説明

液体吐出装置、及び、液体吐出方法

【課題】増粘抑制動作を最適化する。
【解決手段】液体吐出装置は、(A)複数のグループに分けられた複数のノズルと、(B)複数のノズルに対応して設けられ、ノズルから液体を吐出させるための動作をする素子と、(C)液体を吐出させる際に素子に印加される吐出パルスを含んだ第1駆動信号と、液体の増粘を抑制する際に素子に印加される増粘抑制パルスPS5〜PS7を、複数含んだ第2駆動信号とを生成する駆動信号生成部と、(D)液体を吐出させる指令に基づいて、吐出パルスを素子に印加し、液体を吐出させない指令に基づいて、複数の増粘抑制パルスの中からグループに応じて選択された特定の増粘抑制パルスを素子に印加する、印加制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び、液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置の一種であるインクジェットプリンタには、第1駆動信号と第2駆動信号を生成し、これらの駆動信号における必要部分をピエゾ素子に印加するものがある(例えば、特許文献1を参照。)。このプリンタにおける第1駆動信号は、インクを吐出させるための吐出パルスを含み、第2駆動信号は、インクが吐出されない程度の圧力変動を圧力室内のインクに与えるための非吐出パルスを含む。
ノズル内のインクは、その一部が外気に晒されている。このため、溶媒の蒸発等による増粘が起こる。このプリンタでは、インクの増粘を抑制すべく、増粘抑制動作が行われている。例えば、微振動パルスをピエゾ素子に印加することでインクが吐出されない程度の圧力変化を圧力室内のインクに生じさせ、ノズル部分のインクを攪拌している。
【特許文献1】特開2007−15127号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、液体の増粘度合いは、種々の条件で変化する。例えば、色材や溶媒等によって定められる液体の種類によって変化する。また、液体の吐出頻度によっても変化する。前述したプリンタでは、液体の増粘度合いについては考慮されていなかった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、増粘抑制動作を最適化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するための主たる発明は、
(A)液体を吐出する複数のノズルであって、複数のグループに分けられた複数のノズルと、
(B)前記ノズルから前記液体を吐出させるための動作をする素子であって、前記複数のノズルに対応して設けられる素子と、
(C)前記素子に印加される複数種類の駆動信号を生成する駆動信号生成部であって、
(C1)前記液体を吐出させる際に前記素子に印加される吐出パルスを含んだ第1駆動信号と、
(C2)前記液体の増粘を抑制する際に前記素子に印加される増粘抑制パルスを、複数含んだ第2駆動信号と、
(C3)を生成する駆動信号生成部と、
(D)液体を吐出させる指令に基づいて、前記吐出パルスを前記素子に印加し、
液体を吐出させない指令に基づいて、前記複数の増粘抑制パルスの中から前記グループに応じて選択された特定の増粘抑制パルスを、前記素子に印加する、印加制御部と、
(E)を有する、液体吐出装置を実現できることが明らかにされる。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0006】
すなわち、(A)液体を吐出する複数のノズルであって、複数のグループに分けられた複数のノズルと、(B)前記ノズルから前記液体を吐出させるための動作をする素子であって、前記複数のノズルに対応して設けられる素子と、(C)前記素子に印加される複数種類の駆動信号を生成する駆動信号生成部であって、(C1)前記液体を吐出させる際に前記素子に印加される吐出パルスを含んだ第1駆動信号と、(C2)前記液体の増粘を抑制する際に前記素子に印加される増粘抑制パルスを、複数含んだ第2駆動信号と、(C3)を生成する駆動信号生成部と、(D)液体を吐出させる指令に基づいて、前記吐出パルスを前記素子に印加し、液体を吐出させない指令に基づいて、前記複数の増粘抑制パルスの中から前記グループに応じて選択された特定の増粘抑制パルスを、前記素子に印加する、印加制御部と、(E)を有する、液体吐出装置を実現できることが明らかにされる。
このような液体吐出装置によれば、液体を吐出させない指令に基づき、複数の増粘抑制パルスの中から選択された特定の増粘抑制パルスが、選択されたグループに対応する素子に印加される。このため、増粘抑制パルスの選択の仕方で増粘の抑制度合いを調整できる。その結果、増粘抑制動作を最適化できる。
【0007】
かかる液体吐出装置であって、前記複数のノズルは、吐出する液体の種類に応じて複数のグループに分けられており、前記印加制御部は、前記液体の種類に応じて選択された特定の増粘抑制パルスを、前記素子に印加することが好ましい。
このような液体吐出装置によれば、液体の種類に応じて特定の増粘抑制パルスが選択されるので、液体の種類に起因する増粘度合いの違いを少なくできる。
【0008】
かかる液体吐出装置であって、前記液体は、色材成分を含んだインクであり、前記印加制御部は、前記インクの種類に応じて選択された特定の増粘抑制パルスを、前記素子に印加することが好ましい。
このような液体吐出装置によれば、インクの種類に起因する増粘度合いの違いを少なくできる。
【0009】
かかる液体吐出装置であって、前記印加制御部は、液体の吐出頻度に応じて選択された特定の増粘抑制パルスを、前記素子に印加することが好ましい。
このような液体吐出装置によれば、液体の吐出頻度に起因する液体の状態に適した増粘抑制動作ができる。
【0010】
かかる液体吐出装置であって、前記印加制御部は、前記複数の増粘抑制パルスの中から、定められた数の特定の増粘抑制パルスを選択することが好ましい。この場合において、前記駆動信号生成部は、同じ電圧変化パターンの増粘抑制パルスを複数含んだ第2駆動信号を生成することが好ましい。
このような液体吐出装置によれば、素子に印加する増粘抑制パルスの数により、増粘の抑制度合いを定めることができる。
【0011】
かかる液体吐出装置であって、前記駆動信号生成部は、液体の増粘抑制度合いが異なる電圧変化パターンの複数種類の増粘抑制パルスを含んだ前記第2駆動信号を生成し、前記印加制御部は、前記複数種類の増粘抑制パルスの中から、特定の種類の増粘抑制パルスを選択することが好ましい。
このような液体吐出装置によれば、素子に印加する増粘抑制パルスの種類に応じて、増粘の抑制度合いを定めることができる。
【0012】
かかる液体吐出装置であって、前記複数のノズルは、吐出する液体の種類に応じて複数のグループに分けられており、前記印加制御部は、増粘し易さの度合いが高い液体を吐出させる素子に対し、増粘し易さの度合いが低い液体を吐出させる素子よりも増粘の抑制度合いの高い種類の増粘抑制パルスを選択することが好ましい。ここで、前記増粘の抑制度合いが高い種類の増粘抑制パルスは、増粘の抑制度合いが低い種類の増粘抑制パルスよりも電圧の変化幅が大きいことが好ましい。
このような液体吐出装置によれば、液体の状態を良好に維持できる。
【0013】
また、次の液体吐出方法を実現できることも明らかにされる。
すなわち、(A)ノズルから液体を吐出させる際に液体を吐出させるための動作をする素子へ印加される吐出パルスを含んだ第1駆動信号と、前記液体の増粘を抑制する際に前記素子に印加される増粘抑制パルスを複数含んだ第2駆動信号とを、生成すること、(B)液体を吐出させる指令に基づいて、前記吐出パルスを前記素子へ印加し、液体を吐出させない指令に基づいて、前記複数の増粘抑制パルスの中から特定の増粘抑制パルスを、複数のノズルのうち一部のノズルによって構成されたグループに応じて選択し、対応する素子に印加すること、(C)を行う、液体吐出方法を実現できることも明らかにされる。
【0014】
===第1実施形態===
<液体吐出装置について>
液体吐出装置には、印刷装置、カラーフィルタ製造装置、ディスプレイ製造装置、半導体製造装置、及びDNAチップ製造装置など、様々な種類がある。本明細書では、液体吐出装置の一種であるインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタともいう。)を例に挙げて説明する。このプリンタでは、液体の一種であるインクを用紙等の媒体に向けて吐出することにより、用紙の表面に画像を印刷する。
【0015】
===システム構成===
<印刷システムについて>
図1は、印刷システムの構成を説明するブロック図である。例示した印刷システムは、プリンタ1と、コンピュータ110と、表示装置120と、入力装置130と、記録再生装置140とを有する。プリンタ1は印刷装置に相当し、用紙、布、フィルム等の媒体に画像を印刷する。媒体は、液体が吐出される対象となる対象物であり、例えば用紙である。コンピュータ110は、プリンタ1と通信可能に接続されている。プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータ110は、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に送信する。表示装置120は、液晶ディスプレイ等である。入力装置130は、キーボード等である。記録再生装置140は、フレキシブルディスクドライブ装置等である。
【0016】
<コンピュータ110について>
