説明

液浄化処理装置

【課題】金属製部品の腐食を防止することにより装置の部品交換の頻度を低下させて、保守・管理を格段に容易にし、かつ、低コストで運用可能な液浄化処理装置を提供すること。
【解決手段】濾過手段を、少なくとも一部が透明である材料で構成される筒内に多孔質セラミックフィルタを配置したユニットを複数個接続して構成し、上記材料で構成される筒の内面に、空気抜き機能と上記内面の洗浄機能とを切り換えて使用可能な排気/給液配管を設けるとともに、上記材料で構成される、前記多孔質セラミックフィルタを保持するユニットを、スプリングを介して、前記多孔質セラミックフィルタの下流側で保持する構造としたことを特徴とする液浄化処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液浄化処理装置に関し、より詳細には、金属製部品の腐食を防止するとともに各部のシール性を向上させることによって濾過制度を向上させ、かつ、保守・管理を格段に容易にした液浄化処理装置に関する。ここで、処理対象とする液としては、プール水を始めとして、温泉等の各種の浴場の水(湯)等を挙げることができる。
以下の説明では、これらの代表として、プール水を例として説明するが、本発明の適用分野は、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
近年のフィットネスブームに伴い、健康増進やストレス解消に適した全身運動としての水泳を行うものが増え、老若男女を問わずプールに親しむものが増えている。そして、これに伴い、水泳をより安全かつ衛生的に楽しむために、プールの衛生状況、特に水質に対する関心が高まっており、このため、プールの水質を決定するプール水浄化処理装置に対する要求はますます厳しいものとなってきている。
【0003】
上述のプール水浄化処理装置について具体的に説明すると、プール水浄化処理装置は、一般的にプール水に含まれるゴミ,髪の毛等の不純物を取り除く前濾過装置,大腸菌や発がん性物質等を除去する精密濾過装置,プール水の殺菌を行う殺菌装置等を有するものであり、さらに必要に応じて、濾過装置に濾過助剤を供給する装置や、また温水プールであればプール水の加温手段等が接続されて構成されるものであり、通常、プール水はこの浄化処理装置とプールとの間を循環されることにより浄化処理され、衛生的に保たれている。
【0004】
このような状況の中、プール水浄化処理装置等の浄水設備に適用される濾過装置としては、多孔質セラミックフィルタが多く用いられている。多孔質セラミックフィルタは、プール、特に温水プールの濾過に好ましい極めて微細な濾過空間を立体的に有し、従来のフィルタでは濾過することが非常に困難であった、人体から放出される油分等の有機質も好適に濾過することが可能である。
【0005】
ところで、プールの運用に当たっては、その水質を規定範囲内に維持することが重要である。ここでいう規定範囲とは、水道法による水質基準,遊泳プール水の水質基準などに基づく規定範囲を指している。そして、このような基準を満たすため、各プールに、各種の水質浄化処理装置(プール水浄化処理装置)が設置されて、プール水の浄化処理が行われている。
【0006】
このプール水浄化処理装置について説明すると、プール水浄化処理装置は、例えば、本発明者の出願に係る特許文献1に開示されているように、濾過装置,殺菌装置,吸着浄化装置などの各種の浄化処理装置から構成されている。
【0007】
運用中のプールからオーバーフロー等により取り出されたプール水は、上述の各種の浄化処理装置により順次処理されて浄化処理された後、前述の種々の基準に適合するように消毒用の塩素を添加された上で、プールに戻されるという形で、繰り返し使用される。なお、この過程では、一部のプール水が排出され、代わりに新鮮な水道水もしくは井戸水などが補給されるが、殆んどのプール水が再利用される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−347376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のプール水浄化処理装置は、一般に、大型のタンク内に多数の多孔質セラミックフィルタを配置した1個の組立体の形に構成されている。そして、これらの多数の多孔質セラミックフィルタは、枝分かれ構造を有する配管系により、1本の主管から各多孔質セラミックフィルタごとに分岐して濾過操作に供された後、再び出口側の(逆向きの)枝分かれ構造を有する配管系により、1本の主管にまとめられる。
【0010】
上述のように、従来のプール水浄化処理装置(以下、単に装置ともいう)においては、高機能の濾過装置,殺菌装置,吸着浄化装置などの各種の浄化処理装置を用いて処理を行った上に、さらに消毒用の塩素を添加するという、いわば二重の安全策が採られている。
しかしながら、この塩素は、プール水浄化処理装置の金属部品(主として、ステンレス鋼製部品)の腐食を引き起こすという重大な問題があった。
【0011】
より具体的には、プール水浄化処理装置中の高機能の濾過装置を構成しているステンレス鋼製部品、例えば前述の多孔質セラミックフィルタをパッキンを介して保持する部品等は、基本的に複数の部品を溶接して組み立てられている場合が多く、この溶接部分は特に腐食されやすいという問題がある。
また、構造上、プール水の流れが停滞するような個所、濾材が溜まりやすい個所に関しても、腐食の進行が早いという問題もある。
【0012】
また、これとは別に、上述のような部品の腐食が発生した場合等には、その状況をなるべく早期に発見することが好ましいが、従来の装置では、必ずしも、装置内部の観察がやりやすい状況には構成されていないという問題もあった。
さらに、部品の腐食を発見した場合に行われる部品交換に際し、その手間を極力少なくし、短時間内に作業を完了させるためには、装置のメンテナンス適性をよくしておくことが必須であるが、この点でも従来の装置には、十分な対応がなされていないものが多いという問題もあった。
【0013】
同様の問題は、例えば、温泉水の浄化処理装置においても見ることができる。
また、熱帯魚飼育用の水槽などの家庭用の水槽においては、専門の知識を持つ者がいないという事情もあり、より容易にメンテナンスすることが可能な水浄化処理装置が求められている。
【0014】
本発明は上述のような状況に鑑みてなされたもので、その第1の目的は、前述のような大型のタンク内に多数の多孔質セラミックフィルタを配置した1個の組立体の形に構成することによる弊害、すなわち、メンテナンス(特に、部品交換が必要な場合)の際に、装置の解体・組立に要する時間がどうしても多くなってしまうという問題を解消した液浄化処理装置(より具体的には、水浄化処理装置)を提供することにある。
【0015】
