説明

液体吐出装置、及び、液体吐出方法

【課題】液体滴の吐出を安定化する。
【解決手段】液体吐出装置(プリンタ1)は、ノズルに連通された圧力室(圧力室42)と、圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子(ピエゾ素子PZT)と、ノズルから液体を吐出させるべく素子を動作させる吐出パルスPSを生成する吐出パルス生成部(駆動信号生成回路30)と、を備える。液体の粘度は、10ミリパスカル秒以上である。吐出パルス生成部は、先行吐出パルスの生成終了から後行吐出パルスの生成開始までの期間Aが、次式(1)を満たすように、先行吐出パルスと後行吐出パルスとを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び、液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに代表される液体吐出装置が知られている。従来の液体吐出装置では、粘度が水と同程度である液体、すなわち粘度が1ミリパスカル秒程度の液体を吐出させていた。この場合、液体の吐出後におけるメニスカス(ノズルで露出しているインクの自由表面)の過度な振動を早期に収束させるべく、制振要素を有する吐出パルスが用いられていた(特許文献1を参照)。この吐出パルスは、圧力室を膨張させる引き込み工程と、圧力室を収縮させて液体滴を吐出させる吐出工程と、圧力室を再度膨張させる制振工程とを、ピエゾ素子に行わせる。
【特許文献1】特開2003−326716号公報(図7,図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、インクジェットプリンタの技術を応用して、従来用いられている液体よりも高い粘度の液体(便宜上、高粘度液体ともいう。)を吐出させる試みがなされている。高粘度液体を従来の吐出パルスを用いて吐出させた場合、最初の膨張を中間電位から開始せざるを得ず、最初の膨張時における容積が十分に確保できなかった。
そこで、高粘度液体の吐出に、台形波の吐出パルスを用いることが考えられる。しかし、台形波の吐出パルスを用いた場合、先後の吐出パルスの間隔を制約なしに定めてしまうと、液体滴の吐出が不安定になってしまうという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高粘度液体の吐出を安定化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するための主たる発明は、
ノズルに連通された圧力室と、
前記圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子と、
前記ノズルから前記液体を吐出させるべく前記素子を動作させる吐出パルスを生成する吐出パルス生成部と、
を備え、
前記吐出パルス生成部は、
先行吐出パルスの生成終了から後行吐出パルスの生成開始までの期間Aが、次式(1)を満たすように、

前記先行吐出パルスと前記後行吐出パルスとを生成する、液体吐出装置である。
【0005】
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
【0007】
すなわち、ノズルに連通された圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子と、前記ノズルから前記液体を吐出させるべく前記素子を動作させる吐出パルスを生成する吐出パルス生成部とを備え、前記吐出パルス生成部は、先行吐出パルスの生成終了から後行吐出パルスの生成開始までの期間Aが次式(1)を満たすように、

前記先行吐出パルスと前記後行吐出パルスとを生成する液体吐出装置を実現できることが明らかにされる。
【0008】
なお、Xvmaxは、先の吐出パルスの印加終了から後の吐出パルスの印加開始までの時間間隔であって、後の吐出パルスによる液体滴の飛行速度が最も高くなる時間間隔である。また、Tcは、ヘルムホルツ周期(圧力室における液体の固有振動周期)である。
このような液体吐出装置によれば、液体滴の吐出を安定化できる。
【0009】
また、ノズルに連通された圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子と、前記ノズルから前記液体を吐出させるべく前記素子を動作させる吐出パルスを生成する吐出パルス生成部とを備え、前記吐出パルス生成部は、先行吐出パルスの生成終了から後行吐出パルスの生成開始までの期間Aが、次式(2)を満たすように、

前記先行吐出パルスと前記後行吐出パルスとを生成する液体吐出装置を実現できることも明らかにされる。
なお、nは0又は1である。
このような液体吐出装置によれば、液体滴の吐出を安定化できる。
【0010】
また、ノズルに連通された圧力室と、前記圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子と、前記ノズルから前記液体を吐出させるべく前記素子を動作させる吐出パルスを生成する吐出パルス生成部とを備え、前記吐出パルス生成部は、或る目標吐出量の液体滴を吐出させるべく、先行吐出パルス及び後行吐出パルスによって前記素子を動作させる場合に、前記先行吐出パルスの生成終了から前記後行吐出パルスの生成開始までの期間Aが、次式(3)を満たすよう、

