説明

液晶表示装置、その駆動方法および電子機器

【課題】液晶素子に対して色順次走査をしたときに液晶に直流が印加されることを防ぐ。
【解決手段】液晶表示パネルにおいて、書き込まれた電圧に応じた透過率となる液晶素子
がマトリクス状に配列する。液晶素子は、それぞれ画素電極およびコモン電極を含む。フ
レーム期間は、R・G・Bフィールド期間に3分割され、各フィールド期間において液晶
素子に原色成分の電圧が書き込まれ、この後、対応する色の光が液晶素子に入射する。液
晶素子への電圧書きこみは、画素電極にデータ信号を印加することによってなさられるが
、このデータ信号の電圧は、基準電圧に対して高位側または低位側のいずれかに、所定の
周期で切り替えられる。コモン電極に供給される信号LCcomの電圧は、各フィールド期
間に対応する色毎に予め定められた最適電圧に切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆる色順次走査の液晶表示装置の駆動技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、色順次走査では、1コマのカラー画像を形成するためのフレーム期間を、例え
ば赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの原色に対応するフィールド期間に分割するとと
もに、各フィールド期間において、原色成分の階調(明るさ)に応じた情報(例えば電圧
)を表示パネルの画素に書き込んで、当該原色の光を表示パネルに照射する構成となって
いる(特許文献1参照)。このような色順次走査では、表示素子にカラーフィルター等を
設けなくて済むほか、1画素をR、G、Bのサブ画素に分割しなくて済むので、高精細化
が容易となる。
【0003】
ところで、画素として液晶素子を用いる構成では、詳細には、画素電極およびコモン電
極(共通電極)間の電界に応じて透過率(または反射率)を変化させる液晶素子を用いる
構成では、液晶に直流成分が印加されるのを防止するため、画素電極に印加する電圧を、
コモン電極に近い基準電圧に対して高位側の正極性と低位側の負極性とで交互に切り替え
る交流駆動が行われる。ただし、単純に交流駆動するだけでは、液晶に直流成分が印加さ
れることがあるので、例えば1フレーム期間における映像信号に応じてコモン電極の電位
を設定する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−237606号公報(段落0043、図10)
【特許文献2】特開2000−267618号公報(段落0016、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液晶素子に対して色順次走査をすると、別の理由で液晶に直流が印加さ
れてしまうという不都合が生じた。
本発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、画素に液晶素子を
用いて色順次走査をする場合であっても、液晶に直流成分が印加されるのを回避する技術
を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
色順次走査において液晶に直流が印加される原因の一つは、液晶素子に入射する光の波
長によって液晶の配向性が変化するためである、と考えられる。そこで、本発明に係る液
晶表示装置は、走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジス
ターおよび画素電極と、該画素電極と対向するコモン電極と、該画素電極と該対向電極と
の間に挟持された液晶と、を有する液晶素子を複数備え、前記走査線が選択されたときに
、前記データ線に供給されたデータ信号が前記スイッチングトランジスターを介して前記
画素電極に供給され、フレーム期間は、互いに異なる色に対応する複数のフィールド期間
を有する液晶表示装置であって、前記フィールド期間の各々において複数の前記走査線を
所定の順番で選択する走査線駆動回路と、前記データ信号を前記画素電極に供給するとと
もに、前記データ信号の電圧を、予め定められた基準電圧に対して高位側または低位側の
いずれかに所定の周期で切り替えるデータ線駆動回路と、前記フィールド期間の少なくと
も一部で、当該フィールド期間に対応する色の光を複数の前記液晶素子に照射する光源と
、前記フィールド期間の各々において、当該フィールド期間に対応する色に対して予め設
定された電圧を前記コモン電極に印加するコモン電極駆動回路と、を具備することを特徴
とする。本発明によれば、コモン電極に対し、フィールド期間毎に予め設定された電圧が