また、本発明の第2の目的は、前述のような大型のタンク内に多数の多孔質セラミックフィルタを配置した1個の組立体の形に構成することによる他の弊害、すなわち、主として溶接部分における金属製部品の腐食を防止することにより、装置の部品交換の頻度を低下させて、保守・管理を格段に容易にした液浄化処理装置(より具体的には、水浄化処理装置)を提供することにある。
【0016】
また、本発明の第3の目的は(第1の目的と一部重複する部分もあるが)、部品の腐食の発生を早期に発見しやすくし、さらに、部品の交換を含めた、装置運用における融通性を高めて、しかも低コストで運用可能な、保守・管理を格段に容易にした液浄化処理装置を提供することにある。
【0017】
また、本発明のさらに他の目的は、熱帯魚飼育用の水槽など家庭用の水槽に適用するに好適な、特に低コストで運用可能な、保守・管理を格段に容易にした液浄化処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明に係る液浄化処理装置は、濾過手段を有する液浄化処理装置であって、前記濾過手段を、少なくとも一部が透明である材料で構成される筒内に多孔質セラミックフィルタを配置したユニットを複数個接続して構成し、前記材料で構成される筒の内面に、空気抜き機能と前記内面の洗浄機能とを切り換えて使用可能な脱気/給液配管を設けるとともに、前記材料で構成される、前記多孔質セラミックフィルタを保持するユニットを、スプリングを介して、前記多孔質セラミックフィルタの下流側で保持する構造としたことを特徴とする。
【0019】
ここで、前記濾過手段を構成する前記多孔質セラミックフィルタの保持は、段付き形状を有する上下のホルダ間にパッキンを介して前記多孔質セラミックフィルタを保持するとともに、前記ホルダ間には前記多孔質セラミックフィルタを挿通する通しシャフトを有する構成であることが好ましい。
【0020】
また、前記スプリングがコイルスプリングであり、前記多孔質セラミックフィルタ内に流入した濾過液を、前記シャフトに沿って前記コイルスプリングに挿通させるような流路を形成していることが好ましい。
さらに、前記濾過手段の前段には、処理対象液の供給配管と切り換え可能に、濾過助剤貯留タンクからの濾過助剤供給配管が接続されていることが好ましい。
【0021】
また、前記濾過助剤貯留タンクは、少なくとも珪藻土の供給部を備え、さらに、セルロース,粉末活性炭の供給部を備えていることが好ましい。
さらに、前記濾過手段の後段には、この濾過手段を逆洗する際に用いる温液供給手段が備えられていることが好ましい。
【0022】
また、前記濾過手段の後段には、前記温液供給手段からの温水供給配管と切り換え可能に、前記濾過助剤貯留タンクへの濾過液の供給配管が備えられていることが好ましい。
さらに、前記多孔質セラミックフィルタとして、浄化処理前の処理対象液と接触する外周面および浄化処理前の処理対象液が流れる中心貫通孔を限定する内周面とを有する筒状体からなり、この筒状体の外周面と内周面との間の肉厚部にその軸線方向に浄化処理後の処理対象液が流れる複数の貫通孔を有する円筒状の多孔質セラミックフィルタを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、多孔質セラミックフィルタを収容するタンクをユニット化して、溶接部分を極力減少させるようにし、また、特にスプリングなどの金属製部品を濾過済み液側において濾材が溜まらないように構成して金属製部品の腐食(いわゆる隙間腐食)を防止することにより、装置の部品交換の頻度を低下させて、保守・管理を格段に容易にした液浄化処理装置を提供できるという顕著な効果を奏するものである。
【0024】
ここで、多孔質セラミックフィルタを収容するタンクを、少なくとも一部が透明材料である樹脂材料で構成される筒状としたことは、このタンク内における多孔質セラミックフィルタの破損が早期に発見可能となること、後述するプレコート時に多孔質セラミックフィルタへのプレコートの状態が簡単に確認可能となること、同じく後述する逆洗時に多孔質セラミックフィルタが十分に洗浄されたか否かを簡単に確認可能となることなど、種々の点で実用上の利点が多い。
【0025】
従って、本発明によれば、部品の腐食の発生を早期に発見しやすくし、さらに、部品の交換を含めた、装置運用における融通性を高めて、しかも低コストで運用可能な、保守・管理を格段に容易にした液浄化処理装置を提供できるという顕著な効果を奏するものである。
【0026】
また、本発明によれば、熱帯魚飼育用の水槽など家庭用の水槽に適用するに好適な、特に低コストで運用可能な、保守・管理を格段に容易にした液浄化処理装置(水浄化処理装置)を提供するという効果をも奏するものである。
【0027】
また、本発明においては、多孔質セラミックフィルタが接触する可能性のある部分については、ステンレス鋼製等の金属部品の表面に、PTFE等のフッ素樹脂製のスリーブ状の部品をはめるようにしているので、メンテナンス時等における多孔質セラミックフィルタの取り付けの際に発生する損傷を防止することが可能となるという効果を奏するものである。この点については、各部品を構成する材質を、その都度、例示するようにしている。
【0028】
なお、前述のように、本発明に係る液浄化処理装置が処理対象とする液としては、プール水を始めとして、温泉等の各種の浴場の水(湯)等を挙げることができる。従って、本発明の適用分野は、これらの種々の分野に及ぶことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例に係るプール水浄化処理装置を利用するプール水浄化処理システムの一例を示す概念図である。
【図2】図1に示す本発明のプール水浄化処理装置の一構成例の概略を示す図である。
【図3】図2に示すプール水浄化処理装置のプレコート工程における動作を説明する図である。
【図4】図2に示すプール水浄化処理装置のプール水濾過工程における動作を説明する図である。
【図5】図2に示すプール水浄化処理装置のプール水濾過工程並びにボディフィード工程における動作を説明する図である。
【図6】図2に示すプール水浄化処理装置の逆洗工程における動作を説明する図である。
【図7】図2に示すプール水浄化処理装置の精密濾過部の一構成例の概略を示す図である。
【図8】(a)は図2に示す精密濾過部の詳細な構成例、並びに作用を示す図(その1)であり、図14のE−E線での断面図である。(b)はその要部拡大図である。
【図9】本体筒部の補強部材の一例を示す斜視図である。
【図10】図2に示す精密濾過部の詳細な構成例、並びに作用を示す図(その2)であり、図14のE−E線での断面図である。
【図11】精密濾過部の作用を説明する図であり、(a)はパッキンが変形する前の状態を、(b)はパッキンが変形した後の状態を、それぞれ示しており、いずれも図14のE−E線での断面図である。
【図12】図2に示す精密濾過部の排気・給水配管部品を示す図である。
【図13】図12に示す排気・給水配管部品の動作を説明する図である。
【図14】図2に示す精密濾過部の流路形成部材を示す図である。
