説明

液浸露光用レジスト組成物およびレジストパターン形成方法

【課題】 形状の良好なレジストパターンを形成できる液浸露光用レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】 酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)を含む液浸露光用レジスト組成物であって、前記樹脂成分(A)が、放射線の照射により酸を発生する酸発生基を有する構成単位(a0)を有する高分子化合物(A1)を含有することを特徴とする液浸露光用レジスト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液浸露光(イマージョン(immersion)リソグラフィー)工程を含むレジストパターン形成方法に用いられる液浸露光用レジスト組成物およびレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶デバイス等の各種電子デバイスにおける微細構造の製造には、リソグラフィー法が多用されているが、デバイス構造の微細化に伴って、リソグラフィー工程におけるレジストパターンの微細化が要求されている。現在では、リソグラフィー法により、例えばArFエキシマレーザーを用いた最先端の領域では、線幅が90nm程度の微細なレジストパターンを形成することが可能となっているが、今後はさらに微細なパターン形成が要求される。
【0003】
このような90nmより微細なパターン形成を達成させるためには、露光装置とそれに対応するレジストの開発が第1となる。
レジストとしては、高解像性が達成される上に、放射線の照射により発生した酸の触媒反応、連鎖反応が利用でき、量子収率が1以上で、しかも高感度が達成できる化学増幅型レジストが注目され、盛んに開発が行われている。
ポジ型の化学増幅型レジストにおいては、主に酸解離性溶解抑制基を有する樹脂が用いられている。該酸解離性溶解抑制基としては、たとえば、エトキシエチル基等のアセタール基、tert−ブチル基等の3級アルキル基、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基などが知られている。また、従来ArFレジスト組成物の樹脂成分中の酸解離性溶解抑制基を有する構成単位としては、下記特許文献1に示されるように、(メタ)アクリル酸の3級エステル化合物、例えば2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート等から誘導される構成単位が一般的に用いられている。
一方、露光装置においては、使用する光源波長の短波長化や、レンズの開口数(NA)の大口径化(高NA化)等が一般的である。たとえば、一般に、レジスト解像性約0.5μmでは水銀ランプの主要スペクトルが436nmのg線が、約0.5〜0.30μmでは同じく水銀ランプの主要スペクトルが365nmのi線が用いられており、約0.30〜0.15μmでは248nmのKrFエキシマレーザー光が用いられ、約0.15μm以下では193nmのArFエキシマレーザー光が用いられている。また、さらなる微細化のために、Fエキシマレーザー(157nm)やArエキシマレーザー(126nm)、EUV(極端紫外線;13nm)、EB(電子線)、X線等の使用が検討されている。
しかし、光源波長の短波長化は高額な新たな露光装置が必要となる。また、高NA化では、解像度と焦点深度幅がトレードオフの関係にあるため、解像度を上げても焦点深度幅が低下するという問題がある。
【0004】
そのような中、液浸露光(イマージョンリソグラフィー)という方法が報告されている(たとえば、非特許文献1〜3参照)。この方法は、露光時に、従来は空気や窒素等の不活性ガスで満たされているレンズとウェーハ上のレジスト層との間の部分を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒(液浸媒体)で満たした状態で露光(液浸露光)を行う方法である。
このような液浸露光によれば、同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の光源を用いた場合や高NAレンズを用いた場合と同様の高解像性を達成でき、しかも焦点深度幅の低下もないといわれている。また、液浸露光は、既存の露光装置を用いて行うことができる。そのため、液浸露光は、低コストで、高解像性で、かつ焦点深度幅にも優れるレジストパターンの形成を実現できると予想され、多額な設備投資を必要とする半導体素子の製造において、コスト的にも、解像度等のリソグラフィー特性的にも、半導体産業に多大な効果を与えるものとして大変注目されている。
現在、液浸媒体としては、主に水が検討されている。
【特許文献1】特開平10−161313号公報
【非特許文献1】ジャーナルオブバキュームサイエンステクノロジー(Journal of Vacuum Science & Technology B)(米国)、1999年、第17巻、6号、3306−3309頁.
【非特許文献2】ジャーナルオブバキュームサイエンステクノロジー(Journal of Vacuum Science & Technology B)(米国)、2001年、第19巻、6号、2353−2356頁.
【非特許文献3】プロシーディングスオブエスピーアイイ(Proceedings of SPIE)(米国)2002年、第4691巻、459−465頁.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、液浸露光にはまだまだ未知な点が多く、微細なパターンを実際に使用できるレベルで形成することは、実際には困難である。たとえば、従来のある種のKrF用レジストやArF用レジスト組成物を液浸露光に適用したところ、パターンが形成されなかったり、形成されたとしてもラインパターンのうねりやレジストパターン側壁表面の荒れ(ラフネス)、すなわちラインエッジラフネス(LER)が生じるなど、レジストパターン形状が不十分であった。レジストパターンの微細化がますます進み、高解像性の要望がさらに高まるなか、かかる形状の問題の改善がさらに重要になっている。
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、形状の良好なレジストパターンを形成できる液浸露光用レジスト組成物およびレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、放射線の照射(露光)により酸を発生する酸発生基を有する高分子化合物を用いることにより上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の第一の態様は、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)を含む液浸露光用レジスト組成物であって、前記樹脂成分(A)が、放射線の照射により酸を発生する酸発生基を有する構成単位(a0)を有する高分子化合物(A1)を含有することを特徴とする液浸露光用レジスト組成物である。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様の液浸露光用レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を液浸露光する工程、前記レジスト膜を現像しレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法である。
【0007】
なお、以下の説明において、用語の意義は以下の通りである。
「構成単位」とは、重合体(高分子化合物)を構成するモノマー単位を示す。
「アクリル酸から誘導される構成単位」とは、アクリル酸のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。「アクリル酸」は、α位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸のほか、α位の水素原子がハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたものも含む概念とする。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。「アクリル酸エステル」は、α位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸エステルのほか、α位の水素原子がハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたものも含む概念とする。
なお、「アクリル酸から誘導される構成単位」、「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」において、「α位(α位の炭素原子)」という場合は、特に断りがない限り、カルボキシ基が結合している炭素原子のことである。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状のアルキル基を包含するものとする。
「露光」は放射線の照射全般を含む概念とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、形状の良好なレジストパターンを形成できる液浸露光用レジスト組成物およびレジストパターン形成方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
≪液浸露光用レジスト組成物≫
本発明の液浸露光用レジスト組成物は、酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)(以下、(A)成分という)を含む液浸露光用レジスト組成物であって、前記樹脂成分(A)が、放射線の照射により酸を発生する酸発生基を有する構成単位(a0)を有する高分子化合物(A1)を含有することを特徴とする。
本発明の液浸露光用レジスト組成物は、(A)成分がアルカリ不溶性樹脂でありかつ酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する、いわゆるポジ型であってもよく、また、(A)成分がアルカリ可溶性樹脂であり、酸の作用によりアルカリ不溶性となる、いわゆるネガ型であってもよい。本発明のレジスト組成物は、好ましくはポジ型である。
ネガ型の場合、レジスト組成物には、(A)成分と共に架橋剤が配合される。そして、レジストパターン形成時に、露光(放射線の照射)により高分子化合物(A1)の構成単位(a0)から酸が発生すると、かかる酸が作用し、(A)成分と架橋剤との間で架橋が起こり、アルカリ不溶性となる。前記架橋剤としては、例えば、通常は、メチロール基またはアルコキシメチル基を有するメラミン、尿素またはグリコールウリルなどのアミノ系架橋剤が用いられる。
ポジ型の場合は、(A)成分はいわゆる酸解離性溶解抑制基を有するアルカリ不溶性のものであり、露光により高分子化合物(A1)の構成単位(a0)から酸が発生すると、かかる酸が前記酸解離性溶解抑制基を解離させることにより、(A)成分がアルカリ可溶性となる。
【0010】
高分子化合物(A1)は、放射線の照射により酸を発生する酸発生基を有する構成単位(a0)を有するものである。
・構成単位(a0)
酸発生基としては、放射線の照射により酸を発生する基であれば特に限定されず、たとえば後述する酸発生剤成分(B)において例示されるような、従来の化学増幅型レジスト組成物において使用されている公知の酸発生剤から誘導される基が挙げられる。ここで、「酸発生剤から誘導される基」は、酸発生剤の構造から水素原子を1つ除いた基を意味する。
たとえばオニウム塩系酸発生剤を例に挙げると、オニウム塩系酸発生剤は、後述する式(b−1)、(b−2)等に示すように、アリール基、アルキル基等の有機基を有するヨードニウムイオン、スルホニウムイオン等のカチオン部と、スルホン酸イオン等のアニオン部とから構成されるものが広く用いられている。オニウム塩系酸発生剤から誘導される酸発生基としては、かかるオニウム塩系酸発生剤のカチオン部の有機基の水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
また、たとえばオキシムスルホネート系酸発生剤を例に挙げると、後述する一般式(B−1)の構造を有するオキシムスルホネート系酸発生剤の有機基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
【0011】
本発明においては、本発明の効果に優れることから、酸発生基がスルホン酸イオンを有する基であることが好ましい。
スルホン酸イオンを有する酸発生基としては、上述したオニウム塩系酸発生剤から誘導される酸発生基においてアニオン部がスルホン酸イオンであるものが挙げられる。かかる酸発生基においては、放射線の照射によりアニオン部(スルホン酸イオン)が解離し、該スルホン酸イオンが酸として作用する。
【0012】
構成単位(a0)は、上記酸発生基を有するものであればその構造は特に限定されない。特に、193nm以下の波長の光に対する透明性が高く、解像性に優れることから、アクリル酸エステルから誘導される構成単位であることが好ましい。なかでも、アクリル酸エステルから誘導される構成単位のエステル基[−C(O)O−]に酸発生基が結合した構造(カルボキシ基の水素原子が酸発生基で置換されている構造)が好ましい。
【0013】
好ましい構成単位(a0)の具体例としては、下記一般式(a0−1)で表される構成単位が挙げられる。
【0014】
