説明

深絞り成形用多層フィルムおよびそれからなる深絞り包装用容器

【課題】 本発明は、熱収縮性フィルムを深絞り成形用多層フィルムとして用いたとき、ボイル処理などによる耳部(フランジ部)のカール発生および枠シールした包装体のボイル後の面皺の発生を低減した深絞り成形用の多層フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】 底材(A)を構成する多層フィルム及び蓋材(B)を構成する多層フィルムの各々の90℃における熱水収縮率が縦横各々1〜18%であり、130℃における底材(A)を構成する多層フィルムと蓋材(B)を構成する多層フィルムの少なくとも1方向の瞬間熱収縮力の差の絶対値が300g/20mm巾以下である深絞り成形用多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層フィルムからなる底材と多層フィルムからなる蓋材の特定温度における熱収縮力の差を特定範囲に設定した深絞り包装用容器に関し、深絞り包装した包装体をボイル殺菌したときのカールの発生を少なくした深絞り成形用多層フィルムおよびそれからなる深絞り包装用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
深絞り包装用フィルムとして、従来より種々のフィルムが提案されている。例えば、底材は非収縮フィルム、蓋材は非収縮フィルムと延伸熱固定フィルムとの積層フィルム、或いは底材に収縮フィルム、蓋材に収縮フィルム或いは非収縮フィルムを用いることが提案されている。
特許文献1は、無延伸複合フィルムを底材として用い、蓋材として95℃での熱収縮率が縦方向、横方向ともに15〜60%の範囲の熱収縮性複合フィルムを前記底材の上縁にヒートシールしてなる絞りの深い深絞り成形が可能となる包装体を開示している。
特許文献2は、熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)、およびシール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなり、−10℃における厚さ50μm換算における衝撃エネルギーが1.5ジュール以上である低温耐衝撃性に優れ、突刺強度、耐ピンホール性等の機械的物性に優れた多層フィルムを開示している。
しかしながら、これらの包装体および多層フィルムは、深絞り成形用多層フィルムとして用い、深絞り包装後のボイル処理を行うと、蓋材と底材との収縮性に起因するカールの発生、面皺の生成などに関し、更なる改善の余地が残されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−115103号公報(請求項1)
【特許文献2】特表2003−535733号公報(請求項1及び実施例1〜15)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非収縮性蓋材、収縮性底材を用いると、ボイル処理時にフランジ部にカールが発生したり、絞り成形などの真空2次成形のシールが枠シールの場合、真空パックし、ボイル後に蓋材と底材の収縮差により面皺(耳部のシールしていない部分に発生する皺)が発生すること、或いは、低熱収縮性フィルム同士を蓋材、底材に用いても、底材の収縮力が大きいか、蓋材が柔らかいため、蓋材が底材側に引っ張られ、シール線が絞り方向に移動し、一般的な深絞り成形品の蓋材印刷が大幅にずれて見え難くなることがある。
本発明は、熱収縮性フィルムを深絞り成形用多層フィルムとして用いたときの上記問題点を解決し、ボイル処理などによる耳部(フランジ部)のカール発生および枠シールした包装体のボイル後の面皺の発生を低減した深絞り成形用の多層フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題を解決すべく検討した結果、低熱収縮性の蓋材、及び低熱収縮性の底材を用い、両者の特定温度における瞬間熱収縮力の差を特定の範囲に設定することによりフランジ部がフラット化し、更に、パック品のボイル後に蓋材が底材側に食い込むことが改善されることを見出した。この場合、底材、蓋材の収縮特性のバランスが問題となり、蓋材、底材の樹脂構成の組み合わせを検討し、蓋材、底材の熱収縮力の特定な関係を見い出し本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の第1は、底材(A)を構成する多層フィルム及び蓋材(B)を構成する多層フィルムの各々の90℃における熱水収縮率が縦横各々1〜18%であり、130℃における底材(A)を構成する多層フィルムと蓋材(B)を構成する多層フィルムの少なくとも1方向の瞬間熱収縮力の差の絶対値が300g/20mm巾以下である深絞り成形用多層フィルムを提供する。