【図15】精密濾過部の別の配置状況を示す図であり、図14のE−E線での断面図である。
【図16】本発明のプール水浄化処理装置の他の構成例の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る液浄化処理装置について、プール水浄化処理装置を例に挙げて、添付の図面に基づいて詳細に説明するが、本発明は、これに限定されるわけではない。
【0031】
図1は、本発明の一実施例に係るプール水浄化処理装置を利用するプール水浄化処理システムの基本構成を示す図である。図1に示されるプール水浄化処理システムは、プール12からオーバーフローしたプール水を貯留するオーバーフロータンク14と、プレフィルタ(ヘヤキャッチャー)16と、プール水循環用ポンプ18と、本発明に係るプール水浄化処理装置10を有している。なお、84a,86aはバルブを示している。
【0032】
また、図1中、19aは処理対象水の導電率を測定するための導電率計を示しており、19bは浄化処理の終了した処理済み水の濁度を測定するための精密濁度計を、19cは同じく処理済み水の残留塩素の濃度を測定するための残留塩素計を示している。なお、図示は省略しているが、これらの測定器は制御装置に接続されており、これらの測定器による測定結果に基づいて、制御装置により各部の駆動条件等が調整される。
【0033】
オーバーフロータンク14は、プール12からオーバーフローしたプール水、あるいは自然排水もしくはポンプ等により強制排水されたプール水を一時的に貯留するものであり、所定量のプール水を配管を通してプレフィルタ16,16に供給する。
【0034】
プレフィルタ16,16はいわゆるストレーナであり、オーバーフロータンク14から流出したプール排水中に含まれ、あるいは浮遊している髪の毛,糸くず,絆創膏やゴミなどの粗大な不純物を除去するためのもので、後段の本発明のプール水浄化処理装置10によるプール水浄化処理(特に、後述する多孔質セラミックフィルタ20による濾過)をスムーズに行わせるために設けられる。
【0035】
ポンプ18,18は循環ポンプであって、プール水を本発明のプール水浄化処理装置10の流路内で流動させるためのエネルギを与えるものであればどのようなものでもよい。この循環ポンプは1台のポンプであってもよいし、複数のポンプを並列または直列に配置したものであってもよい。
【0036】
プール水浄化処理装置10は、以下に説明するような構成を有するもので、プール水を精密濾過並びに殺菌処理する部位である。
以下、図2に基づいて、本発明の一実施形態に係るプール水浄化処理装置10の構成例を詳細に説明する。
図2に示されるように、本実施例に係るプール水浄化処理装置10は、精密濾過部22と、次亜塩素酸塩投入部24と、プレコート部26と、ボディフィード部28並びに逆洗部30を有する。また、配管系内各所には、図に示すような位置に電磁弁34a〜34iが配置されている。
【0037】
精密濾過部22は、後述する多孔質セラミックフィルタ(以下、単にセラミックフィルタという)20によって、プール水中に持ち込まれてあるいは生成されて混在している浮遊金属塩類,油分,汚れなどの有機物,不純物,細菌などの微細粒子(例えば、0.25μm〜1μm程度の微細粒子)を濾過して、プール水を浄化処理する部位である。
【0038】
精密濾過部22には、上述したようなセラミックフィルタ20が複数本(例えば、100〜150本程度)装着される。セラミックフィルタ20としては、通常の円筒状等の各種のものが利用可能である。例えば、長さ500mm、内径50mm、外径85mmの既存のセラミックフィルタを用いることができる。しかし、好ましくは、本出願人による出願に係る特開平5−253451号公報に開示されている、浄化処理する前のプール水と接触する外周面および中心貫通孔を限定する内周面とを有する筒状体からなり、この筒状体の外周面と内周面との間の肉厚部に、その軸線方向に浄化処理後のプール水が流れる複数の貫通孔を有するセラミックフィルタが好適に利用可能である。
【0039】
本実施例に係る精密濾過部22においては、一例として、上述のようなセラミックフィルタ20を、その内部において、適宜の接合部材によって複数本(ここでは、一例として3本とするが、これに限定されないのはもちろんである)を直列に接合して、所定本数ずつを濾過タンク内にセットして用いる。
例えば図7に示すように、ここでは、3本のセラミックフィルタ20を縦列接続して収容した濾過タンク40(図8(a)を参照)8本を1グループとしてまとめて、さらに、このグループを6つ集めた形(図7(a)に示す平面図、並びに同(b)に示す側面図参照)で、1つの精密濾過部22を構成している。
【0040】
精密濾過部22内の各濾過タンク内には、図8(a)に示すような形で、1つの濾過タンク当たり3本(中間部を一部省略している)のセラミックフィルタ20が収容されている。この図に示す例では、濾過タンク40内に3本がステンレス鋼製のコイルスプリング42により上方から下方に向けて押圧される形で接合されたセラミックフィルタ20が、各濾過タンク40内に1組ずつ、上方からコイルスプリング42を介して吊り下げられた構成となっている。ここで、図8(a)は、図14のE−E線での濾過タンク40の断面図である。
【0041】
なお、ここでは、セラミックフィルタ20を、濾過タンク40内に、ステンレス鋼製のコイルスプリング42を介して吊り下げられた構成としているが、このような構成は一例であり、図8(a)に示すような構成の濾過タンク40を上下逆にセットして使用する構成も採用可能である。この場合には、逆洗時の排水管を、濾過タンク40下部に設けることも好ましい。
【0042】
すなわち、ここに示す例では、各濾過タンク40は、透明塩ビ(硬質塩化ビニル樹脂)製の本体筒部40aと、この本体筒部40aの上部に配置された、コイルスプリング42を介してセラミックフィルタ20を挿通したステンレス鋼製のシャフト44を保持する上部支持ユニット46と、上記本体筒部40aの下部に配置された、上記シャフト44を水平面内で位置決めする下部支持ユニット48とを有している。
【0043】
なお、濾過タンク40は、全体を透明塩ビ(硬質塩化ビニル樹脂)製とはせず、主要部は通常の不透明の硬質塩ビ製とし、適宜の個所に透明塩ビ材により製作した窓を嵌め込むようにすると、強度並びに耐熱性を向上させることができる。
この場合、窓は、上部(セラミックフィルタ20の上端部が見える位置)を主に配置することが好ましい。
【0044】
本発明に係る水浄化処理装置において濾過タンクの本体筒部を構成する材料としては、上述のようなそれ自体が透明である材料以外にも、不透明な樹脂材料またはステンレス鋼板等に透明塩ビ,アクリル樹脂またはガラス等からなる透明窓を設けた複合的な構造としてもよい。
【0045】