【化1】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;Aは2価の有機基であり;Bは1価の有機基であり;Xは硫黄原子またはヨウ素原子であり;nは1または2であり;Yは少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基である。]
【0015】
式(a0−1)中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基である。
Rのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rの低級アルキル基は、好ましくは炭素数1〜5の直鎖または分岐状アルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
Rのハロゲン化低級アルキル基は、上記低級アルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換された基である。ハロゲン化低級アルキル基において、水素原子と置換されているハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、これらの中でも、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0016】
Aの2価の有機基としては、たとえば、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基、炭素数4〜20の芳香族環から2つの水素原子を除いた基等が挙げられ、これらは、その炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子で置換されていてもよい。より好ましくは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキレン基(たとえばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、シクロへキシレン基等)、炭素数6〜15の芳香環から2つの水素原子を除いた基(たとえばフェニレン基、ナフチレン基等)である。
これらのアルキレン基または芳香環は置換基を有していてもよい。該置換基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、水酸基等が挙げられ、解像性に優れる点から、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デカニル基等が挙げられる。解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
【0017】
Bの1価の有機基としては、たとえば、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基、炭素数4〜20の芳香環から1つの水素原子を除いた基等が挙げられ、これらは、その炭素原子が酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されていてもよい。より好ましくは、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基(たとえばメチル基、エチル基、プロピレン基、シクロへキシレン基等)、炭素数6〜15の芳香環から1つの水素原子を除いた基(たとえばフェニル基、ナフチル基等)である。
これらのアルキル基または芳香環は置換基を有していてもよい。該置換基としては、特に制限はなく、例えば上記Aにおいて置換基として挙げたのと同様の、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基等が挙げられる。
【0018】
Xは硫黄原子またはヨウ素原子であり、より好ましくは硫黄原子である。
nは1または2であり、Xが硫黄原子である場合はn=2であり、Xがヨウ素原子である場合はn=1である。
Yの直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、炭素数が1〜10であることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくは炭素数1〜4である。該アルキル基は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されていてもよく、特に、全ての水素原子がフッ素原子で置換されていることが好ましい。Yとしては、特に、全ての水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0019】
構成単位(a0)としては、特に、下記一般式(a0−2)で表される構成単位が本発明の効果に優れることから好ましい。
【0020】
【化2】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、もしくは水酸基であり;o,p,qはそれぞれ独立して0または1〜3の整数であり;mは1〜10の整数である。アニオン部の水素原子はフッ素置換されていても良い。]
【0021】
式(a0−2)中、Rは上記式(a0−1)のRと同様である。
〜Rの炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基としては、上記Aの説明において、アルキル基または芳香環が有していてもよい置換基として例示したアルキル基と同様のものが挙げられる。
o,p,qはそれぞれ独立して0または1〜3の整数であり、中でも、oが2でありp,qが0であることがより好ましい。
mは1〜10の整数であり、1〜8の整数であることが好ましく、1〜4の整数がより好ましく、1または4であることが工業上合成が容易であることから最も好ましい。
また、アニオン部(C2m+1SO)において、C2m+1で表されるアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、好ましくは直鎖状のアルキル基、たとえばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基等が挙げられる。また、該アルキル基の水素原子は50%以上、好ましくは80%以上、最も好ましくは100%フッ素置換されていても良い。
【0022】
前記構成単位(a0)として、具体的には、たとえば下記一般式(a0−3)、(a0−4)で表される構成単位が例示でき、特に一般式(a0−3)で表される構成単位が好ましい。
【0023】
【化3】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;mは1〜10の整数である。]
【0024】
構成単位(a0)を誘導するモノマーは、たとえばアクリル酸クロライドと、該アクリル酸クロライドと反応可能な酸発生剤(たとえばカチオン部に水酸基を有するオニウム塩)とのエステル化反応等より容易に合成することができる。
【0025】
構成単位(a0)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子化合物(A1)中、構成単位(a0)の割合は、当該高分子化合物(A1)を構成する全構成単位に対し、本発明の効果のためには、0.01モル%以上であることが好ましく、0.1モル%以上がより好ましく、1モル%以上がさらに好ましい。また、上限値としては、他の構成単位とのバランスを考慮すると、70モル%以下であることが好ましく、50モル%以下がより好ましく、30モル%以下がさらに好ましく、15モル%以下であることが最も好ましい。
【0026】
・構成単位(a1)
高分子化合物(A1)は、本発明の液浸用レジスト組成物がポジ型である場合、酸解離性溶解抑制基を有するアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有することが好ましい。
構成単位(a1)において、アクリル酸エステルのα−位の置換基としては、上記構成単位(a0)のα−位の置換基と同様のものが挙げられる。
【0027】
構成単位(a1)における酸解離性溶解抑制基は、解離前は高分子化合物(A1)全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有するとともに、解離後はこの高分子化合物(A1)全体をアルカリ可溶性へ変化させるものであれば、これまで、化学増幅型レジスト用のベース樹脂の酸解離性溶解抑制基として提案されているものを使用することができる。一般的には、(メタ)アクリル酸のカルボキシ基と、環状または鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基、または環状または鎖状のアルコキシアルキルエステルを形成する基などが広く知られている。なお、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、アクリル酸エステルと、メタクリル酸エステルの一方あるいは両方を意味する。
【0028】
ここで、第3級アルキルエステルとは、カルボキシ基の水素原子が、アルキル基またはシクロアルキル基で置換されることによりエステルを形成しており、そのカルボニルオキシ基(−C(O)−O−)の末端の酸素原子に、前記アルキル基またはシクロアルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断される。
なお、前記アルキル基またはシクロアルキル基は置換基を有していてもよい。
以下、カルボキシ基と第3級アルキルエステルを構成することにより、酸解離性となっている基を、便宜上、「第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基」という。
また、環状または鎖状のアルコキシアルキルエステルとは、カルボキシ基の水素原子がアルコキシアルキル基で置換されることによりエステルを形成しており、そのカルボニルオキシ基(−C(O)−O―)の末端の酸素原子に前記アルコキシアルキル基が結合している構造を示す。このアルコキシアルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子とアルコキシアルキル基との間で結合が切断される。
【0029】
構成単位(a1)としては、下記一般式(a1−0−1)で表される構成単位と、下記一般式(a1−0−2)で表される構成単位からなる群から選ばれる1種以上を用いる事が好ましい。
【0030】
【化4】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;Xは酸解離性溶解抑制基を示す。)
【0031】
【化5】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し;Xは酸解離性溶解抑制基を示し;Yは脂肪族環式基を示す。)
【0032】
一般式(a1−0−1)において、Rについては上記式(a0−1)におけるRと同様である。
は、酸解離性溶解抑制基であれば特に限定することはなく、例えばアルコキシアルキル基、第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基などを挙げることができ、第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基が好ましい。第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基としては、脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基、脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基が挙げられる。
ここで、本特許請求の範囲および明細書における「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。「脂肪族環式基」は、芳香性を持たない単環式基または多環式基であることを示す。
構成単位(a1)における「脂肪族環式基」は、置換基を有していてもよいし、有していなくてもよい。置換基としては、炭素数1〜5の低級アルキル基、フッ素原子、フッ素原子で置換された炭素数1〜5のフッ素化低級アルキル基、酸素原子(=O)、等が挙げられる。
「脂肪族環式基」の置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(炭化水素基)であることに限定はされないが、炭化水素基であることが好ましい。また、「炭化水素基」は飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。好ましくは多環式基である。
このような脂肪族環式基の具体例としては、例えば、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。
そして、脂肪族分岐鎖状酸解離性溶解抑制基としては、具体的にはtert−ブチル基、tert−アミル基等が挙げられる。
また、脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基としては、例えばシクロアルキル基の環骨格上に第3級炭素原子を有する基を挙げることができ、具体的には2−メチル−アダマンチル基や、2−エチルアダマンチル基等が挙げられる。あるいは、下記一般式で示す構成単位の様に、アダマンチル基の様な脂肪族環式基と、これに結合する、第3級炭素原子を有する分岐鎖状アルキレン基とを有する基が挙げられる。
【0033】
【化6】

