説明

液晶表示素子の製造方法

【課題】視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性および長期信頼性に優れる液晶表示素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】上記液晶表示素子の製造方法は、導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、(A)重合体および(B)有機溶媒を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経る液晶表示素子の製造方法であって、前記(A)重合体が、光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有する重合体を含むものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示素子の製造方法に関する。さらに詳しくは、視野角が広く、応答速度の速い液晶表示素子を製造するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子のうち、垂直配向モードとして従来知られているMVA(Multi−Domain Vertical Alignment)型パネルは、液晶パネル中に突起物を形成し、これにより液晶分子の倒れ込み方向を規制することにより、視野角の拡大を図っている。しかし、この方式によると、突起物に由来する透過率およびコントラストの不足が不可避であり、さらに液晶分子の応答速度が遅いという問題がある。
近年、上記の如きMVA型パネルの問題点を解決すべく、PSA(Polymer Sustained Alignment)モードが提案された。PSAモードは、パターン状導電膜付き基板およびパターンを有さない導電膜付き基板からなる一対の基板の間隙、あるいは2枚のパターン状導電膜付き基板からなる一対の基板の間隙に重合性の化合物を含有する液晶組成物を狭持し、導電膜間に電圧を印加した状態で紫外線を照射して重合性化合物を重合し、これによりプレチルト角特性を発現して液晶の配向方向を制御しようとする技術である。この技術によると、導電膜を特定の構成とすることにより視野角の拡大および液晶分子応答の高速化を図ることができ、MVA型パネルにおいて不可避であった透過率およびコントラストの不足の問題も解消される。しかしながらPSAモードでは、前記重合性化合物の重合のために例えば100,000J/mといった多量の紫外線の照射が必要であり、そのため液晶分子が分解する不具合が生ずるほか、紫外線照射によっても重合しなかった未反応化合物が液晶層中に残存することとなり、これらが相俟って表示ムラが発生し、電圧保持特性に悪影響を及ぼし、あるいはパネルの長期信頼性に問題が生じることが明らかとなり、未だ実用には至っていない。
【0003】
これらに対し非特許文献1は、反応性メソゲンを含有するポリイミド系液晶配向剤から形成された液晶配向膜を用いる方法を提案している。非特許文献1によると、かかる方法により形成された液晶配向膜を具備する液晶表示素子は、液晶分子の応答が高速であるという。しかしながら非特許文献1には、いかなる反応性メソゲンをいかなる量で使用すべきかについての指針は全く記載されておらず、また必要な紫外線照射量も依然として多く、表示特性、特に電圧保持特性に関する懸念は払拭されていない。
この点ごく最近になって、上記PSAモードに代わるさらに新たな表示モードに関する技術が提案された(特許文献1)。この技術は、光官能性を有するシンナメート構造を有するポリイミド薄膜に無偏光の紫外線を照射し、前記シンナメート構造の光異性化による分子の回転を利用して所望のプレチルト角発現性を付与することを意図したものである。しかしながら所望のプレチルト角発現性を付与するためには相当量の紫外線を照射することを要し、液晶表示素子製造時のタクトタイムが長くなり、あるいは強烈な紫外線のために形成される液晶配向膜の電気特性、特に電圧保持率が損なわれるなどの弊害が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2009/0325453号明細書
【特許文献2】特開平5−107544号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Y.−J. Lee et. al. SID 09 DIGEST, p. 666(2009)
【非特許文献2】T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vo. 19, p. 2013(1980)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、表示特性および長期信頼性に優れる液晶表示素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、本発明の上記課題は、
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、
(A)重合体および
(B)有機溶媒
を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経る液晶表示素子の製造方法であって、
前記(A)重合体が、
(A1)光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有する重合体
を含むものであるか、あるいは
(A2−1)光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造を有する重合体、ならびに
(A2−2)重合性不飽和結合を有する重合体
を含むものである、前記方法によって達成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によって製造された液晶表示素子は、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、十分な透過率およびコントラストを示し、表示特定に優れるうえ、長時間連続駆動しても表示特性が損なわれることがない。
また、本発明の方法によると、照射に必要な光の量が少なくてすむため、液晶分子分解の問題がなく、液晶表示素子の製造コストの削減にも資する。
従って、本発明の方法により製造された液晶表示素子は、性能面およびコスト面の双方において従来知られている液晶表示素子に勝り、種々の用途に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例および比較例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【図2】実施例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【図3】実施例にて製造した、パターニングされた透明導電膜を有する液晶セルにおける透明導電膜のパターンを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<重合体組成物>
本発明の方法において用いられる重合体組成物は、
(A)重合体および(B)有機溶媒を含有し、
ただし上記(A)重合体は、
(A1)光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有する重合体(以下、「重合体(A1)」という。)
を含むものであるか、あるいは
(A2−1)光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造を有する重合体(以下、「重合体(A2−1)」という。)、ならびに
(A2−2)重合性不飽和結合を有する重合体(以下、「重合体(A2−2)」という。)
を含むものである。
上記光増感機能とは、光の照射によって一重項励起状態となった後、速やかに項間交差を起こして三重項励起状態へ遷移する機能をいう。この三重項励起状態において他の分子と衝突すると、相手を励起状態に変え、自らは基底状態に戻ることとなる。この光増感機能は光照射によりラジカルを発生する機能と併存していてもよい。
光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造としては、例えばベンゾフェノン構造、9,10−ジオキソジヒドロアントラセン構造、1,3−ジニトロベンゼン構造および1,4−ジオキソシクロヘキサ−2,5−ジエン構造、すなわち下記式(1)〜(4)
【0011】
【化1】

【0012】
のそれぞれで表される構造を挙げることができ、これらのうちから選択される少なくとも1種の構造であることができる。
光照射によりラジカルを発生する構造、光増感機能を有する構造および重合性不飽和結合のうちから選択される少なくとも1種の構造または不飽和結合を、本明細書において以下、「特定構造」ということがある。
【0013】
[重合体(A)]
本発明における重合体(A)の主骨格としては、例えばポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート誘導体などからなる骨格を挙げることができ、これらのうちから選択される骨格を有する重合体の1種以上を適宜に選択して用いることができる。
上記特定構造を有するポリアミック酸は、例えば
テトラカルボン酸二無水物と、特定構造および2つのアミノ基を有する化合物を含むジアミンとを反応させることにより、合成することができる。また、このようにして得られたポリアミック酸を脱水閉環することにより、特定構造を有するポリイミドを得ることができる。
特定構造を有するポリアミック酸エステルは、例えば
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを反応させて得られたポリアミック酸と、例えば特定構造およびエポキシ基を有する化合物とを反応させることにより、合成することができる。
特定構造を有するポリオルガノシロキサンは、例えば
特定構造および加水分解性基を有するシラン化合物を含む加水分解性シラン化合物またはその混合物を加水分解縮合する方法;もしくは
エポキシ基および加水分解性基を有するシラン化合物を含む加水分解性シラン化合物またはその混合物を加水分解縮合して得られたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを先ず合成し、次いで該ポリオルガノシロキサンと、特定構造およびカルボキシル基を有する化合物とを反応させる方法;または
これらの組み合わせによって得ることができる。