また、各濾過タンク40の上部および下部にはそれぞれエルボ50および52が接続されており、これにより、各濾過タンク40は、精密濾過部22全体を構成するための主配管80aから分岐している支管80bに接続されて、精密濾過部22全体を構成している。ここで、各濾過タンク40の上部および下部のフランジ部と上記各エルボ50および52、並びに各濾過タンク40を構成している本体筒部40aとその上下両端部のフランジ部とは、いずれもパッキンを介してサニタリークランプ(ワンタッチ接続具)で接続されている。
【0046】
本実施例に係る濾過タンク40は、前述の通り本体筒部40aを透明塩ビ製としているが、これは、前述のように、使用中の濾過タンク40内におけるセラミックフィルタ20の破損(欠け,ひび割れ等)等のトラブルを早期に発見可能として、必要に応じて、早急に部品交換等を行い、その状況を短時間のうちに修復可能とし、影響を最小にするためである。
【0047】
また、本実施例に係る濾過タンク40では、3本のセラミックフィルタ20を挿通したシャフト44を保持する、セラミックフィルタ20の保持機能をも有するステンレス鋼製のシャフト保持部材54を、前記下部支持ユニット48に配したPTFE製のスリーブ48a内に上下方向に移動可能に支承するとともに、上記シャフト44の上部を、前記上部支持ユニット46内に螺着されているスプリング受けを兼ねるステンレス鋼製の上部流路形成部材56の上面側において、これもステンレス鋼製のコイルスプリング42を介して支持している。なお、コイルスプリング42の上端部側は、濾過されたプール水を通過させる挿通孔を有するコイルスプリング保持部材57を介して、ネジ留めされている。
【0048】
ここで、上記下部支持ユニット48内のステンレス鋼製の下部流路形成部材68に配置したスリーブ48aと、このスリーブ48a内で上下方向に移動可能に支承されているセラミックフィルタ20の保持機能をも有するシャフト保持部材54とを移動可能に構成したことにより、本実施例に係る濾過タンク40では、濾過タンク40の本体筒部40aの製作時の寸法誤差、あるいは、セラミックフィルタ20の寸法誤差(いずれも、図の上下方向における寸法誤差)を、図8(a)中の間隙48bで示す範囲内で吸収することが可能になっている。
【0049】
本実施例に係る濾過タンク40の下部には、オーバーフロータンク14から送られてくるプール水を、セラミックフィルタ20の外周面に略均等に配分する分配孔を備えるとともに、PTFE製のスリーブ48aを介して上述のシャフト保持部材54を支承する受座を備えた下部流路形成部材68が配置されている。
【0050】
この受座内には、前述のようにシャフト保持部材54がスリーブ48aを介して図中上下方向に移動可能な状態で挿入されており、また、シャフト保持部材54にネジ止め固定されているシャフト44には、ここでは3本のセラミックフィルタ20が挿通されている。なお、シャフト保持部材54の上面とセラミックフィルタ20との接触面間には、PTFE製スリーブ60を介してフッ素ゴム系材料のパッキン62が挿入されており、さらに、前記シャフト保持部材54のセラミックフィルタ20との接触面側は、段付き状(図8(b)参照)に形成されている。
【0051】
上述のようなフッ素ゴム系材料のパッキン62は、この他に、セラミックフィルタ20の上端面とこのセラミックフィルタ上端面と接触する、上部支持ユニット46内のステンレス鋼製のフィルタ受部66の下側の面との間にも挿入されており、このように構成されるセラミックフィルタの組み立て構造をコイルスプリング42により一定圧力で圧縮することで、上述のパッキンともども、セラミックフィルタ20の表面とその支持部材の表面との間のシールを確実なものとするために重要なものである。
【0052】
なお、上述の、セラミックフィルタ20の上端面と接触する、上部支持ユニット46内のフィルタ受部66の下側の面は、シャフト保持部材54の下側の面と同様に段付き状に形成されており、また、この段付き面とセラミックフィルタ20の上端面との間にも、PTFE製スリーブ66bが挿入されている。
上述のフィルタ受部66の外側にはフランジ70が螺着されており、前述の通り、このフランジ70と本体筒部40a上部に螺着されているフランジ72とを、図示されていないサニタリークランプによりワンタッチで本実施例に係る濾過タンク40を組立(固定)・分解するようにしている。
【0053】
なお、本体筒部40aは、その上端部及び下端部において、外面がテーパネジを有する硬質塩ビ管72a及び74aを嵌挿(接着)されており、この硬質塩ビ管72a及び74aと上記フランジ72及び下記のフランジ74が捻じ込み固定されている。
また、本体筒部40a下部に螺着されているフランジ74と、本体筒部40a下方に配置されている下部流路形成部材68とについても、サニタリークランプにより同様の組立(固定)・分解ができるように構成されている。
【0054】
上記実施例においては、本体筒部40aを、1本の透明硬質塩ビ製の管によって構成した例を示したが、設置場所の許容高さが低い場合には、本体筒部40aを2つ以上に分割可能に構成することが好ましい。このような場合には、本体筒部40aを複数の部分に分割して、各部分の両端に、上記フランジ72,74のような形で、フランジを取り付け、これらを前述のサニタリークランプにより固定すればよい。
【0055】
また、本体筒部40aの上端部及び下端部に、外面がテーパネジを有する硬質塩ビ管72a及び74aを嵌挿(接着)する場合、本体筒部40aを補強するために、硬質塩ビ管72a及び74aの長さ(高さ)を、フランジ72,74より高くすることも有効である。この場合、硬質塩ビ管72a及び74aのフランジ72,74から外れる部分に、図9に示すような切欠き部58を設けて、内部が見やすいようにすることも好ましい。
【0056】
上述のフィルタ受部66の上方には、前記上部支持ユニット46内に螺着されているスプリング受けを兼ねる上部流路形成部材56が配置されている。この上部流路形成部材56には、図14に示すように、中心部にシャフト44の挿通孔56aを設けるとともに、その周囲にはコイルスプリング42のコイル内側に濾過水を挿通させるための2分割された挿通孔56bが設けられており、またこの挿通孔56bの周囲には、複数個(ここでは、6個)に分割された、コイルスプリング42のコイル外側に濾過水を挿通させるための挿通孔56cが設けられている。
【0057】
また、上述のフィルタ受部66の上方周辺部には、濾過タンク40の内壁に沿って、適宜の数の空気抜き(排気口)66aが配置されている。なお、この排気口66aは、後述するように、逆洗操作時には、給水源に接続されている給水管(シャワー状の給水管)としても機能させることができるように構成されている。
【0058】
上述の排気口66aは、この例では外周方向に6個所設けられており、各排気口66aは、上方で図12に示すように配管構成された配管部品76によりまとめられている。
図12に示すように、本体筒部40aの内壁に沿った部分に位置する6個所の排気口66aから排気された空気は、上記配管部品76によりまとめられて、この例では、3個所から外部に放出される(図13(a)も参照)。
