説明

液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法、液滴吐出ヘッドの駆動電圧決定方法、液滴吐出装置および液滴吐出ヘッドの吐出重量測定装置

【課題】液滴吐出ヘッドの吐出重量を精度良く測定することができる液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法を提供することを課題としている。
【解決手段】電子天秤の試料受容部71に対し、機能液滴吐出ヘッド1の予備吐出を実施する予備吐出工程と、予備吐出工程の後、試料受容部71に対し、機能液滴吐出ヘッド1の測定吐出を実施する測定吐出工程と、測定吐出工程の後、測定吐出により試料受容部71が受容した機能液の重量を測定する重量測定工程と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性の高い溶媒を含む機能液を吐出するインクジェット方式の液滴吐出ヘッドにおける吐出重量を、電子天秤を用いて測定する液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法、液滴吐出ヘッドの駆動電圧決定方法、液滴吐出装置および液滴吐出ヘッドの吐出重量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、吐出検査装置として、液滴吐出ヘッドの機能液吐出重量をノズル列単位で測定するものが知られている(特許文献1参照)。この吐出検査装置は、液滴吐出ヘッドからの機能液を受容する試料受容部を有すると共に、受容した液滴の重量を測定する電子天秤と、液滴吐出ヘッドの予備吐出(捨て吐出)を受けるフラッシングボックスと、を備えている。
【特許文献1】特開2008−233833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記フラッシングボックスは、重量測定に先立ち、機能液の吐出状態を安定させるための予備吐出を受けるために用いられている。すなわち、フラッシングボックスに捨て吐出を行った後、電子天秤で重量測定を行う構成を有している。
しかしながら、このような重量測定方法では、安定した測定吐出を実施することは可能になるものの、試料受容部に測定吐出を行うと、その瞬間から試料受容部に受容した液滴の気化(揮発)が始まるため、液滴吐出ヘッドの吐出重量を精度良く測定することができないという問題があった。特に、複数のノズル列を有する液滴吐出ヘッドでは、最初に重量測定を行ったノズル列と、その次以降に重量測定を行ったノズル列との間で、周囲雰囲気の変化による測定結果のバラツキが生じる。
【0004】
本発明は、液滴吐出ヘッドの吐出重量を精度良く測定することができる液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法、液滴吐出ヘッドの駆動電圧決定方法、液滴吐出装置および液滴吐出ヘッドの吐出重量測定装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法は、揮発性の高い溶媒を含む機能液を吐出するインクジェット方式の液滴吐出ヘッドにおける吐出重量を、電子天秤を用いて測定する液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法であって、電子天秤の試料受容部に対し、液滴吐出ヘッドの予備吐出を実施する予備吐出工程と、予備吐出工程の後、試料受容部に対し、液滴吐出ヘッドの測定吐出を実施する測定吐出工程と、測定吐出工程の後、測定吐出により試料受容部が受容した機能液の重量を測定する重量測定工程と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
この場合、予備吐出工程では、試料受容部の直上の雰囲気が、揮発した溶媒により飽和雰囲気となるように、予備吐出を実施することが好ましい。
【0007】
本発明の液滴吐出ヘッドの吐出重量測定装置は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドにおける吐出重量を測定する吐出重量測定装置であって、揮発性の高い溶媒を含む機能液を吐出する液滴吐出ヘッドと、液滴吐出ヘッドから吐出された機能液を受容する試料受容部を有すると共に、受容した液滴の重量を測定する電子天秤と、液滴吐出ヘッドおよび電子天秤を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、試料受容部に対し、液滴吐出ヘッドの予備吐出を実施する予備吐出動作と、予備吐出動作の後、試料受容部に対し、液滴吐出ヘッドの測定吐出を実施する測定吐出動作と、測定吐出動作の後、電子天秤によって、測定吐出により試料受容部が受容した機能液の重量を測定する重量測定動作と、を実行させることを特徴とする。