印加されるので、フィールド期間において液晶素子に入射する光の色(波長)に応じて配
向性が変化したときの影響を減殺することができる。このため、色順次走査をする際に、
液晶に直流成分が印加されるのを回避することが可能となる。
【0007】
本発明において、前記コモン電極駆動回路は、複数の前記色のうち第1の色の光のみを
前記液晶素子に入射させた場合にフリッカーが最小となる電圧を、該第1の色に対応する
フィールド期間において前記コモン電極に印加する構成が好ましい。この構成により、液
晶素子に入射する光の色(波長)に対して最適な電圧を、フィールド期間に印加すること
が可能となる。
また、前記コモン電極駆動回路は、前記フィールド期間において前記複数の走査線が選
択された後に、前記コモン電極に印加する電圧を切り替える構成としても良い。この構成
によれば、コモン電極の電圧切り替えは、液晶素子への電圧書き込みに影響を及ぼさない
ようにすることが可能となる。
なお、本発明は、液晶表示装置のみならず、当該液晶表示装置の駆動方法や当該液晶表
示装置を有する電子機器としても概念することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る液晶表示装置を適用したプロジェクターの構成を示す図である。
【図2】同液晶表示装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同液晶表示装置における画素の等価回路を示す図である。
【図4】同液晶表示装置の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る液晶表示装置を適用したプロジェクター1の光学的な
構成を示す平面図である。
この図において、LED11Rは、ダイクロイックプリズム13の中心からみて12時
の方向に位置し、図において下方に向けてR(赤)の光を放つ発光ダイオードである。L
ED11Rにより放たれたRの光は、コリメーターレンズ12Rによって、ほぼ平行な光
束となる。同様に、LED11G、11Bは、それぞれ9時、6時の方向に位置し、図に
おいて右方、上方に向けてG(緑)、B(青)の光を放つ発光ダイオードである。LED
11G、11Bにより放たれたG、Bの光についても、それぞれコリメーターレンズ12
G、12Bによって、ほぼ平行な光束となる。
【0010】
ダイクロイックプリズム13は、互いに直交するダイクロイック面13R、13Bを有
する。このうち、ダイクロイック面13Rは、12時の方向から入射したR光を反射して
3時の方向に出射し、ダイクロイック面13Bは、6時の方向から入射したB光を反射し
て3時の方向に出射する。一方、9時の方向から入射したG光は、ダイクロイック面13
R、13Bを透過し、そのまま3時の方向に出射する。
【0011】
ダイクロイックプリズム13の出射面には、液晶表示パネル100が配置する。この液
晶表示パネル100は、本実施形態では、アクティブマトリクス型の透過型であり、複数
の画素を有する。投射レンズ群14は、液晶表示パネル100によって透過率が画素毎に
変調された透過像をスクリーン200に拡大投射する光学系である。
詳細については後述するように、1フレーム期間は、R、G、Bのフィールド期間に分
割されるとともに、各フィールド期間において、各画素に原色成分の階調に応じた電圧が
書き込まれ、この後に、当該原色のLEDを発光させる動作が、R、G、Bの順で繰り返
される。このため、R、G、Bの各原色画像が順次表示されるので、人間には、これらの
原色画像が重なってフルカラー画像として視覚されることになる。
【0012】
次に、プロジェクター1において根幹をなす液晶表示装置10について説明する。図2
は、液晶表示装置10の電気的な構成を示すブロックである。
この図に示されるように、液晶表示装置10は、光源11、制御回路20、フレームメ
モリー30、光源駆動回路40、コモン電極駆動回路50および液晶表示パネル100に
より構成される。
この液晶表示装置10には、映像データVdが図示省略した上位装置から同期信号Sync
にしたがって供給される。詳細には、映像データVdは、表示すべき画像の各画素におけ
るRGBの色成分の明るさ(階調)をそれぞれ指定するデジタルデータであり、同期信号
Syncに含まれる垂直走査信号、水平走査信号およびドットクロック信号(いずれも図示
省略)にしたがった走査の順で画素毎に供給される。
【0013】
制御回路20は、上記同期信号Syncに基づいて各部を制御する。例えば、制御回路2
0は、同期信号Syncにしたがったレートで供給される映像データVdを一旦フレームメモ
