説明

液化水素貯蔵供給設備

【課題】本発明は、内槽内の液化水素の液面の位置に依存することなく、内槽内の圧力を一定に保つための水素ガスの大気放散量を低減させて、内槽内に効率よく液化水素を充填可能な液化水素貯蔵供給設備を提供することを課題とする。
【解決手段】内槽51内に設けられ、下端33Aが内槽51の下部51Bに貯留された液化水素42−1に到達し、上端33Bが内槽51の上部51Aに配置され、上端33B及び下端33Aが開口された筒状部材33と、一方の端32Aが液化水素抜き出し用配管27の他方の端27Bと接続され、内槽51を貫通し、内槽51内の下部51Bに位置する液化水素42−1に浸漬された他方の端32Bから筒状部材33内にバブリングされた加圧用水素ガスを供給する第1の加圧ガス供給用配管32と、第1の加圧ガス供給用配管32に設けられ、加圧用水素ガスをバブリングするバブリング用加圧弁31と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化水素貯蔵供給設備に関するものであって、より詳しくはタンクローリーからの液化水素充填時における水素ガスの大気放散ロスを低減することの可能な液化水素貯蔵供給設備に関する。
【背景技術】
【0002】
水素の利用形態が液体である場合、現地にて水素ガスを液化することは、非常に大容量な場合を除き、設備の複雑度から非現実的である。この場合、液化水素貯槽を需要先近傍に設置した上で、液化水素貯蔵供給設備から払い出された液化水素を、そのまま需要先まで断熱配管にて供給する。
【0003】
また、水素の利用形態がガスである場合であって、使用量が極端に多い場合は、現地に水素製造装置を建設することが多い。また、使用量が比較的少ない場合には、カードルやトレーラー等の移動容器で供給することが多い。
【0004】
また、水素の使用量がこの中間にある場合、需要先近傍に液化水素貯槽(低温液化ガス貯槽)を有した液化水素貯蔵供給設備を設けることが行なわれている。
この場合、液化水素貯槽から払い出された液化水素は、送ガス蒸発器で気化され、配管により需要先に供給される。なお、液化水素貯槽から液化水素と水素ガスとを同時に供給する場合もある。
【0005】
液化窒素や、液化水素を含む低温液化ガス貯槽は、一般的に、低温液化ガスを貯蔵する内槽と、該内槽を収容する外槽と、を有した二重殻構造とされており、内槽と外槽との間は真空断熱空間とされている。また、一般的に、上記低温液化ガス貯槽は、自身の圧力と需要先の圧力との間に適正な圧力差を保つことで、内蔵液の抜き出しを行なう。
【0006】
また、需要先において液化水素或いは水素ガスを使用し、内槽内の液化水素が払い出されると、内槽内の液化水素の液面が低下して、内槽内に存在するガス相の空間が増大するため、内槽内の圧力が低下してしまう。
【0007】
このため、従来、内槽内の圧力低下を補償するため、液化水素貯槽では、内蔵液である液化水素を加圧蒸発器で蒸発させて水素ガスを生成し、該水素ガスを内槽内のガス相の最上部に導入することで内槽内の圧力を所望の圧力(一定の圧力)に保つことが行なわれている。
上記加圧蒸発器は、通常、大気や温水との熱交換を行なうことで、液化水素を蒸発させ、常温に近い温度とされた水素ガスを発生させる。
【0008】
液化水素は、0.7MPaGの圧力において飽和温度が約30Kと非常に低く、ガス相のうち、液化水素と接する部分(ガス相の最下部)の温度も液化水素の温度と同程度となる。
しかし、前述の加圧蒸発器を通った水素ガスは、300K程度の温度であることから、ガス相の最下部のガス密度の1/10程度の軽いガスがガス相の最上部に供給されることとなる。
【0009】
上記ガス密度の関係からは、自然対流によるガス相の攪拌は期待できず、ガス相の下部には高い密度のガスが安定して存在し、ガス相の上部には低い密度のガスが安定して存在することとなる。
【0010】
ただし、内槽からの液化水素の抜き出し速度が十分に遅い場合、すなわち、加圧蒸発器を介して供給される加圧ガスの流量が小さい場合には、前述の対流が期待できなくても、下部に残る液化水素による輻射伝熱により内槽の上部を構成する部材が冷却される。
このため、ガス相の上部に位置する比較的温度の高いガスも内槽の上部を構成する部材との対流熱伝達にて間接的に冷却される。これにより、ガス相内での自然対流が長時間掛けて継続するため、ガス相全体の冷却が期待できる。
【0011】
しかしながら、内槽からの液化水素の抜き出し速度が速い場合、すなわち、加圧蒸発器を介して供給される加圧ガスの流量が大きい場合には、液化水素による内槽の上部を構成する部材の輻射冷却を介したガス相の冷却が時間的に十分でない場合がある。
【0012】
ところで、内槽内の液化水素量がある一定量を下回ると、タンクローリーより新たな液化水素を内槽内に充填する。通常、内槽内に液化水素を充填する場合、内槽の下部に貯蔵された液相(液化水素)に液化水素を流し込むライン(配管)と、内槽のガス相の上部に液化水素を流し込むラインとの2系統を併用する。
【0013】
上記2系統のラインの使い分けは、理想的には、概して以下の通りである。液相に流し込むラインを使用して液化水素を供給すると、内槽内の液化水素の液面が徐々に上昇するため、内槽内のガス相が圧迫されることで内槽内の圧力が上昇する。
【0014】
一方、ガス相に流し込むラインを使用して液化水素を供給すると、内槽の上部に存在し、かつ液化水素との平衡温度よりも高温のガス相が、タンクローリーからの液化水素に触れて冷却されることで容積が収縮し、内槽内の圧力が低下することが期待できる。
【0015】
タンクローリーからの液化水素の供給が安定すれば、液相に流し込むラインとガス相に流し込むラインとの両系統をバランスよく使用して、内槽内の圧力を適正な範囲内で制御して、水素ガスを大気に放散することなく、液化水素の充填を行なうことができる。
【0016】
しかしながら、現実の運用においては、内槽内のガス相の温度が高い場合、ガス相に流しこむラインを使用開始してしばらくの時間は、相当量の水素ガスを大気放散せざるを得ない場合がある。
【0017】
これは、流し込まれる液化水素により、上部のガス相が冷却される効果よりも、内槽の上部に位置する比較的高温の水素ガスに触れることで、流し込まれた液化水素が蒸発する現象が勝る結果、大気放散を行なわないと内槽内の圧力が許容圧力の範囲を超過することに起因する。