【0008】
これらの構成によれば、測定吐出の実施に先立って、試料受容部に予備吐出を実施すると、吐出した機能液の溶媒が気化(揮発)して、試料受容部の上部の雰囲気が加湿雰囲気(飽和雰囲気)となる。これにより、測定吐出を実施した際には、加湿雰囲気によって、試料受容部上の機能液の溶媒が気化しにくくなるため、気化に依存した測定結果のバラツキを抑えることができる。特に、試料受容部の上部の雰囲気が、飽和雰囲気となるように、予備吐出を行うことで、測定吐出された溶媒の気化を更に抑えることができる。
【0009】
上記の液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法において、試料受容部は、受容した機能液を溜める受容容器と、受容容器の上部に受容容器を閉塞するように設けた吸収材と、を有し、予備吐出工程および測定吐出工程では、吸収材に対し予備吐出および測定吐出をそれぞれ実施することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、予備吐出によって、吸収材が湿った状態と成るため、測定吐出を実施した際に、湿った吸収材によって、受容容器内の機能液が気化することを抑えることができる。特に、吸収材が受容容器の上部に設けられているため、液滴吐出ヘッドを吸収材に近づけて測定吐出することができ、飛行中の機能液からの溶媒の気化を抑制することができる。また、吸収材が、液滴吐出ヘッドからの機能液を受けると、その機能液が吸収材から滴下し、受容容器に溜まるため、吸収材が飽和状態になることがなく、吸収材が吸収不能になることを抑えることができる。
【0011】
この場合、液滴吐出ヘッドは、複数の吐出ノズルを列設して成る複数のノズル列を有し、予備吐出工程の後、ノズル列毎に、測定吐出工程および重量測定工程を繰り返すことが好ましい。
【0012】
単に、ノズル列毎に測定吐出および重量測定を繰り返すと、最初のノズル列を測定する際のみ、試料受容部の上部が加湿雰囲気となっていないため、複数のノズル列において、同一の条件で測定を行うことができないという問題がある。
上記の構成によれば、予備吐出を実施した後、ノズル列毎に測定吐出および重量測定を繰り返すことで、最初のノズル列を測定する際にも、受容容器の上部が加湿雰囲気となる。これにより、複数のノズル列において、同一の条件で測定を行うことができる。
【0013】
本発明の液滴吐出ヘッドの駆動電圧決定方法は、上記の液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法による測定結果に基づいて、液滴吐出ヘッドの適正駆動電圧を決定する駆動電圧決定工程を、備えたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、精度良く吐出重量を測定することができる吐出重量測定方法による測定結果を用いて、適正駆動電圧を決定することにより、適正駆動電圧を適切に決定することができる。
【0015】
本発明の液滴吐出装置は、液滴吐出ヘッドに対しワークを移動させながら、液滴吐出ヘッドから機能液を吐出してワークに描画を行う液滴吐出装置であって、上記の液滴吐出ヘッドの駆動電圧決定方法によって決定された適正駆動電圧に基づいて、液滴吐出ヘッドの適正駆動電圧を設定する駆動電圧設定手段と、設定した適正駆動電圧に基づいて、液滴吐出ヘッドを吐出駆動する駆動制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、適正駆動電圧を適切に決定することができる駆動電圧決定方法により、決定した適正駆動電圧を用いることで、描画処理を精度良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係る吐出重量測定方法を適用した機能液滴吐出ヘッドの吐出検査装置(吐出重量測定装置)について説明する。この吐出検査装置は、キャリッジに搭載する前の機能液滴吐出ヘッド(液滴吐出ヘッド)の単体検査を行うものであり、1の機能液滴吐出ヘッドに対し、吐出の有無を判定する吐出検査をはじめ、飛行検査、飛行速度、吐出量測定等を実施する。そこで先ず、吐出検査装置の説明に先立ち、検査対象となる機能液滴吐出ヘッドについて説明する。なお、検査吐出および描画吐出に用いる機能液として、揮発性の高い溶媒を含む機能液を用いる。
