説明

液状クリーム用油脂組成物

【課題】
トランス脂肪酸含量が低い液状クリーム用油脂組成物であって、特に、缶コーヒーに使用される液状クリームに適した油脂組成物を提供することである。
【解決手段】
下記油脂Aを5〜30質量%、下記油脂Bを5〜40質量%、下記油脂Cを30〜90質量%含有する液状クリーム用油脂組成物である。
油脂A:ヤシ油
油脂B:パーム油
油脂C:全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油、全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油、又は全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油と全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油の混合油

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状クリーム用油脂組成物に関し、特にコーヒークリームに適した液状クリーム用油脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液状クリーム、特にポーションパック等にされたコーヒークリームに関しては、流通段階から消費されるまで常温保管される場合が多く、長期保管に耐える高い酸化安定性が求められるため、従来、酸化安定性が高い部分水素添加された植物油(植物硬化油)が用いられて来た。
【0003】
しかしながら、近年、心臓疾患との因果関係から部分水素添加油に含まれるトランス脂肪酸の摂取が問題となり、各国で、加工食品中のトランス脂肪酸含量の規制や、表示の義務が課されるようになり、液状クリームに関しても、使用油脂の低トランス化が求められるようになって来た。
低トランス化に対応したものとしては、パーム核油の低融点画分を利用したもの(例えば、特許文献1−3)や、パーム核油の分別油を極度硬化したもの(例えば、特許文献4)が開示されている。
【0004】
一方、使用油脂をトランス脂肪酸含量の低いものに変更することにより、コーヒーの風味を引き立てる機能が乏しくなるという新たな課題が明らかとなって来た。特に、缶コーヒー用の液状クリームに関しては、液状クリームの製造時における殺菌工程、及びそれを使用した缶コーヒーの殺菌工程という2度の殺菌工程を経るため、極度硬化油を除いては、部分水素添加油と比べ安定性に乏しくなる低トランス油脂では、風味変化が大きいことが分かって来た。
【0005】
特許文献1〜3は、パーム核油を分別した副産品である低融点画分の有効利用を主眼としたものであり、コーヒーの風味に関して特段関心は払われなかった。特許文献4についても、コーヒークリームの物理的機能強化(保存安定性、凍結耐性、ヒートショック耐性)に着目したものであり、コーヒーの風味に関して特段関心は払われなかった。
【特許文献1】特開平2−700号公報
【特許文献2】特開2005−204653号公報
【特許文献3】特開2007−274997号公報
【特許文献4】特開2007−37509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、トランス脂肪酸含量が低い液状クリーム用油脂組成物であって、特に、缶コーヒーに使用される液状クリームに適した油脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
コーヒーに使用する液状クリーム(コーヒークリーム)は、コーヒーにコク味を付与し、過度の渋味や苦味、酸味を緩和してコーヒーを味わい深いものとするものであるが、特に、淹れたてで提供されることがない缶コーヒーに関しては、その機能が特に重要となって来る。本発明者らは、缶コーヒーの場合、液状クリームの製造時における殺菌工程、及びそれを使用した缶コーヒーの殺菌工程という2度の殺菌工程を経るため、殺菌工程において風味変化が起こり、缶コーヒーの風味に大きく影響すること、及び、殺菌工程の風味変化は、その後の保存における風味変化とは異なり、抗酸化剤等の添加では解決し得ないことを見出した。本発明は、これらの知見を基に、缶コーヒーの殺菌工程における風味変化を鋭意研究することにより、トランス脂肪酸含有量が低い特定油脂を特定量含有させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明は下記油脂Aを5〜30質量%、下記油脂Bを5〜40質量%、下記油脂Cを30〜90質量%含有する液状クリーム用油脂組成物である。
油脂A:ヤシ油
油脂B:パーム油
油脂C:全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油、全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油、又は全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油と全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油の混合油
【0009】
本発明の第2の発明は、第1の発明に記載の液状クリーム用油脂組成物を使用してなる液状クリームである。
【0010】
本発明の第3の発明は、液状クリームが、コーヒークリーム用である第2の発明に記載の液状クリームである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の油脂組成物を使用することにより、トランス脂肪酸含量の低い液状クリームを提供することができ、また、それを使用した風味の良い缶コーヒー、特に、乳由来原料を使用しなくても風味の良い缶コーヒーを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の液状クリーム用油脂組成物は、下記油脂Aを5〜30質量%、下記油脂Bを5〜40質量%、下記油脂Cを30〜90質量%含有することを特徴とする。
油脂A:ヤシ油
油脂B:パーム油
油脂C:全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油、全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油、又は全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油と全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油の混合油