前記先行吐出パルスと後行吐出パルスとを生成する液体吐出装置を実現できることも明らかにされる。
このような液体吐出装置によれば、目標吐出量の液体を先行吐出パルスと後行吐出パルスとを用いて吐出させる場合に、液体滴の吐出を安定化できる。
【0011】
かかる液体吐出装置であって、前記先行吐出パルスは、台形波によって構成され、前記後行吐出パルスは、前記先行吐出パルスと電位変化パターンが同じ台形波によって構成されていることが好ましい。
このような液体吐出装置によれば、液体滴の吐出を安定化できる。
【0012】
かかる液体吐出装置であって、前記素子は、印加された吐出パルスの電位に応じて変形することで前記圧力室の容積を変化させ、前記液体に圧力変化を与えるピエゾ素子であることが好ましい。
このような液体吐出装置によれば、前記液体に与える圧力をきめ細かに制御できる。
【0013】
また、次の液体吐出方法を実現できることも明らかにされる。
すなわち、圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子に対し、先行吐出パルスと後行吐出パルスとを連続的に印加することで、前記圧力室に連通されたノズルから液体滴を吐出させる液体吐出方法であって、前記液体の粘度は10ミリパスカル秒以上であり、前記先行吐出パルスの生成終了から前記後行吐出パルスの生成開始までの期間Aは、次式(1)を満たすように、

定められている液体吐出方法を実現できることも明らかにされる。
【0014】
同様に、次の液体吐出方法を実現できることも明らかにされる。
すなわち、圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子に対し、先行吐出パルスと後行吐出パルスとを連続的に印加することで、前記圧力室に連通されたノズルから液体滴を吐出させる液体吐出方法であって、前記液体の粘度は10ミリパスカル秒以上であり、前記先行吐出パルスの生成終了から前記後行吐出パルスの生成開始までの期間Aは、次式(2)を満たすように、

定められている液体吐出方法を実現できることも明らかにされる。
【0015】
同様に、次の液体吐出方法を実現できることも明らかにされる。
すなわち、或る目標吐出量の液体滴を吐出させるべく、圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子に対して先行吐出パルスと後行吐出パルスとを連続的に印加し、前記圧力室に連通されたノズルから前記液体滴を吐出させる液体吐出方法であって、前記液体の粘度は10ミリパスカル秒以上であり、前記先行吐出パルスの生成終了から前記後行吐出パルスの生成開始までの期間Aは、次式(3)を満たすように、