【0018】
図1ないし図3に示すように、機能液滴吐出ヘッド1は、いわゆるピエゾ方式を採用したいわゆる2連のインクジェットヘッド(インクジェット方式の液滴吐出ヘッド)であり、2連の接続針5を有する機能液導入部2と、機能液導入部2に連なる2連のヘッド基板3と、ヘッド基板3の下方に連なり機能液を吐出するヘッド本体4と、を備えている(図1(a)参照)。
【0019】
機能液導入部2は、一対の接続針5を有しており、配管アダプタ(図示省略)を介して機能液供給ユニット53(図4参照)から機能液の供給を受けるようになっている。ヘッド基板3には、2連のコネクタ6,6が設けられており、各コネクタ6はフレキシブルフラットケーブル(図示省略)を介して吐出検査装置31の制御装置7(図6参照)に接続されている。そして、この制御装置7から出力された駆動波形が各コネクタ6を介して各圧電素子(ピエゾ素子)17に印加されることで、各吐出ノズル21から機能液が吐出される。
【0020】
図2および図3に示すように、ヘッド本体4は、圧電素子17等で構成される2連のポンプ部11と、複数の吐出ノズル21が形成されたノズル面25を有するノズルプレート12と、を有している。各ポンプ部11は、吐出ノズル21の数に対応する圧電素子17を収容した機構部13と、機能液を貯留する貯留部14と、から構成されている。貯留部14は、圧電素子17の数に対応し、機能液を一時的に貯めるキャビティ15と、各キャビティ15に供給する機能液を溜めると共に上記の機能液導入部2に連通する共通室16と、から構成されている。機能液供給ユニット53から供給された機能液は、機能液導入部2を介して共通室16に流れ込む。そして、圧電素子17に電圧を印加して変形させることで、キャビティ15の体積変化を利用して共通室16からキャビティ15に機能液を導入すると共に、吐出ノズル21から機能液を吐出する。
【0021】
ノズルプレート12は、キャビティ15に貯留された機能液を吐出する吐出ノズル21が多数形成されている。多数の吐出ノズル21は、相互に平行、且つ半ピッチ位置ズレして列設された2列のノズル列22(以下、第1ノズル列22aおよび第2ノズル列22bと記載)を構成しており、各ノズル列22は、等ピッチで並べた180個の吐出ノズル21で構成されている(図1(b)参照)。この場合、180個の吐出ノズル21のうち、両外端に位置する各10個の吐出ノズル21は、無効吐出ノズル23であり、実際の描画には使用しない。そのため、吐出検査では、無効吐出ノズル23(計20個)を除く有効吐出ノズル24(計160個)について吐出検査を実施する。
【0022】
次に、図4を参照して、上記した機能液滴吐出ヘッド1の吐出性能を検査する吐出検査装置31について説明する。吐出検査装置31は、機台32と、機台32上に載置され、機能液滴吐出ヘッド1の吐出性能を検査するヘッド検査装置33と、同様に機台32上に載置され、機能液滴吐出ヘッド1の機能維持および回復を行うメンテナンス装置34と、を有しておりチャンバ35内に収容されている。また、チャンバ35外には、制御装置(制御手段)7(図6参照)が備えられており、機能液滴吐出ヘッド1、ヘッド検査装置33およびメンテナンス装置34を統括的に制御する。吐出検査装置31は、機能液滴吐出ヘッド1を1つずつ検査すべく、メンテナンス装置34により機能液滴吐出ヘッド1の機能維持・回復を行いながら、ヘッド検査装置33により機能液を吐出して、機能液滴吐出ヘッド1の吐出性能を検査する。
【0023】
メンテナンス装置34は、吐出ノズル21における機能液の増粘や目詰まりによる吐出不良を解消する吸引装置36と、吸引装置36と並ぶように配設され、機能液滴吐出ヘッド1のノズル面25を払拭するワイピング装置37と、を有している。
【0024】
吸引装置36は、機能液滴吐出ヘッド1のノズル面25に密接すると共に、R・G・B色に対応した3つのキャップ41と、吸引チューブ(図示省略)を介して3つのキャップ41に接続されたイジェクター(図示省略)と、を有している。吸引装置36は、各キャップ41を機能液滴吐出ヘッド1のノズル面25に密接させ、イジェクターにより吸引を行うことで、吐出ノズル21の目詰まり等による吐出不良を解消する。
