説明

液滴吐出ヘッドの付着物除去方法

【課題】液滴吐出ヘッドのノズルプレートに固化・固着した機能液を除去する液滴吐出ヘッドの付着物除去方法を提供する。
【解決手段】キャップベース69に、キャップ室72の底面で開口する導入口73を設け、吸引ポンプ76を介して、機能液を溶解する溶解液が貯留されたタンク77に連通させた。また、シール部材70には、キャップ室72の開口面に近接する位置で開口する導出口79を設け、廃液タンク82に連通させた。そして、ノズル形成面45aに洗浄キャップ68を当接させて、キャップ室72を密閉すると、吸引ポンプ76を駆動させてキャップ室72に溶解液を供給し、該キャップ室72を溶解液で満たした。従って、ノズル形成面45aに固着した機能液83は、溶解液によって溶解されて除去される。そして、その後も供給される溶解液によって、キャップ室72内の溶解液は廃液タンク82へと排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴吐出ヘッドの付着物除去に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、機能液を使って基板上に所望のパターンを形成する装置として、機能液を液滴にして基板に吐出するインクジェット装置、すなわち液滴吐出装置が知られている。液滴吐出装置は、ステージに載置される基板と機能液を液滴にして吐出する液滴吐出ヘッドとを2次元的に相対移動させながら、液滴吐出ヘッドから吐出される機能液の液滴を基板上の任意の箇所に配置することによりパターンを形成する。近年では、機能液に、例えば銀(Ag)等の金属微粒子を溶媒に分散させた分散系金属インク(金属配線用インク)を使用することで、基板上の配線パターンの形成にも利用され、配線パターンの微細化や狭ピッチを可能にしている。
【0003】
液滴吐出ヘッドは、別設のタンクなどから機能液が供給されるとともに、供給された機能液を内部に設けたインク室(キャビティ)に一時的に貯留する。そして、ステージと相対向するように設けたノズルプレートに多数形成されたノズル孔からインク室に貯留した機能液を液滴にして吐出する。
【0004】
ここで、液滴吐出ヘッドが待機しているとき、インク室に貯留した機能液が乾燥してしまうことがある。機能液が乾燥すると、増粘して吐出量が変化するだけでなく、固化してしまいノズル孔の目詰まりや吐出時の飛行曲がりなどを起こしてしまうことがある。
【0005】
また、液滴吐出ヘッドは、描画後にミスト化した液滴などがノズルプレートに付着してしまう。その付着した機能液が乾燥してノズルプレートに固化・固着することによって、ノズル孔を塞いでしまいノズル孔の目詰まりや液滴の飛行曲がりを起こしてしまうことがある。
【0006】
これらの対策として、液滴吐出装置には、ノズル孔周辺の機能液の乾燥を防止する洗浄キャップを備えたキャッピングユニットと、液滴吐出ヘッドのノズルプレートに付着した機能液を払拭(ワイピング)するクリーニングユニットとを備えたメンテナンスユニットを設けたものが提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−202325号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、機能液が前記金属配線用インクであった場合、ノズル孔周辺の金属配線用インクの乾燥をキャッピングユニットで防止することは可能である。しかしながら、ノズルプレートに付着した金属配線用インクが乾燥してしまい、固着するとクリーニングユニットで取り除くことが困難であった。従って、金属配線用インクがノズルプレートに固着してしまうと、メンテナンスを行ったにも関わらず、ノズル孔の目詰まりや飛行曲がりによって、正確な吐出量及び着弾位置を得ることができない虞があった。さらに、液滴吐出ヘッドの交換などの作業者による液滴吐出装置のメンテナンスが必要となり、液滴吐出装置の生産効率を低下させていた。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、液滴吐出ヘッドのノズルプレートに固着した機能液を除去する液滴吐出ヘッドの付着物除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液滴吐出ヘッドの付着物除去方法は、ノズルプレートに形成された複数のノズル孔から機能液を液滴にして吐出する液滴吐出ヘッドの付着物除去方法であって、前記複数のノズル孔を内包した状態で前記ノズルプレートに当接する洗浄キャップを設け、前記ノズルプレートと前記キャップとによって密閉空間を形成し、前記密閉空間に前記ノズルプレートが前記機能液を溶解する溶解液に浸るように、前記密閉空間を溶解液で満たして、前記ノズルプレートに付着する付着物を溶解除去することを特徴とする。