定められている液体吐出方法を実現できることも明らかにされる。
【0016】
===第1実施形態===
<印刷システムについて>
図1に例示した印刷システムは、プリンタ1とコンピュータCPとを有する。プリンタ1は液体吐出装置に相当し、用紙、布、フィルム等の媒体に向けて、液体の一種であるインクを吐出する。媒体は、液体が吐出される対象となる対象物である。コンピュータCPは、プリンタ1と通信可能に接続されている。プリンタ1に画像を印刷させるため、コンピュータCPは、その画像に応じた印刷データをプリンタ1に送信する。
【0017】
===プリンタ1の概要===
プリンタ1は、用紙搬送機構10、キャリッジ移動機構20、駆動信号生成回路30、ヘッドユニット40、検出器群50、及び、プリンタ側コントローラ60を有する。
【0018】
用紙搬送機構10は、用紙を搬送方向に搬送させる。キャリッジ移動機構20は、ヘッドユニット40が取り付けられたキャリッジを所定の移動方向(例えば紙幅方向)に移動させる。駆動信号生成回路30は、駆動信号COMを生成する。この駆動信号COMは、用紙への印刷時にヘッドHDのピエゾ素子PZT(図2を参照)へ印加されるものであり、図9に一例を示すように、吐出パルスPS(PS1,PS2)を含んでいる。ここで、吐出パルスPSとは、ヘッドHDのノズルNz(図5を参照)から滴状のインクを吐出させるために、ピエゾ素子PZTに所定の動作を行わせる電位の変化パターンである。駆動信号COMが吐出パルスPSを含むことから、駆動信号生成回路30は吐出パルス生成部に相当する。なお、駆動信号生成回路30の構成や吐出パルスPSについては、後で説明する。ヘッドユニット40は、ヘッドHDとヘッド制御部HCとを有する。ヘッドHDは、液体状のインクを用紙に向けて吐出させるものであり、液体吐出ヘッドに相当する。ヘッド制御部HCは、プリンタ側コントローラ60からのヘッド制御信号に基づき、ヘッドHDを制御する。検出器群50は、プリンタ1の状況を監視する複数の検出器によって構成される。これらの検出器による検出結果は、プリンタ側コントローラ60に出力される。プリンタ側コントローラ60は、プリンタ1における全体的な制御を行うものであり、インタフェース部61とCPU62とメモリ63とを有する。
【0019】
===プリンタ1の要部===
<ヘッドHDについて>
図2は、ヘッドHDの圧力室の短手方向の断面図である。図3は、ヘッドHDの圧力室の長手方向断面図である。ヘッドHDは、流路形成基板41を有する。この流路形成基板41は例えばシリコン単結晶基板からなり、隔壁によって複数の圧力室42が区画されている。各圧力室42の長手方向における一端部側には、インク(液体の一種)を供給するためのリザーバ43が、液体供給部の一種であるインク供給路44を介して連通されている。流路形成基板41におけるピエゾ素子PZT側の表面には振動板45が設けられ、反対側の表面にはノズルプレート46が設けられている。ノズルプレート46には、ノズルNzが圧力室42毎に設けられている。
【0020】
振動板45にはヘッドケースCAが取り付けられている。ヘッドケースCAには、図示しないインクカートリッジからのインクをリザーバ43に供給するインク供給管が設けられている。また、ヘッドケースCAの内部にはピエゾ素子ユニットPUが取り付けられている。取り付け状態において、ピエゾ素子ユニットPUが有する複数のピエゾ素子PZTは、各先端が島部45aに接着されている。この島部45aは、振動板45上における各圧力室42に対応する領域に設けられており、ピエゾ素子PZTの変形によって圧力室42側に移動したり、反対側に移動したりする。これにより、周辺の振動板45が変形して圧力室42の容積を変化させる。
【0021】
図4で模式的に示すように、圧力室42及びインク供給路44は、略直方体状の空間として構成されている。本実施形態において、圧力室42の長さは1000μmであり、高さは80μmである。インク供給路44の長さは600μmであり、幅は圧力室42の幅よりも多少狭く55μmである。そして、インク供給路44の高さは、圧力室42の高さと同じく80μmである。
【0022】
図5で模式的に示すように、ノズルNzは、漏斗状の空間を区画する部分であり、テーパー部とストレート部とを有する。テーパー部は、圧力室42から遠ざかるにつれて直径が次第に小さくなっている。ストレート部は、圧力室42とは反対側となるテーパー部の先端に連続して設けられており、円柱状の空間を区画する。本実施形態のノズルNzにおいて、テーパー部の直径は、大きな方で80μm、小さい方で25μmである。そして、テーパー角度は、25度である。ストレート部の直径は、テーパー部における小さい側の直径と等しく25μmである。また、ストレート部の長さは20μmであり、テーパー部とストレート部とをあわせたノズルNzの全長は80μmである。
【0023】
図6及び図7に示すように、ピエゾ素子ユニットPUは、複数のピエゾ素子PZTがその幅方向に並設された素子群と、各ピエゾ素子PZTが方持ち梁の状態で接合される固定基板BPとを有する。ここで、各ピエゾ素子PZTは、圧電体層と、駆動電極と、共通電極とを積層することにより形成されている。また、素子群は、圧電体層と駆動電極層と共通電極層とを有する板状部材に対し、例えばワイヤソー等によって複数のスリットを形成することで作成されている。
【0024】
なお、ピエゾ素子ユニットPUには、位置決め部が設けられている。この位置決め部は、ピエゾ素子ユニットPUをヘッドケースCAに組み込む際に、ピエゾ素子ユニットPUを高精度に位置決めする。
【0025】
このようなピエゾ素子ユニットPUは、図3に示すように、固定基板BPにおける素子群とは反対側の面がヘッドケースCAに接着される。このピエゾ素子ユニットPUには、各ピエゾ素子PZTを動作させるための各種信号を供給するフィルム状の配線基板FPが接続される。
【0026】
このヘッドHDでは、駆動信号COMの印加に伴うピエゾ素子PZTの変形により、振動板45を介して圧力室42内のインクに圧力変化を生じさせ、ノズルNzからインク滴を吐出させる。前述したように、ピエゾ素子ユニットPUは、固定基板BPを介してヘッドケースCAに取り付けられている。このため、ピエゾ素子PZTが収縮すると、振動板45(島部45a)は、圧力室42から遠ざかる方向に引っ張られる。これにより、圧力室42が膨張される。反対に、ピエゾ素子PZTが伸長すると、振動板45が圧力室42側に押される。これにより、圧力室42が収縮する。圧力室42内のインクには、圧力室42の膨張や収縮に起因して圧力変化が生じる。すなわち、圧力室42の収縮に伴って圧力室42内のインクは加圧され、圧力室42の膨張に伴って圧力室42内のインクは減圧される。
【0027】
ノズルNzからのインクの吐出は、この圧力変化を利用して行われる。このとき、圧力室42、インク供給路44、及び、ノズルNzは、ヘルムホルツの共鳴器のように機能する。このため、圧力室42内のインクに加わる圧力の大きさは、ヘルムホルツ周期Tcと呼ばれる固有の周期で変化する。すなわち、インクには圧力振動が生じる。ヘルムホルツ周期Tcは、圧力室42におけるインク(液体)の固有振動周期とも呼ばれる。
