液晶表示装置、その異常検知方法および電子機器
【課題】装置の異常をリアルタイムに検知する。
【解決手段】 液晶表示装置500は、走査線30とデータ線31との交差に対応して設けられた複数の画素回路Pとを備える。画素回路Pは、画像を表示する表示部の他に液晶の配向状態を示す計測信号を出力する計測部を有する。計測用Xドライバ200Bは、信号線21を介して得られる計測信号Idet[1]〜Idet[m]に基づいて出力階調データDoutを生成する。判定回路340はフレームメモリ320から読み出した入力階調データと出力階調データDoutとを比較し、比較結果に基づいて第1検知信号DET1または第2検知信号DET2を有効にする。
【解決手段】 液晶表示装置500は、走査線30とデータ線31との交差に対応して設けられた複数の画素回路Pとを備える。画素回路Pは、画像を表示する表示部の他に液晶の配向状態を示す計測信号を出力する計測部を有する。計測用Xドライバ200Bは、信号線21を介して得られる計測信号Idet[1]〜Idet[m]に基づいて出力階調データDoutを生成する。判定回路340はフレームメモリ320から読み出した入力階調データと出力階調データDoutとを比較し、比較結果に基づいて第1検知信号DET1または第2検知信号DET2を有効にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、その異常検知方法および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶表示装置は、画像を表示するパネル基板と信号の入出力を行うためのフレキシブル基板とを備えることが多い。フレキシブル基板には複数の信号配線が設けられており、パネル基板の端部には複数の信号配線と接続される複数の入力端子が設けられている。このような構成において、パネル基板に入力端子の電圧の論理和を演算する論理和回路を形成し、その出力信号をフレキシブル基板に出力する技術が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2008−15287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の液晶表示装置では、信号配線の断線を検出するために、複数の信号配線に対して検査信号を供給する必要がある。このため、装置の異常は、製造時に検出することができても、画像を表示するための信号を信号配線に供給する動作時には検出することができなかった。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、動作時に異常を自律的に検出可能な液晶表示装置などを提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明に係る液晶表示装置は、画像を表示するものであって、複数の走査線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数のデータ線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数の信号線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して設けられた複数の画素と、前記液晶表示装置の異常を検知して検知信号を生成する検知手段(例えば、図1に示す200B、320、340、およびTBLが対応する)とを備え、前記複数の画素の各々は、第1電極と、第2電極と、液晶とを有する表示部と、前記液晶の配向状態を示す計測信号を出力する計測部とを備え、前記検知手段は、前記計測信号が所定の条件を充足しなかった場合に前記検知信号を有効とする。なお、計測信号は複数の信号線を介して検知手段に供給される。
【0005】
この発明によれば、表示部では液晶に電圧を印加することにより所定の階調を表示する。ここで、液晶表示装置に異常があると、液晶の配向状態が正常でなくなる。検知手段は計測信号に基づいて検知信号を有効とするので、階調制御の結果である液晶の配向状態に応じて液晶表示装置の異常を検知することが可能となる。この結果、点欠陥や線欠陥といった異常が発生した場合に、これを検知することが可能となる。点欠陥や線欠陥といった異常は、例えば、環境温度の上昇に伴って発生する。
【0006】
上述した液晶表示装置において、前記検知手段は、前記複数の画素の各々において表示すべき階調を示す入力階調データを記憶する記憶手段(例えば、図1に示す320)と、前記計測信号に基づいて、前記複数の画素の各々において表示された階調を示す出力階調データを生成する出力階調データ生成手段(例えば、図1に示す200B)と、前記記憶手段から読み出した前記入力階調データと前記出力階調データとを比較する比較手段(例えば、図9に示すSa2)と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記検知信号を有効とする有効化手段(例えば、図9に示すSa6、Sa9)とを備える。この発明によれば、入力階調データと出力階調データとを比較する。これは、目標値と制御結果の比較に相当する。そして、比較結果に応じて検知信号を有効とするから、正確に液晶表示装置の異常を検知できる。
【0007】
ここで、前記有効化手段は、前記複数の画素の各々について、前記入力階調データを含む所定範囲に前記出力階調データが含まれていないことを第1の判定条件とする判定手段(例えば、図9に示すSa2)を有し、前記複数の画素の少なくとも1つについて、前記第1の判定条件が肯定されることを、前記検知信号を有効とする必要条件とすることが好ましい(例えば、図9に示すSa5)。この場合には、
【0008】
さらに、前記判定手段は、所定周期で前記第1の判定条件に基づく判定を実行し(例えば、図12に示すSa2)、前記第1の判定条件が所定回数だけ継続して否定されることを第2の判定条件として判定し(例えば、図12に示すSa4’)、前記有効化手段は、前記複数の画素の少なくとも1つについて、前記第1の判定条件および前記第2の判定条件が肯定されることを、前記検知信号を有効とする必要条件とする(例えば、図12に示すSa5’)。この場合には、所定周期で判定を実行し、所定回数だけ第1の判定条件が否定されることを第2の判定条件とするので、異常を検知する要素に時間を加えることができる。この結果、突発的な異常を排除できるので、装置の異常をより正確に検知できる。特に、計測部を画面に対象物が接触したことを検知するセンシング回路と兼用する場合には、指示入力のタッチによる液晶の配向状態の変化は短時間に限られるので、時間を判定の要素とすることで、装置の異常と指示入力とを分離することが可能となる。
【0009】
くわえて、前記有効化手段は、前記複数の画素のうち、所定数以上の画素について前記第1の判定条件および前記第2の判定条件が充足されることを、前記検知信号を有効とする必要充分条件とすることが好ましい(例えば、図12に示すSa5’)。この場合には、例えば、所定数を視覚として検知可能な数とすれば、人が点欠陥を検知でない場合には異常とせず、検知できる場合に異常とすることができる。
【0010】
また、上述した液晶表示装置は、前記出力階調データに基づいて、対象物が画面を押圧したことを検出する検出手段(例えば、図10に示す400)を備えることが好ましい。この場合には計測部をタッチのセンシング回路として異常を検知する構成と兼用することができる。
次に、本発明に係る電子機器は、上述した液晶表示装置のいずれかを備える。例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、あるいは情報端末などが該当する。
【0011】
さらに、本発明は、液晶表示装置の異常検知方法として以下のように把握される。複数の走査線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数のデータ線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数の信号線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して設けられた複数の画素とを備え、前記複数の画素の各々は、第1電極と、第2電極および液晶を有する表示部と、前記液晶の配向状態を示す計測信号を出力する計測部とを備える液晶表示装置において異常を検知する方法であって、前記複数の画素の各々において表示すべき階調を示す入力階調データを記憶し、前記計測信号に基づいて、前記複数の画素の各々において表示された階調を示す出力階調データを生成し、前記入力階調データと前記出力階調データとを比較し、比較結果に基づいて、前記液晶表示装置の異常を検知することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。液晶表示装置500は、表示領域Aを備える。表示領域Aには、n本の走査線30と、m本のデータ線31が形成されている。但し、nおよびmは、2以上の自然数である。また、n本の走査線30とm本のデータ線31の各交差に対応してn×m個の画素回路Pがマトリクス状に配置されている。さらに、n本の第1制御線10および第2制御線11が、n本の走査線31と平行に設けられている。
後述するように画素回路Pは、表示部Paと計測部Pbとを備える。表示部Paでは、液晶の透過率を制御するように液晶に電圧を印加し、計測部Pbは液晶の配向状態を示す計測信号Idetを生成する。
【0013】
表示用Yドライバ100Aは、n本の走査線30を順次選択するための走査信号Y1,Y2,…Ynを生成して、各画素回路Pに各々供給する。例えば、1行目の走査線30に供給される走査信号Y1は、1垂直走査期間(1F)の最初のタイミングから1水平走査期間(1H)に相当する幅を有するパルスである。以降、このパルスを1Hずつ順次シフトしたものが、2行目〜n行目の走査線30の各々に走査信号Y2〜Ynとして供給される。表示用Xドライバ200Aは、選択された走査線30に接続される画素回路Pの表示部Pa各々に対し、表示すべき階調に応じた大きさのデータ信号X1,X2,…Xmを供給する。