【0010】
本発明の液滴吐出ヘッドの付着物除去方法によれば、ノズルプレートに付着した機能液を、同機能液を溶解する溶解液に浸すことができる。従って、付着した機能液は、溶解液によって溶解されるので、同機能液を確実に除去することができる。その結果、付着した機能液に起因するノズル孔の目詰まりや液滴の飛行曲がりを低減し、吐出された液滴のより正確な吐出量及び着弾位置を得ることができる。
【0011】
また、付着した機能液を除去することによって、同機能液の付着に起因する液滴吐出ヘッドの交換回数を低減することができる。すなわち、作業者による液滴吐出装置のメンテナンスを低減し、液滴吐出装置の稼働率を向上させることができる。その結果、液滴吐出装置の生産効率を向上させることができる。
【0012】
この液滴吐出ヘッドの付着物除去方法は、前記洗浄キャップに導入口と導出口とを設け、同導入口から前記密閉空間に溶解液を導入して、前記密閉空間を溶解液で満たされた状態にするとともに、前記密閉空間に導入された溶解液を同導出口から導出させてもよい。
【0013】
この液滴吐出ヘッドの付着物除去方法によれば、洗浄キャップに導入口と導出口とを設けて、同導入口から溶解液を導入して、密閉空間を溶解液で満たされた状態にするとともに、同密閉空間内の溶解液を同導出口から導出する。すなわち、密閉空間が溶解液で満たされた状態になると、同密閉空間を満たしている溶解液は、導入口から導入される溶解液によって、導出口から導出される。つまり、密閉空間内には、導入口から溶解液が常に導入されている。従って、例えば、導入口を溶解液が貯留されたタンクに接続し、導出口を同タンクとは別設した廃液タンクなどに接続すれば、密閉空間に常に新しい溶解液を導入することができる。その結果、ノズルプレートに付着した機能液を効率よく溶解することができる。
【0014】
この液滴吐出ヘッドの付着物除去方法は、前記導入口を、前記溶解液が貯留されたタンクに接続し、前記導出口は、同タンクとは別設した廃液タンクに接続してもよい。
この液滴吐出ヘッドの付着物除去方法によれば、溶解液を貯留しているタックから導入口を介して密閉空間に導入し、密閉空間内の溶解液を、導出口を介して廃液タンクへと排出することができる。すなわち、密閉空間に常に新しい溶解液を導入することができる。その結果、ノズルプレートに付着した機能液を効率よく溶解することができる。
【0015】
この液滴吐出ヘッドの付着物除去方法は、前記洗浄キャップ内に、吸収材を配設し、同吸収材に前記溶解液を含浸させてもよい。
この液滴吐出ヘッドの付着物除去方法によれば、例えば、ノズルプレートに洗浄キャップが当接しているとき、溶解液が含浸された吸収材を同ノズルプレートに当接するように配設することによって、ノズルプレートに付着した機能液は、溶解液に浸された状態となる。その結果、ノズルプレートに付着した機能液を確実に除去することができる。
【0016】
この液滴吐出ヘッドの付着物除去方法は、前記吸収材は、前記洗浄キャップと前記ノズルプレートが当接しているとき、前記ノズルプレートに当接させてもよい。
この液滴吐出ヘッドの付着物除去方法によれば、溶解液が含浸された吸収材がノズルプレートに当接する。すなわち、ノズルプレートに付着した機能液は、溶解液に浸された状態となる。その結果、ノズルプレートに付着した機能液を確実に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施した実施形態を図面に従って説明する。
図1は、液滴吐出装置1の概略構成を示し、床面には主走査方向(X軸方向)に延在した基台2が設置され、その上面に2aに一対のX軸ガイドレール11が主走査方向(X軸方向)に敷設され、その一対のX軸ガイドレール11にはX軸移動プレート12が載置されている。X軸移動プレート12は、X軸ガイドレール11に沿って主走査方向に移動可能に搭載されている。一対のX軸ガイドレール11には、X軸リニアモータM1が備えられ、X軸リニアモータM1は、一対のX軸ガイドレール11に載置されたX軸移動プレート12を、エアスライダ(図示省略)を介してX軸方向に往復移動させる。
【0018】
尚、図1において、主走査方向をX軸方向、主走査方向(X軸方向)に直交する副走査方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(上下方向)をZ軸方向、Z軸方向回りの回動方向をθ方向と表記する。
【0019】
X軸移動プレート12の上面には、基板ステージ14が設けられている。基板ステージ14は、真空吸着テーブルであって、その上面に基板Wを吸着固定し、同基板Wを搬送する。基板ステージ14は、X軸移動プレート12と基板ステージ14との間に設けた破線で示すステージ回動機構16によって、X軸移動プレート12に対してθ方向に回動可能に支持固定されている。
