説明

液体製品製造システム

【課題】 濃縮液の濃度管理が容易であると共に製品の製造開始時点から濃度が安定し排出液の発生量を低減することが可能な液体製品製造システムを提供する。
【解決手段】液体の流量調節装置を有する液体混合装置を備え、上記液体混合装置により複数種類の液体を混合して液体製品を製造する液体製品製造システムにおいて、液体製品の濃度を達成するために必要な液体の濃度範囲を画定し、上記濃度範囲内において設定された液体の濃度に基づき、上記複数種類の液体の初期流量値を決定し、上記初期流量値に基づき、上記流量調節装置を制御して上記液体混合装置を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体製品製造システムに係り、特に、複数の液体を混合して液体製品を製造する液体製品製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体製品を製造する場合には、製造されるべき液体製品よりも大きな濃度に調合された濃縮液と、この濃縮液を希釈する希釈液とを連続式の液体混合装置により混合して作製する。即ち、例えば、濃縮液還元果汁飲料等を製造する場合には、液体原料である凍結濃縮液果汁を解凍し、希釈液である水と混合して製品を製造する。
【0003】
このような液体製品を製造する場合には、製造方法としては、従来、例えば、1.濃縮液及び希釈液の流量を制御する機能を備えた液体混合装置による「流量制御方式」、2.液体混合装置において濃縮液及び希釈液の混合比率を設定して混合比を制御する「比率制御方式」、3.混合結果の濃度を判定して流量比率を変更し、判定結果を反映させる「濃度フィードバック方式」等が実施されている。
【0004】
しかしながら、このような従来の液体製品の製造システムにあっては、上記「流量制御方式」及び「比率制御方式」においては、濃縮液は常時一定の濃度で供給される必要があり、濃縮液の濃度管理が非常に煩雑あった。
【0005】
また、上記「濃度フィードバック方式」にあっては、濃縮液の濃度は一定である必要はないが、濃度は所定の範囲内にあることが必要であり、また、それぞれ新たな製品を製造する際には、製造初期のたち上がり時に濃度が安定するまでに所定の時間がかかり、その間に大量の排出液が発生する、という不具合が存していた。
本件出願人は上記不具合を解消できる液体製品製造システムに関し調査したが関連する先行技術を発見することはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、濃縮液の濃度管理が容易であると共に製品の製造開始時点から濃度が安定し排出液の発生量を低減することが可能な液体製品製造システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題解決のため請求項1記載の発明にあっては、液体の流量調節装置を有する液体混合装置を備え、上記液体混合装置により複数種類の液体を混合して液体製品を製造する液体製品製造システムにおいて、液体製品の濃度を達成するために必要な液体の濃度範囲を画定し、上記濃度範囲内において設定された液体の濃度に基づき、上記複数種類の液体の初期流量値を決定し、上記初期流量値に基づき、上記流量調節装置を制御して上記液体混合装置を駆動することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明にあっては、上記複数の液体は濃縮液及び上記濃縮液を希釈するための希釈液であって、液体製品の濃度を達成するために必要な濃縮液の濃度範囲を画定し、上記濃度範囲内において濃縮液の濃度を設定することを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明にあっては、上記濃縮液との濃度範囲は、上記液体製品が有すべ
き濃度と液体の全体の流量との関係式から上記液体混合装置の制御可能な最小流量値
に基づき最大許容濃度を求めると共に、当該液体製品が有すべき濃度と液体の全体流量
の関係式から上記液体混合装置の制御可能な最大流量値に基づき最小許容濃度を求め、
上記最大許容濃度と上記最小許容濃度との間を上記濃縮液の濃度範囲とすることを特
徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明にあっては、上記濃度範囲内において設定された濃縮液の濃度に
基づき、上記濃縮液及び希釈液の初期流量値を決定することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明にあっては、上記初期流量値に基づき、上記流量調節装置を制御して上記液体混合装置を駆動することを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明にあっては、上記初期流量値は、当該製品が有すべき濃度と液体原料全体の流量との関係式に基づき、上記濃縮液の実測値により濃縮液の初期流量を求め、液体原料全体の流量から上記濃縮液の初期流量を減ずることにより希釈液の初期流量を算出することを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明にあっては、上記流量調節装置はバルブであると共に、上記流量調節装置は濃縮液用流量調節装置及び希釈液用流量調節装置とにより構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明にあっては、濃縮液の初期流量値に最も近接した初期流量値以上の流量値と濃縮液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値との差の値により、測定された濃縮液の初期流量値と濃縮液の初期流量値に最も近い初期流量値以下の流量値との差の値を除し、濃縮液の初期流量に最も近接した初期流量値以上の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値と濃縮液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値との差の値を乗じ、濃縮液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置の初期バルブ開度値を和すことを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明にあっては、希釈液の初期流量値に最も近接した初期流量値以上の流量値と希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値との差の値により、測定された希釈液の初期流量値と希釈液の初期流量値に最も近い初期流量値以下の流量値との差の値を除し、希