説明

液晶乳化型組成物

【課題】
皮膚外用剤または皮膚化粧料として油分量が少なく、基剤の保湿性能と温度安定性を高め、使用性(感触)に優れるラメラ構造を有する液晶乳化型組成物を提供する。
【解決手段】
油分に溶解しない固形高級アルコール、油分に溶解しない固形脂肪酸、油分、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤、油分と混和しない水溶性多価アルコール、アミノ酸及び水の所定量を乳化し、適切な撹拌又は温度条件を選択することによって、明確な乳化粒子を認めず、光学異方性による屈折光を認める液晶乳化型組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚外用剤または皮膚化粧料として油分量が少なく、基剤の保湿性能と温度安定性を高めるとともに使用性に優れるラメラ構造を有する液晶乳化型組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、乳化に関する研究が著しく進歩して、多くの乳化剤が開発され乳化技術も発展した。しかしながら安定な乳化物を得るためには、一般に多量の界面活性剤を必要とし、また、構造粘性を持たせるため水溶性高分子を添加するため、これを皮膚外用剤または皮膚化粧料として使用するためには、実際には安全性(刺激性)の課題、があり、これらを解決した皮膚外用剤または皮膚化粧料が望まれている。
【0003】
また、皮膚外用剤または皮膚化粧料は保湿機能を有しているが、べたつきの少ない製剤、さらに、皮膚に塗布した後に白残りしにくい製剤が要望されている。
【0004】
高級アルコール、固形脂肪酸、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤、多価アルコールおよび水からなり、炭化水素および水溶性高分子を配合しないことを特徴とする透明な液晶型外用基剤が提案されている(特許文献1参照)。しかし、本発明において液晶構造体とは高級アルコールの均一一層のラメラ構造であり、この均一一層構造を破壊しない限りにおいて油分を配合することができるとされており、油分の配合に制限を受ける。また、高級アルコールが1%未満である場合には液晶構造が維持できないと記載している。
【0005】
次に、液晶形成乳化剤と油性成分とを含有する油相と水相とを混合してO/W型エマルションの予備乳化物を調製した後、高圧ホモジナイザーを用いて二次乳化させることによって、高分子化合物などを増粘剤として添加しなくても増粘されたO/W型エマルションが提案されている(特許文献2参照)。しかし、本発明では油性成分と液晶形成乳化剤の配合量が全体の25〜75重量%を占めており、べたつきやすく、また皮膚刺激性の問題が懸念される。
【0006】
さらに、非イオン界面活性剤、油分、高級アルコール、脂肪酸、多価アルコールおよび水を適切に配合し、乳化の撹拌条件の選択、あるいは温度衝撃や撹拌衝撃を与えることにより乳化系全体にラメラ構造をもたえることによって、油分、高級アルコール、脂肪酸の配合量および非イオン界面活性剤の配合量を従来と比較して極めて少なく設定することができる液晶乳化型組成物が提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
なお、上記のいずれの方法においても液晶型組成物を調製する最後の段階で、マントンガウリン乳化機、マイクロフルイダイザーなどの強力な撹拌機で処理しなければならず、工業化する際にはこれら特別の設備とその設備投資が必要となる。
【0008】
また、シリコン油を配合して油分量全体における高級アルコールの割合を低下させることにより、白残りしにくい製剤が提案されている(特許文献3参照)。しかし、この液晶型外用基剤では、べたつきの原因となる油分および多価アルコールの配合量が多いため、使用感の悪い製剤になりやすい。
【特許文献1】特開昭63-287718号公報
【特許文献2】特開2000-128733号公報
【特許文献3】特開2003-212716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、マントンガウリン乳化機およびマイクロフルイダイザーなどの強力な撹拌機を用いることなく調製することができ、基剤の安定性が高く、白残りしにくく、使用時の触感がよく、さらに明確な乳化粒子を認めず、光学異方性による屈折光を認める液晶乳化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは液晶乳化法をさらに研究した結果、シリコン油を用いなくとも、わずかな高級アルコールの配合で白残りしにくい液晶乳化を調製することに成功した。
