、炉の最初の三分の一乃至最初の半分に対応した上流の領域に亘って広がっている。
【0012】
−バーナーの火炎によって覆われる領域として定義され、溶融領域の一部と溶融領域の直後にある領域とを含んでいる加熱領域。
【0013】
−加熱領域の下流にある領域として定義され、加熱に供されない精製(refine)領域。
【0014】
このプロセスの変形に従うと、加熱領域において、精製領域の最も近傍に配置された複数のバーナーは、液体燃料を燃やし得る。この変形は、精製領域付近の水蒸気濃度を低めることを可能にする。
【0015】
更に、炉が少なくとも1つの下流煙道ガス出口を含んでいる場合、
−この下流煙道ガス出口の近傍に配置された複数のバーナーは、液体燃料を燃やし、
−バーナーのうち、この下流煙道ガス出口から離れて配置された少なくとも1つは、気体燃料を燃やす。
【0016】
好ましくは、下流煙道ガス出口は、炉の長さの最後の三分の一に位置している。
【0017】
本発明に従うプロセスは、装填物がガラス又はエナメルである炉に、優先的に適用される。本発明のプロセスは、特には、少なくとも20m、好ましくは少なくとも30mの長さを有するガラス用の炉に適用される。
【0018】
図1、2及び3は、本発明に従うデバイス及びプロセスを図示している。
【0019】
図1において、炉1は、
−溶融されるべき装填物を導入するための装填器2と、
−2つの上流煙道ガス出口3と、
−互いに対向しているか又は互い違いになって配置された8つのオキシ燃料バーナー41、42、43、44、51、52、53、54と
が取り付けられている。
【0020】
本発明に従うと、上流煙道ガス出口3の近傍に配置されたバーナー41、42、43、44は、液体燃料を燃やし、上流煙道ガス出口3から離れて配置されたバーナー51、52、53、54は、気体燃料を燃やす。
【0021】
図2において、炉1は、
−溶融されるべき装填物を導入するための装填器2と、
−2つの上流煙道ガス出口3と、
−互いに対向しているか又は互い違いになって配置された9つのオキシ燃料バーナー41、42、43、44、45、46、51、52、53と
が取り付けられている。
【0022】
本発明に従うと、上流煙道ガス出口3の近傍に配置されたバーナー41、42、43、44は、液体燃料を燃やし、上流煙道ガス出口3から離れて配置されたバーナー51、52、53は、気体燃料を燃やす。更に、精製領域8付近に位置したバーナー45及び46は、液体燃料を燃やす。
【0023】
図3において、炉1は、
−溶融されるべき装填物を導入するための装填器2と、
−2つの上流煙道ガス出口3と、
−2つの下流煙道ガス出口7と、
−互いに対向しているか又は互い違いになって配置された9つのオキシ燃料バーナー41、42、43、44、45、46、51、52、53と
が取り付けられている。
【0024】
本発明に従うと、上流煙道ガス出口3の近傍に配置されたバーナー41、42、43、44は、液体燃料を燃やし、上流煙道ガス出口3から離れ且つ下流煙道ガス出口7から離れて配置されたバーナー51、52、53は、気体燃料を燃やす。更に、下流煙道ガス出口7の近傍に位置したバーナー45及び46は、液体燃料を燃やす。
【0025】
このプロセスを上で説明したように実施することにより、液体及び気体燃料を使用する火炎の利点を、最適な方法で組み合わせることが可能になる。従って、液体燃料の火炎のより大きな慣性(inertia)は、煙道ガスの出口付近であっても、それらの安定性を保証する。更に、装填物へのそれらの伝達はより大きいので、これらの火炎からの煙道ガスは、より低い温度を有し、エネルギー収支は、気体燃料バーナーが設置された場合よりも優れている。気体燃料バーナーを位置決めする方法は、これら火炎からの煙道ガスのための、炉内でのより長い滞留時間を確実にし、それにより、装填物への完全な伝達を補償する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装填物を、複数のオキシ燃料燃焼バーナーを用いて、装填物溶融領域と少なくとも1つの上流煙道ガス出口とを含んだ炉において溶融させる方法であって、前記装填物溶融領域において、
−前記上流煙道ガス出口の近傍に配置された複数の前記バーナーは、液体燃料を燃やし、
−前記複数のバーナーのうち、前記上流煙道ガス出口から離れて配置された少なくとも1つは、気体燃料を燃やす
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記炉は精製領域を含んでおり、加熱領域において、前記精製領域の最も近傍に配置された複数の前記バーナーは、液体燃料を燃やすことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法であって、前記炉は、少なくとも1つの下流煙道ガス出口を含んでおり、
−下流煙道ガス出口の近傍に配置された複数の前記バーナーは、液体燃料を燃やし、
−前記複数のバーナーのうち、前記下流煙道ガス出口から離れて配置された少なくとも1つは、気体燃料を燃やす
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項記載の方法であって、前記装填物はガラス又はエナメルであることを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2010−513199(P2010−513199A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542024(P2009−542024)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064078
【国際公開番号】WO2008/074780
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【Fターム(参考)】