[式中、Rは上記と同じであり、R15、R16はアルキル基(直鎖、分岐鎖状のいずれでもよく、好ましくは炭素数1〜5である)を示す。]
【0034】
また、前記アルコキシアルキル基としては、下記一般式で示される基が好ましい。
【0035】
【化7】

(式中、R21、R22はそれぞれ独立してアルキル基または水素原子であり、R23はアルキル基またはシクロアルキル基である。または、R21とR23の末端が結合して環を形成していてもよい。)
【0036】
21、R22において、アルキル基の炭素数は好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。特にR21、R22の一方が水素原子で、他方がメチル基であることが好ましい。
23はアルキル基またはシクロアルキル基であり、炭素数は好ましくは1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状または環状のいずれでもよい。R23が直鎖状、分岐鎖状の場合は炭素数1〜5であることが好ましく、エチル基、メチル基がさらに好ましく、特にエチル基が最も好ましい。
23が環状の場合は炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的にはフッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。中でもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
また、上記式においては、R21およびR23がそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基であってR23の末端とR21の末端とが結合していてもよい。
この場合、R21とR23と、R23が結合した酸素原子と、該酸素原子およびR21が結合した炭素原子とにより環式基が形成されている。該環式基としては、4〜7員環が好ましく、4〜6員環がより好ましい。該環式基の具体例としては、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基等が挙げられる。
【0037】
一般式(a1−0−2)において、Rについては上記と同様である。Xについては、式(a1−0−1)中のXと同様である。
は2価の脂肪族環式基である。Yは2価の脂肪族環式基であるから、水素原子が2個以上除かれた基が用いられる以外は、前記式(a1−0−1)の説明においての「脂肪族環式基」の説明と同様のものを用いることができる。
【0038】
構成単位(a1)として、より具体的には、下記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位が挙げられる。
【0039】
【化8】

[上記式中、X’は第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基を表し、Yは炭素数1〜5の低級アルキル基、または脂肪族環式基を表し;nは0または1〜3の整数を表し;mは0または1を表し;Rは前記と同じであり、R’、R’はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜5の低級アルキル基を表す。]
【0040】
前記R’、R’は好ましくは少なくとも1つが水素原子であり、より好ましくは共に水素原子である。nは好ましくは0または1である。
【0041】
X’は前記Xにおいて例示した第3級アルキルエステル型酸解離性溶解抑制基と同様のものである。
Yの脂肪族環式基については、前記式(a1−0−1)の説明においての「脂肪族環式基」の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0042】
以下に、上記一般式(a1−1)〜(a1−4)で表される構成単位の具体例を示す。
【0043】
【化9】

【0044】
【化10】

【0045】
【化11】

【0046】
【化12】

【0047】
【化13】

【0048】
【化14】

【0049】
【化15】

【0050】
【化16】

【0051】
【化17】

【0052】
【化18】

【0053】
構成単位(a1)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。その中でも、一般式(a1−1)で表される構成単位が好ましく、具体的には(a1−1−1)〜(a1−1−6)または(a1−1−35)〜(a1−1−41)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
さらに、構成単位(a1)としては、特に式(a1−1−1)〜式(a1−1−4)の構成単位を包括する下記一般式(a1−1−01)で表されるものや、式(a1−1−36)、(a1−1−38)、(a1−1−39)及び(a1−1−41)の構成単位を包括する下記一般式(a1−1−02)も好ましい。
【0054】
【化19】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し、R11は低級アルキル基を示す。)
【0055】
【化20】

