液体材料の気化供給システム
【課題】 液体材料の流量調整用バルブの開閉頻度を低減し、気化器で気化させた原料ガスを高精度に流量制御可能で、該バルブの寿命を延命することができる、液体材料の気化供給システムを提供する。
【解決手段】 加圧供給される液体材料を受け入れて気化させるための気化器4と、気化器4からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置5と、気化器4から流量制御装置5に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器6と、気化器4への液体材料の供給を制御する制御弁7と、気化器4内のガス圧が低下して圧力検出器6の検出値が予め設定された閾値以下となったときに制御弁7を開き、制御弁7の開操作によって気化器4内のガス圧が上昇し圧力検出器6の検出値が前記閾値を超えた後の所定の遅延時間経過後に制御弁7を閉じるように制御する制御装置と、を備える。
【解決手段】 加圧供給される液体材料を受け入れて気化させるための気化器4と、気化器4からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置5と、気化器4から流量制御装置5に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器6と、気化器4への液体材料の供給を制御する制御弁7と、気化器4内のガス圧が低下して圧力検出器6の検出値が予め設定された閾値以下となったときに制御弁7を開き、制御弁7の開操作によって気化器4内のガス圧が上昇し圧力検出器6の検出値が前記閾値を超えた後の所定の遅延時間経過後に制御弁7を閉じるように制御する制御装置と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置、化学産業設備、或いは薬品産業設備等で用いられる、液体材料を気化して供給するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体設備等において、液体材料を気化器に供給し、気化器で気化させた原料ガスをプロセスチャンバーに供給するシステムが使用されている(例えば、特許文献1〜3)。そして、斯かるシステムにおいては、液体材料の気化器への供給は、制御バルブによって制御されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−278987号公報
【特許文献2】特開2003−142473号公報
【特許文献3】特開2007−36265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体材料供給用制御弁の単純な開閉制御だけでは、液体材料の気化器への供給量が不安定なために、液体材料の気化器への供給を制御する液体材料供給用制御弁を頻繁に開閉しなければならなかった。その結果、気化器内では、供給された液体材料の気化による体積膨張により激しい圧力変動が頻繁に生じており、気化器で気化させた原料ガスを高精度に流量制御し、プロセスチャンバへ供給することが困難という問題があった。また、頻繁な開閉動作は、該制御弁の寿命を縮めるという問題もあった。
【0005】
本発明では、気化器内での激しい圧力変動をできるだけ抑えるために、液体材料供給用制御弁の開閉頻度を低減し、気化器で気化させた原料ガスを高精度に流量制御可能で、該制御弁の寿命を延命することができる、液体材料の気化供給システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る液体材料の気化供給システムは、第1の手段として、加圧供給される液体材料を受け入れて気化させるための気化器と、前記気化器からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置と、前記気化器から前記流量制御装置に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器と、前記気化器への前記液体材料の供給を制御する制御弁と、前記気化器内のガス圧が低下して前記圧力検出器の検出値が予め設定された閾値以下となったときに前記制御弁を開き、該制御弁の開操作によって前記気化器内のガス圧が上昇し前記圧力検出器の検出値が前記閾値を超えた後の所定の遅延時間経過後に前記制御弁を閉じるように制御する制御装置と、を有する。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る液体材料の気化供給システムは、第2の手段として、加圧供給される液体材料を受け入れて気化させるための気化器と、該気化器からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置と、前記気化器から前記流量制御装置に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器と、前記気化器への前記液体材料の供給を制御する制御弁と、前記気化器内のガス圧が低下して前記圧力検出器の検出値が予め設定された第1の閾値以下となったときに前記制御弁を開き、該制御弁の開操作によって前記気化器内のガス圧が上昇し前記圧力検出器の検出値が前記第1の閾値より高い予め設定された第2の閾値を超えた時に前記制御弁を閉じるように制御する制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、気化器への液体材料の供給を制御する制御弁を閉じるタイミングを遅らせることにより、気化器内の圧力変動を緩和し、該制御弁の開閉頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係る液体材料の気化供給システムの一実施形態を示すシステム図である。
【図2】本発明に用いられる気化器と流量制御装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2の、気化器の内部構造の一実施形態を概略的に示す縦断面図である。
【図4】図2の、流量制御装置の一実施形態(圧力制御式流量制御装置)の制御フローを示すブロック図である。
【図5】図2の流量制御装置の縦断面図である。
【図6】図1における気化器への液体材料の供給を制御する制御弁の開閉信号と圧力検出器の検出値との関係を示すタイムチャートである。
【図7】気化器内の圧力と流量制御装置の一実施形態(圧力制御式流量制御装置)の下流側流量との関係を示すグラフである。