【0059】
また、上記配管部品76は、逆洗時には、6個所の排気口66aをシャワー状の冷却水の給水管として利用することにより、逆洗部30から送り込まれる、セラミックフィルタ20内を逆流する方向に噴出する高圧空気を含む高温のジェット水流から、濾過タンク40の本体筒部40aの内壁を保護するとともに、本体筒部40aの内部の温度が上昇した際に発生する内壁の曇りを防止する機能を有する(図13(b)も参照)。
【0060】
上記濾過タンク40では、下部のエルボ52から下部流路形成部材68を通って流入する未浄化プール水(オーバーフロー水(矢印Aで示している))を、本体筒部40a内のセラミックフィルタ20内部を挿通させることで浄化して、上部の上部流路形成部材56を通して、濾過済みプール水(矢印Bで示している)として、上部のエルボ50から外部に送り出す。
【0061】
なお、図10は、図8(a)に示した濾過タンク40を用いて逆洗工程を行っている状況を示すものである。
逆洗工程を行う際には、流入する高温のジェット水流(矢印Cで示している)をセラミックフィルタ20の内周面側から外周面側へ挿通させて、逆洗処理を行う。
【0062】
この際、シャフト保持部材54の上側の面並びに上部支持ユニット46内のフィルタ受部66の下側の面が段付きに構成されていることは、逆洗処理に用いられる高温のジェット水流によるショートカット水流の発生を防止する上で、効果が大きい。
逆洗処理が終了して濾過タンク40から排出される排出水(矢印Dで示している)は、排出部36から排出される。
【0063】
ここで、図11を用いて、本実施形態に係る濾過タンク40の特徴的構成である、セラミックフィルタ20を、各濾過タンク40内に、上方からコイルスプリング42を介して吊り下げた構成による作用について説明する。
なお、図11(a)はパッキンが変形する前の状態を、(b)はパッキンが変形した後の状態を、それぞれ示す図であり、いずれも図14のE−E線での濾過タンク40の断面図である。
【0064】
濾過タンク40内に、セラミックフィルタ20が、上方からコイルスプリング42を介して吊り下げられた状態で保持された形で組み立てられると、複数個の濾過タンク40が図7に示すように接続され、所定の準備工程を経て、使用に供される。
使用開始当初は、濾過タンク40内におけるセラミックフィルタ20の接続・配置状況は、図11(a)に示すように、パッキン62が十分な弾力性を有している。
【0065】
この状態では、パッキン62が十分な弾力性を有しているため、セラミックフィルタ20同士の間、セラミックフィルタ20とシャフト保持部材54の上面との接触面間、さらにはセラミックフィルタ20と上部支持ユニット46内のフィルタ受部66の下側の面との間等の各接触面において、プール水がこれらの接触面部分を通過するような事態は発生することがない。
【0066】
ところで、長期間にわたってこのような圧縮状態にさらされると、パッキン62を構成する材料の老化等にも影響されて、弾力性が低下したり変形が発生したりして、上述の各接触面におけるパッキン62のシール力が低下することは避けられない。
従来の、スプリングを介在させないセラミックフィルタ20の保持方式を用いた装置では、このような場合、特にシール力の低下した部分に、水圧に負けてショートパスが形成されてしまい、濾過精度が大きく低下するという問題があった。
【0067】
しかしながら、本実施形態に係る濾過タンク40では、上述のように、セラミックフィルタ20を、上方からコイルスプリング42を介して吊り下げた状態で保持しているため、たとえ、パッキン62が老化したり変形したりして、その厚みが減少する事態に至っても、コイルスプリング42の反発力(シャフト44を上方に引き上げる力)が作用して、シャフト保持部材54を上方に引き上げるので、各接触面におけるパッキン62のシール力の低下を小さく抑えることができる。
【0068】
一方、本実施形態に係る濾過タンク40においては、その本体筒部40aを透明塩ビのような透明材料により構成しているので、上述のようなシャフト保持部材54の移動なども観察可能であり、早期にメンテナンスを行う(パッキンを交換する等)ことが可能になる。また、何らかの原因で、セラミックフィルタ20が破損した場合等にも、同様に早期に対応することができる。
【0069】
次に、次亜塩素酸塩投入部24について説明する。
次亜塩素酸塩投入部24は、通常用いられている、プール水消毒用の次亜塩素酸塩投入用の定量供給ポンプと、このポンプを所定のタイミングで駆動するシーケンス制御装置と空構成されたものが、好適に用い得る。ここでは、この装置に緊急用の電磁弁を付加した構成としている。
【0070】
次に、プレコート部26並びにボディフィード部28について説明する。
セラミックフィルタ20を用いる際には、その濾過機能を高めるために、通常、その外周面20aに珪藻土などのセルロース系の濾過助剤をプレコートしてから、使用に供している。
本実施形態に係るプール水浄化処理装置10では、図2に示すように、プレコート部26を、濾材(濾過助剤)投入機26aとプレコートタンク26bとから構成しているが、この構成並びにその使用方法は、通常用いられているものと同様である。
【0071】
すなわち、セラミックフィルタ20を用いる際には、使用開始前に、その外周面20aに適宜の濾過助剤(珪藻土や活性炭等を含む)をプレコートして、このプレコート操作の終了後に初めて、上述の外周面20aに浄化処理前のプール水を流して、上記外周面20aに未浄化プール水を接触させ、浄化処理したプール水を中央の貫通孔20bから回収する。
ここで、使用する濾過助剤としては、珪藻土などの除去が容易な粉末状濾過助剤からなる剥離層の上層に、セルロースなどの繊維状濾過助剤からなる濾過層を形成することが好ましい。
【0072】
また、近年、従来は精密濾過部22とは別に設けていた、活性炭,シリカゲルなどの吸着剤を充填したタンクを用いる吸着浄化装置の機能を、精密濾過部22に付加する方法として、上述のプレコート層に吸着剤を混在させる方法が提案されている。
本実施形態に係る精密濾過部22においても、この方法を採用して、セラミックフィルタ20の外周面20aに形成する濾過助剤からなる濾過層中に、例えば活性炭を混在させることで、吸着浄化機能を付加させることが望ましい。
このような操作は、プレコート部26において各種の濾過助剤の投入順序,混合比率などを目的に応じて調整することで実現することができる。
【0073】
また、近年、濾過助剤からなる濾過層の寿命(交換頻度の低減化)を目的として、ボディフィードと呼ばれる、濾過助剤の少量連続投入が提案されている。この方法も、精密濾過部22の運用方法として有効な方法であり、本実施形態に係る精密濾過部22においても、この方法を採用することが好ましい。
図2に示した構成例では、そのための装置としての、ボディフィード部28の構成を示している。
