説明

液体流路用開閉弁

【課題】簡単な操作によって確実に液体の流路の開閉を切換えることのできる流体流路用開閉弁を提供する。
【解決手段】連通孔81dを開閉するための弁体82と、押下操作によって弁体82を移動可能な操作ボタン83と、操作ボタン83を押下方向と反対方向に付勢するとともに、弁体82を連通孔81dを閉鎖する方向に付勢する圧縮ばね82eと、を備え、操作ボタン83には、溝底に周方向一方に向かって上り傾斜となる傾斜面と段差とがそれぞれ複数形成された無端状のカム溝85が設けられ、弁本体81には、先端部がカム溝85に係合する係合ピン86が設けられ、操作ボタン83の押下操作毎に、弁体82による連通孔81dの開閉を切換えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、農薬等の薬液の散布に用いられる薬液散布機において、薬液等の液体の流路を開閉するための液体流路用開閉弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の流体流路用開閉弁は、例えば、農薬等の薬液の散布に用いられるミストブロワ等の薬液散布機において、薬液の流路の開閉に用いられている(例えば、特許文献1参照)。この流体流路用開閉弁は、使用者が手で弁の開閉操作するための操作部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平01−163561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記流体流路用開閉弁は、操作部を操作方向一方に向かって移動させる操作を行うことによって流路を開放し、操作方向他方に向かって移動させる操作を行うことによって流路を閉鎖するようになっている。前記流体流路用開閉弁では、操作部が所定範囲内を移動自在であり、所定範囲内の一端と他端との間に操作部が位置する場合がある。このため、前記流体流路用開閉弁を備えた薬液散布機では、使用者の手や体が不用意に操作部に接触してしまう場合に操作部が所定範囲内の一端と他端との間に移動すると、意図せず流路が開放されて薬液が放出される状態となり、使用者が気付かずに薬液が放出される状態となる場合がある。
【0005】
本発明の目的とするところは、簡単な操作によって確実に液体の流路の開閉を切換えることのできる流体流路用開閉弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために、液体の流路の内側を移動可能に設けられ、前記流路を開閉する弁体と、前記流路を閉鎖する方向に前記弁体を付勢する弁体付勢手段と、押下操作可能に設けられ、押下操作によって前記弁体を移動可能なボタンと、前記ボタンを操作方向と反対方向に付勢するボタン付勢手段と、を備え、前記ボタンには、溝底に一方に向かって上り傾斜となる複数の傾斜面と前記傾斜面のそれぞれの間に位置する複数の段差とが形成された無端状のカム溝が設けられ、前記流路側の部材には、先端部が前記カム溝に係合する係合ピンが設けられ、前記ボタンの押下操作毎に、前記弁体による前記流路の開閉を切換えるようにしている。
【0007】
これにより、ボタンを押下する操作によって液体の流路の開閉が切換えられることから、ボタンの操作によって確実に流路が開放または閉鎖された状態となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ボタンの操作によって確実に流路が開放または閉鎖された状態となるので、流体流路用開閉弁を備えた薬液散布機において、使用者の手や体が不用意にボタンに接触する機会が減り、使用者が気付かずに流路が開放されて薬液が放出されるという不都合が生じることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態を示すミストブロワの斜視図である。
【図2】流路開閉弁の斜視図である。
【図3】流路開閉弁の断面斜視図である。
【図4】流路を閉鎖した状態を示す流路開閉弁の断面図である。
【図5】流路を開放した状態を示す流路開閉弁の断面図である。
【図6】流路を閉鎖した状態におけるカム溝と係合ピンとの関係を示す図である。
【図7】流路を開放した状態におけるカム溝と係合ピンとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図7は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0011】
