説明

液晶表示装置

【課題】 比較的簡単な構成で余り処理負荷をかけずに、液晶表示パネルのアスペクト比とは異なるアスペクト比の映像を表示させる場合にフリッカの少ない映像表示を実現しながら、画面の上下あるいは左右の無画像領域(黒表示領域)の画面コーナー部分等に発生する色むらを解消することができる液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 入力映像信号のアスペクト比を設定するアスペクト比設定部11と、設定されたアスペクト比を検出するアスペクト比検出回路12と、検出されたアスペクト比と液晶表示パネル16のアスペクト比とに基づき、無画像領域に相当する映像信号に対してはコントラスト向上に優れた第1極性反転処理を行う一方、無画像領域以外の有効画像領域に相当する映像信号に対してはフリッカ軽減に優れた第2極性反転処理を行う処理手段(タイミングコントローラ13、選択回路14、LCDドライバ15)とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、映像信号を極性反転することで液晶表示パネルを交流駆動する液晶プロジェクターや液晶テレビジョン等の液晶表示装置に係わり、特に液晶表示パネルのアスペクト比とは異なるアスペクト比の入力映像信号を表示する際に、無画像領域は黒表示する液晶表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、マトリックス型の液晶表示パネルを用いた液晶表示装置においては、液晶への直流電圧印加による画像焼き付きを防止するために、映像信号の極性を一定期間毎に反転させる交流駆動を行っている。この交流駆動には、1フィールド毎に全画素の極性を反転させるフィールド反転(1F反転)と、1水平ライン毎に極性を反転し、これを更にフィールド毎に反転させるライン反転(1H反転)がある。更に、その他の反転方式として、フィールド反転を基本としながらも隣接画素で極性を逆にしたコラム反転、コラム反転とライン反転を組み合わせたコラムライン反転などがある。
【0003】
図3に、交流駆動されるマトリックス型の液晶表示パネルに印加されるチャージ状態の状態遷移を示す。同図(A)はフィールド反転(1F反転)の場合を示し、このフィールド反転では、Nフィールド→N+1フィールド→N+2フィールドと、1フィールド毎に全画素の極性を反転させている。同図(B)のライン反転(1H反転)の場合では、Nフィールド→N+1フィールド→N+2フィールドの遷移において、1水平ライン毎に極性を反転させると共に、これを1フィールド毎に反転させている。
【0004】
TFT(Thin Film Transistor)液晶表示パネルの断面例を図4に示す。この液晶表示パネルは同図のように、液晶層1の前後面(図では上下面)にそれぞれ配置される多数の画素電極2,2,…と、対向電極3とを備え、画素電極2,2間と対向した位置(画素の境界部)にはいわゆるブラックマトリックスと呼ばれる遮光層4がそれぞれ設けられている。そして、遮光層4は画素関口率を向上させるべく狭小化される傾向にある。
【0005】
このようなアクティブマトリックス型のTFT液晶表示パネルにおいて、ライン反転(1H反転)によれば、図4に示すように逆極性であるプラスチャージの画素電極2とマイナスチャージの画素電極2とが隣接するため、フリッカは視認されにくい。しかし、遮光層4と、隣接する画素電極2,2間に渡って位置する画素境界部(図4の点線楕円で示す部分)では、画素電極2,2に印加される電圧が打ち消しあうため、液晶配向の乱れによって光漏れが生じ、黒表示時のコントラスト特性の低下を招きやすい。通常は、フリッカが視認されにくい1H反転駆動を用いて表示駆動を行っている。
【0006】
ここで、アスペクト比が例えば16:9のワイド液晶表示パネルを用いた液晶表示装置に、アスペクト比が例えば2.35:1のシネマスコープサイズの映像(映画)を表示させた場合、表示画像が表示領域に対して横長表示となるため、画面の上下に無画像領域が発生し、その部分は通常黒表示となる。
【0007】
しかしながら、液晶表示パネルの視野角特性に起因した色むらのために、図5に示すように、表示画面5の上下にあって本来黒表示されるべき無画像領域6の上下左右コーナー部分等に色むら7が発生し、そのために本来映像が表示されない無画像領域(黒表示領域)6で色付きが生じ、表示品位を損なう場合があった。
【0008】