【図8】気化器によって気化されたガスの圧力と液体材料の供給を制御する制御弁の開閉信号との関係を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の実験例1を示すシステム図である。
【図10】本発明の実験例2を示すシステム図である。
【図11】実験例1の結果を示すタイムチャートであり、気化器内で気化されたガスの圧力と、液体材料の供給を制御する制御弁の開閉頻度を示すタイムチャートである。
【図12】実験例2の結果を示すタイムチャートであり、気化器内で気化されたガスの圧力と、液体材料の供給を制御する制御弁の開閉頻度を示すタイムチャートである。
【図13】比較実験例の結果を示すタイムチャートであり、気化器内で気化されたガスの圧力と、液体材料の供給を制御する制御弁の開閉頻度を示すタイムチャートである。
【図14】本発明に係る気化供給システムの他の実施形態を説明するための制御シーケンスを概念的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る液体材料の気化供給システムの実施形態について、以下に図1〜14を参照して説明する。なお、図示例の気化供給システムは、半導体製造分野において、CVD装置に液体材料を気化して供給するシステムの例を示している。全図を通し、同様の構成部分には同符号を付した。
【0011】
気化供給システム1は、ケーシング2内に、液体材料供給路3を通じて加圧供給される液体材料Lを受け入れて気化させるための気化器4と、気化器4からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置5と、気化器4から流量制御装置5に供給されるガスの圧力(気化器4内のガスの圧力に等しい。)を検出する圧力検出器6と、液体材料供給路3に介在されて気化器4への液体材料の供給を制御する制御弁7と、制御弁7を制御する制御装置8と、を備えている。
【0012】
図示例において、気化器4の液体材料流入口付近において液体材料供給路3に絞り部9が介在されおり、制御弁7は絞り部9の上流側近傍に配置されている。
【0013】
ケーシング2には、さらに、温度調節器10が収容されており、温度調節器10は、気化器4、流量制御装置5、及び、流量制御装置5に接続されたプロセスライン11の所望部分(図1の斜線部分)を加熱する後述の加熱装置を制御する。プロセスライン11は、プロセスチャンバ12に接続され、プロセスチャンバ12では、気化された液体材料が各種プロセスに使用される。図示例の半導体製造分野では、例えば、プロセスライン11は、CVD装置等のプロセスチャンバ12に接続されるとともに、プロセスチャンバ12に接続される真空ポンプ13によってプロセスチャンバ12を介して真空引きされる。
【0014】
制御弁7は、図示例では空気作動式開閉弁が採用されている。制御装置8は、ケーシング2内に収容されている電磁弁14を介して、制御弁7を制御する。すなわち、電磁弁14は、ケーシング2の外部から供給される圧縮空気Aの供給を制御することにより、制御弁7の開閉を制御する。液体材料供給路3には、さらに、ケーシング内の入口で液体材料供給路3を開閉する制御弁15と、パージガスPGの供給を制御する制御弁16と、排気ライン17を開閉する制御弁18とが介在されている。また、プロセスライン11には、ケーシング2内においてプロセスライン11を開閉するための制御弁19が介在されている。図示例においては、これらの制御弁も空気圧作動式開閉弁が採用されている。図示例の電磁弁14は、制御装置8からの指令により制御弁7、15、16、18、19を空気圧制御するために、5チャンネルの制御ポートを備えている。
【0015】
なお、制御弁7、15、16、18、19を電気作動式開閉弁とし、これら電気作動式制御弁の制御回路を電磁弁14に代えて配置することもできる。この場合、圧縮空気Aの供給ラインは不要となり、替わりに制御回路と電気作動式開閉弁とを繋ぐ配線等が配設される。
【0016】
圧力検出器6で検出された検出値は、制御装置8に送られる。圧力検出器6は、気化器4内で気化されて流量制御装置5に供給されるガスの圧力を検出することができる位置に配置されておればよく、例えば、気化器4のチャンバー4c(図3参照)内に設けたり、流量制御装置5の装置本体44(図5参照)内に埋め込んだり、あるいは、気化器4と流量制御装置5とを連通するガス流路(図示せず)に設けることもできる。また、図1に示すように他のポイントにおいて圧力検出器20〜22を設けて各ポイントにおける流体圧力が制御装置8に送られ、モニターされている。
【0017】
なお、ケーシング2には、液体材料用接続ポート2a、パージガス用接続ポート2b、圧縮空気用接続ポート2c、プロセスライン接続ポート2d、排気ライン接続ポート2eのほか、各種制御入力や各種制御情報等表示のためのコントロールパネル2fが取り付けられている。
【0018】
液体材料供給路3は、液体材料用接続ポート2aを介してケーシング2の内外に延び、液体材料Lが貯蔵された貯蔵容器23に接続される。液体材料供給路3の一端は、液体材料L中に液没している。貯蔵容器23には、液体材料Lのための圧送用加圧ガスFGを貯蔵容器23内に供給する圧送ガス供給管24が接続される。
【0019】
図2は、気化器4と流量制御装置5の外観の一例を示す斜視図である。図2の例では、気化器4の上に流量制御装置5が取り付けられている。気化器4の液体材料流入口である接続用コネクタに絞り部9が接続されている。なお、図示例では流量制御装置5として二次側の流量を精度よく制御可能な圧力制御式流量制御装置としているが、流量制御装置5は、圧力制御式流量制御装置以外にも、質量式流量制御装置等の制御系を使用しても良いことは勿論である。
【0020】
気化器4及び流量制御装置5を加熱する加熱装置25が固定されている。図示例の加熱装置25は、加熱プレート25aと、加熱プレート25aに埋設されたシーズヒータ25bと、によって構成されている。なお、加熱装置25は気化器4及び流量制御装置5を加熱できる構造であればどのような構造でも良く、例えば加熱プレート25aの替わりに、他の加熱装置(シースヒータ等)に外部より保温材や断熱材などを配置する構造としても良い。
【0021】
気化器4は、図3に示すように複数のチャンバー4a、4b、4cを内部に備えるこことが好ましい。各チャンバー4a〜4cの間を仕切る仕切壁30、31には、チャンバー内の圧力の脈動を低減するための絞り部32、33を設けることができる。気化器4は、液体材料を気化させるために、底面及び上面にも加熱装置4d,4eが取り付けられている。加熱装置25,4d,4eは、上述したように、温度調節器10によって加熱温度が調節される。なお、絞り部9、32、33としては、オリフィスを使用しているが、状況等に応じて、ノズル、ニードルバルブ等を使用しても良い。