【0011】
すなわち、本発明は、油分に溶解しない固形高級アルコール、油分に溶解しない固形脂肪酸、油分、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤、油分と混和しない水溶性多価アルコール、アミノ酸および水を含有する液晶乳化型組成物を提供する。
【0012】
本発明の液晶乳化型組成物は、油相成分の構成に特徴を有する。すなわち構成成分のうち、固形高級アルコールおよび固形脂肪酸は、油分である液状または半固形の油成分に溶解しないことが求められる。
【0013】
固形高級アルコールおよび固形脂肪酸が、油分である液状または半固形の油成分に溶解しない構成にすることにより、非イオン界面活性剤とともに界面付近で固形高級アルコールおよび固形脂肪酸が配向状態を作りやすくなる。この状態に、両イオン性の特定のアミノ酸を添加すると、さらに界面の安定化が図られ、液晶乳化型の医薬組成物がより製剤的に安定状態を維持した存在が可能になる。
【0014】
本発明において、「溶解しない」とは、室温において、固形高級アルコールまたは固形脂肪酸が所望の油分に溶解しない、または所望の配合量において固形高級アルコールまたは固形脂肪酸が所望の油分に対して飽和溶解度以上存在するため、油分と脂肪酸または高級アルコールが溶解しない状態にあることをいう。
【0015】
本発明に用いることができる油分に溶解しない固形高級アルコールとしては、室温において固形である高級アルコールであれば特に限定されないが、炭素数16から22の飽和・直鎖型アルコールが好ましい。具体的には、セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールが好ましく、セトステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールがより好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明により得られる液晶型乳化組成物全量に対し、0.1〜1重量%、好ましくは0.5〜1重量%である。
【0016】
本発明に用いることができる油分に溶解しない固形脂肪酸としては、室温において固形である脂肪酸であれば特に限定されないが、炭素数が16から22の飽和・直鎖型脂肪酸が好ましい。具体的にはパルミチン酸、ステアリン酸およびベヘン酸が好ましく、ステアリン酸およびベヘン酸がより好ましく、ベヘン酸がさらに好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明により得られる液晶型乳化組成物全量に対し、0.05〜1重量%、好ましくは0.1〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.3重量%である。
【0017】
本発明に用いることができる油分としては、固形高級アルコールおよび固形脂肪酸を溶解しない油分であれば、極性などについては特に限定されないが、室温で液状または半固形の油分が好ましく、例えば流動パラフィン、スクワランならびにワセリンなどの炭化水素、オリーブ油、ホホバ油ならびにゴマ油などの植物油、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジエチルならびにアジピン酸ジイソプロピルなどの脂肪酸エステル、トリイソオクタン酸グリセリンならびに中鎖脂肪酸トリグリセリドなどのトリグリセリド、オクチルドデカノールならびにヘキシルデカノールなどの室温で液状の高級アルコール、イソステアリン酸などの液状の脂肪酸、シリコン油、トリアセチン、クロタミトン、サリチル酸エチレングリコールおよび炭酸プロピレンなどを挙げることができ、好ましくは、スクワラン、トリイソオクタン酸グリセリン、オクチルドデカノールおよびクロタミトンである。固形高級アルコールおよび固形脂肪酸を溶解する油分を用いると、固形高級アルコールおよび固形脂肪酸が界面に存在することを妨げられることにより、液晶構造が形成されにくくなるためである。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明により得られる液晶型乳化組成物全量に対し、0.5〜10重量%、好ましくは1〜3重量%である。
【0018】
