説明

深井戸用水中ポンプ

【課題】井戸ケーシングやケーブルを損傷させることなく、効率の良いガス抜きが可能な深井戸用水中ポンプを提供すること。
【解決手段】深井戸用水中ポンプ1は、吸込ケーシング10と、吸込ケーシング10の上部に組み付けされ、第1孔部28を有する第1インペラ21と第1ガス抜き孔39を有する第1中間ケーシング23とを備える第1ポンプ部20と、この第1ポンプ部20に組み付けられ第2孔部47を有する第2インペラ41と第2ガス抜き孔55を有する第2中間ケーシング42とを備える第2ポンプ部40と、この第2ポンプ部40に複数組み付けられる第3ポンプ部60と、この第3ポンプ部60の上段に最上段として組み付けられる吐出ケーシング80と、を備え、第1ガス抜き孔39及び第2ガス抜き孔55の延長上に、第1フランジ部33及び第2フランジ部50が位置することで、排出したガスの気泡及び湯水を攪拌可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水や温泉を揚水する深井戸用水中ポンプに関し、特にガス抜きが可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、深井戸等で湯水を揚水させるのに、深井戸用水中ポンプが用いられている。このような深井戸用水中ポンプは、回転軸に所定の間隔で複数のインペラを固定し、これらインペラをケーシング内にそれぞれ収納させることで、ポンプが多段に連結される構成となっている。このような構成とすることで、インペラ及びケーシングにより、流路が形成され、さらにモータにより各インペラを回転させることで、順次湯水を増圧し、揚水が可能となる。
【0003】
このような深井戸用水中ポンプは、ガスをあまり含有しない水を揚水させる場合には適している。しかし、ガスを多く含有する水、例えば天然発泡水や、温泉等の湯水を揚水すると、ケーシング内に水を吸込んだ際に、ガスが溜まる虞があり、このような湯水を揚水させる場合には適していない。このような場合、ケーシング内に溜まったガスは、インペラ及びケーシング間の流路を順次移動すれば、いずれ深井戸用水中ポンプの吐出口から吐出される。しかし、インペラの回転軸周辺にガスが溜まると、流路の途中にガス塊が発生し、湯水が移送できなくなる、所謂ガスロックが発生する虞がある。
【0004】
ガスロックが発生すると、エア(ガス)抜きや呼び水等を行なう必要がある。しかし、これらの作業を行なうには、ポンプの運転を停止させる必要がある。このため、ガスを含有する湯水を用いると、ガスロックが頻繁に発生し、ポンプ停止及びガス抜き等が必要となり、作業性、運転性が悪くなる。
【0005】
このため、インペラの回転軸周辺にガス抜き孔を設け、ケーシングの外側面に貫通する排気管からガスを抜くことで、ガスロックを防止する深井戸用水中モータポンプが知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6−8791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような深井戸用水中モータポンプでは次のような問題があった。即ち、上述した排気管からガスを抜く深井戸用水中モータポンプは、ガスを抜くことが可能であって、さらにポンプ効率を低下させないために、排気管の径を小さくする必要がある。しかし、排気管の径が小さいと、排気管から排出されるガス及び湯水の流速及び圧力が増大し、この高速及び高圧力のガス及び湯水が排気管から排出されることとなる。
【0007】
一般的に深井戸用水中ポンプと井戸ケーシングとの隙間は小さく(例えば数mm〜数cm程度)、また、深井戸用水中ポンプの外周部には、モータに接続されるケーブルも設けられている。しかし、排出されたガス及び湯水は、排気管から外部に排出されると、その圧力及び流速が低減することなく、井戸ケーシングやケーブルに衝突することとなる。このように、ガス及び湯水が井戸ケーシング及びケーブル等に衝突すると、井戸ケーシング及びケーブル等を損傷及び磨耗させる虞がある。
【0008】
また、インペラに設けるガス抜き孔は、加工状の制約から円形状に形成されるが、ガスの発生量によっては、ガス抜き孔の面積を広くとる必要がある場合であっても、ガス抜き孔の直径が大きくなり、ベースの半径方向に対するガス抜き孔の割合が大きくなる虞もある。これにより、ポンプ効率の低減となる虞や、強度低下となる虞がある。また、湯水中の固形成分がガス抜き孔に付着することで、ガス抜き効率が低下する虞もある。