【0014】
計測用Yドライバ100Bは、第1制御線10にリセット信号RESを供給すると共に、第2制御線11に選択信号SELを供給する。画素回路Pの計測部Pbはリセット信号RESおよび選択信号SELによって動作が制御され、計測信号Idetを生成して信号線21に出力する。計測用Xドライバ200Bは、計測信号Idet[1]〜Idet[m]に基づいて、各画素回路Pで表示中の階調を示す出力階調データDoutを生成する。
【0015】
タイミング制御回路310は、表示用Yドライバ100A、計測用Yドライバ100B、表示用Xドライバ200A、計測用Xドライバ200Bにクロック信号やスタートパルスといった各種の制御信号を供給する。フレームメモリ320に入力階調データDinが供給され、1フレーム分のデータが記憶される。このフレームメモリ320は同時に読み書きが可能である。フレームメモリ320から読み出された入力階調データDinは、1水平期間分のデータを記憶するラインメモリ330を解して、表示用Xドライバ200Aに供給される。
【0016】
判定回路340は、出力階調データDoutに基づいて、液晶表示装置500の異常を検知して第1検知信号DET1または第2検知信号DET2を有効とする。
パネル制御回路350は第1検知信号DET1が有効になると、フレームメモリ320に異常であることを使用者に知らせるメッセージデータMDを出力する。メッセージデータMDは、例えば、「動作不良」、あるいは、「異常」といった文字を表示するための階調データである。
フレームメモリ320は、メッセージデータMDを受けとると、入力階調データDinの替わりにあるいは、入力階調データDinとメッセージデータMDとを合成して、「動作不良」や「異常」といった文字を画像にスパーインポーズして記憶する。これにより、表示領域Aには、動作の不具合を示す情報が表示されることになるので、使用者は装置を修理するなどの対応を迅速に取ることができる。
【0017】
また、第2検知信号DET2が有効になると、パネル制御回路350は、電源供給を停止するように電源回路360を制御する。これによって、故障が拡大する前に電源供給を強制的に遮断することが可能となる。判定回路340の動作については後述する。
【0018】
図2に画素回路Pの構成を示す。同図に示すように画素回路Pは、画像の表示を行う表示部Paと、液晶35の配向状態を計測して計測信号を出力する計測部Pbを備える。
表示部Paは、図2に示すようにトランジスタ33と、画素電極34と、共通電位Vcomが供給される対向電極36と、画素電極34と対向電極36との間に挟持された液晶35を備える。トランジスタ33はTFT(Thin Film Transistor)で構成され、そのゲートは走査線30に、ドレインはデータ線31に、ソースは画素電極34に接続される。
【0019】
表示用Yドライバ100Aは、n本の走査線30を順次選択するための走査信号Y1,Y2,…Ynを生成して、各画素回路Pに各々供給する。例えば、1行目の走査線30に供給される走査信号Y1は、1垂直走査期間(1F)の最初のタイミングから1水平走査期間(1H)に相当する幅を有するパルスである。以降、このパルスを1Hずつ順次シフトしたものが、2行目〜n行目の走査線30の各々に走査信号Y2〜Ynとして供給される。一方、表示用Xドライバ200Aは、選択された走査線30に接続されるm個の画素回路Pの各々に対し、表示すべき階調に応じた大きさのデータ信号X1,X2,…Xmを供給する。
【0020】
次に、計測部Pbは、計測用Yドライバ100Bと計測用Xドライバ200Bとによって駆動され、静電容量の変化を検出する回路である。計測部Pbは、増幅トランジスタ41、リセットトランジスタ42、および選択トランジスタ43を備える。これらのトランジスタは、上述した画素回路Pのトランジスタ33と同様にTFTで構成され、同じプロセスで形成される。
リセットトランジスタ42のゲートには、第1制御線10を介してリセット信号RESが供給される。リセットトランジスタ42のドレインは電源線20に接続され、そのソースは増幅トランジスタ41のゲートと接続される。電源線20には電圧VRHが供給される。
【0021】
増幅トランジスタ41のドレインは電源線20に接続され、そのソースは選択トランジスタ43のドレインに接続される。選択トランジスタ43のソースは信号線21に接続され、そのゲートには第2制御線11を介して選択信号SELが供給される。また、増幅トランジスタ41のゲートと第1制御線10との間には、基準容量素子44が設けられている。さらに、静電容量検出素子45の一方の端子は、増幅トランジスタ41のゲートに接続され、その他方の端子には固定電位Vxが供給される。計測部Pbは表示部Paに近接して設けられているので、表示部Paにおける液晶35の配向状態が表示すべき階調に応じて変化すると、静電容量検出素子45における容量値もその影響を受けて変化する。したがって、静電容量検出素子45の容量を計測することによって、表示に寄与する液晶35の配向状態を計測することができる。なお、固定電位Vxは共通電位Vcomと異なる電位であってもよいし、一致していてもよい。また、基準容量素子44はリセットトランジスタ42のゲート・ソース間に発生する寄生容量で代用してもよく、積極的に素子を形成しなくてもよい。
【0022】
ここで、増幅トランジスタ41はインピーダンス変換する機能を有する。すなわち、増幅トランジスタ41のゲートは、入力インピーダンスがハイインピーダンスであり、増幅トランジスタ41のソースは、出力インピーダンスがローインピーダンスである。仮に、インピーダンスを変換しないで出力すると、容量の変化に応じた小さな電荷が画素回路Pから計測信号として出力される。これに対して、本実施形態では、増幅トランジスタ41からは、そのゲート電位に応じた大きさの定電流が出力される。したがって、計測信号のSN比を向上させることができる。
【0023】
次に、計測部Pbの動作を図3〜図6を参照して説明する。計測部Pbは、リセット期間Tres、センシング期間Tsen、および読出期間Toutを一単位として動作する。なお、リセット信号RESおよび選択信号SELは、計測用Yドライバ100Bによって生成される。
まず、リセット期間Tresにおいて、リセット信号RESのレベルはVDとなり、リセットトランジスタ41がオン状態となる。このとき、選択信号SELはローレベルであり選択トランジスタ43はオフ状態となる。すると、図4に示すように増幅トランジスタ41のゲートの電位が電源電位VRHにリセットされる。
【0024】
次に、リセット期間Tresに続くセンシング期間Tsenでは、リセット信号RESのレベルがVDからGND(=0V)に変化する。すると、図5に示すようにリセットトランジスタ42がオフ状態となる。第1制御線10は基準容量素子44の一方の電極と接続されているので、基準容量素子44はカップリング容量として機能し、リセット信号RESのレベルが変化すると増幅トランジスタ41のゲート電位が変化する。
【0025】
ここで、基準容量素子44の容量値をCr、静電容量検出素子45の容量値をCs、第1制御線10の電位変化をΔVgate(=VD)とすれば、増幅トランジスタ41のゲート電位の変化分ΔVは、以下に示す式(1)で与えられる。但し、寄生容量は無視する。
ΔV=ΔVgate×Cr/(Cr+Cs)……(1)
式(1)から、静電容量検出素子45の容量値Csが大きければ容量カップリングによる変化分ΔVは小さく、逆に容量値Csが小さければ変化分ΔVは大きいことがわかる。したがって、静電容量検出素子45の容量変化をゲート電位に反映させることができる。
【0026】
次に、読出期間Toutでは、選択信号SELがローレベルからハイレベルに変化する。すると、図6に示すように選択トランジスタ43がオン状態となる。これによって、増幅トランジスタ41のゲート電位に応じた計測信号Idetが信号線21に流れる。
ところで、読出期間Toutにおいて、選択トランジスタ43を確実にオン状態とするためには、読出期間Toutに先立って、信号線21の電位をプリチャージ電位Vpreにプリチャージすることが好ましい。この例では、図3に示すように、リセット期間Tresおよびセンシング期間Tsenをプリチャージ期間Tpreとし、当該期間において信号線21にプリチャージ電位Vpreを供給している。
【0027】
次に、図7はXドライバ200Aの構成を示すブロック図である。この図に示すように、Xドライバ200Aは、シフトレジスタ210、線順次変換回路220、および駆動回路230を備える。シフトレジスタ210は、Xクロック信号XCKに同期してXスタート信号XSPを順次シフトして、排他的に有効となるシフト信号S1〜Smを生成する。
線順次変換回路220は、m個の単位メモリMを備え、これを用いて、点順次の入力階調データDinを線順次の画像データに変換する。単位メモリMは、第1メモリM1と第2メモリM2とを備える。kを1からmまでの任意の自然数としたとき、左からk番目に位置する単位メモリMには、シフト信号Skと入力階調データDinとが供給される。シフト信号Skが有効になると、入力階調データDinが第1メモリM1に取り込まれる。
第2メモリM2は、1H周期のラッチ信号LATが有効になると、第1メモリM1の出力データを取り込む。ここで、ラッチ信号LATは、表示用Xドライバ200内の他の第2メモリM2にも共通して供給される。したがって、ラッチ信号LATによって規定されるタイミングで、入力階調データDinが線順次のデータに変換される。
【0028】
単位回路Uは、DA変換回路U1、AD変換回路U2、および逆ガンマ回路U3を備える。DA変換回路U1は、第2メモリM2から供給される入力階調データDin’をデジタル信号からアナログ信号に変換してデータ信号Dataを生成する。この際、DA変換回路U1はガンマ補正を施す。DA変換回路U1は、液晶35の特性を考慮したガンマ補正を実行する機能と、データ信号をデータ線31を介して画素回路P(表示部Pa)に書き込む機能を有する。