【0028】
ここで、ヘルムホルツ周期Tcは、一般的には次式(4)で表すことができる。
Tc=1/f
f=1/2π√〔(Mn+Ms)/(Mn×Ms×(Cc+Ci))〕…(4)
式(4)において、MnはノズルNzのイナータンス、Msはインク供給路44のイナータンス、Ccは圧力室42のコンプライアンス(単位圧力あたりの容積変化、柔らかさの度合いを示す。)、Ciはインクのコンプライアンス(Ci=体積V/〔密度ρ×音速c2〕)である。
【0029】
上記式(4)において、イナータンスMとは、インク流路におけるインクの移動し易さを示し、単位断面積あたりのインクの質量である。そして、インクの密度をρ、流路のインク流れ方向と直交する面の断面積をS、流路の長さをLとしたとき、イナータンスMは次式(5)で近似して表すことができる。
イナータンスM=(密度ρ×長さL)/断面積S …(5)
この式(5)から、イナータンスが大きいほど、インクは圧力室42内のインク圧力に応じて移動し難くなり、イナータンスが小さいほど、インクは圧力室42内の圧力に応じて移動しやすくなることが判る。
【0030】
このヘルムホルツ周期Tcの圧力振動により、メニスカスがノズルNz内で周期的に移動する。そして、このヘルムホルツ周期Tcの圧力変化を利用することで、インクをノズルNzから効率よく吐出させることができる。なお、ピエゾ素子PZTの伸縮状態は駆動電極の電位に応じて定まるので、圧力室42の容積も駆動電極の電位に応じて定まる。従って、圧力室42内のインクに対する加圧度合いや減圧度合いは、駆動電極における単位時間あたりの電位変化量で定めることができる。
【0031】
<駆動信号生成回路30について>
駆動信号生成回路30は、吐出パルス生成部として機能し、駆動信号COMの電位をデジタル値で示すDACデータに基づき、駆動信号COMを生成する。図8に示すように、駆動信号生成回路30は、DAC回路31と、電圧増幅回路32と、電流増幅回路33とを有する。DAC回路31は、デジタルのDACデータをアナログ信号に変換する。電圧増幅回路32は、DAC回路31で変換されたアナログ信号の電圧を、ピエゾ素子PZTを駆動できるレベルまで増幅する。このプリンタ1では、DAC回路31から出力されるアナログ信号は最大3.3Vであるのに対し、電圧増幅回路32から出力される増幅後のアナログ信号(便宜上、波形信号ともいう。)は最大42Vである。電流増幅回路33は、電圧増幅回路32からの波形信号について電流の増幅をし、駆動信号COMとして出力する。この電流増幅回路33は、例えば、プッシュプル接続されたトランジスタ対によって構成される。
【0032】
<ヘッド制御部HCについて>
ヘッド制御部HCは、駆動信号生成回路30で生成された駆動信号COMの必要部分をヘッド制御信号に基づいて選択し、ピエゾ素子PZTへ印加する。このため、図8に示すように、ヘッド制御部HCは、駆動信号COMの供給線の途中に、ピエゾ素子PZT毎に設けられた複数のスイッチSWを有する。そして、ヘッド制御部HCは、ヘッド制御信号からスイッチ制御信号を生成する。このスイッチ制御信号によって各スイッチSWを制御することで、駆動信号COMの必要部分(例えば吐出パルスPS)がピエゾ素子PZTへ印加される。
【0033】
<駆動信号COMについて>
次に、駆動信号生成回路30によって生成される駆動信号COMについて説明する。図9は、駆動信号COMを説明する図であり、縦軸は駆動信号COMの電圧を示し、横軸は時間を示す。なお、この実施形態では、駆動信号生成回路30がグランド電位を基準とする電圧の駆動信号COMを生成し、ピエゾ素子PZTの共通電極がグランド電位に定められている。このため、駆動信号COMの電圧は、駆動信号COMで定められる駆動電極の電位を示す。
【0034】
この図に示すように、駆動信号COMには吐出パルスPS(PS1,PS2)が含まれている。この駆動信号COMは駆動電極に印加される。これにより、固定電位とされた共通電極との間に、吐出パルスPSの波形(電位の変化パターンに相当する。)に応じた電位差が生じる。その結果、ピエゾ素子PZTは波形に応じて伸縮し、圧力室42の容積を変化させる。
【0035】
各吐出パルスPSは台形波によって構成されている。このような台形波の吐出パルスPSをピエゾ素子PZTに印加すると、最低電位に対応する最小容積から、最高電位に対応する最大容積まで膨張する。その後、再び最小容積まで収縮する。そして、最大容積から最小容積に収縮する際に、圧力室42内のインクが加圧され、ノズルNzから滴状のインク(インク滴)が吐出される。
【0036】
図9に例示した各吐出パルスPS1,PS2において、最低電圧から最高電圧まで変化する部分が圧力室42内のインクを減圧させる減圧部分P1に相当し、最高電圧から最低電圧まで変化する部分が、インクを吐出させるためにインクを加圧させる加圧部分P3に相当する。また、最高電圧で一定の部分が、減圧部分P1の印加終了タイミングにおけるピエゾ素子PZTの状態を維持する維持部分P2に相当する。従って、この吐出パルスPSでは、インク滴の吐出後においてメニスカスの過度な往復移動を抑制するための部分(制振部分ともいう)を有していない。そして、制振部分を有さないことから、吐出パルスPSの生成に必要な期間をその分短くでき、インク滴を高い周波数で吐出させることができる。
【0037】
これらの吐出パルスPS1,PS2において、減圧部分P1の生成期間は2.5μs、維持部分P2の生成期間は3.0μsであり、加圧部分P3の生成期間は2.0μsである。なお、各吐出パルスPSが有する各部分P1〜P3の生成期間、最低電圧、最高電圧は、吐出対象となるインク(液体)の種類、必要とされるインク滴の飛行速度、インク滴における尾の部分の長さ等によって適宜調整される。駆動信号生成回路30は、先の吐出パルスPS1に続いて最低電圧で一定の部分P4を生成する。この部分P4は、後の吐出パルスPS2の生成開始までの期間T4に亘って生成され、接続部分に相当する。従って、部分P4の生成期間は、先の吐出パルスPS1の印加終了から後の吐出パルスPS2の印加開始までの期間に相当する。また、駆動信号生成回路30は、後の吐出パルスPS2に続いて最低電圧で一定の部分P5を生成する。この部分は、次の繰り返し周期Tが開始されるまで生成される。そして、駆動信号生成回路30は、これらの吐出パルスPS1,PS2を含んだ駆動信号COMを、繰り返し周期T毎に繰り返し生成する。
【0038】
ところで、粘度が10ミリパスカル秒以上の高粘度インクを上記の駆動信号COMで吐出させる場合、先後の吐出パルスPS1,PS2の間隔を制約なしに定めてしまうと、インク滴の吐出が不安定になってしまうという問題があった。そこで、このプリンタ1では、先の吐出パルスPS1(先行吐出パルスに相当する)の生成終了から後の吐出パルスPS2(後行吐出パルスに相当する)の生成開始までの波形間隔(期間Aに相当する。)が次の式(1)や式(2)を満たすように、これらの吐出パルスPS1,PS2を生成するようにした。