【0018】
この傾向は、需要先に向けて内槽から液化水素を抜き出す速度が大きいほど、すなわち、加圧ガスの時間当たりの流量が大きいほど(言い換えれば、タンクローリーからの液化水素の充填頻度が多いほど)顕著に現れる。
【0019】
特許文献1には、加圧蒸発器出口からの加圧ガス配管を内槽頂部で開口し、加圧ガス配管を内槽内に貯蔵された液化水素に浸漬して加圧ガスを冷却し、冷却した加圧ガスを内槽内の上部に位置するガス相に供給する液化水素貯蔵供給設備が開示されている。
【0020】
また、特許文献2には、内槽の下部と上部とを接続した加圧蒸発ラインにおける加圧蒸発器の入口側に第一開閉弁を設け、第一開閉弁の入口側から分岐し加圧蒸発器の出口側に合流するバイパスラインを設け、バイパスラインに第二開閉弁を設け、液化水素収納槽内の上方における液化水素のガス相の温度を検出する温度検出器の検出温度が設定温度となるように、第一開閉弁及び第二開閉弁の弁開度を制御する液化水素貯蔵供給設備が開示されている。
【0021】
また、特許文献3には、液化水素を貯留する低温貯留槽を備え、この低温貯留槽から排出される液化水素を気化させる気化器が介装され、この気化器により気化された水素ガスを需要先に払出す水素ガス払出しラインが低温貯留槽に連結されてなる水素ガス供給設備において、水素ガスを供給する水素ガス容器と、この水素ガス容器に一端側が接続され、他端側が低温貯留槽の外殻と内殻とを気密可能に貫通すると共に、他端側の先端が低温貯留槽内の液相部に浸漬され、この液相部に水素ガスをバブル(気泡)として導入する水素ガス導入ラインとからなる水素ガス供給設備が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2011−001993号公報
【特許文献2】特開2011−001992号公報
【特許文献3】特開2007−32696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、特許文献1記載の液化水素貯蔵供給設備では、内槽内の液化水素の液面の位置が低い場合、液化水素に浸漬される加圧ガス配管の長さが短くなるため、加圧ガス配管を流れる加圧ガスを十分に冷却することができないという問題があった。
【0024】
また、特許文献2記載の液化水素貯蔵供給設備では、内槽内のガス相全体の熱容量が非常に大きいため、加圧蒸発器をバイパスするラインを設置し、液化水素を加圧ガスに混合することで内槽内のガス温度を制御しようとしても、温度制御を十分に行なうことは困難であり、また、内槽の加圧制御と干渉する恐れがあった。
【0025】
つまり、上記特許文献1,2記載の設備では、タンクローリーから内槽内に液化水素を充填する際、内槽内の圧力を一定に保つための水素ガスの大気放散量を低減させて、内槽内に効率よく液化水素を充填することが困難であった。
【0026】
また、特許文献3に記載の水素ガス供給設備では、液化水素(液相部)内に水素ガスをバブル(気泡)として導入しているのみであり、気泡とされた水素ガスにより、内槽内の上部に位置するガス相を十分に冷却することが困難であった。このため、タンクローリーから内槽内に液化水素を充填する際、内槽内の圧力を一定に保つための水素ガスの大気放散量を低減させて、内槽内に効率よく液化水素を充填することが困難であった。
【0027】
そこで、本発明は、内槽内の液化水素の液面の位置に依存することなく、内槽内の圧力を一定に保つための水素ガスの大気放散量を低減させて、内槽内に効率よく液化水素を充填することのできる液化水素貯蔵供給設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明によれば、液化水素を貯留する内槽、該内槽を収容する外槽、及び前記内槽と前記外槽との間に設けられた真空断熱空間よりなる真空断熱二重殻貯槽を有し、前記液化水素あるいは水素ガスを需要先に供給する液化水素貯蔵供給設備であって、一方の端が前記内槽の下部と接続され、前記内槽の下部から前記液化水素を抜き出す液化水素抜き出し用配管と、前記液化水素抜き出し用配管に設けられ、前記液化水素抜き出し用配管を流れる前記液化水素を蒸発させることで、加圧用水素ガスを発生させる加圧蒸発器と、前記内槽内に設けられ、下端が前記内槽の下部に貯留された前記液化水素に到達し、上端が前記内槽の上部に配置され、前記上端及び前記下端が開口された筒状部材と、一方の端が前記液化水素抜き出し用配管の他方の端と接続され、前記内槽を貫通し、前記内槽内の下部に位置する前記液化水素に浸漬された他方の端から前記筒状部材内にバブリングされた前記加圧用水素ガスを供給する第1の加圧ガス供給用配管と、前記第1の加圧ガス供給用配管に設けられ、前記加圧用水素ガスをバブリングするバブリング用加圧弁と、前記内槽内のガス相の圧力に基づいて、前記バブリング用加圧弁の開度を調節する制御部と、を有することを特徴とする液化水素貯蔵供給設備が提供される。
【0029】
また、請求項2に係る発明によれば、前記バブリング用加圧弁は、前記内槽内のガス相の圧力が第1の設定圧力よりも低下した際に、前記制御部により開かれ、前記第1の加圧ガス供給用配管のうち、前記バブリング用加圧弁と前記加圧蒸発器との間に位置する部分から分岐され、かつ前記内槽の上部と接続された第2の加圧ガス供給用配管と、前記第2の加圧ガス供給用配管に設けられ、前記内槽内のガス相の圧力が前記第1の設定圧力よりも低い第2の設定圧力を下回った際、前記制御部により開かれる加圧弁と、を有することを特徴とする請求項1記載の液化水素貯蔵供給設備が提供される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の液化水素貯蔵供給設備によれば、液化水素抜き出し用配管に設けられ、液化水素抜き出し用配管を流れる液化水素を蒸発させることで、加圧用水素ガスを発生させる加圧蒸発器と、内槽内に設けられ、下端が内槽の下部に貯留された液化水素に到達し、上端が内槽の上部に配置され、上端及び下端が開口された筒状部材と、一方の端が液化水素抜き出し用配管の他方の端と接続され、内槽を貫通し、内槽内の下部に位置する液化水素に浸漬された他方の端から筒状部材内にバブリングされた加圧用水素ガスを供給する第1の加圧ガス供給用配管と、第1の加圧ガス供給用配管に設けられ、加圧用水素ガスをバブリングするバブリング用加圧弁と、内槽内のガス相の圧力に基づいて、バブリング用加圧弁の開度を調節する制御部と、を有することにより、液化水素中にバブリングされ、かつ液化水素によって冷却された加圧用水素ガスを、筒状部材により、内槽の上部に位置するガス相(液化水素に接するガス相よりも温度の高いガス相)に案内することが可能となる。