本発明の第2は、底材(A)を構成する多層フィルムの層構成が蓋材(B)を構成する多層フィルとは異なる層構成である前記発明の深絞り成形用多層フィルムを提供する。
本発明の第3は、底材(A)を構成する多層フィルムが、熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)、及びシール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなり、130℃における該多層フィルムの少なくとも1方向の瞬間熱収縮力が100〜400g/20mm巾である前記第1または第2の発明の深絞り成形用多層フィルムを提供する。
【0006】
本発明の第4は、底材(A)を構成する多層フィルムの表面層(a)がポリエステル樹脂からなる前記第3の発明の深絞り成形用多層フィルムを提供する。
本発明の第5は、底材(A)を構成する多層フィルムが親水性ガスバリア性樹脂層(d)を有する共押出多層フィルムである前記第1〜4のいずれかの発明の深絞り成形用多層フィルムを提供する。
本発明の第6は、蓋材(B)を構成する多層フィルムが親水性ガスバリア性樹脂層(d)を有する共押出多層フィルムと90℃における熱水収縮率が縦横各々5〜18%であるポリアミドフィルムとのラミネートフィルムである前記第1の発明の深絞り成形用多層フィルムを提供する。
本発明の第7は、親水性ガスバリア性樹脂がポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、およびこれらの混合物から選ばれた樹脂である前記第5又は第6の発明の深絞り成形用多層フィルムを提供する。
本発明の第8は、蓋材(B)を構成する多層フィルムが熱収縮性ポリアミドフィルムにガスバリア性フィルムおよびシール可能なポリオレフィン樹脂層からなる非収縮性フィルムをラミネートした多層フィルムである前記第1の発明の深絞り成形用多層フィルムを提供する。
本発明の第9は、前記第1〜8のいずれかの発明に係わる多層フィルムから形成された底材(A)と蓋材(B)からなる深絞り包装用容器を提供する。
【発明の効果】
【0007】
底材及び蓋材となる多層フィルムを製膜するとき、高延伸率、高緩和率で製膜し、低い熱収縮率とし、底材と蓋材の縦方向の瞬間熱収縮力の差の絶対値を特定範囲に抑えることにより、深絞り包装した包装体をボイル処理してもカールの発生、底材と蓋材の収縮性の差に起因する枠シールの面皺の発生を抑え、外観のよい包装体を与えることが可能となった。本発明の深絞り成形用多層フィルムは、乾熱加熱時(温度90℃、5分間)の熱収縮率は好ましくは5%以下、更に好ましくは3%以下、特に好ましくは2%以下で、印刷時乾燥温度80−90℃、10秒間以下の条件で、ピッチ印刷性(蓋材への印刷が大きくずれることがない)を有し、深絞り成形時のシール(110−130℃、5秒間)でも、底材と蓋材の収縮力がバランスして寸法安定性がある。また、包装体のボイル殺菌、90℃、30分間では、底材、蓋材の多層フィルムの剛性を有する親水性ガスバリア樹脂層が吸水し軟化し、次いで発現する収縮力(応力)により底材、蓋材それぞれの多層フィルムが同等に収縮するので、カールが起こり難く、底材、蓋材の多層フィルム間又は層間のずれが発生せず、縮面皺が入り難くく、包装体の透明性も良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、深絞り成形した包装体をボイル処理したときのカール、或いは枠シール部分の面皺の発生が極めて少ない包装体を得ることを目的としている。これは、底材および蓋材を構成する多層フィルムの各々の90℃における熱水収縮率が縦横各々1〜18%であり、底材および蓋材を構成する多層フィルムの特定温度におけるの瞬間収縮力(応力)の差の絶対値が特定の範囲に入る多層フィルムを選定することにより達成できる。
【0009】
本発明で用いる底材(A)を構成する熱収縮性を有する多層フィルムは、好ましくは熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)、およびシール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなる。
【0010】
