説明

液状組成物及びエレクトロニクス実装材料

【課題】耐熱性等の各種物性に優れ、しかも有機溶剤等の揮発成分を実質的に含まなくても、室温で液状で存在できる液状組成物、及び、それを用いたエレクトロニクス実装材料を提供する。
【解決手段】反応性基含有化合物、架橋剤及び特定構造を有するシラン化合物を含む液状組成物であって、該反応性基含有化合物は、室温で固化しており、かつ200℃以下に融点を有する化合物である液状組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状組成物及びエレクトロニクス実装材料に関する。より詳しくは、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品用途、電気・電子部品用途、自動車部品用途、印刷インク用途等の種々様々な用途に用いられる液状組成物、及び、それを用いたエレクトロニクス実装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
室温で液状態にある樹脂組成物は、その流動性から、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品用途、電気・電子部品用途、自動車部品用途、印刷インク用途等の種々様々な用途に広く用いられている。このような液状組成物は、通常、有機溶剤や希釈剤等の揮発成分を含むことによって流動性が付与されているが、用途によっては有機溶剤を極力含まないことが望まれるため、揮発成分を含まなくても室温で液状で存在できる組成物の開発が要望されている。
【0003】
そこで、室温で流動性を有する低分子量原料のみを混ぜ合わせることによって調製された液状組成物が開発されており、例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂、硬化剤及びケチミン構造を含有する化合物を含む液状半導体封止材に関し、エポキシ樹脂として、常温で液状のエポキシ化合物を用いることが記載されている。また、特許文献2には、液状エポキシ樹脂を用いた半導体封止用難燃性液状エポキシ樹脂組成物が開示されている。
【0004】
一方、耐熱性や耐圧性等の各種特性に優れ、過酷な環境下においても各種物性の低い硬化物を形成できる樹脂組成物として、シロキサン結合及びイミド結合を有するシラン化合物と、有機樹脂とを含む樹脂組成物が開示されている(特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−248099号公報(第2、4頁)
【特許文献2】特開2008−266512号公報(第2頁)
【特許文献3】国際公開第2008/099904号パンフレット(第142−152頁、158頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように種々の液状組成物が検討されている。しかしながら、特許文献1や2のように、室温で流動性を有する低分子量原料のみを混ぜ合わせて得られる液状組成物の場合は耐熱性(耐熱分解性)が充分ではない。そのため、耐熱性をより向上させるための工夫の余地があった。特許文献1ではまた、液状の組成物を得る際に固体の原料を用いる場合は、他の液状の樹脂又は希釈剤により希釈して液状を示すようにして用いる旨が記載されている。だが、希釈剤により希釈させて得た液状組成物は、揮発成分を含まないことが望まれる用途に好適に適用することができない。
【0007】
また特許文献3に記載の樹脂組成物は、成形性や柔軟性に優れる等の特性を損なうことなく優れた耐熱性を発揮でき、各種用途に極めて有用なものである。特許文献3実施例では、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びフェノールアラルキル樹脂や、トリフェノール型エポキシ樹脂等の有機樹脂を溶剤中に配合・溶解した樹脂混合液として、室温で液状の樹脂組成物を得ているが、有機溶剤や希釈剤等の揮発成分を極力含まないことが望まれる用途にも適用可能なものとするため、揮発成分を実質的に含まなくても室温で液状で存在できる組成物とするための工夫の余地があった。なお、特許文献3で具体的に開示されている有機樹脂は、いずれもオリゴマー成分を含有する非晶質樹脂で、融点をもたないものの、室温で固形であり、溶融時も高粘度であるため、液状組成物として利用するには工夫の余地があった。
【0008】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐熱性等の各種物性に優れ、しかも有機溶剤や希釈剤等の揮発成分を実質的に含まなくても、室温で液状で存在できる液状組成物及びそれを用いたエレクトロニクス実装材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、室温で液状態にある樹脂組成物について種々検討するうち、室温で固化しており、かつ融点が特定温度以下である反応性基含有化合物と、シラン化合物と、架橋剤とを併用すると、分子レベルで反応性基含有化合物とシラン化合物とが混じり合うことを見いだした。これは、シラン化合物が反応性基含有化合物の結晶構造を壊す作用を有することに由来するものと考えられるが、これらの成分を併用すれば、耐熱性等の各種物性に優れるうえに、有機溶剤や希釈剤等の揮発成分を含まずとも室温で液状態にある組成物が得られるという、従来の技術常識を覆すほどの極めて異質な作用効果を発揮できることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。このような組成物は、耐熱性等の各種性能に優れ、かつ揮発成分を含まなくても室温で液状に存在できるため、揮発成分を極力含まないことが望まれる用途、例えば、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品用途、電気・電子部品用途、自動車部品用途等に特に好適に用いることができる。また、揮発成分を含んでもよい用途、例えば、印刷インク用途等にも好適に適用できることは言うまでもない。
【0010】
このように本発明では、室温で固化しており、かつ融点が特定温度以下である反応性基含有化合物と、シラン化合物とを併用することによって、優れた耐熱分解性を奏するのみならず、揮発成分を用いなくても室温で液状に存在できる組成物が得られるという特異な効果を発揮することが可能になるが、このような効果は従来の技術常識を覆す極めて異質な効果といえる。従来、液状組成物を得ようとする場合は、特許文献1〜3にあるように、揮発成分を含有させるか、又は、既に室温で液状の樹脂を用いることが通常であったが、揮発成分を含有させる場合は、揮発成分を含まないことが望まれる用途に好適に適用することができず、また既に室温で液状の樹脂を用いる場合は、耐熱分解性が充分ではないことが多々あった。本発明の液状組成物は、これらの課題をみごとに同時に解決するものであり、ここに重要な技術的意義を有する。また、主原料として室温で固化している反応性基含有化合物を使用し、しかも揮発成分を実質的に含まなくても液状組成物として存在できるという本発明そのものが、これまでにない新しい技術といえる。
【0011】
すなわち本発明は、反応性基含有化合物と、架橋剤と、下記式(1):
【化1】