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以上の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値と希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値との差の値を乗じ、希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置の初期バルブ開度値を和すことを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明にあっては、濃度フィードバック制御装置を有し、上記混合された液体に他の濃度の濃縮液を混合した場合であっても液体原料の混合液の濃度が一定になるように濃度制御を行うように濃度のフィードバック制御を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項11記載の発明にあっては、上記フィードバック制御時における濃度フィード
バック制御装置のフィードバック出力値は、上記液体混合装置の制御可能な最大流量値
と最小流量値との差の値に、上記濃度フィードバック制御装置の制御余裕係数を乗じた
値であることを特徴とする。
【0018】
請求項12記載の発明にあっては、上記濃度フィードバック制御装置は、濃縮液側の
流量値設定値を、上記最小流量値に上記フィードバック出力値に和した値と上記最大流
量値から上記フィードバック出力値を減じた値との間で制御すると共に、希釈液側の流
量値設定値を、上記最大流量値から上記フィードバック出力値を減じた値と上記最小流
量値に上記フィードバック出力値を加えた値との間で制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1及び2記載の発明に係る液体製品製造システムにあっては、濃縮液の濃度管理が容易であると共に製品の製造開始時点から濃度が安定し排出液の発生量を低減することが可能な液体製品製造システムを提供することができる。
【0020】
また、従来の流量制御方式、比率混合方式又はフィードバック方式のいずれにしても、液体混合装置へ供給する濃縮液の濃度は常時一定でなければならず、濃度調整に時間を要し、濃度調整作業そのものが煩雑であったが、請求項3記載の発明に係る液体製品製造システムにあっては、濃縮液の濃度の許容範囲が従来の各方式に比して広範なものとなり、濃縮液の濃度設定が容易かつ迅速に行うことができる。
その結果、濃度管理に要する負担を軽減することができ、液体混合作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0021】
また、従来、液体混合装置へ供給される濃縮液の濃度が一定でなかった場合には、その都度、流量の計算を行う必要があり、流量計算が煩雑であったが、請求項4及び5記載の発明にあっては、上記請求項3に係る発明において設定された濃度範囲内において設定された濃度を液体混合装置に入力することにより、液体混合装置の制御部において予め設定されたデータから初期流量を適宜、自動計算することができる。
従って、液体混合作業における初期流量に関する管理の負担を軽減することができ、液体混合製造作業を容易に行うことができる。
【0022】
また、従来、液体製品製造システムの混合装置の運転開始時においては、計算された流量値に達するまで、液体製品製造システムに内装された流量調節装置により、濃縮液及び希釈液を流しながら調整するものであったため、調整に時間がかかり、その間、液体製品とはできない混合液が排出液として所定量に亘って形成されていたものであるが、請求項6〜9記載の発明に係る液体製品製造システムにあっては、流量調節装置の初期設定値が算出されることから、当該初期設定値に基づき運転を開始することにより、運転開始当初から、要求される濃度に対して必要な適正な流量が流れることなり、従来のような、液体製品とはならない排出液の流出を防止することができる。
その結果、請求項6〜9記載の発明にあっては、流量調節装置の初期値設定管理を容易に行うことができると共に、混合液を排出液と化することなく効率的な混合作業を行うことができる。
【0023】
また、濃縮液の貯槽が製品の製造量に対して充分ではなく、複数の貯槽を使用して、収納された異なった濃度の濃縮液により混合を行う必要がある場合であっても、請求項10〜12記載の発明に係る液体製品製造システムにあっては、濃度フィードバック制御により混合液の濃度は常時一定に制御される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る液体製品製造システムを実施の形態に基づき詳細に説明する。
1.基本概念
本実施の形態に係る液体混合装置により複数種類の液体を混合して液体製品を製造する液体製品製造システムであって、液体製品の濃度を達成するために必要な液体の濃度範囲を画定し、上記濃度範囲内において設定された液体の濃度に基づき、上記複数種類の液体の初期流量値を決定し、上記初期流量値に基づき、上記流量調節装置を制御して上記液体混合装置を駆動するように構成されている。
上記複数の液体は濃縮液及び上記濃縮液を希釈するための希釈液である。本実施の形態に係る液体製品製造システムは、例えば、濃縮液還元果汁飲料やお茶等の飲料製品を製造するために使用される。従って、上記「濃縮液」は、例えば、凍結濃縮果汁液や、茶葉からの抽出液であり、「希釈液」は一般に水である。
【0025】
従って、本実施の形態に係る液体製品製造システムにあっては、製造する製品品種毎に設定される製品濃度は異なることから、製品毎にあらかじめ設定された製品濃度を実現できる濃縮液の濃度範囲を画定して指示できるように構成されている。
また、夫々の製品を製造する際に、上記画定された濃度範囲内の濃縮液濃度を液体混合装置の制御部へ入力する事により、制御部に内蔵されたコンピュータにより自動的に、混合液の濃度が製造されるべき製品の規格値になるように初期流量を計算できるように構成されている。
さらに、上記の計算された初期流量を運転開始時に即時に実現するため、流量調節装置の初期値設定機能を有する。
【0026】
2.濃縮液の濃度範囲の画定
また、本実施の形態にあっては、上記濃縮液の濃度範囲は、上記液体製品が有すべ
き濃度と液体の全体の流量との関係式から上記液体混合装置の制御可能な最小流量値
に基づき最大許容濃度を求めると共に、当該液体製品が有すべき濃度と液体の全体流量
の関係式から上記液体混合装置の制御可能な最大流量値に基づき最小許容濃度を求め、
上記最大許容濃度と上記最小許容濃度との間を上記濃縮液の濃度範囲とするように構
成されている。
【0027】
(1)液体混合装置における流量と濃度との関係
液体混合装置における液体混合過程においては流量と濃度の関係は次式で求められる。