【0074】
図2に示したように、ボディフィード部28は、濾材投入機28aとボディフィードタンク28bとから構成されており、予め定められた比率で、また予め定められた供給流量で、活性炭と珪藻土をボディフィードタンク28b内に供給し、よく攪拌して、精密濾過部22に送られるプール水中に添加する機能を有する部位である。
なお、このボディフィード部28は、吸着処理時間を長く取るために、バルブへの負荷(詰まりの発生など)を考慮しつつ、できるだけ早くオーバーフロー水(プール水)に接触するように配慮することが好ましい。
【0075】
プール水浄化処理装置10の次亜塩素酸塩添加部24は、プール水中に含まれる大腸菌やブドウ状球菌などの細菌やウィルスを殺菌,滅菌および不活化するために、プール水中の活性塩素濃度が所定濃度範囲内になるように、次亜塩素酸塩などの薬品を添加する部位である。
ここでは、次亜塩素酸塩添加部24を、次亜塩素酸塩添加機から構成しているが、この構成は特に新規なものではない。
【0076】
次に、逆洗部30について説明する。
本実施形態に係る逆洗部30は、基本的には通常用いられている逆洗装置と同様の構成を有するものであるが、後述するように、温水を逆洗用タンク32内に貯留しておく機能を付加されている点が従来とは異なっている。
すなわち、逆洗部30は、セラミックフィルタ20内を逆流する方向に噴出する高圧空気を含むジェット水流を発生させるものであり、洗浄水の流速を加速する循環流路と、排熱等を利用する熱源に接続されている熱交換器38とを備えている。
この温水を逆洗用タンク32内に貯留する操作は、夜間等のプール水浄化処理装置が停止している時間を利用して行うことが好ましいが、これに限られるものではない。
【0077】
上述の循環流路(逆洗用タンク32周囲のポンプPを含む閉管路)には、図示されていないコンプレッサから供給される高圧空気を管路内に導入するためのエゼクタが配置されている。ここで、エゼクタに供給する高圧空気を、1回の逆洗当たり複数回に分割して供給すると、高圧空気の利用効率が向上するとともに、逆洗に用いる水(逆洗水)の使用量を大幅に減少させることができるという効果が得られる。
【0078】
以下、上述のように構成される本発明の一実施例に係るプール水浄化処理装置を利用するプール水浄化処理システムの動作を説明する。
なお、以下の説明では、プール水浄化処理を、
(1)準備工程である、セラミックフィルタのプレコート工程
(2)メインの工程であるプール水濾過工程
(3)適宜行われるセラミックフィルタの逆洗工程
に分けて説明する。
【0079】
(1)セラミックフィルタのプレコート工程:
この工程は、前述の通り、セラミックフィルタを用いる精密濾過部22内に、所定本数のセラミックフィルタを正しくセットした後、精密濾過部22とプレコート部26とを動作させて行われる工程である。
なお、殆んどの動作は、予め設定されたプログラムに従って、自動的に実施することが可能である。
【0080】
プール12からオーバーフローしたプール水は、プール水循環用ポンプ18の作用により、オーバーフロータンク14,プレフィルタ(ヘヤキャッチャー)16を通って、プール水浄化処理装置10に送られる。この際のプール水浄化処理装置10内におけるプール水の経路は、図4に示す状態に設定されている。
プール水浄化処理装置10では、精密濾過部22内のすべてのセラミックフィルタ20が通水されたところで、プール水浄化処理装置10内のプール水の経路を、図4の状態から図3に示す状態に切り換える。
【0081】
これにより、精密濾過部22内のプール水の経路は、精密濾過部22内のセラミックフィルタ20を通り、プレコート部26内のプレコートタンク26bを通って再び精密濾過部22内のセラミックフィルタ20へと循環する経路に設定される。
この状態で、プレコート部26内の濾材(濾過助剤)投入機26aから、所定量(添加量,添加速度)の濾過助剤を、プレコートタンク26bに投入する。
【0082】
プレコートタンク26bでは、攪拌機を用いて、投入された濾過助剤をプール水と十分に混合する。この際、濾過助剤が複数種混合されている場合には、特に入念に攪拌することが必要である。
これらの、濾過助剤投入から攪拌混合までの過程は、いわゆるバッチ処理(逐次処理)で行われてもよく、連続処理的に行われてよい。連続処理による場合には、プレコートタンク26bでのプール水の平均滞留時間を元に、流量を制御するのがよい。
【0083】
所定の攪拌状態に達した時点で、濾過助剤が投入されたプール水は、精密濾過部22に送り出され、精密濾過部22内のセラミックフィルタ20に挿通される。ここで、プール水水中の濾過助剤は、セラミックフィルタ20の表面(ここでは、外周面20a)に付着し、セラミックフィルタ20の表面に濾過助剤が被覆(コート)される。
この動作は、セラミックフィルタ20の表面への濾過助剤の被覆量が所定量になるまで係属される。
【0084】
濾材(濾過助剤)投入機26aからの濾過助剤の投入量のチェックなどによって、セラミックフィルタ20の表面への濾過助剤の被覆量が所定量になったことが確認されたら、プール水浄化処理装置10では、プール水浄化処理装置10内のプール水の経路を、図3の状態から図4に示す状態に切り換える。
これで、セラミックフィルタのプレコート工程は終了する。
【0085】
なお、上述の、プレコート工程の特に初期の期間においては、プール水の循環経路(流路)中に空気が混入している場合が多いので、これを早期に除去するために、前述の、精密濾過部22内のフィルタ受部66の上方周辺部に設けられている空気抜き(排気口)66aから、適宜排気を行うことが好ましい。
【0086】
(2)プール水濾過工程
セラミックフィルタのプレコート工程は終了すると、プール水浄化処理装置の使用が可能になる。
プール水浄化処理装置10内のプール水の経路が図4に示す状態に設定されているので、オーバーフロータンク14から送られるプール水は、浄化処理装置10内では、図4中に実線で示すように送られる。すなわち、オーバーフロータンク14から送られるプール水は、精密濾過部22内の各濾過タンク40内のセラミックフィルタ20の外周面側に設けられている濾過助剤層を介して外周面側から内周面側に透過する。
【0087】
この状態が、標準的な操作状態ともいうべき状態であるが、本実施形態においては、この操作中に、前述の、濾過助剤からなる濾過層の寿命(交換頻度の低減化)を目的とする補助的工程であるボディフィード(濾過助剤の連続的投入)を行う。
このボディフィード工程を行う際には、図5に示すように、精密濾過部22から出た濾過済み水の一部を、ボディフィード部28に分岐させている。
【0088】
ボディフィード部28では、濾材投入機28aから、予め定められた比率(また、予め定められた供給流量)で、活性炭と珪藻土をボディフィードタンク28b内に供給し、ここでよく攪拌して、精密濾過部22に送られるプール水中に添加して、再度精密濾過部22に送り、濾過助剤からなる濾過層を補足(補強)する。これにより、濾過層の交換頻度の低減化が可能になる。なお、このボディフィード工程は、プール水濾過工程中、継続的に行ってもよく、また、任意の期間のみ行ってもよい。