コンピュータ110は、ホスト側コントローラ111を有する。ホスト側コントローラ111は、コンピュータ110における各種の制御を行うものである。ホスト側コントローラ111は、インタフェース部112と、CPU113と、メモリ114とを有する。インタフェース部112は、プリンタ1との間でデータの受け渡しを行う。CPU113は、コンピュータ110の全体的な制御を行う。メモリ114は、CPU113が使用するコンピュータプログラムを格納する領域や作業領域等を確保する。そして、CPU113は、メモリに格納されているコンピュータプログラムに従って、各種の制御を行う。
【0017】
印刷データは、プリンタ1が解釈できる形式のデータであって、各種のコマンドデータと、ドット形成データSI(例えば図4を参照。)とを有する。コマンドデータとは、プリンタ1に特定の動作の実行を指示するためのデータである。このコマンドデータには、例えば、給紙を指示するコマンドデータ、搬送量を示すコマンドデータ、排紙を指示するコマンドデータがある。また、ドット形成データSIは、用紙上に形成されるドットに関するデータ(ドットの色や大きさ等のデータ)である。
【0018】
ここで、用紙へのドットの形成は、必要なノズル(図2を参照。)からインクを吐出させることでなされる。本実施形態におけるドット形成データSIは、2ビットのデータによって構成されている。このドット形成データSIに基づき、ドットなし(データ[00])、小ドットの形成(データ[01])、中ドットの形成(データ[10])、及び、大ドットの形成(データ[11])からなる4種類の内容を、ノズル毎に表すことができる。このようなドット形成データSIは、その内容に応じて、インクの吐出制御の内容をノズル毎に示す指令といえる。例えば、ドット形成データSIは、その内容に応じて、インクを吐出させる指令に相当したり、インクを吐出させない指令に相当したりする。
【0019】
このプリンタ1において、データ[01]〜[11]はインクを吐出させる指令であり、データ[00]はインクを吐出させない指令である。また、ドット形成データSIは、インクを吐出する場合における、吐出量を示す指令にも相当する。すなわち、少量のインクを吐出させる指令(データ[01])、中量のインクを吐出させる指令(データ[10])、及び、多量のインクを吐出させる指令(データ[11])に相当する。
【0020】
<プリンタ1について>
プリンタ1は、用紙搬送機構20、キャリッジ移動機構30、駆動信号生成回路40、ヘッドユニット50、検出器群60、プリンタ側コントローラ70、及び、電源生成部PWSを有する。
【0021】
用紙搬送機構20は、媒体としての用紙を搬送方向に搬送させる。キャリッジ移動機構30は、ヘッドユニット50を所定方向(例えば紙幅方向)に移動させる。ヘッドユニット50が有するヘッド51は、液体の一種であるインクを用紙に向けて吐出させる。駆動信号生成回路40は、駆動信号を生成する駆動信号生成部に相当する。駆動信号生成回路40が生成する駆動信号は、用紙への印刷時等に使用されるものであり、ヘッド51が有するピエゾ素子513に、所定の動作をさせるための駆動パルスを含む。この実施形態における駆動信号生成回路40は、例えば図7Aに示すように、インクを吐出させるための吐出パルスPS1〜PS3を含む第1駆動信号COM_A、及び、インクの増粘を抑制するための微振動パルスPS4〜PS7を含む第2駆動信号COM_Bを生成する。
【0022】
ヘッドユニット50は、ヘッド51とヘッド制御部HCとを有する。ヘッド51は、液体を吐出させる部分に相当し、液体としてのインクの吐出口となるノズルNzと、インクを吐出させるための動作をする素子としてのピエゾ素子513を有する。ヘッド制御部HCは、ヘッド51におけるインクの吐出を制御する。例えば、ピエゾ素子513への駆動パルスPS1〜PS7の印加を制御する。これにより、インクの吐出等がノズルNz毎に制御される。検出器群60は、プリンタ1の状況を監視する複数の検出器によって構成される。これらの検出器による検出結果は、プリンタ側コントローラ70に出力される。
【0023】
プリンタ側コントローラ70は、コンピュータ110から受け取った印刷データや各検出器からの検出結果に基づいて制御対象部を制御し、用紙に画像を印刷させる。プリンタ側コントローラ70は、インタフェース部71と、CPU72と、メモリ73と、制御ユニット74とを有する。本実施形態のプリンタ側コントローラ70は、制御ASICによって構成されている。インタフェース部71は、コンピュータ110との間でデータの受け渡しを行う。CPU72は、全体的な制御を行う演算処理装置である。例えば、CPU72は、ヘッドユニット50に対してヘッド制御信号を送信したり、駆動信号生成回路40に対してDACデータを送信したりする。メモリ73は、コンピュータプログラムを格納する領域や作業領域等を確保する。制御ユニット74は、CPU72からの指令に基づき、用紙搬送機構20やキャリッジ移動機構30を駆動する。
【0024】
電源生成部PWSは、各種の電源を生成する。生成される電源には、駆動信号生成回路40が有する電流増幅回路412(トランジスタ対)に供給するための電源も含まれる。
【0025】
なお、前述した各部のうち、ヘッド51、ヘッド制御部HC、駆動信号生成回路40、及び、生成される各駆動信号については、後で説明をする。
【0026】
===プリンタ1の要部===
<ヘッド51について>
ヘッド51は、液体を吐出する液体吐出ヘッドの一種である。図2に例示したヘッド51は、ノズルNzと、圧力室511と、共通インク室512と、ピエゾ素子513とを有する。ノズルNzは、インクの吐出口となる部分であり、所定ピッチで複数設けられる。圧力室511は、インクを貯留する室であり、複数のノズルNzのそれぞれに対応して複数設けられる。なお、対応関係にあるノズルNzと圧力室511とは、互いに連通されている。共通インク室512は、キャリッジに取り付けられたインクカートリッジからのインクが貯留される部分である。共通インク室512には、複数の圧力室511がそれぞれ連通される。従って、このヘッド51には、共通インク室512から圧力室511を通ってノズルNzに至る一連の流路が、ノズルNzに対応する複数設けられている。プリンタ1の使用時において、この流路はインクで満たされている。圧力室511は、その容積がピエゾ素子513の動作によって変化される。このため、圧力室511の一部は、区画膜の一種である振動板によって区画されている。
【0027】
ピエゾ素子513は、圧力室511とは反対側となる振動板514の表面に、複数の圧力室511のそれぞれに対応して設けられている。言い換えれば、複数のノズルNzのそれぞれに対応して設けられている。ピエゾ素子513は、例えば圧電体を上電極と下電極とで挟んだ構成であり(何れも図示せず。)、これらの電極間に電位差を与えることにより変形する。この例では、上電極の電位を上昇させると圧電体が充電され、これに伴ってピエゾ素子513は圧力室511側に凸となるように撓む(つまり変形する。)。また、上電極の電位を下降させて圧電体を放電させると、ピエゾ素子513は撓み度合いを少なくするように変形する。
【0028】
ピエゾ素子513の変形に伴って振動板514も変形する。これにより圧力室511の容積が変化する。この例では、充電度合いが高い程ピエゾ素子513の撓み量が大きくなり、圧力室511が収縮される。従って、圧力室511の容積を制御することにより、圧力室511内のインクに圧力変化を与えることができ、ノズルNzからインクを吐出させたり、インクの増粘を防止するための微振動動作(増粘抑制動作,後述する。)を行わせたりできる。ピエゾ素子513の変形量は、各駆動信号における印加部分によって定められる。すなわち、ピエゾ素子513は、印加された駆動信号によって与えられる電位に応じて変形するといえる。
【0029】
以上の説明から判るように、各ピエゾ素子513は、充放電によってインクを吐出させるための動作をする複数の素子であって、充電によって圧力室511の容積を収縮させる複数の素子に相当する。このピエゾ素子513は、充電状態によって変形量が精度良く定まる。このため、インクの吐出量の制御や微振動動作の制御を、精度よく行うことができる。
【0030】
<ノズル列について>
ヘッド51が有する複数のノズルNzは、吐出させるインクの種類毎にグループ化されている。例えば図3に示すように、複数のノズルNzは、6つのグループに分けられている。具体的には、ブラックインクを吐出するブラックインクノズル列Nkに属するグループと、イエローインクを吐出するイエローインクノズル列Nyに属するグループと、シアンインクを吐出するシアンインクノズル列Ncに属するグループと、マゼンタインクを吐出するマゼンタインクノズル列Nmに属するグループと、ライトシアンインクを吐出するライトシアンインクノズル列Nlcに属するグループと、ライトマゼンタインクを吐出するライトマゼンタインクノズル列Nlmに属するグループとに分けられている。このヘッド51では、用紙の搬送方向に一定の間隔で並ぶ96個〜180個のノズルNzによって1つのノズル列(グループ)が構成されている。そして、このノズル列が、搬送方向と直交するキャリッジ移動方向に6つ設けられている。また、ピエゾ素子513はノズルNz毎に設けられている。このため、ヘッド51が有する複数のピエゾ素子513も、各ノズル列を単位とする複数のグループに分けられているといえる。
【0031】
<ヘッド制御部HCについて>