(式中、Rは、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数である。yは、0又は1である。)で表される構成単位及びシロキサン骨格を有するシラン化合物とを含む液状組成物であって、該反応性基含有化合物は、室温で固化しており、かつ200℃以下に融点を有する化合物である液状組成物である。
本発明はまた、上記液状組成物を用いてなるエレクトロニクス実装材料でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明の液状組成物は、反応性基含有化合物、架橋剤及びシラン化合物を含んでなるが、これら各成分は、それぞれ1種又は2種以上を使用することができる。また、これらを必須とする限り、その他の成分を適宜含むこともできる。その他の成分(添加剤)については、後述するとおりである。
【0013】
本発明において、「液状組成物」とは、室温(25℃)で液状態にある組成物であることを意味する。具体的には、結晶が析出しておらず、かつ高粘度の流体ではない状態であり、目視で確認すればよいが、粘度で判断することも可能である。例えば、60℃での粘度が100Pa・s以下であることが好適である。これにより、室温で液状態にある組成物となるため、加工や成形がより容易になり、種々の用途に好ましく採用できる。60℃粘度としてより好ましくは80Pa・s以下、更に好ましくは60Pa・s以下である。また、40Pa・s以上が好適である。上記液状組成物はまた、−20〜60℃の範囲内で液状態にあることが好ましい。
上記液状組成物の粘度は、例えば、コーンプレート型粘度計(機器名「cap2000H」、ブルックフィールド社製)を用い、測定温度を60℃として測定することができる。
【0014】
上記液状組成物において、反応性基含有化合物としては、室温で固化しており、かつ200℃以下に融点を有する化合物である。室温で固化しているとは、室温(25℃)で固体状にあることを意味する。中でも、結晶状態にあることが好適である。ここで、非晶質化合物を用いた場合には、揮発成分を実質的に含まなくても液状に存在できる組成物を得ることができない。また、より好ましくは、−20〜60℃の範囲内で固体状にあることが好ましい。
【0015】
上記反応性基含有化合物の融点は、200℃以下が適当である。200℃を超える融点を有するものであると、シラン化合物と充分に分子レベルで混じり合うことができず、これを含む組成物を、揮発成分を含まなくても室温で液状に存在できるようにすることが難しくなるおそれがある。好ましくは190℃以下、より好ましくは180℃以下である。また、融点が低すぎる化合物は、骨格中に脂肪族/脂環式骨格を多く含む化合物となり、耐熱性が充分とはならないおそれがある。したがって、融点は40℃以上であることが好適である。より好ましくは50℃以上、更に好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上である。
本明細書中、融点とは、不活性雰囲気下で結晶が溶けて液状になる状態の温度(℃)を意味する。したがって、非晶質の化合物は融点を有しない。
【0016】
上記反応性基含有化合物は、反応性を有する官能基(反応性基)を含有する化合物であるが、当該反応性基とは、架橋剤と反応して架橋構造を形成し得る官能基を意味する。このような反応性基は、例えば、グリシジル基、エポキシ基、マレイミド基等が好適である。これによって、耐熱性等の各種物性により優れた組成物を得ることが可能になる。このように、上記反応性基含有化合物が、反応性基として、グリシジル基、エポキシ基及びマレイミド基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
上記反応性基含有化合物はまた、その構造中に芳香環構造又は複素環構造を有するものであることが好適である。これにより、本発明の液状組成物の耐熱分解性を更に向上させることが可能になる。
【0017】
上記反応性基含有化合物はまた、1分子中に反応性基を1種又は2種以上有する化合物であってもよいし、また、当該化合物を1種又は2種以上を使用することもできる。中でも、1分子中に反応性基を1種又は2種以上有する化合物を、2種以上使用することが好適である。例えば、グリシジル基、エポキシ基及びマレイミド基のうち1種以上の反応性基を有する化合物と、該反応性基とは別の反応性基を有する化合物とを用いることが好ましい。これによって、組成物の硬化体中に2種類の架橋構造が相互網目構造を構築することになるので、耐熱性が更に飛躍的に向上されて各種物性に優れるとともに、室温で液状態にある液状組成物が得られることになる。より好ましくは、上記反応性基含有化合物として、エポキシ基及び/又はグリシジル基を有する化合物と、マレイミド基を有する化合物とを併用することである。
【0018】
上記反応性基含有化合物としては、その骨格中に芳香環構造又は複素環構造を有するものが好適である。これにより、耐熱分解性に更に優れた液状組成物を得ることが可能になる。なお、特許文献1や2のように、室温で流動性を有する低分子原料は、その構造中に脂肪族骨格を多く含有しているが、そのために耐熱分解性が充分ではなかったと考えられる。したがって、上記反応性基含有化合物中の芳香環又は複素環構造による骨格構成比率が高いことが好適である。
【0019】
上記反応性基含有化合物としてはまた、その分子量が100〜1000であることが好適である。1000を超える高分子化合物であると、これを含む組成物の粘度が高くなり、室温で液状に存在することができなくなるおそれがある。また、100未満であると、実質的に芳香環や複素環骨格を含まない化合物となり、耐熱分解性等が充分とはならないおそれがある。より好ましくは100〜800であり、更に好ましくは100〜600である。
【0020】
上記反応性基含有化合物として具体的には、上述したような特性・構造等を有する化合物であれば好適に使用し得る。例えば、下記式(a)〜(c):
【0021】
【化2】