(式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基を示し、R12は低級アルキル基を示す。hは1〜3の整数を表す)
【0056】
一般式(a1−1−01)において、Rについては上記と同様である。R11の低級アルキル基はRにおける低級アルキル基と同様であり、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0057】
一般式(a1−1−02)において、Rについては上記と同様である。R12の低級アルキル基はRにおける低級アルキル基と同様であり、メチル基又はエチル基が好ましく、エチル基が最も好ましい。hは1又は2が好ましく、2が最も好ましい。
【0058】
高分子化合物(A1)中、構成単位(a1)の割合は、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位に対し、10〜80モル%が好ましく、20〜70モル%がより好ましく、25〜50モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることによって、レジスト組成物とした際にパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0059】
・構成単位(a2)
高分子化合物(A1)は、前記構成単位(a0)に加えて、または前記構成単位(a0)および(a1)に加えて、さらに、ラクトン含有単環または多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有することが好ましい。
構成単位(a2)において、アクリル酸エステルのα−位の置換基としては、上記構成単位(a0)のα−位の置換基と同様のものが挙げられる。
構成単位(a2)のラクトン含有単環または多環式基は、高分子化合物(A1)をレジスト膜の形成に用いた場合に、レジスト膜の基板への密着性を高めたり、現像液との親水性を高めたりするうえで有効なものである。
ここで、ラクトン含有単環または多環式基とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環(ラクトン環)を含有する環式基を示す。ラクトン環をひとつの目の環として数え、ラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
【0060】
構成単位(a2)としては、このようなラクトンの構造(−O−C(O)−)と環基とを共に持てば、特に限定されることなく任意のものが使用可能である。
具体的には、ラクトン含有単環式基としては、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基が挙げられる。また、ラクトン含有多環式基としては、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基が挙げられる。特に、以下のような構造式を有するラクトン含有トリシクロアルカンから水素原子を1つを除いた基が、工業上入手し易いなどの点で有利である。
【0061】
【化21】

【0062】
構成単位(a2)の例として、より具体的には、下記一般式(a2−1)〜(a2−5)で表される構成単位が挙げられる。
【0063】
【化22】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり、R’は水素原子、低級アルキル基、または炭素数1〜5のアルコキシ基であり、mは0または1の整数である。]
【0064】
一般式(a2−1)〜(a2−5)におけるRは上記と同じである。
一般式(a2−1)〜(a2−5)中、R’の低級アルキル基としては、Rの低級アルキル基と同じである。R’は、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。
【0065】
前記一般式(a2−1)〜(a2−5)の具体的な構成単位を例示する。
【0066】
【化23】

【0067】
【化24】

【0068】
【化25】

【0069】
【化26】

【0070】
【化27】

【0071】
一般式(a2−1)〜(a2−5)中、R’は、工業上入手が容易であること等を考慮すると、水素原子が好ましい。
これらの中でも、一般式(a2−1)〜(a2−5)から選択される少なくとも1種以上を用いることが好ましく、一般式(a2−1)〜(a2−3)から選択される少なくとも1種以上を用いることが好ましい。具体的には、化学式(a2−1−1)、(a2−1−2)、(a2−2−1)、(a2−2−2)、(a2−3−1)、(a2−3−2)、(a2−3−9)及び(a2−3−10)から選択される少なくとも1種以上を用いることが好ましい。
【0072】
高分子化合物(A1)において、構成単位(a2)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子化合物(A1)中の構成単位(a2)の割合は、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計に対して、5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましく、20〜50モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることにより構成単位(a2)を含有させることによる効果が充分に得られ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
【0073】
・構成単位(a3)
高分子化合物(A1)は、前記構成単位(a0)に加えて、または前記構成単位(a0)および(a1)に加えて、または前記構成単位(a0)、(a1)および(a2)に加えて、さらに極性基含有脂肪族炭化水素基を含有するアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有していてもよい。構成単位(a3)を有することにより、(A)成分の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。
【0074】
構成単位(a2)において、アクリル酸エステルのα−位の置換基としては、上記構成単位(a0)のα−位の置換基と同様のものが挙げられる。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
脂肪族炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の炭化水素基(好ましくはアルキレン基)や、多環式の脂肪族炭化水素基(多環式基)が挙げられる。該多環式基としては、例えばArFエキシマレーザー用レジスト組成物用の樹脂において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。
その中でも、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、またはアルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基を含有する脂肪族多環式基を含み、かつアクリル酸エステルから誘導される構成単位がより好ましい。該多環式基としては、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。この様な多環式基は、ArFエキシマレーザー用レジスト組成物用のポリマー(樹脂成分)において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。これらの多環式基の中でも、アダマンタンから2個以上の水素原子を除いた基、ノルボルナンから2個以上の水素原子を除いた基、テトラシクロドデカンから2個以上の水素原子を除いた基が工業上好ましい。
【0075】
構成単位(a3)としては、極性基含有脂肪族炭化水素基における炭化水素基が炭素数1〜10の直鎖状または分岐状の炭化水素基のときは、アクリル酸のヒドロキシエチルエステルから誘導される構成単位が好ましく、該炭化水素基が多環式基のときは、下記式(a3−1)で表される構成単位、(a3−2)で表される構成単位、(a3−3)で表される構成単位が好ましいものとして挙げられる。
【0076】
【化28】

(式中、Rは前記に同じであり、jは1〜3の整数であり、kは1〜3の整数であり、t’は1〜3の整数であり、lは1〜5の整数であり、sは1〜3の整数である。)
【0077】
式(a3−1)中、jは1又は2であることが好ましく、1であることがさらに好ましい。jが2の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位と5位に結合しているものが好ましい。jが1の場合は、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
jは1であることが好ましく、特に水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
【0078】
式(a3−2)中、kは1であることが好ましい。シアノ基はノルボルニル基の5位または6位に結合していることが好ましい。
【0079】
式(a3−3)中、t’は1であることが好ましい。lは1であることが好ましい。sは1であることが好ましい。これらはアクリル酸のカルボキシ基の末端に2−ノルボルニル基または3−ノルボルニル基が結合していることが好ましい。フッ素化アルキルアルコールはノルボルニル基の5又は6位に結合していることが好ましい。
【0080】
構成単位(a3)としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
高分子化合物(A1)が構成単位(a3)を有する場合、高分子化合物(A1)中、構成単位(a3)の割合は、当該高分子化合物(A1)を構成する全構成単位に対し、5〜50モル%であることが好ましく、さらに好ましくは15〜45モル%、最も好ましくは15〜35モル%である。
【0081】
本発明において、高分子化合物(A1)は、これらの構成単位(a0)〜(a3)を全て有する共重合体であることが、本発明の効果に優れることから好ましく、特に構成単位(a0)〜(a3)からなる共重合体であることが好ましい。
【0082】
・構成単位(a4)
高分子化合物(A1)は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記構成単位(a0)〜(a3)以外の他の構成単位(a4)を含んでいてもよい。
構成単位(a4)は、上述の構成単位(a0)〜(a3)に分類されない他の構成単位であれば特に限定するものではなく、ArFエキシマレーザー用、KrFポジエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト用樹脂に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
構成単位(a4)としては、例えば酸非解離性の脂肪族多環式基を含み、かつアクリル酸エステルから誘導される構成単位などが好ましい。
構成単位(a4)において、アクリル酸エステルのα−位の置換基としては、上記構成単位(a0)のα−位の置換基と同様のものが挙げられる。
構成単位(a4)における多環式基は、例えば、前記の構成単位(a1)の場合に例示したものと同様のものを例示することができ、ArFエキシマレーザー用、KrFエキシマレーザー用(好ましくはArFエキシマレーザー用)等のレジスト組成物の樹脂成分に用いられるものとして従来から知られている多数のものが使用可能である。
特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、イソボルニル基、ノルボルニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易いなどの点で好ましい。これらの多環式基は、炭素数1〜5の直鎖又は分岐状のアルキル基で置換されていてもよい。
構成単位(a4)として、具体的には、下記一般式(a4−1)〜(a4−5)の構造のものを例示することができる。
【0083】
【化29】