ヘッド制御部HCは、用紙にドットを形成するドット形成動作時において、ドット形成データSI(吐出量情報)に基づき、駆動信号(第1駆動信号COM_A,第2駆動信号COM_B)における必要な部分を選択してピエゾ素子513へ印加させる。このようなヘッド制御部HCは、印加制御部に相当し、プリンタ側コントローラ70からのドット形成データSIに基づいて、駆動信号のピエゾ素子513への印加を制御する。
【0032】
図4に示すように、ヘッド制御部HCは、第1シフトレジスタ81Aと、第2シフトレジスタ81Bと、第1ラッチ回路82Aと、第2ラッチ回路82Bと、制御ロジック83と、デコーダ84と、第1スイッチ85Aと、第2スイッチ85Bとを有する。これらの中で、制御ロジック83を除いた各部は、それぞれピエゾ素子513毎(ノズルNz毎)に設けられる。また、このヘッド制御部HCは、ノズル列毎に設けられている。このプリンタ1では、6種類のインクを各ノズル列から吐出する構成である。このため、ヘッド制御部HCは、ブラックインク用のものからライトマゼンタインク用のものまでの6個設けられる。
【0033】
ドット形成動作において、第1シフトレジスタ81A及び第2シフトレジスタ81Bには、プリンタ側コントローラ70からのドット形成データSIがセットされる。例えば、第1シフトレジスタ81Aにはドット形成データSIの上位ビットがセットされ、第2シフトレジスタ81Bにはドット形成データSIの下位ビットがセットされる。第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bは、第1シフトレジスタ81A及び第2シフトレジスタ81Bにセットされたデータをラッチする。すなわち、第1ラッチ回路82Aは、第1シフトレジスタ81Aにセットされたドット形成データSIの上位ビットをラッチする。一方、第2ラッチ回路82Bは、第2シフトレジスタ81Bにセットされたドット形成データSIの下位ビットをラッチする。これらの第1ラッチ回路82A及び第2ラッチ回路82Bにてラッチされると、ドット形成データSIの上位ビットと下位ビットは、ピエゾ素子513毎(ノズルNz毎)の組となる。ドット形成データSIは、各ラッチ回路82A,82Bでピエゾ素子513毎の組とされ、デコーダ84へ入力される。
【0034】
制御ロジック83は、第1スイッチ85Aの制御に用いられるスイッチ制御情報q0〜q3、及び、第2スイッチ85Bの制御に用いられるスイッチ制御情報q4〜q7を記憶する。これらのスイッチ制御情報q0〜q3,q4〜q7は、ドット階調毎に定められており、各スイッチ85A,85Bを動作させる際に用いられる。この実施形態において、第1スイッチ85Aは、第1駆動信号COM_Aのピエゾ素子513への印加を制御する。また、第2スイッチ85Bは、第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子513への印加を制御する。なお、スイッチ制御情報q0〜q3,q4〜q7の具体的な内容については、後で説明する。
【0035】
デコーダ84は、制御ロジック83から出力されるスイッチ制御情報q0〜q3,q4〜q7の中から、必要なスイッチ制御情報をドット形成データSIに応じて選択し、各スイッチ85A,85Bへ出力する。例えば、デコーダ84は、ドットなしに対応するドット形成データSI[00]に対応して、スイッチ制御情報q0,q4を選択する。そして、スイッチ制御情報q0を第1スイッチ85Aへ出力し、スイッチ制御情報q4を第2スイッチ85Bへ出力する。また、デコーダ84は、小ドットの形成に対応するドット形成データSI[01]に対応して、スイッチ制御情報q1を選択して第1スイッチ85Aへ出力し、スイッチ制御情報q5を選択して第2スイッチ85Bへ出力する。同様に、デコーダ84は、中ドットの形成に対応するドット形成データSI[10]に対応してスイッチ制御情報q2を第1スイッチ85Aへ、スイッチ制御情報q6を第2スイッチ85Bへそれぞれ出力し、大ドットの形成に対応するドット形成データSI[11]に対応してスイッチ制御情報q3を第1スイッチ85Aへ、スイッチ制御情報q7を第2スイッチ85Bへそれぞれ出力する。
【0036】
第1スイッチ85Aは第1駆動信号COM_Aのピエゾ素子513への印加を制御し、第2スイッチ85Bは第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子513への印加を制御する。本実施形態において、第1スイッチ85Aと第2スイッチ85Bは、いずれもアナログスイッチによって構成されている。そして、入力されたスイッチ制御情報(デコーダ84で選択された後のスイッチ制御情報)がHレベルの場合にオン状態となり、入力されたスイッチ制御情報がLレベルの場合にオフ状態となる。そして、各スイッチ85A,85Bは、オン状態の期間に亘って対応する駆動信号をピエゾ素子513に印加する。また、オフ状態の期間に亘って対応する駆動信号を遮断する。なお、スイッチ制御情報q0〜q3,q4〜q7に基づく各駆動信号のピエゾ素子513への印加については、後で説明する。
【0037】
<駆動信号生成回路40について>
駆動信号生成回路40は、複数のピエゾ素子513について共通に用いられる駆動信号を生成する。図5に示すように、駆動信号生成回路40は、第1駆動信号生成回路41と、第2駆動信号生成回路42とを有する。第1駆動信号生成回路41は、第1駆動信号COM_Aを生成するための回路であり、第2駆動信号生成回路42は、第2駆動信号COM_Bを生成するための回路である。本実施形態において、第1駆動信号COM_Aは、インクを吐出させる際にピエゾ素子513へ印加される吐出パルスを複数含む。このため、第1駆動信号生成回路41は、吐出パルスを含んで構成される第1駆動信号を生成する第1駆動信号生成部に相当する。また、第2駆動信号COM_Bは、インクの増粘を抑制する際にピエゾ素子513に印加される微振動パルスを複数含む。この微振動パルスは増粘抑制パルスの一種である。このため、第2駆動信号生成回路42は、増粘抑制パルスを含んで構成される第2駆動信号を生成する第2駆動信号生成部に相当する。なお、生成される第1駆動信号COM_A、及び、第2駆動信号COM_Bについては、後で詳しく説明する。
【0038】
<第1駆動信号生成回路41について>
第1駆動信号生成回路41は、第1波形生成回路411と電流増幅回路412とを有する。第1波形生成回路411は、第1DACデータに基づいて第1波形信号COM_A´を生成する。第1DACデータは、第1駆動信号COM_Aにおける制御上の電圧を示すデジタルデータであり、例えば10ビットのデジタルデータによって構成されている。具体的には、第1DACデータが[0000000001]のとき、第1駆動信号COM_Aの制御上の電圧は0.04Vである。また、第1DACデータが[1111111111]のとき、第1駆動信号COM_Aの制御上の電圧は38.00Vである。このような第1DACデータは、第1デジタルデータに相当する。第1波形信号COM_A´は、第1駆動信号COM_Aに倣った電圧変化パターンのアナログ信号であり、第1アナログ信号に相当する。第1駆動信号COM_Aとの大きな違いは電流量にある。すなわち、第1波形信号COM_A´の電流量は、第1駆動信号COM_Aの電流量に比べて小さく定められている。例えば、第1駆動信号COM_Aの電流量は最大で20A程度であるのに対し、第1波形信号COM_A´の電流量は最大で数百mA程度である。このような第1波形生成回路411は、第1デジタルデータをアナログ変換した第1アナログ信号を出力する、第1デジタルアナログ変換器に相当する。
【0039】
第1波形生成回路411は、第1DAC回路413(第1デジタルアナログ変換回路)と第1プリアンプ414とを有する。第1DAC回路413は、10ビットの第1DACデータをアナログ変換してロジックレベルのアナログ信号を生成する。この実施形態では、第1DACデータの変換によって、0Vから3.3Vまでの電圧範囲のアナログ信号を生成する。このロジックレベルのアナログ信号は、第1増幅前アナログ信号に相当する。第1プリアンプ414は、第1電圧増幅回路に相当し、第1DAC回路413からのロジックレベルのアナログ信号について電圧増幅を行うことで、第1波形信号COM_A´(第1アナログ信号)を生成する。本実施形態の第1プリアンプ414は、0Vから38Vまでの電圧範囲の第1波形信号COM_A´を生成する。また、第1プリアンプ414は、出力電圧をフィードバックし、出力電圧と制御上の電圧との差をオペアンプで取得している。そして、取得した差に応じた制御を行うことで、出力電圧の精度を高めている。さらに、第1プリアンプ414は、電流を増幅する機能も有する。この電流増幅は、相補的に接続されたトランジスタ対によってなされる。しかし、電流増幅率の関係で、最大電流は制限されている。
【0040】
このような構成の第1波形生成回路411では、第1DAC回路413によって、第1DACデータをロジックレベルのアナログ信号に変換し、第1プリアンプ414によって、ロジックレベルのアナログ信号の電圧をピエゾ素子513の駆動に必要な電圧まで増幅している。このため、第1プリアンプ414の構成の仕方次第で所望の電圧範囲のアナログ信号が得られる。
【0041】
なお、第1DAC回路413と第1プリアンプ414は、カスタムICとして同じパッケージPCKに収められている。ここで、第1DAC回路413に入力される第1DACデータは、制御ASICで構成されたプリンタ側コントローラ70から出力される。そして、ノイズ防止等のため、第1DAC回路413は、プリンタ側コントローラ70の近傍に配置する必要がある。これに伴い、第1プリアンプ414の周辺には、放熱器を設けるためのスペースを確保することが困難となる。そこで、第1DAC回路413や第1プリアンプ414が収められるパッケージPCKとしては、パッケージの表面に金属製の板(ヒートスプレッダ)を露出させたヒートスプレッダ付パッケージが好適に用いられる。これにより、第1プリアンプ414における放熱性を高めることができる。