【0022】
流量制御装置5として使用している圧力制御式流量制御装置は、図4に示すように、コントロール弁39、駆動部39a、オリフィス40、演算制御部41、圧力検出器42、温度検出器43等を備えている。圧力検出器42及び温度検出器43の検出値(P,T)は、増幅・AD変換部41aを通して流量演算部41bへ入力され、オリフィス40を流通するガス流量がQc=KPとして演算される。その後、設定入力部41cからの設定流量値Qsと演算流量値Qcとが比較部41dで比較され、両者の差信号Qyがコントロール弁39の駆動部39aへ入力されることにより、差信号Qyが零となる方向にコントロール弁39が開閉される。
【0023】
圧力制御式の流量制御装置5は、オリフィス40を流通するガス流速が音速以上の所謂臨界状態下の流体流れの場合には、オリフィス40を通過するガス流量QがQ=KP(Kは常数、Pはオリフィス上流側圧力)として演算できることを作動原理とするものであり、流量制御の応答性が極めて早く且つ安定しており、優れた制御応答性と高い制御精度を有するものである。尚、圧力制御式流量制御装置(圧力式流量制御装置とも言う。)そのものは、特開平8−338546号等その他によって公知である。
【0024】
図5に示すように、流量制御装置5を構成するコントロール弁39、オリフィス40、圧力検出器42、温度検出器43、及び演算制御装置41等は、全てステンレス鋼製の装置本体44に一体的に組み付けされている。そして、装置本体44にはカートリッジヒータ45が挿着されており、このヒータ45によって装置本体44やコントロール弁39のダイヤフラム弁体39bの部分が約50〜250℃に加熱される。図示例の駆動部39aは積層型圧電素子である。
【0025】
また、流量制御装置5の装置本体44内に形成した流体通路の部分には補助シーズヒータ46が配設されており、補助シーズヒータ46によって入口流体通路及び出口流体通路の近傍が加熱され、その結果、液体材料Lが純水(H2O)や弗化水素(HF)、テトラエトキシシラン(TEOS・Si(OC2H5)4)のような場合には、流通するガスの温度が最低でも20℃〜250℃の範囲に保持されることになり、コントロール弁39のダイヤフラム弁体39bへの液分付着が完全に防止されると共に、両流体通路内のガス温度の差が約6℃以下に保持されることになる。
【0026】
制御装置8は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)を用い、シーケンスプログラムに従って制御弁7、15,16,18、19を制御することができる。
【0027】
一実施例において、制御装置8は、図6のタイムチャートに概念的に示すように、流量制御装置5に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器6の検出値Pdが予め設定された閾値P1以下となったときに制御弁7を開き、圧力検出器6の検出値が閾値P1を超えた後の所定の遅延時間(T)経過後に制御弁7を閉じるように制御することができる。このように制御することにより、気化器4内の圧力変動を緩和し、制御弁7の開閉頻度を低減できることが、以下に説明するように実験的に確認されている。
【0028】
まず、前提として、気化器4の内の圧力と流量制御装置5の下流側の流体流量との関係について説明する。流量制御装置5は、一般に、流量制御装置5の一次側圧力が最小供給圧力以上であれば、流量制御装置5の二次側のガス流量を一定に維持することができる。この最小供給圧力は、機種によって定まる固有値である。図7のタイムチャートに示すように、気化器4内では気化による体積膨張により圧力Pdが激しく変動するが、気化器4から供給されるガスの圧力Pdが最小供給圧力Pmより低くなると、流量制御装置5から流出する流量Fが変動する。従って、気化器4内の圧力Pdは、流量制御装置5の最小供給圧力Pmを下回らないように制御する必要がある。
【0029】
気化器4は、加熱装置により一定温度(例えば120℃)にセットされている。液体材料を圧送する圧力は、気化器4内のガスの圧力より高く設定されている。そして、気化器4内の圧力は、気化器4への液体材料の供給量を制御する制御弁7の開閉によって制御される。図8に概念的に示すように、制御弁7が開くと気化器4内に供給された液体材料が気化することにより、制御弁7を開いてしばらくすると気化器4内の圧力Pdが上昇し、次いで、制御弁7を閉じると、しばらくは圧力Pdの上昇が続き、やがて圧力Pdの上昇が止まる。
【0030】
図9は、本発明の実験例に使用した系統図である。圧送用加圧ガスFGとして窒素ガスを使用し、レギュレータ50によって圧送用加圧ガスFGを200kPa(絶対圧)に調整して、液体材料Lが貯蔵されている貯蔵容器23に供給する。液体材料Lには水を用いた。圧送用加圧ガスFGを貯蔵容器23に供給することにより、液体材料Lが、バルブ51、制御弁7、絞り部9を通じて気化器4に供給される。気化器4で気化されたガスは、圧力制御式の流量制御装置5によって流量を調整して送り出される。流量制御装置5は、バルブ19を介して真空ポンプ13に接続されている。真空ポンプ13は、1×10−2Torr以下の減圧状態を作り出すことができる。圧力検出器6により、気化器4から流量制御装置5に供給されるガスの圧力を検出し、その検出値に基づいて制御装置8によって電磁弁14を制御し、制御弁7の制御空気圧を制御する。絞り部9を構成しているオリフィスの内径は268μmであった。
【0031】
気化器4及び流量制御装置5の周囲は、加熱装置により120℃に保たれている。流量制御装置5と真空ポンプ13との間の配管周囲温度は120℃以上に保持されている。使用した流量制御装置5の最小供給圧力は120kPa(絶対圧)である。
【0032】
本発明の実験例1として、この最小供給圧力を考慮して制御弁7を開く閾値を150kPa(絶対圧)に設定し、制御装置8の制御シーケンスを、圧力検出器6でモニターした圧力値が低下して150kPa(絶対圧)以下になると制御弁7を開き、圧力検出器6の検出値が上昇して閾値の150kPa(絶対値)を超えた後、5秒の遅延時間(T1)経過後に制御弁7を閉じるように設定した(図6参照)。
【0033】
また、本発明の実験例2として、制御装置8の制御シーケンスを、圧力検出器6でモニターした圧力値が低下して閾値の150kPa(絶対圧)以下になると制御弁7を開き、圧力検出器6の検出値が上昇して閾値の150kPa(絶対値)を超えた後、10秒の遅延時間(T2)経過後に制御弁7を閉じるように設定した。
