説明

液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの保守方法

【課題】 液滴吐出装置のサイズをなるべく小さく抑えながら保守装置を配置できるとともに、必要な液滴吐出位置精度を確保できる液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの保守方法を提供する。
【解決手段】 保守ユニット61,62は、吸着テーブル19の下方位置(待機位置)に配置されている。保守動作時には、吸着テーブル19が保守ユニット61,62と干渉しない位置へ退避し、保守ユニット61,62の一方が上昇駆動して、保守装置44,47又は45,46が保守位置に配置される。これとほぼ同時期にキャリッジ18が移動して液滴吐出ヘッド15が保守装置と対応する所定の位置に配置され、液滴吐出ヘッド15の保守(キャッピングやクリーニング)が実施される。保守装置44〜47は、キャリッジ移動方向(Y軸方向)において、基板32に描画する走査時のキャリッジ18がとりうる最大移動範囲L内に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに対して液滴吐出ヘッドを相対的に移動させてワークに描画する液滴吐出装置に係り、特に液滴吐出ヘッドに対してクリーニングなどの保守を行う保守装置を備えた液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの保守方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに対して液滴を吐出する装置として、インクジェット式の液滴吐出装置が知られている。例えば特許文献1〜4に示された液滴吐出装置は、基板等のワークを載置してワークを一方向に移動させるスライドテーブルと、スライドテーブルの上方位置においてスライドテーブルの移動方向と直交する方向にガイドレールに沿って移動するインクジェットヘッド(液滴吐出ヘッド)とを備え、ワークに対して液滴を塗布していた。
【0003】
液滴吐出装置には、インクジェットヘッドのノズルの目詰まり、ヘッド表面への埃の付着、ヘッド内の液中に混入した気泡などに対応するため、クリーニング装置が設けられていた。クリーニング装置としては、ヘッドノズル面についた汚れと液滴が乾燥して固化したものを拭きとるワイピング装置、液滴を吐出してヘッド内の気泡や増粘した液体を排出するフラッシング装置、ノズル中の液の乾燥を防止するためにヘッド表面を覆い空気の流れを遮断するキャッピング装置などの保守装置がある。
【0004】
クリーニング装置の配置位置としては、インクジェットヘッドのガイドレールの下方であってスライドテーブルの側方位置に配置されたもの(特許文献1)や、スライドテーブルのレールに沿って移動可能に設けられたもの(特許文献2,3)、スライドテーブル上に設置したもの(特許文献4)などが知られていた。
【0005】
【特許文献1】特開平10−206624号公報(第4頁、第1図)
【特許文献2】特開2001−171135号公報(第4頁、第1図)
【特許文献3】特開2003−48312号公報(第6頁、第1図)
【特許文献4】特開2003−230858号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示された液滴吐出装置では、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出して描画を行う走査のときにキャリッジが移動しうる最大走査範囲(描画動作範囲)の外側にクリーニング装置が設置されていたため、液滴吐出ヘッドをクリーニング装置と対応する位置まで移動させるために最大走査範囲を超えた位置までキャリッジを移動させる必要があった。この結果、キャリッジを案内するガイドレールが、最大走査範囲を超えた位置にまでキャリッジの移動ができるように相対的に長くなっていた。このことから、ガイドレールが長くなる分だけ液滴吐出装置が大型化する問題や、長さ増大によりガイドレールに機械的な撓みが生じ易くなって、液滴吐出ヘッドから吐出されて基板等のワーク上に着弾する液滴の位置精度(液滴吐出位置精度)を低下させる心配があるという問題があった。特に今後、基板等のワークが大型化するに伴い最大走査範囲が広くなってガイドレールを長くする必要があり、またキャリッジにカメラや計測装置など種々の付属装置が搭載されてキャリッジの重量が増すと、ガイドレールが一層撓みやすくなるため、液滴吐出位置精度のさらなる低下が心配される。
【0007】
また、スライドテーブルと同じレールに別の移動テーブルを設置しその上に保守装置を配置した特許文献2,3に示された液滴吐出装置は、ワークへの描画に必要なスライドテーブルの移動範囲よりも外側に保守装置を設ける構造であるため、液滴吐出装置のサイズがテーブル移動方向に大きくなるという問題があった。
【0008】
さらに、スライドテーブル上にクリーニング装置を設置した特許文献4に示された液滴吐出装置は、スライドテーブル上に基板載置領域以外にクリーニング装置の設置スペースを確保する必要があることから、スライドテーブルのサイズがテーブル移動方向にクリーニング装置の設置スペース分大きくなり、この場合も液滴吐出装置のサイズがテーブル移動方向に大きくなるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、液滴吐出装置のサイズをなるべく小さく抑えながら保守装置を配置できるとともに、必要な液滴吐出位置精度を確保できる液滴吐出装置及び液滴吐出ヘッドの保守方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の液滴吐出装置は、ワークを第1走査方向に移動させるテーブルと、ワークに液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを搭載するとともにガイド部材に沿って第2走査方向に移動するキャリッジと、液滴吐出ヘッドのクリーニングを含む保守に供する一つ以上の保守装置と、保守装置をテーブルと干渉しない待機位置と液滴吐出ヘッドの保守を行う保守位置とに移動させる移動手段とを備え、保守装置は、待機位置に配置されたときに少なくとも一部が第1走査方向においてテーブル上のワークの走査時の移動範囲として最大とりうるワーク最大走査範囲内に位置し、且つ、保守位置に配置されたときに少なくとも一部が第2走査方向においてキャリッジの走査時の移動範囲として最大とりうるキャリッジ最大走査範囲内に位置することを要旨とする。
【0011】
ここで、「ワーク最大走査範囲」とは、第1走査方向に最長のワークを載置したテーブルを、ワークに液滴を吐出して描画する走査のために最大ストロークで移動させたときに前記ワークがとりうる第1走査方向の移動範囲を指す。これは、最大ストロークで走査(移動)されるテーブルが移動方向の一端(仮に前端)にきたときにテーブル上の前記ワークの一端(前端)が位置する位置から、テーブルが移動方向の他端(仮に後端)にきたときに前記ワークの他端(後端)が位置する位置までの間の範囲に等しい。
【0012】
また、「キャリッジ最大走査範囲」とは、液滴吐出ヘッドから液滴を吐出して描画する走査時にキャリッジがとりうる最大移動範囲を指す。これは、キャリッジ走査方向に最長の長さのワークをテーブルに載置して走査し、当該ワークにキャリッジ走査方向に最大範囲の描画をするときのキャリッジの移動範囲に等しい。キャリッジ最大走査範囲は、キャリッジが右端に移動したときのキャリッジの右端面から、キャリッジが左端に移動したときのキャリッジの左端面の間の範囲とする。なお、テーブルの第1走査方向を主走査方向、キャリッジの第2走査方向を副走査方向としてもよいし、テーブルの第1走査方向を副走査方向、キャリッジの第2走査方向を主走査方向としてもよい。
【0013】
これによれば、保守装置が液滴吐出ヘッドの保守を実施する保守位置に配置されたとき、当該保守装置の少なくとも一部が、液滴吐出ヘッドにより液滴を吐出して描画を行う走査のときのキャリッジの最大走査範囲内に位置する。このため、描画を行う走査の際だけでなく、液滴吐出ヘッドの保守の際にも、キャリッジは最大走査範囲内で移動できれば足りる。よって、液滴吐出ヘッドの最大移動範囲を相対的に狭く設定することができ、ひいてはキャリッジのガイド部材を短くすることができる。ガイド部材を短くできれば、例えばキャリッジにカメラや計測装置等の付属装置を搭載するなどしてキャリッジが重くなったとしても、ガイド部材が撓みにくくなり、吐出位置の位置精度を維持できる。また、ガイド部材が短くなれば、液滴吐出装置のサイズをキャリッジ移動方向(第2走査方向)に小さくできる。
【0014】