表面層(a)を構成する熱可塑性樹脂は、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)との積層状態において、適当な延伸性を有し、且つ中間層(b)への水の浸透を妨げるような樹脂を用いることが必要であり、好ましくは、ポリアミド系樹脂よりは吸湿性の小さい熱可塑性樹脂が用いられる。好ましい熱可塑性樹脂の例としては、ポリアミド系樹脂の積層フィルム形成のために従来より広く用いられている、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、VLDPE(直鎖状超低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)(これらポリエチレンには、従来型触媒(チグラ−ナッタ触媒)により得られるポリエチレンに加えて、シングルサイト触媒(メタロセン触媒)により重合されたものを含む)、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体等のポリオレフィン系樹脂(共重合体のオレフィン以外のコモノマー成分は比較的少量(50重量%未満)である)が、好ましく用いられるほか、ポリエステル系樹脂なども用いられる。なかでもポリエステル系樹脂は、透明性、表面硬度、印刷性、耐熱性などの表面特性に優れ、本発明にとって特に好ましい表面層(a)材料である。
【0011】
表面層(a)を構成するポリエステル系樹脂(「PET」)としては、脂肪族ポリエステル系樹脂と、芳香族ポリエステル系樹脂のいずれも用いられる。
ポリエステル系樹脂に用いるジカルボン酸成分としては、通常の製造方法でポリエステルが得られるものであれば良く、テレフタル酸、イソフタル酸以外に、例えば、不飽和脂肪酸の二量体からなるダイマー酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などがあげられ、2種以上を使用してもよい。また、ポリエステル系樹脂に用いるジオール成分としては、通常の製造方法でポリエステルが得られるものであれば良いが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−アルキル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられ、2種以上を使用しても良い。
【0012】
これらの中で、好ましくは芳香族ジカルボン酸成分を含む芳香族ポリエステル系樹脂であり、特に好ましくは、ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸と、炭素数が10以下のジオールとのポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが用いられ、テレフタル酸の一部、好ましくは30モル%まで、更に好ましくは15モル%まで、を他のジカルボン酸、例えばイソフタル酸で置き換えた共重合ポリエステルや、例えばエチレングリコールなどのジオール成分の一部を他のジオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノールで置き換えた共重合ポリエステル樹脂(例えばイーストマン・コダック社製「Kodapak PET#9921」)も好ましく用いられる。また、異種のポリエステル系樹脂を2種以上混合して用いても良い。
【0013】
ポリエステル系樹脂は、0.6〜1.2程度の極限粘度を持つものが好ましく用いられる。外表面層(a)には、例えば、熱可塑性ポリウレタンに代表される熱可塑性エラストマーや、マレイン酸等の酸あるいはそれらの無水物によって変性されたポリオレフィン系樹脂等のポリエステル系樹脂以外の熱可塑性樹脂を20重量%まで含ませることも出来る。
【0014】
ポリアミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂からなる表面層(a)は、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)の優れた延伸性、機械特性を損わないために、中間層(b)の厚さよりは薄く、特に6%以上、50%未満の厚さを有することが好ましい。
【0015】
中間層(b)を構成するポリアミド系樹脂(「Ny」)としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン69、ナイロン610、ナイロン612などの脂肪族ポリアミド重合体、ナイロン6/66、ナイロン6/69、ナイロン6/610、ナイロン66/610、ナイロン6/12などの脂肪族ポリアミド共重合体を例示することができる。これらの中では、ナイロン6/66やナイロン6/12が成形加工性の点で特に好ましい。これらの脂肪族ポリアミド(共)重合体は、単独あるいは2種以上ブレンドして用いることができる。また、これらの脂肪族ポリアミド(共)重合体を主体とし、芳香族ポリアミドとのブレンド物も用いられる。