本発明に用いることができる界面活性剤は非イオン界面活性剤であり、特に親油性非イオン界面活性剤および親水性非イオン界面活性剤を組み合わせて使用する。親油性非イオン界面活性剤または親水性非イオン界面活性剤を各々単独で用いた場合、液晶構造を維持することは困難である。なお、親油性非イオン界面活性剤と親水性非イオン界面活性剤の配合比率は1:3〜2:1、好ましくは1:2〜1:1である。
【0019】
また、親油性非イオン界面活性剤としては、HLB値が2.0〜7.0のものが好ましく、具体的にはモノステアリン酸プロピレングリコールなどのグリコール脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリンなどのグリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ジグリセリルならびにモノステアリン酸テトラグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(5)ベヘニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびモノステアリン酸ペンタエリスリトールなどのペンタエリスリトールの脂肪酸エステルなどが好ましい。特に、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ジグリセリル、モノステアリン酸テトラグリセリルおよびポリオキシエチレン(5)ベヘニルエーテルが好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明により得られる液晶型乳化組成物全量に対し、0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜2.5重量%である。0.1重量%より少ない場合には液晶構造を維持することができず、5重量%を越えると皮膚刺激性が発生しやすくなる。
【0020】
親水性非イオン界面活性剤としてはHLB値が10.0〜18.0のものが好ましく、具体的にはモノステアリン酸ポリオキシエチレン(15)グリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(20)ならびにステアリン酸ポリオキシル45などのポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50ならびにポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60などのポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油などが好ましい。特に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ステアリン酸ポリオキシル45、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテルおよびポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(4)セチルエーテルが好ましい。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明により得られる液晶型乳化組成物全量に対し、0.1〜5重量%、好ましくは0.1〜2.5重量%である。0.1重量%より少ない場合には液晶構造を維持することができず、5%重量を越えると皮膚刺激性が発生しやすくなる。
【0021】
本発明で用いられる油分と混和しない水溶性多価アルコールは、分子内に水酸基を2個以上有するものであり、一般に外用剤、化粧料に用いられるものであれば特に限定されない。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、オクタンジオール、ヘキサントリオール、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ソルビトール、キシリトールおよびマンニットなどを挙げることができ、好ましくは、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールおよびグリセリンである。これらを1種または2種以上の組み合わせで用いることができ、その配合量は本発明により得られる液晶型乳化組成物全量に対し、1〜20重量%であり、好ましくは1〜15重量%である。
【0022】
本発明において、「混和しない」とは、室温において、水溶性多価アルコールが所望の油分に混和しない状態にあることをいう。
【0023】