本発明の流体流路用開閉弁を備えたミストブロワ10は、使用者が背負いながら薬液等の液体を散布する作業を行うものである。
【0012】
このミストブロワ10は、図1に示すように、前面側に位置する液タンク20と、液タンク20に取り付けられ、液タンク20の下面側から後方に延びるフレーム30と、フレーム30の後側に位置するエンジン40と、液タンク20とエンジン40との間に配置された送風機50と、送風機50の右側面から前方に延びる送風管60と、を備えている。
【0013】
液タンク20は、上下方向に延びる中空状に形成されており、内部に散布用の薬液が貯蔵される。液タンク20の前面には背当部21が設けられ、背当部21には使用者がミストブロワ10を背負う際に肩に掛ける肩ベルト22が設けられている。
【0014】
フレーム30は、管状の部材を屈曲することによって、液タンク20の左右両側を上下方向に延びるとともに、それぞれの下端側から後方に延びるように形成されている。フレーム30の幅方向両側を後方に延びる部分には、板状の部材が架け渡されており、その上にエンジン40および送風機50が取り付けられる。
【0015】
エンジン40は、4ストローク式のエンジンであり、送風機50を駆動する動力源となる。
【0016】
送風機50は、回転軸がエンジン40に連結された遠心ファンであり、右側面に送風管60が接続されている。また、送風機50には、液タンク20内を加圧するための加圧管51の一端が接続され、加圧管51の他端が液タンク20の上部側に接続されている。
【0017】
送風管60は、円筒形状の部材からなり、可撓性を有する蛇腹管61を介して送風機50に接続されている。送風管60には、外周部から上方に延びるように設けられ、使用者が右手で把持するためのハンドル62が設けられている。ハンドル62の上部には、ハンドル62を把持した手で操作可能なスロットルレバー62aが設けられ、スロットルレバー62aの操作によってエンジン40の回転数が調整可能である。また、送風管60の先端側には、送風管60を流通する空気と薬液とを混合するための混合部63が設けられている。さらに、混合部63の先端側には、混合部63において混合された空気および薬液を噴出させるためのノズル64が設けられている。ここで、混合部63には、送液管70を介して液タンク20内の薬液が流入する。
【0018】
送液管70は、一端が液タンク20の下部に接続され、他端側がハンドル62の近傍まで送風管60に沿って延びるタンク側送液管71と、一端が混合部63に接続され、他端側がハンドル62の近傍まで送風管60に沿って延びる混合部側送液管72と、を有している。タンク側送液管71の他端と混合部側送液管72の他端とは、流路開閉弁80を介して接続されている。
【0019】
流路開閉弁80は、図1に示すように、使用者がミストブロワ10を使用する状態において使用者の体側である送風管60の左面、且つ、ハンドル62の基端の近傍に設けられている。流路開閉弁80は、図2および図3に示すように、タンク側送液管71と混合部側送液管72とが接続される弁本体81と、弁本体81に設けられた薬液の流路を開閉可能な弁体82と、弁体82による流路の開閉を切換えるための操作ボタン83と、操作ボタン83の操作毎に、流路の開閉を切換えるためのオルタネイト機構84と、を有している。
【0020】
弁本体81は、内部に断面円形状の上下方向に延びる空間81aを有し、空間81aの上端側が開口されている。弁本体81の側面には、空間81aの下部側に連通するように設けられ、タンク側送液管72の他端が接続される液流入口81bが設けられている。また、弁本体81の側面には、液流入口81bの上方に位置する空間81aに連通するように設けられ、混合部側送液管72の他端が接続される液流出口81cが設けられている。空間81aの液流入口81bと液流出口81cとの間の高さ位置には、弁体82によって開閉される連通孔81dが設けられている。空間81aは、連通孔81dの上側の内径寸法よりも下側の内径寸法が大きく形成されている。また、弁本体81の上部側には、操作ボタン83の前後方向両側を囲むように、操作ボタン83の上端よりもやや上方まで延びる一対の壁81eが設けられている。
【0021】