リー30に記憶した後、各フィールド期間にて対応色成分のデータだけを当該フレームメ
モリー30から読み出し、映像データVsとして出力させる。
光源駆動回路40は、光源11を構成するLED11R、11G、11Bの各々を、そ
れぞれ制御回路20による指示にしたがって駆動(点灯)させるものである。
コモン電極駆動回路50は、液晶表示パネル100におけるコモン電極108に対して
信号LCcomを供給するものである。ここで、本実施形態において信号LCcomの電圧は、
制御回路20による指示にしたがって後述する電圧に切り替えられる。
【0014】
液晶表示パネル100は、例えば480行の走査線112が図において横方向に延在し
、また、640列のデータ線114が図において縦方向に延在し、かつ、各走査線112
と互いに電気的に絶縁を保つように設けられるとともに、これらの走査線112とデータ
線114との交点のそれぞれに対応して、画素110がそれぞれ配設されている。したが
って、本実施形態において、画素110は、縦480行×横640列のマトリクス状に配
列することになる。ここで、画素110の配列領域が表示領域100aである。
なお、便宜的に走査線112を区別するために、以下の説明では図において上から順に
1、2、3、…、480行目という呼び方をする場合がある。同様に、データ線114を
区別するために、図において左から順に1、2、3、…、640列目という呼び方をする
場合がある。
【0015】
走査線駆動回路130は、制御回路20による制御にしたがって1、2、3、…、48
0行目の走査線112に、走査信号G1、G2、G3、…、G480を供給するものである。本
実施形態においては、図4に示されるように、1フレーム期間が、R、G、Bの3つのフ
ィールド期間に分割されるとともに、各フィールド期間において、それぞれ走査信号G1
、G2、G3、…、G480が、この順番で排他的にHレベルに相当する選択電圧となるよう
に制御される。
【0016】
なお、フレーム期間とは、液晶表示パネル100を駆動することによって、カラー画像
の1コマ分を表示させるために要する期間をいい、同期信号Syncに含まれる垂直走査信
号の周波数が60Hzであれば、その逆数である16.7ミリ秒である。垂直走査信号で
規定される垂直走査期間と、液晶表示パネル100を駆動するためのフレーム期間とは、
期間長でみれば同一ある。ただし、同期信号Ssyncに同期して供給される映像データVd
を、一旦、フレームメモリー30において記憶した後に読み出すとともに、この読み出し
に合わせて、液晶表示パネル100等を駆動するので、同一画像についてみれば、フレー
ム期間は、垂直走査期間よりも遅延した関係にある。
このフレーム期間を分割したフィールド期間の各々は、それぞれ走査線が順番に1行目
から480行目まで選択される書込期間(垂直有効走査期間)とそれ以外の垂直帰線期間
とに分けられる。また、走査線に供給される走査信号がHレベルとなる状態を、当該走査
線が選択された、と言う場合がある。
【0017】
データ線駆動回路140は、選択された走査線に対応する画素110の各々に対し、フ
レームメモリー30から読み出された1〜640列目の画素の色成分に対応する映像デー
タVsを、制御回路20によって指定された書込極性のデータ信号に変換して、1〜64
0列のデータ線114にそれぞれ供給するものである。なお、1、2、3、…、640列
目のデータ線114に供給されるデータ信号を、図2において、それぞれd1、d2、d3
、…、d640と表記している。
【0018】
書込極性については、データ信号の電圧を、振幅中心である基準電圧に対して高位側と
するときを正極性とし、低位側とするときを負極性とする。また、電圧については、液晶
素子において印加・保持される電圧を除き、図示省略した電源の接地電位を電圧ゼロの基
準とする。このように電圧を規定したときに、上記基準電圧は、例えば7.5ボルトに設
定される。
また、各フィールド期間において画素の書込極性を空間的にどのような配列させるかに
ついては、本実施形態では、同一フィールド期間にわたって全画素に対し同一の書込極性
とする面反転方式とし、書込極性については、フィールド期間毎に反転させる方式とする
。このため、図4に示されるように、奇数フレーム期間において、Rフィールド期間にお
いて正極性とすると、G・Bフィールド期間では負・正極性となり、次の偶数フレーム期
間におけるR・G・Bフィールド期間では、負・正・負極性となる。このため、液晶素子
は、RGBのいずれのフィールド期間に着目してみたときに、奇数および偶数フレーム期
間で交流駆動されることになる。
なお、書込極性における空間的な配列は、面反転方式に限られない。また、書込極性の