【0009】
そこで本発明は、インペラからガス抜きを行なう場合であっても、井戸ケーシングやケーブルを損傷させることなく、効率の良いガス抜きが可能な深井戸用水中ポンプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明の深井戸用水中ポンプは次のように構成されている。
【0011】
モータに連結された回転軸と、前記モータ上部に配置され、前記回転軸の外周面の一部を覆うとともに、流体の吸込口を有する吸込ケーシングと、円板状の第1ベース部、この第1ベース部の下面に設けられた複数の羽根、及び、前記第1ベース部の前記回転軸周辺に設けられた複数の第1孔部を有し、前記回転軸に固定された第1インペラと、その上端側に設けられた第1フランジ部、前記第1インペラの上面を覆う第1対向面、この第1対向面とその外周面との間に設けられた流路、及び、前記第1対向面と前記第1インペラ上面との間の空間及び外部空間とを連通させるとともに、その延長上に前記第1フランジ部が位置する複数の第1ガス抜孔を有し、前記第1インペラを収納するとともに、その下端側が前記吸込ケーシングの上部に取り付けられた第1中間ケーシングと、円板状の第2ベース部、この第2ベース部の下面に設けられた複数の羽根、及び、前記第2ベース部の前記回転軸周辺に設けられ、前記第1孔部に対して総開口面積が大きく形成された複数の前記第2孔部を有し、前記回転軸に固定された第2インペラと、その上端側に設けられた第2フランジ部、前記第2インペラの上面を覆う第2対向面、この第2対向面とその外周面との間に設けられた流路、及び、前記第2対向面と前記第2インペラ上面との間の空間及び前記外部空間とを連通させるとともに、その延長上に前記第2フランジ部が位置する複数の第2ガス抜孔を有し、前記第2インペラを収納するとともに、その下端側が前記第1中間ケーシングの上部に取り付けられた第2中間ケーシングと、前記回転軸に固定された第3インペラと、この第3インペラを収納するとともに、前記第2中間ケーシングの上部に取り付けられ、その上端部と下端部とが互いに取り付け可能に形成された複数の第3中間ケーシングと、前記第3中間ケーシングの最上段に取り付けられ、前記流体の吐出口を有する吐出ケーシングと、帯状に形成され、その両端に固定部を有し、前記吸込ケーシングにその一端が、前記吐出ケーシングにその他端がそれぞれ固定可能に形成された複数の固定バンドと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、インペラからガス抜きを行なう場合であっても、井戸ケーシングやケーブルを損傷させることなく、効率の良いガス抜きが可能な深井戸用水中ポンプを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係る深井戸用水中ポンプ1を図1〜5を用いて説明する。図1は本発明の一実施の形態に係る深井戸用水中ポンプ1の構成を模式的に示す部分断面図、図2は同深井戸用水中ポンプ1の一部構成を模式的に示す部分断面図、図3は同深井戸用水中ポンプ1に用いられる第1インペラ21を示す平面図、図4は同深井戸用水中ポンプ1に用いられる第2インペラ41を示す平面図、図5は同深井戸用水中ポンプ1に用いられる被覆部材100を示す正面図である。なお、図1、2中、Fは湯水の流路、Gは気泡の流れ、Hは第1、第2ガス抜き孔39,55の延長上、Pはパッキン、Wは井戸ケーシングをそれぞれ示している。また、本実施例では、水中側を下側、大気側を上側として説明する。
【0014】
図1、2に示すように、深井戸用水中ポンプ1は、井戸ケーシングWに挿入されることで設けられ、水中モータ2と、水中モータ2の出力軸3にブッシュ等の継手4を介して連結された回転軸5により接続されている。深井戸用水中ポンプ1は、水中モータ2の上部に最下段として配置される吸込ケーシング10と、吸込ケーシング10の上部に取り付けられる第1ポンプ部20と、この第1ポンプ部20に組み付けられる第2ポンプ部40と、この第2ポンプ部40に複数組み付けられる第3ポンプ部60と、この第3ポンプ部60の上段に最上段として組み付けられる吐出ケーシング80と、を備えている。
【0015】
また、深井戸用水中ポンプ1は、これら吸込ケーシング10、第1ポンプ部20、第2ポンプ部40、複数の第3ポンプ部60、及び、吐出ケーシング80を上下方向から固定する固定バンド90と、を備えている。なお、固定バンド90の内面には、例えば水中モータ2に信号や電源を供給するケーブルが設けられている。