また、特定構造を有するポリ(メタ)アクリレート誘導体は、例えば先ずエポキシ基を有するモノマーを含むモノマー原料を重合してエポキシ基を有するポリ(メタ)アクリレート誘導体を合成し、次いで該誘導体と、特定構造およびカルボキシル基を有する化合物とを反応させることにより、得ることができる。
【0014】
本発明において用いられる重合体(A1)としては、
光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有するポリオルガノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサン(A1)」ともいう。)、
光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有するポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸(A1)」ともいう。)ならびに
該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「ポリイミド(A1)」ともいう。)のうちから選択される少なくとも1種
を使用すること好ましい。
本発明において用いられる重合体(A2−1)としては、
光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造を有するポリアミック酸(以下、「ポリアミック酸(A2−1)」ともいう。)ならびに該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド(以下、「ポリイミド(A2−1)」ともいう。)よりなる群から選択される少なくとも1種
を使用することが好ましい。
本発明において用いられる重合体(A2−2)としては、
重合性不飽和結合を有するポリオルガノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサン(A2−2)」ともいう。)
を使用することが好ましい。
【0015】
−ポリオルガノシロキサン(A1)−
本発明に用いられる重合体(A1)としてのポリオルガノシロキサン(A1)は、光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有するポリオルガノシロキサンである。このようなポリオルガノシロキサン(A1)は、どのような合成方法によって合成されたものであってもよいが、例えば
重合性不飽和結合と加水分解性基とを有するシラン化合物(以下、「シラン化合物(1)」という。)および
エポキシ基と加水分解性基とを有するシラン化合物(以下、「シラン化合物(2)」という。)
を含むシラン化合物の混合物を、好ましくは有機溶媒、水および触媒の存在下に加水分解縮合して重合性不飽和結合とエポキシ基とを有するポリオルガノシロキサン(以下、「ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体」という。)を先ず合成し、次いで
該ポリオルガノシロキサンを、光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造とカルボキシル基とを有する化合物と反応させることにより合成することができる。
【0016】
上記シラン化合物(1)としては、例えば3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリクロロシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリクロロシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリメトキシシラン、4−(メタ)アクリロキシブチルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。
上記シラン化合物(2)としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルトリエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルメチルジメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルメチルジエトキシシラン、2−グリシジロキシエチルジメチルメトキシシラン、2−グリシジロキシエチルジメチルエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルトリメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルトリエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルメチルジメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルメチルジエトキシシラン、4−グリシジロキシブチルジメチルメトキシシラン、4−グリシジロキシブチルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシランなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。
【0017】
ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体を合成するために用いられるシラン化合物は、上記の如きシラン化合物(1)およびシラン化合物(2)のみからなるものであってもよく、あるいは上記シラン化合物(1)およびシラン化合物ン(2)のほかに、これら以外のシラン化合物(以下、「シラン化合物(3)」という。)を含むものであってもよい。
ここで使用することのできるシラン化合物(3)としては、例えばメチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、クロロジメチルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。
【0018】
ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体を合成するために用いられるシラン化合物は、上記の如きシラン化合物(1)を、全シラン化合物に対して20〜80モル%含有するものであることが好ましく、30〜60モル%含有するものであることがより好ましく;
上記の如きシラン化合物(2)を、全シラン化合物に対して20〜80モル%含有するものであることが好ましく、30〜60モル%含有するものであることがより好ましい。また、上記の如きシラン化合物(3)の使用割合は、全シラン化合物に対して30モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。
ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体を合成するにあたって使用することのできる有機溶媒としては、例えば炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、アルコールなどを挙げることができる。
【0019】
上記炭化水素としては、例えばトルエン、キシレンなどを;
上記ケトンとしては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンなどを;
上記エステルとしては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチルなどを;
上記エーテルとしては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを;
上記アルコールとしては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルなどを、それぞれ挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を用いることができる。これらのうち、非水溶性のものを選択して用いることが好ましい。
有機溶媒の使用量は、全シラン化合物の100重量部に対して、好ましくは10〜10,000重量部であり、より好ましくは50〜1,000重量部である。
ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体を合成する際の水の使用量は、シラン化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.5〜100モルであり、より好ましくは1〜30モルである。
【0020】
上記触媒としては例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物などを用いることができ、これらのうち、アルカリ金属化合物または有機塩基を用いることが好ましい。触媒としてアルカリ金属化合物または有機塩基を用いることにより、三次元構造の形成が促進され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られる。このため、後述のカルボン酸との反応時および該反応の生成物を含有する重合体組成物とした後においてもシラノール基同士の縮合反応が抑えられ、さらに重合体組成物が後述の他の重合体を含有するものである場合にはシラノール基と他の重合体との縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる重合体組成物を得ることができる点で好ましい。
上記アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシドなどを挙げることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンなどを、それぞれ挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
触媒としては、特に有機塩基が好ましい。有機塩基の使用量は、有機塩基の種類、温度などの反応条件などにより異なり、適宜に設定されるべきであるが、例えばシラン化合物の合計1モルに対して好ましくは0.01〜3モルであり、より好ましくは0.05〜1モルである。
【0021】
ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体を合成する際の加水分解縮合反応は、シラン化合物(1)および(2)と必要に応じてシラン化合物(3)とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基および水と混合して、例えば油浴などの適当な加熱装置を用いて加熱することによって実施することが好ましい。