また、保守装置は保守を終えると、移動手段により走査中のテーブルと干渉しない待機位置に配置される。待機位置に配置されたときに保守装置は少なくとも一部が、第1走査方向においてテーブル上に想定されるワーク載置領域が移動範囲としてとりうるワーク最大走査範囲内に位置する。ここで、特許文献2,3に記載された従来の液滴吐出装置にあっては、テーブルと共通のレールを利用するなどしてテーブルと同一方向(第1走査方向)に独立して移動可能な保守装置(クリーニング装置)であったので、テーブルの最大移動範囲の外側に保守装置(クリーニング装置)を配置しなければならず、装置の第1走査方向における大型化を招いていた。また、特許文献4に記載された従来の液滴吐出装置にあっても、テーブル上の端部(つまりテーブル上においてワーク載置領域に対し第1走査方向に隣接する端部)に保守装置(クリーニング装置)を搭載させていたことから、テーブル上に保守装置を搭載しない構成(つまり保守装置を搭載しない分だけテーブル長さが第1走査方向に短くなった構成)に比べ、走査時におけるテーブル最大移動範囲(テーブル最大走査範囲という)が長くなっていた。このため、特許文献4の装置においても第1走査方向の大型化を招いていた。これに対し、この発明の液滴吐出装置にあっては、保守装置が待機位置においてワーク最大走査範囲(テーブル最大走査範囲よりも通常狭い範囲)内に配置されているので、第1走査方向における装置の小型化を図ることができる。このように本発明の液滴吐出装置によれば、第2走査方向のみならず第1走査方向にも装置の小型化を図ることができる。以上より、液滴吐出装置の大型化をなるべく抑えながら保守装置を配置できるとともに、必要な液滴吐出位置精度を確保できる液滴吐出装置を提供できる。
【0015】
本発明の液滴吐出装置では、保守動作開始時には、テーブルが保守装置と干渉しないテーブル退避位置に退避するとともに保守装置が移動手段により待機位置から保守位置に移動し、保守動作終了後には、保守装置が移動手段により保守位置から待機位置に退避するようにしてもよい。
【0016】
これによれば、保守動作時に保守装置は少なくとも一部が最大移動範囲内に位置する保守位置に配置されるが、保守動作時以外はテーブルと干渉しない待機位置に配置されるので、描画する際のテーブルの走査を妨げることがない。また、待機位置は保守位置に移動可能な場所であれば自由に設定でき、液滴吐出装置を構成しやすくなる。
【0017】
本発明の液滴吐出装置では、保守装置は、液滴吐出ヘッドの軌道直下となるテーブルの下方位置を待機位置として配置され、移動手段は、保守装置を待機位置と保守位置の間で昇降させる昇降手段であることが望ましい。なお、本発明において、液滴吐出ヘッドの軌道とは、キャリッジがガイド部材に案内されて移動したときに一緒に移動する液滴吐出ヘッドの移動軌跡を指す仮想の軌道である。
【0018】
これによれば、保守装置の設置スペースが待機位置も含めてキャリッジ最大走査範囲内に収まるため、液滴吐出装置のサイズをキャリッジ走査方向に小さく抑えるのに有効であるうえ、保守装置の移動が昇降のみとなって移動手段を昇降手段のみで済ませられることから、移動手段を簡素な機構とすることができる。
【0019】
本発明の液滴吐出装置は、保守装置は複数備えられ、複数の保守装置は、液滴吐出ヘッドの軌道直下にキャリッジの移動方向に沿って一列に配列されていてもよい。
【0020】
これによれば、各種の保守機能を備えた複数の保守装置をキャリッジの最大走査範囲内に収めることができることから、キャリッジのガイドレールを必要最小限に近い長さとすることができ、液滴吐出装置のサイズを小型に抑えることができる。また、複数の保守装置が液滴吐出ヘッドの軌道直下にキャリッジ移動方向に沿って一列に配列されていることから、保守を行う際は、キャリッジを移動させて、保守装置の個々の保守位置まで液滴吐出ヘッドを移動させることで対応できるため、保守装置の移動は昇降のみで済み、移動手段を簡素な機構とすることができる。
【0021】
本発明の液滴吐出装置は、保守装置は複数備えられ、前記複数の保守装置は、前記テーブルの走査方向と略同一方向に並んで少なくとも一列に配列されるとともに、テーブルの下方位置を待機位置とし、移動手段は、複数の保守装置のうち少なくともそのとき保守に供される保守装置を、待機位置と液滴吐出ヘッドの軌道直下の中継位置との間でテーブルの走査方向と略平行な方向に移動させる第1走査方向移動手段と、中継位置と保守位置との間で保守装置を昇降させる昇降手段とを備えることが好ましい。
【0022】
これによれば、複数の保守装置がテーブル走査方向に並んで配列されていることから、キャリッジの移動範囲の限られたスペース内に、各保守装置の配設スペースをキャリッジ走査方向に広く確保しやすくなる。このため、各保守装置のサイズをキャリッジ走査方向に大きくすることができ、例えば保守装置に多様な機能を付与させることが可能となる。
【0023】
本発明の液滴吐出装置は、保守装置は、テーブルに対して液滴吐出ヘッドの軌道の延長上外側の位置を待機位置として配置されてもよい。
【0024】
これによれば、保守装置はテーブルに対し液滴吐出ヘッドの軌道延長上外側となるテーブルの側方位置を待機位置とし、待機位置においてテーブルと干渉しない。保守装置の待機位置から保守位置への移動は、保守装置をキャリッジの走査方向へ移動させれば済むので、移動手段を簡素な機構とすることができる。また、保守装置がテーブルの外側(側方)に位置しているため保守装置のメンテナンス等が容易となる。
【0025】
本発明の液滴吐出装置は、保守装置が複数備えられ、複数の保守装置は、キャリッジの走査方向に沿って一列に配列されており、移動手段は、保守装置を前記側方位置と保守位置との間で第2走査方向に移動させる第2走査方向移動手段を備えていてもよい。
【0026】
これによれば、複数の保守装置は、テーブルに対して液滴吐出ヘッドの軌道延長上外側の位置となるテーブルの側方位置を待機位置とし、キャリッジ走査方向に沿って一列に配列されているので、待機位置から保守位置への移動がキャリッジの走査方向と略同一方向への移動のみで済む。よって、移動手段を簡素な機構とすることができる。また、保守装置がテーブルの外側(側方)に位置しているため保守装置のメンテナンス等が容易となる。
【0027】
本発明の液滴吐出装置は、保守装置は複数備えられ、複数の保守装置は、待機位置において液滴吐出ヘッドの軌道延長上に一つが位置するとともにテーブルの走査方向に沿って一列に配列されており、移動手段は、複数の保守装置のうち保守に供する保守装置を、待機位置と液滴吐出ヘッドの軌道延長上の中継位置との間で第1走査方向に移動させる第1走査方向移動手段と、保守装置を中継位置と保守位置との間で第2走査方向に移動させる第2走査方向移動手段とを備えるようにしてもよい。
【0028】
これによれば、複数の保守装置は待機位置においてテーブルの側方位置にテーブル走査方向に沿って一列に配列されているので、複数の保守装置がテーブルの側方位置に配置されている割に、液滴吐出装置のサイズをキャリッジ走査方向に小さく抑えることができる。また、保守装置の保守位置への移動が待機位置から中継位置への第1走査方向の移動と、中継位置から保守位置への第2走査方向の移動との二方向の組合せによってなされるので、移動手段を比較的簡素な機構とすることができる。さらに、保守装置がテーブルの外側(側方)に位置しているため保守装置のメンテナンス等が容易となる。
【0029】
本発明の液滴吐出装置は、ワークを第1走査方向に移動させるテーブルと、ワークに液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを搭載するとともにガイド部材に沿って第2走査方向に移動するキャリッジと、液滴吐出ヘッドのクリーニングを含む保守に供する一つ以上の保守装置と、保守装置をテーブルと干渉しない待機位置と液滴吐出ヘッドの保守を行う保守位置とに移動させる移動手段とを備え、保守装置は待機位置においては走査中のテーブルと干渉しないテーブルの下方位置に配置され、移動手段は、保守装置を、待機位置と保守位置との間の移動過程において、待機位置の高さと保守位置の高さの間で昇降させる昇降手段を有することを要旨とする。
【0030】
これによれば、保守装置は保守をしない待機時には、走査中のテーブルと干渉しないテーブルの下方の待機位置に配置される。保守を実施する際は、移動手段により保守装置は待機位置から保守位置へ移動する。この移動過程において、待機位置の高さと保守位置の高さの間の移動(昇降)は昇降手段により行われる。保守装置は、待機位置においてテーブルの下側に配置され、保守位置においては液滴吐出ヘッドの保守を実施可能な位置に配置される。すなわち、保守装置は、常に、第1走査方向においてワーク最大移動範囲内に位置し、第2走査方向においてキャリッジの最大走査範囲内に位置する。従って、液滴吐出装置の大型化をなるべく抑えながら保守装置を配置できるとともに、必要な液滴吐出位置精度を確保できる液滴吐出装置を提供できる。
【0031】
本発明の液滴吐出装置では、前記保守装置による保守の開始に先立ち、前記キャリッジを移動させて前記保守装置の前記保守位置と対応する所定の位置に前記液滴吐出ヘッドを配置させてもよい。
【0032】
これによれば、保守の際は、キャリッジが移動して液滴吐出ヘッドを保守位置と対応する所定の位置に配置させるので、保守に先立って、液滴吐出ヘッドが軌道上のどこに位置しても、保守装置は常に決まった保守位置へ移動すればよい。よって、移動手段を簡素な機構で実現することができる。
【0033】
本発明の液滴吐出装置では、液滴吐出ヘッドのクリーニングに供するキャッピング装置、ワイピング装置、スラッシング装置のうち少なくとも一つを、前記保守装置として備えていてもよい。
【0034】
これによれば、液滴吐出装置は、キャッピング装置で液滴吐出ヘッドの乾燥を防止でき、ワイピング装置で表面の汚れを取り除くことができ、フラッシング装置で増粘した液や気泡の排出ができ、液滴の吐出を確実に行うように保守ができる。
【0035】
本発明の液滴吐出装置では、液滴吐出ヘッドから吐出される機能液の重量を測定する重量測定装置を、保守装置として備えていてもよい。
【0036】
これによれば、液滴吐出ヘッドから吐出される機能液の重量を測定することで、その測定結果から、例えば一滴当たりの吐出量が適量であるかどうかを判断して、適量となるように吐出量を調整することができるため、液滴吐出による描画品質を上げることができる。