【0034】
実験例1,2において、流量制御装置5の流量設定は、使用機種の最大制御流量である347sccm(100%制御流量)とした。気化器4の内容積は24ccであり、流量制御装置5の内容積は3ccであった。
【0035】
比較実験例として、図10に示すシステムを用いて実験した。なお、比較実験例において、オリフィス9Xを制御弁7の上流側に配置し、制御弁7は実験例1,2の場合より気化器4から離れた位置に配置した。比較実験例において制御弁7の制御シーケンスは、圧力検出器6でモニターした圧力値が低下して圧力検出器6の検出値が150kPa(絶対圧)以下になったときに制御弁7を開き、圧力検出器6からの圧力値が上昇して150kPaを超えたときに制御弁7を閉じるように設定した(図8参照)。比較実験例は、オリフィス9X及び制御弁7の配置及び制御シーケンスを除き、実験例1,2と同様である。圧力制御式の流量制御装置5の流量設定は、最大制御流量である100%制御流量(347sccm)から80%制御流量に切り替えた。
【0036】
上記実験例1,2と、比較実験例との測定結果を図11〜図13に示す。図11〜図13のタイムチャートには、圧力検出器6の圧力指示値Pd(kPa 絶対圧)、制御弁7の開閉制御信号Vd(電圧V)、流量制御装置5の圧力検出器42(図5参照)からの出力電圧Fv(電圧V)が示されている。出力電圧Fvは、圧力検出器42で検出すべき圧力(P)に比例するため、上述のQ=kPの関係から流量制御装置5の制御流量に関係する。実験例1,2及び比較実験例において100%制御流量に相当する電圧Fvは5Vであり、比較実験例において80%制御流量に相当する出力電圧Fvは4Vである。
【0037】
図13の比較実験例では、制御弁7の開閉頻度が約10秒に一回の割合であり、気化器4内で気化されたガスの圧力変動幅が120〜220kPa(絶対値)であった。一方、図11に示す本発明の実験例1では制御弁7の開閉頻度が14分に一回の割合となって開閉頻度が大幅に減少し、気化器4内で気化されたガスの圧力変動幅が150〜170kPa(絶対圧)となって安定した。また、図12に示す本発明の実験例2においても、制御弁7の開閉頻度が20分に一回の割合となり、気化器4内で気化されたガスの圧力変動幅が150〜170kPa(絶対圧)であった。
【0038】
図11〜図13のタイムチャートから、本発明の実験例1,2は、比較実験例に比べ、制御弁7を閉じるタイミングを遅らせることにより、制御弁7の開閉頻度が大幅に減少するとともに、気化器4内で気化されたガスの圧力変動幅が小さくなることが分かる。このように、圧力変動幅が小さくなり、制御弁7の開閉頻度が減少する理由は、制御弁7を閉じるタイミングを遅らせることにより、気化器4内に充分に液体材料を供給でき、気化器4内で気液共存状態を長時間維持できるからと考えられる。
【0039】
制御弁7を閉じるタイミングを遅らせる遅延時間は、例えば、絞り部9の孔径サイズ
および絞り部9前後の差圧(液体材料供給路3の内圧と気化器4の内圧との差圧と絞り部9の孔径で、絞り部9を通過する水の量が決まる。)と、気化器4の内容積と、
を考慮して設定され得る。
【0040】
なお、制御弁7を閉じるタイミングを遅らせる遅延時間を設定されているので、気化器4内への液体材料流入量を計算することができ、流入した液体材料が気化し、どれだけの時間所定のガス流量の供給を維持することができるかを事前に予測することができる。また、気化器4内が、液体だけで充満されるような弊害を防止し、気液混合状態を確実に実現することが可能となる。
【0041】
制御弁7を閉じるタイミングを遅らせる方法としては、上記のように予め遅延時間を設定しておく方法の他に、図14に概念的に示すように、気化器内のガス圧が低下して圧力検出器6の検出値Pdが予め設定された第1の閾値P1以下となったときに制御弁7を開き、制御弁7の開操作によって気化器内のガス圧が上昇し圧力検出器6の検出値Pdが第1の閾値P1より高い予め設定された第2の閾値P2を超えた時に制御弁7を閉じるように制御する方法もある。この場合、遅延時間(T)は一定とならないが、上記実施例と同様に、制御弁7の開閉頻度の低減効果と気化器内のガス圧変動幅の減少効果が得られ得る。
【0042】
第2の閾値P2は、流量制御装置5を構成する圧力制御式流量制御装置の定格最大圧力(圧力検出器6および42に律速される。) 以下であって、気化器4における加熱温度とその温度での液体材料の蒸気圧を考慮して設定される。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において変更可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 気化供給システム
4 気化器
5 流量制御装置
6 圧力検出器
7 制御弁
8 制御装置
9 絞り部
L 液体材料
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置、化学産業設備、或いは薬品産業設備等で用いられる、液体材料を気化して供給するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体設備等において、液体材料を気化器に供給し、気化器で気化させた原料ガスをプロセスチャンバーに供給するシステムが使用されている(例えば、特許文献1〜3)。そして、斯かるシステムにおいては、液体材料の気化器への供給は、制御バルブによって制御されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−278987号公報
【特許文献2】特開2003−142473号公報
【特許文献3】特開2007−36265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体材料供給用制御弁の単純な開閉制御だけでは、液体材料の気化器への供給量が不安定なために、液体材料の気化器への供給を制御する液体材料供給用制御弁を頻繁に開閉しなければならなかった。その結果、気化器内では、供給された液体材料の気化による体積膨張により激しい圧力変動が頻繁に生じており、気化器で気化させた原料ガスを高精度に流量制御し、プロセスチャンバへ供給することが困難という問題があった。また、頻繁な開閉動作は、該制御弁の寿命を縮めるという問題もあった。
【0005】