反転周期については、一定の周期であれば、フィールド期間でなくても良い。
【0019】
画素110について図3を参照して説明する。この図に示されるように、画素110に
おいては、スイッチングトランジスターとして機能するnチャネル型の薄膜トランジスタ
ー(thin film transistor:以下「TFT」と略称する)116のソース電極がデータ線
114に接続されるとともに、ドレイン電極が画素電極118に接続される一方、ゲート
電極が走査線112に接続されている。
画素電極118は、画素毎に設けられるのに対して、コモン電極108は、画素電極1
18のすべてに対向するように全画素に対して共通に設けられる。なお、このコモン電極
108には、コモン電極駆動回路50によって信号LCcomが供給されるのは、上述した
通りである。
コモン電極108と画素電極118との間に液晶105が挟持され、これにより液晶素
子120が構成される。このため、画素110毎に、画素電極118、コモン電極108
および液晶105からなる液晶素子120が設けられることになる。
【0020】
このような構成の液晶素子120は、コモン電極108および画素電極118の間で電
圧を保持するとともに、透過型であれば、保持した電圧の実効値に応じた透過率となる。
これは、液晶素子120において、コモン電極108および画素電極118の間で電圧に
応じて両電極の間に介在する液晶105の配向状態が変化するためである。
【0021】
次に、液晶表示装置10の動作について図4を参照して説明する。
奇数フレーム期間における最初のRフィールド期間では、コモン電極108に供給され
る信号LCcomの電圧が7.0ボルトにセットされるとともに、R書込期間において、液
晶素子120に対し、R成分の階調に応じた正極性電圧のデータ信号が1行毎に書き込ま
れる。
詳細には、制御回路20は、第1に、Rフィールド期間とする際に、コモン電極駆動回
路50に対し、信号LCcomを7.0ボルトの電圧に切り替えるように指示し、第2に、
R書込期間において、フレームメモリー30に記憶された映像データVdのうち、R成分
の映像データVsを、書き込みレート(すなわち、同期信号Vsyncにしたがった供給レー
ト)の3倍のレートで読み出し、第3に、走査線駆動回路130に対して、フレームメモ
リー30からの読み出し行に応じて走査信号G1、G2、G3、…、G480が順番に選択電圧
のHレベルとなるように制御し、第4に、データ線駆動回路140に対し正極性書込を指
定して、読み出したR成分の映像データVsを正極性のデータ信号に変換させるとともに
、当該データ信号を、1、2、3、…、640列目のデータ線114に供給するように制
御する。
なお、Rフィールド期間において信号LCcomを7.0ボルトとする理由については、
GおよびBフィールド期間における信号LCcomの電圧と併せて後述する。
【0022】
走査線112に選択電圧が印加されると、当該走査線における画素110のTFT11
6がオン状態となる。このため、データ線114に供給されたデータ信号は、詳細には、
R成分の映像データVsを正極性に変換したデータ信号は、オン状態のTFT116を介
して画素電極118に印加される。この動作は、当該走査線における1〜640列の液晶
素子120にわたって実行され、さらに、1、2、3、…、480行目の走査線の順番で
実行される。これにより、R書込期間では、すべての液晶素子120に対し、R成分の階
調に応じた電圧が印加・保持されて、目的とするR成分の階調に応じた透過率となる。
次に、制御回路20は、光源駆動回路40に対し、Rフィールド期間の垂直帰線期間(
R発光期間)にわたって、LED11Rだけを発光させるように指示する。このため、L
ED11RによるRの光は、R成分の階調に応じた透過率となっている液晶素子120に
よって変調された後に、拡大投射されるので、R成分の画像が視認されることになる。
【0023】
奇数フレーム期間におけるGフィールド期間では、コモン電極108に供給される信号
LCcomが6.9ボルトの電圧に切り替えられるとともに、G書込期間において、液晶素
子120に対し、G成分の階調に応じた負極性電圧のデータ信号が1行毎に書き込まれる
。これにより、G書込期間では、すべての液晶素子120には、G成分の階調に応じた電
圧が印加・保持されるので、目的とするG成分の階調に応じた透過率となる。制御回路2
0は、光源駆動回路40に対し、Gフィールド期間の垂直帰線期間(G発光期間)にわた
って、LED11Gだけを発光させるように指示する。これにより、G成分の画像が視認
されることになる。
【0024】