ここで芳香族ポリアミドとは、ジアミンおよびジカルボン酸の少なくとも一方の少なくとも一部が芳香族単位を有するものをいい、特にコポリアミドであることが好ましい。その例としては、ナイロン66/610/MXD6(ここで「MXD6」はポリメタキシリレンアジパミドを示す)などの脂肪族ナイロンと芳香族ジアミン単位を含む芳香族ポリアミドとの共重合体、ナイロン66/69/6I、ナイロン6/6I、ナイロン66/6I、ナイロン6I/6T(ここで「(ナイロン)6I」はポリヘキサメチレンイソフタラミド、「(ナイロン)6T」はポリヘキサメチレンテレフタラミドを示す)などの脂肪族ポリアミドと芳香族カルボン酸単位を含む共重合芳香族ポリアミドとの共重合体が挙げられる。これらポリアミド系樹脂は、単独でまたは混合して、融点が160〜210℃となるものが好ましく用いられる。中間層(b)には、マレイン酸などの酸またはこれらの無水物によって変性されたオレフィン系樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物等のポリアミド系樹脂以外の熱可塑性樹脂を30重量%程度まで含ませることもできる。
【0016】
表面層(c)を構成するシール性樹脂としては、シングルサイト触媒あるいはメタロセン触媒(以下「SSC」と略記することがある)を用いて重合されたポリオレフィン、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(以下「SSC−LLDPE」と略記)、直鎖状超低密度ポリエチレン(以下「SSC−VLDPE」と略記);従来のエチレン−αオレフィン共重合体(一般に「LLDPE」、「VLDPE」などと称されるもの)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下「EVA」と略記)、エチレン−メタクリル酸共重合体(以下「EMAA」と略記)、エチレン−メタクリル酸−不飽和脂肪族カルボン酸共重合体、低密度ポリエチレン、アイオノマー(以下「IO」と略記)樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体(以下「EMA」と略記)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(以下「EEA」と略記)、エチレン−アクリル酸ブチル共重合体(以下「EBA」と略記)等の熱可塑性樹脂から選ばれたものが使用できる。これらのうち好ましい種類のシール性樹脂は、エチレン共重合体、特にエチレンを主成分(すなわち、50重量%より大)とし、エチレンと共重合可能なビニル単量体を少量成分(すなわち、50重量%未満、好ましくは30重量%以下)として含む共重合体と包括的に述べることができる。好ましいビニル単量体の例としては、炭素数3〜8のα−オレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルおよび酢酸ビニル等の炭素数が8以下の不飽和カルボン酸またはそのエステルが挙げられる。これらエチレン共重合体を3重量%以下の不飽和カルボン酸で変性した酸変性エチレン共重合体も好ましく用いられる。なお、これ以外にも、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、脂肪族ナイロン等の熱可塑性樹脂を使用してもよい。シール性樹脂は、融点が150℃以下、特に135℃以下、であることが好ましい。フィルムの透明性を阻害しない範囲で、これらを少なくとも一種含むブレンド物であってもよい。
【0017】
これらの中で、SSC−LLDPE、SSC−VLDPE、LLDPE、VLDPE、EVA、EMAA、エチレン−メタクリル酸−不飽和脂肪族カルボン酸共重合体、IO樹脂などが、表面層(c)に好ましく用いられる。特に、SSC系ポリオレフィンの中で有効なものに、拘束幾何触媒(ダウ・ケミカル社(Dow Chemical Company)が開発したメタロセン触媒の一種)を用いて得られるものがある。拘束幾何触媒を用いて得られるエチレン−αオレフィン共重合体は、1000炭素数当たりの長鎖分岐(Long Chain Branching)の数が、約0.01〜約3、好ましくは約0.01〜約1、より好ましくは約0.05〜約1の実質的に線状のポリエチレン系樹脂である。該エチレン・αオレフィン共重合体は、分子構造中に約6炭素数以上の鎖状の長鎖分岐が選択的に導入されているため、ポリマーに優れた物性と良好な成形加工性が付与される。その一例は、ダウ・ケミカル社から「アフィニチイー」、「エリート」という名称で販売され、αオレフィンは1−オクテンである。
【0018】