【0020】
従って、基板ステージ14(基板W)は、X軸移動プレート12とともにX軸方向(主走査方向)に移動する。また、基板ステージ14(基板W)は、X軸移動プレート12の平面(XY平面(水平面))に対して平行にθ方向に回動する。
【0021】
前記X軸ガイドレール11の上方向をY軸方向に跨ぐように、一対のY軸ガイドレール18が配設されている。一対のY軸ガイドレール18の一端の支柱19aは、基台2の上面2a一側に立設され、他端の支柱19bは基台2から離間した床に立設されている。一対のY軸ガイドレール18は、X軸方向に予め定めた間隔をおいて平行に配設されている。尚、本実施形態では、Y軸方向に平行に延びた一対のY軸ガイドレール18において、基台2の上方位置を作業領域、基台2から離間した位置を待機領域としている。
【0022】
一対のY軸ガイドレール18の間に、複数のキャリッジプレート21が差し渡されるように配置されている。そして、各キャリッジプレート21は、Y軸ガイドレール18に沿って副走査方向(Y軸方向)に移動可能に載置されている。一対のY軸ガイドレール18には、Y軸リニアモータM2を備え、Y軸リニアモータM2は、一対のY軸ガイドレール18に載置された各キャリッジプレート21をそれぞれエアスライダ(図示省略)を介してY軸方向に往復移動させる。つまり、各キャリッジプレート21は、Y軸ガイドレール18上の作業領域と待機領域との間を往復移動するようになっている。
【0023】
各キャリッジプレート21の上面には、機能液供給ユニット22とヘッド用電装ユニット23とが載置されている。機能液供給ユニット22は、機能液を所定量貯蔵して、各液滴吐出ヘッド40(図3参照)に機能液を供給するための供給回路装置である。ヘッド用電装ユニット23は、各液滴吐出ヘッド40を駆動するための電気信号を供給するための電気回路装置である。
【0024】
また、ここでいう機能液とは、金属配線を形成する金属配線用インクであって、分散媒
と導電材料として銀とを含有する。機能液における銀は、銀粒子の形態をしており、その銀粒子の平均粒径は、10nm程度である。そして、機能液において、銀粒子はコーティング剤で被覆されていて、コーティング剤で被覆された銀粒子は、分散媒中に安定して分散されている。尚、平均粒径が1nm程度から数100nmまでの粒子は、「ナノ粒子」とも表記される。また、分散媒(又は溶媒)としては、銀粒子等の導電性微粒子を分散できるもので凝集を起こさないものであれば特に限定されない。
【0025】
図2に示すように、各キャリッジプレート21の下面の中央位置には、吊下機構25が設けられ、その吊下機構25の下端部にキャリッジ30が取着されている。
吊下機構25は、吊下基板26と、吊下回動枠27と、吊下支持枠28とを有している。吊下基板26は、キャリッジプレート21の下面中央位置に連結固定され、その下端部に吊下回動枠27を連結している。吊下回動枠27は、その下端部に吊下支持枠28をθ方向に回動可能に連結支持している。吊下回動枠27には、θ軸回動モータ(図示省略)を有し、θ軸回動モータは吊下支持枠28を吊下基板26(キャリッジプレート21)に対してθ方向に回動させるようになっている。吊下支持枠28には、キャリッジ30が支持固定され、吊下機構25に垂設されたキャリッジ30をθ方向に回動させる。また、キャリッジ30の略直方体形状のキャリッジ枠31の下端部には、ユニットプレート34が固設されている。ユニットプレート34には、液滴吐出ヘッド40が着脱可能に、かつ、精度よく位置決め固定されて取り付けられている。本実施形態では、X軸方向に沿って並設された3個の液滴吐出ヘッド40が、Y軸方向と平行に2列、すなわち合計6個の液滴吐出ヘッド40が取り付けられている。尚、キャリッジ枠31の内側は、配管や配線などが配設されているが、表示すると煩雑になるため図示を省略している。
(液滴吐出ヘッド40)
次に、ユニットプレート34に取着した液滴吐出ヘッド40について図3を参照して説明する。図3は、液滴吐出ヘッドを基板ステージ14側から見た外観斜視図である。この液滴吐出ヘッド40は、2つの接続針42を有する液体導入部41と、液体導入部41の側方に連なるヘッド基板43と、液体導入部41に連なるポンプ部44と、ポンプ部44に連なるノズルプレート45とを備えている。
【0026】
液体導入部41の接続針42には、機能液供給ユニット22に連通した図示しない配管接続部材が接続されている。ヘッド基板43には、一対のヘッドコネクタ43Aが実装されており、当該ヘッドコネクタ43Aを介して、ヘッド用電装ユニット23に接続された図示しないフレキシブルフラットケーブルが接続される。
【0027】