さらに、本発明に用いるアミノ酸は塩基性アミノ酸、中性アミノ酸または酸性アミノ酸のいずれでもよく,アミノ酸系乳化剤を用いることもでき、具体的には、L−アルギニン、グリシンおよびN−アシル−L−グルタミン酸ナトリウムなどを挙げることができ、好ましくはL−アルギニンである。これはアミノ酸の強い親水性により、界面活性剤が水相に溶けにくくなり、より多くの界面活性剤が界面に配向し、系の乳化安定性の向上につながるからである。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は本発明により得られる液晶型乳化組成物全量に対し、0.001〜5重量%であり、好ましくは0.01〜1重量%、より好ましくは0.01〜0.5重量%である。
【0024】
液晶乳化型組成物は構造粘性を有するため増粘剤などは配合しなくてもよいが、必要に応じてカルボキシビニルポリマーなどの水溶性高分子やベントナイトなどの粘度鉱物などの増粘剤を配合することにより目的とする粘度に調製することができる。
【0025】
さらに本発明の液晶乳化型組成物は中性付近だけでなく、酸性側(pH3付近)または塩基性側(pH10付近)でも安定であるので、皮膚外用剤として使用することができるほぼ全ての薬剤の至適pHにおいても安定である。所望のpHに調整するためには、pH調整剤を用いる。pH調整剤としては一般に外用剤、化粧料に用いられるものであれば特に限定されないが、塩酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、リン酸、リン酸三ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、グリシン、酢酸、酢酸ナトリウム、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウムなどを所望のpHになるように1種または2種以上の組み合わせで用いることができる。ただし、pHが3より小さい場合およびpHが10より大きい場合には皮膚刺激性が発生しやすくなるので、pHは3〜10が好ましい。また必要に応じて、防腐剤、酸化防止剤ならびに紫外線吸収剤などの保存剤、色素、香料および顔料は本目的を構成する範囲内で適宜配合することができる。
【0026】
本発明の液晶乳化型組成物の好ましい態様では、液晶型乳化組成物全量に対して、0.1〜1重量%の油分に溶解しない固形高級アルコール、0.1〜1重量%の油分に溶解しない固形脂肪酸、油分、0.1〜5重量%の親油性非イオン界面活性剤、0.1〜5重量%の親水性非イオン界面活性剤、1〜20重量%の油分と混和しない水溶性多価アルコール、0.01〜0.1重量%のアミノ酸および水を含有する。
【0027】
本発明の液晶乳化型組成物のより好ましい態様では、液晶型乳化組成物全量に対して、0.1〜1重量%の油分に溶解しない固形高級アルコール、0.1〜0.3重量%のベヘン酸、油分、0.1〜2.5重量%の親油性非イオン界面活性剤、0.1〜2.5重量%の親水性非イオン界面活性剤、1〜15重量%の油分と混和しない水溶性多価アルコール、0.01〜0.5重量%のアミノ酸および水を含有する。
【0028】
本発明の液晶乳化型組成物の製造方法は特に制限されるものではないが、油分に溶解しない固形高級アルコール、油分に溶解しない固形脂肪酸、油分、親油性非イオン界面活性剤および親水性非イオン界面活性剤を含有する油相並びに油分と混和しない水溶性多価アルコール、アミノ酸、pH調整剤、保存剤、安定化剤および水を含有する水相を調製して、油相中に水相を加える方法により乳化する行程で目的とする液晶乳化型組成物を調製することができる。乳化を行う際の水相は全量を一度に用いてもよいし、一定量を用いて乳化して濃縮乳化物(コンクベース)を形成させた後に、残りの水相を数段階に分けてコンクベースに加えて希釈してもよい。水相を数段階に分けるときは、水相成分を全て溶解させた後に一定量を小分けして乳化をさせてもよいし、例えばアミノ酸はコンクベース作成時の水相のみ添加するなどコンクベース作成段階と希釈段階で異なる組成の水相成分としてもよい。なお、薬剤を含有させるときは、親油性薬剤は油相に、親水性薬剤は水相に添加する。
【0029】
本発明の油相を調製する際の諸条件は適宜選定されるが、油分に溶解しない固形高級アルコール、油分に溶解しない固形脂肪酸、油分、親油性非イオン界面活性剤および親水性非イオン界面活性剤などの油相成分を均一に混合溶解させるには各成分を60〜90℃、好ましくは65〜85℃で混合溶解させることが望ましい。温度が低すぎると油相を均一に混合溶解することが困難となる場合があり、温度が高すぎると各成分が変質する恐れがある。
【0030】