この他のメタロセン触媒を用いて得られるポリエチレン系樹脂として、例えば、エクソン(EXXON)社の「エクザクト(EXACT)」、宇部興産社の「ユメリット」、三井化学社の「エボリュー」、日本ポリケム社製の「カーネル」、日本ポリオレフィン社の「ハーモレックス」がある。メタロセン触媒ポリオレフィンは、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)(多分散度)が3未満が好ましく、より好ましくは1.9〜2.2である。
【0019】
シール可能な樹脂からなる表面層(c)の耐熱性は、表面層(a)の耐熱性よりも小であることが、フィルムのシールや、深絞り加工などの際に好ましい。シール可能な樹脂からなる表面層(c)の耐熱性が、表面層(a)の耐熱性よりも大である場合は、シール時や深絞り加工時においてフィルムに熱をかけた際に、条件によっては、加熱板に表面層(a)が溶融し、シールや包装機械適性、深絞り加工性に問題が生ずることがあるからである。
【0020】
シール可能な樹脂からなる表面層(c)には、例えば深絞り包装に際して、易剥離性を付与することができる。これは、例えばEMAAとポリピロピレン樹脂との混合物、またはEVAとポリプロピレン樹脂との混合物を用いることにより達成される。
【0021】
本発明の底材(A)で用いる熱収縮性を有する多層フィルムは、好ましくは前記熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)およびシール性樹脂からなる表面層(c)を層構成として含むものであるが、そのほかに多層フィルムの機能性あるいは加工性を改善する等の目的で必要に応じて他の層を含めることができる。このような層の例としては、以下のものがある。
【0022】
親水性を有するガスバリア性樹脂層(d)を構成するガスバリア性樹脂としては、特に酸素ガスバリヤ層として使用されるものとして、公知のEVOH、ポリメタキシリレンアジパミド(「ナイロンMXD6」)などの芳香族ジアミンを有する芳香族ポリアミド、イソフタル酸、テレフタル酸およびヘキサメチレンジアミンの共重合体であるポリヘキサメチレンイソフタラミド/テレフタラミド(「ナイロン6I/6T」)などの芳香族カルボン酸を有する非晶性芳香族ポリアミドなど例示することができる。
【0023】
別の層を構成する好ましい樹脂として、分子中に酸素原子を含む少なくとも1種の単量体とエチレンとの共重合体がある。具体的には、EVA、EMAA、エチレン・メタクリル酸・不飽和脂肪族カルボン酸共重合体、EMA、EAA、EBA、IO樹脂等が挙げられる。また、密度0.900g/cm3未満のメタロセン触媒系ポリエチレンは延伸性がよく、二軸延伸後の時点において、熱収縮率の大きい多層フィルムが得られるので好ましい。
【0024】
接着性樹脂層(ad)は前記各層間の接着力が充分でない場合などに、必要に応じて設けることができる。接着性樹脂として、EVA、EEA、EAA、酸変性ポリオレフィン(オレフィン類の単独または共重合体などとマレイン酸やフマル酸などの不飽和カルボン酸や酸無水物やエステルもしくは金属塩などとの反応物など、例えば、酸変性VLDPE、酸変性LLDPE、酸変性EVA)等が使用できる。好適なものとしては、マレイン酸などの酸、またはこれらの無水物などで変性されたオレフィン系樹脂が挙げられる。また、前記の層構成において、いずれかの層に滑剤、帯電防止剤を添加することができる。
【0025】
用いる滑剤としては、炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤、脂肪酸アミド系滑剤、エステル系滑剤、金属石鹸類などがあげられる。滑剤は、液状であってもよいし、固体状であってもよい。具体的に、炭化水素系滑剤としては、流動パラフィン、天然パラフィン、ポリエチレンワックス、マイクロワックスなどがあげられる。脂肪酸系滑剤としては、ステアリン酸、ラウリン酸などがあげられる。脂肪酸アミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N−オレイルパルミチン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、アラキジン酸アミド、オレイン酸アミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミドなどがあげられる。エステル系滑剤としては、ブチルステアレート、硬化ヒマシ油、エチレングリコールモノステアレート、ステアリン酸モノグリセライドなどがあげられる。金属石鹸としては、炭素数12〜30の脂肪酸から誘導されるものであり、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシュウムが代表的にあげられる。これらの滑剤の中では、脂肪酸アミド系滑剤、金属石鹸類がポリオレフィン樹脂との相溶性が優れるという点から好ましく用いられる。滑剤の好ましい例としては、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、等をマスターバッチの形で加える。その好ましい添加量は滑剤20重量%含有マスターバッチの場合、樹脂に対して1〜10重量%である。