加水分解縮合反応の際には、加熱温度を好ましくは130℃以下、より好ましくは40〜100℃として、好ましくは0.5〜12時間、より好ましくは1〜8時間加熱することが望ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、撹拌しなくてもよく、あるいは混合液を還流下に置いてもよい。
反応終了後、反応混合物から分離した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。この洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2重量%程度の硝酸アンモニウム水溶液などで洗浄することにより、洗浄操作が容易になる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブスなどの適当な乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体を得ることができる。
【0022】
このようにして得られたポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体を、次いで好ましくは触媒および有機溶媒の存在下に、光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造とカルボキシル基とを有する化合物(以下、「カルボン酸(1)」という。)と反応させることにより、ポリオルガノシロキサン(A1)を得ることができる。このとき、カルボン酸(1)とともに液晶分子を配向させる機能を有するカルボン酸(以下、「カルボン酸(2)」という。)および他のカルボン酸よりなる群から選択される1種以上を併用してもよい。
上記カルボン酸(1)としては、例えば3−ベンゾイル安息香酸、4−ベンゾイル安息香酸、3−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、4−(2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、3−(2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、2−(2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、4−(4−メチルベンゾイル)安息香酸、4−(3,4−ジメチルベンゾイル)安息香酸、3−(4−ベンゾイル−フェノキシ)プロピオン酸、9,10−ジオキソジヒドロアントラセン−2−カルボン酸(アントラキノン−2−カルボン酸)、3−(9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−イル)プロピオン酸、[3−(4,5−ジメトキシ−3,6−ジオキソシクロヘキサ−1,4−ジエニル)プロポキシ]アセチル酸、3,5−ジニトロ安息香酸、4−メチル−3,5−ジニトロ安息香酸、3−(3,5−ジニトロフェノキシ)プロピオン酸、2−メチル−3,5−ジニトロ安息香酸などを挙げることができる。
【0023】
上記カルボン酸(2)は、例えば炭素数4〜20のアルキル基もしくはアルコキシル基、6員環が2個以上連結した構造を有する基またはステロイド構造を有する基と、カルボキシル基とを有する化合物であり、その具体例として、例えば4−ブチロキシ安息香酸、4−ペンタロキシ安息香酸、4−ヘキサロキシ安息香酸、4−ヘプタロキシ安息香酸、4−オクチロキシ安息香酸、4−ノナロキシ安息香酸、4−デカロキシ安息香酸、4−ウンデカロキシ安息香酸、4−ドデカロキシ安息香酸、4−トリデカロキシ安息香酸、4−テトラデカロキシ安息香酸、4−ペンタデカロキシ安息香酸、4−ヘキサデカロキシ安息香酸、4−ヘプタデカロキシ安息香酸、4−オクタデカロキシ安息香酸、4−ノナデカロキシ安息香酸、4−イコサロキシ安息香酸、4−(4−プロピルシクロヘキシル)安息香酸、4−(4−ブチルシクロヘキシル)安息香酸、4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸、4−(4−ヘキシルシクロヘキシル)安息香酸、4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)安息香酸、4−(4−オクチルシクロヘキシル)安息香酸、4−(4’−プロピルビシクロヘキシル−4−イル)安息香酸、4−(4’−ブチルビシクロヘキシル−4−イル)安息香酸、4−(4’−ペンチルビシクロヘキシル−4−イル)安息香酸、4−(4’−ヘキシルビシクロヘキシル−4−イル)安息香酸、4−(4’−ヘプチルビシクロヘキシル−4−イル)安息香酸、4−(4’−オクチルビシクロヘキシル−4−イル)安息香酸、コハク酸=5ξ−コレスタン−3−イルなどを挙げることができる。
上記カルボン酸(3)は、上記カルボン酸(1)および(2)以外のカルボン酸であり、その具体例として、例えば錯酸、プロピオン酸などを挙げることができる。
【0024】
カルボン酸(1)の使用割合としては、ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体のエポキシ基1モルに対して、0.02〜0.2モルとすることが好ましく、0.05〜0.15モルとすることがより好ましい。
カルボン酸(2)の使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体のエポキシ基1モルに対して、0.7モル以下とすることが好ましく、0.2〜0.6モルとすることがより好ましい。
カルボン酸(3)の使用割合は、ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体のエポキシ基1モルに対して、0.3モル以下とすることが好ましく、0.2モル以下とすることがより好ましい。
本発明におけるポリオルガノシロキサン(A1)は、そのエポキシ当量が5,000g/モル以下であることが好ましく、500〜3,000g/モルであることがより好ましい。従って、上記カルボン酸(1)、(2)および(3)の合計の使用割合を、ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体のエポキシ基1モルに対して、0.8モル以下とすることが好ましい。
【0025】
上記触媒としては、有機塩基、またはエポキシ化合物と酸無水物との反応を促進するいわゆる硬化促進剤として公知の化合物を用いることができる。
上記有機塩基としては、例えばエチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンなどを挙げることができる。これらの有機塩基のうち、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジンの如き3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの如き4級の有機アミンが好ましい。
上記硬化促進剤としては、例えば3級アミン、イミダゾール化合物、有機リン化合物、4級フォスフォニウム塩、ジアザビシクロアルケン、有機金属化合物、4級アンモニウム塩、ホウ素化合物、金属ハロゲン化合物などを挙げることができるほか、潜在性硬化促進剤として知られているものを使用することができる。
触媒は、ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体100重量部に対して好ましくは100重量部以下、より好ましくは0.01〜100重量部、さらに好ましくは0.1〜20重量部の割合で使用される。
【0026】
上記有機溶媒としては、例えば炭化水素、エーテル、エステル、ケトン、アミド、アルコールなどを挙げることができる。これらのうち、エーテル、エステルまたはケトンが、原料および生成物の溶解性ならびに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒は、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の重量が溶液の全重量に占める割合)が、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは5〜50重量%となる割合で使用される。
反応温度は、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは50〜150℃である。反応時間は、好ましくは0.1〜50時間であり、より好ましくは0.5〜20時間である。
このようにしてポリオルガノシロキサン(A1)を含有する溶液を得ることができる。この溶液は、これをそのまま重合体組成物の調製に供してもよいが、該溶液から使用した触媒を除去した後に、またはポリオルガノシロキサン(A1)を単離したうえで、重合体組成物の調製に供することが好ましい。ポリオルガノシロキサン(A1)を含有する溶液から触媒を除去するには、例えば該溶液を水などによって洗浄する方法によることができる。ポリオルガノシロキサン(A1)の単離は、好ましくは洗浄後の溶液から有機溶媒を除去することにより行うことができる。
【0027】
−ポリアミック酸(A1)−
本発明に用いられる重合体(A1)としてのポリアミック酸(A1)は、光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有するポリアミック酸である。このようなポリアミック酸(A1)は、どのような合成方法によって合成されたものであってもよいが、例えば
テトラカルボン酸二無水物と、
光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と2つのアミノ基とを有する化合物(以下、ジアミン(1)という。)ならびに
重合性不飽和結合と2つのアミノ基とを有する化合物(以下、ジアミン(2)という。)
を含むジアミンと
を反応させることにより、合成することができる。
【0028】
上記テトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物などを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物などを;
脂環式テトラカルボン酸二無水物として、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:3,5:6−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオンなどを;
芳香族テトラカルボン酸二無水物として、例えばピロメリット酸二無水物などを、それぞれ挙げることができるほか、