本発明では、気化器内での激しい圧力変動をできるだけ抑えるために、液体材料供給用制御弁の開閉頻度を低減し、気化器で気化させた原料ガスを高精度に流量制御可能で、該制御弁の寿命を延命することができる、液体材料の気化供給システムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る液体材料の気化供給システムは、第1の手段として、加圧供給される液体材料を受け入れて気化させるための気化器と、前記気化器からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置と、前記気化器から前記流量制御装置に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器と、前記気化器への前記液体材料の供給を制御する制御弁と、前記気化器内のガス圧が低下して前記圧力検出器の検出値が予め設定された閾値以下となったときに前記制御弁を開き、該制御弁の開操作によって前記気化器内のガス圧が上昇し前記圧力検出器の検出値が前記閾値を超えた後の所定の遅延時間経過後に前記制御弁を閉じるように制御する制御装置と、を有する。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る液体材料の気化供給システムは、第2の手段として、加圧供給される液体材料を受け入れて気化させるための気化器と、該気化器からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置と、前記気化器から前記流量制御装置に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器と、前記気化器への前記液体材料の供給を制御する制御弁と、前記気化器内のガス圧が低下して前記圧力検出器の検出値が予め設定された第1の閾値以下となったときに前記制御弁を開き、該制御弁の開操作によって前記気化器内のガス圧が上昇し前記圧力検出器の検出値が前記第1の閾値より高い予め設定された第2の閾値を超えた時に前記制御弁を閉じるように制御する制御装置と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、気化器への液体材料の供給を制御する制御弁を閉じるタイミングを遅らせることにより、気化器内の圧力変動を緩和し、該制御弁の開閉頻度を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係る液体材料の気化供給システムの一実施形態を示すシステム図である。
【図2】本発明に用いられる気化器と流量制御装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図2の、気化器の内部構造の一実施形態を概略的に示す縦断面図である。
【図4】図2の、流量制御装置の一実施形態(圧力制御式流量制御装置)の制御フローを示すブロック図である。
【図5】図2の流量制御装置の縦断面図である。
【図6】図1における気化器への液体材料の供給を制御する制御弁の開閉信号と圧力検出器の検出値との関係を示すタイムチャートである。
【図7】気化器内の圧力と流量制御装置の一実施形態(圧力制御式流量制御装置)の下流側流量との関係を示すグラフである。
【図8】気化器によって気化されたガスの圧力と液体材料の供給を制御する制御弁の開閉信号との関係を示すタイムチャートである。
【図9】本発明の実験例1を示すシステム図である。
【図10】本発明の実験例2を示すシステム図である。
【図11】実験例1の結果を示すタイムチャートであり、気化器内で気化されたガスの圧力と、液体材料の供給を制御する制御弁の開閉頻度を示すタイムチャートである。
【図12】実験例2の結果を示すタイムチャートであり、気化器内で気化されたガスの圧力と、液体材料の供給を制御する制御弁の開閉頻度を示すタイムチャートである。
【図13】比較実験例の結果を示すタイムチャートであり、気化器内で気化されたガスの圧力と、液体材料の供給を制御する制御弁の開閉頻度を示すタイムチャートである。
【図14】本発明に係る気化供給システムの他の実施形態を説明するための制御シーケンスを概念的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る液体材料の気化供給システムの実施形態について、以下に図1〜14を参照して説明する。なお、図示例の気化供給システムは、半導体製造分野において、CVD装置に液体材料を気化して供給するシステムの例を示している。全図を通し、同様の構成部分には同符号を付した。
【0011】
気化供給システム1は、ケーシング2内に、液体材料供給路3を通じて加圧供給される液体材料Lを受け入れて気化させるための気化器4と、気化器4からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置5と、気化器4から流量制御装置5に供給されるガスの圧力(気化器4内のガスの圧力に等しい。)を検出する圧力検出器6と、液体材料供給路3に介在されて気化器4への液体材料の供給を制御する制御弁7と、制御弁7を制御する制御装置8と、を備えている。
【0012】
図示例において、気化器4の液体材料流入口付近において液体材料供給路3に絞り部9が介在されおり、制御弁7は絞り部9の上流側近傍に配置されている。
【0013】
ケーシング2には、さらに、温度調節器10が収容されており、温度調節器10は、気化器4、流量制御装置5、及び、流量制御装置5に接続されたプロセスライン11の所望部分(図1の斜線部分)を加熱する後述の加熱装置を制御する。プロセスライン11は、プロセスチャンバ12に接続され、プロセスチャンバ12では、気化された液体材料が各種プロセスに使用される。図示例の半導体製造分野では、例えば、プロセスライン11は、CVD装置等のプロセスチャンバ12に接続されるとともに、プロセスチャンバ12に接続される真空ポンプ13によってプロセスチャンバ12を介して真空引きされる。
【0014】
制御弁7は、図示例では空気作動式開閉弁が採用されている。制御装置8は、ケーシング2内に収容されている電磁弁14を介して、制御弁7を制御する。すなわち、電磁弁14は、ケーシング2の外部から供給される圧縮空気Aの供給を制御することにより、制御弁7の開閉を制御する。液体材料供給路3には、さらに、ケーシング内の入口で液体材料供給路3を開閉する制御弁15と、パージガスPGの供給を制御する制御弁16と、排気ライン17を開閉する制御弁18とが介在されている。また、プロセスライン11には、ケーシング2内においてプロセスライン11を開閉するための制御弁19が介在されている。図示例においては、これらの制御弁も空気圧作動式開閉弁が採用されている。図示例の電磁弁14は、制御装置8からの指令により制御弁7、15、16、18、19を空気圧制御するために、5チャンネルの制御ポートを備えている。