(式中、Rは前記と同じである。)
【0084】
かかる構成単位(a4)は、高分子化合物(A1)の必須成分ではないが、これを高分子化合物(A1)に含有させる際には、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位の合計に対して、構成単位(a4)を1〜30モル%、好ましくは10〜20モル%含有させると好ましい。
【0085】
高分子化合物(A1)は、各構成単位を誘導するモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。
また、高分子化合物(A1)には、上記重合の際に、たとえばHS−CH−CH−CH−C(CF−OHのような連鎖移動剤を併用して用いることにより、末端に−C(CF−OH基を導入してもよい。このように、アルキル基の水素原子の一部がフッ素原子で置換されたヒドロキシアルキル基が導入された共重合体は、現像欠陥の低減やLER(ラインエッジラフネス:ライン側壁の不均一な凹凸)の低減に有効である。
【0086】
高分子化合物(A1)の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミネーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定するものではないが、2000〜30000が好ましく、5000〜20000がより好ましく、7000〜15000が本発明の効果の点から最も好ましい。
また分散度(Mw/Mn)は1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.0〜2.0が最も好ましい。
【0087】
(A)成分中、高分子化合物(A1)の割合は、本発明の効果のためには、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80〜100質量%であり、最も好ましくは100質量%である。
【0088】
高分子化合物(A1)においては、放射線の照射により構成単位(a0)から酸(たとえばスルホン酸イオン)が発生する。そのため、高分子化合物(A1)は、従来の化学増幅型レジストにおけるベース樹脂成分(露光によりアルカリ溶解性が変化する樹脂成分)としての機能と、酸発生剤としての機能とを兼ね備えており、それ自体でレジスト組成物を構成することができる。
【0089】
本発明の液浸露光用レジスト組成物において、(A)成分は、高分子化合物(A1)以外に、さらに、前記構成単位(a0)を有さない高分子化合物(A2)を含有してもよい。
高分子化合物(A2)としては、構成単位(a0)を有していないものであれば特に限定されないが、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂が好ましい。酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂としては、従来、化学増幅型ポジ型レジスト用の樹脂成分として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
【0090】
高分子化合物(A2)として、より具体的には、前記構成単位(a1)、(a2)および/または(a3)を有する高分子化合物(以下、高分子化合物(A2−1)という)が挙げられる。
高分子化合物(A2−1)中、構成単位(a1)の割合は、高分子化合物(A2−1)の全構成単位の合計に対して、5〜80モル%が好ましく、10〜70モル%がより好ましい。また、構成単位(a3)の割合は、高分子化合物(A2−1)の全構成単位の合計に対して、5〜50モル%が好ましく、10〜40モル%がより好ましい。また、構成単位(a4)の割合は、高分子化合物(A2−1)の全構成単位の合計に対して、5〜80モル%が好ましく、10〜60モル%がより好ましい。
高分子化合物(A2−1)は、さらに前記構成単位(a5)を有していてもよい。
高分子化合物(A2−1)の質量平均分子量は5000〜30000が好ましく、6000〜20000がより好ましい。また分散度(Mw/Mn)は1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましい。
(A)成分中の高分子化合物(A2)の割合は、特に限定されないが、高分子化合物(A2)を配合することによる効果を得るためには、高分子化合物(A1):高分子化合物(A2)=9:1〜1:9の比率(質量比)で混合して用いることが好ましく、8:2〜2:8が更に好ましく、5:5〜2〜8であることが最も好ましい。
【0091】
液浸露光用レジスト組成物中の(A)成分の割合は、目的とするレジスト膜厚によって適宜調製することができる。
【0092】
本発明の液浸露光用レジスト組成物は、上記(A)成分、および後述する各種任意の成分を有機溶剤に溶解させて製造することができる。
有機溶剤としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、化学増幅型レジストの溶剤として公知のものの中から任意のものを1種または2種以上適宜選択して用いることができる。
例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類や、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコール、またはジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテルまたはモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類およびその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。
これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
また、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と極性溶剤とを混合した混合溶媒は好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とすることが好ましい。
より具体的には、極性溶剤としてELを配合する場合は、PGMEA:ELの質量比が好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2であると好ましい。
また、有機溶剤として、その他には、PGMEAおよびELの中から選ばれる少なくとも1種とγ−ブチロラクトンとの混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者の質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
有機溶剤の使用量は特に限定しないが、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的にはレジスト組成物の固形分濃度2〜20質量%、好ましくは5〜15質量%の範囲内となる様に用いられる。
【0093】
本発明の液浸露光用レジスト組成物には、必須成分ではないが、本発明の効果を損なわない範囲で、露光により酸を発生する酸発生剤成分(B)(ただし高分子化合物(A1)を除く。)を配合させることができる。
かかる酸発生剤成分(B)(以下、(B)成分ということがある)としては、これまで化学増幅型レジスト用の酸発生剤として提案されているものを使用することができる。このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
【0094】
オニウム塩系酸発生剤としては、下記一般式(b−1)または(b−2)で表される化合物が挙げられる。
【0095】
【化30】