【0013】
本発明の液状クリーム用油脂組成物を構成する油脂Aは、ヤシ油である。ヤシ油は、ココヤシ油、ココナッツ油とも呼ばれ、ココヤシの核を乾燥したコプラから採油される固体脂である。
本発明においてヤシ油は、ヤシ系油脂を指し、その分別油、硬化油、エステル交換油、及びそれらの中から選ばれる2種以上の油脂の混合油についても使用することができる。ヤシ油の硬化油の場合、トランス脂肪酸含量を低くするためにヨウ素価2未満まで極度硬化されたものが好ましい。
【0014】
本発明の液状クリーム用油脂組成物中における油脂A(ヤシ油)の含量は、5〜30重量%であり、10〜25重量%であることが好ましく、13〜22重量%であることが更に好ましい。油脂Aの含量が上記範囲にあると、コーヒーの酸味を適度に緩和するので好ましい。
【0015】
本発明の液状クリーム用油脂組成物を構成する油脂Bは、パーム油である。パーム油は、アブラヤシの果肉から採油される固体脂である。
本発明においてパーム油は、パーム系油脂を指し、その分別油、硬化油、エステル交換油、及びそれらの中から選ばれる2種以上の油脂の混合油についても使用することができる。パーム油の硬化油の場合、トランス脂肪酸含量を低くするためにヨウ素価2未満まで極度硬化されたものが好ましい。パーム油の分別油の具体例としては、パームオレイン(パーム油を分別して得られる軟質部)、パームステアリン(パーム油を分別して得られる硬質部)、パームスーパーオレイン(パームオレインをさらに分別して得られる軟質部であり、スーパーオレインと呼ばれることもある)、パームトップオレイン(パームスーパーオレインをさらに分別して得られる軟質部)、パームミッドフラクション(パームオレインをさらに分別して得られる硬質部であり、PMFと呼ばれることもある)、ソフトパーム(パームステアリンをさらに分別して得られる軟質部)、ハードステアリン(パームステアリンをさらに分別して得られる硬質部)等が挙げられる。特に、パーム油(未分別)、パームオレイン、PMFを使用することが好ましい。
なお、パーム油を分別する方法は、特に制限はなく、溶剤分別、乾式分別、界面活性剤分別のいずれの方法を選択することもできる。
【0016】
本発明の液状クリーム用油脂組成物を構成する油脂B(パーム油)は、そのヨウ素価が35〜65であることが好ましく、45〜60であることが更に好ましく、48〜57であることが最も好ましい。油脂Bのヨウ素価が上記範囲にあると、コーヒーに適度なコク味を付与し、渋味、苦味を適度に緩和するので好ましい。
なお、油脂のヨウ素価は、「社団法人 日本油化学会 基準油脂分析試験法2.3.4.1−1996」の方法に準じて測定することができる。
【0017】
本発明の液状クリーム用油脂組成物中における油脂Bの含量は、5〜40重量%であり、15〜35重量%であることが好ましく、18〜32重量%であることが更に好ましい。油脂Bの含量が上記範囲にあると、コーヒーに適度なコク味を付与し、渋味、苦味を適度に緩和するので好ましい。
【0018】
本発明の液状クリーム用油脂組成物を構成する油脂Cは、全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油、全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油、又は全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油と全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油の混合油である。
油脂Cとして用いるサフラワー油は、紅花油とも呼ばれ、サフラワー種子より採油される液体油である。また、油脂Cとして用いるサフラワー油は、全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上のハイオレイック種である。
油脂Cとして用いるヒマワリ油は、サンフラワー油とも呼ばれ、ヒマワリ種子より採油される液体油である。また、油脂Cとして用いるヒマワリ油は、全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上のハイオレイック種である。
本発明で用いる油脂Cとしては、上述のサフラワー油、ヒマワリ油を単独で使用しても良いし、混合して使用しても良い。また、エステル交換したものを使用しても良い。
【0019】
本発明の液状クリーム用油脂組成物中における油脂Cの含量は、30〜90重量%であり、40〜75重量%であることが好ましく、46〜69重量%であることが更に好ましい。油脂Cの含量が上記範囲にあると、コーヒーの渋味、苦味を適度に緩和するので好ましい。
【0020】
本発明の液状クリーム用油脂組成物を構成する油脂A、油脂B、油脂Cは各々単独で混合しても良いし、例えば、油脂Aと油脂Bを混合し、エステル交換した後、油脂Cを混合する等、油脂A、油脂B、油脂Cの任意の組合せにおいてエステル交換処理を施すことができる。油脂A、油脂B、油脂Cを各々単独で混合した後、3種混合油全体をエステル交換しても、もちろん構わない。
エステル交換処理を組み入れることで、液状クリームの乳化安定性、凍結解凍耐性、ヒートショック耐性等の機能強化できるので好ましい。
エステル交換処理は、特に制限はなく、通常の方法により行うことができ、ナトリウムメトキシド等の合成触媒を使用した化学的エステル交換、リパーゼを触媒とした酵素的エステル交換のどちらの方法でも行うことができる。
【0021】