特願2009−157556号に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。
【0029】
前記ポリアミック酸(A1)を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、これらのうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物を含むものであることが好ましく、さらに、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであることが好ましく、特に2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物を含むものであることが好ましい。
前記ポリアミック酸を合成するために用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種を、全テトラカルボン酸二無水物に対して、60モル%以上含むものであることが好ましく、80モル%以上含むものであることがより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物および1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物よりなる群から選択される少なくとも1種のみからなるものであることが、最も好ましい。
【0030】
上記ジアミン(1)としては、例えば{4−[2−(3,5−ジアミノフェノキシ)−エトキシ]−フェニル}−フェニル−メタノン、{4−[2−(2,4−ジアミノフェノキシ)−エトキシ]−フェニル}−フェニル−メタノン、{4−[2−(2,4−ジアミノフェノキシ)−エトキシ]−フェニル}−p−トルイル−メタノン、{4−[2−(2,4−ジアミノフェノキシ)−エトキシ]−フェニル}−o−トルイル−メタノンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
上記ジアミン(2)としては、例えば3,5−ジアミノ(2’−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ベンゾエート、3,5−ジアミノ(1’−(メタ)アクリルオキシメチル)ベンゾエート、3,5−ジアミノ(3’−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)ベンゾエート、3,5−ジアミノ(4’−(メタ)アクリロイルオキシブチル)ベンゾエート、3,5−ジアミノ(5’−(メタ)アクリロイルオキシペンチル)ベンゾエート、3,5−ジアミノ(6’−(メタ)アクリロイルオキシヘキシル)ベンゾエート、N,N−ジアリル−ベンゼン−1,2,4−トリアミン、N,N−ジアリルベンゼン−1,3,5−トリアミン、(メタ)アクリル酸 2−(2,4−ジアミノフェノキシ)エチルエステルなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
本発明におけるポリアミック酸(A1)を合成するために用いられるジアミンは、上記の如きジアミン(1)およびジアミン(2)のみからなるものであってもよく、あるいは上記ジアミン(1)およびジアミン(2)のほかに、これら以外のジアミン(以下、「ジアミン(3)」という。)を含むものであってもよい。
【0031】
ここで使用することのできるジアミン(3)としては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、芳香族ジアミン、ジアミノオルガノシロキサンなどを挙げることができる。これらの具体例としては、脂肪族ジアミンとして、例えば1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどを;
脂環式ジアミンとして、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどを;
芳香族ジアミンとして、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、
【0032】
N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサンおよび下記式(D−1)
【0033】
【化2】

【0034】
(式(D−1)中、Xは炭素数1〜3のアルキル基、−O−、−COO−または−OCO−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であり、hは0または1であり、iは0〜2の整数であり、jは1〜20の整数である。)
で表される化合物などを;
ジアミノオルガノシロキサンとして、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサンなどを、それぞれ挙げることができるほか、
特願2009−157556号に記載のジアミンを用いることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
上記式(D−1)におけるXは炭素数1〜3のアルキル基、−O−または−COO−(ただし、「*」を付した結合手がジアミノフェニル基と結合する。)であることが好ましい。基C2j+1−の具体例としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等を挙げることができる。ジアミノフェニル基における2つのアミノ基は、他の基に対して2,4−位または3,5−位にあることが好ましい。
上記式(D−1)で表される化合物の具体例としては、例えば下記式(D−1−1)〜(D−1−4)
【0035】
【化3】

【0036】
のそれぞれで表される化合物等を挙げることができる。
上記式(D−1)において、hおよびiは同時には0にならないことが好ましい。
ポリアミック酸(A1)を合成するために用いられるジミアンは、
上記の如きジアミン(1)を、全ジアミンに対して0.1〜10モル%含有するものであることが好ましく、0.5〜5モル%含有するものであることがより好ましく;
上記の如きジアミン(2)を、ジアミンに対して10〜60モル%含有するものであることが好ましく、20〜50モル%含有するものであることがより好ましい。また、上記の如きジアミン(3)の使用割合は、全ジアミンに対して89.9モル%以下であることが好ましく、30〜75モル%であることがより好ましく、さらに30〜70モル%であることがより好ましい。
【0037】
ポリアミック酸(A1)の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミンの使用割合は、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2〜2当量となる割合が好ましく、さらに好ましくは0.3〜1.2当量となる割合である。
ポリアミック酸(A1)の合成反応は、好ましくは有機溶媒中において、好ましくは−20〜150℃、より好ましくは0〜100℃の温度条件下において、好ましくは0.5〜24時間、より好ましくは2〜10時間行われる。ここで、有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸(A1)を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;
m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒等を挙げることができる。有機溶媒の使用量(a)は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン化合物の総量(b)が反応溶液の全量(a+b)に対して好ましくは0.1〜50重量%、より好ましくは5〜30重量%となるような量である。
【0038】
以上のようにして、ポリアミック酸(A1)を溶解してなる反応溶液が得られる。この反応溶液はそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸(A1)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリアミック酸(A1)を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。
ポリアミック酸(A1)を脱水閉環してポリイミド(A1)とする場合には、上記反応溶液をそのまま脱水閉環反応に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸(A1)を単離したうえで脱水閉環反応に供してもよく、または単離したポリアミック酸(A1)を精製したうえで脱水閉環反応に供してもよい。
ポリアミック酸(A1)の単離は、上記反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで析出物を得、この析出物を減圧下乾燥する方法、あるいは、反応溶液中の有機溶媒をエバポレーターで減圧留去する方法等により行うことができる。また、このポリアミック酸(A1)を再び有機溶媒に溶解し、次いで貧溶媒で析出させる方法、あるいは、ポリアミック酸(A1)を再び有機溶媒に溶解して得た溶液を洗浄後、該溶液中の有機溶媒をエバポレーターで減圧留去する工程を1回または数回行う方法等により、ポリアミック酸(A1)を精製することができる。
【0039】
−ポリイミド(A1)−
本発明に用いられる重合体(A1)としてのポリイミド(A1)は、光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有するポリイミドである。このようなポリイミド(A1)は、上記のポリアミック酸(A1)を有するアミック酸構造を脱水閉環することにより合成することができる。このとき、アミック酸構造の全部を脱水閉環して完全にイミド化してもよく、あるいはアミック酸構造のうちの一部のみを脱水閉環してアミック酸構造とイミド構造とが併存する部分イミド化物としてもよい。ポリイミド(A1)のイミド化率は、40%以上であることが好ましく、50〜80%であることがより好ましい。
ポリアミック酸(A1)の脱水閉環は、(i)ポリアミック酸(A1)を加熱する方法により、または(ii)ポリアミック酸(A1)を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加し必要に応じて加熱する方法により行うことができる。
【0040】