[式中、R”〜R”,R”〜R”は、それぞれ独立に、アリール基またはアルキル基を表し;R”は、直鎖、分岐または環状のアルキル基またはフッ素化アルキル基を表し;R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表し、R”〜R”のうち少なくとも1つはアリール基を表す。]
【0096】
式(b−1)中、R”〜R”はそれぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。R”〜R”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R”〜R”のうち、2以上がアリール基であることが好ましく、R”〜R”のすべてがアリール基であることが最も好ましい。
”〜R”のアリール基としては、特に制限はなく、例えば、炭素数6〜20のアリール基であって、該アリール基は、その水素原子の一部または全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよく、されていなくてもよい。アリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
前記アリール基の水素原子が置換されていても良いアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n‐ブチル基、tert‐ブチル基であることが最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていても良いアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記アリール基の水素原子が置換されていても良いハロゲン原子としては、フッ素原子であることが好ましい。
”〜R”のアルキル基としては、特に制限はなく、例えば炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状のアルキル基等が挙げられる。解像性に優れる点から、炭素数1〜5であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デカニル基等が挙げられ、解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
これらの中で、R〜Rはすべてフェニル基であることが最も好ましい。
【0097】
”は、直鎖、分岐または環状のアルキル基またはフッ素化アルキル基を表す。
前記直鎖のアルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。
前記環状のアルキル基としては、前記R”で示したような環式基であって、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜10であることがさらに好ましく、炭素数6〜10であることが最も好ましい。
前記フッ素化アルキル基としては、炭素数1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8であることがさらに好ましく、炭素数1〜4であることが最も好ましい。また。該フッ化アルキル基のフッ素化率(アルキル基中のフッ素原子の割合)は、好ましくは10〜100%、さらに好ましくは50〜100%であり、特に水素原子をすべてフッ素原子で置換したものが、酸の強度が強くなるので好ましい。
”としては、直鎖または環状のアルキル基、またはフッ素化アルキル基であることが最も好ましい。
【0098】
式(b−2)中、R”〜R”はそれぞれ独立にアリール基またはアルキル基を表す。R”〜R”のうち、少なくとも1つはアリール基を表す。R”〜R”のうち、2以上がアリール基であることが好ましく、R”〜R”のすべてがアリール基であることが最も好ましい。
”〜R”のアリール基としては、R”〜R”のアリール基と同様のものが挙げられる。
”〜R”のアルキル基としては、R”〜R”のアルキル基と同様のものが挙げられる。
これらの中で、R”〜R”はすべてフェニル基であることが最も好ましい。
式(b−2)中のR”としては上記式(b−1)のR”と同様のものが挙げられる。
【0099】
オニウム塩系酸発生剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムのトリフルオロメタンスルホネートまたはノナフルオロブタンスルホネート、トリフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−メチルフェニル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジメチル(4−ヒドロキシナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、モノフェニルジメチルスルホニウムのトリフルオロンメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニルモノメチルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メチルフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、(4−メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、トリ(4−tert−ブチル)フェニルスルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネート、ジフェニル(1−(4−メトキシ)ナフチル)スルホニウムのトリフルオロメタンスルホネート、そのヘプタフルオロプロパンスルホネートまたはそのノナフルオロブタンスルホネートなどが挙げられる。また、これらのオニウム塩のアニオン部がメタンスルホネート、n−プロパンスルホネート、n−ブタンスルホネート、n−オクタンスルホネートに置き換えたオニウム塩も用いることができる。
【0100】
また、前記一般式(b−1)又は(b−2)において、アニオン部を下記一般式(b−3)又は(b−4)で表されるアニオン部に置き換えたものも用いることができる(カチオン部は(b−1)又は(b−2)と同様)。
【0101】
【化31】

[式中、X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数2〜6のアルキレン基を表し;Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
【0102】
X”は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状のアルキレン基であり、該アルキレン基の炭素数は2〜6であり、好ましくは炭素数3〜5、最も好ましくは炭素数3である。
Y”、Z”は、それぞれ独立に、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状または分岐状のアルキル基であり、該アルキル基の炭素数は1〜10であり、好ましくは炭素数1〜7、より好ましくは炭素数1〜3である。
X”のアルキレン基の炭素数またはY”、Z”のアルキル基の炭素数は、上記炭素数の範囲内において、レジスト溶媒への溶解性も良好である等の理由により、小さいほど好ましい。
また、X”のアルキレン基またはY”、Z”のアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなり、また200nm以下の高エネルギー光や電子線に対する透明性が向上するので好ましい。該アルキレン基またはアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70〜100%、さらに好ましくは90〜100%であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基またはパーフルオロアルキル基である。
【0103】
本発明において、オキシムスルホネート系酸発生剤とは、下記一般式(B−1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物であって、放射線の照射によって酸を発生する特性を有するものである。この様なオキシムスルホネート系酸発生剤は、化学増幅型レジスト組成物用として多用されているので、任意に選択して用いることができる。
【0104】
【化32】

(式(B−1)中、R21、R22はそれぞれ独立に有機基を表す。)
【0105】
本発明において、有機基は、炭素原子を含む基であり、炭素原子以外の原子(たとえば水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)等)を有していてもよい。
21の有機基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。これらのアルキル基、アリール基は置換基を有していても良い。該置換基としては、特に制限はなく、たとえばフッ素原子、炭素数1〜6の直鎖、分岐または環状のアルキル基等が挙げられる。ここで、「置換基を有する」とは、アルキル基またはアリール基の水素原子の一部または全部が置換基で置換されていることを意味する。
アルキル基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。アルキル基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアルキル基(以下、ハロゲン化アルキル基ということがある)が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味し、完全にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。すなわち、ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
アリール基は、炭素数4〜20が好ましく、炭素数4〜10がより好ましく、炭素数6〜10が最も好ましい。アリール基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアリール基が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味し、完全にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味する。
21としては、特に、置換基を有さない炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0106】
22の有機基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基、アリール基またはシアノ基が好ましい。R22のアルキル基、アリール基としては、前記R21で挙げたアルキル基、アリール基と同様のものが挙げられる。
22としては、特に、シアノ基、置換基を有さない炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜8のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0107】
オキシムスルホネート系酸発生剤として、さらに好ましいものとしては、下記一般式(B−2)または(B−3)で表される化合物が挙げられる。
【0108】
【化33】

[式(B−2)中、R31は、シアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R32はアリール基である。R33は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。]
【0109】
【化34】

[式(B−3)中、R34はシアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R35は2または3価の芳香族炭化水素基である。R36は置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。pは2または3である。]
【0110】
前記一般式(B−2)において、R31の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
31としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
31におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上フッ素化されていることが好ましい。
【0111】
32のアリール基としては、フェニル基、ビフェニル(biphenylyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントラセル(anthracyl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いた基、およびこれらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等が挙げられる。これらのなかでも、フルオレニル基が好ましい。
32のアリール基は、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していても良い。該置換基におけるアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜8であることが好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい。また、該ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
【0112】
33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
33としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましく、部分的にフッ素化されたアルキル基が最も好ましい。
33におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは90%以上フッ素化されていることが、発生する酸の強度が高まるため好ましい。最も好ましくは、水素原子が100%フッ素置換された完全フッ素化アルキル基である。
【0113】
前記一般式(B−3)において、R34の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R31の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
35の2または3価の芳香族炭化水素基としては、上記R32のアリール基からさらに1または2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
36の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
pは好ましくは2である。
【0114】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α‐(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(p‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(4‐ニトロ‐2‐トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐クロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,4‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐2,6‐ジクロロベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(2‐クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシベンジルシアニド、α‐(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐チエン‐2‐イルアセトニトリル、α‐(4‐ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐ベンジルシアニド、α‐[(p‐トルエンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)‐4‐メトキシフェニル]アセトニトリル、α‐(トシルオキシイミノ)‐4‐チエニルシアニド、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘプテニルアセトニトリル、α‐(メチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロオクテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐エチルアセトニトリル、α‐(プロピルスルホニルオキシイミノ)‐プロピルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロペンチルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐シクロヘキシルアセトニトリル、α‐(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロペンテニルアセトニトリル、α‐(エチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α‐(n‐ブチルスルホニルオキシイミノ)‐1‐シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。
また、下記化学式で表される化合物が挙げられる。
【0115】
【化35】

【0116】
また、前記一般式(B−2)または(B−3)で表される化合物のうち、好ましい化合物の例を下記に示す。
【0117】
【化36】

【0118】
【化37】

【0119】
上記例示化合物の中でも、下記の3つの化合物が好ましい。
【0120】
【化38】

【0121】
【化39】

【0122】
【化40】

【0123】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、以下に示す構造をもつ1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(A=3の場合)、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン(A=4の場合)、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(A=6の場合)、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(A=10の場合)、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン(B=2の場合)、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン(B=3の場合)、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン(B=6の場合)、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン(B=10の場合)などを挙げることができる。
【0124】
【化41】