【0025】
ワイピング装置37は、ノズル面25に当接するワイピングシート42と、ワイピングシート42を繰り出すと共に巻き取るシート送り機構43(図6参照)と、を有している。ワイピング装置37は、ワイピングシート42を吐出ノズル21のノズル面25に押し当て、吐出ノズル21をXYテーブル52によりX軸方向に前後させることで、吸引処理後の機能液滴吐出ヘッド1のノズル面25を払拭する。
【0026】
ヘッド検査装置33は、1の機能液滴吐出ヘッド1が工具レスでセットされるヘッドホルダ51を有し、機能液滴吐出ヘッド1をX軸方向およびY軸方向に移動させるXYテーブル52と、供給チューブ(図示省略)を介して機能液滴吐出ヘッド1に機能液を供給する機能液供給ユニット53と、主に吐出された機能液の飛行曲がりや飛行速度を検査する飛行検査ユニット54と、吐出された機能液の吐出重量を測定する重量測定ユニット55と、ガラス基板64を載置するターゲットステージ56と、を備えている。機能液供給ユニット53は、XYテーブル52に付設され、飛行検査ユニット54、重量測定ユニット55およびターゲットステージ56は、XYテーブル52によりX軸方向に移動する機能液滴吐出ヘッド1の移動軌跡の下方に臨むよう、機台32上に並べて配設されている。
【0027】
ヘッド検査装置33により機能液滴吐出ヘッド1の吐出性能を検査する場合は、機能液供給ユニット53から機能液滴吐出ヘッド1に機能液を供給しつつ、XYテーブル52により機能液滴吐出ヘッド1をX軸方向およびY軸方向に移動させて、飛行検査ユニット54、重量測定ユニット55およびターゲットステージ56にそれぞれ臨ませて、各検査を行う。
【0028】
機能液供給ユニット53は、R・G・B色の機能液をそれぞれ貯留する3つの機能液タンク61を有しており、各機能液タンク61は、機能液滴吐出ヘッド1より上方に配設され、セットした機能液滴吐出ヘッド1に応じて選択的に使用される。このため、機能液は、自然水頭により各機能液タンク61から各供給チューブを介して機能液滴吐出ヘッド1へ供給される。
【0029】
飛行検査ユニット54は、パルス光源であるパルスレーザを有する照明部65と、照明部65に対向して配置され、パルスレーザによるパルス光を受光する顕微鏡カメラ66と、機能液滴吐出ヘッド1から吐出された機能液を受ける機能液受け部67と、を備えている。飛行速度の測定や飛行曲がりの検査を行う場合、照明部65と顕微鏡カメラ66を駆動させた状態で機能液を吐出する。吐出された機能液は、照明部65と顕微鏡カメラ66との間のパルスレーザを遮って、機能液受け部67に着弾する。そして、飛行検査ユニット54により高速度撮影された撮影結果に基づいて、飛行速度が計測されると共に、飛行曲がりがあるか否か、また吐出抜けがあるか否かを検査する。
【0030】
ターゲットステージ56は、体積測定用のガラス基板64を載置するものである。ここに載置したガラス基板64に対して、機能液滴吐出ヘッド1により検査吐出を実施して、複数の着弾ドットをガラス基板64に形成する。そして、ガラス基板64は、着弾した液滴を自然乾燥させた後、別体の体積測定装置(図示省略)に移送され、着弾ドットの個々の吐出量(体積)を測定する。
【0031】
図5に示すように、重量測定ユニット55は、電子天秤で構成されており、機能液滴吐出ヘッド1から吐出された機能液を受ける試料受容部71と、試料受容部71内の機能液の重量を測定する天秤本体72と、を備えている。重量測定ユニット55により機能液の吐出重量を測定する場合は、試料受容部71にノズル列22単位で数万発の機能液を吐出し、天秤本体72によりその機能液の吐出重量を測定する。なお、ここで測定した吐出重量に基づいて、適正駆動電圧が決定する。この適正駆動電圧は、重量測定後の検査吐出や描画吐出の基準となる電圧である。
【0032】
試料受容部71は、受容した機能液を溜める受容容器73と、受容容器73の上部に受容容器73を閉塞(閉蓋)するように設けた吸収材74とを有しており、天秤本体72に着脱自在に設けられている。吸収材74は、機能液滴吐出ヘッド1からの測定吐出を受けるものであり、吸収材74で受けた機能液は、その下部に配設された受容容器73に滴下して、受容容器73に溜まるようになっている。
【0033】