一方、ポンプ部44とノズルプレート45とにより、方形のヘッド本体40Aが構成されている。
ノズルプレート45のノズル形成面45aには、液滴を吐出する吐出ノズル46からなる2本のノズル列47が形成されている。2本のノズル列47は相互に平行に列設されており、各ノズル列47は、等ピッチで並設された180個(図示では模式的に表している)の吐出ノズル46で構成されている。すなわち、ヘッド本体40Aのノズル形成面45aには、その中心線を挟んで2本のノズル列47が対称に配設されている。
【0028】
ポンプ部44の基部側、すなわちヘッド本体40Aの基部側は、液体導入部41を受けるべく方形フランジ状にフランジ部48が形成されている。このフランジ部48は、抜け止めの役目を果たすとともに、ヘッド止めネジ(図示せず)でユニットプレート34と連結固定される連結部の役目を果たす。フランジ部48には、液滴吐出ヘッド40をユニットプレート34に固定する小ネジ用のネジ孔(雌ネジ)49が一対形成されている。つまり、液滴吐出ヘッド40は、ユニットプレート34の所定の位置に形成された貫通穴(図示せず)に、ヘッド本体40Aを貫挿させて、ユニットプレート34を貫挿してネジ孔49と螺合するヘッド止めネジ(図示せず)によってユニットプレート34に固定される。
【0029】
図2及び図3に示したX軸、Y軸、Z軸は、図1に示したX軸、Y軸、Z軸と同一である。すなわち、ユニットプレート34が液滴吐出装置1に取り付けられた状態では、液滴吐出ヘッド40に形成されたノズル列47(図3参照)は、Y軸方向に延在する構成になっている。
(メンテナンスユニット55)
次に、液滴吐出ヘッド40のメンテナンスを行うメンテナンスユニット55について説明する。図1に示すように、メンテナンスユニット55は、一対のY軸ガイドレール18の待機領域の下側に設けられている。メンテナンスユニット55は、Y軸方向に沿って延在したメンテナンスベース56の上面56aに、ワイピングユニット60とキャッピングユニット61とがそれぞれ設けられている。
【0030】
ワイピングユニット60は、各キャリッジ30がそれぞれ上方に位置したときに、ユニットプレート34に取着した各液滴吐出ヘッド40のノズル形成面45aと接触して、該ノズル形成面45aをクリーニングする装置である。
【0031】
ワイピングユニット60は、メンテナンスベース56の最も基台2側に設けられ、図4に示すように、ワイピング本体62の上面62aに円筒状の払拭ローラ63がY軸方向に沿って回転可能に設けられている。この払拭ローラ63が、キャリッジ30(ユニットプレート34)に下側から臨んで、各液滴吐出ヘッド40のノズル形成面45aと接触し、該ノズル形成面45aをそれぞれクリーニングするようになっている。
【0032】
また、払拭ローラ63の長手方向(X軸方向)は、ユニットプレート34にX軸方向に沿って並設された3個の液滴吐出ヘッド40の各ノズル形成面45aと接触可能な大きさに形成されている。
【0033】
ワイピングユニット60に隣接して設けられたキャッピングユニット61は、キャリッジプレート21(キャリッジ30)の数(6個)だけY軸方向に並設されている。各キャッピングユニット61は、対応するキャリッジ30のユニットプレート34に設けた各液滴吐出ヘッド40のノズル形成面45aに固着した機能液をそれぞれ除去するとともに、液滴吐出装置1が休止状態であるとき、各液滴吐出ヘッド40のノズルプレート45とそれぞれ密着してポンプ部44内の機能液の乾燥を抑制する装置である。
【0034】
各キャッピングユニット61は、図4に示すように、ユニットプレート34に設けた各液滴吐出ヘッド40に対応した数のキャップ装置65(本実施形態では6個)が設けられている。各キャッピングユニット61は、メンテナンスベース56に固設されたベース66と、ベース66の上側に配置され、図示しない昇降装置によってベース66に対して上下動可能なキャップテーブル67とを備えている。そして、キャップテーブル67の上面67aには、それぞれ対応するキャリッジ30のユニットプレート34に搭載された各液滴吐出ヘッド40に対応して設けられた洗浄キャップ68(本実施形態では6個)を備えている。
【0035】
洗浄キャップ68は、図5及び図6に示すように、キャップテーブル67に固設されたキャップベース69と、キャップベース69に設置され液滴吐出ヘッド40の全吐出ノズル46を内包した状態でノズル形成面45aに密着する環状のシール部材70と、シール部材70をキャップベース69に対して固定するシール固定部材71とを備えている。また、キャップベース69とシール部材70とによって、上面が開口しているキャップ室72が形成されている。
【0036】
キャップベース69は、ステンレスなどの耐食性材料からなり、図6に示すように、キ