【0042】
電流増幅回路412は、第1波形生成回路411で生成された第1波形信号COM_A´について電流の増幅を行い、第1駆動信号COM_Aとして出力する。第1波形信号COM_A´は、前述したように第1アナログ信号に相当する。このため、電流増幅回路412は、第1アナログ信号の電流増幅を行って第1駆動信号COM_Aとして出力する回路に相当する。電流増幅回路412は、相補的に接続されたバイポーラトランジスタ対415を有する。すなわち、電流増幅用のトランジスタとして、NPN型トランジスタ416とPNP型トランジスタ417とを有する。また、図6に示すように、電流増幅回路412は、バイポーラトランジスタ対415からの熱を放出するための放熱器418も有する。放熱器418は、アルミニウム等の熱伝導性のよい素材で作製され、バイポーラトランジスタ対415のパッケージ面に取り付けられる。
【0043】
NPN型トランジスタ416は、第1駆動信号COM_Aの電圧上昇時(印刷時においてはピエゾ素子513の充電時)に動作するトランジスタである。このNPN型トランジスタ416は、コレクタが高圧電源(42V電源)の供給線に接続され、エミッタが第1駆動信号COM_Aの供給線に接続されている。また、NPN型トランジスタ416のベースは、第1波形信号COM_A´の供給線に接続されている。PNP型トランジスタ417は、第1駆動信号COM_Aの電圧下降時(同じくピエゾ素子513の放電時)に動作するトランジスタである。このPNP型トランジスタ417は、エミッタが第1駆動信号COM_Aの供給線に接続され、コレクタがグランド線に接続されている。また、PNP型トランジスタ417のベースは、第1波形信号COM_A´の供給線に接続されている。
【0044】
このような構成の電流増幅回路412では、第1波形生成回路411から出力される第1波形信号COM_A´により、各トランジスタ416,417の動作が制御される。その結果、電流増幅回路412から出力される第1駆動信号COM_Aの電圧は、電流増幅の過程において多少変動されるが、第1波形信号COM_A´の電圧に概ね等しくなる。また、この電流増幅回路412によって、第1波形信号COM_A´の電流が増幅され、数A程度の第1駆動信号COM_Aが生成される。ここで、本実施形態の電流増幅回路412は、相補的に接続されたバイポーラトランジスタ対415によって構成されている。このため、各ピエゾ素子513を動作させるために十分な電流を容易に得ることができる。
【0045】
また、第1駆動信号COM_Aの電流量は、動作対象となるピエゾ素子513の数やピエゾ素子513に行わせる動作の内容によって定まる。一般には、動作対象となるピエゾ素子513の数が多くなると必要な電流量は増える。また、ピエゾ素子513の充電状態を短時間で大きく変化させる場合に、必要な電流量は増える。電流の増幅時において、バイポーラトランジスタ対415は発熱する。これは、各トランジスタ416,417におけるコレクタ損失による。そして、放熱器418は、バイポーラトランジスタ対415における過度な発熱を抑制するために設けられる。
【0046】
<第2駆動信号生成回路42について>
第2駆動信号生成回路42は、第2波形生成回路421を有する。第2波形生成回路421は、第1波形生成回路411と同じ構成であり、第2DACデータに基づいて第2波形信号COM_B´を生成する。なお、この実施形態における第2波形生成回路421は、第1波形生成回路411と同じパッケージPCK(カスタムIC)に収められている。これは、装置の小型化のためである。例えば、同じパッケージPCKに収めることで、各DACデータの入力端子の数を抑えることができる。すなわち、DACデータの読み込みタイミングを規定するクロックの、立ち上がりと立ち下がりの一方で第1波形生成回路411に第1DACデータを読み込ませ、他方で第2波形生成回路421に第2DACデータを読み込ませる。このようにすると、入力端子を共用でき、装置の小型化が図れる。
【0047】
第2DACデータは、第2駆動信号COM_Bにおける制御上の電圧を示すデジタルデータであり、第1DACデータと同じく10ビットのデジタルデータによって構成される。この第2DACデータは、第2デジタルデータに相当する。第2波形信号COM_B´は、第2DACデータの変換で得られるアナログ信号であり、第2アナログ信号に相当する。このような第2波形生成回路421は、第2デジタルデータをアナログ変換した第2アナログ信号を出力する、第2デジタルアナログ変換器に相当する。
【0048】
なお、本実施形態において、第2波形信号COM_B´は、電流増幅回路による電流増幅をされずに第2駆動信号COM_Bとして出力されているが、第1駆動信号生成回路41と同じく電流増幅回路による電流増幅をしたものを、第2駆動信号COM_Bとして出力してもよい。すなわち、第2駆動信号生成回路42において、電流増幅回路を設けるか否かは必要な電流量に応じて定められる。
【0049】
第2波形生成回路421は、第2DAC回路422(第2デジタルアナログ変換回路)と第2プリアンプ423とを有する。ここで、第2DAC回路422は前述した第1DAC回路413と同じ構成であり、第2プリアンプ423は前述した第1プリアンプ414と同じ構成である。簡単に説明すると、第2DAC回路422は、10ビットの第2DACデータをアナログ変換してロジックレベル(例えば、0Vから3.3V)のアナログ信号を生成する。このアナログ信号は第2増幅前アナログ信号に相当する。第2プリアンプ423は、第2電圧増幅回路に相当し、第2DAC回路422からのロジックレベルのアナログ信号の電圧を増幅することで、第2波形信号COM_B´(第2アナログ信号)を生成する。
【0050】
このような構成の第2波形生成回路421では、第2DAC回路422によって、第2DACデータをロジックレベルのアナログ信号に変換し、第2プリアンプ423によって、ロジックレベルのアナログ信号の電圧をピエゾ素子513の駆動に必要な電圧まで増幅している。このため、第2プリアンプ423の構成の仕方次第で所望の電圧範囲のアナログ信号が得られる。
【0051】
なお、第2DAC回路422と第2プリアンプ423は、第1DAC回路413と第1プリアンプ414と同じパッケージPCKに収められているので、前述したヒートスプレッダは、第2プリアンプ423における放熱性をも高めている。
【0052】
ところで、第2駆動信号COM_Bの電流量が不足してしまう場合には、前述したように第2駆動信号生成回路42に電流増幅回路を付加すればよい。或いは、電流増幅回路を付加しなくても、駆動するピエゾ素子513の数を制限し、駆動パルス(微振動パルス)を時分割でピエゾ素子513へ印加することで対応できる。すなわち、必要な電流量を許容範囲内に納めることができる。
【0053】
<生成される各駆動信号COM_A,COM_Bについて>
次に、生成される各駆動信号COM_A,COM_Bについて説明する。図7Aに示すように、第1駆動信号COM_A及び第2駆動信号COM_Bはそれぞれ、繰り返し単位でもある印刷期間T毎に繰り返し生成される。この印刷期間Tは、インクを吐出可能な期間でもある。本実施形態において、第1駆動信号COM_Aは3つの駆動パルスを含んで構成され、第2駆動信号COM_Bは4つの駆動パルスを含んで構成されている。ここで、駆動パルスとは、ヘッド51が有するピエゾ素子513に所定の動作をさせるための電圧変化パターンである。この駆動パルスには、ノズルNzからインクを吐出させるための吐出パルスと、インクの増粘を抑制するための微振動パルス(増粘抑制パルス)とが含まれる。
【0054】
第1駆動信号COM_Aは、期間T11内に生成される第1吐出パルスPS1と、期間T12内に生成される第2吐出パルスPS2と、期間T13内に生成される第3吐出パルスPS3とを含んで構成される。これらの吐出パルスPS1〜PS3はいずれも、所定量のインクを吐出させるための動作をピエゾ素子513に行わせる。例えば、第1吐出パルスPS1及び第3吐出パルスPS3はいずれも同じ電圧変化パターンを有する。このため、同じ動作をピエゾ素子513に行わせる。そして、第1吐出パルスPS1や第3吐出パルスPS3が印加されると、ピエゾ素子513は、大ドットの形成に必要な量の半分(L/2ドット)のインクを吐出するための動作を行う。また、第2吐出パルスPS2が印加されると、ピエゾ素子513は、小ドット(Sドット)の形成に必要な量のインクを吐出するための動作を行う。
【0055】
インクを吐出させるための動作を、第1吐出パルスPS1を例に挙げて説明する。図8に示すように、第1吐出パルスPS1は、基準電圧としての中間電圧VCより生成が開始される(t0)。中間電圧VCが印加されているとき、ピエゾ素子513は、中間電圧VCに対応する度合いで変形する。これにより、圧力室511は基準容積となる。この基準容積は、最大容積よりも小さく、かつ、最小容積よりも大きく定められている。その後、第1吐出パルスPS1の電圧は一定勾配で下降し、タイミングt1では最低電圧VBとなる。このときの電圧変化によってピエゾ素子513の変形度合いは緩み、圧力室511は最大容積となる。その後、タイミングt2から第1吐出パルスPS1の電圧は一定勾配で急上昇し、タイミングt3では最高電圧VHになる。このときの電圧変化により、ピエゾ素子513は急激に変形し、圧力室511は最小容積となる。圧力室511の最大容積から最小容積への急激な変化により、圧力室511内のインクが強く加圧される。これにより、ノズルNzからインクが吐出される。その後、タイミングt4から第1吐出パルスPS1の電圧は一定勾配で下降し、タイミングt5では中間電圧VCに戻る。