図6に示すように、制御装置7は、各種ドライバを有する駆動部81と、各部に接続され、吐出検査装置31全体の制御を行う制御部82と、を備えている。駆動部81には、機能液滴吐出ヘッド1を制御するヘッドドライバ83と、XYテーブル52を駆動させるヘッド移動ドライバ84と、ワイピング装置37のワイピングシート42をシート送りするシート送りドライバ85と、吸引装置36のキャップ41をノズル面25に対して昇降させるキャップドライバ86と、が備えられている。
【0034】
制御部82には、各手段を接続するためのインタフェース91と、一時的に記憶可能な記憶領域を有し、制御処理のための作業領域として使用されるRAM92と、各種記憶領域を有し、制御プログラムや制御データを記憶するROM93と、各手段からの各種データ等を記憶すると共に、各種データを処理するためのプログラム等を記憶するハードディスク94と、ROM93やハードディスク94に記憶されたプログラム等に従い、各種データを演算処理するCPU95と、これらを互いに接続するバス96と、が備えられている。
【0035】
そして、制御部82は、各部からの各種データを、インタフェース91を介して入力すると共に、ハードディスク94に記憶された(または、CD−ROMドライブ等により順次読み出される)プログラムに従ってCPU95に演算処理させ、その処理結果を、駆動部81(各種ドライバ)を介して各部に出力する。これにより、吐出検査装置31全体が制御され、各種処理が行われる。
【0036】
ここで、図7を参照して、本吐出検査装置31における機能液滴吐出ヘッド1の吐出検査について説明する。なお、この吐出検査は、機能液滴吐出ヘッド1が、ヘッドホルダ51に予めセットされている状態にて行われるものとする。
【0037】
図7に示すように、まず、制御部82は、機能液滴吐出ヘッド1、および機能液滴吐出ヘッド1に接続した供給チューブ内に機能液を充填する初期充填工程を実施する(S1)。すなわち、XYテーブル52により、機能液滴吐出ヘッド1を吸引装置36に臨ませて、吸引装置36により機能液滴吐出ヘッド1を吸引し、機能液を充填する。その後、機能液滴吐出ヘッド1を駆動して、ウォームアップ(機能液滴吐出ヘッド1の温度上昇)を実施すると共に、機能液滴吐出ヘッド1をワイピング装置37に臨ませてワイピング装置37により、ノズル面25を拭き取って初期充填を終了する。
【0038】
初期充填が終了したら、トリートメントフラッシング工程を実施する(S2)。すなわち、機能液滴吐出ヘッド1を重量測定ユニット55に臨ませて、予備吐出を実施する。これにより、クリーニング後に、機能液が一定量捨て吐出されるため、一定量吐出した状態から検査を行うことができる。例えば、クリーニング後の初期段階では、異常吐出が発現せず、一定量吐出すると異常吐出が発現する場合があり、トリートメントフラッシングを実施することで、このような検査不備を防止することができる。
【0039】
次に、機能液滴吐出ヘッド1を飛行検査ユニット54に臨ませて、各有効吐出ノズル24の飛行速度の測定工程を実施する(S3)。吐出された機能液滴を、飛行検査ユニット54により高速度撮影し、その撮影結果に基づいて、飛行速度を計測する。かかる際、飛行曲がり、吐出抜け、および異常吐出の検査も同時に行い、これらの検査により機能液滴吐出ヘッド1が不良と判断された場合、本動作を終了する。
【0040】
その後、機能液滴吐出ヘッド1を重量測定ユニット55に臨ませて、吐出重量の重量測定工程を実施する(S4)。重量測定工程では、ノズル列22単位で吐出駆動を実施し、ノズル列22単位での吐出重量を測定する。この測定結果に基づいて、ノズル列22単位で、検査吐出に用いる適正駆動電圧を決定する(駆動電圧決定工程)。具体的には、目標吐出重量を吐出するための、およその電圧値があり、各ノズル列22において、その電圧値に前後する2つの電圧値で、重量測定を実施する。その後、当該測定結果(2つの電圧値での各吐出重量)に基づいて、電圧値と吐出重量との一次関数を求め、目標吐出重量をその一次関数に代入することで、目標吐出量に対する電圧値を算出する。ここで求めた電圧値を適正駆動電圧として決定する。
【0041】
次に、機能液滴吐出ヘッド1をターゲットステージ56に臨ませて、ターゲットステージ56上のガラス基板64に対し検査吐出工程を実施する(S5)。これにより、ガラス基板64上に複数の着弾ドットが形成される。
【0042】