【0016】
さらに深井戸用水中ポンプ1は、第1ポンプ部20及び第2ポンプ部40の外周を覆うとともに、これら第1、第2ポンプ部20、40と固定バンド90との間に設けられる被覆部材100とを備えている。
【0017】
吸込ケーシング10は、略円筒状に形成されるとともに、下部に水中モータ2と組み付く組付座11と、この組付座11の上部に設けられた吸込口12と、上端部(上端側)の外周縁に設けられ、後述するインペラカバー22が嵌め合う上端嵌合部13と、固定バンド90が挿入する挿入穴14とを備えている。なお、組付座11は、例えば水中モータ2に設けられたボルト穴にボルト15を螺合することで組み付けられる。
【0018】
上端嵌合部13は、吸込ケーシング10の上端部外周縁を径が異なる2段形状の雄状に成形されることで形成されており、インペラカバー22が嵌合する。また、吸込ケーシング10には、吸込ケーシング10の外周であって、吸込口12を覆うとともに、複数のパンチ孔16aによりパンチ孔を有して(メッシュ状に)形成されたストレーナ16が設けられている。なお、このパンチ孔16aは、後述する第1孔部28及び第2孔部47より小さな径で形成されている。
【0019】
第1ポンプ部20は、回転軸5に固定された第1インペラ21と、この第1インペラ21の下方に設けられ、吸込ケーシング10に取り付けられるインペラカバー22と、このインペラカバー22に取り付けられ、第1インペラ21を覆う(収納する)第1中間ケーシング23と、を備えている。また、第1ポンプ部20は、回転軸5と第1中間ケーシング23の後述する内面部35の内周部との間に軸受部24を備えている。
【0020】
図3に示すように、第1インペラ21は、ステンレスや樹脂等で成型され、円板状のベース部25と、ベース部25の中心に設けられ回転軸5が挿入される挿入部26と、ベース部25の一方の主面に設けられた複数(図3中5枚)の羽根27と、挿入部26の周囲であって、羽根27と羽根27との間に設けられた第1孔部28と、を備えている。
【0021】
羽根27は、挿入部26の周囲から第1インペラ21の外周方向に湾曲しながら延設されるとともに、羽根27と羽根27との間隔は、ベース部25の中心側から外周側に向って広い間隔となるように配置されている。
【0022】
第1孔部28は、ベース部25を貫通する円形状に形成されており、その開口面積は、使用状況及びポンプ性能等により適宜設定する。なお、第1インペラ21は、ベース部25とインペラカバー22との間を羽根27が回転することで、流路Fが形成されている。
【0023】
インペラカバー22は、その中心を貫通する回転軸5及び流路Fを形成する貫通口29と、第1インペラ21の羽根27と対向するとともに、羽根27と略同一の断面形状となるカバー部30とを有している。又、インペラカバー22は、その下端部に設けられ、吸込ケーシング10の上端嵌合部13と嵌合する下端嵌合部31と、その上端部に設けられ上端部外周縁を径が異なる2段形状の雄状に形成された上端嵌合部32とを備えている。
【0024】
第1中間ケーシング23は、中空の杯状で、小径端部側に設けられた第1フランジ部33と、他方の大径端部側に設けられ、インペラカバー22に嵌合する下端嵌合部34と、第1インペラ21の上面を覆う内面部(第1対向面)35と、内面部35と外面部36との間に設けられた流路Fと、を備えている。
【0025】
また、第1中間ケーシング23は、内面部35から第1中間ケーシングの外面まで貫通する第1ガス抜き孔39を備えている。なお、図2の二点鎖線Hに示すように、第1ガス抜き孔39は、その延長先に第1フランジ部33が位置するように設けられている。
【0026】
第1フランジ部33は、その上断面形状が、後述する第2インペラ41の羽根46の下端形状と略同一に形成されたカバー部37と、上端部外周縁を径が異なる2段形状の雄状に形成された上端嵌合部38とを備えている。なお、第1フランジ部33の上面内周側に設けられたカバー部37と、後述する第2インペラ41の羽根46とにより流路Fが形成されている。また、第1フランジ部33は、ガスや湯水による磨耗等が考慮された厚みを有している。
【0027】