【0056】
第2駆動信号COM_Bは、期間T21内に生成される第1微振動パルスPS4と、期間T22内に生成される第2微振動パルスPS5と、期間T23内に生成される第3微振動パルスPS6と、期間T24内に生成される第4微振動パルスPS7とを有する。これらの微振動パルスPS4〜PS7はいずれも同じ電圧変化パターンとされ、ピエゾ素子513に微振動動作を行わせる。この微振動動作は、インクがノズルNzから吐出されない程度の圧力変化を、圧力室511内のインクに与えるための動作である。
【0057】
この微振動動作を、第1微振動パルスPS4を例に挙げて説明する。図9に示すように、第1微振動パルスPS4もまた、中間電圧VCより生成が開始される(t20)。このため、第1微振動パルスPS4の印加直前にて、圧力室511は基準容積となっている。その後、第1微振動パルスPS4の電圧は一定勾配で緩やかに下降し、タイミングt21では微振動電圧VVとなる。このときの電圧変化によってピエゾ素子513の変形度合いは僅かに緩み、圧力室511は微振動容積となる。なお、微振動容積は、基準容積よりも大きく、最大容積よりも小さい。圧力室511の基準容積から微振動容積への拡大に伴って、圧力室511内のインクは減圧され、メニスカスが圧力室511方向へ僅かに引き込まれる。ここで、メニスカスとは、ノズルNzで露出しているインクの自由表面を意味する。その後、タイミングt22から第1微振動パルスPS4の電圧は一定勾配で緩やかに上昇し、タイミングt23では中間電圧VCに戻る。これにより、圧力室511は収縮して、微振動容積から基準容積に戻る。この圧力室511の収縮に伴って、圧力室511内のインクは加圧され、メニスカスが吐出方向へ僅かに押し出される。
【0058】
従って、微振動パルスをピエゾ素子513に印加すると、インクが吐出されない程度の弱い圧力変化が、圧力室511内のインクに与えられる。その結果、メニスカスが、ノズルNzの内部で吐出方向と圧力室511方向とに移動する(すなわち微振動する)。このメニスカスの微振動により、ノズルNz付近のインクが攪拌され、増粘が抑制される。従って、ピエゾ素子513の微振動動作は、インクの増粘を抑制するための増粘抑制動作に相当する。そして、各微振動パルスPS3〜PS7は、インクに与える圧力変化の大きさが各吐出パルスに比べて小さいので、電圧の振幅も吐出パルスに比べて小さく定められている。
【0059】
<必要な電流量について>
前述したように、ピエゾ素子513の変形に必要とされる各駆動信号の電流量は、ピエゾ素子513における充電状態の変化度合いに応じて定まる。すなわち、充放電の度合いが高くなる程、必要な電流量が増える。第1駆動信号COM_Aのピエゾ素子513への印加によって流れる電流は、図8に示すようになる。
【0060】
駆動対象となるピエゾ素子513の全体的な容量を0.2μFとしたとき、第1吐出パルスPS1における前側の放電期間であるタイミングt0からt1の期間(5μs)では、ピエゾ素子513からグランド側に向けて1.0Aの電流が流れる。これにより、当該期間における第1吐出パルスPS1の電圧は、中間電圧VCから最低電圧VBまで下降する。便宜上、以下の説明では、ピエゾ素子513からグランド側に向けて流れる電流値を負の値で示し、電源生成部PWS側からピエゾ素子513に向けて流れる電流を正の値で示す。従って、タイミングt0からt1の期間に流れる電流は−1.0Aとなる。そして、第1吐出パルスPS1における充電期間であるタイミングt2からt3の期間(2μs)では+3.6Aの電流が流れる。これにより、当該期間における第1吐出パルスPS1の電圧は、最低電圧VBから最高電圧VHまで急激に上昇する。また、第1吐出パルスPS1における後側の放電期間であるタイミングt4からt5の期間(3μs)では、−0.7Aの電流が流れる。これにより、当該期間における第1吐出パルスPS1の電圧は、最高電圧VHから中間電圧VCまで下降する。なお、前述したように、第3吐出パルスPS3は第1吐出パルスPS1と同じ電圧変化パターンに定められている。このため、第3吐出パルスPS3における必要な電流量は、第1吐出パルスPS1の必要な電流量と同じである。このため、説明は省略する。
【0061】
次に、第2吐出パルスPS2について説明する。第2吐出パルスPS2における前側の放電期間であるタイミングt6からt7の期間(5μs)では−0.9Aの電流が流れる。そして、前側の充電期間であるタイミングt8からt9の期間(2μs)では+2.0Aの電流が流れ、後側の充電期間であるタイミングt9からt10の期間(2μs)では+1.4Aの電流が流れる。また、後側の放電期間であるタイミングt12からt13の期間(5μs)では−0.4Aの電流が流れる。
【0062】
一方、駆動対象となるピエゾ素子513の全体的な容量を0.2μFとし、かつ、1つのノズル列(或るノズルグループ)に対応するピエゾ素子513を駆動対象に限定したとき、第2駆動信号COM_Bのピエゾ素子513への印加によって流れる電流は、図9に示すようになる。前述したように、4つの微振動パルス(第1微振動パルスPS4〜第4微振動パルスPS7)は、何れも同じ電圧変化パターンである。このため、第1微振動パルスPS4について説明する。第1微振動パルスPS4における前側の放電期間であるタイミングt20からt21の期間(5μs)では−0.14Aの電流が流れる。これにより、当該期間における第1微振動パルスPS4の電圧は、中間電圧VCから微振動電圧VVまで下降する。そして、第1微振動パルスPS4における充電期間であるタイミングt22からt23の期間(5μs)では+0.14Aの電流が流れる。これにより、当該期間における第1微振動パルスPS4の電圧は、微振動電圧VVから中間電圧VCまで上昇する。これに伴い、ピエゾ素子513の変形度合いも変化する。ここで、ピエゾ素子513の変形度合いは、各吐出パルスPS1〜PS3が印加された場合よりも十分に小さい。
【0063】
以上の説明から判るように、第1駆動信号COM_Aには複数の吐出パルスPS1〜PS3を、第2駆動信号COM_Bには複数の微振動パルスPS4〜PS7をそれぞれ含ませ、容量が0.2μFのピエゾ素子513を駆動すると、第1駆動信号COM_Aが必要な電流値は最大で3.6Aとなり、第2駆動信号COM_Bが必要な電流値は最大で0.14Aとなる。このように、第1駆動信号COM_Aに含ませる駆動パルスの種類と、第2駆動信号COM_Bに含ませる駆動パルスの種類とを選択することにより、必要とされる最大電流値を、第1駆動信号COM_Aと第2駆動信号COM_Bとで異ならせることができる。
【0064】
そして、このプリンタ1では、数A程度の大電流を必要とする第1駆動信号COM_Aを、電流増幅回路412を有する第1駆動信号生成回路41で生成している。このように、必要な最大電流に応じて、第1駆動信号生成回路41に生成させる駆動信号と、第2駆動信号生成回路42に生成させる駆動信号とを定めているので、第1駆動信号生成回路41に比べて簡単な構成の第2駆動信号生成回路42を、有効に使用することができる。
【0065】
===印刷動作===
<概要について>
このプリンタ1では、一連の印刷動作として、印刷命令の受信動作、用紙を印刷開始位置まで搬送する給紙動作、用紙にドットを形成するドット形成動作、用紙を所定の搬送量で搬送する搬送動作、及び、印刷の終了した用紙Sを排出する排紙動作等が行われる。このような印刷動作は、プリンタ側コントローラ70が有するCPU72で行われる。すなわち、CPU72は、メモリ73に記憶されたコンピュータプログラムに従って動作し、一連の印刷動作を実行する。従って、コンピュータプログラムは、印刷動作を実行するためのコードを有する。
【0066】
この印刷動作では、ドット形成動作と搬送動作とを繰り返し行うことで、用紙に画像を印刷する。この際、インクを吐出しないまま放置されると、ノズルNzに近い側からインクが増粘する。これは、メニスカスを通じてインク溶媒が蒸発し、インクにおける色材成分の比率が高くなるためと考えられる。このようなインクの増粘を防止するため、ドットなしが指定されたノズルNzについては、対応するピエゾ素子513に必要な微振動パルスを印加する。前述したように、微振動パルスが印加されることで、ノズルNzの内部でメニスカスが微振動して、インクが攪拌される。その結果、インクの増粘を抑制できる。
【0067】
前述したように、本実施形態の第2駆動信号COM_Bは、印刷期間T内に複数の微振動パルスPS4〜PS7を有する。そして、ドット形成データSIがドットなしを示す場合、対応するピエゾ素子513には、所定数の微振動パルスが印加される。この所定数は、ノズル列毎(ピエゾ素子513のグループ毎)に定められる。このプリンタ1では、ノズル列毎に吐出されるインクの種類が定められており、それぞれのインクの増粘し易さの度合いにはばらつきがある。このため、所定数は、インクの増粘し易さの度合いに応じて定められているといえる。例えば、増粘し易い種類のインクについては、所定数を大きくして増粘の抑制効果を高めている。その結果、インクの増粘し易さの度合いに適した増粘抑制動作をピエゾ素子513に行わせることができ、インクの状態を最適化できる。以下、詳細に説明する。
【0068】
<インク吐出動作及び微振動動作について>