Q × B = Q1 × B1 + Q2 × B2

上記式において、
Q:全体流量 [Kg/Hr]
B:製品の仕上がり濃度 であり、
Suffix 1,2 はそれぞれ1液目、2液目を表す。
【0028】
食品関係の液体製品の製造の場合、一般的に2液目は希釈水であり B2 = O であることから、
Q × B = Q1 × B1 となる。

この場合、上記「全体流量 Q 」は製造されるべき液体製品の製造過程で決定され、また、仕上がり濃度は製造する製品の品質規格として一義的に定まる。
【0029】
一方、1液目である濃縮液の濃度は製造製品のバッチ毎に異なったものとなる。例えば、濃縮還元果汁飲料であれは、原料である凍結濃縮果汁を解凍しながら濃縮液貯槽に送るものであり、周囲濃度や事前解凍具合によって送液に必要となる希釈液の量が異なる。また、お茶系飲料であれば、茶葉の種類その他の要件で抽出された抽出液の濃度は異なる。
【0030】
(2)濃縮液の濃度の画定
本実施の形態に係る液体製品製造システムにあっては、混合装置の装置の性能上の制約として、上記1液及び2液の制御可能な流量範囲があらかじめ制限される。
例えば、10000Kg/Hr の機能をもつ混合機の場合、1液目の流量制御可能な範囲が 1000Kg/Hr 〜 7500Kg/Hr 、2液目が 2500Kg/Hr 〜 9000Kg/Hr のように混合装置の際御可能な最大流量及び最小流量が規制される。
【0031】
従って、先ず、当該液体混合装置に固有の、当該液体混合装置が制御可能な上下限値を設定し、次に、当該液体混合装置により製造されるべき製品を選択する事により、当該混合装置にあらかじめ製造品種毎に設定されている製品の仕上がり濃度、全体流量が決定され、その結果、その製品で許容される濃縮液の濃度範囲が次式により計算されることとなる。