また、駆動回路230は、m個のDA変換回路を備える。DA変換回路は線順次の入力階調データをアナログ信号に変換する。この際、DA変換回路はガンマ補正を施す。DA変換回路は、液晶35の特性を考慮したガンマ補正を実行する機能と、データ信号X1〜Xmをデータ線31を介して画素回路P(表示部Pa)に書き込む機能を有する。
【0029】
図8に、計測用Xドライバ200Bの構成を示す。計測用Xドライバ200Bは、m個の単位回路Uを備えた出力階調データ生成回路240と点順次変換回路250を備える。
k番目の単位回路Uは、計測信号Idet[k]をアナログ信号に変換するAD変換回路U1と逆ガンマ回路U2とを備える。AD変換回路U1は、画素回路P(計測部Pb)から読み出した計測信号Idetをアナログ信号からデジタル信号に変換する。逆ガンマ回路U2は、DA変換回路のガンマ補正と逆の特性を与える逆ガンマ補正を実行する。このようにして逆ガンマ回路U2は、液晶35の配向状態、すなわち実際の表示階調を示す出力階調データDoutを出力する。
点順次変換回路250は、線順次で与えられる出力階調データ生成回路24の出力階調データDout[1]〜Dout[m]を点順次に変換して出力階調データDoutを生成する。
【0030】
次に、判定回路340で実行される判定処理について、図9に示すフローチャートを参照して説明する。判定回路340は、例えば、1フレームに1回発生する割り込み信号を検知して、判定処理を実行する。まず、判定回路340は、フレームメモリ320から入力階調データを読み出す(ステップSa1)。次に、判定回路340は、入力階調データDinを含む正常範囲に出力階調データDoutが含まれるか否かを判定する(ステップSa2)。この判定は、画素ごとに実行される。この例では、1フレーム当たりn×m個の画素について判定が実行される。
【0031】
正常範囲に含まれるか否かについては、例えば、Din−X<Dout<Din+Xを充足するか否かを判定する。この場合には、入力階調データDinを中心としてデータ値2Xの間に出力階調データDoutがあれば正常とされる。
また、入力階調データDinと出力階調データDoutが各々kビットのデータである場合に、入力階調データDinと出力階調データDoutとが上位Jビットで一致すれば、正常としてもよい。但し、kは2以上の自然数、Jはより小さい自然数である。例えば、入力階調データDinと出力階調データDoutとが8ビットである場合、入力階調データDinの上位4ビットと、出力階調データDoutの上位4ビットが一致すればよい。このように、正常とされる範囲の中心に入力階調データDinが必ずしも位置しなくてもよい。
【0032】
次に、ステップSa2の判定条件が否定される場合には、判定回路340は、当該画素の判定データに「1」を加算して、判定テーブルTBLに記憶する(ステップSa3)。なお、初期状態における判定データのデータ値は「0」である。判定テーブルTBLは、n×m個の判定データを記憶可能である。ステップSa2の判定条件が肯定される場合には、ステップSa3の処理が実行されず、処理がステップSa4に進む。したがって、出力階調データDoutが正常範囲にある場合には、判定データのデータ値は「0」のままである。
【0033】
判定回路340は、ステップSa4において、1フレームの処理が終了したか否かを判定する。処理が終了していない場合には、ステップSa1に戻り、1フレームの処理が終了するまでステップSa1からステップSa4を繰り返す。そして、1フレームの処理が終了すると、判定回路340は、判定テーブルTBLにアクセスしてn×m個の画素について判定データの総和を算出し、総和Sが第1基準値REF1以上であるか否かを判定する(ステップSa5)。
【0034】
次に、S≧REF1であれば、ステップSa5の判定条件が肯定される。この場合、判定回路340は処理をステップSa6に進め、第1検知信号DET1を有効とする。一方、S<REF1であれば、ステップSa5の判定条件が否定される。この場合、判定回路340は処理をステップSa7に進め、第1検知信号DET1を無効とする。
【0035】
次に、判定回路340は、総和Sが第2基準値REF2以上であるか否かを判定する(ステップSa8)。但し、REF1>REF2である。この判定条件が肯定される場合、判定回路340は第2検知信号DET2を有効とする一方(ステップSa9)、判定条件が否定される場合には、判定回路340は第2検知信号DET2を無効とする(ステップSa10)。
【0036】
上述したように第1検知信号DET1が有効になると、パネル制御回路350は電源供給を停止するように電源回路360を制御する。したがって、第1検知信号DET1が有効になると、液晶表示装置500の動作が停止する。たとえば、REF1=n・m/3に設定すれば、n×m個の画素のうち1/3以上の画素で異常となった場合に、動作を自動的に停止させることができる。
一方、第2基準値REF2は第1基準値REF1より小さく設定されている。例えば、REF2=10に設定すれば、10未満の画素の異常については許容し、10以上であれば、メッセージを表示することになる。第1基準値REF1は、故障がさらに拡大する可能性が高い値に設定することが好ましい。本実施形態では、異常の程度に応じて検知信号を有効にするので、異常の程度に応じた対応が可能となる。
さらに、本実施形態によれば、画像の表示を停止して装置を検査する必要がないので、液晶表示装置500の動作中に異常をリアルタイムで検知できるといった効果を奏する。
【0037】
<2.第2実施形態>
図10に第2実施形態に係る液晶表示装置600のブロック図を示す。この液晶表示装置600は、液晶35の配向状態を計測する計測部Pbを、指やタッチペン等の対象物が画面に接触したことを検出するセンシング回路と兼用している。液晶表示装置600は、位置特定回路400を備える点および判定回路340の動作を除いて、図1に示す第1実施形態の液晶表示装置500と同様である。
【0038】
位置特定回路400は、出力階調データDoutに基づいて、対象物が画面に接触している位置を特定する。計測部Pbに設けられた静電容量検出素子45による静電容量の変化を図11を参照して説明する。静電容量検出素子45は、図11に示すように第1電極45aと第2電極45bとの間に液晶35を挟持して構成される。指やタッチペン等の対象物が液晶表示装置500の画面に触れていない状態では、同図(A)に示すように第1電極45aと第2電極45bとが平行である。これに対し、同図Bに示すように指やタッチペン等の対象物によって画面が押されると、第2電極45bが撓み、第1電極45aと第2電極45bの距離が短くなる。このため、対象物が画面に触れると、静電容量検出素子45の容量値Csが大きくなる。計測信号Idetは静電容量検出素子45の容量値Csの計測結果である。そして、出力階調データDoutは計測信号Idetに基づいて生成される。
【0039】
したがって、出力階調データDoutを閾値と比較することで、指やタッチペン等の対象物が画面に接触したか否かを検出することができる。また、この例の基準容量素子44は一方の電極として半導体層47を用い、他方の電極としてゲート配線48を用い、それらの間にゲート酸化膜49を挟持して構成される。なお、半導体層47、ゲート配線48、およびゲート酸化膜49は、他のトランジスタ41や42と同一のプロセスによって形成される。したがって、基準容量素子44を形成するために特別なプロセスは不要であり、製造コストを削減することができる。
【0040】
図12は、判定回路340の判定動作を示すフローチャートである。第2実施形態の判定処理は、ステップSa3’およびスッテプSa4’を追加した点、並びにステップSa5・Sa8の替わりにステップSa5’・Sa8’を備える点を除いて、第1実施形態の判定処理と同じである。
第2実施形態では、判定データの他に検出データを用いて、第1検知信号DET1および第2検知信号DET2の有効・無効を制御する。判定データは、前のフレームにおける判定結果に応じてデータ値が変動する一方、検出データは現在のフレームにおいて有効・無効を制御するために用いられ、そのデータ値は前のフレームと無関係である。
【0041】
出力階調データDoutが正常範囲外である場合には、着目する画素の判定データに「1」加算する一方、正常範囲内である場合には、判定データを「0」に設定する(ステップSa4’)。したがって、例えば、20フレームに亘って出力階調データDoutが正常範囲外であれば、当該画素の判定データ値は「20」となる。つまり、判定データ値を参照すれば、異常が継続している時間を知ることができる。
【0042】
次に、判定回路340は、閾値Y以上の判定データを「1」、Y未満の判定データを「0」に変換して検出データを生成する(ステップSa4’)。この検出データを参照すれば、異常が所定時間継続した画素を知ることができる。そして、判定データの替わりに検出データを用いて、第1検知信号DET1および第2検知信号DET2の有効・無効を決定する(ステップSa5’〜Sa10)。したがって、異常が所定時間継続した画素の数が第1基準値REF1以上となれば第1検知信号DET1が有効化され、電源が遮断される。また、異常が所定時間継続した画素の数が第2基準値REF2以上で第1基準値REF1未満となれば第2検知信号DET2が有効化され、メッセージが表示される。
【0043】
このように第2実施形態では、フレーム周期で出力階調データDoutが正常範囲内であるか否かを判定し(第1の判定条件)、さらに、この判定条件が所定回数(閾値Y)だけ継続して否定されると(第2の判定条件)と検出データを「1」にセットする。そして、これを全ての画素について実行し、検出データの総和がある値以上である場合に検知信号を有効とする。つまり、複数の画素の少なくとも1つについて、第1の判定条件および第2の判定条件が肯定されることを、検知信号を有効とする必要条件としている。そして、判定回路340は、複数の画素のうち、第2基準値REF2以上の画素について第1の判定条件および第2の判定条件が充足されることを、第1検知信号DET1または第2検知信号DET2を有効とする必要充分条件としている。