ャップ室72の底面右端部に位置する導入口73が貫通形成されている。キャップベース69の下面69aには、導入口73と連通する略円筒状の導入部74が突設されている。導入部74には、可撓性材料よりなる導入チューブ75が接続されている。導入チューブ75は、吸引ポンプ76を介して、固化した機能液を溶解する溶解液が貯留されたタンク77に接続されている。すなわち、吸引ポンプ76を駆動させると、タンク77に貯留された溶解液は、導入チューブ75及び導入口73を介してキャップ室72に供給されるようになっている。
【0037】
シール部材70は、耐食性を有する可撓性部材からなり、図6に示すように、キャップベース69側外周部にはフランジ部70aが一体形成されている。フランジ部70aは、ステンレスなどの耐食性材料からなる略四角枠状のシール固定部材71とキャップベース69とによって挟持されている。また、シール固定部材71は、一対の固定ネジ78によってキャップベース69に対して固定されている。すなわち、シール部材70は、シール固定部材71によってキャップベース69に対して位置決め固定されている。
【0038】
シール部材70は、図5及び図6に示すように、その左側面(導入口73から最も離れた側面)には、導出口79が貫通形成された略円筒状の導出部80が突設されている。導出部80には、可撓性材料よりなる導出チューブ81が接続され、該導出チューブ81は、廃液タンク82に連通している。また、導出口79は、キャップ室72の開口面に近接する位置で開口している。すなわち、洗浄キャップ68をノズル形成面45aに当接させたとき、該ノズル形成面45aに近接する位置で開口している。
【0039】
従って、洗浄キャップ68をノズル形成面45aに当接させてキャップ室72を密閉したとき、キャップ室72に溶解液を供給すると、該キャップ室72を溶解液で満たすことができる。また、キャップ室72が溶解液で満たされた後も、キャップ室72には導入口73から溶解液が供給されるため、キャップ室72内の溶解液は、導出口79を介して廃液タンク82へと排出される。
【0040】
また、図5及び図6に示すように、シール部材70には、傾斜部70bが設けられている。傾斜部70bは、導出口79の開口部付近から、導入口73の開口部付近に向かって形成されている。従って、キャップ室72の容積が小さくなるので、キャップ室72を少量の溶解液で満たすことができるとともに、キャップ室72内の溶解液を効率よく排出することができる。
【0041】
次に、このように構成したメンテナンスユニット55について説明する。
キャップ装置65は、対応するキャリッジ30が待機領域であってその直上まで移動すると、図示しない昇降装置にてキャップテーブル67を上動させるとともに、洗浄キャップ68のシール部材70を液滴吐出ヘッド40のノズル形成面45aに当接させて、キャップ室72を密閉する。そして、吸引ポンプ76を駆動させてタンク77に貯留された溶解液を導入口73からキャップ室72(密閉空間)に供給すると、キャップ室72(密閉空間)は溶解液で満たされる。このとき、ノズル形成面45aに固着した機能液83は、溶解液に浸された状態となるため、溶解液に溶解する。キャップ室72が溶解液で満たされた後も、キャップ室72には導入口73から溶解液が供給されるため、キャップ室72内の溶解液は、導出口79を介して廃液タンク82へと排出される。また、溶解された機能液83は、溶解液とともに廃液タンク82へと排出される。
【0042】
洗浄キャップ68をノズルプレート45に当接させて予め定めた時間が経過すると、吸引ポンプ76を停止させるとともに、図示しない昇降装置によってキャップテーブル67を下動させて、洗浄キャップ68をノズルプレート45から離間させる。そして、キャリッジ30をワイピングユニット60の上方に配置して、ノズル形成面45aに付着してい
る溶解液を払拭ローラ63で払拭させた後、作業領域に移動させる。
【0043】
上記実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態によれば、キャップ室72を構成するキャップベース69に導入口73を設けた。導入口73には、吸引ポンプ76を介して溶解液が貯留されたタンク77に連通する導入チューブ75を接続し、吸引ポンプ76を駆動させることによって、キャップ室72に溶解液が供給されるようにした。また、キャップ室72を構成するシール部材70には、導出口79を設けた。導出口79には、廃液タンク82に連通した導出チューブ81を接続した。導出口79は、洗浄キャップ68をノズル形成面45aに当接させたとき、該ノズル形成面45aに近接する位置で開口させた。
【0044】