第2ポンプ部40は、回転軸5に固定された第2インペラ41と、第1中間ケーシング23に取り付けられるとともに、第2インペラ41を覆う(収納する)第2中間ケーシング42と、を備えている。また、第2ポンプ部40は、回転軸5と第2中間ケーシング42の後述する内面部(第2対向面)52の内周部との間に軸受部43を備えている。
【0028】
第2インペラ41は、例えばロストワックス法を用いて、ステンレスやアルミニウム、樹脂、又は、使用する湯水に対して耐食性を有する材料等で成型されている。図4に示すように、第2インペラ41は、円板状のベース部44と、このベース部44の中心に設けられ回転軸5が挿入される挿入部45と、このベース部44の一方の主面(下面)に設けられた複数(図4中5枚)の羽根46と、挿入部45の周囲であって、羽根46と羽根46との間に設けられた第2孔部47と、を備えている。
【0029】
また、第2インペラ41は、ベース部44の他方の主面であって、第2孔部47より外周側に設けられ、円環状の突起部48を有しており、後述する当接部54と限りなく近接又は当接することで、気泡及び湯水を流路Fへと流さない構造となっている。なお、第2インペラ41は、上述したように、ベース部44と第1フランジ部33のカバー部37との間を羽根46が回転することで、流路Fが形成されている。
【0030】
羽根46は、挿入部45の周囲から第2インペラ41の外周方向に湾曲しながら延設されるとともに、羽根46と羽根46との間隔は、ベース部44の中心側から外周側に向って広い間隔となるように配置されている。第2孔部47は、ベース部44を貫通する例えば円形が回転方向に2つ連なった形状(楕円形状、達磨状及び糸瓜状等)である長孔形状に形成されている。また、第2孔部47の開口面積は、第1孔部28に対して広い開口面積、例えば第1孔部28の2倍以上の総開口面積に形成されており、使用状況及びポンプ性能等により適宜設定する。
【0031】
第2中間ケーシング42は、中空の杯状で、小径端部側に設けられた第2フランジ部50と、他方の大径端部側に設けられ、第1中間ケーシングに嵌合する下端嵌合部51と、第2インペラ41の上面を覆う内面部52と、内面部52と外面部53との間に設けられた流路Fと、を備えている。第2中間ケーシング42は、内面部52に、突起部48に当接する当接部54を有している。また、第2中間ケーシング42は、内面部52から外面部53まで貫通する第2ガス抜き孔55を備えており、図2の二点鎖線Hに示すように、第2ガス抜き孔55は、その延長上に第2フランジ部50が位置するように設けられている。なお、第2フランジ部50は、ガスや湯水による磨耗等が考慮された厚みを有している。
【0032】
第3ポンプ部60は、回転軸5に固定された第3インペラ61と、第2中間ケーシング42及び他の第3ポンプ部60に取り付けられるとともに、第3インペラ61を覆う(収納する)第3中間ケーシング62と、を備えている。また、第3ポンプ部60は、回転軸5と第3中間ケーシング62との間に設けられた軸受63と、第3インペラ61と第3中間ケーシング62との間に設けられたライナリング64と、を備えている。
【0033】
第3インペラ61は、例えばステンレスで形成され、円板状のベース部65と、ベース部65の中心に設けられ回転軸5が挿入される挿入部66と、ベース部65の一方の主面に設けられた複数(例えば5枚)の羽根67と、羽根67の下面(ベース部65と相対する面)に設けられたカバー部68と、を備えている。
【0034】
第3中間ケーシング62は、椀状に形成され、内部に第3インペラ61を収納可能に形成されており、第3インペラ61と第3中間ケーシング62により、流路Fが形成されることとなる。なお、この流路Fは、他の第3ポンプを接続させた際に、連続する流路Fが形成されることとなる。
【0035】
第3中間ケーシング62は、第3中間ケーシング62の上面に設けられた上端側嵌合部70と下面側外周部に設けられた下端側嵌合部71とを備えており、上端側嵌合部70と下端側嵌合部71とを接続させることで第3中間ケーシング62を複数段接続可能に形成されている。
【0036】
吐出ケーシング80は、例えば固定バンド90の他方が固定される下部ケーシング81と、この下部ケーシング81にボルト82等により結合され、吐出配管等に接続されるフランジ部83を有する上部ケーシング84とを備えている。
【0037】
即ち、深井戸用水中ポンプ1は、吸込ケーシング10、インペラカバー22、第1中間ケーシング23、第2中間ケーシング42、複数が互いに取り付け可能に第3中間ケーシング62、及び、吐出ケーシング80が順次パッキンPを介して組みつけられることとなる。