本発明の液状クリーム用油脂組成物における脂肪酸組成としては、炭素数10以下の脂肪酸4質量%未満、ラウリン酸とミリスチン酸の合計含量3〜21質量%、パルミチン酸とステアリン酸の合計含量9〜26質量%、オレイン酸含量40〜80質量%、リノール酸含量5〜13質量%、リノレン酸含量1質量%未満であることが好ましく、炭素数10以下の脂肪酸3.5質量%未満、ラウリン酸とミリスチン酸の合計含量6〜17質量%、パルミチン酸とステアリン酸の合計含量13〜23質量%、オレイン酸含量46〜72質量%、リノール酸含量7.1〜12質量%、リノレン酸含量1質量%未満であることが更に好ましく、炭素数10以下の脂肪酸3質量%未満、ラウリン酸とミリスチン酸の合計含量8〜15質量%、パルミチン酸とステアリン酸の合計含量15〜22質量%、オレイン酸含量49〜68質量%、リノール酸含量10.1〜12.0質量%、リノレン酸含量0.5質量%未満であることが最も好ましい。炭素数10以下の脂肪酸が上記範囲にあると、コーヒーの苦味が過度に強くならないので好ましい。ラウリン酸とミリスチン酸の合計含量、パルミチン酸とステアリン酸の合計含量及びオレイン酸含量が上記範囲にあると、乳化安定性、保存安定性が良好となり好ましい。リノール酸及びリノレン酸が上記範囲にあると、酸化安定性を保持しつつ、コク味が向上するので好ましい。
【0022】
本発明の油脂組成物は、健康面を配慮して、低トランス脂肪酸含量であることが好ましく、具体的には、トランス脂肪酸含量が、5質量%未満であることが好ましく、3質量%未満であることが更に好ましく、2質量%未満であることが最も好ましい。
なお、油脂組成物中の脂肪酸組成及びトランス脂肪酸含量の分析は、AOCS Ce1f−96に準じて行うことができる。
【0023】
本発明の液状クリーム用油脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、油脂A、油脂B、油脂C以外のその他の油脂を配合することができる。その他の油脂の配合の目安としては、液状クリーム用油脂組成物中の30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが最も好ましい。その他の油脂としては、例えば、乳脂等が挙げられる。
【0024】
本発明の液状クリーム用油脂組成物は、液状クリームに使用する油脂として好適に使用できる。液状クリームには、使用油脂として本発明の液状クリーム用油脂組成物を80質量%以上使用することが好ましく、90質量%以上使用することが更に好ましく、100質量%使用することが最も好ましい。
【0025】
本発明の液状クリームは、油脂成分として本発明の液状クリーム用油脂組成物を使用して製造されるものである。
【0026】
本発明の液状クリームは、油脂成分(油脂A、油脂B、油脂C、その他の油脂の合計量)を5〜60質量%含有することが好ましく、10〜45質量%含有することが更に好ましく、15〜30質量%含有することが最も好ましい。
【0027】
本発明の液状クリーム中における油脂成分に対する油脂A、油脂B及び油脂Cの合計含量は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%使用することが最も好ましい。
【0028】
本発明の液状クリームには、本発明の効果を損なわない範囲で、油脂A、油脂B、油脂C以外のその他の油脂を配合することができる。その他の油脂の配合の目安としては、液状クリーム中に含まれる油脂成分(油脂A、油脂B、油脂C、その他の油脂の合計量)に対して30質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることが最も好ましい。その他の油脂としては、例えば、乳脂等が挙げられる。
【0029】
本発明の液状クリームは、油脂成分以外の成分として、通常、水中油型乳化物に配合される成分を適量使用することができる。具体的には、乳化剤、無脂乳固形分、糖類、安定剤、塩類、酸化防止剤等を使用することができる。
乳化剤としては、例えば、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸脂肪酸エステル等の従来公知の乳化剤が挙げられる。無脂乳固形分としては、例えば、脱脂乳、脱脂粉乳、ホエーパウダー、カゼインナトリウム、生クリーム、牛乳、加糖練乳等が挙げられる。無脂乳固形分は、一部を植物性蛋白で置換して利用することもできる。糖類としては、例えば、グルコース、マルトース、ソルビトール、シュークロース、ラクトース等が挙げられる。安定剤としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、キサンタンガム、グアーガム等が挙げられる。塩類としては、例えば、リン酸のアルカリ金属塩、クエン酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。酸化防止剤としては、ビタミンE、ビタミンC、ローズマリー抽出物、茶抽出物、コケモモ抽出物等が挙げられる。
【0030】
本発明の液状クリームの製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の水中油型乳化物の調製方法により製造することができる。例えば、油脂組成物に乳化剤を混合し、溶解乃至分散させて油相を調製し、また、水に脱脂粉乳、乳化剤、リン酸塩等を添加して水相を調製する。調製した油相と水相を60℃乃至80℃に加温し、混合して予備乳化を行った後、ホモゲナイザイーよる均質化処理、殺菌、冷却、エージングすることにより製造できる。均質化は殺菌後に行ってもよく、殺菌の前後に行う二段均質でもよい。殺菌はバッチ式殺菌法、または間接加熱方式あるいは直接加熱方式によるUHT滅菌処理法で行うことができる。
【0031】
本発明の液状クリーム用油脂組成物を使用した液状クリームの用途に制限は無く、料理にコク味を付加するための調理用としても好適に使用できるが、特にコーヒークリームとして好適に使用できる。中でも、缶コーヒー用として好適であり、例えば、液状クリームに脱脂粉乳等乳由来の原料を一切使用しない場合であっても良好な味わいを演出できる。
【実施例1】
【0032】
以下に本発明を実施例にてより具体的に説明するが、本発明はこれらの例示に特に限定されるものではない。
【0033】
(試験用油脂の調製)
使用油脂として以下の油脂を調製した。各試験用油脂の脂肪酸組成を表1に示した。
油脂A:ヤシ油(商品名:精製やし油、日清オイリオグループ株式会社製)
油脂a:パーム核オレイン(ヨウ素価27、日清オイリオグループ株式会社社内製)
油脂B:パーム油(商品名:精製パーム油、日清オイリオグループ株式会社製)
油脂C−1:ハイオレイックサフラワー油(商品名:紅花油、日清オイリオグループ株式会社製)
油脂C−2:ハイオレイックヒマワリ油(商品名:オレインリッチ、昭和産業株式会社製)
油脂c:ハイオレイック菜種油(商品名:キャノーラスーパーライト:日清オイリオグループ株式会社製)
【0034】
【表1】