B1max = QB ÷ Q1min
B1min = QB ÷ Q1max

ただし、
B1max :許可される濃縮液の最大濃度
B1min :許可される濃縮液の最小濃度
Q1max :濃縮液の制御可能最大流量
Q1min :濃縮液の制御可能最小濃度
【0032】
その結果、本実施の形態に係る液体製品製造システムにあっては、上記計算式により計算される B1max (許可される濃縮液の最大濃度)と B1min (許可される濃縮液の最小濃度)との間で濃縮液濃度範囲が画定されることから、この範囲内で濃度設定を行なえば良いこととなる。
【0033】
(3)従来の濃度範囲設定作業との対比
従来の「流量制御方式」「比率制御方式」「濃度フィードバック方式」に基づく液体混合装置にあっては、下記の手順で作業を行う事となる。

1. 濃縮液貯槽に濃縮液を入れる。
2. 貯槽内の濃度を測定する。
3. 濃縮液を規格内に仕上げるための調整水の量を計算し、追加する。
4. 貯槽内の濃度を測定する。
5. 規格内に入れば終了となり、範囲外の場合には3へ戻る。
6. 混合装置に送液する。
【0034】
これに対し、本実施の形態に係る液体製品製造システムにあっては、上記計算式により計算される B1max (許可される濃縮液の最大濃度)と B1min (許可される濃縮液の最小濃度)との間で濃縮液濃度範囲が画定されることから、この範囲内で濃度設定を行なえば良いものであり、上記 B1min 〜 B1max の範囲は、従来の様々な液体混合方法において、「濃縮液濃度が一定範囲内にあること」及び「一定濃度であること」とは異なり、圧倒的に広範囲に設定することができる。
【0035】
その結果、濃縮液を調合する際にはこの広い範囲に入ることを目標として調合すればよい。ここで、先に記した濃縮液の濃度決定の作業手順は下記のようになる。

1. 濃縮液貯蔵に濃縮液を入れる。
2. 貯槽内の濃度を測定する。
3. B1min 〜 B1max の範囲に入っていることを確認する。
4. 混合装置へ送液する。
【0036】
3.初期流量値計算機能
本実施の形態に係る液体製品製造システムにあっては、上記濃度範囲内における濃縮
液の実測値に基づき、上記濃縮液及び希釈液の初期流量値を決定し、上記初期流量値に
基づき、上記流量調節装置を制御して上記液体混合装置を駆動するように構成されてい
る。
即ち、上記初期流量値は、当該製品が有すべき濃度と液体原料全体の流量との関係式
に基づき、上記濃縮液の実測値により濃縮液の初期流量を求め、液体原料全体の流量から上記濃縮液の初期流量を減ずることにより希釈液の初期流量を算出するように構成されている。
本実施の形態に係る液体製品製造システムにあっては、前記「2.濃縮液の濃度範囲の画定」の作業において、濃縮液の濃度の実測値を測定した際に、その実測値としての濃度を混合装置の制御部に入力することにより、次式により初期流量を決定できるものである。
【0037】
Q11 = QB ÷ B11
Q21 = Q − Q11