【0089】
また、上述のプール水濾過工程(これと平行して全期間(もしくは所定期間)行われるボディフィード工程を含む)の段階においても、投入される濾過助剤等から発生する気泡を除去するために、前述のような、フィルタ受部66の上方周辺部に設けられている空気抜き(排気口)66aから、適宜排気を行うことが好ましい。
プール水濾過工程を終了した濾過済みプール水は、プール12に戻される。
【0090】
(3)セラミックフィルタの逆洗工程
プール水濾過工程の実施期間(時間)が所定期間(時間)を超えた場合、フィルタの目詰まりによる負荷圧、あるいは、定期的に検査を行っている濾過水の濁度等のチェックの結果から、精密濾過部22における濾過精度が低下していると判断された場合には、プール水濾過工程を一時中断して、セラミックフィルタの逆洗工程を行う。
【0091】
セラミックフィルタ20の逆洗操作時においては、プール水浄化処理装置10内のプール水の経路を図6に示すように、設定する。
すなわち、逆洗部30からプール10への送水経路を閉じて、逆洗部30内の逆洗用タンク32内に貯留しておいた温水を、ポンプで加圧するとともに、図示していない高圧空気供給装置から送られる高圧空気により高圧ジェット水流として、セラミックフィルタ20の内周面側に送り込む。
【0092】
セラミックフィルタ20の内周面側に送り込まれた高圧ジェット水流は、セラミックフィルタ20の内周面から外周面に向かって噴出して、セラミックフィルタ20内に捕獲されていた不純物および外周面にプレコートされていた濾過助剤や濾滓を吹き飛ばして除去する。除去された濾過助剤や濾滓を含む廃液は、排出部36から排出され、廃水処理工程に送られる。
【0093】
なお、プール水中には人体から放出される脂肪分が含まれており、これがセラミックフィルタ20の内部にも浸透し固化している場合があるので、これを除去するためには、上記高圧ジェット水流の温度を、例えば60℃程度に上げておくことが好ましい。
ただし、本実施形態に係る精密濾過部22を構成している濾過タンク40の本体筒部40aは、前述のように塩ビ製であるため、過度の温度上昇は好ましくない。
【0094】
そこで、本実施形態に係る精密濾過部22では、フィルタ受部66の上方周辺部に設けられている空気抜き(排気口)66aを、冷水シャワーの供給口として利用することにより、外部から冷却水を送り込んで、濾過タンク40の本体筒部40aを内周面側から冷却するように構成している。
これにより、濾過タンク40の本体筒部40aの熱による変形や破損等を防止することができる。なお、上述の冷水シャワーは、逆洗後、セラミックフィルタ20の外周面20aを洗浄する際にも用い得る。
【0095】
セラミックフィルタの逆洗工程が終了したら、(1)のセラミックフィルタのプレコート工程からの各工程を繰り返す。
なお、本実施形態に係るプール水浄化処理装置10では用いていないが、プール水浄化処理装置10によって浄化処理されたプール水について、所定の直流電圧を印加して隔膜を用いる電気分解処理を行う電気分解工程を付加してもよい。この電気分解工程は、人体から放出される汗などに含まれていた塩分を含むプール水を電気分解処理し、上述の塩分を次亜塩素酸イオンとして、消毒用に利用するものである。
【0096】
なお、上述のような、塩分を含む水中から、電気分解により塩分を次亜塩素酸イオンとして取り出し、これを消毒用に利用するという技術については、本出願人等の出願に係る特願2001−90019号「プール水浄化処理方法および装置」(特開2002−282860号公報参照)に開示された技術が好適に利用可能である。
【0097】
さらに、セラミックフィルタ20では除去できない、0.2μm〜0.5μm程度の直径を持つ不純物粒子については、限外濾過装置(中空糸膜などの限外濾過膜を用いる濾過装置)を設置することによって、これらを除去することも可能である。限外濾過装置においては、通常、プール水中に必要なイオン、例えばNa などの金属イオン、Cl などの陰イオン等のイオンや分子類は限外濾過膜を透過する。
【0098】
上記実施例に示したプール水浄化処理装置10によれば、第1に、金属製部品の腐食を防止することにより、装置の部品交換の頻度を低下させて、保守・管理を格段に容易にしたプール水浄化処理装置を提供することができる。
また、第2には、部品の腐食の発生を早期に発見しやすくし、さらに、部品の交換を含めた、装置運用における融通性を高めて、しかも低コストで運用可能な、保守・管理を格段に容易にしたプール水浄化処理装置を提供することができる。
【0099】
以上説明した例では、プール水浄化処理装置において、濾過タンク40を原則として縦置きとした例を挙げて説明したが、濾過タンク40の配置方式としては、横置きとすることも可能であるので、それについて補足的に説明する。
図15に示すように、濾過タンク40は、重力の影響を考慮して、水平位置からやや傾斜させた形で設置することが有効である。このような配置方式は、主として、設置場所が、天井の低い地下室あるいはそれに類する場所である場合に好適な配置方式となる。
【0100】
すなわち、濾過タンク40を縦置きとした場合には、セラミックフィルタ20を2〜3本接続する形で用いることから、濾過タンク40の高さが1.5m〜1.8m程度になるのが通常の寸法となるため、これだけの高さが確保できない場合には、十分な濾過性能を得られる構成が採りにくくなる。そこで、濾過タンク40を横置きとすることで、平面的には場所を要することにはなっても、天井の低い設置場所に配置するための構成を説明しておく。
【0101】
濾過タンク40を横置きとする場合に考慮すべき点は、重力の影響である。例えば、セラミックフィルタ20に横向きに力(曲げの力)が掛かることが挙げられる。これに対しては、セラミックフィルタ20の接続部を強化することで対応することが可能である。また、セラミックフィルタ20の円周方向全体に、濾過水を均一に供給するための工夫が必要になる。これについては、例えば、濾過タンク40の本体筒部40aの内面に回転する流れを起こさせるような部材(図示は省略)を取り付ける等の方法が適用可能である。
【0102】
同様に、濾過タンク40の本体筒部40a内に空気が溜まりやすくなるが、これについても、例えば、図示したように、配置状態で上方になるような位置にエアー抜きのパイプ(本体筒部40a内の洗浄用シャワーパイプを兼ねてよい)を配置することで対応することが可能である。このエアー抜き兼洗浄用シャワー供給のためのユニットとしては、先に図14に示したユニットをほぼそのまま用いることが可能である。
【0103】