このような問題点を改善できる技術としては特許文献1に記載の技術がある。この特許文献1では、画素がマトリクス状に配列されてなる表示部と、入力される映像信号のレベルが黒レベルまたはその近傍であることを検知して検知信号を出力する検知手段と、入力される映像信号を受けて前記検知手段から検知信号が出力されたときは1フィールド期間の周期にて基準電圧を中心に極性が反転(フィールド反転)する映像信号を生成して前記表示部を駆動し、前記検知信号が出力されないときは1水平走査期間の周期にて基準電圧を中心に極性が反転(ライン反転)する映像信号を生成して前記表示部を駆動する駆動手段とを備えた表示装置が開示されている。すなわち、入力される映像信号のレベルが黒レベルまたはその近傍であるときはフィールド反転制御し、入力される映像信号のレベルが黒レベルおよびその近傍以外のときはライン反転制御するものであり、これによって、黒表示時の高コントラスト特性と、フリッカの少ない映像表示を両立しようとしている。
【特許文献1】特開2002−132227号公報(G09G 3/36)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1記載の技術では、入力される映像信号の各画素の信号レベルが黒レベルまたはその近傍であることを検知して検知信号を出力する検知手段が必要になり、その検知精度を高めようとすると、簡単な回路での実現は容易でない。また、全ての画素について上記検知処理を行っているので、その処理負荷が極めて大きくなる。
【0010】
そこで、本願発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、比較的簡単な構成で余り処理負荷をかけずに、液晶表示パネルのアスペクト比とは異なるアスペクト比の映像を表示させる場合にフリッカの少ない映像表示を実現しながら、画面の上下あるいは左右の無画像領域(黒表示領域)の画面コーナー部分等に発生する色むらを解消することができる液晶表示装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明は、液晶表示パネルのアスペクト比とは異なるアスペクト比の入力映像信号を表示する際に、無画像領域は黒表示する液晶表示装置において、前記入力映像信号のアスペクト比を設定するアスペクト比設定手段と、前記アスペクト比設定手段で設定されたアスペクト比を検出するアスペクト比検出手段と、前記アスペクト比検出手段で検出されたアスペクト比と前記液晶表示パネルのアスペクト比とに基づき、前記無画像領域に相当する映像信号に対してはコントラスト向上に優れた第1極性反転処理を行う一方、前記無画像領域以外の有効画像領域に相当する映像信号に対してはフリッカ軽減に優れた第2極性反転処理を行う処理手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記処理手段が、前記第1極性反転処理としてフィールド反転処理を行うことを特徴とするものである。
【0013】
請求項3に係る発明は、前記アスペクト比検出手段が、前記アスペクト比設定手段からアスペクト比の設定がない場合には、前記液晶表示パネル上の所定の一つ又は複数の画素に対応する映像信号についてその輝度が所定時間以上一定の輝度レベルを下回ったかどうかを検出し、この検出結果と前記液晶表示パネル上における前記一つ又は複数の画素の位置との関係から入力映像信号のアスペクト比を検出することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に係る発明は、前記液晶表示パネル上における前記一つ又は複数の画素の位置が、画面四隅のうちの一つ又は複数の角又は画面四縁のうちの一つ又は複数の縁の所定の箇所であることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5に係る発明は、前記アスペクト比検出手段が、前記アスペクト比設定手段からアスペクト比の設定がない場合で、受信放送信号中に入力映像信号のアスペクト比を示す情報が存在する場合は、このアスペクト比情報を利用して入力映像信号のアスペクト比を検出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本願の請求項1記載の発明によれば、入力映像信号のアスペクト比をユーザがアスペクト比設定手段を用いて設定することにより、設定されたアスペクト比をアスペクト比検出手段が検出し、処理手段が、アスペクト比検出手段で検出されたアスペクト比と液晶表示パネルのアスペクト比とに基づき、無画像領域に相当する映像信号に対してはコントラスト向上に優れた第1極性反転処理を行う一方、無画像領域以外の有効画像領域に相当する映像信号に対してはフリッカ軽減に優れた第2極性反転処理を行う。これにより、比較的簡単な構成で余り処理負荷をかけずに、液晶表示パネルのアスペクト比とは異なるアスペクト比の映像を表示させる場合にフリッカの少ない映像表示を実現しながら、画面の上下あるいは左右の無画像領域(黒表示領域)のコントラスト向上を図ることにより、それらの画面コーナー部分等に発生する色むらを解消することができる。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、無画像領域における第1極性反転処理としてフィールド反転処理を行うことにより、無画像領域における隣接する画素に印加される電圧の極性を同一極性とする。