C6:ヘキサン酸、C8:オクタン酸、C10:デカン酸、C12:ラウリン酸、
C14:ミリスチン酸、C16:パルミチン酸、C18:ステアリン酸、
C18−1:オレイン酸、C18−2:リノール酸、C18−3:リノレン酸
【0035】
(油脂組成物の調製)
試験用油脂を表2、3に従って配合し、実施例1〜5、比較例1〜6の油脂組成物を調製した。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
(液状クリームの調製)
表4の配合に従って、油相、水相をそれぞれ調製し、70℃に調温した後、水相に油相を配合して15分間予備乳化を行った。次いでホモゲナイザイー(三丸機械工業(株)製)を使用し、250kg/cm2で均質化した後、加熱滅菌機によって、140℃、4秒のUHT滅菌を行い、再度100kg/cm2で均質化した後、氷水中で急冷して液状クリームを得た。実施例1〜5及び比較例1〜6の油脂組成物をそれぞれ使用し、実施例6〜10、比較例7〜12の液状クリームを得た。
【0039】
【表4】

【0040】
(風味評価)
インスタントコーヒー2gにお湯100ccを注ぎ、液状クリーム5gを添加した後、オートクレーブ加熱(100〜115℃、45分間)を行い、品温が70〜80℃で、訓練されたパネラー5名が試飲して風味評価を行った。風味評価は以下の基準に従って、パネラー5名の比較評価結果の総合評価とした。風味評価の結果は表5、6に示した。