最後に、機能液滴吐出ヘッド1を吸引装置36に臨ませて、機能液滴吐出ヘッド1をキャップ41によってキャッピングを実施する(S6)。これにより、機能液滴吐出ヘッド1の保湿状態が維持され、本動作を終了する。
【0043】
次に、図8および図9を参照して、重量測定工程(S4)の詳細について説明する。図8に示すように、まず、制御部82は、XYテーブル52により、機能液滴吐出ヘッド1をY軸方向に移動させて、機能液滴吐出ヘッド1の第1ノズル列22aを、試料受容部71の吸収材74上(吸収材74の中心位置)に臨ませる(S11)(図9(a)参照)。第1ノズル列22aを吸収材74上に臨ませたら、予備吐出工程(予備吐出工程および予備吐出動作)を実施する(S12)(図9(b)参照)。予備吐出工程では、全ノズル列22の有効吐出ノズル24を吐出駆動して、吸収材74(試料受容部71)に対し、予備吐出を実施する。当該予備吐出では、吸収材74(吸収材74の中心位置)の直上の雰囲気が、揮発した溶媒により飽和雰囲気となるように、全ノズル列22の有効吐出ノズル24を連続して吐出駆動する。なお、かかる際、第1ノズル列22a内の有効吐出ノズル24のみ、吐出駆動する構成であっても良い。また、飽和雰囲気を効率良く形成すべく、第1ノズル列22aおよび第2ノズル列22bで、測定吐出を行う位置(吸収材74の中心位置)を挟み込むような位置に機能液滴吐出ヘッド1を移動し、両ノズル列22a,22bの有効吐出ノズル24を吐出駆動するようにしても良い。
【0044】
予備吐出工程が終了したら、第1ノズル列22aの測定吐出である第1測定吐出工程(測定吐出工程および測定吐出動作)を実施する(S13)(図9(c)参照)。第1測定吐出工程では、第1ノズル列22a内の有効吐出ノズル24を吐出駆動(数万発、機能液を吐出する)して、吸収材74に対し、測定吐出を実施する。これにより、受容容器73内に第1測定吐出工程で吐出した機能液が溜まる。その後、天秤本体72により、第1測定吐出工程で吐出された機能液の重量を測定する第1吐出重量測定工程(吐出重量測定工程および吐出重量測定動作)を実施する(S14)。第1吐出重量測定工程では、第1測定吐出工程の前後における試料受容部71(受容容器73)の重量の差分を測定し、それを、第1測定吐出工程で吐出された機能液滴の吐出重量として取得する。
【0045】
第1ノズル列22aの吐出重量測定が終了したら、今度は、第2ノズル列22bの吐出重量を測定すべく、XYテーブル52により機能液滴吐出ヘッド1をY軸方向に移動して、第2ノズル列22bを吸収材74上(吸収材74の中心位置)に臨ませる(S15)(図9(d)参照)。第2ノズル列22bを吸収材74上に臨ませたら、第2ノズル列22bの測定吐出である第2測定吐出工程(測定吐出工程および測定吐出動作)を実施する(S16)(図9(e)参照)。第2測定吐出工程では、第2ノズル列22b内の有効吐出ノズル24を吐出駆動(数万発、機能液を吐出する)して、吸収材74に対し、測定吐出を実施する。この結果、受容容器73内に第2測定吐出工程で吐出した機能液が溜まる。その後、天秤本体72により、第2測定吐出工程で吐出された機能液滴の吐出重量を測定する第2吐出重量測定工程(重量測定工程および重量測定動作)を実施する(S17)。第2吐出重量測定工程では、第2測定吐出工程の前後における試料受容部71(受容容器73)の重量の差分を測定し、それを、第2測定吐出工程で吐出された機能液滴の吐出重量として取得する。
【0046】
以上のような構成によれば、測定吐出の実施に先立って、試料受容部71に予備吐出を実施すると、吐出した機能液の溶媒が気化(揮発)して、試料受容部71の上部の雰囲気が加湿雰囲気(飽和雰囲気)となる。これにより、測定吐出を実施した際には、加湿雰囲気によって、試料受容部71上の機能液の溶媒が気化しにくくなるため、気化に依存した測定結果のバラツキを抑えることができる。特に、試料受容部71の上部の雰囲気が、飽和雰囲気となるように、予備吐出を行うことで、溶媒の気化を更に抑えることができる。
【0047】
また、重量測定ユニット55が、受容容器73と、受容容器73の上部に受容容器73を閉塞するように設けた吸収材74と、を有する構成であることにより、予備吐出によって、吸収材74が湿った状態と成るため、測定吐出を実施した際に、湿った吸収材74によって、受容容器73内の機能液が気化することを抑えることができる。特に、吸収材74が受容容器73の上部に設けられているため、機能液滴吐出ヘッド1を吸収材74に近づけて測定吐出することができ、飛行中の機能液からの溶媒の気化を抑制することができる。また、吸収材74が、機能液滴吐出ヘッド1からの機能液を受けると、その機能液が吸収材74から滴下し、受容容器73に溜まるため、吸収材74が飽和状態になることがなく、吸収材74が吸収不能になることを抑えることができる。