【0022】
で表されるエポキシ基含有化合物や、下記式(d)〜(f):
【0023】
【化3】

【0024】
で表されるマレイミド基含有化合物等が好ましいが、これらの化合物のみに限定されず、反応性基を有し、室温で固化しており、かつ融点が200℃以下の化合物であれば、上記式(a)〜(f)で表される化合物等と同様に作用し得る。
【0025】
上記液状組成物において、架橋剤としては、上述した反応性基含有化合物が有する反応性基と反応して架橋構造を形成できる化合物であれば特に限定されず、また、室温で液状であるか、又は、他成分に溶解して液状になるものが好適である。例えば、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロぺニル)−1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2、3−ジカルボン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルハイミック酸、ピロメリット酸二無水物、マレイン化アロオシメン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラビスベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、(3、4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、メチルナジック酸等の酸無水物類;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂等の種々のフェノール樹脂類;種々のフェノール類とヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、グリオキザール等の種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂等の各種のフェノール樹脂類;BF錯体;スルホニウム塩類;イミダゾール類;メチレンジアニリン、ジアミノベンゼン類、ジアミノジフェニルスルフォン、ビス(クロロアニリノ)メタン、オキシジアニリン類、ビス(ヒドロキシアニリノ)メタン類、ビス[(アミノフェノキシ)フェニル]スルホン類、ビス(アミノフェノキシ)ベンゼン類、ビス(アミノフェノキシ)ビフェニル類、ジメチルジアミノビフェニル類等の芳香族アミン化合物に代表されるアミン化合物類が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
これらの中でも、アミン化合物(好ましくは芳香族アミン化合物)、ジカルボン酸無水物及びテトラカルボン酸二無水物が特に好ましく、これらを架橋剤として用いることによって、反応性基含有化合物をより充分に架橋でき、耐熱性等の各種物性に優れる硬化物を得ることが可能になる。このように、上記架橋剤が、アミン化合物、ジカルボン酸無水物及びテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。
【0027】
上記架橋剤の使用量は、架橋剤及び反応性基含有化合物中の反応性基の種類等によって適宜設定すればよいが、例えば、反応性基含有化合物中の反応性基1モルに対し、架橋剤における反応官能基が0.1〜10モルとなるように量を設定することが好適である。これによって、加工性や耐熱性等に優れる材料としてより好適なものとなる。より好ましくは0.3〜5モルであり、更に好ましくは0.6〜1.5モルである。
【0028】
上記液状組成物において、シラン化合物は、上記式(1)で表される構成単位(以下、「構成単位(1)」とも称す。)と、シロキサン骨格とを有する化合物である。このような構造を有するシラン化合物を用いることによって、耐熱性、耐圧性、機械的・化学的安定性、熱伝導率性に優れ、各種材料に優れた耐熱性等の各種特性を付与することができる。例えば、シロキサン骨格や構成単位(1)等の構造を適宜選択し、各種反応性基含有化合物に対して高い相溶性を示すものとすることにより、容易に耐熱性、耐圧性等を付与することが可能となる。これにより、高温高圧等の過酷な環境下においても各種物性の低下が低い硬化物を形成でき、実装用途等に好適に使用することができる。
【0029】
上記シラン化合物は、ケイ素原子に、イミド結合を有する有機残基と酸素原子とが結合し、該酸素原子を介してシロキサン骨格を形成しており、かつ該イミド結合を有する有機骨格が少なくとも構成単位(1)を含む形態であることが好適である。すなわち、イミド結合を有する有機骨格が結合したケイ素原子に、1個以上のイミド結合を有する有機骨格と、1個以上の酸素原子と、場合によりその他の骨格とが結合し、イミド結合を有する有機骨格と酸素原子とその他の骨格の結合数の合計が4であって、かつイミド結合を有する有機骨格が少なくとも構成単位(1)を含む形態が好ましい。
【0030】
このような形態では、ケイ素原子に結合するイミド結合を有する有機骨格の結合数は、1〜3個が適当であり、好ましくは1〜2個、より好ましくは1個である。また、酸素原子(イミド結合を有する有機骨格が結合したケイ素原子に結合する酸素原子)の結合数は、1〜3個が適当であり、好ましくは2〜3個、より好ましくは3個である。その他の有機骨格の結合数は、0〜2個が適当であり、好ましくは0〜1個、より好ましくは0個である。ケイ素原子に結合する骨格(基)の好適な組み合わせ(結合数)としては、(イミド結合を有する有機骨格、酸素原子、その他の骨格)が(1、3、0)、(2、2、0)、(1、2、1)、(3、1、0)、(2、1、1)、(1、1、2)である。
【0031】
上記その他の骨格としては、イミド結合を有さない有機基、水素原子、水酸基、ハロゲン原子及びOR基からなる群より選ばれる少なくとも1つが好適である(Rは、同一若しくは異なって、アルキル基、アシル基、アリール基及び不飽和脂肪族残基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表し、置換基を有していてもよい。)。
上記イミド結合を有さない有機基としては、好ましくは、アルキル基、アリール基、アラルキル基等の芳香族残基、不飽和脂肪族残基からなる群から選ばれる少なくとも1種であり、これらは置換基を有していてもよい。より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜8のアルキル基、又は、アリール基、アラルキル基等の芳香族残基である。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、ビニル基、クロロプロピル基、メルカプトプロピル基、(エポキシシクロヘキシル)エチル基、グリシドキシプロピル基、N−フェニル−3−アミノプロピル基、(メタ)アクリロキシプロピル基、ヘキシル基、デシル基、オクタデシル基、トリフルオロプロピル基等が好適である。
【0032】
上記シラン化合物が有するシロキサン骨格(シロキサン結合を必須とする主鎖骨格)としては、シロキサン結合(Si−O−Si結合)を必須とするものであればよく、また、シロキサン骨格の構造は、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、ラダー状、かご状、キュービック状等の構造のポリシルセスキオキサンであることが好適である。
【0033】
上記シラン化合物において、シロキサン骨格の占める割合としては、シラン化合物100質量%中、80〜10質量%であることが好ましい。より好ましくは70〜15質量%、更に好ましくは50〜20質量%である。
また上記シラン化合物において、構成単位(1)を少なくとも含むイミド結合を有する有機骨格が占める割合としては、シラン化合物に含まれるケイ素原子100モルに対して、100〜20モルであることが好ましい。より好ましくは100〜50モル、更に好ましくは100〜70モルである。
【0034】
上記シラン化合物の好適な形態を平均組成式で表すと、下記平均組成式(2):
XaYbZcSiOd (2)
(式中、Xは、同一又は異なって、イミド結合を含む有機骨格を表し、少なくとも上記式(1)で表される構成単位を含むものである。Zは、同一又は異なって、イミド結合を含まない有機基を表す。Yは、同一又は異なって、水素原子、水酸基、ハロゲン原子及びOR基からなる群より選ばれる少なくとも1つを表す。Rは、同一又は異なって、アルキル基、アシル基、アリール基及び不飽和脂肪族残基からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表し、置換基を有していてもよい。aは、0でない3以下の数であり、bは、0又は3未満の数であり、cは、0又は3未満の数であり、dは、0でない2未満の数であり、a+b+c+2d=4である。)で表すことができる。上記平均組成式(2)では、Xの係数aは、0<a≦3の数であり、Yの係数bは、0≦b<3の数であり、Zの係数cは、0≦c<3未満の数である。Oの係数dは、0<d<2である。
【0035】
上記平均組成式(2)において、Xは、イミド結合を含む有機骨格を表し、少なくとも構成単位(1)を含むものであるが、Xが構成単位(1)であることが好適である。すなわち、上記平均組成式(2)におけるXが、上記式(1)で表される構成単位であることが好ましい。
上記平均組成式(2)中、Yは、水酸基やOR基が好適である。より好ましくはOR基、更に好ましくは、Rが炭素数1〜8のアルキル基であるOR基である。また、Zは、アルキル基、アリール基、アラルキル基等の芳香族残基、及び、不飽和脂肪族残基からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい(これらは置換基を有していてもよい。)。より好ましくは、置換基を有していてもよい、炭素数1〜8のアルキル基や、アリール基、アラルキル基等の芳香族残基である。
【0036】
上記シラン化合物はまた、例えば、下記式(3):
【0037】
【化4】