【0031】
また、内槽内のガス相の圧力が第1の設定圧力よりも低下した際に開かれるバブリング用加圧弁と、内槽内のガス相の圧力が第1の設定圧力よりも低い第2の設定圧力を下回った際に開かれる加圧弁とを設け、それぞれ異なる圧力設定値に対して制御を行うことにより、内槽内のガス相の急激な圧力変動にも対応可能になると共に、バブリング加圧弁から供給された加圧用水素ガスを液化水素によって冷却し、冷却された加圧用水素ガスを筒状部材により、内槽の上部に位置するガス相に案内することが可能となる。
【0032】
これにより、タンクローリーから内槽内に液化水素を充填する前段階において、内槽内の上部に位置するガス相(液化水素に接するガス相よりも温度の高いガス相)を十分に冷却することが可能となる。
【0033】
また、内槽内の液化水素の液面の位置が低い場合でも、加圧用水素ガスをバブリングすることで、内槽内の液化水素を用いて、バブリングされた加圧用水素ガスを容易に冷却することが可能となる。よって、内槽内の液化水素の液面の位置が低い場合でも、内槽内の上部に位置するガス相を十分に冷却することが可能となる。
【0034】
したがって、内槽内の液化水素の液面の位置に依存することなく、内槽内の圧力を一定に保つための水素ガスの大気放散量を低減させて、内槽内に効率よく液化水素を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る液化水素貯蔵供給設備の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る液化水素貯蔵供給設備の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る液化水素貯蔵供給設備の概略構成を示す図である。
【図4】図3に示す液化水素貯蔵供給設備に設けられた需要先用液化水素抜き出し配管及び第1の加圧ガス供給用配管の概略構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の第4の実施形態に係る液化水素貯蔵供給設備の概略構成を示す図である。
【図6】本発明の第5の実施形態に係る液化水素貯蔵供給設備の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る液化水素貯蔵供給設備の概略構成を示す図である。
図1を参照するに、第1の実施形態の液化水素貯蔵供給設備10は、真空断熱二重殻貯槽11と、需要先用液化水素抜き出し配管13と、液化水素供給ライン14と、水素ガス供給ライン16と、送ガス蒸発器17と、圧力逃がしライン19と、圧力逃がし弁22と、制御部25と、液化水素抜き出し用配管27と、加圧蒸発器28と、バブリング用加圧弁31と、第1の加圧ガス供給用配管32と、筒状部材33と、第1の接続部35と、分岐ライン36と、下部充填弁38と、液化水素上部充填用配管39と、上部充填弁41と、を有する。
【0037】
液化水素貯蔵供給設備10は、液化水素42−1を液化水素需要先に供給、或いは、液化水素42−1を蒸発させた際に発生する水素ガスを水素ガス需要先に供給する設備である。
真空断熱二重殻貯槽11は、液化水素42−1を貯留する内槽51、内槽51を収容する外槽52、及び内槽51と外槽52との間に設けられた真空断熱空間53により構成されている。
【0038】
需要先用液化水素抜き出し用配管13は、内槽51に貯留された液化水素42−1を真空断熱二重殻貯槽11の外部に抜き出すための配管である。需要先用液化水素抜き出し用配管13は、内槽51の上部51Aを貫通すると共に、液化水素42−1が貯留された内槽51の下部51Bに延在している。
【0039】
需要先用液化水素抜き出し用配管13は、真空断熱空間53において、内槽51の上部51Aから外槽52の下部52Aに引き回されており、かつ外槽52の下部52Aを貫通している。
需要先用液化水素抜き出し用配管13は、内槽51内に貯留された液化水素42−1に浸漬され、かつ下部51Bに位置する液化水素42−1を抜き出す液化水素抜き出し口13Aと、外槽52の外側に配置された液化水素供給口13Bと、を有する。
【0040】
液化水素供給ライン14は、一端が液化水素供給口13Bと接続され、他端が液化水素需要先と接続されている。需要先用液化水素抜き出し用配管13により内槽51から抜き出された液化水素42−1は、液化水素供給ライン14を介して、液化水素需要先に供給される。
【0041】
水素ガス供給ライン16は、一端が液化水素供給口13Bと接続され、他端が水素ガス需要先と接続されている。
送ガス蒸発器17は、水素ガス供給ライン16に設けられている。送ガス蒸発器17は、内槽51内から抜き出され、かつ水素ガス供給ライン16を流れる液化水素42−1を蒸発させることで、水素ガスを発生させる。該水素ガスは、水素ガス供給ライン16を介して、水素ガス充填先に供給される。
【0042】
圧力逃がしライン19は、一方の端が内槽51の上部51Aと接続され、他方の端が大気放散用の機器、例えばベントスタック等と接続されている。
圧力逃がし弁22は、圧力逃がしライン19に設けられており、制御部25と電気的に接続されている。圧力逃がし弁22は、内槽51内の圧力が所定の閾値を超えたと制御部25が検知した際、制御部25により開かれる。これにより、圧力逃がしライン19を介して、内槽51内に存在する水素ガスを大気放散する。
【0043】
制御部25は、PIC(Pressure Indicator Controller)であり、圧力逃がし弁22及びバブリング用加圧弁31と電気的に接続されている。また、制御部25は、圧力逃がしライン19内の圧力を検知することで、間接的に、内槽51内の圧力を検知している。