【0037】
本発明の液滴吐出ヘッドの保守方法では、テーブルを保守装置と干渉しないテーブル退避位置へ移動させる工程と、保守装置を待機位置から保守位置へ移動させる工程と、キャリッジを移動させて保守位置の保守装置と対応する位置に液滴吐出ヘッドを配置する工程と、保守位置の保守装置に液滴吐出ヘッドを保守させる工程とを備えたことを要旨とする。なお、テーブルを移動させる工程と、液滴吐出ヘッドを移動させる工程は、この順番に限らず、同時でも良いし、逆の順番でもよい。さらに、保守装置を移動させる工程と、液滴吐出ヘッドを移動させる工程は、この順番に限らず、同時でも良いし、逆の順番でもよい。
【0038】
これによれば、保守の際は、テーブルがテーブル退避位置へ退避し、保守装置の保守位置への移動が可能となるので、保守装置は待機位置から保守位置へ移動する。これと前後して、キャリッジを移動させることにより液滴吐出ヘッドが保守位置の保守装置と対応する位置に配置される。こうして保守装置と液滴吐出ヘッドが対応する位置に配置されると保守装置による保守が実施される。例えば、テーブル上に保守装置の設置スペースを設けていないテーブルであっても、平面視において該テーブルと重なる位置に保守装置を待機させる構成をとることが可能となり、これにより液滴吐出装置のサイズを小さく抑えることが可能となる。なお、テーブルの退避工程と液滴吐出ヘッドの移動工程を、時期を重複させて実施したり、保守装置の保守位置への移動工程と液滴吐出ヘッドの移動工程を、時期を重複させて実施させたりすれば、保守に要する時間を短く済ませられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図5に従って説明する。
(第1の実施形態)
【0040】
まず、液滴吐出装置について説明する。図1は、液滴吐出装置の構成を示す斜視図である。液滴吐出システム1は、ワークとしての基板32の所定位置に機能液を液滴として吐出して付着させるための装置である。
【0041】
図1において、液滴吐出システム1は、液滴吐出装置10、基板供給装置16、コントロール装置17で構成されている。基板供給装置16は基板32を液滴吐出装置10内の所定の作業位置へ供給する。コントロール装置17は、液滴吐出装置10の全般の制御と基板供給装置16の制御を司る。
【0042】
液滴吐出装置10は、液滴吐出ヘッド15を下面に搭載したキャリッジ18と、液滴吐出ヘッド15の位置を制御するヘッド位置制御装置11と、基板32を所定位置に吸着する吸着テーブル19と、吸着テーブル19に載置された基板32の位置を補正する基板位置制御装置12と、液滴吐出ヘッド15に対して基板32を主走査移動させる主走査駆動装置13と、基板32に対して液滴吐出ヘッド15を副走査移動させる副走査駆動装置14と保守ユニット61,62(図2,図3参照)などにより構成されている。
【0043】
ヘッド位置制御装置11、基板位置制御装置12、主走査駆動装置13、副走査駆動装置14の各装置はベース30の上に設置される。また、それらの装置は必要に応じてカバー31によって覆われている。
【0044】
基板供給装置16は、基板32を収容する基板収容部20と、基板32を搬送するロボット21を有している。ロボット21は、床、地面等といった設置面に置かれる基台22と、基台22に対して昇降移動する昇降軸23と、昇降軸23を中心として回転する第1アーム24と、第1アーム24に対して回転する第2アーム25と、第2アーム25の先端下面に設けられた吸着パッド26とを有する。吸着パッド26は、エア吸引力によって基板32を吸着できる。
【0045】
液滴吐出ヘッド15の近傍には、キャリッジ18に設けられて液滴吐出ヘッド15と一体に移動するヘッド用カメラ48が配置されている。また、ベース30上に設けられた支持装置(図示せず)に支持された基板用カメラ49が基板32を撮影できる位置に配置される。
【0046】
ヘッド用カメラ48は、液滴の吐出状況を確認するためのものである。ヘッド用カメラ48のピントは基板32の表面に合うように調整され、液滴の着地点の位置精度の検査、液滴の吐出具合の検査に使用される。液滴吐出ヘッド15のノズルの汚れによる、吐出液の飛行曲がりの検査によりクリーニングタイミングを判断する。ヘッド用カメラ48は、撮像部と光源から構成され、撮像部はCCD式、電子式のいずれでもよい。
【0047】
キャリッジ18の下面に搭載された液滴吐出ヘッド15には複数のノズルが形成されている。液滴吐出ヘッド15は、例えば特許文献3に記載されたもののように、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドが複数配列されて構成されるものであってもよい。
【0048】
液滴吐出装置10を構成する土台としてベース30は、その上に設置されている吸着テーブル19等を含む構造物の水平度を確保するために設けられ、温度や湿度の影響(変形等)を受けにくい材質が使用されている。また、ベース30は床からの震動を受けにくくする除震装置(図示しない)を備え、固有震動数を低くするために重い材質が用いられている。本実施形態ではベース30の材質として石材を使用している。もちろん、ベース30に影響を及ぼさない温度や湿度に保たれた環境下で使用されるのであれば、金属など加工しやすい材質を用いることもできる。
【0049】
ベース30の上に基台55、その上に主走査駆動装置13が設置されている。図2に示すように、主走査駆動装置13は、ガイドレール50,51、可動台52、リニアモータ53、モータ支持台54などから構成されている。テーブルの直進性を良くするために、ガイドレール50,51と可動台52の摺動部には、空気を介在させたエアスライド方式が用いられている。摺動部は、ボールや円筒を介在させたリニアガイドを利用してもよい。駆動源としてリニアモータを使用したが、パルスモータとボールネジにて動力を伝達してもよい。
【0050】
可動台52の上部に、基板位置制御装置12が配置されている。基板位置制御装置12は、吸着テーブル19を回転させるものであり、パルスモータと減速装置により構成されている。減速装置は、ハーモニックドライブなどバックラッシュの発生しない機構が望ましい。基板32には位置決め用のマークが付けてあり、その位置を基板用カメラ49(図1参照)にて測定する。基準角度とのズレ量分だけ吸着テーブル19を回転し、基板32は角度を合わせられる。
【0051】
次に副走査駆動装置14について説明する。副走査駆動装置14は、基台55上に設置された門型の支持フレーム66により支持される。門型の支持フレーム66は、主走査駆動装置13を跨いで、両脚部73,74が主走査駆動装置13のガイドレール50,51とわずかな距離を隔てた外側に立設されている。
【0052】
副走査駆動装置14はY軸方向(第2走査方向)に動作し、X軸方向(第1走査方向)に動作する主走査駆動装置13と略直交する状態に配置されている。副走査駆動装置14は、門型の支持フレーム66の横架部分を構成するガイド部材としてのガイドレール71と、ガイドレール71に沿って移動するキャリッジ18とを有している。キャリッジ18とガイドレール71の摺動部は、本実施形態ではエアスライド方式が採用されている。摺動部は、ボールや円筒を介在させたリニアガイドを利用してもよい。
【0053】
ヘッド位置制御装置11は、キャリッジ18を高さ方向(Z軸方向)に移動させる装置であり、液滴吐出ヘッド15と基板32の距離の調整機能を有する。ガイドレール71は、詳しくは支持フレーム66の脚部と一体に固定された固定レールと、キャリッジ18を支持するとともに固定レールに対して上下方向に移動可能な可動レールとを有する。ヘッド位置制御装置11は、ガイドレール71を構成する可動レールを固定レールに対して上下方向(Z軸方向)に移動させる装置であり、可動レールの移動によりキャリッジ18を高さ方向(Z軸方向)に位置調整する。操作者は基板32の厚みをコントロール装置17に入力し、その値に応じてヘッド位置制御装置11は、キャリッジ18をZ軸方向における適切な位置に配置する。なお、キャリッジ18をZ軸方向に位置調整する方法としては、キャリッジ18に距離センサを搭載し、液滴吐出ヘッド15と基板32との距離を随時測長し、その測長結果に基づき位置制御する方法としてもよい。距離センサは、光学式、静電容量式、電磁式、接触方式のいずれでもよい。
【0054】
コントロール装置17は、プロセッサを収容したコンピュータ本体部27と、入力装置としてのキーボード28と、表示装置としてのCRT等のディスプレイ29とを有する。
【0055】
次に、液滴吐出装置10における保守装置について、図2,図3を用いて詳しく説明する。図2は、液滴吐出装置のベース上に設置された構造部分の構成を示す斜視図であり、図3(a)は平面図、図3(b)は正面図である。
【0056】
図2に示すように、基台55上には、液滴吐出ヘッド15に対してクリーニングを含む保守を行う第1保守ユニット61と第2保守ユニット62が配設されている。基台55の上面において、第1保守ユニット61はガイドレール50とモータ支持台54の間に配置され、第2保守ユニット62はガイドレール51とモータ支持台54の間に配置されている。第1保守ユニット61と第2保守ユニット62は、平面視において吸着テーブル19の走査領域と重なる位置に配置されているため、基台55と吸着テーブル19間に高さ方向の必要な配設スペースが確保されるように、ガイドレール50,51およびモータ支持台54に基台55からの高さ(Z軸方向長さ)を高く持たせてある。もちろん、基台55の上面に凹部を設け、凹部に保守ユニットを配置することにより、ガイドレール50,51およびモータ支持台54に基台55からの高さを高く持たせない構成としてもよい。