だだし、Q11:1液(濃縮液)の初期流量、Q21:2液(希釈液)の初期流量、B11:濃縮液の測定濃度である。これらの値が混合装置を駆動する際の、夫々、濃縮液及び希釈液の初期流量の目標値となる。
【0038】
4.流量調整装置の初期値設定機能
(1)流量とバルブ開度との関係
本実施の形態に係る液体製品製造システムにあっては、液体混合装置に設けられた上記流量調節装置はバルブであると共に、上記流量調節装置は濃縮液用流量調節装置及び希釈液用流量調節装置とにより構成されている。従って、濃縮液用の流量調整バルブ及び希釈液用の流量調整バルブが設けられている。
即ち、液体混合装置には濃縮液及び希釈液を目的の流量に制御するための流量調整装置が設けられている。このような流量調整装置はバルブにより流量を制御するように構成される場合が多いが、バルブの開度により流量を調整する場合、あるバルブ開度の時に流れる流量は一定であるようにシステムを構成した場合には、「流量」及び「バルブ開度」の間での特性が得られる。
【0039】
この場合、実際に流量調節装置を設置した環境において、高さ、距離等の諸要素により変化するため、実測値としてのデータを採取することが望ましいが、上記「3.初期流量計算機能」の段階で任意に定まった流量に対応する実測データが準備されていない場合もある。また、様々な状態における実測データを全て採取し保存しておくことは非常に煩雑である。
そこで、混合装置側で各製造品種の濃縮液の制御可能な最大流量( Q1min )〜 濃縮液の制御可能な最小流量( Q1max )の間と、希釈液の制御可能な最大流量( Q2min )〜 希釈液の制御可能な最小流量( Q2max )の間において、任意の数点から十数点を実測データとしてサンプリングして登録し、あらかじめ、Q1n ・ C1n 、Q2n ・ C2n として「流量とバルブ開度との関係」をデータとして保存、登録しておく。
【0040】
但し、上記関係式において、
Q1n :1液(濃縮液)側の任意の流量
C1n :上記流量が流れている時の1液(濃縮液)側流量調節のためのバルブ開度
Q2n :2液(希釈液)側の任意の流量
C2n :上記流量が流れている時の2液(希釈液)側流量調節のためのバルブ開度
である。
【0041】
(2)流量調節装置の制御初期値設定
次に、本実施の形態に係る液体製品製造システムにあっては、濃縮液側の流量調節装置の制御初期値は、濃縮液の初期流量値に最も近接した初期流量値以上の流量値と濃縮液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値との差の値により、測定された濃縮液の初期流量値と濃縮液の初期流量値に最も近い初期流量値以下の流量値との差の値を除し、濃縮液の初期流量に最も近接した初期流量値以上の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値と濃縮液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値との差の値を乗じ、濃縮液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置の初期バルブ開度値を和すことにより求められるように構成されている。
【0042】
また、希釈液側の流量調節装置の制御初期値は、希釈液側の初期流量値に最も近接した初期流量値以上の流量値と希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値との差の値により、測定された希釈液の初期流量値と希釈液の初期流量値に最も近い初期流量値以下の流量値との差の値を除し、希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以上の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値と希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値との差の値を乗じ、希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置の初期バルブ開度値を和すことにより求められるように構成されている。
【0043】
即ち、上記「3.初期流量値計算機能」で求められた初期流量から、その流量に最も近い前後の「流量−バルブ開度データ」を用いて、濃縮液及び希釈液ごとに流量調節装置の初期値を求める。この場合、Q11 は1液(濃縮液)の初期流量、Q21 は2液(希釈液)の初期流量を表す。
【0044】
1 1液(濃縮液)側の流量調節装置の制御初期値( Q11 )

濃縮液の初期流量が、 Q1a < Q11 ≦ Q1b

但し、
Q1a:1液(濃縮液)の初期流量に最も近い初期流量以下の流量−バルブ開度データ
Q1b:1液(濃縮液)の初期流量に最も近い初期流量以上の流量−バルブ開度データであるとき、1液(濃縮液)の流量調節装置の初期値 C11 は、以下の式により求められる。

C11 =(( Q11 − Q1a )÷( Q1b − Q1a ))×( C1b − C1a )+ C1a

但し、
C1a :1液(濃縮液)の Q1a 時のバルブ開度データ
C1b :1液(濃縮液)の Q1b 時のバルブ開度データ
【0045】
2 2液(濃縮液)側の流量調節装置の制御初期値( Q21 )

濃縮液の初期流量が、 Q2a < Q21 ≦ Q2b
但し、
Q2a :1液(濃縮液)の初期流量に最も近い初期流量以下の流量−バルブ開度データ
Q2b :1液(濃縮液)の初期流量に最も近い初期流量以上の流量−バルブ開度データ
【0046】
であるとき、1液(濃縮液)の流量調節装置の初期値 C21 は、以下の式により求められる。