従って、洗浄キャップ68のキャップ室72をノズルプレート45で密閉したとき、キャップ室72に溶解液を供給すると、該キャップ室72を溶解液で満たすことができる。すなわち、ノズル形成面45aが常時溶解液に触れるようにしたので、ノズル形成面45aに固着した機能液83を溶解液に浸すことができる。その結果、溶解液がノズル形成面45aに固着した機能液83を溶解することによって、該機能液83を除去することができる。
【0045】
また、ノズル形成面45aに固着した機能液83を除去することによって、該機能液83に起因する吐出ノズル46の目詰まりや液滴の飛行曲がりを低減し、正確な吐出量及び着弾位置を得ることができる。その結果、機能液が吐出された基板の品質不良を低減することができる。
【0046】
さらに、ノズル形成面45aに固着した機能液83を除去することによって、該機能液83に起因する液滴吐出ヘッド40(キャリッジ30)の交換回数を低減することができる。すなわち、作業者による液滴吐出装置1のメンテナンスを低減し、液滴吐出装置1の稼働率を向上させることができる。その結果、液滴吐出装置1の生産効率を向上させることができる。
【0047】
(2)上記実施形態によれば、溶解液が貯留されたタンク77から溶解液をキャップ室72に供給しキャップ室72を溶解液で満たした。また、キャップ室72には、その後も溶解液を供給し、キャップ室72内の溶解液をタンク77とは別設の廃液タンク82へと排出させた。すなわち、キャップ室72には常に新しい溶解液が供給されている。従って、ノズル形成面45aに固着した機能液83を効率よく除去することができる。
【0048】
(3)上記実施形態によれば、シール部材70に傾斜部70bを設けてキャップ室72の容積を小さくした。従って、キャップ室72を溶解液で満たすとき際、少量の溶解液で満たすことができる。その結果、より短時間でキャップ室72を溶解液で満たすとともに、キャップ室72内の溶解液を効率よく排出することができる。
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図7を用いて説明する。尚、本実施形態では第1実施形態と相違する点を詳細に説明し、基本的に同じ構成についてはその詳細な説明は便宜上省略する。
【0049】
図7に示すように、シール部材70の傾斜部70bが取り除かれたキャップ室72には、可撓性の多孔質樹脂などからなる略直方体状の吸収材85が配設されている。吸収材85は、その下部外周面にフランジ部85aが一体形成され、該フランジ部85aが、切欠部が設けられたシール部材70とキャップベース69とに挟持されることによって位置決め固定されている。吸収材85は、機能液や溶解液を吸収保持する。また、吸収材85の上面は、キャップ室72の開口面と略等しい高さに形成されている。すなわち、キャップ
室72をノズル形成面45aで密閉したとき、該ノズル形成面45aと当接するようになっている。
【0050】
キャップベース69には、キャップ室72の中央付近に位置するように導出口86が貫通形成されている。キャップベース69の下面69aには、導出口86と連通する導出部87が略円筒状に突設されている。導出部87には導出チューブ88が接続され、該導出チューブ88は、吸引ポンプ89を介して廃液タンク82に連通している。すなわち、吸引ポンプ89を駆動させることによって、吸収材85に吸収保持されている機能液や溶解液は、廃液タンク82に排出されるようになっている。また、液滴吐出ヘッド40のポンプ部44内を負圧状態にして、該ポンプ部44内の機能液を強制吐出させることができる。
【0051】
また、液滴吐出装置1には、吸収材85に溶解液を注入する図示しない注入装置が設けられている。注入装置は、例えば、各液滴吐出ヘッド40に設けたディスペンサや液滴吐出装置1に設けた溶解液注入専用のキャリッジに設けた吐出ヘッドであって、キャリッジ30が待機領域に移動する際に、吐出ヘッドから洗浄キャップ68の吸収材85に所定量の溶解液を注入する。ここで、溶解液が所定量注入された吸収材85は、溶解液で十分に浸液された状態となっている。
【0052】
次に、このように構成したメンテナンスユニット55について説明する。
キャリッジ30を待機領域に移動させるとき、図示しない注入装置によってキャップ室72に配設された吸収材85に所定量の溶解液が注入される。そして、キャリッジ30を所定の位置に配置すると、図示しない昇降装置によって、キャップテーブル67を上動させる。そして、シール部材70をノズル形成面45aに当接させて、キャップ室72を密閉する。このとき、溶解液を含んだ吸収材85もノズル形成面45aに当接する。すなわち、ノズル形成面45aが常時溶解液に触れるようになることから、ノズル形成面45aに固着した機能液83は、吸収材85によって溶解液に浸された状態となるため、溶解液に溶解し吸収材85に吸収保持される。そして、洗浄キャップ68をノズルプレート45に当接させて予め定めた時間が経過すると、吸引ポンプ89を駆動させて、吸収材85に吸収保持された溶解液や機能液を廃液タンク82へと排出するとともに、液滴吐出ヘッド40のポンプ部44内を負圧状態にして、該ポンプ部44内の機能液を強制吐出させる。