【0038】
固定バンド90は、帯状のバンド部91と、その両端にナット92により締結可能に形成されたねじ部93とを有している。
【0039】
図5に示すように、被覆部材100は、長方形の板に、複数のパンチ孔101により例えばメッシュ状に形成されており、長辺方向の両端には、複数のボルト穴102が対で設けられている。パンチ孔101は、上述した第1ガス抜き孔39及び第2ガス抜き孔55に対して小さい径に形成されている。また、被覆部材100は、第1中間ケーシング23及び第2中間ケーシング42を覆うように、円筒状に弾性変形されるとともに、ボルト等により固定されている。なお、一枚の被覆部材100で第1ガス抜き孔39及び第2ガス抜き孔55を覆うのではなく、二枚の被覆部材を用いて第1ガス抜き孔39及び第2ガス抜き孔55をそれぞれ覆う構成としてもよい。
【0040】
このように構成された深井戸用水中ポンプ1では、水中モータ2が回転すると、水中モータ2の出力軸3を介して回転軸5が回転する。この回転軸5が回転することで、回転軸5に固定されている第1インペラ21、第2インペラ41及び第3インペラ61も追従して回転する。このとき、深井戸用水中ポンプ1は湯水中に配置されており、湯水中に配置されることで、深井戸用水中ポンプ1内の流路Fには湯水がストレーナ16から進入することとなる。
【0041】
この状態で、回転軸5に追従して各インペラ21、41、61が回転すると、流路Fに進入した湯水は、各インペラ21、41、61で増圧されるとともに、揚水(揚湯)されることとなる。第1インペラ21で湯水が増圧されるとともに揚水されると、吸込ケーシング10内の圧力は井戸内の水圧よりも低圧となるため、ストレーナ16を介して湯水がさらに吸込ケーシング10内に進入することとなる。この繰返しにより、水中モータ2作動時においては、湯水が流路Fに示すように増圧することで揚水されることとなる。
【0042】
このように深井戸用水中ポンプ1により揚水がなされる際に、湯水が天然発泡水や温泉等の、ガス含有量が高い湯水の場合に、流路F中に気泡が発生することがある。この気泡は、湯水中で気泡として自然発生したガスや、第1インペラ21により揚水された際に、吸込ケーシング10内が低圧になることで、膨張したガス等により発生するものである。このような気泡が各インペラに溜まると、ガスロック等が発生する。次に、このようなガスロックを防止するための気泡の抜け構造を説明する。
【0043】
湯水中に発生した気泡は、その性質上、一般的には上昇方向に浮力が働くため、第1インペラ21の羽根27及びベース部25付近に移動することとなる。このとき、ベース部25に設けられた第1孔部28により、流路Fとは別途、流路が形成される。この流路、即ち、図2中二点鎖線の矢印(以下、「ガス流路」)Gに示すように、湯水中に発生した気泡の一部は、第1インペラ21を通過する際に、第1孔部28から第1インペラ21の上部と第1中間ケーシング23の内面部35により形成された中空空間に気泡が移動する。なお、このとき、気泡だけではなく湯水も移動することとなる。
【0044】
第1インペラ21の上部に移動した気泡及び湯水の多くは、第1ガス抜き孔39を介して移動するとともに、その他の気泡及び湯水は、第1インペラ21のベース部25と第1中間ケーシング23の内面部35との隙間から流路Fと合流する。このとき、第1ガス抜き孔39を介して排出される気泡及び湯水は、その流速及び圧力が高い状態となり、排出されることとなる。第1ガス抜き孔39を介して移動した気泡及び湯水は、第1フランジ部33の下方空間に移動するとともに、その殆どは第1フランジ部33に衝突することとなる。このように、気泡及び湯水が、第1フランジ部33の下方空間に移動、及び、第1フランジ部33に衝突することで、その流速及び圧力(勢い)が低下するとともに、攪拌されることとなる。
【0045】
さらに、第1フランジ部33に衝突及び下方空間に移動した気泡及び湯水は、被覆部材100のパンチ孔101を介して井戸ケーシングWと深井戸用水中ポンプ1との間に抜ける。このとき、気泡及び湯水は、パンチ孔101を気泡及び湯水が通過することで、パンチ孔101より大きな径の気泡は小さくなる。また、気泡及び湯水は、パンチ孔101により気泡及び湯水が攪拌及び分流されることで、気泡及び湯水の流速及び圧力が低下することとなる。このように、第1インペラ21の第1ガス抜き孔39から一定の気泡及び湯水を、その勢いが低下させられて、深井戸用水中ポンプ1及び井戸ケーシングWの間に排出されることとなる。