【0057】
第1保守ユニット61は、基台55に設置された昇降装置56と、昇降装置56のロッドの上端に固定された可動板80とを有し、可動板80の上面にフラッシング装置45とワイピング装置46が配設されている。一方、第2保守ユニット62は、第1保守ユニット61のものと同様の構成の昇降装置57および可動板81を有し、可動板81の上面にキャッピング装置44と電子天秤47が配設されている。可動板80,81上に配設されたキャッピング装置44、フラッシング装置45、ワイピング装置46および電子天秤47は、キャリッジ移動方向(Y軸方向)に一列に配列されており、これら4つすべてが液滴吐出ヘッド15の軌道直下に配置されるように、第1および第2保守ユニット61,62は基台55上の所定の位置に配設されている。本明細書では、キャッピング装置44、フラッシング装置45、ワイピング装置46、電子天秤47を指して、保守装置と呼ぶこともある。昇降装置56、57は、本実施形態ではエアシリンダにより構成されている。もちろん、エアシリンダに限定されず、油圧シリンダ、パルスモータとボールネジ等により構成されてもよい。
【0058】
フラッシング装置45とワイピング装置46は、昇降装置56のロッドが伸縮することにより昇降し、ロッドが収縮したときの待機位置と、ロッドが伸長したときの保守位置とに配置される。また、キャッピング装置44と電子天秤47も同様に、昇降装置57のロッドが伸縮することにより昇降し、ロッドが収縮したときの待機位置と、ロッドが伸長したときの保守位置とに配置される。保守装置44〜47は、待機位置に配置された状態では吸着テーブル19の下面より低い高さに配置され、走査中の吸着テーブル19と干渉しないようになっている。一方、保守装置44〜47が保守位置に配置された状態では、各保守装置44〜47は、液滴吐出ヘッド15に対してキャッピング、フラッシング時の排出液受容・吸引、ワイピング、液滴重量測定等の保守が可能となる位置に配置される。
【0059】
液滴吐出ヘッド15が基板32に対して液滴を吐出して画素や配線等のパターンを描く描画中(走査中)は、保守装置44〜47は下降して吸着テーブル19の下方の待機位置に退避している。昇降装置56,57は、保守装置44〜47のうちそのとき保守に供される保守装置を支持する側の一方のみが駆動され、保守動作開始時にその保守装置を上昇させて保守位置に移動させるとともに、保守動作終了後にその保守装置を下降させて待機位置に復帰させるようになっている。保守動作開始時には、保守装置の保守位置への移動に先立ち、吸着テーブル19がX軸方向に移動して図2に示すテーブル退避位置へ退避し、保守装置の保守位置への移動を妨げないようにしている。
【0060】
また、保守動作開始時には、キャリッジ18がガイドレール71に沿ってY軸方向に移動し、保守位置に移動した保守装置と対向可能な直上位置に液滴吐出ヘッド15が配置され、液滴吐出ヘッド15が保守装置による保守を受けることが可能な所定の位置に配置される。
【0061】
保守装置としてのキャッピング装置44、フラッシング装置45、ワイピング装置46は、液滴吐出ヘッド15の液滴吐出性能を良好に維持するためのクリーニングに関する保守を行うクリーニング装置であり、ノズルやノズル内の機能液を清浄な状態に維持・復元する機能を果たす。キャッピング装置44は、液滴吐出ヘッド15がその軌道上の待機位置(ホームポジション)にあるときに、ノズル内の機能液のメニスカスが乾燥するのを防止するために液滴吐出ヘッド15に蓋(キャップ)をする装置である。キャッピング装置44は上方を開口させた箱状の蓋を有し、箱状の蓋を液滴吐出ヘッド15のノズル面に押圧し密閉する。箱状の蓋には液滴吐出ヘッド15との接触部分に密閉度を上げるために弾性材が設けられている。
【0062】
フラッシング装置45は、液滴吐出ヘッド15のノズルから液滴を連続的に吐出してヘッド内の機能液および気泡を排出するフラッシングの際に液滴吐出ヘッド15のノズルから排出された液滴を受ける装置であり、箱状の容器を有する。本例のフラッシング装置45は保守位置で作動されると、容器が液滴吐出ヘッド15に密着してノズル面を覆い、ノズルから排出される液滴の飛散を防止するようになっている。液滴吐出ヘッド15からフラッシングにより排出された排出液は、容器に接続された管を通して真空ポンプにより吸い出されてタンク(図示省略)に集められる。
【0063】
ワイピング装置46は、液滴吐出ヘッド15のノズル面をふき取る装置である。本例でのワイピング装置46は、洗浄液をつけたテープ状の布でふき取る方式のもの(例えば特許文献2に開示されたワイピング装置)を採用している。ワイピング装置は、ゴム板、プラスチック板などの弾性材で汚れをかきとる方式のものでもよい。
【0064】
電子天秤47は、吐出液の重量を測る装置であり、その測定値はコントロール装置17へ送られる。液滴吐出ヘッド15の各ノズルから例えば100滴程吐出し、重量を測定する。コントロール装置17は、電子天秤47の測定値に基づき、液滴吐出ヘッド15への吐出制御信号を調整し、吐出する液滴の大きさ(重量)を調整する。
【0065】
図2においてLの範囲は、キャリッジ18が走査時にとりうる最大移動範囲(以下、キャリッジ最大走査範囲という)である。すなわち、キャリッジ最大走査範囲Lは、液滴吐出ヘッド15のノズルから液滴を吐出して基板32上に素子や配線等の所定パターンを描画するときのキャリッジ18の走査時に最大の描画範囲を描画する際におけるキャリッジ18の最大移動範囲を指す。キャリッジ18が走査時に最大範囲を移動するときに左端にきた時のキャリッジ18の左端面からキャリッジ18が右端にきた時のキャリッジ18の右端面までの範囲を示す。また、この範囲Lは、キャリッジ移動方向に最長の長さのワークを吸着テーブル19に載置して、このワークに対してキャリッジ移動方向に最大範囲の描画をする際におけるキャリッジ18の移動範囲を指す。なお、吸着テーブル19はサイズの異なる複数種のワークを載置できる構成であってもよいが、一種類のサイズのみ載置できる構成であってもよい。特に一種類のワークを吸着テーブル19上に一種類の向きでしか置けない場合は、その置ける向きで載置したワークのキャリッジ移動方向の長さを最長とみなす。
【0066】
本実施形態では、液滴吐出ヘッド15のクリーニングや液滴重量測定を含む保守は、保守装置44〜47がキャリッジ最大走査範囲L内の所定位置に配置された状態で行うことができる。このため、キャリッジ18がガイドレール71に沿って移動可能な最大移動可能範囲(ガイドレール71の案内溝の範囲にほぼ等しい)は、キャリッジ最大走査範囲Lの両側に僅かな余裕の範囲を設けただけで、実質上、キャリッジ最大走査範囲とほぼ等しい長さとなっている。このキャリッジ最大走査範囲Lとほぼ等しいキャリッジ最大移動可能範囲の両側に脚部73,74に支持される部位の範囲を加えることで、ガイドレール71の長さが規定されている。
【0067】
保守装置44〜47は、待機位置と保守位置のいずれに配置されたときにも、キャリッジ移動方向(Y軸方向)において、4つすべてがキャリッジ最大走査範囲L内に位置する。特に本実施形態では、保守装置44〜47は、待機位置と保守位置のいずれに配置されたときにも、キャリッジ移動方向(Y軸方向)において、中寄りの2つが完全にヘッド最大走査範囲(液滴吐出ヘッド15が走査時にY軸方向にとりうる最大移動範囲)内に位置し、両端の2つが完全にもしくは一部がヘッド最大走査範囲内に位置している。また、保守装置44〜47は、待機位置と保守位置のいずれに配置されたときにも、テーブル移動方向(X軸方向)において、4つすべてが吸着テーブル19上にX軸方向で最長の基板(ワーク)32を載置して走査したときにこの最長の基板32がとりうる最大移動範囲(以下、ワーク最大走査範囲という)K(図3参照)内に位置する。ここで、吸着テーブル19上においてX軸方向に最長の基板(ワーク)32が載置される載置領域は、基板32を位置決めするガイド装置(テーブルの載置面(吸着面)に対して出没可能に設けられた複数のガイドピンまたはガイド板と、それらを出没駆動させるアクチュエータとを有する装置)が吸着テーブル19上に搭載された構成の場合は、ガイド装置によりガイドされるX軸方向に最長の被ガイド領域から特定することができる。
【0068】
また、ワーク最大走査範囲は、X軸方向に最長の基板(ワーク)32を載置した吸着テーブル19を最大ストロークで走査させた際、吸着テーブル19がその移動範囲の一端(例えば前端)にきたときのワークの一端(前端)の位置から、吸着テーブル19がその移動範囲の他端(例えば後端)にきたときのワークの他端(後端)の位置までの間の範囲に等しい。なお、図3では、吸着テーブル19が走査時ではなく保守時のテーブル退避位置にあるため、基板(ワーク)32はワーク最大走査範囲Kからはみ出して位置している。
【0069】
図4は、液滴吐出装置10の電気制御ブロック図である。図4において、プロセッサとして各種の演算処理を行うCPU(演算処理装置)40と、各種情報を記憶するメモリ41とを有する。
【0070】
ヘッド位置制御装置11、基板位置制御装置12、主走査駆動装置13、副走査駆動装置14、液滴吐出ヘッド15を駆動するヘッド駆動回路42は、入出力インターフェース33およびバス34を介してCPU40に接続されている。さらに、基板供給装置16、入力装置28、ディスプレイ29、キャッピング装置44、フラッシング装置45、ワイピング装置46、電子天秤47および保守駆動装置77も入出力インターフェース33およびバス34を介してCPU40に接続されている。