上記(i)のポリアミック酸(A1)を加熱する方法における反応温度は、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは60〜170℃である。反応温度が50℃未満では脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミド(A1)の分子量が低下する場合がある。ポリアミック酸(A1)を加熱する方法における反応時間は、好ましくは0.5〜48時間であり、より好ましくは2〜20時間である。
一方、上記(ii)のポリアミック酸(A1)の溶液中に脱水剤および脱水閉環触媒を添加する方法において、脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物を用いることができる。脱水剤の使用量は、アミック酸構造単位の1モルに対して0.01〜20モルとすることが好ましい。また、脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等の3級アミンを用いることができる。しかし、これらに限定されるものではない。脱水閉環触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01〜10モルとすることが好ましい。脱水閉環反応に用いられる有機溶媒としては、ポリアミック酸(A1)の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒を挙げることができる。脱水閉環反応の反応温度は好ましくは0〜180℃、より好ましくは10〜150℃であり、反応時間は好ましくは0.5〜20時間であり、より好ましくは1〜8時間である。
上記方法(i)において得られるポリイミド(A1)は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、あるいは得られるポリイミド(A1)を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。一方、上記方法(ii)においてはポリイミド(A1)を含有する反応溶液が得られる。この反応溶液は、これをそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミド(A1)を単離したうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、または単離したポリイミド(A1)を精製したうえで液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤および脱水閉環触媒を除くには、例えば溶媒置換等の方法を適用することができる。ポリイミド(A1)の単離、精製は、ポリアミック酸(A1)の単離、精製方法として上記したのと同様の操作を行うことにより行うことができる。
【0041】
−ポリアミック酸(A2−1)−
本発明に用いられる重合体(A2−1)としてのポリアミック酸(A2−1)は、光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造を有するポリアミック酸である。
このようなポリアミック酸(A2−1)は、どのような合成方法によって合成されたものであってもよいが、例えば
テトラカルボン酸二無水物と、
ジアミン(1)を含むジミアンと
を反応させることにより、合成することができる。
ポリアミック酸(A2−1)を合成するために使用されるテトラカルボン酸二無水物は、ポリアミック酸(A1)を合成するために使用されるテトラカルボン酸二無水物として上記したところと同様である。好ましいテトラカルボン酸二無水物およびその好ましい使用割合についても同様である。
ポリアミック酸(A2−1)を合成するために使用されるジアミンは、ジアミン(1)を含むものであり、ジアミン(1)のみからなるものであってもよく、ジアミン(1)のほかにジアミン(3)を含むものであってもよい。これらジアミン(1)および(3)は、それぞれポリアミック酸(A1)を合成するために使用されるジアミン(1)および(3)として上記したところと同様である。
ポリアミック酸(A2−1)を合成するために用いられるジアミンは、
ジアミン(1)を、全ジアミンに対して0.1〜20モル%含有するものであることが好ましく、0.5〜10モル%含有するものであることがより好ましい。ジアミン(3)の使用割合は、全ジアミンに対して99.9モル%以下であることが好ましく、85〜99.5モル%であることがより好ましい。
ポリアミック酸(A2−1)の合成、単離および精製は、ポリアミック酸(A1)の合成、単離および精製として記載した方法と同様にして行うことができる。
【0042】
−ポリイミド(A2−1)−
本発明に用いられる重合体(A2−1)としてのポリイミド(A2−1)は、光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造を有するポリイミドである。このようなポリイミド(A2−1)は、上記のポリアミック酸(A2−1)を有するアミック酸構造を脱水閉環することにより合成することができる。ポリイミド(A2−1)のイミド化率は、40%以上であることが好ましく、50〜80%であることがより好ましい。
ポリアミック酸(A2−1)の脱水閉環反応ならびに得られたポリイミド(A2−1)の単離および精製は、ポリアミック酸(A1)の脱水閉環反応ならびにポリイミド(A1)の単離および精製として記載した方法と同様にして行うことができる。
【0043】
−ポリオルガノシロキサン(A2−2)−
本発明に用いられる重合体(A2−1)としてのポリオルガノシロキサン(A2−2)は、重合性不飽和結合を有するポリオルガノシロキサンである。このようなポリオルガノシロキサン(A2−2)は、どのような合成方法によって合成されたものであってもよいが、例えば
シラン化合物(1)を含むシラン化合物の混合物を、好ましくは有機溶媒、水および触媒の存在下に加水分解縮合することにより合成することができる。
ポリオルガノシロキサン(A2−2)を合成するために用いられるシラン化合物は、上記の如きシラン化合物(1)のみからなるものであってもよく、あるいは上記シラン化合物(1)のほかに、シラン化合物(2)およびシラン化合物(3)よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものであってもよい。これらのシラン化合物(1)、(2)および(3)は、それぞれポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体を合成するために用いられるシラン化合物(1)、(2)および(3)として上記したところと同様である。
ポリオルガノシロキサン(A2−2)を合成するために用いられるシラン化合物は、上記の如きシラン化合物(1)を、全シラン化合物に対して0.1モル%以上含有するものであることが好ましく、0.1〜20モル%含有するものであることがより好ましく、さらに0.1〜10モル%含有するものであることが好ましい。上記の如きシラン化合物(2)の含有割合は、全シラン化合物に対して70モル%以下であることが好ましく、20〜60モル%であることがより好ましい。また、上記の如きシラン化合物(3)の使用割合は、全シラン化合物に対して70モル%以下であることが好ましく、50モル%以下であることがより好ましい。
上記したところから明らかなように、ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体であるポリオルガノシロキサンをポリオルガノシロキサン(A2−2)として使用してもよい。
ポリオルガノシロキサン(A2−2)の合成および単離は、ポリオルガノシロキサン(A1)の前駆体の合成および単離として上記したところと同様にして行うことができる。
【0044】
−他の重合体−
本発明における(A)重合体は、
重合体(A1)を含むものであるか、あるいは
重合体(A2−1)および重合体(A2−2)の双方を含むものである。
(A)重合体は、重合体(A1)のみからなるもの、もしくは
重合体(A2−1)および重合体(A2−2)のみからなるものであってもよく、またはこれらのほかに他の重合体を含有していてもよい。
上記他の重合体は、上記の如き特定構造を有さない重合体であり、例えば特定構造を有さないポリアミック酸、ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、セルロース誘導体、ポリアセタール誘導体、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート誘導体などを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を適宜に選択して用いることができる。
本発明における他の重合体としては、ポリアミック酸、ポリイミドおよびポリオルガノシロキサンよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
特定構造を有さないポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物と上記ジアミン(3)とを反応させることにより得ることができる。このポリアミック酸を脱水閉環することにより、特定構造を有さないポリイミドを得ることができる。特定構造を有さないポリオルガノシロキサンは、シラン化合物(2)および(3)よりなる群から選択される少なくとも1種を加水分解縮合することにより、得ることができる。これらの合成反応ならびに単離および精製が、特定構造を有する重合体の例に準じて行いうることについては、当業者には自明であろう。
(A)重合体における他の重合体の使用割合は、重合体の合計に対して80重量%以下であることが好ましく、70重量%以下であることがより好ましい。
【0045】
本発明における(A)重合体は、以下のいずれかの態様であることが好ましい。
(1)ポリオルガノシロキサン(A1)のみからなる態様;
(2)ポリオルガノシロキサン(A1)と他の重合体とからなるものであり、該他の重合体が、特定構造を有さないポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である態様;
(3)ポリアミック酸(A1)およびポリイミド(A1)よりなる群から選択される少なくとも1種のみからなる態様;
(4)ポリアミック酸(A1)およびポリイミド(A1)よりなる群から選択される少なくとも1種と他の重合体とからなるものであり、該他の重合体が、特定構造を有さないポリアミック酸およびポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種である態様;ならびに
(5)ポリアミック酸(A2−1)およびポリイミド(A2−1)よりなる群から選択される少なくとも1種と、ポリオルガノシロキサン(A2−2)とからなる態様。