C21 =(( Q21 − Q2a )÷( Q2b − Q2a ))×( C21b − C2a )+ C2a
但し、
C2a :1液(濃縮液)の Q2a 時のバルブ開度データ
C2b :1液(濃縮液)の Q2b 時のバルブ開度データ

このようにして求められた初期値を、夫々、濃縮液側の流量調節装置及び希釈液側の流量調節装置に入力して運転することにより、混合装置は、運転開始時から規定流量を流すことができ、その結果、排出液を低減することができ、効率よく混合液の製造を行うことが出来る。
【0047】
5.濃度フィードバック制御
(1)フィードバック制御を行う理由
本実施の形態に係る液体製品製造システムにあっては、さらに、濃度フィードバック制御装置を有し、上記混合された液体に他の濃度の濃縮液を混合した場合であっても液体原料の混合液の濃度が一定になるように濃度のフィードバック制御を行うことができる。その趣旨は以下のとおりである。
即ち、上記「3.初期流量値計算機能」「4.流量調整装置の初期値設定機能」にお
いて計算された「初期流量」及び「流量調節装置の初期値」に基づいて流量制御を行っ
た場合には液体混合装置の制御を行うことが可能である。
【0048】
しかしながら、濃縮液の貯槽が製造量に対して充分ではない場合には複数の濃縮液貯
槽を切り替えて使用する場合がある。このような場合に、貯槽毎に異なった濃度の濃縮
液が貯留されていた場合には、貯槽を切り替えた後には混合液の濃度は変わってしまう
ことになる。
従って、このように濃縮液貯槽が切り替わり、その貯槽内の濃縮液の濃度が切り替わ
る以前の貯槽と異なった場合であっても混合後の混合液の濃度が一定になるように濃度フィードバック制御を行うものである。
【0049】
(2)フィードバック制御の内容

1. 制御余裕係数
濃度フィードバック制御が行われた場合の出力は0〜100%に対して

Qg =( Q1max − Q1min )× g

但し、g:制御余裕係数(数%〜10%)

である。
【0050】
この場合、上記式において「制御余裕係数」を考慮するのは、以下のような理由に基づく。
即ち、ある流量設定値を設定した際に、その流量になるように制御するPID制御器を構成する場合において、流量設定値の範囲を決定する場合を考慮する。
この場合に、PID制御器の出力 0〜100%に対して結果的に流れる流量の上限値を Qmax とし、下限値を Qmin とする。
その際、流量設定値として取ることの出来る値の範囲は Qmax 〜 Qmin と考えられるが、実際に制御する場合には設定値に対して上下に数%〜10%の余裕が無いと良好な制御ができないことが過去の経験から判明している。
例えば、設定値 Qset = Qmax とした場合、PID制御器で流量 Qset = Qmax を安定して維持することは難しいことから、制御余裕係数(%)を考慮して 制御可能範囲 > 設定値可能範囲 となるように設定値を取る必要がある。
従って、上記上限値 Qmax 及び下限値 Qmin に対して制御余裕係数を考慮する必要がある。
【0051】
2. フィードバック制御の内容
本実施の形態に係る液体製品製造システムにあっては、 Q1min + Qg 〜 Q1max − Qg の範囲内で濃縮液側流量設定値を、 Q2max − Qg 〜 Q2min + Qg の範囲内で希釈水側の流量設定値を変更するように制御する。