【0046】
第1ガス抜き孔39から抜けずに流路Fに合流した気泡は、気泡を有する湯水とともに、第1インペラ21から流路Fに示すように第2インペラ41に移動することとなる。第2インペラ41に移動した気泡を含む湯水は、その気泡が第2インペラ41の羽根46及びベース部44付近に移動する。気泡は、ベース部44の第2孔部47から、ガス流路Gに沿って、ベース部44と第2中間ケーシング42の内面部52とにより形成された上方空間に移動する。この、ベース部44の上方空間は、ベース部44、内面部52、突起部48及び当接部54により、第2孔部47及び第2ガス抜き孔55以外は閉鎖的な空間となっている。このため、第2孔部47からベース部44の上方空間へ進入した気泡及び湯水は、第2ガス抜き孔55から確実に吐出されることとなる。
【0047】
第2ガス抜き孔55から吐出された気泡及び湯水は、その流速及び圧力が高い状態となり、排出されることとなる。第2ガス抜き孔55を介して移動した気泡及び湯水は、第2フランジ部50の下方空間に移動するとともに、その殆どが第2フランジ部50に衝突することとなる。このように、気泡及び湯水が、第2フランジ部50の下方空間に移動、及び、第2フランジ部50に衝突することで、その流速及び圧力が低下するとともに、攪拌される。さらに、第2フランジ部50に衝突及び下方空間に移動した気泡及び湯水は、被覆部材100のパンチ孔101を介して井戸ケーシングWと深井戸用水中ポンプ1との間に抜けることとなる。なお、このとき第1ガス抜き孔39から吐出された気泡及び湯水と同様に、パンチ孔101により、気泡が小さくなるとともに、気泡及び湯水の勢いが低下することとなる。
【0048】
なお、第2孔部47は、長孔形状であって、且つ、第1孔部28より広い面積で形成されているため、気泡を効果的に排出することが可能となっている。
【0049】
このように、気泡は、第1孔部28及び第2孔部47から、第1ガス抜き孔39及び第2ガス抜き孔55を介して深井戸用水中ポンプ1の外部へと排出されることとなる。気泡が排出されることで、深井戸用水中ポンプ1内には気泡が殆ど溜まることがなく、ガスロックが防止される。即ち、このようなガスを含有する湯水を用いる場合、完全に気泡を除去することは不可能であり、ガスロック及び脈動等、気泡による悪影響が発生しない程度に気泡が除去可能となれば良い。
【0050】
このような構成の深井戸用水中ポンプ1とすることで、第1孔部28及び第2孔部47から第1ガス抜き孔39及び第2ガス抜き孔55を介して、気泡を吐出することが可能となる。また、第1孔部28に対して第2孔部47の面積を大きくすることで、第1孔部28で排出されなかった気泡をも、確実にベース部44上面に移動させ、第2ガス抜き孔55から排出することが可能となる。これにより、ガスロックを防止することが可能となる。また、ガスロックを防止可能とすることで、運転を停止させて、ガス抜き等を行なわなくてよいため、作業効率の向上、及び、運転効率の向上にもなる。
【0051】
また、第2孔部47の形状を長孔形状等とすることで、同面積で2つ穴とした場合に比べ、気泡の抜け量が増加するため、確実にガスロックを防止することが可能となる。尚、第2孔部47の面積が第1孔部28に比べ大きく形成されているが、第2ガス抜き孔55の面積を調整することで、湯水の排出量が調整可能であるため、第2インペラ41(第2ポンプ部40)における、増圧及び揚水効率の低減は殆どない。
【0052】
また、第2孔部47が長孔形状となることで、面積も広くなり、温泉等に含有される固形成分(例えば、「湯の花」や「湯垢」)等が付着しにくい。例えば、第2孔部47と同等の面積を有する円形の孔部とした場合には、その径は、第2インペラ41の径方向に長く形成しなければいけない。しかし、この場合、第2インペラ41の強度が低下する虞がある。
【0053】
また、ストレーナ16のパンチ孔16aは、第1孔部28及び第2孔部47より小さな径で形成されているため、固形成分を第1孔部28及び第2孔部47に移動し、付着することを防止することが可能となる。このような固形成分が、第2孔部47内周部にこびり付くと、第2孔部47の開口面積が減少してしまい、気泡の排出能力が低下する。特に、第2孔部47から下流には、ガス抜きのための機構を設けていないため、排出能力が低下すると、ガスロックが発生する虞が増大する。このため、第2孔部を長孔形状とすることで、第2孔部47内周部にこびり付きを防止するとともに、気泡の排出能力の低下を防止することが可能となる。