制御部25は、内槽51内のガス相の圧力に応じて、圧力逃がし弁22及びバブリング用加圧弁31の開度を制御(調節)する。
【0044】
液化水素抜き出し用配管27は、一方の端27Aが、内槽51内に貯留された液化水素42−1を真空断熱二重殻貯槽11の外部に抜き出し可能な状態で、内槽51の下部51Bと接続されている。
第1の接続部35は、分岐ライン36の一端に設けられておりフレキホース46の一方の端が接続される。分岐ライン36の他方の端は、下部充填弁38を介して、液化水素抜き出し用配管27と接続されている。
【0045】
つまり、液化水素抜き出し用配管27の一部は、タンクローリー43に貯留された液化水素42−2を内槽51内に充填するための液化水素下部充填用配管として機能する。
フレキホース46は、第1の接続部35とタンクローリー43に設けられた第2の接続部42とを接続する液化水素チャージ用ホースである。
【0046】
内槽51内の液化水素42−1の液面42a−1の位置が低下した際、フレキホース46を介して、タンクローリー43内に充填された液化水素42−2が第1の接続部35を介して内槽51内に導入される。
液化水素42−2は、液化水素42−1と同じ種類の液化水素である。本実施形態では、説明の便宜上、液化水素42−1と液化水素42−2とを用いて以下の説明を行う。
【0047】
下部充填弁38は、内槽51内の液化水素42−1の液面42a−1が低下し、フレキホース46を介して、第1の接続部35とタンクローリー43とが接続された状態で開くことにより、分岐ライン36及び液化水素抜き出し用配管27を介して、内槽51の下部51Bから内槽51内にタンクローリー43内の液化水素42−2を充填する。
【0048】
液化水素上部充填用配管39は、一方の端が分岐ライン36と接続されており、他方の端が内槽51の上部51Aと接続されている。
液化水素上部充填用配管39は、内槽51内の液化水素42−1の液面42a−1が低下し、フレキホース46により第1の接続部35とタンクローリー43とが接続され、上部充填弁41を開けて、内槽51の上部51Aから内槽51内に液化水素42−2を充填する際に使用される。
【0049】
下部充填弁38及び上部充填弁41は、タンクローリー43内の液化水素42−2を内槽51に充填する際、ガス相の圧力が所望の圧力となるように、それぞれの開度が調整される。
【0050】
加圧蒸発器28は、液化水素抜き出し用配管27の他方の端27B側に設けられている。加圧蒸発器28は、液化水素抜き出し用配管27が内槽51の下部51Bから液化水素42−1を抜き出した際、液化水素抜き出し用配管27内を流れる液化水素42−1を蒸発させることで、加圧用水素ガスを発生させる。
【0051】
バブリング用加圧弁31は、液化水素抜き出し用配管27と接続された第1の加圧ガス供給用配管32に設けられている。バブリング用加圧弁31は、制御部25と電気的に接続されている。バブリング用加圧弁31は、内槽51内のガス相の圧力が第1の設定圧力よりも低下した際に、制御部25により開かれることで、第1の加圧ガス供給用配管32を介して加圧用水素ガスを液化水素中にバブリングする。この段階でのバブリングされる加圧用水素ガスの温度は、大気温度(300K近傍の温度)程度である。
【0052】
第1の加圧ガス供給用配管32は、一方の端32Aが液化水素抜き出し用配管27の他方の端27Bと接続されている。また、第1の加圧ガス供給用配管32は、他方の端32Bが内槽51の下部51Bを貫通して、内槽51内の下部51Bに延在しながら、内槽51内の下部51Bに位置する液化水素42−1に浸漬された開口を有する。なお、第1の加圧ガス供給用配管32の他方の端32Bは、筒状部材33の下端33A内に収容されており、筒状部材33内にバブリングされた加圧用水素ガスを供給する。そして、筒状部材33内にバブリングされた加圧用水素ガスは、筒状部材33内の液化水素42−1との直接熱交換により冷却される。
【0053】
第1の加圧ガス供給用配管32の他方の端32Bは、図1に示す状態において、逆U字型形状(U字型を上下反転させた形状)とされている。
このように、第1の加圧ガス供給用配管32の他方の端32Bを逆U字型形状とすることにより液シールを形成し、第1の加圧ガス供給用配管32内に液化水素42−1が流入することを防止できる。
【0054】
また、第1の加圧ガス供給用配管32内の圧力は、内槽51内の液化水素42−1の消費による長時間に亘った圧力変化と、第1の加圧ガス供給用配管32の他方の端32Bでの液化水素42−1中における加圧用水素ガスの供給時の脈動に起因する短周期での圧力変化とが存在する。このため、バブリング用加圧弁31の開度は、圧力逃がしライン19に設けた圧力計、或いは、内槽51内に設けた圧力計に基づいて行うとよい。
なお、上記構成とされた液化水素抜き出し用配管27及び第1の加圧ガス供給用配管32は、実際には、連続する1つの配管であり、2つの配管に分離されていない。
【0055】
筒状部材33は、内槽51内に設けられ、下端33Aが開口された状態で内槽51の下部51Bに貯留された液化水素42−1に浸漬され、上端33Bが内槽51の上部51A(内槽51内の上部51A側に位置する空間)に開口されている。
筒状部材33の下端33Aは、第1の加圧ガス供給用配管32の他方の端32Bを収容しているので、バブリングされた加圧用水素ガスを、筒状部材33内に位置する液化水素42−1に確実に供給することができ、該液化水素42−1により冷却された加圧用水素ガスは、加圧用水素ガスを冷却することで蒸発した水素ガス共々、筒状部材33のガイドにより、内槽51の上部51Aに位置するガス相(液化水素42−1に接するガス相よりも温度の高いガス相)に案内される。
【0056】
上記構成とされた筒状部材33の材料としては、液化水素温度で強度を有するものであれば、熱伝導性等の物性には特段の制約はない。具体的には、筒状部材33の材料としては、例えば、アルミニウムやステンレス鋼等を用いることができる。
また、筒状部材33は、図示してはいないが内槽51の内壁に支持されている。
【0057】