【0038】
(式中、X、Y及びZは、各々上記と同様である。n及びnは、重合度を示す。nは、0でない正の整数であり、nは、0又は正の整数である。)で表すことができる。
なお、「Y/Z−」は、Y又はZが結合していることを表し、「X1〜2−」は、Xが1又は2個結合していることを表し、「(Z/Y)1〜2−」は、Z又はYが1個結合するか、Z又はYが2個結合するか、Z及びYが1個ずつ、合計2個結合することを表す。「Si−(X/Y/Z)」は、X、Y及びZから選ばれる任意の3種がケイ素原子に結合していることを示す。
上記式(3)において、Si−Om1とSi−Om2は、Si−Om1とSi−Om2の結合順序を規定するものではなく、例えば、Si−Om1とSi−Om2が交互又はランダムに共縮合している形態、Si−Om1からなるポリシロキサンとSi−Om2のポリシロキサンが結合している形態等が好適であり、縮合構造は任意である。
【0039】
上記シラン化合物は、上述したように上記平均組成式(2)で表すことができるが、該シラン化合物が有するシロキサン骨格(シロキサン結合を必須とする主鎖骨格)は、(SiOと表すこともできる。このようなシラン化合物における(SiO以外の構造は、少なくとも構成単位(1)を含む、イミド結合を有する有機骨格(イミド結合を必須とする構造)X、水素原子や水酸基等のY、及び、イミド結合を含まない有機基Zであり、これらは主鎖骨格のケイ素原子に結合することとなる。
X、Y及びZは、「鎖」の形態となった繰り返し単位に含まれてもよく、含まれていなくてもよい。例えば、Xは、側鎖として1分子に1つ以上含まれていればよい。上記(SiOにおいて、nは、重合度を表すが、該重合度は、主鎖骨格の重合度を表し、イミド結合を有する有機骨格は、必ずしもn個存在していなくてもよい。言い換えれば、(SiOの1つの単位に必ず1つのイミド結合を有する有機骨格が存在していなくてもよい。また、イミド結合を有する有機骨格は、1分子中に1つ以上含まれていればよいが、複数含まれる場合、上述したように、1つのケイ素原子に2以上のイミド結合を有する有機骨格が結合していてもよい。これらは、以下においても同様である。
【0040】
上記主鎖骨格(SiOにおいて、mは、1以上、2未満の数であることが好ましい。より好ましくはm=1.5〜1.8である。
上記nは、重合度を表し、1〜5000であることが好ましい。より好ましくは1〜2000、更に好ましくは1〜1000であり、特に好ましくは1〜200である。
上記nが2である場合のシラン化合物としては、ケイ素原子にイミド結合を有する有機骨格(X)が少なくとも1個結合してなる構成単位が2つ含まれる形態と、該構成単位が1つしか含まれない形態が挙げられる。具体的には、下記式:
【0041】
【化5】

【0042】
(式中、AはY又はZであり、X、Y及びZは、各々上記と同様である。)等が好適であり、同一の構成単位(ケイ素原子にXが少なくとも1個結合してなる構成単位)を2つ含むホモポリマーの形態と、異なる構成単位を2つ含むホモポリマーの形態と、当該構成単位を1つしか含まないコポリマーの形態(共縮合構造の形態)がある。
【0043】
上記構成単位(1)、すなわち、上記式(1)で表される構成単位において、x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数である。また、yは、0又は1であり、0であることが好ましい。x+yとしては、0以上10以下の整数であればよいが、3〜7であることが好ましく、より好ましくは3〜5であり、特に好ましくは3である。
【0044】
また上記式(1)中、Rは、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。すなわち、Rが芳香族化合物の環構造(芳香環)を有する基、複素環式化合物の環構造(複素環)を有する基及び脂環式化合物の環構造(脂環)を有する基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であることを表す。
上記Rとして具体的には、フェニレン基、ナフチリデン基、ノルボルネンの2価基、(アルキル)シクロヘキシレン基、シクロヘキセニル基等が好ましい。
なお、上記構成単位(1)は、Rがフェニレン基である場合には下記式(1−2)で表される構成単位となり、Rが(アルキル)シクロヘキシレン基である場合には下記式(1−3)で表される構成単位となり、Rがナフチリデン基である場合には下記式(1−4)で表される構成単位となり、Rがノルボルネンの2価基である場合には下記式(1−5)で表される構成単位となり、Rがシクロヘキセニル基である場合には下記式(1−6)で表される構成単位となる。
【0045】
【化6】

【0046】
上記式(1−2)〜(1−6)中、x、y及びzは、各々上記式(1)と同様である。
上記式(1−2)中、R〜Rは、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。
上記式(1−3)中、R〜R及びR6´〜R9´は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R〜R及びR6´〜R9´としては、R若しくはRがメチル基で残りの全てが水素原子である形態、又は、R〜R及びR6´〜R9´全てが水素原子である形態、又は、R〜R及びR6´〜R9´全てがフッ素原子である形態が好ましい。より好ましくは、R又はRがメチル基で残りの全てが水素原子である形態である。
【0047】
上記式(1−4)中、R10〜R15は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R10〜R15としては、全てが水素原子である形態、又は、全てがフッ素原子である形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
上記式(1−5)中、R16〜R21は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R16〜R21としては、全てが水素原子である形態、全てがフッ素原子である形態、又は、全てが塩素原子である形態のいずれかの形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
上記式(1−6)中、R22〜R25、R22´及びR25´は、同一又は異なって、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子及び芳香族からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。上記R22〜R25、R22´及びR25´としては、全てが水素原子である形態、全てがフッ素原子である形態、又は、全てが塩素原子である形態のいずれかの形態が好ましい。より好ましくは、全てが水素原子である形態である。
【0048】
上記構成単位(1)の中でも、下記式(1−7):
【0049】
【化7】