【0054】
また、第1ガス抜き孔39及び第2ガス抜き孔55の延長上に第1フランジ部33、50が位置する構成としたことで、排出されるガスの気泡及び湯水の流速及び圧力を低減することが可能となる。また、被覆部材100を第1中間ケーシング23及び第2中間ケーシング42に設けることで、さらに、ガスの気泡及び湯水の流速及び圧力を低減させることが可能となる。これらのことにより、気泡及び湯水により井戸ケーシングW側面を磨耗・破壊等、損傷させることがない。また、同様に、固定バンド90及びケーブルの損傷も防止することが可能となる。
【0055】
上述したように、本発明の深井戸用水中ポンプ1によれば、ガスを含有する湯水であっても、ガスロックを発生させることなく、効率のよい湯水の揚水(揚湯)が可能となる。また、第2孔部47を長孔形状とすることで、確実にガスによる気泡を排出可能となるとともに、固形成分の付着によるポンプの能力低下を防止することが可能となる。
【0056】
また、第1フランジ部33、50及び被覆部材100により、第1ガス抜き孔39及び第2ガス抜き孔55から排出される気泡及び湯水の勢い(流速や圧力等)を減少させることで、固定バンド90、ケーブル及び井戸ケーシングWの損傷を防止することが可能となる。
【0057】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上述した深井戸用水中ポンプ1では、被覆部材100を第1中間ケーシング23及び第2中間ケーシング42に設ける構成としたが、被覆部材100を設けない構成としてもよい。例えば、井戸ケーシングWと深井戸用水中ポンプ1との形状の制約等により被覆部材100が設けられない場合には、被覆部材100を設けない構成で使用可能となる。被覆部材100は、第1ガス抜き孔39及び第2ガス抜き孔55から排出された気泡及び湯水の流速を低減させるものであり、第1フランジ部33、50に当てることでも、効果は得られる。
【0058】
また、上記第1フランジ部33、50の外周端部に返し部を設けてもよい。返し部を設けることで、フランジ部にぶつかった気泡及び湯水が攪拌された際に、返し部により渦巻き状に第1、第2フランジ部33、50下方空間を移動することとなる。これにより、さらにフランジ部下方で湯水が攪拌され、流速をより低減することが可能となる。
【0059】
また、上述した被覆部材100は、固定バンド90の内面側に設けられた構成としたが、これを、固定バンド90の外面に設ける構成としてもよい。また、上述した第2インペラ41は、ロストワックス法を用いて成型するとしたが、これはロストワックス法を用いなくてもよい。また、使用条件(湯水のガス含有量等)により、第1ポンプ部20及び第2ポンプ部40だけにガス抜きのための孔部及びガス抜き孔を設けるのではなく、他のポンプ部に設けるようにしてもよい。他のポンプ部にも孔部及びガス抜き孔を設けることで、よりガスの排出効率が向上し、ガスの含有量が多い湯水にも対応可能となる。
【0060】
さらに、第1インペラ21に設けられた第1孔部28は、円形状でなく、第2孔部47と同様の円形が回転方向に2つ連なった形状(楕円形状、達磨状及び糸瓜状等)である長孔形状に形成されていてもよい。このような長孔形状とすることで、第2孔部47と同等の効果が得られることとなる。ただし、第1孔部28の総開口面積は、上述にもあるように、第2孔部47の総開口面積より小さいものとする。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施の形態に係る深井戸用水中ポンプの構成を模式的に示す部分断面図。
【図2】同深井戸用水中ポンプの一部構成を模式的に示す部分断面図。
【図3】同深井戸用水中ポンプに用いられる第1インペラを示す平面図。
【図4】同深井戸用水中ポンプに用いられる第2インペラを示す平面図。
【図5】同深井戸用水中ポンプに用いられる被覆部材を示す正面図。
【符号の説明】
【0062】