【0044】
このように出力階調データDoutが正常範囲内に無いことを異常の検知の条件としたのは、第2実施形態に係る液晶表示装置600がタッチ検出機能を備えているからである。すなわち、指やペンなどの対象物によって画面が押されると、その部分の配向状態が変化するため、出力階調データDoutの値が正常範囲外になることが多い。また、タッチがされることを考慮して正常範囲を設定すると、異常を検知する感度が低下する。このため、出力階調データDoutと入力階調データDinとの差分が、装置の異常に起因するものであるのか、あるいは、対象物の接触に起因するものかを区別する必要がある。ところで、人が画面をタッチするのは何らかの指示を入力するために行うことが多い。タッチの継続にはおのずと限界がある。そこで、正常範囲内に無いことが所定時間継続することを異常検知の判定条件としたのである。これによって、人の画面タッチと装置の異常を分離することが可能となる。
このため、所定時間は、人が画面をタッチすると想定される時間に設定することが好ましい。例えば、銀行の預金払出装置(ATM)では、タッチ入力によって、画面が切り換る。この画面の切り替えに要する時間を所定時間としてもよい。
【0045】
<3.変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形が可能である。
(1)上述した第1実施形態においても第2実施形態と同様の判定処理を実行してもよいことは勿論である。この場合は、所定時間を規定する閾値Yを適宜設定することによってノイズの影響を除去することが可能となる。
(2)上述した第1実施形態および第2実施形態において、第1検知信号DET1と第2検知信号DET2とのうちいずれか一方を生成するようにしてもよい。
【0046】
(3)上述した第1実施形態および第2実施形態では、計測信号Idetに基づいて生成された出力階調データDoutと入力階調データDinとを比較し、比較結果に基づいて装置の異常を検知する検知信号を生成したが、入力階調データDinと比較することなく、出力階調データDoutのみから異常を検知してもよい。換言すれば、液晶の配向状態を示す計測信号Idetが所定の条件を充足しなかった場合に検知信号を有効としてもよい。
一般に、液晶には一定の応答時間がある。すなわち、液晶に印加する電圧を変化させても液晶の配向状態が変化するまでには一定時間を要する。ここで、計測信号Idetは液晶の配向状態を示している。液晶の応答時間を考慮すると、1フレームの前後で計測信号Idetが変化しうる範囲は限られている。そこで、1フレーム前の計測信号Idetと現在のフレームの計測信号Idetとの差分を演算し、差分値が所定値を超える場合に、異常と判定してもよい。ここで、所定値は、液晶の応答時間を考慮して異常が判定できるように設定すればよい。
【0047】
(4)上述した第1実施形態および第2実施形態において、画素電極34と共通電極36とを素子基板に形成して液晶35に横電界を印加してもよい。この場合には、静電容量検出素子45の2つの電極を画素電極34および共通電極36と同様に素子基板に形成してもよい。要は、液晶35の配向状態を直接的、あるいは間接的に計測できるように静電容量検出素子45の2つの電極を配置すればよい。
【0048】
<4.応用例>
次に、本発明に係る液晶表示装置を利用した電子機器について説明する。図13は、液晶表示装置500を表示部として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示部としての液晶表示装置500(600)と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。
図14に、実施形態に係る液晶表示装置500を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示部としての液晶表示装置500(600)を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、液晶表示装置500に表示される画面がスクロールされる。
図15に、実施形態に係る液晶表示装置500を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示部としての液晶表示装置500(600)を備える。
なお、本発明に係る液晶表示装置が適用される電子機器としては、図13から図15に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】画素回路の構成を示す回路図である。
【図3】計測部の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】リセット期間における計測部の動作を示す説明図である。
【図5】センシング期間における計測部の動作を示す説明図である。
【図6】読出期間における計測部の動作を示す説明図である。
【図7】表示用Xドライバの構成を示すブロック図である。
【図8】計測用Xドライバの構成を示すブロック図である。
【図9】第1実施形態の判定処理の動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図11】静電容量検出素子における静電容量の変化を示す説明図である。
【図12】第2実施形態の判定処理の動作を説明するタイミングチャートである。
【図13】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図15】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
500,600……液晶表示装置、A……表示領域、P……画素回路、Pa……表示部、Pb……計測部、100A……表示用Yドライバ、100B……計測用Yドライバ、200A……表示用Xドライバ、200B……計測用Xドライバ、340……判定回路、Din……入力階調データ、Idet……計測信号、Dout……出力階調データ、DET1……第1検知信号、DET2……第2検知信号。
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置、その異常検知方法および電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の液晶表示装置は、画像を表示するパネル基板と信号の入出力を行うためのフレキシブル基板とを備えることが多い。フレキシブル基板には複数の信号配線が設けられており、パネル基板の端部には複数の信号配線と接続される複数の入力端子が設けられている。このような構成において、パネル基板に入力端子の電圧の論理和を演算する論理和回路を形成し、その出力信号をフレキシブル基板に出力する技術が特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2008−15287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の液晶表示装置では、信号配線の断線を検出するために、複数の信号配線に対して検査信号を供給する必要がある。このため、装置の異常は、製造時に検出することができても、画像を表示するための信号を信号配線に供給する動作時には検出することができなかった。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、動作時に異常を自律的に検出可能な液晶表示装置などを提供することを解決課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために、本発明に係る液晶表示装置は、画像を表示するものであって、複数の走査線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数のデータ線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数の信号線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して設けられた複数の画素と、前記液晶表示装置の異常を検知して検知信号を生成する検知手段(例えば、図1に示す200B、320、340、およびTBLが対応する)とを備え、前記複数の画素の各々は、第1電極と、第2電極と、液晶とを有する表示部と、前記液晶の配向状態を示す計測信号を出力する計測部とを備え、前記検知手段は、前記計測信号が所定の条件を充足しなかった場合に前記検知信号を有効とする。なお、計測信号は複数の信号線を介して検知手段に供給される。
【0005】
この発明によれば、表示部では液晶に電圧を印加することにより所定の階調を表示する。ここで、液晶表示装置に異常があると、液晶の配向状態が正常でなくなる。検知手段は計測信号に基づいて検知信号を有効とするので、階調制御の結果である液晶の配向状態に応じて液晶表示装置の異常を検知することが可能となる。この結果、点欠陥や線欠陥といった異常が発生した場合に、これを検知することが可能となる。点欠陥や線欠陥といった異常は、例えば、環境温度の上昇に伴って発生する。
【0006】
上述した液晶表示装置において、前記検知手段は、前記複数の画素の各々において表示すべき階調を示す入力階調データを記憶する記憶手段(例えば、図1に示す320)と、前記計測信号に基づいて、前記複数の画素の各々において表示された階調を示す出力階調データを生成する出力階調データ生成手段(例えば、図1に示す200B)と、前記記憶手段から読み出した前記入力階調データと前記出力階調データとを比較する比較手段(例えば、図9に示すSa2)と、前記比較手段の比較結果に基づいて、前記検知信号を有効とする有効化手段(例えば、図9に示すSa6、Sa9)とを備える。この発明によれば、入力階調データと出力階調データとを比較する。これは、目標値と制御結果の比較に相当する。そして、比較結果に応じて検知信号を有効とするから、正確に液晶表示装置の異常を検知できる。