【0050】
(式中、R26は、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。)で表される構成単位であることが好適である。すなわち、上記シラン化合物が、上記式(1−7)で表される構成単位と、シロキサン骨格とを有する化合物である形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。なお、上記式(1−7)中のR26は、上記式(1)において説明したRと同様であることが好ましい。
【0051】
上記シラン化合物の特に好ましい形態としては、R26がフェニレン基であるポリ(γ−フタロイミドプロピルシルセスキオキサン)、R26がメチルシクロヘキシレン基であるポリ{γ−(へキサヒドロ−4−メチルフタルイミド)プロピルシルセスキオキサン}、R26がナフチリデン基であるポリ{γ−(1,8−ナフタルイミド)プロピルシルセスキオキサン}、R26がノルボルネンの2価基であるポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン}、R26がシクロヘキセニル基であるポリ〔(cis−4−シクロヘキセン−1,2−イミド)プロピルシルセスキオキサン〕である。これらの化合物の構造は、H−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSを測定して同定することができる。
【0052】
上記シラン化合物を得る方法としては特に限定されないが、例えば、上記平均組成式(2)で表されるシラン化合物を得る場合の方法として、下記の製法等が挙げられる。
(a)上記シラン化合物におけるイミド結合を含む有機骨格Xに対応するアミド結合を有する有機骨格X´と、シロキサン結合とを有する平均組成式X´aYbZcSiOdで表される(シラン化合物からなる)中間体をイミド化させる工程を含む製造方法。
(b)上記シラン化合物におけるイミド結合を含む有機骨格Xに対応するイミド結合を有する有機骨格が、ケイ素原子に結合しかつ加水分解性基を有するシラン化合物よりなる中間体を、加水分解・縮合させる工程を含む製造方法。
【0053】
上記液状組成物におけるシラン化合物の含有量としては、反応性基含有化合物と架橋剤との合計量100重量部に対し、10〜200重量部であることが好適である。10重量部未満であると、室温で液状態の組成物を得ることが難しくなるおそれがあり、200重量部を超えると、シラン化合物がより充分に分散できず、硬化物の架橋構造が不均一となり、耐熱性が充分に高いものとはならないおそれがある。より好ましくは15〜150重量部、更に好ましくは20〜120重量部である。
【0054】
本発明の液状組成物はまた、上記必須成分以外の添加剤を含有していてもよい。例えば、有機溶剤や希釈剤等の揮発成分、硬化促進剤、安定剤、離型剤、カップリング剤、着色剤、可塑剤、可とう化剤、各種ゴム状物、光感光剤、充填材、難燃剤、顔料等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0055】
上記揮発成分としては、特に限定されず、通常使用されるものを使用すればよい。
ここで、本発明の液状組成物は、上述したように、揮発成分を含まずとも室温で液状で存在することができ、揮発成分を含まないことが望まれる用途にも好適に用いられるものである。したがって、上記液状組成物100質量%中の揮発成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは実質的に揮発成分を含まないことである。実質的に揮発成分を含まないとは、揮発成分の含有量が、組成物を溶解させることができる量未満であることを意味し、例えば、上記液状組成物100質量%中に1質量%以下であることが好適である。このように、上記液状組成物が実質的に揮発成分を含まない形態もまた、本発明の好適な形態の1つである。なお、印刷インク用途等、揮発成分を含んでもよい用途に用いる場合にあっては、上記液状組成物は揮発成分を含んでいてもよく、このような形態も本発明の好適な実施形態の1つである。
このように本発明の液状組成物は、揮発成分を含んでも、実質的に含んでいなくても、室温で液状に存在できるという極めて特異な性質を有するものであり、この点に重要な技術的意義を有する。
【0056】
上記硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリブチルヘキサデシルホスフォニウムブロマイド、トリブチルホスフィン、トリス(ジメトキシフェニル)ホスフィン等の有機リン化合物等の1種又は2種以上が好適である。
【0057】
上記液状組成物はまた、その硬化物の5%質量減少温度が290℃以上であることが好ましい。5%質量減少温度が高い、すなわち耐熱分解性(耐熱性)に優れていることで、高温で使用する部材として用いる場合により好適なものとなる。5%質量減少温度としては、より好ましくは300℃以上であり、更に好ましくは310℃以上である。
上記5%質量減少温度は、液状組成物の硬化物について、例えば、示差熱天秤(機器名「TG−DTA2000SA」、ブルカー社製)を用い、測定条件を昇温速度10℃/min、空気流通下100ml/分として測定することができる。
【0058】
本発明の液状組成物は、反応性基含有化合物、架橋剤及びシラン化合物を含むように調製すればよいが、例えば、次のように調製することが好適である。すなわち、反応容器に、反応性基含有化合物、シラン化合物及び有機溶剤を投入し、40〜200℃にて加熱混合し、次いで脱溶剤を行った後、架橋剤を投入して撹拌し、室温まで冷却することにより、本発明の液状組成物を得ることが好ましい。これにより、分子レベルで反応性基含有化合物とシラン化合物とが混じり合い、溶剤等の揮発成分を含まずとも室温で液状に存在できる組成物となる。このように、反応性基含有化合物、シラン化合物及び有機溶剤を加熱混合する工程と、脱溶剤工程と、架橋剤を添加する工程と、室温への冷却工程とを含む(好ましくは、この順に、これらの工程を含む)液状組成物の製造方法もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。なお、揮発成分を含んでもよい用途に用いる場合は、脱溶媒工程を経なくてもよい。
【0059】
上記製造方法において、加熱混合工程に使用される有機溶剤としては、例えば、エーテル結合、エステル結合及び窒素原子からなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の構造を有する化合物が好適に用いられる。
上記エーテル結合を有する化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ペラトロール、プロピレンオキシド、1,2−エポキシブタン、ジオキサン、トリオキサン、フラン、2−メチルフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、シオネール、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、グリセリンエーテル、クラウンエーテル、メチラール、アセタール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−イソプロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、2−フェノキシエタノール、2−(ベンジルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が好適である。
【0060】
上記エステル結合を有する化合物としては、例えば、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸sec−ヘキシル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸ベンジル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソペンチル、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノブチリン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、酪酸エステル類、イソ酪酸エステル類、イソ吉草酸エステル類、ステアリン酸エステル類、安息香酸エステル類、ケイ皮酸エチル類、アビエチン酸エステル類、アジピン酸エステル類、γ−ブチロラクトン類、シュウ酸エステル類、マロン酸エステル類、マレイン酸エステル類、酒石酸エステル類、クエン酸エステル類、セバシン酸エステル類、フタル酸エステル類、二酢酸エチレン類等が好適である。
【0061】
上記窒素原子を含有してなる化合物としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、1−ニトロプロパン、2−ニトロプロパン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、プロピオニトリル、スクシノニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、α−トルニトリル、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム等が好適である。
【0062】
上記エーテル結合、エステル結合及び窒素原子からなる群より選ばれた構造を複数有する化合物としては、例えば、N−エチルモルホリン、N−フェニルモルホリン、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、フェノキシエチルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が好適である。
【0063】
上記有機溶剤の使用量としては、反応性基含有化合物及びシラン化合物(固形分)の合計量100重量部に対して5重量部以上が好ましく、また1000重量部以下が好ましい。より好ましくは10重量部以上であり、また300重量部以下である。
【0064】
上記加熱混合工程は、例えば、40〜200℃の温度条件下で行うことが好適である。これによって、シラン化合物をより充分に分散できる。より好ましくは60〜180℃であり、更に好ましくは80〜160℃である。
また混合方法、脱溶剤工程及び室温への冷却工程は、通常の手法で行えばよく、特に限定されるものではない。
【0065】
上記液状組成物は、必要に応じて硬化促進剤等を添加し、熱硬化することにより硬化物とすることができる。硬化温度は、70〜220℃が好適であり、より好ましくは80〜200℃である。また、硬化時間は、1〜15時間が好適であり、より好ましくは2〜10時間である。
上記硬化物の形状は、例えば、異形品等の成形体、フィルム、シート、ペレット等が挙げられ、このように本発明の液状組成物を用いてなる硬化物(本発明の液状組成物から形成される硬化物)もまた、本発明の好ましい形態の1つである。
【0066】
上記液状組成物としては、例えば、実装用途、光学用途、オプトデバイス用途、表示デバイス用途、機械部品用途、電気・電子部品用途、自動車部品用途、印刷インク用途等の種々様々な用途に好適に用いられるものである。具体的には、エレクトロニクス実装材料、ポッティング材、アンダーフィル材、導電性ペースト、絶縁ペースト、ダイポンド材、印刷インク等に好ましく使用される。中でも、上記液状組成物は、有機溶剤等の揮発成分を含まずとも室温で液状で存在できる組成物であるため、エレクトロニクス実装材料等の揮発成分を含まないことが求められる用途に特に好適に用いられることになる。このように、上記液状組成物を用いてなるエレクトロニクス実装材料もまた、本発明の1つである。
【0067】
上記エレクトロニクス実装材料は、電子部品等に使用され得る材料であれば特に限定されないが、例えば、半導体部品を封止する際に使用される液状半導体封止材等が好適である。このようなエレクトロニクス実装材料には、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じ、例えば、硬化促進剤、安定剤、離型剤、カップリング剤、着色剤、可塑剤、可とう化剤、各種ゴム状物、光感光剤、充填材、難燃剤、顔料等を含むことができる。また、上記エレクトロニクス実装材料は、揮発成分を多量に含むと不具合を生じるおそれがあるため、揮発成分を含まないことが望まれており、例えば、上記エレクトロニクス実装材料100質量%中の揮発成分の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは実質的に揮発成分を含まないことである。
【発明の効果】
【0068】
本発明の液状組成物は、上述した構成よりなるため、耐熱性等の各種物性に優れ、しかも有機溶剤や希釈剤等の揮発成分を実質的に含まなくても、室温で液状で存在できるものである。したがって、エレクトロニクス実装材料の他、各種用途に有用なものである。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。なお、後述する化学式中のnは、括弧内のシロキサン結合が繰り返されていることを示し、各合成例で得られた化合物の化学式は、合成された化合物の主たる組成を示すものである。
下記の実施例及び比較例において、反応性基含有化合物及び比較用反応性基含有化合物の融点の測定は、DSC(「EXSTAR6000」、セイコーインスツルメント社製)と融点測定器(「B−535」、BUCHI社製)を用いて行った。DSC測定を窒素流通下、昇温速度5min/℃で行い、吸熱ピークの発生する温度領域を予め確認し、融点測定器で室温から該温度領域まで目視観察して、融点を調べた。
【0070】
合成例1(シラン化合物溶液1の調製)
ポリ(γ−フタロイミドプロピルシルセスキオキサン)の合成
撹拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた500mL4つ口フラスコに、予めモレキュラーシーブで乾燥したジグライム86.6gと、3−アミノプロピルトリメトキシシラン179.4gを投入し、撹拌しながら乾燥窒素流通下で100℃に昇温して系内の水分を除去した。次に80℃に反応液温度を維持しながら無水フタル酸148.2gを30分かけて4分割投入した。投入終了後3時間で無水フタル酸が完全に消費されているのを高速液体クロマトグラフィで確認した。
反応生成物をサンプリングしてH−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSを測定し、下記化学式(i−1):
【0071】
【化8】