1…深井戸用水中ポンプ、5…回転軸、10…吸込ケーシング、11…組付座、12…吸込口、14…挿入穴、15…ボルト、16a…パンチ孔、16…ストレーナ、20…第1ポンプ部、21…第1インペラ、22…インペラカバー、23…第1中間ケーシング、24…軸受部、25…ベース部、26…挿入部、27…羽根、28…第1孔部、29…貫通口、30…カバー部、33…第1フランジ部、35…内面部、36…外面部、37…カバー部、39…第1ガス抜き孔、40…第2ポンプ部、41…第2インペラ、42…第2中間ケーシング、43…軸受部、44…ベース部、45…挿入部、46…羽根、47…第2孔部、48…突起部、50…第2フランジ部、52…内面部、53…外面部、54…当接部、55…第2ガス抜き孔、60…第3ポンプ部、61…第3インペラ、62…第3中間ケーシング、65…ベース部、66…挿入部、67…羽根、68…カバー部、80…吐出ケーシング、90…固定バンド、91…バンド部、100…被覆部材、101…パンチ孔、W…井戸ケーシング、P…パッキン、F…流路、G…ガス流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータに連結された回転軸と、
前記モータ上部に配置され、前記回転軸の外周面の一部を覆うとともに、流体の吸込口を有する吸込ケーシングと、
円板状の第1ベース部、この第1ベース部の下面に設けられた複数の羽根、及び、前記第1ベース部の前記回転軸周辺に設けられた複数の第1孔部を有し、前記回転軸に固定された第1インペラと、
その上端側に設けられた第1フランジ部、前記第1インペラの上面を覆う第1対向面、この第1対向面とその外周面との間に設けられた流路、及び、前記第1対向面と前記第1インペラ上面との間の空間及び外部空間とを連通させるとともに、その延長上に前記第1フランジ部が位置する複数の第1ガス抜孔を有し、前記第1インペラを収納するとともに、その下端側が前記吸込ケーシングの上部に取り付けられた第1中間ケーシングと、
円板状の第2ベース部、この第2ベース部の下面に設けられた複数の羽根、及び、前記第2ベース部の前記回転軸周辺に設けられ、前記第1孔部に対して総開口面積が大きく形成された複数の前記第2孔部を有し、前記回転軸に固定された第2インペラと、
その上端側に設けられた第2フランジ部、前記第2インペラの上面を覆う第2対向面、この第2対向面とその外周面との間に設けられた流路、及び、前記第2対向面と前記第2インペラ上面との間の空間及び前記外部空間とを連通させるとともに、その延長上に前記第2フランジ部が位置する複数の第2ガス抜孔を有し、前記第2インペラを収納するとともに、その下端側が前記第1中間ケーシングの上部に取り付けられた第2中間ケーシングと、
前記回転軸に固定された第3インペラと、
この第3インペラを収納するとともに、前記第2中間ケーシングの上部に取り付けられ、その上端部と下端部とが互いに取り付け可能に形成された複数の第3中間ケーシングと、
前記第3中間ケーシングの最上段に取り付けられ、前記流体の吐出口を有する吐出ケーシングと、
帯状に形成され、その両端に固定部を有し、前記吸込ケーシングにその一端が、前記吐出ケーシングにその他端がそれぞれ固定可能に形成された複数の固定バンドと、
を備えることを特徴とする深井戸用水中ポンプ。
【請求項2】
前記第1中間ケーシング及び前記第2中間ケーシングの外周面に設けられ、少なくとも前記第1ガス抜孔及び前記第2ガス抜孔を被覆するとともに、複数のパンチ孔を有する被覆部材をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の深井戸用水中ポンプ。
【請求項3】
前記パンチ孔は、前記第1ガス抜孔及び前記第2ガス抜孔よりも面積が小さいことを特徴とする請求項2に記載の深井戸用水中ポンプ。
【請求項4】
前記被覆部材は、前記固定バンドの内側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の深井戸用水中ポンプ。
【請求項5】
前記第2孔部は、長孔形状、楕円形状、達磨形状及び瓢箪形状のいずれか一に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の深井戸用水中ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−52444(P2009−52444A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−218684(P2007−218684)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(000148209)株式会社川本製作所 (161)
【Fターム(参考)】