このように、第1の実施形態の液化水素貯蔵供給設備によれば、内槽51内のガス相の圧力に基づいて制御部25により開度を調節され、バブリング用加圧弁31を経て第1の加圧ガス供給用配管32を介して供給される加圧用水素ガスを、下端33Aが内槽51の下部51Bに貯留された液化水素42−1に浸漬され、かつ上端33Bが内槽51の上部51Aに開口された筒状部材33内に、バブリングすることにより液化水素42−1によって冷却し、内槽51の上部51Aに位置するガス相(液化水素42−1に接するガス相よりも温度の高いガス相)に案内することが可能となる。
これにより、タンクローリー43から内槽51内に液化水素42−2を充填する前段階において、内槽51内の上部51Aに位置するガス相を十分に冷却することが可能となる。
【0058】
また、内槽51内の液化水素42−1の液面42a−1の位置が低い場合でも、加圧用水素ガスを筒状部材33内の下端33Aにバブリングすることで、加圧用水素ガスを冷却することで蒸発した水素ガス共々、筒状部材33のガイドにより、内槽51の上部51Aに案内されるので、内槽51内の液化水素42−1の液面42a−1の位置が低い場合でも、内槽51内の上部51Aに位置するガス相を十分に冷却することが可能となる。
【0059】
したがって、内槽51内の液化水素42−1の液面42a−1の位置に依存することなく、内槽51内の圧力を一定に保つための水素ガスの大気放散量を低減させて、内槽51内に効率よく液化水素42−2を充填することができる。
【0060】
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態に係る液化水素貯蔵供給設備の概略構成を示す図である。図2において、図1に示す第1の実施形態の液化水素貯蔵供給設備10と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0061】
図2を参照するに、第2の実施形態の液化水素貯蔵供給設備60は、第1の実施形態の液化水素貯蔵供給設備10の構成に、さらに第2の加圧ガス供給用配管61及び加圧弁63を設け、圧力逃がしライン19を第2の加圧ガス供給用配管61に接続した以外は、液化水素貯蔵供給設備10と同様に構成される。
【0062】
第2の加圧ガス供給用配管61は、一方の端が、第1の加圧ガス供給用配管32のうち、バブリング用加圧弁31の一次側に位置する部分と接続され、他方の端が内槽51の上部51Aと接続されている。
【0063】
加圧弁63は、第2の加圧ガス供給用配管61から圧力逃がしライン19が分岐する位置と、第1の加圧ガス供給用配管32と第2の加圧ガス供給用配管61との接続位置と、の間に位置する第2の加圧ガス供給用配管61に設けられている。
加圧弁63は、内槽51内のガス相の圧力を検知する制御部25と電気的に接続されており、制御部25により制御される。
【0064】
具体的には、加圧弁63は、内槽51内のガス相の圧力が第1の設定圧力(バブリング用加圧弁31を開く際の基準となる圧力)よりも低い第2の設定圧力を下回った際、制御部25により開かれる。
つまり、第2の実施形態の液化水素貯蔵供給設備60は、異なる設定圧力で動作する2つのバルブ(具体的には、バブリング用加圧弁31及び加圧弁63)を有する。
【0065】
第2の実施形態の液化水素貯蔵供給設備60では、内槽51内のガス相の圧力が十分であって、加圧蒸発器28が動作していない状態から、内槽51内のガス相の圧力が第1の設定圧力まで低下すると、制御部25により、バブリング用加圧弁31が開かれ、第1の加圧ガス供給用配管32により、筒状部材33内に位置する液化水素42−1にバブリングされた加圧用水素ガスが供給される。これにより、内槽51内の上部51Aのガス相が冷却されながら加圧される。
【0066】
次いで、上記加圧を実施した後も内槽51内のガス相の圧力が低下して、内槽51内のガス相の圧力が第2の設定圧力に到達すると、加圧弁63を介して、内槽51内の上部51Aに常温の加圧用水素ガスを供給することで、内槽51内の上部51Aのガス相を加圧する。
【0067】
第2の実施形態の液化水素貯蔵供給設備によれば、一方の端が、第1の加圧ガス供給用配管32のうち、バブリング用加圧弁31の一次側に位置する部分と接続され、他方の端が内槽51の上部51Aと接続された第2の加圧ガス供給用配管61と、第2の加圧ガス供給用配管61に設けられ、内槽51内のガス相の圧力が、バブリング用加圧弁31が開かれる第1の設定圧力よりも低い第2の設定圧力を下回った際、制御部25により開かれる加圧弁63と、を有することにより、バブリングされた加圧用水素ガスにより内槽51内の上部51Aのガス相を冷却しながら加圧される内槽51内のガス相の圧力が第2の設定圧力に到達した際、加圧弁63を介して、内槽51内の上部51Aに常温の加圧用水素ガスを供給して、内槽51内の上部51Aのガス相を加圧することが可能となる。
【0068】
したがって、それぞれ異なる圧力設定値を有したバブリング用加圧弁31及び加圧弁63を設け、該異なる圧力設定値に対してバブリング用加圧弁31及び加圧弁63を制御することにより、内槽内51のガス相の急激な圧力変動にも対応可能になると共に、バブリング加圧弁31から供給された加圧用水素ガスを液化水素42−1によって冷却し、冷却された加圧用水素ガスを筒状部材33により、内槽51の上部51Aに位置するガス相に案内することが可能となるため、内槽51内の液化水素42−1の液面42a−1の位置に依存することなく、内槽51内の圧力を一定に保つための水素ガスの大気放散量を低減させて、内槽51内に効率よく液化水素42−2を充填することができる。
【0069】
(第3の実施形態)
図3は、本発明の第3の実施形態に係る液化水素貯蔵供給設備の概略構成を示す図である。図3において、図1に示す第1の実施形態の液化水素貯蔵供給設備10と同一構成部分には、同一符号を付す。また、図3では、需要先用液化水素抜き出し配管13により内槽51内の液化水素42−1を抜き出している状態を模式的に図示している。
つまり、図3は、需要先用液化水素抜き出し配管13内が液化水素42−1で満たされた状態を図示している。さらに、図3では、第3の実施形態の液化水素貯蔵供給設備70を構成する第3の加圧ガス供給用配管72に設けられた伸縮部72Cの図示を省略する。
【0070】