【0072】
で表される化合物を含有することを確認した。
H−NMR:0.72(t、2H)、1.81(m、2H)、3.48(dd、2H)、3.72(s、9H)、4.71(bs、1H)、7.56−7.72(m、2H)、7.73−7.86(m、2H)、11.0(bs、1H)
13C−NMR:9.1、22.2、40.6、50.5、122.3、122.4、122.5、132.4、134.0、134.2、168.7、172.0
MALDI−TOF−MS:334(M+Li)
【0073】
続いて脱イオン水54.2gを一括投入し冷却管で副生メタノールの還流が掛かるように昇温し、6時間保持したのち、冷却管をパーシャルコンデンサーに付け替えて再び昇温を開始し、副生メタノールおよび縮合水を回収しながら3時間かけて反応液温度を120℃に到達させた。120℃到達時にピリジン7.9gを投入してそのまま昇温を開始し、縮合水を回収しながら3時間かけて160℃に到達、同温度で2時間保持して室温まで冷却した。このようにして得られた反応生成物を「シラン化合物溶液1」(固形分濃度80.6%)とする。
反応生成物は、不揮発分80.6%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定したところ数平均分子量2310、重量平均分子量2830であった。H−NMR、13C−NMRを測定し、下記化学式(i−2):
【0074】
【化9】