奇数フレーム期間におけるBフィールド期間では、コモン電極108に供給される信号
LCcomの電圧が7.1ボルトに切り替えられるとともに、B書込期間において、液晶素
子120に対し、B成分の階調に応じた正極性電圧のデータ信号が1行毎に書き込まれる
。これにより、B書込期間では、すべての液晶素子120には、B成分の階調に応じた電
圧が印加・保持されるので、目的とするB成分の階調に応じた透過率となる。制御回路2
0は、光源駆動回路40に対し、Bフィールド期間の垂直帰線期間(B発光期間)にわた
って、LED11Bだけを発光させるように指示し、これにより、B成分の画像が視認さ
れることになる。
【0025】
こうして、奇数フレーム期間では、R、G、Bの各原色画像が順次表示されるため、人
間には、これらの原色画像が重なってフルカラー画像として視覚されることになる。次の
偶数フレーム期間でも、奇数フレーム期間と同様な動作が実行されるが、偶数フレーム期
間におけるR・G・Bフィールド期間の書込極性がそれぞれ負・正・負極性に反転する。
このため、各液晶素子120は、それぞれ奇数および偶数フレーム期間の2フレーム期間
を1単位としてみたときに交流駆動されることになる。
【0026】
ここで、本実施形態において、Rフィールド期間においてコモン電極108に印加され
る7.0ボルトは、次のようにして決められた電圧である。すなわち、3つのフィールド
期間を、すべてRフィールド期間の条件で駆動するとともに、各帰線期間においてLED
11Rだけを点灯させて、R成分だけの画像を視認させたときに、フリッカーを最小とさ
せる電圧、すなわち、正極性電圧による透過率と負極性電圧による透過率との差が最小と
なるような電圧である。同様に、G(B)フィールド期間においてコモン電極108に印
加される6.9(7.1)ボルトは、それぞれ3つのフィールド期間を、すべてG(B)
フィールド期間の条件で駆動するとともに、各帰線期間においてLED11G(11B)
だけを点灯させて、G(B)成分だけの画像を視認させたときに、フリッカーを最小とさ
せる電圧である。
なお、このようにフリッカーを最小とさせる電圧は、いずれも書込極性の基準電圧であ
る7.5ボルトよりも低位である。これは、TFT116がnチャネル型であると、TF
T116のオン時からオフ直後に変化したときの画素電極118の電圧低下は、正極性よ
りも負極性の方が大きいので、これを減殺させるためには、逆に、コモン電極電圧を、基
準電圧の7.5ボルトよりも低位側とする必要があるからである。
基準電圧やコモン電極108に印加される電圧は、あくまでも例示であり、液晶表示パ
ネル100や光源11などの仕様・条件が異なれば、当然に異なることになる。また、図
4における信号LCcomの電圧を示す縦スケールは、説明理解のため、他の信号と異なら
せてある。
【0027】
本実施形態によれば、R、G、Bフィールド期間毎に、各色の光が入射したときにそれ
ぞれフリッカーを最小とさせる最適な電圧がコモン電極108に印加されるので、入射す
る光の色(波長)に応じて液晶の配向性が変化したときであっても、当該液晶に直流成分
が印加されるのを回避することが可能となる。
また、本実施形態では、コモン電極108の電圧切り替えタイミングを各フィールド期
間の最初、換言すれば、垂直帰線期間の終了時としているので、液晶素子120に書き込
まれる電圧に影響を与えないことが可能となる。
【0028】
なお、画面上方の例えば1行目の液晶素子120では、書き込み後にコモン電極108
の電圧がほぼそのまま維持されるのに対し、なお、画面下方の例えば480行目の液晶素
子120では、垂直帰線期間後に、次フィールド期間における最適電圧に切り替わるので
、書き込み後におけるコモン電極108の電圧状態が、走査線毎によって異なることには
なる。しかしながら、書き込み後では、TFT116がオフ状態であり、画素電極118
は、電気的にどこにも接続されていない状態にある。このため、書き込み後にコモン電極
108の電圧が変化しても、画素電極118の電圧は、当該電圧変化と同一方向に同一量
だけ変化するので、液晶素子120に保持される電圧実効値に影響を与えることはない。
また、光源11における発光期間は、垂直帰線期間と一致させていたが、狭めても良い
。発光期間を狭めた場合、コモン電極108の電圧切り替えタイミングについては、発光
期間終了後であって書込期間前であれば良い。
【0029】
上述した実施形態では、用いる原色をR・G・Bの3色として、フレーム期間をこれら
の色に対応して3つのフィールド期間に分けたが、原色を4つ以上とし、フレーム期間を
これら用いる原色に対応して4つ以上のフィールド期間に分けても良い。例えばR・G・