また、本発明の水相を調製する際の諸条件は適宜選定されるが、油分と混和しない水溶性多価アルコール、アミノ酸、pH調整剤、保存剤および安定化剤などから適宜選択される水相成分を水に均一に混合溶解させるにはこれらを室温〜90℃、好ましくは65〜85℃で混合溶解させることが望ましい。
【0031】
次に、濃縮乳化物の調製は油相を撹拌処理しながら水相を油相に徐々に添加するものである。濃縮乳化物を調製する際の温度は油相および水相の種類などによって適宜選定されるが、通常、撹拌開始時は50℃〜90℃、撹拌終了時は室温である。温度が低すぎると乳化が困難となる場合がある。
【0032】
本発明の第二次工程の水相を調製する際の諸条件は適宜選定されるが、保存剤、pH調整剤および安定化剤などを水に溶解させる。これらの成分を均一に混合溶解させるには室温〜90℃、好ましくは室温〜80℃で混合溶解させることが望ましい。この水相を撹拌しながら先の濃縮乳化物を室温で加え、さらに撹拌および脱気を実施し、目的の液晶乳化型組成物を得ることができる。水相の添加に際しては、加温の必要はなく、室温で実施できる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の液晶乳化型組成物は延びがよく、塗布時のべたつきもほとんどないため感触のよいクリーム剤や乳剤性ローション剤の基剤として用いることができる。
【0034】
また、本発明の液晶乳化型組成物は極めて安定であることから、ラメラ構造を破壊することなく水、低級アルコールおよび水溶性多価アルコールなどで希釈することができるので、皮膚外用剤や皮膚化粧料に有用な基剤として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に実施例および試験例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【実施例】
【0036】
表1〜表7に、本発明の実施例1〜実施例19ならびに比較例1〜比較例9の処方および試験例1(乳化状態および乳化粒子径)ならびに試験例2(乳化安定性)の結果を示した。
【0037】
[実施例1]
固形高級アルコール、固形脂肪酸、油分および界面活性剤を表1に示した組成比率で秤量し、85℃で溶解させて、油相を調製した。また、アミノ酸およびpH調整剤、水溶性多価アルコールならびに水の一部を85℃で溶解させて水相を調製した。油相に水相を少量ずつ加えながら撹拌して濃縮混合物を調製した。
次に、保存剤及びpH調整剤、多価アルコールならびに水の残部を溶解させて後添水相を調製した。濃縮乳化物に後添水相を加え、撹拌および脱気を実施して、目的とする組成物を得た。
【0038】
[実施例2〜実施例21および比較例1〜比較例9]
実施例1と同様に操作して表1〜表8に示した組成比率で組成物を調製した。
【0039】
[試験例1] 乳化状態および乳化粒子径
実施例1〜実施例21および比較例1〜比較例9の各組成物の少量をスライドグラス上にとり、カバーグラスを被せた後、顕微鏡観察(対物レンズ:40 倍,接眼レンズ 10倍)を実施した。また、簡易偏光フィルターを用いて光学異方性の有無についても観察した(対物レンズ:4〜40 倍,接眼レンズ 10倍)。
<評価基準>
A:明確な乳化粒子を認めず、光学異方性による屈折光を認める
B:1μm以下の乳化粒子のみ
C:1〜5μmの乳化粒子のみ
D:1〜5μmの乳化粒子が主で数〜数十μmの粒子も含む
E:その他
【0040】
[試験例2] 乳化安定性
試験例1において液晶構造を形成していることが確認できた実施例1〜実施例21、比較例2、比較例3、比較例5、比較例6および比較例8の各組成物について乳化安定性試験を実施した。つまり、各組成物約5gをスピッツ管に充填し、充填した各試料を遠心(毎分3000回転,10分間)して脱気を行った。脱気後、50℃環境下にて1週間保管した。各試料を取り出し、室温下放置した後、遠心(毎分3000回転,10分間)した後に、各試料の水分離の程度を評価した。
<評価基準>
○:分離なし
×:分離あり
−:実施せず
【0041】
[試験例3] 官能性試験
官能性試験として、組成物を皮膚に塗布したときの延び具合、べたつきおよび白残りの3項目について評価した。
実施例1〜実施例21の各組成物はいずれも延びは非常にあり、塗布時のべたつきも「ない」から「ややある」である。また、皮膚に指で塗布したとき通常見られる白残り現象は起きず、直ちに透明になり皮膚になじむ様相が見られた。従って、皮膚外用剤または皮膚化粧料として用いるのに適している。
【0042】