【0125】
(B)成分としては、これらの酸発生剤を1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
液浸露光用レジスト組成物中、(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対し、10質量部以下が好ましく、0.1〜5質量部がより好ましい。10質量部を超えると、本発明の効果が損なわれるおそれがある。
【0126】
本発明の液浸露光用レジスト組成物には、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意の成分として、含窒素有機化合物(D)(以下、(D)成分という)を配合させることができる。
この(D)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良く、例えば、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デカニルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げらる。これらの中でも、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが好ましく、炭素数5〜10のトリアルキルアミンがさらに好ましく、トリ−n−オクチルアミンが最も好ましい。
また、下記一般式(VI)で表される含窒素有機化合物も好ましく用いることができる。
【0127】
【化42】

(式中、R11、R12は、それぞれ独立して低級アルキレン基、R13は低級アルキル基を示す。)
【0128】
11、R12、R13は直鎖、分岐鎖、環状であってもよいが、直鎖、分岐鎖状であることが好ましい。
11、R12、R13の炭素数は、分子量調整の観点から、それぞれ1〜5、好ましくは1〜3である。R11、R12、R13の炭素数は同じであってもよいし、異なっていてもよい。R11、R12の構造は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
一般式(VI)で表される化合物としては、例えばトリス-(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス−2−(2−メトキシ(エトキシ))エチルアミン、トリス-(2−(2−メトキシエトキシ)メトキシエチル)アミン等が挙げられる。中でもトリス−2−(2−メトキシ(エトキシ))エチルアミンが好ましい。
これらの中では、とくに上記一般式(VI)で表される化合物が好ましく、特にトリス−2−(2−メトキシ(エトキシ))エチルアミンがイマージョンリソグラフィー工程において使用される溶媒に対する溶解性が小さく好ましい。
【0129】
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分は、(A)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
【0130】
また、本発明の液浸露光用レジスト組成物には、前記(D)成分の配合による感度劣化の防止、またレジストパターン形状、引き置き安定性等の向上の目的で、さらに任意の成分として、有機カルボン酸またはリンのオキソ酸若しくはその誘導体(E)(以下、(E)成分という)を含有させることができる。なお、(D)成分と(E)成分は併用することもできるし、いずれか1種を用いることもできる。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ−n−ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸またはそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸−ジ−n−ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸およびそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸およびそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
(E)成分は、(A)成分100質量部当り0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
【0131】
本発明の液浸露光用レジスト組成物には、さらに所望により、混和性のある添加剤、例えばレジスト膜の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料などを適宜、添加含有させることができる。
【0132】
本発明の液浸露光用レジスト組成物の製造は、例えば、上記各成分を通常の方法で混合、攪拌するだけでよく、必要に応じディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミルなどの分散機を用い分散、混合させてもよい。また、混合した後で、さらにメッシュ、メンブレンフィルターなどを用いてろ過してもよい。
【0133】
≪レジストパターン形成方法≫
次に、本発明のレジストパターンの形成方法について説明する。
まずシリコンウェーハ等の基板上に、本発明の液浸露光用レジスト組成物をスピンナーなどで塗布した後、プレベーク(PAB処理)を行う。
なお、基板とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系または無機系の反射防止膜を設けた2層積層体とすることもできる。
また、液浸露光用レジスト組成物の塗布層上に有機系の反射防止膜を設けた2層積層体とすることもでき、さらにこれに下層の反射防止膜を設けた3層積層体とすることもできる。該レジスト層上に設ける反射防止膜はアルカリ現像液に可溶であるものが好ましい。
ここまでの工程は、周知の手法を用いて行うことができる。操作条件等は、使用するレジスト組成物の組成や特性に応じて適宜設定することが好ましい。
【0134】
次いで、上記で得られた液浸露光用レジスト組成物の塗膜であるレジスト層に対して、所望のマスクパターンを介して選択的に液浸露光(Liquid Immersion Lithography)を行う。このとき、予めレジスト層と露光装置の最下位置のレンズ間を、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒で満たすが、さらに、空気の屈折率よりも大きくかつ前記レジスト層の有する屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒で満たした状態で露光を行うことが好ましい。
露光に用いる波長は、特に限定されず、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fレーザーなどの放射線を用いて行うことができる。本発明にかかるレジスト組成物は、KrFまたはArFエキシマレーザー、特にArFエキシマレーザーに対して有効である。
【0135】
上記のように、本発明の形成方法においては、露光時に、レジスト層と露光装置の最下位置のレンズ間に、空気の屈折率よりも大きくかつ使用されるレジスト組成物の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒で満たすことが好ましい。
空気の屈折率よりも大きくかつ使用されるレジスト組成物の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒としては、例えば、水、フッ素系不活性液体、シリコン系溶剤等が挙げられる。
該フッ素系不活性液体の具体例としては、CHCl2、COCH、COC、C等のフッ素系化合物を主成分とする液体やパーフロオロアルキル化合物のような沸点が70〜180℃であり、より好ましくは、沸点が80〜160℃のものを挙げることができる。このパーフロオロアルキル化合物としては、具体的には、パーフルオロアルキルエーテル化合物やパーフルオロアルキルアミン化合物を挙げることができる。
さらに、具体的には、前記パーフルオロアルキルエーテル化合物としては、パーフルオロ(2−ブチル−テトラヒドロフラン)(沸点102℃)を挙げることができ、前記パーフルオロアルキルアミン化合物としては、パーフルオロトリブチルアミン(沸点174℃)を挙げることができる。
フッ素系不活性液体の中では、上記範囲の沸点を有するものが、露光終了後に、液浸に用いた媒体の除去を、簡便な方法で行えることから好ましい。
【0136】
本発明の液浸露光用レジスト組成物は、特に水による悪影響を受けにくく、感度、レジストパターンプロファイル形状に優れることから、空気の屈折率よりも大きい屈折率を有する溶媒として、水が好ましく用いられる。また、水はコスト、安全性、環境問題および汎用性の観点からも好ましい。
また、空気の屈折率よりも大きくかつ使用されるレジスト組成物の屈折率よりも小さい屈折率を有する溶媒の屈折率としては、前記範囲内であれば特に制限されない。
【0137】
次いで、露光工程を終えた後、PEB(露光後加熱)を行い、続いて、アルカリ性水溶液からなるアルカリ現像液を用いて現像処理する。そして、好ましくは純水を用いて水リンスを行う。水リンスは、例えば、基板を回転させながら基板表面に水を滴下または噴霧して、基板上の現像液および該現像液によって溶解したレジスト組成物を洗い流す。そして、乾燥を行うことにより、レジスト組成物の塗膜がマスクパターンに応じた形状にパターニングされた、レジストパターンが得られる。
【0138】
このように、本発明の液浸露光用ポジ型レジスト組成物およびレジストパターン形成方法により、レジストパターン、たとえばラインアンドスペース(L&S)パターンのライン幅が90nm以下の微細なレジストパターンを、形状よく形成できる。
本発明により形状に優れたレジストパターンが形成できる理由としては、定かではないが、以下の理由が推測される。すなわち、液浸露光においては、上述のように、液浸露光時にレジスト層が液浸溶媒に接触することになる。従来の低分子量の酸発生剤を用いた場合、液浸溶媒との接触の際に、酸発生剤の液浸溶媒中への溶出が生じ、それによってレジスト層の変質が起こったり、液浸溶媒の屈折率が変化するなどの現象が生じてレジストパターン形状が悪化していたと推測される。これに対し、本発明の液浸露光用レジスト組成物においては、高分子化合物中に酸発生基が保持されていることにより液浸溶媒中への溶出が抑制され、液浸溶媒の屈折率の変化が抑制される等によりパターンのうねりやLER等が改善され、レジストパターン形状が改善されると推測される。さらに、高分子化合物自体に酸発生基が存在していることにより、レジスト膜中で酸発生基が局在化することなく均一に分布し、このことからも表面荒れやLERが改善され、レジストパターン形状が改善されると推測される。
さらに、液浸溶媒中への酸発生剤の溶出が抑制されると推測されることから、レジスト層の変質や、液浸溶媒の屈折率の変化も抑制されると期待される。
【実施例】
【0139】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
下記合成例で用いたモノマー成分(1)〜(4)それぞれの構造を以下に示す。
【0140】
【化43】