これにより、逆極性に起因した相隣り合う画素間の光漏れが無くなり、それに伴う液晶表示パネルの視野角特性による色むらが解消される。従って、従来、黒表示されるべき無画像領域の上下左右コーナー部分等に発生していた色むらが解消されることになる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、アスペクト比設定手段からアスペクト比の設定がない場合には、アスペクト比検出手段が、液晶表示パネル上の所定の一つ又は複数の画素に対応する映像信号についてその輝度が所定時間以上一定の輝度レベルを下回ったかどうかを検出し、この検出結果と液晶表示パネル上における前記一つ又は複数の画素の位置との関係から入力映像信号のアスペクト比を検出するので、ユーザが入力映像信号のアスペクト比を知らない場合でも、余り処理負荷をかけずに上述した効果を実現することができる。
【0019】
請求項4記載の発明によれば、液晶表示パネル上における前記一つ又は複数の画素の位置を、画面四隅のうちの一つ又は複数の角又は画面四縁のうちの一つ又は複数の縁の所定の箇所とすることで、従来構成(映像の全ての画素の輝度レベルを検出する構成)に比べて処理負荷を大幅に軽減することができる。
【0020】
請求項5記載の発明によれば、アスペクト比設定手段からアスペクト比の設定がない場合には、アスペクト比検出手段が、受信放送信号中に存在する入力映像信号のアスペクト比を示す情報を利用して入力映像信号のアスペクト比を検出するので、ユーザが入力映像信号のアスペクト比を知らない場合でも、より少ない処理負荷で上述した効果を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本願発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本願発明の一実施形態に係る液晶表示装置の要部構成を示すブロック図であり本実施形態のものは、アスペクト比設定部11、アスペクト比検出回路12、タイミングコントローラ13、選択回路14、LCD(Liquid Crystal Display)ドライバ15、液晶表示パネル16等から構成されている。
【0023】
アスペクト比設定部11は、ユーザが入力映像信号のアスペクト比を設定するためのもので、入力映像信号の各種のアスペクト比に対応する表示モードボタンや自動設定ボタン等からなる。
【0024】
アスペクト比検出回路12は、上記アスペクト比設定部11で入力映像信号のアスペクト比が設定されている場合には、そのアスペクト比情報をタイミングコントローラ13に出力するが、未設定あるいは自動設定の場合は、入力される映像信号のアスペクト比を後述するようにして検出して、そのアスペクト比情報をタイミングコントローラ13に出力する。
【0025】
タイミングコントローラ13は、同期信号(水平及び垂直同期信号)に基づいて、液晶表示パネル16を駆動するための各種タイミング信号を生成して液晶表示パネル16に出力すると共に、1H反転信号(1ライン毎に極性を反転させるための制御信号)と1F反転信号(1フィールド毎に極性を反転させるための制御信号)を生成して選択回路14に出力する。
【0026】
そして、上記タイミングコントローラ13は、アスペクト比検出回路12から入力映像信号のアスペクト比情報を受け取り、この入力映像信号のアスペクト比情報と予め分かっている液晶表示パネル16のアスペクト比情報とに基づき、液晶表示パネル16の無画像部分指示信号を生成して、これを選択回路14に送出する。なお、極性反転の切替を行わない従来回路においては、前記いずれか一方の極性反転信号を生成してLCDドライバに供給すれば足りるが、本実施形態においては、選択回路14で選択した方の信号を極性反転信号としてLCDドライバ15に供給する。
【0027】
LCDドライバ15は、映像信号を極性反転信号に基づき極性反転して液晶表示パネル16を駆動する。なお、液晶表示パネル16は、電界を印加しない状態で光が透過するノーマルホワイトモードのパネル構成であるので、無画像部分では映像信号として高電界の黒レベル信号が出力される。
【0028】
本実施形態では、上記タイミングコントローラ13と選択回路14とLCDドライバ15によって本願発明の処理手段が構成されている。
【0029】