上記態様(5)における各重合体の使用割合は、ポリアミック酸(A2−1)およびポリイミド(A2−1)よりなる群から選択される少なくとも1種とポリオルガノシロキサン(A2−2)との合計に対するポリオルガノシロキサン(A2−2)の割合として、2〜30重量%であることが好ましく、5〜20重量%であることがより好ましい。この態様(5)は、他の重合体を含有しないことが好ましい。
(A)重合体は、その全体として、光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造を、0.5〜5ミリモル/g含むものであることが好ましく、1〜4ミリモル/g含むものであることがより好ましく;
重合性不飽和結合を、1〜15ミリモル/g含むものであることが好ましく、1〜10ミリモル/g含むものであることがより好ましい。
【0046】
[(B)有機溶媒]
本発明における(B)有機溶媒としては、例えばN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、γ−ブチロラクタム、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネ−ト、エチルエトキシプロピオネ−ト、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコール−n−プロピルエーテル、エチレングリコール−i−プロピルエーテル、エチレングリコール−n−ブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテルなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することができる。
【0047】
[重合体組成物]
本発明において用いられる重合体組成物は、上記の如き重合体(A)を、上記の如き(B)有機溶媒に溶解した溶液として調製されることが好ましい。
(B)有機溶媒の使用割合としては、重合体組成物の固形分濃度(重合体組成物中の重合体(A)の重量が重合体組成物の全重量に占める割合)が1〜15重量%となる割合とすることが好ましく、1.5〜8重量%となる割合とすることがより好ましい。
【0048】
<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶表示素子の製造方法は、
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、上記の如き重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経ることを特徴とする。
ここで、基板としては例えばフロートガラス、ソーダガラスの如きガラス;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネートの如きプラスチックなどからなる透明基板などを用いることができる。
上記導電膜としては、透明導電膜を用いることが好ましく、例えばSnOからなるNESA(登録商標)膜、In−SnOからなるITO膜などを用いることができる。この導電膜は、それぞれ、複数の領域に区画されたパターン状導電膜であることが好ましい。このような導電膜構成とすれば、導電膜間に電圧を印加する際(後述)にこの各領域ごとに異なる電圧を印加することによって各領域ごとに液晶分子のプレチルト角の方向を変えることができ、これにより視野角特性をより広くすることが可能となる。
かかる基板の該導電膜上に、重合体組成物を塗布するには、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法などの適宜の塗布方法によることができる。塗布後、該塗布面を、予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)することにより塗膜を形成する。プレベーク条件は、例えば40〜120℃において0.1〜5分であり、ポストベーク条件は、好ましくは120〜300℃、より好ましくは150〜250℃において、好ましくは5〜200分、より好ましくは10〜100分である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001〜1μmであり、より好ましくは0.005〜0.5μmである。
【0049】
このようにして形成された塗膜はこれをそのまま次工程の液晶セルの製造に供してもよく、あるいは液晶セルの製造に先んじて必要に応じて塗膜面に対するラビング処理を行ってもよい。このラビング処理は、塗膜面に対して、例えばナイロン、レーヨン、コットンなどの繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより行うことができる。ここで、特許文献2(特開平5−107544号公報)に記載されているように、一旦ラビング処理を行った後に塗膜面の一部にレジスト膜を形成し、さらに先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去する処理を行い、領域ごとに異なるラビング方向とすることによって、得られる液晶表示素子の視界特性をさらに改善することが可能である。
次いで、前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成する。
ここで使用される液晶分子としては、負の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましく、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶などを用いることができる。液晶分子の層の厚さは、1〜5μmとすることが好ましい。
かかる液晶を用いて液晶セルを製造するには、例えば以下の2つの方法を挙げることができる。
【0050】
第一の方法としては、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部をシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより、液晶セルを製造することができる。あるいは第二の方法として、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外光硬化性のシール剤を塗布し、さらに液晶配向膜面上の所定の数箇所に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせるとともに液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造することができる。
その後、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する。
ここで印加する電圧は、例えば5〜50Vの直流または交流とすることができる。
【0051】
照射する光としては、例えば150〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができるが、300〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。照射光の光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザーなどを使用することができる。前記の好ましい波長領域の紫外線は、前記光源を、例えばフィルター、回折格子などと併用する手段などにより得ることができる。光の照射量としては、好ましくは1,000J/m以上100,000J/m未満であり、より好ましくは1,000〜50,000J/mである。従来知られているPSAモードの液晶表示素子の製造においては、100,000J/m程度の光を照射することが必要であったが、本発明の方法においては、光照射量を50,000J/m以下、さらに10,000J/m以下とした場合であっても所望の液晶表示素子を得ることができ、液晶表示素子の製造コストの削減に資するほか、強い光の照射に起因する電気特性の低下、長期信頼性の低下を回避することができる。
そして、上記のような処理を施した後の液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、液晶表示素子を得ることができる。ここで使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板、またはH膜そのものからなる偏光板などを挙げることができる。
【実施例】
【0052】
合成例P1<重合体(A1)の合成>
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン11g(0.10モル)、{4−[2−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−エトキシ]−フェニル}−フェニル−メタノン17g(0.05モル)、3,5−ジアミノ(2’−メタクリロイルオキシエチル)ベンゾエート79g(0.30モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン26g(0.05モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)750gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は58mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,800gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換(本操作により、脱水閉環反応に使用したピリジンおよび無水酢酸を系外に除去した。以下同じ。)することにより、重合体(A1)であるイミド化率約50%のポリイミド(P−1)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は63mPa・sであった。
【0053】
合成例P2<重合体(A2−1)の合成>
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物112g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン27g(0.25モル)、{4−[2−(2,4−ジアミノ−フェノキシ)−エトキシ]−フェニル}−フェニル−メタノン70g(0.20モル)および3(3,5−ジアミノベンゾイルオキシ)コレスタン26g(0.05モル)をNMP750gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は61mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,800gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、重合体(A2−1)であるイミド化率約50%のポリイミド(P−2)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は68mPa・sであった。