【0007】
ここで、前記有効化手段は、前記複数の画素の各々について、前記入力階調データを含む所定範囲に前記出力階調データが含まれていないことを第1の判定条件とする判定手段(例えば、図9に示すSa2)を有し、前記複数の画素の少なくとも1つについて、前記第1の判定条件が肯定されることを、前記検知信号を有効とする必要条件とすることが好ましい(例えば、図9に示すSa5)。この場合には、
【0008】
さらに、前記判定手段は、所定周期で前記第1の判定条件に基づく判定を実行し(例えば、図12に示すSa2)、前記第1の判定条件が所定回数だけ継続して否定されることを第2の判定条件として判定し(例えば、図12に示すSa4’)、前記有効化手段は、前記複数の画素の少なくとも1つについて、前記第1の判定条件および前記第2の判定条件が肯定されることを、前記検知信号を有効とする必要条件とする(例えば、図12に示すSa5’)。この場合には、所定周期で判定を実行し、所定回数だけ第1の判定条件が否定されることを第2の判定条件とするので、異常を検知する要素に時間を加えることができる。この結果、突発的な異常を排除できるので、装置の異常をより正確に検知できる。特に、計測部を画面に対象物が接触したことを検知するセンシング回路と兼用する場合には、指示入力のタッチによる液晶の配向状態の変化は短時間に限られるので、時間を判定の要素とすることで、装置の異常と指示入力とを分離することが可能となる。
【0009】
くわえて、前記有効化手段は、前記複数の画素のうち、所定数以上の画素について前記第1の判定条件および前記第2の判定条件が充足されることを、前記検知信号を有効とする必要充分条件とすることが好ましい(例えば、図12に示すSa5’)。この場合には、例えば、所定数を視覚として検知可能な数とすれば、人が点欠陥を検知でない場合には異常とせず、検知できる場合に異常とすることができる。
【0010】
また、上述した液晶表示装置は、前記出力階調データに基づいて、対象物が画面を押圧したことを検出する検出手段(例えば、図10に示す400)を備えることが好ましい。この場合には計測部をタッチのセンシング回路として異常を検知する構成と兼用することができる。
次に、本発明に係る電子機器は、上述した液晶表示装置のいずれかを備える。例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、あるいは情報端末などが該当する。
【0011】
さらに、本発明は、液晶表示装置の異常検知方法として以下のように把握される。複数の走査線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数のデータ線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数の信号線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して設けられた複数の画素とを備え、前記複数の画素の各々は、第1電極と、第2電極および液晶を有する表示部と、前記液晶の配向状態を示す計測信号を出力する計測部とを備える液晶表示装置において異常を検知する方法であって、前記複数の画素の各々において表示すべき階調を示す入力階調データを記憶し、前記計測信号に基づいて、前記複数の画素の各々において表示された階調を示す出力階調データを生成し、前記入力階調データと前記出力階調データとを比較し、比較結果に基づいて、前記液晶表示装置の異常を検知することを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<1.第1実施形態>
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。液晶表示装置500は、表示領域Aを備える。表示領域Aには、n本の走査線30と、m本のデータ線31が形成されている。但し、nおよびmは、2以上の自然数である。また、n本の走査線30とm本のデータ線31の各交差に対応してn×m個の画素回路Pがマトリクス状に配置されている。さらに、n本の第1制御線10および第2制御線11が、n本の走査線31と平行に設けられている。
後述するように画素回路Pは、表示部Paと計測部Pbとを備える。表示部Paでは、液晶の透過率を制御するように液晶に電圧を印加し、計測部Pbは液晶の配向状態を示す計測信号Idetを生成する。
【0013】
表示用Yドライバ100Aは、n本の走査線30を順次選択するための走査信号Y1,Y2,…Ynを生成して、各画素回路Pに各々供給する。例えば、1行目の走査線30に供給される走査信号Y1は、1垂直走査期間(1F)の最初のタイミングから1水平走査期間(1H)に相当する幅を有するパルスである。以降、このパルスを1Hずつ順次シフトしたものが、2行目〜n行目の走査線30の各々に走査信号Y2〜Ynとして供給される。表示用Xドライバ200Aは、選択された走査線30に接続される画素回路Pの表示部Pa各々に対し、表示すべき階調に応じた大きさのデータ信号X1,X2,…Xmを供給する。
【0014】
計測用Yドライバ100Bは、第1制御線10にリセット信号RESを供給すると共に、第2制御線11に選択信号SELを供給する。画素回路Pの計測部Pbはリセット信号RESおよび選択信号SELによって動作が制御され、計測信号Idetを生成して信号線21に出力する。計測用Xドライバ200Bは、計測信号Idet[1]〜Idet[m]に基づいて、各画素回路Pで表示中の階調を示す出力階調データDoutを生成する。
【0015】
タイミング制御回路310は、表示用Yドライバ100A、計測用Yドライバ100B、表示用Xドライバ200A、計測用Xドライバ200Bにクロック信号やスタートパルスといった各種の制御信号を供給する。フレームメモリ320に入力階調データDinが供給され、1フレーム分のデータが記憶される。このフレームメモリ320は同時に読み書きが可能である。フレームメモリ320から読み出された入力階調データDinは、1水平期間分のデータを記憶するラインメモリ330を解して、表示用Xドライバ200Aに供給される。
【0016】
判定回路340は、出力階調データDoutに基づいて、液晶表示装置500の異常を検知して第1検知信号DET1または第2検知信号DET2を有効とする。
パネル制御回路350は第1検知信号DET1が有効になると、フレームメモリ320に異常であることを使用者に知らせるメッセージデータMDを出力する。メッセージデータMDは、例えば、「動作不良」、あるいは、「異常」といった文字を表示するための階調データである。
フレームメモリ320は、メッセージデータMDを受けとると、入力階調データDinの替わりにあるいは、入力階調データDinとメッセージデータMDとを合成して、「動作不良」や「異常」といった文字を画像にスパーインポーズして記憶する。これにより、表示領域Aには、動作の不具合を示す情報が表示されることになるので、使用者は装置を修理するなどの対応を迅速に取ることができる。
【0017】
また、第2検知信号DET2が有効になると、パネル制御回路350は、電源供給を停止するように電源回路360を制御する。これによって、故障が拡大する前に電源供給を強制的に遮断することが可能となる。判定回路340の動作については後述する。
【0018】
図2に画素回路Pの構成を示す。同図に示すように画素回路Pは、画像の表示を行う表示部Paと、液晶35の配向状態を計測して計測信号を出力する計測部Pbを備える。
表示部Paは、図2に示すようにトランジスタ33と、画素電極34と、共通電位Vcomが供給される対向電極36と、画素電極34と対向電極36との間に挟持された液晶35を備える。トランジスタ33はTFT(Thin Film Transistor)で構成され、そのゲートは走査線30に、ドレインはデータ線31に、ソースは画素電極34に接続される。
【0019】
表示用Yドライバ100Aは、n本の走査線30を順次選択するための走査信号Y1,Y2,…Ynを生成して、各画素回路Pに各々供給する。例えば、1行目の走査線30に供給される走査信号Y1は、1垂直走査期間(1F)の最初のタイミングから1水平走査期間(1H)に相当する幅を有するパルスである。以降、このパルスを1Hずつ順次シフトしたものが、2行目〜n行目の走査線30の各々に走査信号Y2〜Ynとして供給される。一方、表示用Xドライバ200Aは、選択された走査線30に接続されるm個の画素回路Pの各々に対し、表示すべき階調に応じた大きさのデータ信号X1,X2,…Xmを供給する。
【0020】
次に、計測部Pbは、計測用Yドライバ100Bと計測用Xドライバ200Bとによって駆動され、静電容量の変化を検出する回路である。計測部Pbは、増幅トランジスタ41、リセットトランジスタ42、および選択トランジスタ43を備える。これらのトランジスタは、上述した画素回路Pのトランジスタ33と同様にTFTで構成され、同じプロセスで形成される。
リセットトランジスタ42のゲートには、第1制御線10を介してリセット信号RESが供給される。リセットトランジスタ42のドレインは電源線20に接続され、そのソースは増幅トランジスタ41のゲートと接続される。電源線20には電圧VRHが供給される。
【0021】
増幅トランジスタ41のドレインは電源線20に接続され、そのソースは選択トランジスタ43のドレインに接続される。選択トランジスタ43のソースは信号線21に接続され、そのゲートには第2制御線11を介して選択信号SELが供給される。また、増幅トランジスタ41のゲートと第1制御線10との間には、基準容量素子44が設けられている。さらに、静電容量検出素子45の一方の端子は、増幅トランジスタ41のゲートに接続され、その他方の端子には固定電位Vxが供給される。計測部Pbは表示部Paに近接して設けられているので、表示部Paにおける液晶35の配向状態が表示すべき階調に応じて変化すると、静電容量検出素子45における容量値もその影響を受けて変化する。したがって、静電容量検出素子45の容量を計測することによって、表示に寄与する液晶35の配向状態を計測することができる。なお、固定電位Vxは共通電位Vcomと異なる電位であってもよいし、一致していてもよい。また、基準容量素子44はリセットトランジスタ42のゲート・ソース間に発生する寄生容量で代用してもよく、積極的に素子を形成しなくてもよい。