以下、図2に基づいてアスペクト比情報の生成の具体例について説明する。ここで、図2(A)ではアスペクト比4:3の液晶表示パネル16Aを示しており、上段の図は当該液晶表示パネル16Aにアスペクト比4:3のSDTV(Standard Definition TV)の映像が表示された状態を示しており、中段の図は当該液晶表示パネル16Aにアスペクト比16:9のHDTV(High Definition TV)の映像が表示された状態を示しており、下段の図は当該液晶表示パネル16Aにアスペクト比2.35:1のシネマスコープの映像が表示された状態を示している。アスペクト比検出回路12は、液晶表示パネル16A上の所定の二つの画素(検出点)31,32に相当する映像信号(所定ラインにおける所定番目の画素の信号)についてその輝度が所定時間以上一定の輝度レベルを下回ったかどうかを検出し、この検出結果と液晶表示パネル16A上における前記二つの画素31,32の位置との関係からアスペクト比を検出する。この例では、前記画素31,32は画面上縁の中央に設定している。
【0030】
図2(A)の上段の例では、二つの画素31,32について共に一定の輝度レベルを下回ることはなかったとの検出がなされ、入力映像信号のアスペクト比は4:3であるとの情報をタイミングコントローラ13に与える。この場合、タイミングコントローラ13は液晶表示パネル16Aのアスペクト比(4:3)と同じであることから、無画像領域(黒表示領域)は存在しないと判断する。図2(A)の中段の例では、画素31についてだけ一定の輝度レベルを下回ったとの検出がなされ、入力映像信号のアスペクト比は16:9であるとの情報をタイミングコントローラ13に与える。この場合、タイミングコントローラ13は、入力映像信号のアスペクト比(16:9)と液晶表示パネル16Aのアスペクト比(4:3)に基づき、無画像領域(黒表示領域)が画面上と画面下の所定範囲に存在すると判断する。この所定範囲(ライン数)に関する情報は、液晶表示パネル16Aのアスペクト比(4:3)は予め分かっているので、入力映像信号のアスペクト比が16:9であるとの情報に対応付けてタイミングコントローラ13の図示しないメモリに保持しておけばよい。図2(A)の下段の例では、二つの画素31,32の両方について一定の輝度レベルを下回ったとの検出がなされ、入力映像のアスペクト比は2.35:1であるとの情報をタイミングコントローラ13に与える。この場合、タイミングコントローラ13は、入力映像信号のアスペクト比(2.35:1)と液晶表示パネル16Aのアスペクト比(4:3)に基づき、無画像領域(黒表示領域)が画面上と画面下の所定範囲に存在すると判断する。この所定範囲(ライン数)に関する情報は、上記と同様にアスペクト比が2.35:1であるとの情報に対応付けてタイミングコントローラ13の図示しないメモリに保持しておけばよい。
【0031】
また、図2(B)ではアスペクト比16:9の液晶表示パネル16Bを示しており、上段の図は当該液晶表示パネル16Bにアスペクト比4:3のSDTVの映像が表示された状態を示しており、中段の図は当該液晶表示パネル16Bにアスペクト比16:9のHDTVの映像が表示された状態を示しており、下段の図は当該液晶表示パネル16Bにアスペクト比2.35:1のシネマスコープの映像が表示された状態を示している。アスペクト比検出回路12は、液晶表示パネル16B上の所定の二つの画素33,34に相当する映像信号(所定ラインにおける所定番目の画素の信号)についてその輝度が所定時間以上一定の輝度レベルを下回ったかどうかを検出し、この検出結果と液晶表示パネル16B上における前記二つの画素33,34の位置との関係からアスペクト比を検出する。この例では、前記画素33,34は画面右上の角に設定している。
【0032】
図2(B)の上段の例では、二つの画素33,34の両方が一定の輝度レベルを下回ったとの検出がなされ、入力映像のアスペクト比は4:3であるとの情報をタイミングコントローラ13に与える。この場合、タイミングコントローラ13は、入力映像信号のアスペクト比(4:3)と液晶表示パネル16Bのアスペクト比(16:9)に基づき、無画像領域(黒表示領域)が画面左と画面右の所定範囲に存在すると判断する。この所定範囲(ライン開始端からの画素数及びライン終端からの画素数)に関する情報は、上記と同様にアスペクト比が4:3であるとの情報に対応付けてタイミングコントローラ13の図示しないメモリに保持しておけばよい。図2(B)の中段の例では、二つの画素33,34について共に一定の輝度レベルを下回ることはなかったとの検出がなされ、入力映像のアスペクト比は16:9であるとの情報をタイミングコントローラ13に与える。この場合、タイミングコントローラ13は液晶表示パネル16Bのアスペクト比(16:9)と同じであることから、無画像領域(黒表示領域)は無いと判断する。図2(B)の下段の例では、画素33についてだけ一定の輝度レベルを下回ったとの検出がなされ、入力映像のアスペクト比は2.35:1であるとの情報をタイミングコントローラ13に与える。この場合、タイミングコントローラ13は、入力映像信号のアスペクト比(2.35:1)と液晶表示パネル16Bのアスペクト比(16:9)に基づき、無画像領域(黒表示領域)が画面上と画面下の所定範囲に存在すると判断する。この所定範囲(ライン数)に関する情報は、上記と同様にアスペクト比が2.35:1であるとの情報に対応付けてタイミングコントローラ13の図示しないメモリに保持しておけばよい。