【0071】
メモリ41は、RAM、ROM等といった半導体メモリや、ハードディスク、CD−ROMといった外部記憶装置を含む概念であり、機能的には、液滴吐出装置10の動作の制御手順が記述されたプログラムソフト411を記憶する記憶領域や、基板32内における吐出位置を座標データとして記憶するための記憶領域や、副走査方向Yへの基板32の副走査移動量を記憶するための記憶領域や、CPU40のためのワークエリアやテンポラリファイル等として機能する記憶領域やその他各種の記憶領域が設定される。
【0072】
CPU40は、メモリ41内に記憶されたプログラムソフト411に従って、基板32の表面の所定位置に機能液を液滴吐出するための制御を行うものであり、具体的な機能実現部として、フラッシング処理を実現するための演算を行うフラッシング演算部401と、ワイピング処理を実現するための演算を行うワイピング演算部402と、キャッピング処理を実現するためのキャッピング演算部403と、電子天秤47を用いた重量測定を実現するための演算を行う重量測定演算部404と、液滴吐出ヘッド15によって液滴を吐出するための演算を行う吐出演算部406を有する。
【0073】
フラッシング演算部401と、ワイピング演算部402と、キャッピング演算部403と、重量測定演算部404は、保守装置44〜47にそれぞれの保守内容に応じた保守動作を行わせる時期などを演算する。CPU40は、保守装置44〜47のいずれか一つが先に演算された保守動作時期に達すると、保守駆動装置77を駆動制御して該当する保守装置の保守位置への移動(上昇)と、その保守動作終了後の待機位置への復帰(下降)を実行させる。昇降装置56,57をエアシリンダで構成した本実施形態においては、保守駆動装置77は、エアシリンダを駆動させるための圧空の給気・排気をコントロールするためにエアシリンダに繋がる配管上に設けられた電磁バルブなどから構成される。
【0074】
CPU40は、各昇降装置56,57に対応する一方の電磁弁に開閉信号を送信することにより保守駆動装置77を構成する昇降装置(エアシリンダ)56,57を駆動制御する。なお、本実施形態では、昇降装置56,57をエアシリンダにて実施したが、直線運動が可能な駆動装置であればこの限りではなく、油圧シリンダや電動式直動アクチュエータを採用することもできる。油圧シリンダで実現する場合は、油圧ポンプおよび電磁弁などによって保守駆動装置77が構成されることになり、油圧ポンプの駆動信号や電磁弁の開閉信号を送信して保守駆動装置77を駆動制御する。また、直動アクチュエータで実現する場合は、直動アクチュエータの駆動源であるモータ等により保守駆動装置77が構成されることになり、駆動信号を送信して保守駆動装置77を駆動制御する。
【0075】
吐出演算部406を詳しく分割すれば、液滴吐出ヘッド15を液滴吐出のための初期位置へセットするための吐出開始位置演算部407と、基板32を主走査方向Xへ所定の速度で走査移動させるための制御を演算する主走査制御演算部408と、液滴吐出ヘッド15を副走査方向Yへ所定の副走査量で移動させるための制御を演算する副走査制御演算部409と、液滴吐出ヘッド15内の複数あるノズルのうちのいずれを作動させて機能液を吐出するかを制御するための演算を行うノズル吐出制御演算部410等といった各種の機能演算部を有する。
【0076】
なお、本実施形態では、上記の各機能がCPU40を用いてプログラムソフトで実現することとしたが、上記の各機能がCPUを用いない単独の電子回路(ハードウェア)によって実現できる場合には、そのような電子回路を用いることも可能である。
【0077】
次に、図5を用いて液滴吐出装置10の動作を説明する。まず、電源投入前の液滴吐出装置10は、吸着テーブル19がテーブル退避位置に退避した状態にある。また、液滴吐出ヘッド15はホームポジション(待機位置)に位置してキャッピング装置44により蓋(キャップ)がなされている。保守ユニットは、キャッピング装置44を有する第2保守ユニット62が保守位置にあり、第1保守ユニット61が待機位置にある。オペレータによる電源投入によって液滴吐出装置10が作動すると、初期設定が実行される(ステップS1)。具体的には、キャリッジ18や基板供給装置16やコントロール装置17等が予め決められた初期状態にセットされる。次に、吐出に備えて、キャップが退避される(ステップS2)。すなわち、CPU40は、保守駆動装置77を駆動させてキャッピング装置44の蓋(キャップ)を液滴吐出ヘッド15から退避させるとともに、昇降装置57を駆動させることによりキャッピング装置44および液滴重量測定装置47を待機位置に下降させる。こうして第1および第2保守ユニット61,62は共に待機位置に配置される。
【0078】
次に、クリーニングタイミングが到来すれば(ステップS3でYES)、クリーニング動作に入る。第1保守ユニット61が保守位置になければ(ステップS4でNO)、そのとき吸着テーブル19が退避していなければ吸着テーブル19をテーブル退避位置へ退避させるとともに、第1保守ユニット61を保守位置に移動させる(ステップS5)。次いで副走査駆動装置14を駆動させて液滴吐出ヘッド15をフラッシング位置へ移動させ(ステップS6)、液滴吐出ヘッド15のノズルから液滴を連続的に吐出させるフラッシングを行う(ステップS7)。ここで、液滴吐出ヘッド15がフラッシング位置に到達したときに、フラッシング装置45は例えばレバーが押されることにより機械的に作動されるか、あるいはセンサが液滴吐出ヘッド15を検知して電気的に作動されて、液滴吐出ヘッド15のノズル面に箱状の容器を押圧する。
【0079】
次に副走査駆動装置14を作動させて液滴吐出ヘッド15をワイピング位置に移動させ(ステップS8)、ワイピング装置46を作動させることによりワイピングを行う(ステップS9)。こうしてステップS4〜S9のクリーニング動作が終了する。
【0080】
次に、重量測定タイミングが到来すれば(ステップS10でYES)、吐出液の重量測定動作に入る。第2保守ユニット62が保守位置になければ(ステップS11でNO)、吸着テーブル19が退避していなければ吸着テーブル19をテーブル退避位置へ退避させるとともに、第2保守ユニット62を保守位置に移動させる(ステップS12)。次に副走査駆動装置14を駆動させて液滴吐出ヘッド15を電子天秤47の重量測定位置へ移動させ(ステップS13)、ノズルから所定量(例えば100滴程度)の液滴を電子天秤47上に吐出させるとともに、その吐出された機能液の量を電子天秤47に測定させる(ステップS14)。そして、各ノズルの機能液吐出特性に合わせて、各ノズルから予め設定された適量の液滴が吐出されるように各ノズルに対応する圧電素子材に印加する電圧を調節する(ステップS15)。
【0081】
クリーニングタイミングや重量測定タイミングが到来しない場合(ステップS3およびS10でNO)、あるいはそれらの処理が終了した場合には、ステップS16へ移行する。ステップS16において、保守ユニット61,62を待機位置に退避させ、その後、ステップS17において、基板供給装置16により基板32が供給される。
【0082】
次に、基板用カメラ49によって基板32を観察しながら基板位置制御装置12にあるθモータの出力軸を回転させることにより、吸着テーブル19に固定された基板32の位置決めを行う(ステップS18)。ヘッド用カメラ48によって液滴吐出ヘッド15の位置合わせを行い、吐出を開始する位置を演算によって決定し(ステップS19)、主走査駆動装置13および副走査駆動装置14を適宜に作動させて液滴吐出ヘッド15を基板32に対する吐出開始位置へ移動させる(ステップS20)。
【0083】
次に、X方向への主走査が開始され、同時に機能液の吐出を開始させる(ステップS21)。具体的には、主走査駆動装置13を作動させることにより基板32が主走査方向Xへ一定の速度で直線的に走査移動し、その移動途中でノズルが吐出位置に到達したときに、ノズル吐出制御演算部410によって演算された機能液吐出信号に基づいてそのノズルから液滴を吐出させる。
【0084】
1回の主走査が終了すると、副走査駆動装置14によって副走査方向Yへ予め決められた副走査方向Y成分だけ移動させる(ステップS22)。次に、主走査および液滴吐出が繰返し行われる(ステップS23でNO、ステップS21へ移行)。
【0085】
以上のような液滴吐出ヘッド15による機能液の吐出作業が基板32の全領域に対して完了すると(ステップS23でYES)、基板32が外部に排出される(ステップS24)。その後、オペレータによって処理終了の指示がなされない限り(ステップS25でNO)、ステップS3へ戻って別の基板32に対する機能液の吐出作業を繰り返して行う。
【0086】
オペレータから作業終了の指示があると(ステップS25でYES)、吸着テーブル19をテーブル退避位置へ退避させる(ステップS26)。第1保守ユニット61と第2保守ユニット62を待機位置から保守位置へ移動させる(ステップS27)。そして、まず液滴吐出ヘッド15を副走査駆動装置14によってワイピング位置に移動させ(ステップS28)、ワイピング装置46を作動させることにより液滴吐出ヘッド15のノズル面をワイピングする(ステップS29)。
【0087】