弁体82は、空間81aの上部側の内径寸法とほぼ同一の外径寸法を有する円柱状の部材であり、空間81a内を上下方向に移動可能に設けられている。弁体82の下端には、外周方向に連続して径方向外側に延びるように設けられ、空間81aの上部側の内径寸法より大きい外径寸法を有するフランジ82aが設けられている。弁体82のフランジ82aの上面側には、シール部材としてのOリング82bが取り付けられており、弁体82を上方に移動させると、フランジ82aおよびOリング82bによって連通孔81dが閉鎖される。弁体82の上下方向中央部には、外径寸法が他の部分よりも小さく形成された縮径部82cが設けられ、縮径部82cの周りを薬液が流通可能である。弁体82の上部側には、空間81aと弁体82との間の位置し、空間81a内の気密を保持するためのOリング82dが設けられている。また、弁本体81の底面と弁体82の下端との間には、圧縮ばね82eが設けられており、弁体82が連通孔81dを閉鎖する方向に付勢されている。
【0022】
操作ボタン83は、上端が閉鎖された筒状の部材からなり、弁体82の上端に固定されている。操作ボタン83は、使用者の左手で押下操作可能である。
【0023】
オルタネイト機構84は、操作ボタン83の外周部に設けられたカム溝85と、弁本体81に設けられ、先端がカム溝85に係合する係合ピン86と、を有している。
【0024】
カム溝85は、無端状のハート形状に形成されている。カム溝85の溝底には、周方向一方に向かって上り傾斜となる傾斜面85a,85b,85c,85dと段差85e,85f,85g,85hとがそれぞれ複数設けられている。
【0025】
係合ピン86は、上下方向に延びる可撓性を有する部材からなり、基端側が弁本体81に固定され、先端側がカム溝85側に屈曲されて先端がカム溝85の溝底に係合している。
【0026】
以上のように構成されたミストブロワ10において、エンジン40の動力によって送風機50を駆動させると、送風機50の周囲の空気を吸入し、吸入した空気を送風管60内に流通させ、ノズル64から噴出させる。ここで、ノズル64から噴出する空気の風量は、スロットルレバー62aの操作によって調整可能である。この状態で、図4に示すように、流路を閉鎖している流路開閉弁80の操作ボタン83を操作すると、図5に示すように、弁体82が下方に移動して連通孔81dが開放される。このとき、液タンク20内の薬液は、タンク側送液管71、混合部側送液管72を流通して、混合部63において送風管60を流通する空気と混合され、空気と共にノズル64から噴出される。
【0027】
また、図5に示すように、流路を開放している流路開閉弁80の操作ボタン83を操作すると、図4に示すように、弁体82が上方に移動して連通孔81dが閉鎖される。このとき、液タンク20内の薬液は、流路開閉弁80において流通が規制され、ノズル64からの噴出が停止される。
【0028】
図4に示す流路を閉鎖している流路開閉弁80において、オルタネイト機構84では、図6に示すように、係合ピン86の先端がカム溝85の下部側の頂部85iに保持されている。この状態で使用者が操作ボタン83の押下操作を行うと、操作ボタン83および弁体82が下方に移動し、係合ピン86の先端は、図6の実線の矢印に示すように、段差85hによって移動方向が規制されて傾斜面85a上を移動し、段差85eを乗り越える。係合ピン86の先端が段差85eを乗り越えた後に使用者が操作ボタン83から手を離すと、操作ボタン83および弁体82は、圧縮ばね82eの付勢力によって上方に移動する。このとき、係合ピン86の先端は、図6の破線の矢印に示すように、段差85eによって移動方向が規制されて傾斜面85bを移動し、図7に示すように、係合ピン86の先端がカム溝85の上部側の頂部85jに保持された状態となる。これにより、弁体82は、連通孔81dを開放した状態となる。
【0029】
また、図5に示す流路を開放している流路開閉弁80において、オルタネイト機構84では、図7に示すように、係合ピン86の先端がカム溝85の上部側の頂部85jに保持されている。この状態で使用者が操作ボタン83の押下操作を行うと、操作ボタン83および弁体82が下方に移動し、係合ピン86の先端は、図7の実線の矢印に示すように、段差85fによって移動方向が規制されて傾斜面85c上を移動し、段差85gを乗り越える。係合ピン86の先端が段差85gを乗り越えた後に使用者が操作ボタン83から手を離すと、操作ボタン83および弁体82は、圧縮ばね82eの付勢力によって上方に移動する。このとき、係合ピン86の先端は、図7の破線の矢印に示すように、段差85gによって移動方向が規制されて傾斜面85d上を移動し、図6に示すように、係合ピン86の先端がカム溝85の下部側の頂部85iに保持された状態となる。これにより、弁体82は、連通孔81dを閉鎖した状態となる。
【0030】