第1駆動信号COM_Aは、印刷期間内に3つの吐出パルスを有する。そして、形成すべきドットの大きさに応じてピエゾ素子513へ印加する吐出パルスを特定している。この実施形態では、小ドットの形成指令(ドット形成データSI[01])に対応して、第2吐出パルスPS2をピエゾ素子513に印加する。これにより、小ドットの形成に適した量のインクが、ノズルNzから吐出される。また、中ドットの形成指令(ドット形成データSI[10])に対応して、第1吐出パルスPS1をピエゾ素子513に印加する。これにより、中ドットの形成に適した量のインクが、ノズルNzから吐出される。この例では、大ドットを形成するために必要な量の半分のインクが吐出される。同様に、大ドットの形成指令(ドット形成データSI[11])に対応して、第1吐出パルスPS1と第3吐出パルスPS3をピエゾ素子513に印加する。これにより、大ドットの形成に適した量のインクが、ノズルNzから吐出される。なお、各ドットの形成指令と印加される駆動パルスの関係は、インクの種類に関わらず共通である。
【0069】
各吐出パルスのピエゾ素子513への印加は、期間T11〜期間T13のそれぞれを単位とする第1スイッチ85Aのオンオフ制御によって行われる。すなわち、第1吐出パルスPS1の印加は、期間T11に亘って第1スイッチ85Aをオン状態にすることでなされ、第2吐出パルスPS2の印加は、期間T12に亘って第1スイッチ85Aをオン状態にすることでなされる。同様に、第3吐出パルスPS3の印加は、期間T13に亘って第1スイッチ85Aをオン状態にすることでなされる。
【0070】
前述したように、第1スイッチ85Aの制御はスイッチ制御情報q0〜q3によってなされる。これらのスイッチ制御情報q0〜q3のうち、スイッチ制御情報q0は、ドットなしの指令(ドット形成データSI[00])に対応する第1スイッチ85Aの制御パターンを示し、スイッチ制御情報q1は、小ドットの形成指令に対応する第1スイッチ85Aの制御パターンを示す。同様に、スイッチ制御情報q2は、中ドットの形成指令に対応する第1スイッチ85Aの制御パターンを示し、スイッチ制御情報q3は、大ドットの形成指令に対応する第1スイッチ85Aの制御パターンを示す。
【0071】
これらのスイッチ制御情報q0〜q3は、いずれも3ビットのデジタルデータで構成されている。3ビットのうちの最上位ビットは、期間T11における第1スイッチ85Aのオンオフ状態を示し、中間のビットは、期間T12における第1スイッチ85Aのオンオフ状態を示す。同様に、最下位ビットは、期間T13における第1スイッチ85Aのオンオフ状態を示す。そして、各ビットには、オン状態を示すデータ[1]か、オフ状態を示すデータ[0]が与えられる。ドットなしの指令の場合、第1吐出パルスPS1から第3吐出パルスPS3の何れもピエゾ素子513へは印加されない。このため、図7Bに示すように、対応するスイッチ制御情報q0はデータ[000]とされる。この場合、何れの期間T11〜T13においても、第1スイッチ85Aはオフ状態となる。小ドットの形成指令の場合、第2吐出パルスPS2がピエゾ素子513へ印加される。このため、対応するスイッチ制御情報q1はデータ[010]とされる。これにより、期間T12に亘って第1駆動信号COM_Aがピエゾ素子513へ印加される。中ドットの形成指令の場合、第1吐出パルスPS1がピエゾ素子513へ印加される。このため、対応するスイッチ制御情報q2はデータ[100]とされる。これにより、期間T11に亘って第1駆動信号COM_Aがピエゾ素子513へ印加される。大ドットの形成指令の場合、第1吐出パルスPS1と第3吐出パルスPS3がピエゾ素子513へ印加される。このため、対応するスイッチ制御情報q2はデータ[101]とされる。これにより、期間T11と期間T13のそれぞれで、第1駆動信号COM_Aがピエゾ素子513へ印加される。
【0072】
第2駆動信号COM_Bは、印刷期間内に4つの微振動パルスを有する。そして、ドットなしの指令に基づき、微振動パルスがピエゾ素子513に印加される。このとき、対応するインクの種類に応じて、ピエゾ素子513に印加される微振動パルスの数が定められる。この実施形態では、増粘し易さの度合いに応じて印加される微振動パルスの数が定められる。例えば、図7B、図10A及び図10Bに示すように、ブラックインクについては、4つの微振動パルスが印加され、シアンインクやマゼンタインクについては、3つの微振動パルスが印加される。また、ライトシアンインクやライトマゼンタインクについては、2つの微振動パルスが印加され、イエローインクについては、1つの微振動パルスが印加される。
【0073】
各微振動パルスのピエゾ素子513への印加は、期間T21〜期間T24のそれぞれを単位とする第2スイッチ85Bのオンオフ制御によって行われる。すなわち、第1微振動パルスPS4の印加は、期間T21に亘って第2スイッチ85Bをオン状態にすることでなされ、第2微振動パルスPS5の印加は、期間T22に亘って第2スイッチ85Bをオン状態にすることでなされる。同様に、第3微振動パルスPS6の印加は、期間T23に亘って第2スイッチ85Bをオン状態にすることでなされ、第4微振動パルスPS7の印加は、期間T24に亘って第2スイッチ85Bをオン状態にすることでなされる。
【0074】
前述したように、第2スイッチ85Bの制御はスイッチ制御情報q4〜q7によってなされる。これらのスイッチ制御情報q4〜q7のうち、スイッチ制御情報q4は、ドットなしの指令に対応する第2スイッチ85Bの制御パターンを示し、スイッチ制御情報q5は、小ドットの形成指令に対応する第2スイッチ85Bの制御パターンを示す。同様に、スイッチ制御情報q6は、中ドットの形成指令に対応する第2スイッチ85Bの制御パターンを示し、スイッチ制御情報q7は、大ドットの形成指令に対応する第2スイッチ85Bの制御パターンを示す。
【0075】
これらのスイッチ制御情報q4〜q7は、4つの期間T21〜期間T24に対応する4ビットのデジタルデータで構成されている。例えば、4ビットのうちの最上位ビットが期間T21に、2番目のビットが期間T22にそれぞれ対応する。また、3番目のビットが期間T23に、最下位ビットが期間T24にそれぞれ対応する。なお、第2駆動信号COM_Bは、ドットなしの指令が与えられた場合にピエゾ素子513に印加され、ドットの形成指令が与えられた場合にはピエゾ素子513へ印加されない。このため、スイッチ制御情報q4がインクの種類に応じて種々定められる。そして、他のスイッチ制御情報q5〜スイッチ制御情報q7は、インクの種類に関わらずデータ[0000]となる。
【0076】
前述したように、ブラックインクでドットなしの場合、ピエゾ素子513には、4つの微振動パルスが印加される。このため、ブラックインク用のヘッド制御部HCが有する制御ロジック83には、スイッチ制御情報q4としてデータ[1111]が記憶される。これにより、ドットなしの指令に対応して第1微振動パルスPS4〜第4微振動パルスPS7がピエゾ素子513へ印加される。シアンインクでドットなしの場合、ピエゾ素子513には、3つの微振動パルスが印加される。このプリンタ1では、第1微振動パルスPS4〜第3微振動パルスPS6が印加される。このため、シアンインク用のヘッド制御部HCが有する制御ロジック83には、スイッチ制御情報q4としてデータ[1110]が記憶される。マゼンタインクでドットなしの場合も、ピエゾ素子513には、3つの微振動パルスが印加される。このプリンタ1では、微振動パルスの組み合わせがシアンインクとは異なっている。具体的には、第2微振動パルスPS5〜第4微振動パルスPS7が印加される。このため、マゼンタインク用のヘッド制御部HCが有する制御ロジック83には、スイッチ制御情報q4としてデータ[0111]が記憶される。ライトシアンインクでドットなしの場合、ピエゾ素子513には、2つの微振動パルスが印加される。このプリンタ1では、第1微振動パルスPS4と第3微振動パルスPS6とが印加される。このため、ライトシアンインク用のヘッド制御部HCが有する制御ロジック83には、スイッチ制御情報q4としてデータ[1010]が記憶される。ライトマゼンタインクでドットなしの場合、ピエゾ素子513には、2つの微振動パルスが印加される。このプリンタ1では、第2微振動パルスPS5と第4微振動パルスPS7とが印加される。このため、ライトマゼンタインク用のヘッド制御部HCが有する制御ロジック83には、スイッチ制御情報q4としてデータ[0101]が記憶される。イエローインクでドットなしの場合、ピエゾ素子513には、1つの微振動パルス(第4微振動パルスPS7)が印加される。このため、イエローインク用のヘッド制御部HCが有する制御ロジック83には、スイッチ制御情報q4としてデータ[0001]が記憶される。
【0077】
以上の構成により、ドットなしの指令に対応して微振動動作をさせる場合に、ノズル列毎(吐出するインクの種類毎)に特定された微振動パルスを用いることができる。そして、微振動パルスの選択の仕方で、インクの増粘の抑制度合いを調整できる。これにより増粘抑制動作を最適化できる。例えば、最も増粘し易いブラックインクについては、印加する微振動パルスの数を多くすることで増粘の抑制度合いを強くし、最も増粘し難いイエローインクについては、印加する微振動パルスの数を少なくする。これにより、必要な増粘抑制度合いを確保しつつ、消費電力を抑制できる。
【0078】
===第2実施形態===