【0026】
帯電防止剤としては、界面活性剤が好ましく用いられる。界面活性剤としては、アニオン活性剤、カチオン活性剤、非イオン活性剤、両性活性剤およびそれらの混合物を使用することができる。帯電防止剤は添加すべき層の樹脂に対して0.05〜2重量%、更には0.1〜1重量%添加することが好ましい。
【0027】
本発明の底材(A)を構成する多層フィルムの層構成の好ましい態様の例を次に記す。ただし、これらはあくまでも例示であって、本発明はこれらのみに限定されるものではない:(1)ポリエステル樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂層、(2)ポリエステル樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂層、(3)ポリエステル樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂層、(4)ポリエステル樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ガスバリア性樹脂層/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂層、(5)ポリエステル樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/ガスバリア性樹脂層/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂層、(6)ポリオレフィン樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂層、(7)ポリオレフィン樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂層、(8)ポリオレフィン樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ガスバリア性樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂層、(9)ポリオレフィン樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/ガスバリア性樹脂層/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂層、(10)ポリオレフィン樹脂/接着性樹脂/ポリアミド系樹脂/ガスバリア性樹脂層/ポリアミド系樹脂/接着性樹脂/シール性樹脂層。これらの多層フィルムは、蓋材(B)用の多層フィルムとしても用いることができ、90℃における熱水収縮率は、1〜18%、好ましくは5〜18%、更に好ましくは5〜15%である。
【0028】
底材(A)を構成する多層フィルムと蓋材(B)を構成する多層フィルは、所定の要件、即ち、90℃における底材(A)および蓋材(B)の熱水収縮率が縦、横各々1〜18%、130℃における底材(A)と蓋材(B)の少なくとも1方向の瞬間熱収縮力の差の絶対値が300g/20mm巾以下を満たすものであれば、同じ層構成を有する多層フィルムであっても、異なる層構成を有する多層フィルムであっても差し支えない。
【0029】
本発明で用いる蓋材(B)を構成する熱収縮性を有する多層フィルムも、前記熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)、およびシール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなるのが好ましい。また、蓋材(B)の多層フィルも親水性ガスバリア性層(d)を含むことが好ましい。
【0030】
蓋材(B)を構成する好ましい態様の多層フィルムとしては、親水性を有するガスバリア性樹脂層(d)を含む共押出多層フィルムと90℃における熱水収縮率が好ましくは5〜18%、更に好ましくは5〜15%のポリアミド系フィルムを(ドライ)ラミネートし、蓋材(B)の多層フィルムとして熱水収縮率が5〜18%であり、本発明に必須の要件を備えたフィルムである。ここで、90℃における熱水収縮率が5〜18%であるポリアミド系フィルムは、蓋材を構成する多層フィルムに所定の熱水収縮率を付与するために積層する。具体的には、前記低収縮性のポリアミド系フィルムに共押出層フィルムをドライラミネートして得られる、低収縮性ポリアミド層/ad/(MDPE/ad/Ny/EVOH/Ny/ad/LDPE)、(adは接着剤層を表す)の層構成の多層フィルムを挙げることができる。前記層構成の中、カッコ内は共押出多層フィルムであり、収縮性であっても、非収縮であってもよい。