このように、本実施形態の流体流路用開閉弁によれば、連通孔81dを開閉するための弁体82と、押下操作によって弁体82を移動可能な操作ボタン83と、操作ボタン83を押下方向と反対方向に付勢するとともに、弁体82を連通孔81dを閉鎖する方向に付勢する圧縮ばね82eと、を備え、操作ボタン83には、溝底に周方向一方に向かって上り傾斜となる複数の傾斜面85a,85b,85c,85dと各傾斜面85a,85b,85c,85dの間に設けられた複数の段差85e,85f,85g,85hとが形成された無端状のカム溝85が設けられ、弁本体81には、先端部がカム溝85に係合する係合ピン86が設けられ、操作ボタン83の押下操作毎に、弁体82による連通孔81dの開閉を切換えている。これにより、操作ボタン83の同じ押下操作によって確実に連通孔81dが開放または閉鎖された状態に切り換わるので、流路開閉弁80を備えたミストブロワ10において、使用者の手や体が不用意に操作ボタン83に接触する機会が減り、使用者が気付かずに連通孔81dが開放されて薬液が放出されるという不都合が生じることを防止できる。
【0031】
また、1つの圧縮ばね82eによって操作ボタン83を押下方向と反対方向に付勢するとともに、弁体82を連通孔81dを閉鎖する方向に付勢するようにしている。これにより、操作ボタン83および弁体82をそれぞれ別の付勢手段によって付勢する必要はなく、部品点数を減らすことが可能となるので、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0032】
尚、前記実施形態では、本発明の流体流路用開閉弁を備えた装置として農薬等の薬液を散布するためのミストブロワ10を示したが、液体の流路を開閉する開閉弁を備えた装置であれば本発明を適用可能であり、例えば、送風手段を有しない噴霧機であってもよい。
【0033】
また、前記実施形態では、1つの圧縮ばね82eによって、操作ボタン83を押下方向と反対方向に付勢するとともに、弁体82を連通孔81dを開放する方向に付勢するようにしているがこれに限られるものではない。例えば、操作ボタン83を押下方向と反対方向に付勢する付勢手段と、連通孔81dを開放する方向に弁体82を付勢する付勢手段と、に対してそれぞれ専用の圧縮ばねを用いるようにしてもよい。
【0034】
また、前記実施形態では、操作ボタン83の操作される面を上方に向けて配置し、操作ボタン83を上方から下方に向かって押下操作するようにしたものを示したが、これに限られるものではない。操作ボタンは、操作ボタンの操作される面を上方以外に向けて配置し、押下操作するものも含まれる。例えば操作ボタンの操作される面を左方向に向けて配置し、左方向から右方向に向かって押下操作するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0035】
80…流路開閉弁、81…弁本体、81a…空間、81b…液流入孔、81c…液流出口、81d…連通孔、82…弁体、82e…圧縮ばね、83…操作ボタン、84…オルタネイト機構、85…カム溝、85a,85b,85c,85d…傾斜面、85e,85f,85g,85h…段差、86…係合ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流路の内側を移動可能に設けられ、前記流路を開閉する弁体と、
前記流路を閉鎖する方向に前記弁体を付勢する弁体付勢手段と、
押下操作可能に設けられ、押下操作によって前記弁体を移動可能なボタンと、
前記ボタンを操作方向と反対方向に付勢するボタン付勢手段と、を備え、
前記ボタンには、溝底に一方に向かって上り傾斜となる複数の傾斜面と前記傾斜面のそれぞれの間に位置する複数の段差とが形成された無端状のカム溝が設けられ、
前記流路側の部材には、先端部が前記カム溝に係合する係合ピンが設けられ、
前記ボタンの押下操作毎に、前記弁体による前記流路の開閉を切換える
ことを特徴とする液体流路用開閉弁。
【請求項2】
前記弁体付勢手段および前記ボタン付勢手段は、前記弁体を付勢すると同時に前記ボタンを付勢する1つの付勢部材からなる
ことを特徴とする請求項1記載の流体流路用開閉弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−87821(P2013−87821A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227109(P2011−227109)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】