【0039】
図10は、先の吐出パルスPS1の生成終了から後の吐出パルスPS2の生成開始までの波形間隔(期間T4)と、後の吐出パルスPS2で吐出されたインク滴の飛行速度の関係を説明するグラフである。図10において、縦軸は後の吐出パルスPS2で吐出されたインク滴の飛行速度であり、横軸は波形間隔である。また、図11は、図10のグラフの基となった測定データである。
【0040】
これらの図から、後の吐出パルスPS2で吐出されたインク滴の飛行速度は、周期的に変化することが判る。例えば、波形間隔が1.7μsのときの飛行速度は、10.661m/sと最も速い。従って、測定に用いたヘッドHDでは、Xvmax=1.7となる。このヘッドHDのヘルムホルツ周期Tcは9μsである。そして、1.7μsから波形間隔が広がるにつれて速度が次第に遅くなり、波形間隔が5.2μsのときの飛行速度は4.374m/sと最も遅くなる。これに対し、5.2μsから波形間隔が広がるにつれて速度が次第に速くなり、波形間隔が9.2μsのときの飛行速度は9.496m/sになる。
【0041】
このようなインク滴の飛行速度の変化は、先の吐出パルスPS1の印加によって圧力室42内のインクに生じた圧力振動(インク滴吐出後の残留振動)によるものと考えられる。このため、インク滴の飛行速度はヘルムホルツ周期Tcで変化をする。
【0042】
そして、上記の式(1)は、図10に符号X1で示す範囲を示し、式(2)は、図10に符号X2及びX3で示す範囲を示している。ここで、9/20Tc(n=0)は1/2Tcよりも1/20Tcだけ早いタイミングを意味し、11/20Tc(n=1)は1/2Tcよりも1/20Tcだけ遅いタイミングを意味し、19/20Tc(n=1)はTcよりも1/20Tcだけ早いタイミングを意味する。
【0043】
図10から判るように、このプリンタ1では、インク滴の速度変化がヘルムホルツ周期Tcで生じることに着目し、速度のピークタイミングやボトムタイミングから±1/20Tc以上ずれるように、波形間隔を設定している。これにより、インク滴を安定的に吐出させることができる。
【0044】
<評価結果について>
図12は、インク滴の吐出安定性の評価結果を示す図である。この評価では3種類のヘッドHDを用いている。すなわち、ヘッドAは、ヘルムホルツ周期Tcが7.8μsであり、2発目のインク滴が最も速くなる波形間隔Xvmaxが1.4μsのヘッドHDである。ヘッドBは、ヘルムホルツ周期Tcが8.3μsであり、波形間隔Xvmaxが1.5μsのヘッドHDである。ヘッドCは、ヘルムホルツ周期Tcが9μsであり、波形間隔Xvmaxが1.7μsのヘッドHDである。
【0045】
評価結果に関し、記号◎は、インク滴が理想的な状態で吐出されていることを示している。記号○は、インク滴がまっすぐ吐出されていることを示している。記号△は、インク滴の尾の部分について、人が気づく程度に曲がっていることを示している。記号×は、インク滴が吐出されないことを意味している。そして、記号◎若しくは記号○の評価結果であれば、インク滴が安定的に吐出されていると判断する。一方、記号△若しくは記号×の評価結果であれば、インク滴は安定的に吐出されていないと判断する。
【0046】
ヘッドAに関し、波形間隔が0.1μs〜0.9μsにおける評価は○である。ヘッドAのヘルムホルツ周期Tcは7.8μsであり、Xvmaxは1.4μsである。この場合、Xvmax−1/20Tcは約1.0μsになる。なお、図12の評価結果において、波形間隔1.0μsの評価は△であるが、これは誤差に起因するものと考えられる。従って、ヘッドAは、上記式(1)で規定される範囲を満たしているといえる。
【0047】
また、波形間隔が1.9μs〜4.6μsにおける評価は○若しくは◎である。すなわち、波形間隔が1.9μs〜2.5μs、及び、3.7μs〜4.6μsの評価は○であり、波形間隔が2.6μs〜3.6μsの評価は◎である。ここで、ヘッドAにおいて、Xvmax+1/20Tcは約1.8μsであり、Xvmax+9/20Tcは約4.9μsである。なお、図12の評価結果において、波形間隔4.6μs〜4.9μsの評価は△であるが、これは誤差に起因するものと考えられる。従って、ヘッドAは、上記式(2)で規定される範囲であって、n=0の場合の範囲を満たしているといえる。
【0048】
また、波形間隔が5.9μs〜8.6μsにおける評価は○である。ここで、ヘッドAにおいて、Xvmax+11/20Tcは約5.7μsであり、Xvmax+19/20Tcは約8.8μsである。なお、図12の評価結果において、波形間隔5.7μs〜5.8μs、及び、8.7μs〜8.8μsの評価は△であるが、これは誤差に起因するものと考えられる。従って、ヘッドAは、上記式(2)で規定される範囲であって、n=1の場合の範囲を満たしているといえる。
【0049】
ヘッドBに関し、波形間隔が0.1μs〜1.1μsにおける評価は○である。ヘッドBのヘルムホルツ周期Tcは8.3μsであり、Xvmaxは1.5μsである。この場合、Xvmax−1/20Tcは約1.1μsになる。従って、ヘッドBは、上記式(1)で規定される範囲を満たしているといえる。
【0050】
また、波形間隔が2.1μs〜4.9μsにおける評価は○若しくは◎である。すなわち、波形間隔が2.1μs〜2.7μs、及び、3.9μs〜4.9μsの評価は○であり、波形間隔が2.8μs〜3.8μsの評価は◎である。ここで、ヘッドBにおいて、Xvmax+1/20Tcは約1.9μsであり、Xvmax+9/20Tcは約5.1μsである。なお、図12の評価結果において、波形間隔1.9μs〜2.0μs、及び、5.0μs〜5.1μsの評価は△であるが、これは誤差に起因するものと考えられる。従って、ヘッドBは、上記式(2)で規定される範囲であって、n=0の場合の範囲を満たしているといえる。
【0051】