【0015】
なお、制御弁7、15、16、18、19を電気作動式開閉弁とし、これら電気作動式制御弁の制御回路を電磁弁14に代えて配置することもできる。この場合、圧縮空気Aの供給ラインは不要となり、替わりに制御回路と電気作動式開閉弁とを繋ぐ配線等が配設される。
【0016】
圧力検出器6で検出された検出値は、制御装置8に送られる。圧力検出器6は、気化器4内で気化されて流量制御装置5に供給されるガスの圧力を検出することができる位置に配置されておればよく、例えば、気化器4のチャンバー4c(図3参照)内に設けたり、流量制御装置5の装置本体44(図5参照)内に埋め込んだり、あるいは、気化器4と流量制御装置5とを連通するガス流路(図示せず)に設けることもできる。また、図1に示すように他のポイントにおいて圧力検出器20〜22を設けて各ポイントにおける流体圧力が制御装置8に送られ、モニターされている。
【0017】
なお、ケーシング2には、液体材料用接続ポート2a、パージガス用接続ポート2b、圧縮空気用接続ポート2c、プロセスライン接続ポート2d、排気ライン接続ポート2eのほか、各種制御入力や各種制御情報等表示のためのコントロールパネル2fが取り付けられている。
【0018】
液体材料供給路3は、液体材料用接続ポート2aを介してケーシング2の内外に延び、液体材料Lが貯蔵された貯蔵容器23に接続される。液体材料供給路3の一端は、液体材料L中に液没している。貯蔵容器23には、液体材料Lのための圧送用加圧ガスFGを貯蔵容器23内に供給する圧送ガス供給管24が接続される。
【0019】
図2は、気化器4と流量制御装置5の外観の一例を示す斜視図である。図2の例では、気化器4の上に流量制御装置5が取り付けられている。気化器4の液体材料流入口である接続用コネクタに絞り部9が接続されている。なお、図示例では流量制御装置5として二次側の流量を精度よく制御可能な圧力制御式流量制御装置としているが、流量制御装置5は、圧力制御式流量制御装置以外にも、質量式流量制御装置等の制御系を使用しても良いことは勿論である。
【0020】
気化器4及び流量制御装置5を加熱する加熱装置25が固定されている。図示例の加熱装置25は、加熱プレート25aと、加熱プレート25aに埋設されたシーズヒータ25bと、によって構成されている。なお、加熱装置25は気化器4及び流量制御装置5を加熱できる構造であればどのような構造でも良く、例えば加熱プレート25aの替わりに、他の加熱装置(シースヒータ等)に外部より保温材や断熱材などを配置する構造としても良い。
【0021】
気化器4は、図3に示すように複数のチャンバー4a、4b、4cを内部に備えるこことが好ましい。各チャンバー4a〜4cの間を仕切る仕切壁30、31には、チャンバー内の圧力の脈動を低減するための絞り部32、33を設けることができる。気化器4は、液体材料を気化させるために、底面及び上面にも加熱装置4d,4eが取り付けられている。加熱装置25,4d,4eは、上述したように、温度調節器10によって加熱温度が調節される。なお、絞り部9、32、33としては、オリフィスを使用しているが、状況等に応じて、ノズル、ニードルバルブ等を使用しても良い。
【0022】
流量制御装置5として使用している圧力制御式流量制御装置は、図4に示すように、コントロール弁39、駆動部39a、オリフィス40、演算制御部41、圧力検出器42、温度検出器43等を備えている。圧力検出器42及び温度検出器43の検出値(P,T)は、増幅・AD変換部41aを通して流量演算部41bへ入力され、オリフィス40を流通するガス流量がQc=KPとして演算される。その後、設定入力部41cからの設定流量値Qsと演算流量値Qcとが比較部41dで比較され、両者の差信号Qyがコントロール弁39の駆動部39aへ入力されることにより、差信号Qyが零となる方向にコントロール弁39が開閉される。
【0023】
圧力制御式の流量制御装置5は、オリフィス40を流通するガス流速が音速以上の所謂臨界状態下の流体流れの場合には、オリフィス40を通過するガス流量QがQ=KP(Kは常数、Pはオリフィス上流側圧力)として演算できることを作動原理とするものであり、流量制御の応答性が極めて早く且つ安定しており、優れた制御応答性と高い制御精度を有するものである。尚、圧力制御式流量制御装置(圧力式流量制御装置とも言う。)そのものは、特開平8−338546号等その他によって公知である。
【0024】
図5に示すように、流量制御装置5を構成するコントロール弁39、オリフィス40、圧力検出器42、温度検出器43、及び演算制御装置41等は、全てステンレス鋼製の装置本体44に一体的に組み付けされている。そして、装置本体44にはカートリッジヒータ45が挿着されており、このヒータ45によって装置本体44やコントロール弁39のダイヤフラム弁体39bの部分が約50〜250℃に加熱される。図示例の駆動部39aは積層型圧電素子である。
【0025】
また、流量制御装置5の装置本体44内に形成した流体通路の部分には補助シーズヒータ46が配設されており、補助シーズヒータ46によって入口流体通路及び出口流体通路の近傍が加熱され、その結果、液体材料Lが純水(H2O)や弗化水素(HF)、テトラエトキシシラン(TEOS・Si(OC2H5)4)のような場合には、流通するガスの温度が最低でも20℃〜250℃の範囲に保持されることになり、コントロール弁39のダイヤフラム弁体39bへの液分付着が完全に防止されると共に、両流体通路内のガス温度の差が約6℃以下に保持されることになる。
【0026】
制御装置8は、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)を用い、シーケンスプログラムに従って制御弁7、15,16,18、19を制御することができる。
【0027】
一実施例において、制御装置8は、図6のタイムチャートに概念的に示すように、流量制御装置5に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器6の検出値Pdが予め設定された閾値P1以下となったときに制御弁7を開き、圧力検出器6の検出値が閾値P1を超えた後の所定の遅延時間(T)経過後に制御弁7を閉じるように制御することができる。このように制御することにより、気化器4内の圧力変動を緩和し、制御弁7の開閉頻度を低減できることが、以下に説明するように実験的に確認されている。
【0028】