【0022】
ここで、増幅トランジスタ41はインピーダンス変換する機能を有する。すなわち、増幅トランジスタ41のゲートは、入力インピーダンスがハイインピーダンスであり、増幅トランジスタ41のソースは、出力インピーダンスがローインピーダンスである。仮に、インピーダンスを変換しないで出力すると、容量の変化に応じた小さな電荷が画素回路Pから計測信号として出力される。これに対して、本実施形態では、増幅トランジスタ41からは、そのゲート電位に応じた大きさの定電流が出力される。したがって、計測信号のSN比を向上させることができる。
【0023】
次に、計測部Pbの動作を図3〜図6を参照して説明する。計測部Pbは、リセット期間Tres、センシング期間Tsen、および読出期間Toutを一単位として動作する。なお、リセット信号RESおよび選択信号SELは、計測用Yドライバ100Bによって生成される。
まず、リセット期間Tresにおいて、リセット信号RESのレベルはVDとなり、リセットトランジスタ41がオン状態となる。このとき、選択信号SELはローレベルであり選択トランジスタ43はオフ状態となる。すると、図4に示すように増幅トランジスタ41のゲートの電位が電源電位VRHにリセットされる。
【0024】
次に、リセット期間Tresに続くセンシング期間Tsenでは、リセット信号RESのレベルがVDからGND(=0V)に変化する。すると、図5に示すようにリセットトランジスタ42がオフ状態となる。第1制御線10は基準容量素子44の一方の電極と接続されているので、基準容量素子44はカップリング容量として機能し、リセット信号RESのレベルが変化すると増幅トランジスタ41のゲート電位が変化する。
【0025】
ここで、基準容量素子44の容量値をCr、静電容量検出素子45の容量値をCs、第1制御線10の電位変化をΔVgate(=VD)とすれば、増幅トランジスタ41のゲート電位の変化分ΔVは、以下に示す式(1)で与えられる。但し、寄生容量は無視する。
ΔV=ΔVgate×Cr/(Cr+Cs)……(1)
式(1)から、静電容量検出素子45の容量値Csが大きければ容量カップリングによる変化分ΔVは小さく、逆に容量値Csが小さければ変化分ΔVは大きいことがわかる。したがって、静電容量検出素子45の容量変化をゲート電位に反映させることができる。
【0026】
次に、読出期間Toutでは、選択信号SELがローレベルからハイレベルに変化する。すると、図6に示すように選択トランジスタ43がオン状態となる。これによって、増幅トランジスタ41のゲート電位に応じた計測信号Idetが信号線21に流れる。
ところで、読出期間Toutにおいて、選択トランジスタ43を確実にオン状態とするためには、読出期間Toutに先立って、信号線21の電位をプリチャージ電位Vpreにプリチャージすることが好ましい。この例では、図3に示すように、リセット期間Tresおよびセンシング期間Tsenをプリチャージ期間Tpreとし、当該期間において信号線21にプリチャージ電位Vpreを供給している。
【0027】
次に、図7はXドライバ200Aの構成を示すブロック図である。この図に示すように、Xドライバ200Aは、シフトレジスタ210、線順次変換回路220、および駆動回路230を備える。シフトレジスタ210は、Xクロック信号XCKに同期してXスタート信号XSPを順次シフトして、排他的に有効となるシフト信号S1〜Smを生成する。
線順次変換回路220は、m個の単位メモリMを備え、これを用いて、点順次の入力階調データDinを線順次の画像データに変換する。単位メモリMは、第1メモリM1と第2メモリM2とを備える。kを1からmまでの任意の自然数としたとき、左からk番目に位置する単位メモリMには、シフト信号Skと入力階調データDinとが供給される。シフト信号Skが有効になると、入力階調データDinが第1メモリM1に取り込まれる。
第2メモリM2は、1H周期のラッチ信号LATが有効になると、第1メモリM1の出力データを取り込む。ここで、ラッチ信号LATは、表示用Xドライバ200内の他の第2メモリM2にも共通して供給される。したがって、ラッチ信号LATによって規定されるタイミングで、入力階調データDinが線順次のデータに変換される。
【0028】
単位回路Uは、DA変換回路U1、AD変換回路U2、および逆ガンマ回路U3を備える。DA変換回路U1は、第2メモリM2から供給される入力階調データDin’をデジタル信号からアナログ信号に変換してデータ信号Dataを生成する。この際、DA変換回路U1はガンマ補正を施す。DA変換回路U1は、液晶35の特性を考慮したガンマ補正を実行する機能と、データ信号をデータ線31を介して画素回路P(表示部Pa)に書き込む機能を有する。
また、駆動回路230は、m個のDA変換回路を備える。DA変換回路は線順次の入力階調データをアナログ信号に変換する。この際、DA変換回路はガンマ補正を施す。DA変換回路は、液晶35の特性を考慮したガンマ補正を実行する機能と、データ信号X1〜Xmをデータ線31を介して画素回路P(表示部Pa)に書き込む機能を有する。
【0029】
図8に、計測用Xドライバ200Bの構成を示す。計測用Xドライバ200Bは、m個の単位回路Uを備えた出力階調データ生成回路240と点順次変換回路250を備える。
k番目の単位回路Uは、計測信号Idet[k]をアナログ信号に変換するAD変換回路U1と逆ガンマ回路U2とを備える。AD変換回路U1は、画素回路P(計測部Pb)から読み出した計測信号Idetをアナログ信号からデジタル信号に変換する。逆ガンマ回路U2は、DA変換回路のガンマ補正と逆の特性を与える逆ガンマ補正を実行する。このようにして逆ガンマ回路U2は、液晶35の配向状態、すなわち実際の表示階調を示す出力階調データDoutを出力する。
点順次変換回路250は、線順次で与えられる出力階調データ生成回路24の出力階調データDout[1]〜Dout[m]を点順次に変換して出力階調データDoutを生成する。
【0030】
次に、判定回路340で実行される判定処理について、図9に示すフローチャートを参照して説明する。判定回路340は、例えば、1フレームに1回発生する割り込み信号を検知して、判定処理を実行する。まず、判定回路340は、フレームメモリ320から入力階調データを読み出す(ステップSa1)。次に、判定回路340は、入力階調データDinを含む正常範囲に出力階調データDoutが含まれるか否かを判定する(ステップSa2)。この判定は、画素ごとに実行される。この例では、1フレーム当たりn×m個の画素について判定が実行される。
【0031】
正常範囲に含まれるか否かについては、例えば、Din−X<Dout<Din+Xを充足するか否かを判定する。この場合には、入力階調データDinを中心としてデータ値2Xの間に出力階調データDoutがあれば正常とされる。
また、入力階調データDinと出力階調データDoutが各々kビットのデータである場合に、入力階調データDinと出力階調データDoutとが上位Jビットで一致すれば、正常としてもよい。但し、kは2以上の自然数、Jはより小さい自然数である。例えば、入力階調データDinと出力階調データDoutとが8ビットである場合、入力階調データDinの上位4ビットと、出力階調データDoutの上位4ビットが一致すればよい。このように、正常とされる範囲の中心に入力階調データDinが必ずしも位置しなくてもよい。
【0032】
次に、ステップSa2の判定条件が否定される場合には、判定回路340は、当該画素の判定データに「1」を加算して、判定テーブルTBLに記憶する(ステップSa3)。なお、初期状態における判定データのデータ値は「0」である。判定テーブルTBLは、n×m個の判定データを記憶可能である。ステップSa2の判定条件が肯定される場合には、ステップSa3の処理が実行されず、処理がステップSa4に進む。したがって、出力階調データDoutが正常範囲にある場合には、判定データのデータ値は「0」のままである。
【0033】
判定回路340は、ステップSa4において、1フレームの処理が終了したか否かを判定する。処理が終了していない場合には、ステップSa1に戻り、1フレームの処理が終了するまでステップSa1からステップSa4を繰り返す。そして、1フレームの処理が終了すると、判定回路340は、判定テーブルTBLにアクセスしてn×m個の画素について判定データの総和を算出し、総和Sが第1基準値REF1以上であるか否かを判定する(ステップSa5)。
【0034】
次に、S≧REF1であれば、ステップSa5の判定条件が肯定される。この場合、判定回路340は処理をステップSa6に進め、第1検知信号DET1を有効とする。一方、S<REF1であれば、ステップSa5の判定条件が否定される。この場合、判定回路340は処理をステップSa7に進め、第1検知信号DET1を無効とする。
【0035】
次に、判定回路340は、総和Sが第2基準値REF2以上であるか否かを判定する(ステップSa8)。但し、REF1>REF2である。この判定条件が肯定される場合、判定回路340は第2検知信号DET2を有効とする一方(ステップSa9)、判定条件が否定される場合には、判定回路340は第2検知信号DET2を無効とする(ステップSa10)。
【0036】
上述したように第1検知信号DET1が有効になると、パネル制御回路350は電源供給を停止するように電源回路360を制御する。したがって、第1検知信号DET1が有効になると、液晶表示装置500の動作が停止する。たとえば、REF1=n・m/3に設定すれば、n×m個の画素のうち1/3以上の画素で異常となった場合に、動作を自動的に停止させることができる。