また、波形間隔が6.4μs〜9.1μsにおける評価は○である。ここで、ヘッドBにおいて、Xvmax+11/20Tcは約6.1μsであり、Xvmax+19/20Tcは約9.4μsである。なお、図12の評価結果において、波形間隔6.1μs〜6.3μs、及び、9.2μs〜9.3μsの評価は△であり、9.4μsの評価は×であるが、これは誤差に起因するものと考えられる。従って、ヘッドBは、上記式(2)で規定される範囲であって、n=1の場合の範囲を満たしているといえる。
【0052】
ヘッドCに関し、波形間隔が0.1μs〜1.3μsにおける評価は○である。ヘッドCのヘルムホルツ周期Tcは9μsであり、Xvmaxは1.7μsである。この場合、Xvmax−1/20Tcは約1.3μsになる。従って、ヘッドBは、上記式(1)で規定される範囲を満たしているといえる。
【0053】
また、波形間隔が2.3μs〜5.3μsにおける評価は○若しくは◎である。すなわち、波形間隔が2.3μs〜2.9μs、及び、4.1μs〜5.3μsの評価は○であり、波形間隔が3.0μs〜4.0μsの評価は◎である。ここで、ヘッドCにおいて、Xvmax+1/20Tcは約2.2μsであり、Xvmax+9/20Tcは約5.8μsである。なお、図12の評価結果において、波形間隔2.2μs、及び、5.4μs〜5.7μsの評価は△であり、5.8μsの評価は×であるが、これは誤差に起因するものと考えられる。従って、ヘッドCは、上記式(2)で規定される範囲であって、n=0の場合の範囲を満たしているといえる。
【0054】
また、波形間隔が6.8μs〜10.0μsにおける評価は○である。ここで、ヘッドCにおいて、Xvmax+11/20Tcは約6.7μsであり、Xvmax+19/20Tcは約10.3μsである。なお、図12の評価結果において、波形間隔6.7μs、及び、10.1μs〜10.2μsの評価は△であり、10.3μsの評価は×であるが、これは誤差に起因するものと考えられる。従って、ヘッドCは、上記式(2)で規定される範囲であって、n=1の場合の範囲を満たしているといえる。
【0055】
<考察>
ここで、インク滴の吐出が安定化した理由について考察する。図13は、先の吐出パルスPS1をピエゾ素子PZTへ印加した際のメニスカスの動きを説明する図である。図13において縦軸は、メニスカスの動きをインク量で示している。すなわち、0ngは、定常状態のメニスカスを示している。そして、インク量がプラス方向に増える程、メニスカスが吐出方向へ押し出されていることを示している。反対に、インク量がマイナス方向に増える程、メニスカスが圧力室42の方向へ引き込まれていることを示している。また、横軸は、先の吐出パルスPS1の印加開始からの経過時間である。
【0056】
従って、この図13より、メニスカスが次のように動いていることが判る。まず、減圧部分P1のピエゾ素子PZTへの印加により、定常状態にあるメニスカスが圧力室42側へ大きく引き込まれる。メニスカスの圧力室42側への移動は、維持部分P2がピエゾ素子PZTへ印加されている期間も係属する。その後、メニスカスは、符号Y1で示す期間で移動方向を反転している。このタイミングにあわせて加圧部分P3がピエゾ素子PZTに印加される。これに伴い、メニスカスは、吐出方向へ急速に移動する。加圧部分P3の印加後、符号Y2で示す期間でメニスカスの先端部分の一部がちぎれ、インク滴として吐出される。また、メニスカスの残りの部分は、吐出の反動で圧力室42側に急速に戻る。
【0057】
ここで、Xvmax±1/20Tcは、図13に符号Y3で示す期間、言い換えれば、インク滴の吐出直後における一定期間といえる。この期間Y3を除いた理由は、この期間Y3で後の吐出パルスPS2の生成を開始し、ピエゾ素子PZTへ印加すると、メニスカスを過度に移動させることになるからである。また、Xvmax+9/20Tc,Xvmax+11/20Tcは、図13に符号Y4で示す期間、言い換えれば、圧力室42側に戻ったメニスカスが吐出方向へ反転する前後の一定期間といえる。この期間Y4を除いた理由は、この期間Y4で後の吐出パルスPS2の生成を開始し、ピエゾ素子PZTへ印加すると、メニスカスを十分に引き込むことができないからである。この点は、Xvmax+19/20Tc,Xvmax+21/20Tc、すなわち期間Y5についても同様である。
【0058】
また、波形間隔が0μsからXvmax−1/20Tcの期間で、後の吐出パルスPS2の生成を開始し、ピエゾ素子PZTへ印加するとインク滴の吐出が安定した理由について考察すると、メニスカスの根元部分が太いままで先端部分を自然な途切れに任せて吐出させた場合、先端部分が切れるまでの過程で、インク滴の後行部から先行部に対して進行方向外の力が働き進行方向がずれてしまう可能性がある。この点、先端部分が切れる前に後の吐出パルスPS2の生成を開始し、ピエゾ素子PZTへ印加すると、圧力室42側からの引き込み力がメニスカスの根元部分に作用し、この部分を圧力室42側へ移動させる。その結果、インク滴の吐出を安定化できると考えられる。
【0059】
===その他の実施形態について===
前述した実施形態は、主として、液体吐出装置としてのプリンタ1を有する印刷システムについて記載されているが、その中には、液体吐出方法や液体吐出システムの開示が含まれている。また、液体吐出ヘッドや液体吐出ヘッドの制御方法の開示も含まれている。また、この実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0060】
<駆動信号COMについて>
前述の実施形態では、ドットサイズについては何等考慮していなかったが、先行の吐出パルスPSと後行の吐出パルスPSとで大ドットを形成する場合(或る目標吐出量のインク滴を吐出させるべく、先行吐出パルス及び後行吐出パルスによってピエゾ素子PZTを動作させる場合)には、波形間隔が、次式(3)を満たすよう、