従って、このような濃度フィードバック制御が行われることにより、複数の濃縮液貯
槽を切り替えて使用し、貯槽毎に異なった濃度の濃縮液が貯留されていた場合であっても、貯槽を切り替えた後に混合液の濃度が変化してしまうという事態を防止することができる。
また、上記「3.初期流量値計算機能」で求められた初期流量が濃度フィードバック制御器の初期出力になるよう、初期出力の自動計算機能を持つものである。
【産業上の利用性】
【0052】
本発明に係る液体製品製造システムは、複数種類の液体を混合することにより液体製品を製造するシステムに広く適用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流量調節装置を有する液体混合装置を備え、上記液体混合装置により複数種類の液体を混合して液体製品を製造する液体製品製造システムにおいて、
液体製品の濃度を達成するために必要な液体の濃度範囲を画定し、上記濃度範囲内において設定された液体の濃度に基づき、上記複数種類の液体の初期流量値を決定し、上記初期流量値に基づき、上記流量調節装置を制御して上記液体混合装置を駆動することを特徴とする液体製品製造システム。
【請求項2】
上記複数の液体は濃縮液及び上記濃縮液を希釈するための希釈液であって、液体製品の濃度を達成するために必要な濃縮液の濃度範囲を画定し、上記濃度範囲内において濃縮液の濃度を設定することを特徴とする請求項1記載の液体製品製造システム。
【請求項3】
上記濃縮液の濃度範囲は、上記液体製品が有すべき濃度と液体の全
体の流量との関係式から上記液体混合装置の制御可能な最小流量値に基づき最大許容
濃度を求めると共に、当該液体製品が有すべき濃度と液体の全体流量の関係式から上記
液体混合装置の制御可能な最大流量値に基づき最小許容濃度を求め、上記最大許容濃度
と上記最小許容濃度との間で画定されることを特徴とする請求項2記載の液体製品製
造システム。
【請求項4】
上記濃度範囲内における濃縮液の実測値に基づき、上記濃縮液及び希
釈液の初期流量値を決定することを特徴とする請求項2及び3記載の液体製品製造
システム。
【請求項5】
上記初期流量値に基づき、上記流量調節装置を制御して上記液体混合装置を駆動する請求項4記載の液体製品製造システム。
【請求項6】
上記初期流量値は、当該製品が有すべき濃度と液体原料全体の流量との関係式に基づき、上記濃縮液の実測値により濃縮液の初期流量を求め、液体全体の流量から上記濃縮液の初期流量を減ずることにより希釈液の初期流量を算出することを特徴とする請求項4及び5記載の液体製品製造システム。
【請求項7】
上記流量調節装置はバルブであると共に、上記流量調節装置は濃縮液用流量調節装置及び希釈液用流量調節装置とにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の液体製品製造システム。
【請求項8】
濃縮液の初期流量値に最も近接した初期流量値以上の流量値と濃縮液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値との差の値により、濃縮液の初期流量値と濃縮液の初期流量値に最も近い初期流量値以下の流量値との差の値を除し、
濃縮液の初期流量に最も近接した初期流量以上の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値と濃縮液の初期流量値に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値との差の値を乗じ、
濃縮液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置の初期バルブ開度値を和すことにより上記濃縮液用流量調節装置の初期値を設定することを特徴とする請求項7記載の液体製品製造システム。
【請求項9】
希釈液の初期流量値に最も近接した初期流量値以上の流量値と希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値との差の値により、測定された希釈液の初期流量値と希釈液の初期流量値に最も近い初期流量値以下の流量値との差の値を除し、
希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以上の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値と希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置のバルブ開度値との差の値を乗じ、
希釈液の初期流量に最も近接した初期流量値以下の流量値に対応する流量調節装置の初期バルブ開度値を和すことにより上記希釈液用流量調節装置の初期値を設定することを特徴とする請求項7記載の液体製品製造システム。
【請求項10】
濃度フィードバック制御装置を有し、上記混合された液体に他の濃度の濃縮液を混合した場合であっても液体原料の混合液の濃度が一定になる濃度制御を行うように濃度のフィードバック制御を行うことを特徴とする請求項1記載の液体製品製造システム。
【請求項11】
上記濃度フィードバック制御時における濃度フィードバック出力値
は、上記液体混合装置の制御可能な最大流量値と最小流量値との差の値に、上記濃度
フィードバック制御装置の制御余裕係数を乗じた値である請求項10記載の液体製
品製造システム。
【請求項12】
上記濃度フィードバック制御装置は、濃縮液側の流量設定値を、上
記最小流量値に上記濃度フィードバック出力値を和した値と上記最大流量値から上記
濃度フィードバック出力値を減じた値との間で制御すると共に、希釈液側の流量設定
値を、上記最大流量値から上記濃度フィードバック出力値を減じた値と上記最小流量値
に上記濃度フィードバック出力値を加えた値との間で制御することを特徴とする請求
項11記載の液体製品製造システム。


【公開番号】特開2006−119945(P2006−119945A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307599(P2004−307599)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000157946)岩井機械工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】