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態のプリンタ1は、第2駆動信号COM_Bに複数の微振動パルスを含ませている点で、第1実施形態のプリンタ1と共通する。しかし、第2実施形態のプリンタ1では、図11に示すように、増粘の抑制度合いの異なる複数種類の微振動パルスを、第2駆動信号COM_Bに含ませている点で、第1実施形態のプリンタ1と相違する。以下、このことを中心に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態のプリンタ1における構成は、第1実施形態のプリンタ1と同じである。このため、説明は省略する。
【0079】
<生成される各駆動信号について>
図11Aに示すように、第2実施形態でも第1駆動信号COM_Aは複数の吐出パルスを有し、第2駆動信号COM_Bは複数の微振動パルスを有する。ここで、第2実施形態における第1駆動信号COM_Aは、第1実施形態における第1駆動信号COM_Aと同じ電圧変化パターンに定められている。このため説明は省略する。
【0080】
第2駆動信号COM_Bは、印刷期間内に3つの微振動パルスを有する。第2実施形態の第2駆動信号COM_Bは、含まれる微振動パルスによる増粘の抑制度合いがそれぞれ異なっている。期間T21で生成される第1微振動パルスPS11及び期間T23で生成される第3微振動パルスPS13は、いずれも下に凸の台形状の電圧変化パターンに定められている。第1微振動パルスPS11と第3微振動パルスPS13の違いは、主に波高値にある。すなわち、第3微振動パルスPS13の波高値は、第1微振動パルスPS11の波高値よりも小さく定められている。このため、第3微振動パルスPS13のピエゾ素子513への印加でなされる微振動動作は、第1微振動パルスPS11のピエゾ素子513への印加でなされる微振動動作よりも、増粘の抑制度合いが弱い。期間T22で生成される第2微振動パルスPS12は、台形状の電圧変化パターンを複数有している点に特徴を有する。簡単に説明すると、まず或る変化量で電圧を降下させ、その後、或る変化量の1/3程度の変化量で電圧の上昇と下降を繰り返し、最後に或る変化量で電圧を上昇させて中間電圧に戻す。この第2微振動パルスPS12のピエゾ素子513への印加でなされる微振動動作は、第1微振動パルスPS11のピエゾ素子513への印加でなされる微振動動作よりも、増粘の抑制度合いが強い。これは、複数の台形状電圧変化パターンによって、複雑な動作が実現されているからと考えられる。
【0081】
そして、ドットなしの指令に基づき、微振動パルスがピエゾ素子513に印加される。このとき、対応するノズル列に応じて、ピエゾ素子513に印加される微振動パルスの種類が定められる。この実施形態では、増粘し易さの度合いに応じて微振動パルスの種類が定められる。例えば、図12及び図13に示すように、ブラックインクについては、第2微振動パルスPS12が印加され、シアンインクやマゼンタインクについては、第1微振動パルスPS11が印加される。また、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、及び、イエローインクについては、第3微振動パルスPS13が印加される。
【0082】
各吐出パルスのピエゾ素子513への印加は、第1実施形態のプリンタ1と同様に、期間T21〜期間T23を単位とするスイッチのオンオフ制御によって行われる。そして、第2スイッチ85Bの制御はスイッチ制御情報q4〜q7によってなされる。これらのスイッチ制御情報q4〜q7は、3つの期間T21〜期間T23に対応する3ビットのデジタルデータで構成される。例えば、3ビットのうちの最上位ビットが期間T21に、中間のビットが期間T22に、最下位ビットが期間T23にそれぞれ対応する。第2実施形態のプリンタ1でも、スイッチ制御情報q4がインクの種類に応じて種々定められる。従って、他のスイッチ制御情報q5〜スイッチ制御情報q7は、インクの種類に関わらずデータ[000]となる。
【0083】
前述したように、ブラックインクでドットなしの場合、ピエゾ素子513には、第2微振動パルスPS12が印加される。このため、対応する制御ロジック83には、スイッチ制御情報q4としてデータ[010]が記憶される。シアンインク及びマゼンタインクでドットなしの場合、ピエゾ素子513には、第1微振動パルスPS11が印加される。このため、対応する制御ロジック83には、スイッチ制御情報q4としてデータ[100]が記憶される。ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、及び、イエローインクでドットなしの場合、ピエゾ素子513には、第3微振動パルスPS13が印加される。このため、対応する制御ロジック83には、スイッチ制御情報q4としてデータ[001]が記憶される。
【0084】
以上の構成により、ドットなしの指令に対して微振動動作をさせるに際し、ノズル列毎(吐出するインクの種類毎)に特定された微振動パルスを用いることができる。そして、微振動パルスの選択の仕方で、インクの増粘の抑制度合いを調整できる。これにより増粘抑制動作を最適化できる。例えば、増粘し易いブラックインクについては、最も増粘抑制効果の強い第2微振動パルスPS12を印加し、増粘し難いライト系インクやイエローインクについては最も増粘抑制効果の弱い第3微振動パルスPS13を印加する。また、シアンインクやマゼンタインクについては、中程度の増粘抑制効果を奏する第2微振動パルスPS12を印加する。一般に、増粘抑制度合いの強さと消費電力とは比例関係にある。すなわち、増粘抑制度合いを強くする程、その微振動パルスにおける消費電力は増える傾向がある。従って、第2実施形態のプリンタ1でも、必要な増粘抑制度合いを確保しつつ、消費電力を抑制できる。
【0085】
なお、電圧の変化幅が異なる複数種類の台形波によって複数種類の微振動パルスを構成し、増粘の抑制度合いを異ならせてもよい。この場合、電圧の変化幅が大きい種類の微振動パルスである程、増粘の抑制度合いが高くなる。このため、増粘し易いインクに対して電圧の変化幅が大きい種類の微振動パルスを使用する。
【0086】
===まとめ===
以上説明したように各実施形態のプリンタ1では、微振動動作を行わせるに際し、まず、第2駆動信号COM_Bに含まれた複数の微振動パルスのうち、必要なものをノズルグループ毎に特定する。その後、特定された微振動パルスを、ドットなしの指令(液体を吐出させない指令)に基づき、ピエゾ素子513へ印加する。この構成により、特定する微振動パルス次第で、インク増粘の抑制度合いを調整できる。その結果、微振動動作を最適化でき、ひいてはインクの状態を最適化できる。
【0087】
===その他の実施の形態===
前述した実施形態は、プリンタ1を有する印刷システムについて記載されているが、その中には、液体の吐出方法や液体吐出システム等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0088】
<ノズルNzのグループについて>
前述した各実施形態のプリンタ1は、吐出するインクの種類毎にノズル列が設けられていた。すなわち、複数のノズルNzは、ノズル列を単位とするグループに分けられていた。ここで、ノズルNzのグループは、ノズル列を単位とするものに限られるものではなく、種々の基準で定めることができる。
【0089】
例えば、1つのノズル列から複数種類のインクを吐出させるヘッドの場合、或る種類のインクを吐出する複数のノズルNzで或るグループが構成され、他の種類のインクを吐出する複数のノズルNzで他のグループが構成される。仮に、1つのノズル列が、シアンインクを吐出する複数のノズルNzと、マゼンタインクを吐出する複数のノズルNzと、イエローインクを吐出する複数のノズルNzとによって構成されていた場合を考える。この場合、シアンインクを吐出する複数のノズルNzが或るグループを構成し、マゼンタインクを吐出する複数のノズルNzが他のグループを構成し、イエローインクを吐出する複数のノズルNzがさらに他のグループを構成する。
【0090】
また、同じ種類のインクを異なるノズル列で吐出してもよい。例えば、ノズルNzの形成位置をノズル列方向に1/2ピッチずらした2つのノズル列を設け、それぞれから同じ種類のインクを吐出させてもよい。この場合、1つのノズル列で吐出する場合に比べて、2倍の解像度でドットを形成することができ、印刷の高速化が図れる。
【0091】
このように、ノズルNzのグループは、吐出対象となるインク(液体)の種類を設定可能な単位ということができる。そして、このグループ毎に微振動動作の条件を定めることにより(すなわち印加する微振動パルスを特定することにより)、そのインクに適した条件で微振動動作を行うことができる。
【0092】
<微振動パルスについて>
前述した各実施形態のプリンタ1は、種類に応じてインクの増粘度合いが異なることに着目し、インクの色毎に特定された微振動パルス(増粘抑制パルス)をピエゾ素子513に印加する構成であった。インクの増粘度合いは、インクに含まれる成分によっても異なる。例えば、色材として顔料を用いたインクは、染料を用いたインクよりも増粘し易い傾向がある。このため、印加する微振動パルスを、インクの構成成分に応じて特定するようにしてもよい。
【0093】
また、微振動パルスを特定する基準に関し、インク(液体)の吐出頻度を用いてもよい。すなわち、それまでに頻繁にインクを吐出していたノズルNzは、あまりインクを吐出しなかったノズルNzに比べて、インクの増粘がし難い状態と考えられる。従って、直前の或る単位(例えばパス)におけるインクの吐出頻度に基づいて微振動パルスを特定し、特定した微振動パルスをピエゾ素子513に印加してもよい。