図3を参照するに、第3の実施形態の液化水素貯蔵供給設備70は、第1の実施形態の液化水素貯蔵供給設備10に設けられたバブリング用加圧弁31及び第1の加圧ガス供給用配管32の替わりに、加圧弁71及び第3の加圧ガス供給用配管72を設け、需要先用液化水素抜き出し配管13のうち内槽51内に配設された一部が二重管で構成され、液化水素貯蔵供給設備10に設けられた筒状部材33を構成要素から除いた以外は、液化水素貯蔵供給設備10と同様に構成される。
【0071】
図4は、図3に示す液化水素貯蔵供給設備に設けられた需要先用液化水素抜き出し配管13及び第3の加圧ガス供給用配管72の概略構成を示す斜視図である。図4において、図3に示す構造体と同一構成部分には同一符号を付す。
【0072】
図3及び図4を参照するに、第3の加圧ガス供給用配管72は、一方の端72Aと、他方の端72Bと、伸縮部72Cと、を有する。
また、第3の加圧ガス供給用配管72は、一方の端72Aが液化水素抜き出し用配管27の他方の端27Bと接続され、内槽51の下部51Bを貫通すると共に、需要先用液化水素抜き出し配管13内を2重配管構造で内槽51の上部51Aに延在し、他方の端72Bが、需要先用液化水素抜き出し配管13の側壁を気密に貫通後、内槽51の上部51Aに開口している。
【0073】
内槽51の下部51Bを貫通して配設された第3の加圧ガス供給用配管72の外径は、需要先用液化水素抜き出し配管13の内径よりも小さくなるように構成されており、第3の加圧ガス供給用配管72のうち、液化水素抜き出し口13Aから第3の加圧ガス供給用配管72の他方の端72Bの貫通部までは、需要先用液化水素抜き出し配管13内に収容されている。
【0074】
第3の加圧ガス供給用配管72の他方の端72Bは、L字形状とされており、需要先用液化水素抜き出し配管13の側壁のうち、内槽51の上部51Aに位置する部分を貫通している。これにより、他方の端72Bは、内槽51内の上部51Aに位置するガス相に露出されている。
【0075】
また、他方の端72Bは、需要先用液化水素抜き出し配管13により、内槽51内の液化水素42−1を抜き出している状態において、需要先用液化水素抜き出し配管13内を満たす液化水素42−1により、加圧弁71を経由した加圧用水素ガスを冷却し、該冷却された加圧用水素ガスを内槽51内の上部51Aに供給する。
このため、加圧弁71を経由した加圧用水素ガスの冷却が、内槽51内に貯留された液化水素42−1の液面42a−1の位置に依存することはない。
【0076】
伸縮部72Cは、第3の加圧ガス供給用配管72のうち、内槽51の下部51Bと他方の端72Bとの間に位置する部分に設けられている。伸縮部72Cは、伸縮継手であり蛇腹形状とされている。これにより、内槽51の下部51Bを貫通して配設された第3の加圧ガス供給用配管72は、該第3の加圧ガス供給用配管72の軸方向(鉛直方向)に伸縮可能な構成とされている。
【0077】
このように、需要先用液化水素抜き出し配管13内に収容された第3の加圧ガス供給用配管72に、第3の加圧ガス供給用配管72の軸方向(鉛直方向)に伸縮可能な伸縮部72Cを設けることにより、内槽51の上部51Aに固定された需要先用液化水素抜き出し配管13、及び内槽51の下部51Bに固定された第3の加圧ガス供給用配管72の相互の熱収縮を緩和することが可能となるので、該熱収縮に起因する需要先用液化水素抜き出し配管13及び第3の加圧ガス供給用配管72の破損を防止できる。
【0078】
第3の実施形態の液化水素貯蔵供給設備によれば、一方の端72Aが液化水素抜き出し用配管27の他方の端27Bと接続され、内槽51を貫通し、内槽51内の上部51Aに延在し、他方の端72Bを除いた部分が需要先用液化水素抜き出し配管13内に収容され、他方の端72Bが需要先用液化水素抜き出し配管13の側壁を貫通する第3の加圧ガス供給用配管72と、第3の加圧ガス供給用配管72に設けられた加圧弁71と、を設けることにより、需要先用液化水素抜き出し配管13を使用した内槽51内の液化水素42−1の抜き出し時において、需要先用液化水素抜き出し配管13内を満たす液化水素42−1により加圧弁71を経由した加圧用水素ガスを冷却し、該冷却された加圧用水素ガスを内槽51内の上部51Aに供給することで、内槽51内の上部51Aに位置するガス相を冷却して、加圧することが可能となる。
【0079】
また、加圧弁71を介して供給される加圧用水素ガスの冷却に、需要先用液化水素抜き出し配管13内を満たす液化水素42−1の冷熱を用いることで、内槽51内に貯留された液化水素42−1の液面42a−1の位置に依存することなく、内槽51内の上部51Aに位置するガス相を冷却して、加圧することが可能となる。
【0080】
つまり、内槽51内の液化水素42−1の液面42a−1の位置に依存することなく、内槽51内の圧力を一定に保つための水素ガスの大気放散量を低減させて、内槽51内に効率よく液化水素42−2を充填することができる。
【0081】
なお、第3の実施形態では、需要先用液化水素抜き出し配管13の内部に、第3の加圧ガス供給用配管72を配置した場合を例に挙げて説明したが、第3の加圧ガス供給用配管72の内部に需要先用液化水素抜き出し配管13を配置するように構成してもよい。
【0082】
この場合、第3の加圧ガス供給用配管72と需要先用液化水素抜き出し配管13との間に形成される空間を流れる加圧用水素ガスを、需要先用液化水素抜き出し配管13内を満たす液化水素42−1により冷却することが可能となるので、第3の実施形態の液化水素貯蔵供給設備70と同様な効果を得ることができる。
【0083】
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態に係る液化水素貯蔵供給設備の概略構成を示す図である。図5において、図2に示す第2の実施形態の液化水素貯蔵供給設備60と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0084】
図5を参照するに、第4の実施形態の液化水素貯蔵供給設備80は、第2の実施形態の液化水素貯蔵供給設備60に設けられた第2の加圧ガス供給用配管61、第1の加圧ガス供給用配管32、及びバブリング用加圧弁31の替わりに、第4の加圧ガス供給用配管81、自然循環用配管82、及び自然循環調節弁84を設け、液化水素貯蔵供給設備10に設けられた筒状部材33を構成要素から除いた以外は、液化水素貯蔵供給設備60と同様に構成される。