【0033】
なお、アスペクト比には、上記以外にも、ビスタの1.85:1、ヨーロッパビスタの1.66:1などがある。
【0034】
前記タイミングコントローラ13は、前記アスペクト比情報を得て前記メモリから無画像部分の範囲(ライン数、或いは、ライン開始端からの画素数及びライン終端からの画素数)情報を得る。そして、前記同期信号の入力タイミングで、前記情報に基づいて無画像部分指示信号を選択回路14に与えることを開始する。選択回路14は、無画像部分指示信号がオフのときはタイミングコントローラ13からの1H反転信号を極性反転信号としてLCDドライバ15に与えるが、無画像部分指示信号がオンときはタイミングコントローラ13からの1F反転信号を極性反転信号としてLCDドライバ15に与える。
【0035】
このように、液晶表示パネル16に表示された映像のなかに無画像領域が存在する場合には、この無画像領域(黒表示領域)に対しては1F反転信号による極性反転が行われるので、黒表示領域のコントラストが向上し、これにより画面コーナー部分等に発生する色むらを解消することができる。一方、有効画像領域に対しては1H反転信号による極性反転が行われるので、有効画像領域のフリッカ軽減が図れる。
【0036】
具体的に説明すると、ユーザが入力映像信号のアスペクト比を認識している場合は、ユーザが予めアスペクト比設定部11のボタン操作をすることにより、アスペクト比検出回路12に、例えばアスペクト比16:9の液晶表示パネル16Bに表示される映像信号が例えばアスペクト比2.35:1のシネマスコープモードであることを認識させる。アスペクト比検出回路12は、このアスペクト比情報をタイミングコントローラ13に与え、タイミングコントローラ13から1H反転信号及び1F反転信号と共にオフ又はオンの無画像部分指示信号を選択回路14に出力することにより、選択回路14において有効画像表示部分はライン反転駆動とし、無画像部分はフィールド反転駆動の黒レベル信号とする。従って、表示領域の上下部分(無画像領域)は自動的にフィールド反転信号で駆動され、信号レベルは黒レベルが印加される。このとき、全表示領域のコーナー部分の色むらを、色むらの指標として用いられるCIE色度座標の(x,y)の面内色差(Δx,Δy)で表現すると、従来の全画面ライン反転駆動時の(Δx,Δy)=(0.023,0.054)に対して、上下の無画像領域(黒表示領域)をフィールド反転駆動した場合は、(Δx,Δy)=(0.007,0.010)となり大幅に改善された。
【0037】
一方、上記と同様な条件で、ユーザが入力映像信号のアスペクト比を知らない場合は、ユーザが予めアスペクト比設定部11の自動設定ボタンを操作するか、あるいは未設定とすることにより、アスペクト比検出回路12が入力映像信号のアスペクト比を上述したようにして検出して、タイミングコントローラ13に与える。タイミングコントローラ13からは1H反転信号及び1F反転信号と共にオフ又はオンの無画像部分指示信号を選択回路14に出力することにより、選択回路14において画像表示部分はライン反転駆動とし、無画像部分はフィールド反転駆動の黒レベル信号とする。これにより、表示領域の上下部分(無画像領域)は黒レベル表示される。このとき、上記と同様に面内色差を(Δx,Δy)で表現すると、従来の全画面ライン反転駆動時の(Δx,Δy)=(0.020,0.048)に対して、上下の無画像領域(黒表示領域)をフィールド反転駆動した場合は、(Δx,Δy)=(0.007,0.008)となり大幅に改善された。なお、前記との測定値の差は測定誤差である。
【0038】
以上のように、本実施形態によれば、比較的簡単な構成で余り処理負荷をかけずに、液晶表示パネル16のアスペクト比とは異なるアスペクト比の映像を表示させる場合にフリッカの少ない映像表示を実現しながら、画面の上下あるいは左右の無画像領域(黒表示領域)のコントラスト向上により、それらの画面コーナー部分等に発生する色むらを解消することができる。
【0039】
すなわち、無画像領域(黒表示領域)では、逆極性に起因した相隣り合う画素間の光漏れが無くなり、それに伴う液晶表示パネル16の視野角特性による色むらが解消される。従って、従来、黒表示されるべき無画像領域の上下左右コーナー部分等に発生していた色むらが解消されることになる。
【0040】
また、アスペクト比設定部11からアスペクト比の設定がない場合には、アスペクト比検出回路12が、液晶表示パネル16上の所定の一つ又は複数の画素に対応する映像信号についてその輝度が所定時間以上一定の輝度レベルを下回ったかどうかを検出し、この検出結果と液晶表示パネル16上における前記一つ又は複数の画素の位置との関係から入力映像信号のアスペクト比を検出するので、ユーザが入力映像信号のアスペクト比を知らない場合でも、余り処理負荷をかけずに上述した効果を実現することができる。