一方、第2基準値REF2は第1基準値REF1より小さく設定されている。例えば、REF2=10に設定すれば、10未満の画素の異常については許容し、10以上であれば、メッセージを表示することになる。第1基準値REF1は、故障がさらに拡大する可能性が高い値に設定することが好ましい。本実施形態では、異常の程度に応じて検知信号を有効にするので、異常の程度に応じた対応が可能となる。
さらに、本実施形態によれば、画像の表示を停止して装置を検査する必要がないので、液晶表示装置500の動作中に異常をリアルタイムで検知できるといった効果を奏する。
【0037】
<2.第2実施形態>
図10に第2実施形態に係る液晶表示装置600のブロック図を示す。この液晶表示装置600は、液晶35の配向状態を計測する計測部Pbを、指やタッチペン等の対象物が画面に接触したことを検出するセンシング回路と兼用している。液晶表示装置600は、位置特定回路400を備える点および判定回路340の動作を除いて、図1に示す第1実施形態の液晶表示装置500と同様である。
【0038】
位置特定回路400は、出力階調データDoutに基づいて、対象物が画面に接触している位置を特定する。計測部Pbに設けられた静電容量検出素子45による静電容量の変化を図11を参照して説明する。静電容量検出素子45は、図11に示すように第1電極45aと第2電極45bとの間に液晶35を挟持して構成される。指やタッチペン等の対象物が液晶表示装置500の画面に触れていない状態では、同図(A)に示すように第1電極45aと第2電極45bとが平行である。これに対し、同図Bに示すように指やタッチペン等の対象物によって画面が押されると、第2電極45bが撓み、第1電極45aと第2電極45bの距離が短くなる。このため、対象物が画面に触れると、静電容量検出素子45の容量値Csが大きくなる。計測信号Idetは静電容量検出素子45の容量値Csの計測結果である。そして、出力階調データDoutは計測信号Idetに基づいて生成される。
【0039】
したがって、出力階調データDoutを閾値と比較することで、指やタッチペン等の対象物が画面に接触したか否かを検出することができる。また、この例の基準容量素子44は一方の電極として半導体層47を用い、他方の電極としてゲート配線48を用い、それらの間にゲート酸化膜49を挟持して構成される。なお、半導体層47、ゲート配線48、およびゲート酸化膜49は、他のトランジスタ41や42と同一のプロセスによって形成される。したがって、基準容量素子44を形成するために特別なプロセスは不要であり、製造コストを削減することができる。
【0040】
図12は、判定回路340の判定動作を示すフローチャートである。第2実施形態の判定処理は、ステップSa3’およびスッテプSa4’を追加した点、並びにステップSa5・Sa8の替わりにステップSa5’・Sa8’を備える点を除いて、第1実施形態の判定処理と同じである。
第2実施形態では、判定データの他に検出データを用いて、第1検知信号DET1および第2検知信号DET2の有効・無効を制御する。判定データは、前のフレームにおける判定結果に応じてデータ値が変動する一方、検出データは現在のフレームにおいて有効・無効を制御するために用いられ、そのデータ値は前のフレームと無関係である。
【0041】
出力階調データDoutが正常範囲外である場合には、着目する画素の判定データに「1」加算する一方、正常範囲内である場合には、判定データを「0」に設定する(ステップSa4’)。したがって、例えば、20フレームに亘って出力階調データDoutが正常範囲外であれば、当該画素の判定データ値は「20」となる。つまり、判定データ値を参照すれば、異常が継続している時間を知ることができる。
【0042】
次に、判定回路340は、閾値Y以上の判定データを「1」、Y未満の判定データを「0」に変換して検出データを生成する(ステップSa4’)。この検出データを参照すれば、異常が所定時間継続した画素を知ることができる。そして、判定データの替わりに検出データを用いて、第1検知信号DET1および第2検知信号DET2の有効・無効を決定する(ステップSa5’〜Sa10)。したがって、異常が所定時間継続した画素の数が第1基準値REF1以上となれば第1検知信号DET1が有効化され、電源が遮断される。また、異常が所定時間継続した画素の数が第2基準値REF2以上で第1基準値REF1未満となれば第2検知信号DET2が有効化され、メッセージが表示される。
【0043】
このように第2実施形態では、フレーム周期で出力階調データDoutが正常範囲内であるか否かを判定し(第1の判定条件)、さらに、この判定条件が所定回数(閾値Y)だけ継続して否定されると(第2の判定条件)と検出データを「1」にセットする。そして、これを全ての画素について実行し、検出データの総和がある値以上である場合に検知信号を有効とする。つまり、複数の画素の少なくとも1つについて、第1の判定条件および第2の判定条件が肯定されることを、検知信号を有効とする必要条件としている。そして、判定回路340は、複数の画素のうち、第2基準値REF2以上の画素について第1の判定条件および第2の判定条件が充足されることを、第1検知信号DET1または第2検知信号DET2を有効とする必要充分条件としている。
【0044】
このように出力階調データDoutが正常範囲内に無いことを異常の検知の条件としたのは、第2実施形態に係る液晶表示装置600がタッチ検出機能を備えているからである。すなわち、指やペンなどの対象物によって画面が押されると、その部分の配向状態が変化するため、出力階調データDoutの値が正常範囲外になることが多い。また、タッチがされることを考慮して正常範囲を設定すると、異常を検知する感度が低下する。このため、出力階調データDoutと入力階調データDinとの差分が、装置の異常に起因するものであるのか、あるいは、対象物の接触に起因するものかを区別する必要がある。ところで、人が画面をタッチするのは何らかの指示を入力するために行うことが多い。タッチの継続にはおのずと限界がある。そこで、正常範囲内に無いことが所定時間継続することを異常検知の判定条件としたのである。これによって、人の画面タッチと装置の異常を分離することが可能となる。
このため、所定時間は、人が画面をタッチすると想定される時間に設定することが好ましい。例えば、銀行の預金払出装置(ATM)では、タッチ入力によって、画面が切り換る。この画面の切り替えに要する時間を所定時間としてもよい。
【0045】
<3.変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形が可能である。
(1)上述した第1実施形態においても第2実施形態と同様の判定処理を実行してもよいことは勿論である。この場合は、所定時間を規定する閾値Yを適宜設定することによってノイズの影響を除去することが可能となる。
(2)上述した第1実施形態および第2実施形態において、第1検知信号DET1と第2検知信号DET2とのうちいずれか一方を生成するようにしてもよい。
【0046】
(3)上述した第1実施形態および第2実施形態では、計測信号Idetに基づいて生成された出力階調データDoutと入力階調データDinとを比較し、比較結果に基づいて装置の異常を検知する検知信号を生成したが、入力階調データDinと比較することなく、出力階調データDoutのみから異常を検知してもよい。換言すれば、液晶の配向状態を示す計測信号Idetが所定の条件を充足しなかった場合に検知信号を有効としてもよい。
一般に、液晶には一定の応答時間がある。すなわち、液晶に印加する電圧を変化させても液晶の配向状態が変化するまでには一定時間を要する。ここで、計測信号Idetは液晶の配向状態を示している。液晶の応答時間を考慮すると、1フレームの前後で計測信号Idetが変化しうる範囲は限られている。そこで、1フレーム前の計測信号Idetと現在のフレームの計測信号Idetとの差分を演算し、差分値が所定値を超える場合に、異常と判定してもよい。ここで、所定値は、液晶の応答時間を考慮して異常が判定できるように設定すればよい。
【0047】
(4)上述した第1実施形態および第2実施形態において、画素電極34と共通電極36とを素子基板に形成して液晶35に横電界を印加してもよい。この場合には、静電容量検出素子45の2つの電極を画素電極34および共通電極36と同様に素子基板に形成してもよい。要は、液晶35の配向状態を直接的、あるいは間接的に計測できるように静電容量検出素子45の2つの電極を配置すればよい。
【0048】
<4.応用例>
次に、本発明に係る液晶表示装置を利用した電子機器について説明する。図13は、液晶表示装置500を表示部として採用したモバイル型のパーソナルコンピュータの構成を示す斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、表示部としての液晶表示装置500(600)と本体部2010とを備える。本体部2010には、電源スイッチ2001およびキーボード2002が設けられている。
図14に、実施形態に係る液晶表示装置500を適用した携帯電話機の構成を示す。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002、ならびに表示部としての液晶表示装置500(600)を備える。スクロールボタン3002を操作することによって、液晶表示装置500に表示される画面がスクロールされる。
図15に、実施形態に係る液晶表示装置500を適用した携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)の構成を示す。情報携帯端末4000は、複数の操作ボタン4001および電源スイッチ4002、ならびに表示部としての液晶表示装置500(600)を備える。