先行吐出パルスと後行吐出パルスとを生成することが好ましい。
【0061】
<吐出動作をする素子について>
このプリンタ1では、インクを吐出させるための動作をする素子として、ピエゾ素子PZTを用いている。ここで、吐出動作をする素子は、前述したピエゾ素子PZTに限定されるものではない。印加された電位に応じて動作をし、圧力室42内の液体に圧力変化を与える素子であればよい。例えば、磁歪素子であってもよい。そして、この素子として、前述の実施形態のようにピエゾ素子PZTを用いた場合には、圧力室42の容積を吐出パルスPSの電圧に基づいて精度良く制御できる。すなわち、圧力室42内のインクに与える圧力をきめ細かに制御できる。
【0062】
<インクの粘度について>
インクの粘度の上限値は、インクを滴状にしてノズルNzから吐出できる粘度に定められる。例えば、30ミリパスカル秒に定められる。
【0063】
<他の応用例について>
また、前述の実施形態では、液体吐出装置としてプリンタ1が説明されていたが、これに限られるものではない。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、液体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の液体吐出装置に、本実施形態と同様の技術を適用しても良い。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】印刷システムの構成を説明するブロック図である。
【図2】ヘッドユニットの断面図である。
【図3】ヘッドユニットの他の断面図である。
【図4】ヘッドの構造を模式的に説明する図である。
【図5】ノズルの形状を説明する図である。
【図6】ピエゾ素子ユニットの斜視図である。
【図7】図7Aは、ピエゾ素子ユニットの平面図である。図7Bは、ピエゾ素子ユニットのA−A断面図である。
【図8】駆動信号生成回路等の構成を説明するブロック図である。
【図9】駆動信号の一例を説明するための図である。
【図10】先の吐出パルスの生成終了から後の吐出パルスの生成開始までの波形間隔(期間A)と、後の吐出パルスで吐出されたインク滴の飛行速度の関係を説明するグラフである。
【図11】図10のグラフの基となった測定データである。
【図12】インク滴の吐出安定性の評価結果を示す図である。
【図13】先の吐出パルスをピエゾ素子へ印加した際のメニスカスの動きを説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
1 プリンタ,10 用紙搬送機構,20 キャリッジ移動機構,
30 駆動信号生成回路,31 DAC回路,32 電圧増幅回路,
33 電流増幅回路,40 ヘッドユニット,41 流路形成基板,
42 圧力室,43 リザーバ,44 インク供給路,
45 振動板,45a 島部,46 ノズルプレート,
50 検出器群,60 プリンタ側コントローラ,
61 インタフェース部,62 CPU,63 メモリ,
CP コンピュータ,COM 駆動信号,PS 吐出パルス,
PS1 先の吐出パルス,PS2 後の吐出パルス,
P1 減圧部分,P2 維持部分,P3 加圧部分,HD ヘッド,
CA ヘッドケース,PU ピエゾ素子ユニット,
PZT ピエゾ素子,BP 固定基板,Nz ノズル,
FP 配線基板,HC ヘッド制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルに連通された圧力室と、
前記圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子と、
前記ノズルから前記液体を吐出させるべく前記素子を動作させる吐出パルスを生成する吐出パルス生成部と、
を備え、
前記吐出パルス生成部は、
先行吐出パルスの生成終了から後行吐出パルスの生成開始までの期間Aが、次式(1)を満たすように、
【数1】