【0041】
なお、上記の例では、二つの画素31,32或いは33,34を上側の中央位置或いは上側の右角位置に設定したが、これに限られるものではなく、二つの画素を下側の中央位置或いは下側の右角位置に設定することもできる。また、2つの画素を上側の左角位置若しくは下側の左角位置に設定することもできる。また、検出できるアスペクト比の種類が少なくなるものの、一つの画素位置だけをアスペクト比検出用に設定してもよい。逆に、三つ以上の画素位置をアスペクト比検出用に設定してもよい。検出点となる三つ以上の画素を設定したとしても、従来構成(映像の全ての画素の輝度レベルを検出する構成)に比べて処理負荷の大幅な軽減が図れる。
【0042】
また、例えば放送受信によって得た信号中に入力映像信号のアスペクト比を示す情報が存在する場合は、このアスペクト比情報を利用して入力映像信号のアスペクト比を検出することができる。具体的には、液晶表示装置のマイクロコンピュータが、受信放送信号中の入力映像信号のアスペクト比を示す情報によって入力映像信号のアスペクト比を認識して、タイミングコントローラ13に与えることができる。このような構成では、前記マイクロコンピュータがアスペクト比検出回路12の役割を担うことになる。このように構成することにより、ユーザが入力映像信号のアスペクト比を知らない場合でも、より少ない処理負荷で上述した効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本願発明の一実施形態に係る液晶表示装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】アスペクト比情報の生成の具体例を示す説明図。
【図3】交流駆動されるマトリックス型の液晶表示パネルに印加されるチャージ状態の状態遷移を示す図。
【図4】TFT液晶表示パネルの断面例を示す模式図。
【図5】従来の問題点を示すための説明図。
【符号の説明】
【0044】
11 アスペクト比設定部
12 アスペクト比検出回路
13 タイミングコントローラ
14 選択回路
15 LCDドライバ
16 液晶表示パネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示パネルのアスペクト比とは異なるアスペクト比の入力映像信号を表示する際に、無画像領域は黒表示する液晶表示装置において、
前記入力映像信号のアスペクト比を設定するアスペクト比設定手段と、前記アスペクト比設定手段で設定されたアスペクト比を検出するアスペクト比検出手段と、前記アスペクト比検出手段で検出されたアスペクト比と前記液晶表示パネルのアスペクト比とに基づき、前記無画像領域に相当する映像信号に対してはコントラスト向上に優れた第1極性反転処理を行う一方、前記無画像領域以外の有効画像領域に相当する映像信号に対してはフリッカ軽減に優れた第2極性反転処理を行う処理手段とを備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】
前記処理手段は、前記第1極性反転処理としてフィールド反転処理を行うことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。
【請求項3】
前記アスペクト比検出手段は、前記アスペクト比設定手段からアスペクト比の設定がない場合には、前記液晶表示パネル上の所定の一つ又は複数の画素に対応する映像信号についてその輝度が所定時間以上一定の輝度レベルを下回ったかどうかを検出し、この検出結果と前記液晶表示パネル上における前記一つ又は複数の画素の位置との関係から入力映像信号のアスペクト比を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の液晶表示装置。
【請求項4】
前記液晶表示パネル上における前記一つ又は複数の画素の位置は、画面四隅のうちの一つ又は複数の角又は画面四縁のうちの一つ又は複数の縁の所定の箇所であることを特徴とする請求項3記載の液晶表示装置。
【請求項5】
前記アスペクト比検出手段は、前記アスペクト比設定手段からアスペクト比の設定がない場合で、受信放送信号中に入力映像信号のアスペクト比を示す情報が存在する場合は、このアスペクト比情報を利用して入力映像信号のアスペクト比を検出することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の液晶表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−233237(P2007−233237A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57576(P2006−57576)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】