評価項目
コク味: ◎ コク味が引き立ち良好
○ やや良好
△ 普通
× コク味に乏しい、または、くどさが立って不良

渋味、苦味: ◎ ほど良い苦味があり良好
○ やや良好
△ 普通
× 渋味、苦味が立ち過ぎている

酸味: ◎ ほど良い酸味があり良好
○ やや良好
△ 普通
× 酸味が立ち過ぎている
【0041】
【表5】

【0042】
【表6】

【0043】
表5、6より明らかなように、ヤシ油5〜30質量%、パーム油5〜40質量%、及びオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油、オレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油から選ばれた1種以上の油脂30〜90質量%を含有する実施例1〜5の油脂組成物より調製された実施例6〜10の液状クリームは、コーヒーに添加後、オートクレーブ処理(加熱殺菌処理)を経ても、コク味、渋味・苦味、酸味のバランスが取れ、風味良好なものであった。一方、油脂組成物中にパーム油を含有しない比較例7の液状クリームや油脂組成物中にヤシ油を含有しない比較例8の液状クリームを添加したコーヒーは、風味が優れなかった。また、パーム油の含有量が40質量%を超える油脂組成物を使用した比較例9の液状クリームやヤシ油の含有量が30質量%を超える油脂組成物を使用した比較例10の液状クリームを添加したコーヒーについても、風味が優れなかった。
ヤシ油の替わりにパーム核オレインを含有する油脂組成物を使用した比較例11の液状クリームを添加したコーヒーは、風味が優れなかった。また、オレイン酸含量が70質量%以上である油脂としてハイオレイック菜種油を含有する油脂組成物を使用した比較例12の液状クリームを添加したコーヒーも、風味が優れなかった。
【0044】
(缶コーヒーの調製)
実施例5の油脂組成物を使用し、油相(油脂組成物40質量%、シュガーエステル(HLB=5)1.2重量%)、水相(水57.55質量%、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB=13)0.75質量%、シュガーエステル(HLB=16)0.5質量%)からなる液状クリームを調製した。焙煎粗挽きしたコーヒー豆をドリップ式抽出機を用いて抽出を行い、抽出液を重曹でPH6.5に調製した。この抽出液50部(コーヒー生豆換算16%)に対し、水20部に砂糖6部とシュガーエステル(HLB=15)0.1部を溶かした溶液、及び液状クリーム5部を混合し、全量を水にて100部に調製した。70℃まで加温後、150kg/cm2にて均質化処理を行い、缶に充填後、レトルト殺菌(123℃、17分)を行い、流水中で急冷して、乳由来原料を使用しない缶コーヒーを得た。該缶コーヒーをパネラー5名が試飲したところ、スッキリとした中にもコク味が感じられる風味の優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の油脂組成物を使用することにより、部分水素添加油脂を使用しない低トランス脂肪酸含量でありながら、加熱に対する風味が良好な液状クリームが得られる。該液状クリームは特に缶コーヒーへの使用に適するものであり、低トランス脂肪酸含量でありながら、風味が良好な缶コーヒーが提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記油脂Aを5〜30質量%、下記油脂Bを5〜40質量%、下記油脂Cを30〜90質量%含有する液状クリーム用油脂組成物。
油脂A:ヤシ油
油脂B:パーム油
油脂C:全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油、全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油、又は全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるサフラワー油と全構成脂肪酸中のオレイン酸含量が70質量%以上であるヒマワリ油の混合油
【請求項2】
請求項1に記載の液状クリーム用油脂組成物を使用してなる液状クリーム。
【請求項3】
液状クリームが、コーヒークリーム用である請求項2に記載の液状クリーム。

【公開番号】特開2010−4741(P2010−4741A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164016(P2008−164016)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000227009)日清オイリオグループ株式会社 (251)
【Fターム(参考)】