Bのうち、Gを、短波長寄りのYG(黄緑)と、長波長寄りのEG(エメラルドグリーン
)に分けて、これらの4色として、フレーム期間をこれらの色に対応して4つのフィール
ド期間に分けても良い。
原色を4つ以上とする場合、ダイクロイックプリズムが2以上必要となる。上述したR
、YG、EG、Bを用いる場合であれば、例えば図1においてダイクロイックプリズム1
3の9時方向に、別のダイクロックプリズムを配置させて、このうち、2面でYG、EG
光を入射して、ダイクロイックプリズム13に導く構成とすれば良い。
さらに、液晶表示パネル100の透過像を拡大投射する投射型ではなくて、バックライ
トの光源を原色毎に切り替える直視型にも適用可能である。また、画素110については
透過型に限られず、反射型であっても良い。
【符号の説明】
【0030】
1…プロジェクター、10…液晶表示装置、11…光源、11R、11G、11B…LE
D、20…制御回路、40…光源駆動回路、50…コモン電極駆動回路、100…液晶表
示パネル、105…液晶、108…コモン電極、116…TFT、118…画素電極、1
20…液晶素子、130…走査線駆動回路、140…データ線駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスターおよび画
素電極と、該画素電極と対向するコモン電極と、該画素電極と該対向電極との間に挟持さ
れた液晶と、を有する液晶素子を複数備え、
前記走査線が選択されたときに、前記データ線に供給されたデータ信号が前記スイッチ
ングトランジスターを介して前記画素電極に供給され、
フレーム期間は、互いに異なる色に対応する複数のフィールド期間を有する液晶表示装
置であって、
前記フィールド期間の各々において複数の前記走査線を所定の順番で選択する走査線駆
動回路と、
前記データ信号を前記画素電極に供給するとともに、前記データ信号の電圧を、予め定
められた基準電圧に対して高位側または低位側のいずれかに所定の周期で切り替えるデー
タ線駆動回路と、
前記フィールド期間の少なくとも一部で、当該フィールド期間に対応する色の光を複数
の前記液晶素子に照射する光源と、
前記フィールド期間の各々において、当該フィールド期間に対応する色に対して予め設
定された電圧を前記コモン電極に印加するコモン電極駆動回路と、
を具備することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記コモン電極駆動回路は、複数の前記色のうち第1の色の光のみを前記液晶素子に入
射させた場合にフリッカーが最小となる電圧を、該第1の色に対応するフィールド期間に
おいて前記コモン電極に印加する
ことを特徴とする請求項1に記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記コモン電極駆動回路は、前記フィールド期間において前記複数の走査線が選択され
た後に、前記コモン電極に印加する電圧を切り替える
ことを特徴とする請求項1または2に記載の液晶表示装置。
【請求項4】
走査線とデータ線との交点に対応して設けられたスイッチングトランジスターおよび画
素電極と、該画素電極と対向するコモン電極と、該画素電極と該対向電極との間に挟持さ
れた液晶と、を有する液晶素子を複数備え、
前記走査線が選択されたときに、前記データ線に供給されたデータ信号が前記スイッチ
ングトランジスターを介して前記画素電極に供給され、
フレーム期間は、互いに異なる色に対応する複数のフィールド期間を有する液晶表示装
置の駆動方法であって、
前記フィールド期間の各々において複数の前記走査線を所定の順番で選択し、
前記データ信号を前記画素電極に供給するとともに、前記データ信号の電圧を、予め定
められた基準電圧に対して高位側または低位側のいずれかに所定の周期で切り替え、
前記フィールド期間の少なくとも一部で、当該フィールド期間に対応する色の光を複数
の前記液晶素子に照射し、
前記フィールド期間の各々において、当該フィールド期間に対応する色に対して予め設
定された電圧を前記コモン電極に印加する
ことを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の液晶表示装置を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−176059(P2010−176059A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21235(P2009−21235)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】