【0085】
第4の加圧ガス供給用配管81は、一方の端が液化水素抜き出し用配管27の他方の端27Bと接続されており、他方の端が内槽51の上部51Aを貫通している。第4の加圧ガス供給用配管81には、加圧弁63が設けられている。また、第4の加圧ガス供給用配管81の二次側には、圧力逃がしライン19が分岐されている。
【0086】
自然循環用配管82は、液化水素抜き出し用配管27のうち、液化水素抜き出し用配管27の一方の端27Aと加圧蒸発器28との間に位置する部分から分岐されている。
自然循環用配管82は、内槽51の下部51Bを貫通すると共に、内槽51内をほぼ垂直に立ち上がり内槽の上部51Aに延在している。これにより、自然循環用配管82の一部は、内槽51内に貯留された液化水素42−1に浸漬されている。
自然循環用配管82の先端部82Aは、内槽51内の上部51Aのガス相に開口されている。
【0087】
自然循環調節弁84は、自然循環用配管82に設けられている。自然循環調節弁84は、制御部25と電気的に接続されており、内槽51内のガス相の圧力が第3の設定圧力よりも低下した際に開かれ、第3の設定圧力よりも低い第4の設定圧力を下回ったときに、加圧弁63が制御部25により開かれる。なお、内槽51内のガス相の圧力が、第4の設定圧力よりもさらに低い第5の設定圧力を下回ったとき、自然循環調節弁84は制御部25により閉じられるように構成してもよい。
つまり、第4の実施形態の液化水素貯蔵供給設備80は、異なる設定圧力とされた自然循環調節弁84及び加圧弁63を有する。
【0088】
第4の実施形態の液化水素貯蔵供給設備80では、内槽51内の下部51Bから抜き出した液化水素42−1を液化水素抜き出し用配管27から自然循環用配管82に分岐させ、制御部25からの指令に基づき、自然循環調節弁84により小さな侵入熱を液化水素42−1に付与し、自然循環用配管82の先端部82Aから気液二相の水素を供給することで内槽51内の上部51Aを冷却しながら加圧すると共に、内槽51内から抜き出した液化水素42−1を加圧蒸発器28で蒸発させ、加圧弁63及び第2の加圧ガス供給用配管81を介して、内槽51内の上部51Aに位置するガス相にそれぞれ異なる設定圧力で制御されながら、気液二相の水素と常温の加圧用水素ガスを供給する。
【0089】
ここで、自然循環調節弁84を開にすると、自然循環用配管82内が液化水素42−1で満たされる。このとき、内槽51内の圧力に加え、その高低差分の液ヘッドが自然循環調節弁84付近に作用する。
この状態で、自然循環調節弁84本体あるいは該弁の二次側近傍に小さな侵入熱を与えると、液化水素42−1の一部が気化して、液相及びガス相よりなる二相流となり、見かけ上の流体密度は、液化水素42−1の密度よりも小さくなる。この結果、自然循環調節弁84の二次側に作用する液ヘッドは、自然循環調節弁84の一次側に作用する液ヘッドよりも小さくなる。
【0090】
したがって、内槽51内から抜き出された液化水素42−1は、自然循環調節弁84を経由し、自然循環調節弁84の前段に位置する自然循環用配管82に導かれ、自然循環用配管82の先端部82Aにより、内槽51内の上部51Aに位置するガス相にシャワー状に散布される。つまり、液化水素42−1は、自然循環(ガスリフトポンプ)により、内槽51内の上部51Aに位置するガス相を冷却しながら内槽51内を加圧する。
自然循環する液化水素42−1の量は、自然循環調節弁84の前後にかかる液ヘッドの差と、循環系の圧力損失がバランスする条件とで決定される。
【0091】
また、自然循環用配管82の先端部82Aから内槽51内の上部51Aに位置するガス相に、シャワー状に散布された気液二相の水素は、液化水素42−1と略同じ30Kレベルの極低温とされているので、内槽51内の上部51Aのガス相を冷却しながら、加圧を行なうことが可能となる。
【0092】
したがって、内槽51内の液化水素42−1の液面42a−1の位置に依存することなく、内槽51内の圧力を一定に保つための水素ガスの大気放散量を低減させて、内槽51内に効率よく液化水素42−2を充填することができる。
【0093】
また、内槽51内のガス相の圧力が低下して、該圧力が第3の設定圧力に到達すると、まずは、自然循環調節弁84を利用した加圧が開始される。次いで、該加圧を実施後、内槽51内のガス相の圧力がさらに低下して、該圧力が第4の設定圧力に到達すると、加圧弁63が開かれ、加圧蒸発器28を利用した加圧が行なわれる。さらに内槽51内のガス相の圧力がさらに低下して、該圧力が第5の設定圧力に到達すると、自然循環調節弁84は閉じられ、加圧蒸発器28を利用した加圧のみが行なわれる。
【0094】
(第5の実施形態)
図6は、本発明の第5の実施形態に係る液化水素貯蔵供給設備の概略構成を示す図である。図6において、図2に示す第2の実施形態の液化水素貯蔵供給設備60と同一構成部分には、同一符号を付す。
【0095】
図6を参照するに、第5の実施形態の液化水素貯蔵供給設備90は、第2の実施形態の液化水素貯蔵供給設備60に設けられたバブリング用加圧弁31、第1の加圧ガス供給用配管32、及び筒状部材33の替わりに、バイパスライン91、加圧ガス温度調節弁92、及び制御部93を設けた以外は、液化水素貯蔵供給設備60と同様に構成される。
【0096】
バイパスライン91は、液化水素抜き出し用配管27により抜き出された液化水素42−1が加圧蒸発器28及び加圧弁63を通過しないように、液化水素抜き出し用配管27から分岐されると共に、第2の加圧ガス供給用配管61と接続されている。
【0097】
加圧ガス温度調節弁92は、バイパスライン91に設けられており、制御部93と電気的に接続されている。加圧ガス温度調節弁92は、加圧弁63に対するバイパス弁である。制御部93は、TIC(Temperature Indicator Controller)である。
【0098】
制御部93は、第2の加圧ガス供給用配管61内の加圧用水素ガスの温度を測定する側温部(図示せず)を有する。制御部93は、第2の加圧ガス供給用配管61内の加圧用水素ガスの温度に基づき、加圧ガス温度調節弁92の開度を調節する。