【0048】
さらに、機能液滴吐出ヘッド1が複数のノズル列22を有する構成において、予備吐出を実施した後、ノズル列22ごとに測定吐出および重量測定を繰り返すことにより、複数のノズル列22において、同一の条件(加湿雰囲気)で測定を行うことができる。
【0049】
またさらに、精度良く吐出重量を測定することができる吐出重量測定方法による測定結果を用いて、適正駆動電圧を決定することにより、適正駆動電圧を適切に決定することができる。
【0050】
ここで図10を参照して、上記検査後の機能液滴吐出ヘッド1を用いた液滴吐出装置201について説明する。この液滴吐出装置201は、フラットパネルディスプレイの製造ラインに組み込まれており、例えば、特殊なインクや発光性の樹脂液である機能液を導入した機能液滴吐出ヘッド1を用い、液晶表示装置のカラーフィルタや有機EL装置の各画素となる発光素子等を形成するものである。
【0051】
図10に示すように、液滴吐出装置201は、石定盤に支持されたX軸支持ベース202上に配設され、主走査方向となるX軸方向に延在してワークWをX軸方向に移動させるX軸テーブル203と、複数本の支柱204を介してX軸テーブル203を跨ぐように架け渡された1対のY軸支持ベース205上に配設され、主走査方向(X軸方向)に直交した副走査方向となるY軸方向に延在するY軸テーブル206と、Y軸テーブル206に移動自在に吊設され、複数個(12個)の機能液滴吐出ヘッド1が個々にキャリッジに搭載された10個のキャリッジユニット207と、複数個の機能液滴吐出ヘッド1の機能維持・機能回復処理を行うメンテナンス機構208と、から構成されている。さらに、液滴吐出装置201は、これらの装置を、温度および湿度が管理された雰囲気内に収容するチャンバ機構209と、チャンバ機構209を貫通して、機能液滴吐出ヘッド1に機能液を供給する機能液供給機構210と、液滴吐出装置201の各構成要素を制御する制御コンピュータ(図示省略)と、を備えている。液滴吐出装置201は、X軸テーブル203およびY軸テーブル206の駆動と同期して機能液滴吐出ヘッド1を吐出駆動させることにより、機能液供給機構210から供給された3色の機能液滴を吐出させ、ワークWに所定の描画パターンが描画される。
【0052】
制御コンピュータは、各機能液滴吐出ヘッド1に対し、吐出検査装置31で決定した適正駆動電圧に基づいて、当該機能液滴吐出ヘッド1の適正駆動電圧を設定する(適正駆動電圧設定手段)。制御コンピュータは、ワークWの描画に際し、設定した適正駆動電圧によって、各機能液滴吐出ヘッド1の吐出制御を行う(駆動制御手段)。
【0053】
このように、適正駆動電圧を適切に決定することができる駆動電圧決定方法により、決定した適正駆動電圧を用いることで、描画処理を精度良く行うことができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、搭載前の機能液滴吐出ヘッド1を検査する吐出検査装置31に、本発明の機能液滴吐出ヘッド1の吐出重量測定方法を適用したが、液滴吐出装置201に設けられ、液滴吐出装置201に搭載した機能液滴吐出ヘッド1の吐出重量を測定する吐出重量測定機構に、本発明の機能液滴吐出ヘッド1の吐出重量測定方法を適用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】機能液滴吐出ヘッドの表裏外観斜視図である。
【図2】機能液滴吐出ヘッドの断面図である。
【図3】ポンプ部の部分分解斜視図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかる吐出検査装置を模式的に示した平面図である。
【図5】重量測定ユニット廻りを模式的に示した断面図である。
【図6】吐出検査装置の主制御系のブロック図である。
【図7】吐出検査装置の吐出検査を示したフローチャートである。
【図8】重量測定工程について示したフローチャートである。
【図9】重量測定工程について示した説明図である。