次に、液滴吐出ヘッド15を副走査駆動装置14の駆動によってキャッピング位置に移動させ(ステップS30)、キャッピング装置44を作動させることにより液滴吐出ヘッド15にキャッピングする(ステップS31)。以上により一連の吐出作業が終了する。
【0088】
このように保守動作時には、吸着テーブル19をテーブル退避位置に移動させるテーブル退避工程(ステップS26等)、保守装置44〜47のうち保守に供される1つを保守位置へ移動させる保守移動工程(ステップS5,S12,S27)、液滴吐出ヘッド15を保守が受けられるように保守位置にある保守装置と対応する位置へ移動させるヘッド移動工程(ステップS6,S8,S13,S28,S30)、保守装置が保守を実施する保守実施工程(ステップS7,S9,S14,S29,S31)が行われる。そして、保守の実施後、保守装置を待機位置に移動させる待機位置復帰工程(ステップS16)が行われ、一連の保守作業が終了する。
【0089】
したがって、本実施形態の液滴吐出システム1によれば以下に示す効果がある。
【0090】
(1)保守装置44〜47を、待機位置と保守位置のいずれのときにも、キャリッジ移動方向(Y軸方向)において、キャリッジ最大走査範囲L内に配置し、キャリッジ18が走査に必要な移動範囲内の移動をするだけで保守も実施できるようにした。この結果、キャリッジ18の最大移動可能範囲が最大走査範囲Lより少し余裕を見込んだ若干長い程度の長さで済み、保守のために最大走査範囲L(描画動作範囲)を超えた領域にまで移動可能にキャリッジ18の軌道を長くする必要がない。よって、ガイドレール71の長さを、特許文献1の液滴吐出装置のものに比べ相対的に短くすることができる。従って、ヘッド用カメラ48等の付属装置を搭載するなどしてキャリッジ18の重量が増しても、ガイドレール71に撓みが生じにくくなるので、必要な液滴吐出位置精度を確保し易くなる。また、ガイドレール71を短くできることから、液滴吐出装置10のサイズをキャリッジ移動方向に小さく抑えることができる。さらに、保守装置44〜47が待機位置の状態のとき吸着テーブル19の下方位置に配置されるようにし、保守装置44〜47が、テーブル移動方向(X軸方向)において、ワーク最大走査範囲内に位置するようにしたので、液滴吐出装置10のサイズを特許文献2,3の装置構成に比べテーブル移動方向に小さく抑えることができる。以上より、液滴吐出装置10は、特許文献1〜4のいずれの装置よりも装置サイズを小さく抑えやすいうえ、特許文献1の装置に比べガイドレール71を短くできるので、必要な液滴吐出位置精度を確保しやすくなる。
【0091】
(2)保守装置44〜47は昇降のみで、待機位置から保守位置へ移動できるので、移動手段が昇降装置56,57だけで済み、移動機構を簡単にすることができる。
【0092】
(第2の実施形態)
前記第1の実施形態では、保守装置44〜47を液滴吐出ヘッド15の軌道に沿って1列に配列したが、第2の実施形態は、保守装置44〜47をテーブル移動方向に2列に配列した例である。なお、保守ユニットの設置位置および構成が異なるものの、液滴吐出装置10の他の構成については第1の実施形態と同様なので、特に異なる保守ユニットの構成について詳しく説明する。
【0093】
図6(a)は第2の実施形態における液滴吐出装置の平面図、図6(b)は同じく正面図である。図6(b)に示すように、液滴吐出装置のベース30の上面には、キャリッジ移動方向に基台55を挟んだ両側の位置に、第1保守ユニット61および第2保守ユニット62が配設されている。第1保守ユニット61および第2保守ユニット62は、ベース30の上面に設置された昇降手段としての昇降装置56,57と、昇降装置56,57のロッドに支持されたレール63,64と、保守装置44〜47をレール63,64に沿ってテーブル移動方向に移動させる駆動源となるリニアモータ84,85とを有する。なお、昇降装置56,57、レール63,64、リニアモータ84,85等からなる移動機構が移動手段に相当する。レール63,64、リニアモータ84,85等からなるテーブル移動方向への移動機構が第1走査方向移動手段に相当する。また、図4の電気制御ブロック図における保守駆動装置77は、本例の場合、昇降装置(エアシリンダ)56,57を駆動制御する電磁弁およびリニアモータ84,85により構成される。もちろん、昇降装置56,57を電動式直動アクチュエータにより実現することもできる。
【0094】
ベース30の上面中央に配置された基台55の上面には、ガイドレール50,51、リニアモータ53が配設され、ガイドレール50,51に沿って移動可能な可動台52に吸着テーブル19が支持されている。第1および第2保守ユニット61,62は、昇降装置56,57が下降した待機状態において吸着テーブル19の下方に配置される。また、第1および第2保守ユニット61,62は、キャリッジ移動方向(同図における左右方向)において、キャリッジ最大走査範囲L(図2参照)内に位置している。さらに、第1および第2保守ユニット61,62は、テーブル移動方向において、X軸方向で最長の基板の走査時(描画時)の最大移動範囲であるワーク最大走査範囲内に位置している。
【0095】
図6(a),(b)に示す状態が、第1および第2保守ユニット61,62が待機位置にある状態である。1組の保守装置44,45を有する第1保守ユニット61が待機位置にある状態では、キャッピング装置44が液滴吐出ヘッド15の軌道直下となる中継位置に位置するとともに、フラッシング装置45が中継位置からテーブル移動方向へ所定距離ずれた待機位置に位置する。一方、1組の保守装置46,47を有する第2保守ユニット62が待機位置にある状態では、ワイピング装置46が液滴吐出ヘッド15の軌道直下となる中継位置に位置するとともに、液滴重量測定装置47が中継位置からテーブル移動方向へ所定距離ずれた待機位置に位置する。保守装置44〜47のうち中継位置にある保守装置は、昇降装置56,57が上昇駆動されることにより、液滴吐出ヘッド15に対する保守が実施可能な保守位置に配置される。なお、各保守装置44〜47の配列順はこの限りではない。
【0096】
保守動作時には、まず基板32を搭載した吸着テーブル19が、保守位置に上昇しようとする保守ユニット61,62に干渉しないテーブル退避位置まで退避する。次に保守装置44〜47のうちそのとき保守に供される保守装置を含む1組が、リニアモータ84,85の駆動によって待機位置からテーブル移動方向へ移動し、保守に供される1つの保守装置が液滴吐出ヘッド15の軌道直下の中継位置に配置される。次に、昇降装置56,57のうち保守に供される保守装置を支持する側の昇降装置が駆動されることにより、該保守装置が中継位置から保守位置まで上昇し、液滴吐出ヘッド15の保守を実施する。
【0097】
第2の実施形態によれば、液滴吐出装置のサイズの抑制および必要な液滴吐出位置精度の確保など、第1の実施形態と同様な効果が得られることに加え、以下の効果が得られる。
(1)保守装置44〜47をテーブル移動方向に2列に並べて配列したことにより、保守装置44〜47の配設スペースをテーブル移動方向に広く確保できるため、保守装置44〜47に多様な機能を付与することが可能となる。また、各保守ユニット61,62が吸着テーブル19を案内するガイドレール50,51の外側に配置され、保守装置44〜47が液滴吐出装置におけるキャリッジ移動方向外側寄りの位置にテーブル移動方向に並んで配置されているため、保守装置44〜47のメンテナンスが容易になる。
【0098】
(第3の実施形態)
第1の実施形態および第2の実施形態では、各保守装置をキャリッジ18の最大走査範囲内に配置したが、第3の実施形態は、保守装置を保守位置に限りキャリッジ最大走査範囲内に配置した例である。
【0099】
図7(a)は第3の実施形態における液滴吐出装置の平面図、図7(b)は同じく正面図である。
図7(b)に示すように、液滴吐出装置10のキャリッジ移動方向一端側の位置には、保守ユニット70が設置されている。保守ユニット70は、ベース30のキャリッジ移動方向一端側に隣接して配置された保守用ベース65上に支持されている。保守ユニット70は、保守用ベース65上に設置されたガイドレール69と、ガイドレール69に案内されてキャリッジ移動方向と平行な方向に移動可能なステージ76と、ステージ76を走行させる駆動源となるモータ75と、ステージ76上にキャリッジ移動方向に沿って1列に配列された保守装置44〜47とを備えている。モータ75の動力は例えばボールネジまたは駆動ベルト等を含む動力伝達機構(図示せず)を介してステージ76に伝達され、この伝達された動力を推力としてステージ76はガイドレール69に沿って移動する。なお、図4の電気制御ブロック図における保守駆動装置77は、本例の場合、モータ75により構成される。また、ガイドレール69、ステージ76およびモータ75などから構成される移動機構が、移動手段および第2走査方向移動手段に相当する。
【0100】
ステージ76は、ガイドレール69とほぼ重なる位置に退避した待機位置と、図7(a),(b)に示すように待機位置から吸着テーブル19側へ移動した作動位置との間を往復移動する。ステージ76が待機位置にあるときに保守装置44〜47は待機位置に配置され、ステージ76が作動位置にあるときに保守装置44〜47は図7に示す保守位置に配置される。待機位置に配置された状態では、保守装置44〜47は、液滴吐出ヘッド15の軌道の延長線上外側に位置する。保守位置に配置された状態では、保守装置44〜47はキャリッジ最大走査範囲L内に位置する。また、テーブル移動方向(図7(a)における上下方向)において、保守ユニット70は、ワーク最大走査範囲内に位置する。なお、保守ユニット70を構成する各保守装置44〜47の配列順序は図面に示す配列順序に限らず適宜変更可能である。