【0054】
合成例P3<他の重合体の合成>
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物110g(0.50モル)ならびにジアミンとしてp−フェニレンジアミン49g(0.20モル)、3,5−ジアミノ安息香酸38g(0.25g)および5ξコレスタン−3−イル−2,4−ジアミノフェニルエーテル25g(0.05モル)をNMP750gに溶解し、60℃で6時間反応を行い、ポリアミック酸を含有する溶液を得た。得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えてポリアミック酸濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は56mPa・sであった。
次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP1,800gを追加し、ピリジン40gおよび無水酢酸51gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、他の重合体であるイミド化率約50%のポリイミド(P−3)を約15重量%含有する溶液を得た。得られたポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えてポリイミド濃度10重量%の溶液として測定した溶液粘度は69mPa・sであった。
【0055】
合成例P4<他の重合体の合成>
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物200g(1.0モル)およびジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル210g(1.0モル)をNMP370gおよびγ―ブチロラクトン3,300gからなる混合溶媒に溶解し、40℃で3時間反応を行うことにより、他の重合体であるポリアミック酸(P−4)を10重量%含有する溶液を得た。このポリアミック酸溶液の溶液粘度は160mPa・sであった、
【0056】
合成例S1<重合体(A2−2)の合成>
[加水分解縮合反応]
撹拌機、温度計、滴下漏斗および還流冷却管を備えた反応容器に、加水分解性シラン化合物として2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(ECETS)123gおよび3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(GMPTS)124g(ECETS:GMPTS=50:50(モル比))ならびに溶媒としてメチルイソブチルケトン500gおよび触媒としてトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、撹拌しつつ、還流下、80℃にて6時間反応を行った。反応終了後、有機層を取り出し、0.2重量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄した後、減圧下で溶媒および水を留去することにより、エポキシ基を有する加水分解縮合物を粘調な透明液体として得た。
この加水分解縮合物について、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に帰属されるピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。
[エポキシ基を有する加水分解縮合物とカルボン酸との反応]
200mLの三口フラスコに、上記で得たエポキシ基を有する加水分解縮合物に、溶媒としてメチルイソブチルケトン30.0g、カルボン酸として4−オクチロキシ安息香酸(OCTBA)75.1g(原料として用いた加水分解性シラン化合物の合計に対して30モル%、上記加水分解縮合物の有するエポキシ基に対して60モル%に相当する。)および触媒としてUCAT 18X(商品名、サンアプロ(株)製。エポキシ化合物の硬化促進剤である。)0.10gを仕込み、100℃で48時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に酢酸エチルを加えて得た有機層を3回水洗し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥した後、溶剤を留去することにより、重合体(A2−2)であるポリオルガノシロキサン(S−1)を251.2g得た。このポリオルガノシロキサン(S−1)につき、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量Mwは7,200であった。
【0057】
合成例S2〜S7<重合体(A1)および他の重合体の合成>
上記合成例S1において、表1に記載した種類および量の加水分解性シラン化合物およびカルボン酸をそれぞれ用いたほかは合成例S1と同様にして加水分解縮合反応および加水分解縮合物とカルボン酸との反応を行うことにより、重合体(A1)であるポリオルガノシロキサン(S−2)〜(S−6)および他の重合体であるポリオルガノシロキサン(S−7)をそれぞれ得た。これらポリオルガノシロキサンの収量およびMwを表1に合わせて示した。
【0058】
【表1】

【0059】
表1における各化合物の略称は、それぞれ以下の意味である。
{加水分解性シラン化合物}
ECETS:2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン
GMPTS:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン
GAPTS:3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン
{カルボン酸}
OCTBA:4−オクチロキシ安息香酸
PCHBA:4−(4−ペンチルシクロヘキシル)安息香酸
DAHBBA:2−(4−ジエチルアミノ−2−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸
DNBA:3,5−ジニトロ−安息香酸
SACY:コハク酸=5ξ−コレスタン−3−イル
AQCA:アントラキノン−2−カルボン酸
表1におけるカルボン酸の使用量は、加水分解性シラン化合物の合計に対するモル比である。合成例S2〜S6においては、それぞれ2種類ずつのカルボン酸を使用した。
【0060】
実施例1
本実施例では、(A)重合体として、重合体(A1)としてのポリイミドを用いた。
<重合体組成物の調製>
(A)重合体として上記合成例P1で得たポリイミド(P−1)を含有する溶液に有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加え、溶媒組成がNMP:BC=50:50(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより、重合体組成物を調製した。
<液晶セルの製造>
上記で調製した重合体組成物を用いて、透明電極のパターン(2種類)および紫外線照射量(3水準)を変更して、計6個の液晶表示素子を製造し、下記のように評価した。
【0061】
[パターンなし透明電極を有する液晶セルの製造]
上記で調製した重合体組成物を、液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いてITO膜からなる透明電極を有するガラス基板の透明電極面上に塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、150℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。
この塗膜に対し、レーヨン布を巻き付けたロールを有するラビングマシーンにより、ロール回転数400rpm、ステージ移動速度3cm/秒、毛足押しこみ長さ0.1mmでラビング処理を行った。その後、超純水中で1分間超音波洗浄を行ない、次いで100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
なお上記ラビング処理は、液晶の倒れ込みを制御し、配向分割を簡易な方法で行う目的で行った弱いラビング処理である。
次に、上記一対の基板のうちの1枚につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化させた。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
上記の操作を繰り返し行い、パターンなし透明電極を有する液晶セルを3個製造した。そのうちの1個はそのまま後述のプレチルト角の評価に供した。残りの2個の液晶セルについては、それぞれ下記の方法により導電膜間に電圧を印加した状態で光照射した後にプレチルト角および電圧保持率の評価に供した。
上記で得た液晶セルのうちの2個について、それぞれ電極間に周波数60Hzの交流10Vを印加し、液晶が駆動している状態で、光源にメタルハライドランプを使用した紫外腺照射装置を用いて、紫外線を10,000J/mまたは100,000J/mの照射量にて照射した。なおこの照射量は、波長365nm基準で計測される光量計を用いて計測した値である。
【0062】
[プレチルト角の評価]
上記で製造した各液晶セルについて、それぞれ非特許文献2(T. J. Scheffer et. al. J. Appl. Phys. vo. 19, p. 2013(1980))に記載の方法に準拠してHe−Neレーザー光を用いる結晶回転法により測定した液晶分子の基板面からの傾き角の値をプレチルト角とした。
光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量100,000J/mの液晶セルのそれぞれのプレチルト角を表2に示した。
[電圧保持率の評価]
上記で製造した各液晶セルに対し、23℃において5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置としては(株)東陽テクニカ製、VHR−1を使用した。