【0053】
そして、図示しない昇降装置によってキャップテーブル67を下動させて、洗浄キャップ68をノズルプレート45から離間させる。洗浄キャップ68を離間させるとキャリッジ30をワイピングユニット60の上方に配置して、ノズル形成面45aに付着している溶解液などを払拭ローラ63で払拭する。
【0054】
上記実施形態によれば、第1実施形態の(1)の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(4)上記実施形態によれば、溶解液を吸収保持した吸収材85をキャップ室72に配設した。該吸収材85は、その上面がキャップ室72の開口面と略等しい高さに形成し、キャップ室72をノズル形成面45aで密閉したとき、ノズル形成面45aに当接するようにした。
【0055】
従って、キャップ室72をノズル形成面45aで密閉したとき、該ノズル形成面45aに固着した機能液83を吸収材85が吸収保持している溶解液に確実に浸すことができる。その結果、溶解液がノズル形成面45aに固着した機能液83を溶解して、該機能液83を除去することができる。
【0056】
(5)上記実施形態によれば、吸収材85が吸収保持している機能液や溶解液を吸引す
る吸引ポンプ89を設けた。従って、吸引ポンプ89を駆動することによって、吸収材85の吸収保持している機能液や溶解液を排出するとともに、液滴吐出ヘッド40のポンプ部44内を負圧状態にし、該ポンプ部44内の機能液を強制吐出させることができる。その結果、液滴吐出ヘッド40のメンテナンスを効率よく行うことができる。
【0057】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第1実施形態では、キャップベース69の導入口73から溶解液を供給し、シール部材70の導出口79から溶解液を排出した。これに限らず、吸引ポンプ76、タンク77及び廃液タンク82の配置を適宜変更して、シール部材70の導出口79から溶解液を供給し、キャップベース69の導入口73から溶解液を排出させるようにしてもよい。これによれば、シール部材70に設けた傾斜部70bによって、キャップ室72内の溶解液を効率よく排出することができる。
【0058】
・上記第1実施形態では、キャップ室72に供給された溶解液を廃液タンク82に排出するようにした。これに限らず、キャップ室72から排出される溶解液を、溶解液が貯留されたタンク77に排出して、溶解液を循環させるようにしてもよい。
【0059】
・上記第1実施形態では、洗浄キャップ68をノズル形成面45aに当接させてから、吸引ポンプ76を駆動させてキャップ室72に溶解液を供給した。これに限らず、キャップ室72に溶解液を供給してからノズル形成面45aに洗浄キャップ68を当接させてもよい。
【0060】
・上記第1実施形態では、キャップ室72の容積を小さくする傾斜部70bをシール部材70に設けた。これに限らず、例えば、キャップベース69に傾斜部を形成してもよい。
【0061】
・上記第1実施形態では、キャップベース69には導入口73を設け、シール部材70には導出口79を設けた。これに限らず、シール部材70とキャップベース69のどちらか一方に導入口と導出口とを設けてもよい。
【0062】
・上記第2実施形態では、シール部材70がノズル形成面45aに当接したときに、吸収材85もノズル形成面45aに当接するように形成した。これに限らず、図8のように、ノズル形成面45aと当接しない吸収材90を配設し、吸収材90とノズル形成面45aとの間に溶解液を介在させて、該溶解液をノズル形成面45aに固着した機能液83に浸すようにしてもよい。このとき、キャップ室72に溶解液を注入する注入装置の供給量を適宜変更するとよい。
【0063】
・上記第1及び第2実施形態では、液滴吐出ヘッド40を6個搭載したキャリッジを6個搭載した液滴吐出装置1に具体化した。これに限らず、キャリッジに搭載される液滴吐出ヘッドの配置や数、及び、液滴吐出装置に搭載されるキャリッジの数は、適宜変更してもよい。例えば、液滴吐出ヘッドを1つ搭載したキャリッジを1つ搭載した液滴吐出装置に具体化してもよい。
【0064】