なお、本発明に係る液晶表示装置が適用される電子機器としては、図13から図15に示したもののほか、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】画素回路の構成を示す回路図である。
【図3】計測部の動作を示すタイミングチャートである。
【図4】リセット期間における計測部の動作を示す説明図である。
【図5】センシング期間における計測部の動作を示す説明図である。
【図6】読出期間における計測部の動作を示す説明図である。
【図7】表示用Xドライバの構成を示すブロック図である。
【図8】計測用Xドライバの構成を示すブロック図である。
【図9】第1実施形態の判定処理の動作を説明するタイミングチャートである。
【図10】本発明の第2実施形態に係る液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図11】静電容量検出素子における静電容量の変化を示す説明図である。
【図12】第2実施形態の判定処理の動作を説明するタイミングチャートである。
【図13】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図14】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【図15】本発明に係る電子機器の具体的な形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
500,600……液晶表示装置、A……表示領域、P……画素回路、Pa……表示部、Pb……計測部、100A……表示用Yドライバ、100B……計測用Yドライバ、200A……表示用Xドライバ、200B……計測用Xドライバ、340……判定回路、Din……入力階調データ、Idet……計測信号、Dout……出力階調データ、DET1……第1検知信号、DET2……第2検知信号。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する液晶表示装置であって、
複数の走査線と、
前記複数の走査線と交差するように設けられた複数のデータ線と、
前記複数の走査線と交差するように設けられた複数の信号線と、
前記走査線と前記データ線との交差に対応して設けられた複数の画素と、
前記液晶表示装置の異常を検知して検知信号を生成する検知手段とを備え、
前記複数の画素の各々は、
第1電極と、第2電極と、液晶とを有する表示部と、
前記液晶の配向状態を示す計測信号を出力する計測部とを備え、
前記検知手段は、前記計測信号が所定の条件を充足しなかった場合に前記検知信号を有効とする、
液晶表示装置。
【請求項2】
前記検知手段は、
前記複数の画素の各々において表示すべき階調を示す入力階調データを記憶する記憶手段と、
前記計測信号に基づいて、前記複数の画素の各々において表示された階調を示す出力階調データを生成する出力階調データ生成手段と、
前記記憶手段から読み出した前記入力階調データと前記出力階調データとを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記検知信号を有効とする有効化手段とを備える、
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記有効化手段は、
前記複数の画素の各々について、前記入力階調データを含む所定範囲に前記出力階調データが含まれていないことを第1の判定条件とする判定手段を有し、
前記複数の画素の少なくとも1つについて、前記第1の判定条件が肯定されることを、前記検知信号を有効とする必要条件とする、
請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記判定手段は、所定周期で前記第1の判定条件に基づく判定を実行し、前記第1の判定条件が所定回数だけ継続して否定されることを第2の判定条件として判定し、
前記有効化手段は、前記複数の画素の少なくとも1つについて、前記第1の判定条件および前記第2の判定条件が肯定されることを、前記検知信号を有効とする必要条件とする、
請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記有効化手段は、前記複数の画素のうち、所定数以上の画素について前記第1の判定条件および前記第2の判定条件が充足されることを、前記検知信号を有効とする必要充分条件とする、
請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記出力階調データに基づいて、対象物が画面を押圧したことを検出する検出手段を備える請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
複数の走査線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数のデータ線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数の信号線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して設けられた複数の画素とを備え、前記複数の画素の各々は、第1電極と、第2電極および液晶を有する表示部と、前記液晶の配向状態を示す計測信号を出力する計測部とを備える液晶表示装置の異常検知方法であって、
前記複数の画素の各々において表示すべき階調を示す入力階調データを記憶し、
前記計測信号に基づいて、前記複数の画素の各々において表示された階調を示す出力階調データを生成し、
前記入力階調データと前記出力階調データとを比較し、
比較結果に基づいて、前記液晶表示装置の異常を検知する、
ことを特徴とする液晶表示装置の異常検知方法。
【請求項1】
画像を表示する液晶表示装置であって、
複数の走査線と、
前記複数の走査線と交差するように設けられた複数のデータ線と、
前記複数の走査線と交差するように設けられた複数の信号線と、
前記走査線と前記データ線との交差に対応して設けられた複数の画素と、
前記液晶表示装置の異常を検知して検知信号を生成する検知手段とを備え、
前記複数の画素の各々は、
第1電極と、第2電極と、液晶とを有する表示部と、
前記液晶の配向状態を示す計測信号を出力する計測部とを備え、
前記検知手段は、前記計測信号が所定の条件を充足しなかった場合に前記検知信号を有効とする、
液晶表示装置。
【請求項2】
前記検知手段は、
前記複数の画素の各々において表示すべき階調を示す入力階調データを記憶する記憶手段と、
前記計測信号に基づいて、前記複数の画素の各々において表示された階調を示す出力階調データを生成する出力階調データ生成手段と、
前記記憶手段から読み出した前記入力階調データと前記出力階調データとを比較する比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて、前記検知信号を有効とする有効化手段とを備える、
請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記有効化手段は、
前記複数の画素の各々について、前記入力階調データを含む所定範囲に前記出力階調データが含まれていないことを第1の判定条件とする判定手段を有し、
前記複数の画素の少なくとも1つについて、前記第1の判定条件が肯定されることを、前記検知信号を有効とする必要条件とする、
請求項2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記判定手段は、所定周期で前記第1の判定条件に基づく判定を実行し、前記第1の判定条件が所定回数だけ継続して否定されることを第2の判定条件として判定し、
前記有効化手段は、前記複数の画素の少なくとも1つについて、前記第1の判定条件および前記第2の判定条件が肯定されることを、前記検知信号を有効とする必要条件とする、
請求項3に記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記有効化手段は、前記複数の画素のうち、所定数以上の画素について前記第1の判定条件および前記第2の判定条件が充足されることを、前記検知信号を有効とする必要充分条件とする、
請求項4に記載の液晶表示装置。
【請求項6】
前記出力階調データに基づいて、対象物が画面を押圧したことを検出する検出手段を備える請求項1乃至5のうちいずれか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の液晶表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
複数の走査線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数のデータ線と、前記複数の走査線と交差するように設けられた複数の信号線と、前記走査線と前記データ線との交差に対応して設けられた複数の画素とを備え、前記複数の画素の各々は、第1電極と、第2電極および液晶を有する表示部と、前記液晶の配向状態を示す計測信号を出力する計測部とを備える液晶表示装置の異常検知方法であって、
前記複数の画素の各々において表示すべき階調を示す入力階調データを記憶し、
前記計測信号に基づいて、前記複数の画素の各々において表示された階調を示す出力階調データを生成し、
前記入力階調データと前記出力階調データとを比較し、
比較結果に基づいて、前記液晶表示装置の異常を検知する、
ことを特徴とする液晶表示装置の異常検知方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−276612(P2009−276612A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−128546(P2008−128546)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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