【0101】
保守動作時には、まず基板32を搭載した吸着テーブル19が保守装置44〜47と干渉しないテーブル退避位置まで退避する。次にモータ75の駆動によって保守装置44〜47が、キャリッジ最大走査範囲L(図2参照)内の保守位置に移動する。この保守装置44〜47の保守位置への移動とほぼ同時期に、キャリッジ18がガイドレール71に沿って移動し、保守装置44〜47のうちそのとき保守に供される保守装置が保守位置にきたときの位置と対応する所定の位置まで液滴吐出ヘッド15が移動する。そして、保守に供される保守装置は、液滴吐出ヘッド15の保守を実施する。保守を終えた後、保守装置は逆の移動経路で待機位置に復帰する。
【0102】
この第3の実施形態によれば、保守位置に配置された状態において、保守装置44〜47はキャリッジ最大走査範囲L内に位置するため、ガイドレール71を短くすることができる。このため、キャリッジ18の重量がかかる割にガイドレール71が撓みにくくなり、必要な液滴吐出位置精度を確保しやすくなる。また、保守ユニット70が液滴吐出装置10の外側寄りに位置しているため、保守装置44〜47のメンテナンス等が容易となる。さらに、待機位置に配置された保守ユニット70がベース30の外側へ突出するが、その突出部分のテーブル移動方向における幅がガイドレール71の幅程度と比較的狭いことから、液滴吐出装置をキャリッジ移動方向に、実質上、幅狭な小型なものとすることができる。また、テーブル移動方向において、保守ユニット70がワーク最大走査範囲内に位置することから、液滴吐出装置のサイズをテーブル移動方向にも小さく抑えることができる。
【0103】
(第4の実施形態)
第4の実施形態は、第3の実施形態の変形例であり、ベースの側方に配置された複数の保守装置がテーブル移動方向に一列に配列されている点が前記第3の実施形態と異なる。
図8(a)は第4の実施形態における液滴吐出装置の平面図、図8(b)は同じく正面図である。
【0104】
図8(b)に示す液滴吐出装置10のキャリッジ移動方向一端側の位置には、ベース30に隣接して保守用ベース65が設けられており、保守用ベース65上に保守ユニット70が設置されている。この保守ユニット70の構成が第3の実施形態のものと異なっている。保守ユニット70は、複数の保守装置44〜47をテーブル移動方向とキャリッジ移動方向とに移動可能な上下二段のスライド機構を有しており、このスライド機構上に複数の保守装置44〜47が配設されている。下段スライド機構は、保守用ベース65上に設置されたガイドレール63と、ガイドレール63に案内されてテーブル移動方向と平行な方向に移動可能なステージ86と、ステージ86を走行させる駆動源となるモータ75とを備える。また、上段スライド機構は、ステージ86上に固定されたガイドレール64と、ガイドレール64に案内されてキャリッジ移動方向と平行な方向に移動可能な4列のステージ76と、4列のステージ76を個別に走行させる駆動源となる4つのエアシリンダ78とを備える。保守装置44〜47は、上段スライド機構を構成する各ステージ76上に1つずつ設けられてテーブル移動方向に沿って1列に配列されている。なお、図4の電気制御ブロック図における保守駆動装置77は、本例の場合、モータ75と、エアシリンダ78を駆動させるための圧空の給気・排気をコントロールする電磁バルブにより構成される。また、保守ユニット70を構成する上下二段のスライド機構が移動手段に相当する。さらにモータ75を含む下段スライド機構が第1走査方向移動手段を構成し、エアシリンダ78を含む上段スライド機構が第1走査方向移動手段を構成する。
【0105】
下段スライド機構のモータ75が駆動されることにより、4つの保守装置44〜47がテーブル移動方向に移動してそのうち保守に供される1つの保守装置が液滴吐出ヘッド15の軌道延長線上の中継位置に配置される。次に下段スライド機構のエアシリンダ78が駆動されることにより、中継位置に配置された保守装置がキャリッジ移動方向に吸着テーブル19側へ延出するように移動してキャリッジ最大走査範囲L(図2参照)内の保守位置に配置される。図8の例ではフラッシング装置45が保守位置に配置されている。本例では、すべての保守装置44〜47がキャリッジ移動方向においてベース30の外側へ退避し、且つキャッピング装置44が中継位置に配置された状態を保守ユニット70の待機位置としている。保守ユニット70が待機位置にあるときに各保守装置44〜47がとる位置がそれぞれの待機位置となる。なお、保守ユニット70を構成する各保守装置44〜47の配列順序は図面に示す配列順序に限らず便宜変更可能である。
【0106】
保守作動時には、吸着テーブル19がテーブル退避位置まで退避するとともに、保守ユニット70の上下スライド機構のモータ75等が駆動されることにより、保守に供される保守装置が中継位置を経由して保守位置に配置される。これに前後してキャリッジ18が移動して液滴吐出ヘッド15が保守位置の保守装置と対応する位置に配置される。そして、保守を終えた保守装置は、逆の移動経路で待機位置に復帰する。
【0107】
この第4実施形態によれば、保守装置44〜47をテーブル移動方向に1列に配列し、保守装置44〜47を1つずつキャリッジ移動方向に保守位置へ向かって移動させる構成なので、キャリッジ移動方向の移動ストロークを第3の実施形態の構成に比べ短くすることができる。よって、保守ユニット70のキャリッジ移動方向の突出量を第3の実施形態の構成に比べ短くすることができ、第3の実施形態の液滴吐出装置よりもキャリッジ移動方向における装置サイズを小さくすることができる。
【0108】
(変形例1)保守ユニットの待機位置は、吸着テーブルの下側と側方に配置した例を示したが、これに限らない。保守ユニットの待機位置を吸着テーブル19の上方に配置してもよい。ベース30の上面から吸着テーブルを跨いで上方に門形の支持部を設け、この支持部に下方へロッドを伸長可能な昇降装置(昇降手段)を配置し、昇降装置のロッドにテーブル移動方向に液滴吐出ヘッド15側へ移動可能なスライド機構を支持させるとともに、スライド機構のステージに保守装置44〜47を配置した構成とする。保守動作時は、吸着テーブル19が退避した後、保守装置44〜47が待機位置から中継位置へ下降し、中継位置からテーブル移動方向へ移動して保守位置に配置される。この構成によれば、門形の支持部のような構造物が増えるものの、第3および第4の実施形態に比べ液滴吐出装置10の床面積を狭くでき装置の小型化を図ることができるなど、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0109】
(変形例2)保守ユニットの移動機構は、回転運動と直線運動の組み合わせでもよい。第4の実施形態では、保守ユニット70の移動機構として、テーブル移動方向の下段スライド機構とキャリッジ移動方向の上段スライド機構とを組み合わせたが、回転機構とスライド機構の組み合わせでもよい。保守用ベース65上に回転テーブルを配置しその上に径方向に伸縮するスライド機構を複数配置する。各スライド機構の上に各保守装置44〜47を配置する。
【0110】
(変形例3)複数の保守ユニットを配列させるとき、キャリッジ18の移動方向だけに配列する構成(第1の実施形態、第3の実施形態)、または、テーブルの移動方向だけに配列する構成(第2の実施形態、第4の実施形態)に限定されない。キャリッジの移動方向と、テーブルの移動方向に配列した組合せでもよい。例えばキャッピング装置44とフラッシング装置45をキャリッジ移動方向に配列し、ワイピング装置46と電子天秤47をテーブル移動方向に配列する。この構成では、保守装置44〜47の大きさにより、最適な配置にして、装置の構造を簡単にできる。
【0111】
(変形例4)第1の実施形態において、保守ユニットは2つに分けて実施したが、昇降装置のロッドに支持された一つの可動板上に保守装置44〜47のすべてを配置して保守ユニットを1つにすることもできる。例えばリニアモータ53を一方のガイドレール51側に寄せ、保守ユニットをリニアモータ53ともう一方のガイドレール50の間に配置する。この構成では、2つの保守ユニットを個別に制御する必要がないので制御が簡単になるうえ、昇降装置を1つに減らすことも可能であり、1つに減らした場合には保守装置44〜47の移動機構を簡略な構成にできる。また、各保守装置44〜47を1つの可動板上にすべて配設し、一つの保守ユニットとして構成することもできる。また、各保守装置44〜47を個々に昇降させられるように4つの保守ユニットを配設した構成を採用することもできる。
【0112】
(変形例5)キャッピング装置44とフラッシング装置45は、両機能を併せ持つ一つの保守装置に替えてもよい。この保守装置は、液滴吐出ヘッド15に密着可能な箱型容器を有し、箱型容器にはフラッシング時に受け取った液を排出する排出管が備えられる。液滴吐出ヘッド15に箱型容器を密着させることでキャッピング装置として機能し、液滴吐出ヘッド15に箱型容器を密着させた状態で液滴を吐出することでフラッシング装置として機能する。この構成では、保守装置を一つ減らせるので保守ユニットの構成を簡略かつ小型にできる。
【0113】