まず、前提として、気化器4の内の圧力と流量制御装置5の下流側の流体流量との関係について説明する。流量制御装置5は、一般に、流量制御装置5の一次側圧力が最小供給圧力以上であれば、流量制御装置5の二次側のガス流量を一定に維持することができる。この最小供給圧力は、機種によって定まる固有値である。図7のタイムチャートに示すように、気化器4内では気化による体積膨張により圧力Pdが激しく変動するが、気化器4から供給されるガスの圧力Pdが最小供給圧力Pmより低くなると、流量制御装置5から流出する流量Fが変動する。従って、気化器4内の圧力Pdは、流量制御装置5の最小供給圧力Pmを下回らないように制御する必要がある。
【0029】
気化器4は、加熱装置により一定温度(例えば120℃)にセットされている。液体材料を圧送する圧力は、気化器4内のガスの圧力より高く設定されている。そして、気化器4内の圧力は、気化器4への液体材料の供給量を制御する制御弁7の開閉によって制御される。図8に概念的に示すように、制御弁7が開くと気化器4内に供給された液体材料が気化することにより、制御弁7を開いてしばらくすると気化器4内の圧力Pdが上昇し、次いで、制御弁7を閉じると、しばらくは圧力Pdの上昇が続き、やがて圧力Pdの上昇が止まる。
【0030】
図9は、本発明の実験例に使用した系統図である。圧送用加圧ガスFGとして窒素ガスを使用し、レギュレータ50によって圧送用加圧ガスFGを200kPa(絶対圧)に調整して、液体材料Lが貯蔵されている貯蔵容器23に供給する。液体材料Lには水を用いた。圧送用加圧ガスFGを貯蔵容器23に供給することにより、液体材料Lが、バルブ51、制御弁7、絞り部9を通じて気化器4に供給される。気化器4で気化されたガスは、圧力制御式の流量制御装置5によって流量を調整して送り出される。流量制御装置5は、バルブ19を介して真空ポンプ13に接続されている。真空ポンプ13は、1×10−2Torr以下の減圧状態を作り出すことができる。圧力検出器6により、気化器4から流量制御装置5に供給されるガスの圧力を検出し、その検出値に基づいて制御装置8によって電磁弁14を制御し、制御弁7の制御空気圧を制御する。絞り部9を構成しているオリフィスの内径は268μmであった。
【0031】
気化器4及び流量制御装置5の周囲は、加熱装置により120℃に保たれている。流量制御装置5と真空ポンプ13との間の配管周囲温度は120℃以上に保持されている。使用した流量制御装置5の最小供給圧力は120kPa(絶対圧)である。
【0032】
本発明の実験例1として、この最小供給圧力を考慮して制御弁7を開く閾値を150kPa(絶対圧)に設定し、制御装置8の制御シーケンスを、圧力検出器6でモニターした圧力値が低下して150kPa(絶対圧)以下になると制御弁7を開き、圧力検出器6の検出値が上昇して閾値の150kPa(絶対値)を超えた後、5秒の遅延時間(T1)経過後に制御弁7を閉じるように設定した(図6参照)。
【0033】
また、本発明の実験例2として、制御装置8の制御シーケンスを、圧力検出器6でモニターした圧力値が低下して閾値の150kPa(絶対圧)以下になると制御弁7を開き、圧力検出器6の検出値が上昇して閾値の150kPa(絶対値)を超えた後、10秒の遅延時間(T2)経過後に制御弁7を閉じるように設定した。
【0034】
実験例1,2において、流量制御装置5の流量設定は、使用機種の最大制御流量である347sccm(100%制御流量)とした。気化器4の内容積は24ccであり、流量制御装置5の内容積は3ccであった。
【0035】
比較実験例として、図10に示すシステムを用いて実験した。なお、比較実験例において、オリフィス9Xを制御弁7の上流側に配置し、制御弁7は実験例1,2の場合より気化器4から離れた位置に配置した。比較実験例において制御弁7の制御シーケンスは、圧力検出器6でモニターした圧力値が低下して圧力検出器6の検出値が150kPa(絶対圧)以下になったときに制御弁7を開き、圧力検出器6からの圧力値が上昇して150kPaを超えたときに制御弁7を閉じるように設定した(図8参照)。比較実験例は、オリフィス9X及び制御弁7の配置及び制御シーケンスを除き、実験例1,2と同様である。圧力制御式の流量制御装置5の流量設定は、最大制御流量である100%制御流量(347sccm)から80%制御流量に切り替えた。
【0036】
上記実験例1,2と、比較実験例との測定結果を図11〜図13に示す。図11〜図13のタイムチャートには、圧力検出器6の圧力指示値Pd(kPa 絶対圧)、制御弁7の開閉制御信号Vd(電圧V)、流量制御装置5の圧力検出器42(図5参照)からの出力電圧Fv(電圧V)が示されている。出力電圧Fvは、圧力検出器42で検出すべき圧力(P)に比例するため、上述のQ=kPの関係から流量制御装置5の制御流量に関係する。実験例1,2及び比較実験例において100%制御流量に相当する電圧Fvは5Vであり、比較実験例において80%制御流量に相当する出力電圧Fvは4Vである。
【0037】
図13の比較実験例では、制御弁7の開閉頻度が約10秒に一回の割合であり、気化器4内で気化されたガスの圧力変動幅が120〜220kPa(絶対値)であった。一方、図11に示す本発明の実験例1では制御弁7の開閉頻度が14分に一回の割合となって開閉頻度が大幅に減少し、気化器4内で気化されたガスの圧力変動幅が150〜170kPa(絶対圧)となって安定した。また、図12に示す本発明の実験例2においても、制御弁7の開閉頻度が20分に一回の割合となり、気化器4内で気化されたガスの圧力変動幅が150〜170kPa(絶対圧)であった。
【0038】
図11〜図13のタイムチャートから、本発明の実験例1,2は、比較実験例に比べ、制御弁7を閉じるタイミングを遅らせることにより、制御弁7の開閉頻度が大幅に減少するとともに、気化器4内で気化されたガスの圧力変動幅が小さくなることが分かる。このように、圧力変動幅が小さくなり、制御弁7の開閉頻度が減少する理由は、制御弁7を閉じるタイミングを遅らせることにより、気化器4内に充分に液体材料を供給でき、気化器4内で気液共存状態を長時間維持できるからと考えられる。
【0039】
制御弁7を閉じるタイミングを遅らせる遅延時間は、例えば、絞り部9の孔径サイズ
および絞り部9前後の差圧(液体材料供給路3の内圧と気化器4の内圧との差圧と絞り部9の孔径で、絞り部9を通過する水の量が決まる。)と、気化器4の内容積と、
を考慮して設定され得る。
【0040】