照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量10,000J/mの液晶セルのそれぞれの電圧保持率を表2に示した。
【0063】
[パターニングされた透明電極を有する液晶セルの製造]
上記で調製した重合体組成物を、図1に示したようなスリット状にパターニングされ、複数の領域に区画されたITO電極をそれぞれ有するガラス基板2枚の各電極面上に液晶配向膜印刷機(日本写真印刷(株)製)を用いて塗布し、80℃のホットプレート上で1分間加熱(プレベーク)して溶媒を除去した後、150℃のホットプレート上で10分間加熱(ポストベーク)して、平均膜厚600Åの塗膜を形成した。この塗膜につき、超純水中で1分間超音波洗浄を行なった後、100℃クリーンオーブン中で10分間乾燥することにより、液晶配向膜を有する基板を得た。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)得た。
次いで、上記一対の基板のうちの1枚の基板につき、液晶配向膜を有する面の外縁に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤を塗布した後、一対の基板を液晶配向膜面が相対するように重ね合わせて圧着し、接着剤を硬化した。次いで、液晶注入口より一対の基板間に、ネマチック型液晶(メルク社製、MLC−6608)を充填した後、アクリル系光硬化接着剤で液晶注入口を封止することにより、液晶セルを製造した。
上記の操作を繰り返し行い、パターニングされた透明電極を有する液晶セルを3個製造した。そのうちの1個はそのまま後述の応答速度の評価に供した。残りの2個の液晶セルについては、上記パターンなし透明電極を有する液晶セルの製造におけるのと同様の方法により、導電膜間に電圧を印加した状態で10,000J/mまたは100,000J/mの照射量にて光照射した後に応答速度の評価に供した。
なお、ここで用いた電極のパターンは、PSAモードにおける電極パターンと同種のパターンである。
【0064】
[応答速度の評価]
上記で製造した各液晶セルをクロスニコル状態に配置した2枚の偏光板で挟持したうえで、先ず電圧を印加せずに可視光ランプを照射して液晶セルを透過した光の輝度をフォトマルチメーターにて測定し、この値を相対透過率0%とした。次に液晶セルの電極間に交流60Vを5秒間印加したときの透過率を上記と同様にして測定し、この値を相対透過率100%とした。
このとき各液晶セルに対して交流60Vを印加したときに、相対透過率が10%から90%に移行するまでの時間を測定し、この時間を応答速度と定義して評価した。
光未照射の液晶セル、照射量10,000J/mの液晶セルおよび照射量100,000J/mの液晶セルのそれぞれの応答速度を表2に示した。
【0065】
実施例2
本実施例では、(A)重合体として、重合体(A2−1)としてのポリイミド(P−2)と、重合体(A2−2)としてのポリオルガノシロキサン(S−1)との混合物を用いた。
上記合成例P2で得たポリイミド(P−2)を含有する溶液(ポリイミド(P−2)に換算して80重量部に相当する量)に、有機溶媒としてN−メチル−2−ピロリドン(NMP)およびブチルセロソルブ(BC)を加え、さらに上記合成例S1で得たポリオルガノシロキサン(S−1)を20重量部加えて、溶媒組成がNMP:BC=50:50(重量比)、固形分濃度6.0重量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターを用いてろ過することにより、重合体組成物を調製し、これを用いて各種液晶セルを製造して評価した。
評価結果は表2に示した。
【0066】
実施例3〜8
本実施例では、(A)重合体として、重合体(A1)としてのポリオルガノシロキサンと、他の重合体としてのポリイミドまたはポリアミック酸との混合物を用いた。
上記実施例2において、ポリイミド(P−2)を含有する溶液の代わりに表2に記載したポリマー(ポリイミドまたはポリアミック酸)を含有する溶液を、これに含まれるポリマーが表2に記載した量となるように用い、さらにポリオルガノシロキサン(S−1)の代わりに表2に記載した種類および量のポリオルガノシロキサンを用いたほかは、実施例2と同様にして重合体組成物を調製し、これを用いて各種液晶セルを製造して評価した。
評価結果は表2に示した。
【0067】
比較例1
本比較例では、重合体として、他の重合体であるポリイミドのみを用いた。
上記実施例1において、ポリイミド(P−1)を含有する溶液の代わりに上記合成例P3で得たポリイミド(P−3)を含有する溶液を用いたほかは実施例1と同様にして重合体組成物を調製し、これを用いて各種液晶セルを製造して評価した。
評価結果は表2に示した。
比較例2
本比較例では、重合体として、ともに他の重合体であるポリイミドとポリオルガノシロキサンとの混合物を用いた。
上記実施例2において、
ポリイミド(P−2)を含有する溶液の代わりに、ポリイミド(P−3)を含有する溶液を、これに含まれるポリイミドが70重量部となるように用い、さらにポリオルガノシロキサン(S−1)の代わりにポリオルガノシロキサン(S−7)を30重量部用いたほかは、実施例2と同様にして重合体組成物を調製し、これを用いて各種液晶セルを製造して評価した。
評価結果は表2に示した。
【0068】
【表2】

【0069】
表2の結果から、本発明の方法においては、紫外線照射量を100,000J/m(PSAモードにおいて従来採用されてきた値である。)とすると得られるプレチルト角の程度が過剰となり、10,000J/mまたはそれ以下の照射量において適正なプレチルト角となることが分かる。また、照射量が少ない場合であっても十分に速い応答速度が得られており、さらに電圧保持率にも優れている。
従って、本発明の方法によれば、PSAモードのメリットを少ない光照射量で実現することができるから、高い光照射量に起因する表示ムラの発生、電圧保持特性の低下および長期信頼性の不足の懸念なしに、視野角が広く、液晶分子の応答速度が速く、透過率が高く、そしてコントラストが高い液晶表示素子を製造することができる。
さらに、上記実施例1〜8において使用した各重合体組成物を用い、ガラス基板の有するITO電極のパターンを変更したほかは実施例1と同様にして各種液晶セルを製造して評価した。いずれの重合体組成物を用いた場合も、図2に示したパターンおよび図3に示したパターンの双方において、実施例1〜8とそれぞれ同様の効果が得られた。
【符号の説明】
【0070】
1:ITO電極
2:スリット部
3:遮光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上に、それぞれ、
(A)重合体および
(B)有機溶媒
を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経る液晶表示素子の製造方法であって、
前記(A)重合体が、
(A1)光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有する重合体
を含むものであるか、あるいは
(A2−1)光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造を有する重合体、ならびに
(A2−2)重合性不飽和結合を有する重合体
を含むものである
ことを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
上記光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造が、ベンゾフェノン構造、9,10−ジオキソジヒドロアントラセン構造、1,3−ジニトロベンゼン構造および1,4−ジオキソシクロヘキサ−2,5−ジエン構造よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記(A)重合体が、
光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有するポリオルガノシロキサン、
光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有するポリアミック酸ならびに
該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミド
よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記(A)重合体が、
光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造を有するポリアミック酸ならびに該ポリアミック酸を脱水閉環してなるポリイミドよりなる群から選択される少なくとも1種と
重合性不飽和結合を有するポリオルガノシロキサンと
を含むものである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
上記導電膜のそれぞれが、複数の領域に区画されたパターン状導電膜である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
(A)重合体および(B)有機溶媒を含有する重合体組成物であって、
前記(A)重合体が、
(A1)光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造と、重合性不飽和結合と、の双方を有する重合体を含むものであるか、あるいは
(A2−1)光照射によりラジカルを発生する構造および光増感機能を有する構造のうちの少なくとも1種の構造を有する重合体、ならびに
(A2−2)重合性不飽和結合を有する重合体
を含むものであり、そして
導電膜を有する一対の基板の該導電膜上にそれぞれ塗膜を形成し、
前記塗膜を形成した一対の基板を、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、
前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する工程を経る液晶表示素子の製造方法において、
前記塗膜を形成するために使用されることを特徴とする、前記組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法によって製造されたことを特徴とする、液晶表示素子。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−227284(P2011−227284A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96831(P2010−96831)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】