【0141】
[合成例1]
0.7gの(1)、10.0gの(2)、7.2gの(3)、および5.0gの(4)を100mlのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル0.35gを加えた。6時間還流した後、反応溶液を1Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂1とし、その構造式を下記に示す。樹脂1の質量平均分子量(Mw)は10600、分散度(Mw/Mn)は1.8であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、下記構造式に示す各構成単位の組成比(モル比)はa:b:c:d=36.4:38.6:23.9:1.1であった。
【0142】
【化44】

【0143】
[比較合成例1]
18.7gの(2)、13.6gの(3)、および9.5gの(4)を200mlのテトラヒドロフランに溶解し、アゾビスイソブチロニトリル1.64gを加えた。6時間還流した後、反応溶液を1Lのn−ヘプタンに滴下した。析出した樹脂を濾別、減圧乾燥を行い白色な粉体樹脂を得た。この樹脂を樹脂2とし、その構造式を下記に示す。樹脂2の質量平均分子量(Mw)は13300、分散度(Mw/Mn)は2.5であった。また、カーボン13核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)を測定した結果、下記構造式に示す各構成単位の組成比(モル比)はa:b:c=33.6:43.8:22.6であった。
【0144】
【化45】

【0145】
実施例1
100質量部の樹脂1と、0.3質量部のトリ−n−オクチルアミンとを、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)と乳酸エチル(EL)との混合溶剤(PGMEA:EL=6:4(質量比))に溶解して固形分濃度5質量%のポジ型レジスト組成物溶液を得た。
【0146】
次に、得られたポジ型レジスト組成物溶液を用いて以下の評価を行った。
[液浸露光評価]
8インチのシリコンウェーハ上に有機反射防止膜用材料(ブリューワーサイエンス社製、商品名ARC−29)を塗布し、225℃で60秒間焼成して膜厚77nmの反射防止膜を形成して基板とした。該基板上に、上記で得られたポジ型レジスト組成物溶液をスピンナーを用いて均一に塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プレベークして、乾燥させることにより、膜厚130nmのレジスト層を形成した。
次に、浸漬露光として、ニ光束干渉露光機LEIES193−1(Nikon社製)を用いて、プリズムと水と193nmの2本の光束干渉による液浸二光束干渉露光を行った。同様の方法は、前記非特許文献2にも開示されており、実験室レベルで簡易にラインアンドスペース(L&S)パターンが得られる方法として公知である。
そして、120℃、90秒間の条件でPEB処理し、さらに23℃にて2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で30秒間パドル現像し、その後30秒間、純水を用いて水リンスし、振り切り乾燥を行って、ラインアンドスペース(1:1)のレジストパターン(以下、L/Sパターンという)を形成した。
【0147】
このようにして得られたL/SパターンをSEMにより観察したところ、65nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンが形成された。また、レジストパターンの形状は、ラインのうねりがなく、パターン側壁等のラフネスも少ないものであった。
【0148】
[比較例1]
樹脂1に代えて樹脂2を用い、さらに酸発生剤として3.5質量部のトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネートを加えた以外は実施例1と同様にしてポジ型レジスト組成物溶液を調製し、上記と同様の評価を行った。
【0149】
このようにして得られたL/SパターンをSEMにより観察したところ65nmのラインアンドスペースが1:1となるレジストパターンが形成された。しかし、レジストパターンの形状はラインに顕著なうねりが生じており、パターン側壁のラフネスが顕著に見受けられた。
【0150】
上記の結果から明らかなように、高分子化合物(A1)に相当する樹脂1を用いた実施例1のポジ型レジスト組成物によれば、液浸露光において、優れた形状のレジストパターンを高い解像性で形成できた。
一方、酸発生基を有さない樹脂2を用い、別途、低分子量の酸発生剤を添加した比較例1のポジ型レジスト組成物によれば、液浸露光において、レジストパターンの形状が悪かった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸の作用によりアルカリ可溶性が変化する樹脂成分(A)を含む液浸露光用レジスト組成物であって、
前記樹脂成分(A)が、放射線の照射により酸を発生する酸発生基を有する構成単位(a0)を有する高分子化合物(A1)を含有することを特徴とする液浸露光用レジスト組成物。
【請求項2】
前記酸発生基がスルホン酸イオンを有する基である請求項1記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項3】
前記構成単位(a0)がアクリル酸エステルから誘導される構成単位である請求項1または2記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項4】
前記構成単位(a0)が、下記一般式(a0−1)
【化1】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;Aは2価の有機基であり;Bは1価の有機基であり;Xは硫黄原子またはヨウ素原子であり;nは1または2であり;Yは少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基である。]
で表される構成単位である請求項1〜3のいずれか一項に記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項5】
前記構成単位(a0)が、下記一般式(a0−2)
【化2】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;R〜Rはそれぞれ独立して炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、もしくは水酸基であり;o,p,qはそれぞれ独立して0または1〜3の整数であり;mは1〜10の整数である。アニオン部の水素原子はフッ素置換されていても良い。]
で表される構成単位である請求項4記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項6】
前記構成単位(a0)が、下記一般式(a0−3)
【化3】

[式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、低級アルキル基またはハロゲン化低級アルキル基であり;mは1〜10の整数である。]
で表される構成単位である請求項5記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項7】
前記構成単位(a0)の割合が、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位に対し、0.01モル%以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項8】
前記高分子化合物(A1)が、さらに酸解離性溶解抑制基を有するアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a1)を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項9】
前記構成単位(a1)の割合が、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位に対し、10〜80モル%である請求項8記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項10】
前記高分子化合物(A1)が、さらにラクトン含有単環または多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a2)を有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項11】
前記構成単位(a2)の割合が、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位に対し、5〜60モル%である請求項10記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項12】
前記高分子化合物(A1)が、さらに極性基含有脂肪族多環式基を含むアクリル酸エステルから誘導される構成単位(a3)を有する請求項1〜11のいずれか一項に記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項13】
前記構成単位(a3)の割合が、高分子化合物(A1)を構成する全構成単位に対し、5〜50モル%である請求項12記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項14】
含窒素有機化合物(D)を含有する請求項1〜13のいずれか一項に記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の液浸露光用レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、前記レジスト膜を液浸露光する工程、前記レジスト膜を現像しレジストパターンを形成する工程を含むレジストパターン形成方法。


【公開番号】特開2006−171656(P2006−171656A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367971(P2004−367971)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】