また、前述のような、プレコート部26内の濾材(濾過助剤)投入機26aから、所定量(添加量,添加速度)の濾過助剤を、プレコートタンク26bに投入し、プレコートタンク26bで攪拌機を用いて、投入された濾過助剤をプール水と十分に攪拌・混合して、処理対象水に添加する方法以外にも、図16に示すように、濾材投入機27から固体状の濾過助剤を、処理対象水に直接添加する方法も利用可能である。
【0104】
このような構成を採用した場合には、濾材投入処理のための設備のコストが低減できるとともに、操作の点でも簡略化が図れるという利点がある。
ここで、濾材投入機27としては、上述の濾材(濾過助剤)投入機26aと同様のものを用いるも可能であるが、これに限定されるものではない。
【0105】
以上、本発明に係る液浄化処理装置について、プール水浄化処理装置を例に挙げて詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されないことはもちろん、その適用分野も、プール水浄化処理装置以外にも及ぶことは明らかであり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、各種の変更および改良を行ってもよいこともいうまでもない。
【0106】
例えば、上記実施例に係る水浄化処理装置において濾過タンクの本体筒部を構成する材料としては、実施例に示したようなそれ自体が透明である材料以外にも、ステンレス鋼板に透明窓(樹脂またはガラス等)を設けた構造としてもよいことはいうまでもない。
また、不透明な樹脂材料に透明窓を設けた構造としてもよい。
【0107】
また、濾過タンク40の本体筒部内の、セラミックフィルタとこのセラミックフィルタと接触するフィルタ支持ユニットとの間等に挿入されているパッキンとしては、実施形態に示した装置ではフッ素ゴム系材料製のものを用いているが、これは、ナイロン系樹脂、または塩ビ等の材料を用いて製造されたものを用いることも可能である。
【0108】
また、本発明にいう液浄化処理装置は、実施形態に示したようなプール水以外にも、前述の温泉等の各種の浴場の水(湯)等の処理にも好適に用い得る。
さらに、本発明は、液浄化処理装置以外にも、例えば、水分(湿気,ミスト)を含む気体を扱う濾過装置、すなわち、気体処理装置にも適用することが可能であることもいうまでもない。これは水分(湿気)を含む気体を扱う装置内においては、ステンレス部品と他の部品との間において水処理装置と同様に、隙間腐食が発生する場合があるからである。このような場合にも、スプリングを用いる漏れ防止構造が有効に作用し、漏れを好適に防止することができる。
【符号の説明】
【0109】
10 プール水浄化処理装置
12 プール
14 オーバーフロータンク
16 プレフィルタ
18 ポンプ
19a 導電率計
19b 精密濁度計
19c 残留塩素計
20 セラミックフィルタ
20a セラミックフィルタの外周面
20b セラミックフィルタの貫通孔
22 精密濾過部
24 次亜塩素酸塩投入部
26 プレコート部
26a 濾材投入機
26b プレコートタンク
26b プレコートタンク
27 濾材投入機
28 ボディフィード部
30 逆洗部
32 逆洗用タンク
34a〜34h バルブ
36 排出部
38 熱交換器
40 濾過タンク
40a 本体筒部
42 コイルスプリング
44 シャフト
46 上部支持ユニット
48 下部支持ユニット
48a,60,66b スリーブ
50,52 エルボ
54 シャフト保持部材
56 上部流路形成部材
56a (シャフト)挿通孔
56b、56c (プール水)挿通孔
57 コイルスプリング保持部材
58 補強部材の切欠き部
62 パッキン
66 フィルタ受部
66a 空気抜き(排気口)
68 下部流路形成部材
70,72,74 フランジ
72a,74a 補強部材
76 配管部品
80a,80b 精密濾過部の配管
A 未浄化プール水(オーバーフロー水)の流れ
B 濾過済みプール水の流れ
C 逆洗用のジェット水流
D 濾過タンクからの排出水の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾過手段を有する液浄化処理装置であって、
前記濾過手段を、少なくとも一部が透明である材料で構成される筒内に多孔質セラミックフィルタを配置したユニットを複数個接続して構成し、
前記材料で構成される筒の内面に、空気抜き機能と前記内面の洗浄機能とを切り換えて使用可能な脱気/給液配管を設けるとともに、
前記材料で構成される、前記多孔質セラミックフィルタを保持するユニットを、スプリングを介して、前記多孔質セラミックフィルタの下流側で保持する構造とした
ことを特徴とする液浄化処理装置。
【請求項2】
前記濾過手段を構成する前記多孔質セラミックフィルタの保持は、段付き形状を有する上下のホルダ間にパッキンを介して前記多孔質セラミックフィルタを保持するとともに、前記ホルダ間には前記多孔質セラミックフィルタを挿通する通しシャフトを有する構成である請求項1に記載の液浄化処理装置。
【請求項3】
前記スプリングがコイルスプリングであり、前記多孔質セラミックフィルタ内に流入した濾過済み液を、前記シャフトに沿って前記コイルスプリングに挿通させるような流路を形成している請求項2に記載の液浄化処理装置。
【請求項4】
前記濾過手段の前段には、処理対象液の供給配管と切り換え可能に、濾過助剤貯留タンクからの濾過助剤供給配管が接続されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の液浄化処理装置。
【請求項5】
前記濾過助剤貯留タンクは、少なくとも珪藻土の供給部を備え、さらに、セルロース,粉末活性炭の供給部を備えている請求項4に記載の液浄化処理装置。
【請求項6】
前記濾過手段の後段には、この濾過手段を逆洗する際に用いる温液供給手段が備えられている請求項1〜5のいずれか1項に記載の液浄化処理装置。
【請求項7】
前記濾過手段の後段には、前記温液供給手段からの温液供給配管と切り換え可能に、濾過助剤貯留タンクへの濾過液の供給配管が備えられている請求項6に記載の液浄化処理装置。
【請求項8】
前記多孔質セラミックフィルタとして、浄化処理前の処理対象液と接触する外周面および浄化処理前の処理対象液が流れる中心貫通孔を限定する内周面とを有する筒状体からなり、この筒状体の外周面と内周面との間の肉厚部にその軸線方向に浄化処理後の処理対象液が流れる複数の貫通孔を有する円筒状の多孔質セラミックフィルタを用いる請求項1〜7のいずれか1項に記載の液浄化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−104548(P2011−104548A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264108(P2009−264108)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(596030494)有限会社アトラス (3)
【Fターム(参考)】