【0075】
で表される化合物(ポリ(γ−フタロイミドプロピルシルセスキオキサン))を含有することを確認した。
H−NMR:0.3−0.9(bs、2H)、1.5−1.8(bs、2H)、3.4−3.6(bs、2H)、7.1−7.7(bs、4H)
13C−NMR:10.0、22.1、40.4、123.1、132.3、133.7、168.1
【0076】
合成例2(シラン化合物溶液2の調製)
ポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン}の合成
撹拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた300mL4つ口フラスコに、予めモレキュラーシーブで乾燥したジグライム35.1gと、3−アミノプロピルトリメトキシシラン30.8gを投入し、撹拌しながら乾燥窒素流通下で100℃に昇温して系内の水分を除去した。次に100℃のまま反応液温度を維持しながら5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物28.2gを30分かけで4分割投入した。投入終了後9時間で5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物が完全に消費されているのを高速液体クロマトグラフィで確認した。
反応生成物をサンプリングしてH−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSを測定し、下記化学式(ii−1):
【0077】
【化10】

【0078】
で表される化合物を含有することを確認した。
H−NMR:0.40(t、2H)、1.35(m、2H)、1.46(dd、2H)、3.08−3.17(m、1H)、3.20(dd、2H)、3.28−3.37(m、1H)、3.40(s、9H)、3.42(m、1H)、3.48(m、1H)、5.91(s、2H)、6.22(bs、1H)、11.0(bs、1H)
13C−NMR:8.1、21.2、40.6、44.9、45.8、50.3、50.6、52.3、134.5、177.8、178.1
MALDI−TOF−MS:350(M+Li)
【0079】
続いて脱イオン水9.3gを一括投入し冷却管で副生メタノールの還流が掛かるように昇温し、95℃で10時間保持したのち、冷却管をパーシャルコンデンサーに付け替えて再び昇温を開始し、副生メタノールおよび縮合水を回収しながら3時間かけて反応液温度を120℃に到達させた。120℃到達時にピリジン1.4gを投入してそのまま昇温を開始し、縮合水を回収しながら3時開かけて160℃に到達、同温度で2時間保持して室温まで冷却した。このようにして得られた反応生成物を「シラン化合物溶液2」(固形分濃度:58.2%)とする。
反応生成物は不揮発分58.2%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定したところ数平均分子量2340、重量平均分子量2570であった。H−NMR、13C−NMRを測定し、下記化学式(ii−2):
【0080】
【化11】

【0081】
で表される化合物(ポリ{γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスキオキサン})を含有することを確認した。
H−NMR:0.25−0.45(bs、2H)、1.2−1.45(bs、2H)、1.47(dd、2H)、3.0−3.2(bs、4H)、3.4−3.6(bs、2H)、5.8−6.0(bs、2H)
13C−NMR:9.7、21.5、40.4、44.9、45.7、50.1、134.2、178.0
【0082】
合成例3(シラン化合物溶液3の調製)
ポリ〔(cis−4−シクロヘキセン−1,2−イミド)プロピルシルセスキオキサン〕の合成
撹拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた500mL4つ口フラスコに、予めモレキュラーシーブで乾燥したジグライム103.7gと、3−アミノプロピルトリメトキシシラン177.6gを投入し、撹拌しながら乾燥窒素流通下で100℃に昇温して系内の水分を除去した。次に80℃に反応液温度を維持しながらcis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物150.7gを30分かけて4分割投入した。投入終了後3時間でcis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物が完全に消費されているのを高速液体クロマトグラフィで確認した。
反応生成物をサンプリングしてH−NMR、13C−NMR、MALDI−TOF−MSを測定し、下記化学式(iii−1):
【0083】
【化12】

【0084】
で表される化合物を含有することを確認した。
H−NMR:0.72(t、2H)、1.81(m、2H)、2.23(dd、4H)、2.74(m、1H)、2.91(dd、1H)、3.48(dd、2H)、3.72(s、9H)、5.74(m、2H)、11.0(bs、1H)
13C−NMR:9.1、22.2、25.5、26.8、40.6、42.3、43.1、44.7、131.7、168.8、172.7、
MALDI−TOF−MS:338(M+Li)
【0085】
続いて脱イオン水53.4gを一括投入し冷却管で副生メタノールの還流が掛かるように昇温し、6時間保持したのち、冷却管をパーシャルコンデンサーに付け替えて再び昇温を開始し、副生メタノールおよび縮合水を回収しながら3時間かけて反応液温度を120℃に到達させた。120℃到達時にピリジン7.9gを投入してそのまま昇温を開始し、縮合水を回収しながら3時間かけて160℃に到達、同温度で2時間保持して室温まで冷却した。このようにして得られた反応生成物を「シラン化合物溶液3」(固形分濃度:74.3%)とする。
反応生成物は不揮発分74.3%で濃褐色高粘度液体であり、GPCで分子量測定したところ数平均分子量2041、重量平均分子量2838であった。H−NMR、13C−NMRを測定し、下記化学式(iii−2):
【0086】
【化13】