なお、制御弁7を閉じるタイミングを遅らせる遅延時間を設定されているので、気化器4内への液体材料流入量を計算することができ、流入した液体材料が気化し、どれだけの時間所定のガス流量の供給を維持することができるかを事前に予測することができる。また、気化器4内が、液体だけで充満されるような弊害を防止し、気液混合状態を確実に実現することが可能となる。
【0041】
制御弁7を閉じるタイミングを遅らせる方法としては、上記のように予め遅延時間を設定しておく方法の他に、図14に概念的に示すように、気化器内のガス圧が低下して圧力検出器6の検出値Pdが予め設定された第1の閾値P1以下となったときに制御弁7を開き、制御弁7の開操作によって気化器内のガス圧が上昇し圧力検出器6の検出値Pdが第1の閾値P1より高い予め設定された第2の閾値P2を超えた時に制御弁7を閉じるように制御する方法もある。この場合、遅延時間(T)は一定とならないが、上記実施例と同様に、制御弁7の開閉頻度の低減効果と気化器内のガス圧変動幅の減少効果が得られ得る。
【0042】
第2の閾値P2は、流量制御装置5を構成する圧力制御式流量制御装置の定格最大圧力(圧力検出器6および42に律速される。) 以下であって、気化器4における加熱温度とその温度での液体材料の蒸気圧を考慮して設定される。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において変更可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 気化供給システム
4 気化器
5 流量制御装置
6 圧力検出器
7 制御弁
8 制御装置
9 絞り部
L 液体材料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧供給される液体材料を受け入れて気化させるための気化器と、
前記気化器からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置と、
前記気化器から前記流量制御装置に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器と、
前記気化器への前記液体材料の供給を制御する制御弁と、
前記気化器内のガス圧が低下して前記圧力検出器の検出値が予め設定された閾値以下となったときに前記制御弁を開き、該制御弁の開操作によって前記気化器内のガス圧が上昇し前記圧力検出器の検出値が前記閾値を超えた後の所定の遅延時間経過後に前記制御弁を閉じるように制御する制御装置と、
を有することを特徴とする液体材料の気化供給システム。
【請求項2】
加圧供給される液体材料を受け入れて気化させるための気化器と、
該気化器からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置と、
前記気化器から前記流量制御装置に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器と、
前記気化器への前記液体材料の供給を制御する制御弁と、
前記気化器内のガス圧が低下して前記圧力検出器の検出値が予め設定された第1の閾値以下となったときに前記制御弁を開き、該制御弁の開操作によって前記気化器内のガス圧が上昇し前記圧力検出器の検出値が前記第1の閾値より高い予め設定された第2の閾値を超えた時に前記制御弁を閉じるように制御する制御装置と、
を有することを特徴とする液体材料の気化供給システム。
【請求項3】
前記気化器と前記制御弁との間に、前記液体材料の流量を制限する絞り部が介在されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の気化供給システム。
【請求項4】
前記絞り部が、前記気化器の液体材料流入口に配設されていることを特徴とする請求項3に記載の気化供給システム。
【請求項5】
前記流量制御装置が、圧力制御式流量制御装置であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の気化供給システム。
【請求項1】
加圧供給される液体材料を受け入れて気化させるための気化器と、
前記気化器からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置と、
前記気化器から前記流量制御装置に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器と、
前記気化器への前記液体材料の供給を制御する制御弁と、
前記気化器内のガス圧が低下して前記圧力検出器の検出値が予め設定された閾値以下となったときに前記制御弁を開き、該制御弁の開操作によって前記気化器内のガス圧が上昇し前記圧力検出器の検出値が前記閾値を超えた後の所定の遅延時間経過後に前記制御弁を閉じるように制御する制御装置と、
を有することを特徴とする液体材料の気化供給システム。
【請求項2】
加圧供給される液体材料を受け入れて気化させるための気化器と、
該気化器からの流出ガスの流量を調整する流量制御装置と、
前記気化器から前記流量制御装置に供給されるガスの圧力を検出する圧力検出器と、
前記気化器への前記液体材料の供給を制御する制御弁と、
前記気化器内のガス圧が低下して前記圧力検出器の検出値が予め設定された第1の閾値以下となったときに前記制御弁を開き、該制御弁の開操作によって前記気化器内のガス圧が上昇し前記圧力検出器の検出値が前記第1の閾値より高い予め設定された第2の閾値を超えた時に前記制御弁を閉じるように制御する制御装置と、
を有することを特徴とする液体材料の気化供給システム。
【請求項3】
前記気化器と前記制御弁との間に、前記液体材料の流量を制限する絞り部が介在されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の気化供給システム。
【請求項4】
前記絞り部が、前記気化器の液体材料流入口に配設されていることを特徴とする請求項3に記載の気化供給システム。
【請求項5】
前記流量制御装置が、圧力制御式流量制御装置であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の気化供給システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−180429(P2010−180429A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22688(P2009−22688)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】
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