前記先行吐出パルスと前記後行吐出パルスとを生成する、液体吐出装置。
【請求項2】
ノズルに連通された圧力室と、
前記圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子と、
前記ノズルから前記液体を吐出させるべく前記素子を動作させる吐出パルスを生成する吐出パルス生成部と、
を備え、
前記吐出パルス生成部は、
先行吐出パルスの生成終了から後行吐出パルスの生成開始までの期間Aが、次式(2)を満たすように、
【数2】

前記先行吐出パルスと前記後行吐出パルスとを生成する、液体吐出装置。
【請求項3】
ノズルに連通された圧力室と、
前記圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子と、
前記ノズルから前記液体を吐出させるべく前記素子を動作させる吐出パルスを生成する吐出パルス生成部と、
を備え、
前記吐出パルス生成部は、
或る目標吐出量の液体滴を吐出させるべく、先行吐出パルス及び後行吐出パルスによって前記素子を動作させる場合に、前記先行吐出パルスの生成終了から前記後行吐出パルスの生成開始までの期間Aが、次式(3)を満たすよう、
【数3】

前記先行吐出パルスと前記後行吐出パルスとを生成する、液体吐出装置。
【請求項4】
前記先行吐出パルスは、
台形波によって構成され、
前記後行吐出パルスは、
前記先行吐出パルスと電位変化パターンが同じ台形波によって構成されている、請求項1から3の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記素子は、
印加された吐出パルスの電位に応じて変形することで前記圧力室の容積を変化させ、前記液体に圧力変化を与えるピエゾ素子である、請求項1から4の何れか1項に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子に対し、先行吐出パルスと後行吐出パルスとを連続的に印加することで、前記圧力室に連通されたノズルから液体滴を吐出させる液体吐出方法であって、
前記液体の粘度は、
10ミリパスカル秒以上であり、
前記先行吐出パルスの生成終了から前記後行吐出パルスの生成開始までの期間Aは、
次式(1)を満たすように、
【数4】

定められている、液体吐出方法。
【請求項7】
圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子に対し、先行吐出パルスと後行吐出パルスとを連続的に印加することで、前記圧力室に連通されたノズルから液体滴を吐出させる液体吐出方法であって、
前記液体の粘度は、
10ミリパスカル秒以上であり、
前記先行吐出パルスの生成終了から前記後行吐出パルスの生成開始までの期間Aは、
次式(2)を満たすように、
【数5】

定められている、液体吐出方法。
【請求項8】
或る目標吐出量の液体滴を吐出させるべく、圧力室内の液体に圧力変化を与えるための動作をする素子に対して先行吐出パルスと後行吐出パルスとを連続的に印加し、前記圧力室に連通されたノズルから前記液体滴を吐出させる液体吐出方法であって、
前記液体の粘度は、
10ミリパスカル秒以上であり、
前記先行吐出パルスの生成終了から前記後行吐出パルスの生成開始までの期間Aは、
次式(3)を満たすように、
【数6】

定められている、液体吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−131909(P2010−131909A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−311325(P2008−311325)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】