【0094】
図14は、吐出頻度を用いた制御の一例を示す。この例では、前回のパスで或るドットのドット形成率を基準に微振動パルスを特定している。ここで、ドット形成率とは、前回のパスで形成したドット数と、そのパスでドットを形成し得る数の比率で表すことができる。例えば、1回のパスで、或るノズルNzにより最大6000ドットが形成できる場合に、何れかの大きさのドットを3000ドット形成したとする。この場合、ドット形成率は、50%となる。また、ドットを1500ドット形成した場合、ドット形成率は、25%となる。
【0095】
図14の例では、第2実施形態と同じ電圧変化パターンの第2駆動信号COM_Bを用いている。そして、前回パスのドット形成率が50%以上の場合には、第3微振動パルスPS13を用いて微振動動作を行う。また、ドット形成率が25%以上50%未満の場合に第2微振動パルスPS12を用い、ドット形成率が25%未満の場合に第2微振動パルスPS12を用いる。このようにしても、インクの状態に適した微振動動作を行わせることができる。
【0096】
加えて、微振動パルスの選択に関し、インク(液体)の増粘し易さの度合いとインク(液体)の吐出頻度とを適宜組み合わせてもよい。すなわち、インクの種類と吐出頻度に基づいて定めた増粘度合いに応じて、ピエゾ素子513へ印加すべき微振動パルスを特定するようにしてもよい。このようにすることで、増粘抑制の度合いを最適化できる。
【0097】
<駆動信号について>
前述した各実施形態では、2種類の駆動信号COM_A,COM_Bを生成し、一方をインクの吐出に用い、他方を微振動動作に用いている。ここで、生成する駆動信号は2種類に限定されるものではなく、3種類以上であってもよい。例えば、2種類の駆動信号をインクの吐出に用い、1種類の駆動信号を微振動動作に用いてもよい。また、3種類の駆動信号をインクの吐出に用い、2種類の駆動信号を微振動動作に用いてもよい。
【0098】
<他の装置について>
前述した各実施形態におけるプリンタ1は、ヘッド51をキャリッジ移動方向に往復移動させて印刷を行う形式のものであったが、この構成に限定されない。例えば、媒体の幅方向に亘って複数のノズルNzを配置したラインヘッドを有するラインヘッドプリンタであってもよい。
【0099】
また、前述の実施形態では、印刷装置としてプリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】印刷システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】ヘッドの構造を説明するための断面図である。
【図3】ノズル列の構成を説明する図である。
【図4】ヘッド制御部の構成を説明するためのブロック図である。
【図5】駆動信号生成回路と周辺部の関係を説明するブロック図である。
【図6】電流増幅回路の構成を説明する図である。
【図7】図7Aは、第1実施形態の各駆動信号を説明するための図である。図7Bは、ブラックインクノズル列用のスイッチ制御情報を説明するための図である。
【図8】第1駆動信号における電圧変化パターンと電流の関係を説明する図である。
【図9】第2駆動信号における電圧変化パターンと電流の関係を説明する図である。
【図10】図10Aは、ドットなし用のスイッチ制御情報をノズル列毎に説明する図である。図10Bは、動作の具体例を説明するための図である。
【図11】第2実施形態の各駆動信号を説明するための図である。
【図12】ドットなし用のスイッチ制御情報をノズル列毎に説明する図である。
【図13】動作の具体例を説明するための図である。
【図14】ドット形成率で微振動パルスを選択する例を説明する図である。
【符号の説明】
【0101】
1 プリンタ,20 用紙搬送機構,30 キャリッジ移動機構,
40 駆動信号生成回路,41 第1駆動信号生成回路,
411 第1波形生成回路,412 電流増幅回路,
413 第1DAC回路,414 第1プリアンプ,
415 バイポーラトランジスタ対,416 NPN型トランジスタ,
417 PNP型トランジスタ,418 放熱器,
42 第2駆動信号生成回路,421 第2波形生成回路,
422 第2DAC回路,423 第2プリアンプ,
50 ヘッドユニット,511 圧力室,512 共通インク室,
513 ピエゾ素子,514 振動板,60 検出器群,
70 プリンタ側コントローラ,71 インタフェース部,
72 CPU,73 メモリ,74 制御ユニット,
81A 第1シフトレジスタ,81B 第2シフトレジスタ,
82A 第1ラッチ回路,82B 第2ラッチ回路,
83 制御ロジック,84 デコーダ,85A 第1スイッチ,
85B 第2スイッチ,110 コンピュータ,
111 ホスト側コントローラ,112 インタフェース部,
113 CPU,114 メモリ,120 表示装置,130 入力装置,
140 記録再生装置,PWS 電源生成部,HC ヘッド制御部,
PCK パッケージ,SI ドット形成データ,
COM_A 第1駆動信号,COM_B 第2駆動信号,
COM_A´ 第1波形信号,COM_B´ 第2波形信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液体を吐出する複数のノズルであって、複数のグループに分けられた複数のノズルと、
(B)前記ノズルから前記液体を吐出させるための動作をする素子であって、前記複数のノズルに対応して設けられる素子と、
(C)前記素子に印加される複数種類の駆動信号を生成する駆動信号生成部であって、
(C1)前記液体を吐出させる際に前記素子に印加される吐出パルスを含んだ第1駆動信号と、
(C2)前記液体の増粘を抑制する際に前記素子に印加される増粘抑制パルスを、複数含んだ第2駆動信号と、
(C3)を生成する駆動信号生成部と、
(D)液体を吐出させる指令に基づいて、前記吐出パルスを前記素子に印加し、
液体を吐出させない指令に基づいて、前記複数の増粘抑制パルスの中から前記グループに応じて選択された特定の増粘抑制パルスを、前記素子に印加する、印加制御部と、
(E)を有する、液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記複数のノズルは、
吐出する液体の種類に応じて複数のグループに分けられており、
前記印加制御部は、
前記液体の種類に応じて選択された特定の増粘抑制パルスを、前記素子に印加する、液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の液体吐出装置であって、
前記液体は、
色材成分を含んだインクであり、
前記印加制御部は、
前記インクの種類に応じて選択された特定の増粘抑制パルスを、前記素子に印加する、液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記印加制御部は、
液体の吐出頻度に応じて選択された特定の増粘抑制パルスを、前記素子に印加する、液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れかに記載の液体吐出装置であって、
前記印加制御部は、
前記複数の増粘抑制パルスの中から、定められた数の特定の増粘抑制パルスを選択する、液体吐出装置。
【請求項6】
請求項5に記載の液体吐出装置であって、
前記駆動信号生成部は、
同じ電圧変化パターンの増粘抑制パルスを複数含んだ第2駆動信号を生成する、液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れかに記載の液体吐出装置であって、
前記駆動信号生成部は、
液体の増粘抑制度合いが異なる電圧変化パターンの複数種類の増粘抑制パルスを含んだ前記第2駆動信号を生成し、
前記印加制御部は、
前記複数種類の増粘抑制パルスの中から、特定の種類の増粘抑制パルスを選択する、液体吐出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の液体吐出装置であって、
前記複数のノズルは、
吐出する液体の種類に応じて複数のグループに分けられており、
前記印加制御部は、
増粘し易さの度合いが高い液体を吐出させる素子に対し、増粘し易さの度合いが低い液体を吐出させる素子よりも増粘の抑制度合いの高い種類の増粘抑制パルスを選択する、液体吐出装置。
【請求項9】
請求項8に記載の液体吐出装置であって、
前記増粘の抑制度合いが高い種類の増粘抑制パルスは、
増粘の抑制度合いが低い種類の増粘抑制パルスよりも電圧の変化幅が大きい、液体吐出装置。
【請求項10】
(A)ノズルから液体を吐出させる際に液体を吐出させるための動作をする素子へ印加される吐出パルスを含んだ第1駆動信号と、前記液体の増粘を抑制する際に前記素子に印加される増粘抑制パルスを複数含んだ第2駆動信号とを、生成すること、
(B)液体を吐出させる指令に基づいて、前記吐出パルスを前記素子へ印加し、
液体を吐出させない指令に基づいて、前記複数の増粘抑制パルスの中から特定の増粘抑制パルスを、複数のノズルのうち一部のノズルによって構成されたグループに応じて選択し、対応する素子に印加すること、
(C)を行う、液体吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−284848(P2008−284848A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−134339(P2007−134339)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】