実施例1、実施例2および比較例1〜3の結果より、脂肪酸は必須成分であるが、室温で液状の脂肪酸(オレイン酸、イソステアリン酸)では安定性が悪いことがわかる。また、実施例1、実施例3および比較例4〜6の結果より、高級アルコールは必須成分であるが、室温で液状の高級アルコール(オレイルアルコール、イソステアリルアルコール)では安定性が悪いことがわかるだけでなく、室温で固形の高級アルコールを用いることにより、配合量が1%以下であっても乳化安定性に優れた液晶乳化製剤を得ることができることがわかる。さらに、実施例1、実施例6、実施例7および比較例7の結果より、アミノ酸は必須成分であることが分かる。
【0043】
一方、実施例2、実施例16、実施例17、比較例8および比較例9で示したように、油分に溶解しない固形高級アルコール、油分に溶解しない固形脂肪酸、油分に混和しない多価アルコールを用いることにより、油分の極性に関係なく乳化安定性に優れた液晶乳化組成物を得ることができる。特にクロタミトンは極性が比較的高く、多くの親油性薬剤の溶解剤として有用であるので、本組成物は皮膚外用剤の基剤として有益である。
【0044】
また、実施例2、実施例4および実施例5の結果より、本発明の組成物は中性製剤(pH=6〜7程度:実施例1)のみでなく、塩基性製剤(pH=10程度:実施例4)または酸性製剤(pH=3程度:実施例5)でも乳化安定性に優れた液晶乳化製剤を得ることができる。さらに、実施例20および実施例21からわかるように、油分を増加させても液晶構造を維持できることから、親油性薬物の種類、含有量に対応して油分量を最適に調整した液晶型乳化組成物を調製することができることがわかる。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
表4の親水性非イオン界面活性剤および親油性非イオン界面活性剤は表5に示した組み合わせで用いた。
【0049】
【表4】

【0050】
【表5】

【0051】
【表6】

【0052】
【表7】

【0053】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油分に溶解しない固形高級アルコール、油分に溶解しない固形脂肪酸、油分、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤、油分と混和しない水溶性多価アルコール、アミノ酸および水を含有する液晶乳化型組成物であって、油分に溶解しない固形高級アルコールの配合量が0.1〜1重量%である液晶乳化型組成物。
【請求項2】
油分に溶解しない固形高級アルコールが炭素数16から22の飽和・直鎖型アルコールである請求項1に記載の液晶乳化型組成物。
【請求項3】
油分に溶解しない固形脂肪酸が炭素数16から22の飽和・直鎖型脂肪酸である請求項1または2に記載の液晶乳化型組成物。
【請求項4】
油分に溶解しない固形脂肪酸がパルミチン酸、ステアリン酸およびベヘン酸からなる群から選ばれる1種以上の固形脂肪酸である請求項1ないし3のいずれかに記載の液晶乳化型組成物。
【請求項5】
油分に溶解しない固形脂肪酸がベヘン酸である請求項1ないし4のいずれかに記載の液晶乳化型組成物。
【請求項6】
油分に溶解しない固形脂肪酸の配合量が0.05〜1重量%である請求項1ないし5のいずれかに記載の液晶乳化型組成物。
【請求項7】
アミノ酸がL−アルギニン、グリシンおよびN−アシル−L−グルタミン酸ナトリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上のアミノ酸である請求項1ないし6のいずれかに記載の液晶乳化型組成物
【請求項8】
アミノ酸の配合量が0.001〜5重量%である請求項1ないし7のいずれかに記載の液晶乳化型組成物。
【請求項9】
油分と混和しない水溶性多価アルコールがプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選ばれる1種または2種以上の水溶性多価アルコールである請求項1ないし8のいずれかに記載の液晶乳化型組成物。
【請求項10】
油分と混和しない水溶性多価アルコールの配合量が1〜20重量%である請求項1ないし9のいずれかに記載の液晶乳化型組成物。

【公開番号】特開2007−9199(P2007−9199A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−154968(P2006−154968)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(000113908)マルホ株式会社 (12)
【Fターム(参考)】