【0099】
上記構成とされた第5の実施形態の液化水素貯蔵供給設備90では、需要先にて液化水素または水素ガスが順調に継続使用され、内槽51内の液化水素42−1の液面42a−1が低下すると、内槽51内のガス相の圧力を所望の圧力に保つために、制御部25により制御される加圧弁63を適度な開度にすることで、加圧蒸発器28により発生した水素ガスを、第2の加圧ガス供給用配管61を介して、内槽51内の上部51Aに位置するガス相に供給する。
【0100】
第5の実施形態の液化水素貯蔵供給設備90では、加圧蒸発器28及び加圧弁63を通過した後の水素ガスの温度は、300K程度であるため、この水素ガスに液化水素42−1を混合して、冷却された加圧用水素ガスを生成することを目的に、加圧ガス温度調節弁92と、加圧ガス温度調節弁92の開度を調節する制御部93と、を有する。
【0101】
制御部93が加圧ガス温度調節弁92を動作させる際の設定温度は、例えば、50〜150K程度に設定することができる。該設定温度を実現する加圧ガス温度調節弁92の通過液量は、重量ベースで、加圧蒸発器28の液化水素42−1の通過液量に対して1〜5倍程度である。
本実施形態では、制御部93は、気液混合直後の温度を検出するため、温度制御の応答性がよく、また、精度の高い加圧用水素ガスの温度制御を行なうことができる。
【0102】
なお、内槽51内が所定の圧力以上の場合は、加圧弁63が開とならないため、水素ガスが制御部93の測温部を通過しない。したがって、この場合、制御部93は、内槽51内の圧力を監視し、図示していない装置により、加圧ガス温度調節弁92は強制的に全閉とする。
【0103】
上記構成とされた第5の実施形態の液化水素貯蔵供給設備90は、内槽51内の液化水素42−1の液面42a−1の位置に依存することなく、内槽51内の圧力を一定に保つための水素ガスの大気放散量を低減させて、内槽51内に効率よく液化水素42−2を充填することができる。
【0104】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、内槽内の液化水素の液面の位置に依存することなく、内槽内の圧力を一定に保つための水素ガスの大気放散量を低減させて、内槽内に効率よく液化水素を充填することの可能な液化水素貯蔵供給設備に適用可能である。
より具体的には、本発明は、水素ステーションや低温物理研究等で使用される液化水素、及び水素ステーション、電子、金属、ガラス、石油等の産業で使用される水素ガスを供給する液化水素貯蔵供給設備に適用可能である。
【符号の説明】
【0106】
10,60,70,80,90…液化水素貯蔵供給設備、11…真空断熱二重殻貯槽、13…需要先用液化水素抜き出し配管、13A…液化水素抜き出し口、13B…液化水素供給口、14…液化水素供給ライン、16…水素ガス供給ライン、17…送ガス蒸発器、19…圧力逃がしライン、22…圧力逃がし弁、25,93…制御部、27…液化水素抜き出し用配管、27A,32A,72A…一方の端、27B,32B,72B…他方の端、28…加圧蒸発器、31…バブリング用加圧弁、32…第1の加圧ガス供給用配管、33…筒状部材、33A…下端、33B…上端、35…第1の接続部、36…分岐ライン、38…下部充填弁、39…液化水素充填用配管、41…上部充填弁、42−1,42−2…液化水素、42a−1…液面、43…タンクローリー、44…第2の接続部、46…フレキホース、51…内槽、51A…上部、51B,52A…下部、52…外槽、53…真空断熱空間、61…第2の加圧ガス供給用配管、63,71…加圧弁、72…第3の加圧ガス供給用配管、72C…伸縮部、81…第4の加圧ガス供給用配管、82…自然循環用配管、82A…先端部、84…自然循環調節弁、91…バイパスライン、92…加圧ガス温度調節弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化水素を貯留する内槽、該内槽を収容する外槽、及び前記内槽と前記外槽との間に設けられた真空断熱空間よりなる真空断熱二重殻貯槽を有し、前記液化水素あるいは水素ガスを需要先に供給する液化水素貯蔵供給設備であって、
一方の端が前記内槽の下部と接続され、前記内槽の下部から前記液化水素を抜き出す液化水素抜き出し用配管と、
前記液化水素抜き出し用配管に設けられ、前記液化水素抜き出し用配管を流れる前記液化水素を蒸発させることで、加圧用水素ガスを発生させる加圧蒸発器と、
前記内槽内に設けられ、下端が前記内槽の下部に貯留された前記液化水素に到達し、上端が前記内槽の上部に配置され、前記上端及び前記下端が開口された筒状部材と、
一方の端が前記液化水素抜き出し用配管の他方の端と接続され、前記内槽を貫通し、前記内槽内の下部に位置する前記液化水素に浸漬された他方の端から前記筒状部材内にバブリングされた前記加圧用水素ガスを供給する第1の加圧ガス供給用配管と、
前記第1の加圧ガス供給用配管に設けられ、前記加圧用水素ガスをバブリングするバブリング用加圧弁と、
前記内槽内のガス相の圧力に基づいて、前記バブリング用加圧弁の開度を調節する制御部と、
を有することを特徴とする液化水素貯蔵供給設備。
【請求項2】
前記バブリング用加圧弁は、前記内槽内のガス相の圧力が第1の設定圧力よりも低下した際に、前記制御部により開かれ、
前記第1の加圧ガス供給用配管のうち、前記バブリング用加圧弁と前記加圧蒸発器との間に位置する部分から分岐され、かつ前記内槽の上部と接続された第2の加圧ガス供給用配管と、
前記第2の加圧ガス供給用配管に設けられ、前記内槽内のガス相の圧力が前記第1の設定圧力よりも低い第2の設定圧力を下回った際、前記制御部により開かれる加圧弁と、
を有することを特徴とする請求項1記載の液化水素貯蔵供給設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−251606(P2012−251606A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125091(P2011−125091)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】