(変形例6)前記第1および第2の実施形態では、複数の保守装置44〜47のすべてをキャリッジ最大走査範囲L内に位置させたが、これに限定されない。例えば第1の実施形態において、4つの保守装置44〜47のうちキャリッジ移動方向両端の2つについてはキャリッジ最大走査範囲内に一部のみ位置する構成としてもよい。また、第2の実施形態において、4つの保守装置44〜47が一部のみキャリッジ最大走査範囲L内に位置する構成でもよい。要するに、キャリッジ最大走査範囲L内で液滴吐出ヘッド15が保守装置44〜47による保守を受けられるのであれば、保守装置の一部のみがキャリッジ最大走査範囲内に位置するだけでもよい。さらに、複数の保守装置を備えた液滴吐出装置において、キャリッジ最大走査範囲内に位置する保守装置が1つある構成でもよい。この場合であっても、1つの保守装置の分はガイドレール71を短く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】第1の実施形態の液滴吐出システムの構成を示す斜視図。
【図2】液滴吐出装置の構成を示す斜視図。
【図3】液滴吐出装置の構成を示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図4】液滴吐出装置の電気制御ブロック図。
【図5】液滴吐出装置の動作を示すフローチャート。
【図6】第2の実施形態の液滴吐出装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図7】第3の実施形態の液滴吐出装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【図8】第4の実施形態の液滴吐出装置を示し、(a)は平面図、(b)は正面図。
【符号の説明】
【0115】
1…液滴吐出システム、10…液滴吐出装置、13…主走査駆動装置、14…副走査駆動装置、15…液滴吐出ヘッド、18…キャリッジ、19…テーブルとしての吸着テーブル、32…ワークとしての基板、44…保守装置及びクリーニング装置としてのキャッピング装置、45…保守装置及びクリーニング装置としてのフラッシング装置、46…保守装置及びクリーニング装置としてのワイピング装置、47…保守装置及び重量測定装置としての電子天秤、56,57…移動手段を構成するとともに昇降手段としての昇降装置、61…第1保守ユニット、62…第2保守ユニット、63,64…移動手段を構成するレール、70…保守ユニット、71…ガイド部材としてのガイドレール。75…移動手段を構成するモータ、77…移動手段を構成する保守駆動装置、78…移動手段および第2走査方向移動手段を構成するエアシリンダ、84,85…移動手段および第1走査方向移動手段を構成するリニアモータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを第1走査方向に移動させるテーブルと、
前記ワークに液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを搭載するとともにガイド部材に沿って第2走査方向に移動するキャリッジと、
前記液滴吐出ヘッドのクリーニングを含む保守に供する一つ以上の保守装置と、
前記保守装置を走査中の前記テーブルと干渉しない待機位置と前記液滴吐出ヘッドの保守を行う保守位置とに移動させる移動手段とを備え、
前記保守装置は、前記待機位置に配置されたときに少なくとも一部が前記第1走査方向において前記テーブル上のワークの走査時の移動範囲として最大とりうるワーク最大走査範囲内に位置し、且つ、前記保守位置に配置されたときに少なくとも一部が前記第2走査方向において前記キャリッジの走査時の移動範囲として最大とりうるキャリッジ最大走査範囲内に位置することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液滴吐出装置において、
保守動作開始時には、前記テーブルが前記保守装置と干渉しないテーブル退避位置に退避するとともに前記保守装置が前記移動手段により前記待機位置から前記保守位置に移動し、保守動作終了後には、前記保守装置が前記移動手段により前記保守位置から前記待機位置に退避することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液滴吐出装置において、
前記保守装置は、前記液滴吐出ヘッドの軌道直下となる前記テーブルの下方位置を前記待機位置として配置され、
前記移動手段は、前記保守装置を前記待機位置と前記保守位置の間で昇降させる昇降手段であることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の液滴吐出装置において、
前記保守装置は複数備えられ、
前記複数の保守装置は、前記液滴吐出ヘッドの軌道直下に前記キャリッジの移動方向に沿って一列に配列されていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の液滴吐出装置において、
前記保守装置は複数備えられ、前記複数の保守装置は、前記テーブルの走査方向と略同一方向に並んで少なくとも一列に配列されるとともに、前記テーブルの下方位置を前記待機位置とし、
前記移動手段は、前記複数の保守装置のうち少なくともそのとき保守に供される保守装置を、前記待機位置と前記液滴吐出ヘッドの軌道直下の中継位置との間で前記テーブルの走査方向と略平行な方向に移動させる第1走査方向移動手段と、前記中継位置と前記保守位置との間で前記保守装置を昇降させる昇降手段とを備えていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の液滴吐出装置において、
前記保守装置は、前記テーブルに対して前記液滴吐出ヘッドの軌道延長上外側の位置を前記待機位置として配置されることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の液滴吐出装置において、
前記保守装置は複数備えられ、前記複数の保守装置は、前記キャリッジの走査方向に沿って一列に配列されており、
前記移動手段は、前記保守装置を前記待機位置と前記保守位置との間で前記第2走査方向に移動させる第2走査方向移動手段を備えていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項8】
請求項6に記載の液滴吐出装置において、
前記保守装置は複数備えられ、前記複数の保守装置は、前記待機位置において前記液滴吐出ヘッドの軌道延長上に一つが位置するとともに前記テーブルの走査方向に沿って一列に配列されており、
前記移動手段は、前記複数の保守装置のうち保守に供する保守装置を、前記待機位置と前記液滴吐出ヘッドの軌道延長上の中継位置との間で前記第1走査方向に移動させる第1走査方向移動手段と、前記保守装置を前記中継位置と前記保守位置との間で前記第2走査方向に移動させる第2走査方向移動手段とを備えていることを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項9】
ワークを第1走査方向に移動させるテーブルと、
前記ワークに液滴を吐出する液滴吐出ヘッドを搭載するとともにガイド部材に沿って第2走査方向に移動するキャリッジと、
前記液滴吐出ヘッドのクリーニングを含む保守に供する一つ以上の保守装置と、
前記保守装置を前記テーブルと干渉しない待機位置と前記液滴吐出ヘッドの保守を行う保守位置とに移動させる移動手段とを備え、
前記保守装置は前記待機位置においては走査中の前記テーブルと干渉しない前記テーブルの下方位置に配置され、
前記移動手段は、前記保守装置を、前記待機位置と前記保守位置との間の移動過程において、前記待機位置の高さと前記保守位置の高さの間で昇降させる昇降手段を有することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の液滴吐出装置において、
前記保守装置による保守の開始に先立ち、前記キャリッジを移動させて前記保守装置の前記保守位置と対応する所定の位置に前記液滴吐出ヘッドを配置することを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出ヘッドのクリーニングに供するキャッピング装置、ワイピング装置、フラッシング装置のうち少なくとも一つを、前記保守装置として備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の液滴吐出装置において、
前記液滴吐出ヘッドから吐出される機能液の重量を測定する重量測定装置を、前記保守装置として備えたことを特徴とする液滴吐出装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の液滴吐出装置における液滴吐出ヘッドの保守方法であって、
テーブルを保守装置と干渉しないテーブル退避位置へ移動させる工程と、
前記保守装置を待機位置から保守位置へ移動させる工程と、
前記キャリッジを移動させて保守位置の前記保守装置と対応する位置に前記液滴吐出ヘッドを配置する工程と、
前記保守位置の前記保守装置に前記液滴吐出ヘッドを保守させる工程と
を備えたことを特徴とする液滴吐出ヘッドの保守方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−218430(P2006−218430A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35646(P2005−35646)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ハーモニックドライブ
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】