【図10】液滴吐出装置を模式的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1:機能液滴吐出ヘッド、 7:制御装置、 31:吐出検査装置、 55:重量測定ユニット、 71:試料受容部、 73:受容容器、 74:吸収材、 201:液滴吐出装置、 W:ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性の高い溶媒を含む機能液を吐出するインクジェット方式の液滴吐出ヘッドにおける吐出重量を、電子天秤を用いて測定する液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法であって、
前記電子天秤の試料受容部に対し、前記液滴吐出ヘッドの予備吐出を実施する予備吐出工程と、
前記予備吐出工程の後、前記試料受容部に対し、前記液滴吐出ヘッドの測定吐出を実施する測定吐出工程と、
前記測定吐出工程の後、前記測定吐出により前記試料受容部が受容した機能液の重量を測定する重量測定工程と、を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法。
【請求項2】
前記予備吐出工程では、前記試料受容部の直上の雰囲気が、揮発した前記溶媒により飽和雰囲気となるように、前記予備吐出を実施することを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法。
【請求項3】
前記試料受容部は、受容した機能液を溜める受容容器と、前記受容容器の上部に前記受容容器を閉塞するように設けた吸収材と、を有し、
前記予備吐出工程および前記測定吐出工程では、前記吸収材に対し前記予備吐出および前記測定吐出をそれぞれ実施することを特徴とする請求項1または2に記載の液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法。
【請求項4】
前記液滴吐出ヘッドは、複数の吐出ノズルを列設して成る複数のノズル列を有し、
前記予備吐出工程の後、前記ノズル列毎に、前記測定吐出工程および前記重量測定工程を繰り返すことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの吐出重量測定方法による測定結果に基づいて、前記液滴吐出ヘッドの適正駆動電圧を決定する駆動電圧決定工程を、備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッドの駆動電圧決定方法。
【請求項6】
前記液滴吐出ヘッドに対しワークを移動させながら、前記液滴吐出ヘッドから機能液を吐出して前記ワークに描画を行う液滴吐出装置であって、
請求項5に記載の液滴吐出ヘッドの駆動電圧決定方法によって決定された適正駆動電圧に基づいて、前記液滴吐出ヘッドの適正駆動電圧を設定する駆動電圧設定手段と、
設定した前記適正駆動電圧に基づいて、前記液滴吐出ヘッドを吐出駆動する駆動制御手段と、を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
インクジェット方式の液滴吐出ヘッドにおける吐出重量を測定する吐出重量測定装置であって、
揮発性の高い溶媒を含む機能液を吐出する前記液滴吐出ヘッドと、
前記液滴吐出ヘッドから吐出された機能液を受容する試料受容部を有すると共に、受容した液滴の重量を測定する電子天秤と、
前記液滴吐出ヘッドおよび前記電子天秤を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記試料受容部に対し、前記液滴吐出ヘッドの予備吐出を実施する予備吐出動作と、
前記予備吐出動作の後、前記試料受容部に対し、前記液滴吐出ヘッドの測定吐出を実施する測定吐出動作と、
前記測定吐出動作の後、前記電子天秤によって、前記測定吐出により前記試料受容部が受容した機能液の重量を測定する重量測定動作と、を実行させることを特徴とする液滴吐出ヘッドの吐出重量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−119989(P2010−119989A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298035(P2008−298035)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】