・上記第1及び第2実施形態では、機能液として金属配線用インクを吐出する液滴吐出装置1について具体化した。これに限らず、例えば、ファックス、コピア等を含む印刷装置や、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ及び面発光ディスプレイの製造などに用いられる電極材や色材などの機能液であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】液滴吐出装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】キャリッジプレートとキャリッジの関係を表す平面図。
【図3】液滴吐出ヘッドを基板ステージ側から見た斜視図。
【図4】メンテナンスユニットの概略構成を示す斜視図。
【図5】洗浄キャップの構成を示す斜視図。
【図6】第1実施形態において、洗浄キャップがノズルプレートに当接したときの断面図。
【図7】第2実施形態において、洗浄キャップがノズルプレートに当接したときの断面図。
【図8】別例において、洗浄キャップがノズルプレートに当接したときの断面図。
【符号の説明】
【0066】
W…基板、M1…リニアモータ、M2…リニアモータ、1…液滴吐出装置、2…基台、2a…上面、11…X軸ガイドレール、12…X軸移動プレート、14…基板ステージ、16…ステージ回動機構、18…Y軸ガイドレール、19a…支柱、19b…支柱、21…キャリッジプレート、22…機能液供給ユニット、23…ヘッド用電装ユニット、25…吊下機構、26…吊下基板、27…吊下回動枠、28…吊下支持枠、30…キャリッジ、31…キャリッジ枠、34…ユニットプレート、40…液滴吐出ヘッド、40A…ヘッド本体、41…液体導入部、42…接続針、43…ヘッド基板、43A…ヘッドコネクタ、44…ポンプ部、45…ノズルプレート、45a…ノズル形成面、46…吐出ノズル、47…ノズル列、48…フランジ部、49…ネジ孔、55…メンテナンスユニット、56…メンテナンスベース、56a…上面、60…ワイピングユニット、61…キャッピングユニット、62…ワイピング本体、62a…上面、63…払拭ローラ、65…キャップ装置、66…ベース、67…キャップテーブル、67a…上面、68…洗浄キャップ、69…キャップベース、69a…下面、70…シール部材、70a…フランジ部、70b…傾斜部、71…シール固定部材、72…キャップ室、73…導入口、74…導入部、75…導入チューブ、76…吸引ポンプ、77…タンク、78…固定ネジ、79…導出口、80…導出部、81…導出チューブ、82…廃液タンク、83…機能液、85…吸収材、85a…フランジ部、86…導出口、87…導出部、88…導出チューブ、89…吸引ポンプ、90…吸収材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルプレートに形成された複数のノズル孔から機能液を液滴にして吐出する液滴吐出ヘッドの付着物除去方法であって、
前記複数のノズル孔を内包した状態で前記ノズルプレートに当接する洗浄キャップを設け、前記ノズルプレートと前記キャップとによって密閉空間を形成し、前記密閉空間に前記ノズルプレートが前記機能液を溶解する溶解液に浸るように、前記密閉空間を溶解液で満たして、前記ノズルプレートに付着する付着物を溶解除去することを特徴とする液滴吐出ヘッドの付着物除去方法。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの付着物除去方法において、
前記洗浄キャップに導入口と導出口とを設け、同導入口から前記密閉空間に溶解液を導入して、前記密閉空間を溶解液で満たされた状態にするとともに、前記密閉空間に導入された溶解液を同導出口から導出させることを特徴とする液滴吐出ヘッドの付着物除去方法。
【請求項3】
請求項2に記載の液滴吐出ヘッドの付着物除去方法において、
前記導入口を、前記溶解液が貯留されたタンクに接続し、前記導出口は、同タンクとは別設した廃液タンクに接続したことを特徴とする液滴吐出ヘッドの付着物除去方法。
【請求項4】
請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの付着物除去方法において、
前記洗浄キャップ内に、吸収材を配設し、同吸収材に前記溶解液を含浸させたことを特徴とした吐出ヘッドの付着物除去方法。
【請求項5】
請求項4に記載の液滴吐出ヘッドの付着物除去方法において、
前記吸収材は、前記洗浄キャップと前記ノズルプレートが当接しているとき、前記ノズルプレートに当接することを特徴とする液滴吐出ヘッドの付着物除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−78199(P2009−78199A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−247499(P2007−247499)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】