【0087】
で表される化合物(ポリ〔(cis−4−シクロヘキセン−1,2−イミド)プロピルシルセスキオキサン〕)を含有することを確認した。
H−NMR:0.25−0.55(bs、2H)、1.3−1.5(bs、2H)、2.0−2.5(dd、4H)、2.9−3.1(bs、2H)、3.2−3.35(bs、2H)、5.65−5.8(bs、2H)
13C−NMR:10.0、21.0、23.8、39.0、41.1、127.8、180.5
【0088】
実施例1(組成物1)
パーシャルコンデンサー、補集管、真空ポンプ、温度センサー、攪拌装置を付帯した500mLフラスコに、4,4’−ビス(グリシジロキシ)ビフェニル121.1gと、合成例1で得たシラン化合物溶液1(固形分濃度80.6%)229.7gを仕込み、140℃まで加熱しながら攪拌して均一な溶液を得た。引き続き真空ポンプでフラスコ内を5kPaまで減圧にし、7時間かけて揮発成分を補集した。その後、フラスコ内温を90℃に下げてテトラヒドロメチル無水フタル酸64.1gを投入し完全に均一になるまで攪拌した後、25℃まで冷却することで組成物1を得た。
このように調製した組成物1について、下記のようにして、室温(25℃)での性状、60℃粘度及び5%質量減少温度を評価した。結果を表1に示す。
【0089】
(1)室温での性状及び60℃粘度
上記により調製した樹脂組成物(液状組成物)を室温(25℃)まで冷却した後、目視により室温下での性状を確認した。また、コーンプレート型粘度計(機器名「cap2000H」、ブルックフィールド社製)を用いて測定温度60℃での粘度を測定した。
(2)5%質量減少温度
上記により調製した樹脂組成物(液状組成物)100部に対して、トリトリルホスフィン(東京化成工業社製)0.5部を添加してよく撹拌した後、PTFE製型枠に流し込み、120℃×30分+180℃×3時間の温度条件下に放置して硬化物とした。得られた硬化物の加熱時の質量減少温度を、示差熱天秤(機器名「TG−DTA2000SA」、ブルカー社製)を用いて測定した。測定条件は昇温速度10℃/min、空気流通下100ml/分とした。
【0090】
実施例2〜11、比較例1〜11(組成物2〜22)
反応性基含有化合物(又は比較用反応性基含有化合物)、シラン化合物溶液及び架橋剤として、各々、実施例1で使用した4,4’−ビス(グリシジロキシ)ビフェニル、シラン化合物溶液1及びテトラヒドロメチル無水フタル酸に代えて、表1〜3に記載の化合物等を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、組成物2〜22を得た(比較例3〜4及び7〜11では、シラン化合物溶液を添加しなかった。)。なお、各化合物等の使用量は、反応性基含有化合物(又は比較用反応性基含有化合物)と架橋剤との官能基当量比が等しくなるようにし、また、シラン化合物の配合比率については、反応性基含有化合物と架橋剤との総質量100重量部に対して、シラン化合物の固形分が100重量部となるように設定した。また、実施例9〜11及び比較例9〜11では、反応性基含有化合物(又は比較用反応性基含有化合物)として2種の化合物を使用したが、この2種の化合物の配合比は1:1(モル比)とした。
このように調製した組成物2〜22について、実施例1と同様にして、室温(25℃)での性状、60℃粘度及び5%質量減少温度を評価した。結果を表1〜3に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
表1〜3中、記号等は下記のとおりである。
シラン化合物溶液1:合成例1で得たポリ(γ−フタロイミドプロピルシルセスオキサン)を含む溶液
シラン化合物溶液2:合成例2で得たポリ〔γ−(5−ノルボルネン−2,3−イミド)プロピルシルセスオキサン〕を含む溶液
シラン化合物溶液3:合成例3で得たポリ〔(cis−4−シクロヘキセン−1,2−イミド)プロピルシルセスキオキサン〕を含む溶液
※1:測定温度(60℃)でも結晶が析出したため、粘度を測定できなかった。
※2:析出した結晶を含んだままの硬化物となったため、測定に値する硬化物が作製できないと判断した。
【0095】
表1〜3の結果より、以下のことが確認された。
表1において、実施例1、3と比較例3、4との比較から、同じ反応性基含有化合物及び架橋剤を用いた場合でも、シラン化合物を添加するか又は添加しないかの相違により、室温での性状が全く異なることが分かる。つまり、実施例1、3では室温で液状の組成物が得られたが、比較例3、4では室温及び60℃で結晶が析出し、液状の組成物を得ることができなかった。また、実施例1〜4では、室温で固化しており、かつ融点が200℃以下の反応性基含有化合物を使用したのに対し、比較例1〜2では、当該化合物に代えて、室温で液状にある化合物を使用しており、実施例1〜4及び比較例1〜2ではいずれの場合も室温で液状の組成物を得ることができたが、比較例1〜2では5%質量減少温度が280℃以下と、実施例1〜4に比較して著しく耐熱分解性に劣ることが分かる。
【0096】
表2の実施例5〜8及び比較例5〜8は、表1の実施例1〜4及び比較例1〜4で使用した架橋剤(酸無水物)に代えて、架橋剤としてアミン化合物を使用した例であるが、この場合も、表1の実施例1〜4と比較例1〜4との比較結果と同様のことがいえる。すなわち、実施例5〜8と同じ反応性基含有化合物及び架橋剤を使用しても、シラン化合物を添加しない場合(比較例7〜8)では室温で結晶が析出し、室温で液状の組成物を得ることができなかった。また、比較例1〜2と同じく室温で液状にある化合物を用いた比較例5〜6では、5%質量減少温度が270℃以下と、実施例5〜8に比較して著しく耐熱分解性に劣ることが分かる。
【0097】
表3の実施例9〜11は、反応性基含有化合物として2種の化合物(具体的には、エポキシ基を含有する化合物及びマレイミド基を含有する化合物)を使用し、かつシラン化合物を併用した例であるのに対し、比較例9〜10は、室温で液状にある化合物と、本発明の反応性基含有化合物(マレイミド基を有する化合物)とを使用し、かつシラン化合物を添加しなかった例である。また、比較例11は、反応性基含有化合物として2種の化合物(具体的には、エポキシ基を含有する化合物及びマレイミド基を含有する化合物)を使用し、かつシラン化合物を添加しなかった例である。この場合も、シラン化合物を添加しなかった場合(比較例9〜11)は、室温で結晶が析出し又は高粘度流体となり、室温で液状といえる状態を示す組成物を得ることができなかった。中でも、比較例9及び10は、室温で液状の化合物を一部使用した例であるが、このような場合でも室温で液状の組成物を得られなかった。また、実施例9〜11では、比較例9〜11に比較して5%質量減少温度が著しく高く、耐熱分解性がより優れることが分かる。
また表3の実施例9及び実施例10は、反応性基含有化合物を更にもう1種(マレイミド化合物)併用したこと以外は、各々、表2の実施例6及び実施例7と同様の反応性基含有化合物、架橋剤及びシラン化合物を使用した例であるが、実施例9及び10の方が、実施例6及び7に比較して、5%質量減少温度がより高い、すなわち耐熱分解性がより優れる結果となることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応性基含有化合物と、架橋剤と、下記式(1):
【化1】

(式中、Rは、芳香族、複素環及び脂環からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を表す。x及びzは、同一又は異なって、0以上5以下の整数である。yは、0又は1である。)で表される構成単位及びシロキサン骨格を有するシラン化合物とを含む液状組成物であって、
該反応性基含有化合物は、室温で固化しており、かつ200℃以下に融点を有する化合物であることを特徴とする液状組成物。
【請求項2】
前記液状組成物は、60℃での粘度が100Pa・s以下であることを特徴とする請求項1に記載の液状組成物。
【請求項3】
前記反応性基含有化合物は、反応性基として、グリシジル基、エポキシ基及びマレイミド基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の液状組成物。
【請求項4】
前記架橋剤は、アミン化合物、ジカルボン酸無水物及びテトラカルボン酸二無水物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液状組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の液状組成物を用いてなることを特徴とするエレクトロニクス実装材料。

【公開番号】特開2011−12153(P2011−12153A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156837(P2009−156837)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】