【0031】
また、蓋材(B)を構成する別の好ましい態様の多層フィルムとしては、熱収縮性ナイロンフィルムに親水性ガスバリア性を有するガスバリア性樹脂層(d)およびシール可能なポリオレフィン樹脂層からなる非収縮性フィルムをラミネートした多層フィルムを挙げることができる。具体的には、低収縮性ナイロンフィルムにガスバリア性フィルムおよびシール可能なポリオレフィン樹脂層からなる非収縮性フィルム、例えば前記(MDPE/ad/Ny/EVOH/Ny/ad/PE)の多層フィルムをドライラミネーションなどの方法で接着剤を用いてラミネートした多層フィルムである。これらの蓋材(B)用多層フィルムは、前記のような本発明の必須の要件を備えたフィルムである。
【0032】
本発明に係わる底材(A)及び蓋材(B)の熱収縮性を有する多層フィルムは、上記各層を積層して、延伸および緩和することにより、最終的に厚さが20〜250μm、更には40〜150μmの範囲の多層フィルムとして形成することが好ましい。また鋭くカットされた骨を有し、特に高い耐ピンホール性を要求する骨付き肉包装用については、合計厚さが60〜250μm、特に90〜150μmであることが好ましい。
【0033】
より詳しくは、熱可塑性樹脂からなる表面層(a)は、0.5〜40μm、特に1〜15μm、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)は3〜60μm、特に10〜40μm、シール性樹脂からなる表面層(c)は10〜150μm、特に15〜60μmの範囲の厚さとすることが好ましい。特に、表面層(a)がポリエステル系樹脂である場合には、二軸延伸適性を調和させるために、層(a)の厚さは層(b)のそれより小さく、より具体的には、前者が後者の3〜70%、特に6〜50%の範囲とすることが好ましい。
【0034】
必要に応じて設けられるガスバリヤ樹脂層(d)の厚さは、例えば1〜30μmの範囲、好ましくは2〜15μmの範囲である。ガスバリヤ性樹脂層の厚さが1μm未満では酸素ガスバリヤ性改善効果が乏しく、また、30μmを越えると該層の押出加工、ならびに多層フィルムの延伸加工が難しくなる。
接着性樹脂層は複数設けることができるが、その厚さは各0.5〜5μmの範囲が好適である。
【0035】
本発明の底材および蓋材を構成する多層フィルムは、複数の押出機を使用し、まず未延伸フィルムを共押出し、テンター法等の公知の方法で2軸延伸した後、少なくとも一軸方向に20%以上の高弛緩熱処理を行うことにより製膜することもできる。延伸倍率は縦/横ともに、2.5〜4倍程度が好ましい。また、製膜された延伸配向多層フィルムは、更に公知のラミネート法を用いて、他樹脂層と貼り合わせてもよい。
また、底材および蓋材を構成するフィルムは、前記のように製膜した共押出多層フィルムに、予め延伸した樹脂フィルムをドライラミネーションすることにより得ることが出来る。予め延伸配向して収縮性を有する樹脂フィルム(例えば、ポリアミド系フィルム)を共押出多層フィルムにラミネートする場合、共押出多層フィルムは非収縮性であっても、収縮性を有する樹脂フィルムをラミネートした後の多層フィルムが所定の熱水収縮率(90℃の熱水収縮率が2〜15%)を有しておれば差し支えない。
【0036】
熱収縮性多層フィルムの製造方法の好ましい一態様について説明する。
底材(A)を構成する多層フィルムの積層樹脂種数に応じた台数の押出機より環状ダイを経て熱可塑性樹脂からなる外表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)およびシール性樹脂からなる内表面層(c)の少なくとも3層を有する管状体(パリソン)を共押出しし、水浴により各層に占める主たる樹脂の融点以下、好ましくは40℃以下に冷却しつつピンチローラで引き取る。次いで、引き取った管状体フィルムに、必要に応じ大豆油などに代表される開封剤を内封しつつ、各層に占める主たる樹脂の融点以下の、例えば80〜95℃の温水浴中に導入して、加熱された管状体フィルムを上方に引き出し、一対のピンチローラ間に導入した流体空気によりバブル状の管状体を形成し、10〜20℃のエアリングで冷却しながら、垂直方向(MD)および横方向に、好ましくは各2.5〜4倍、更に好ましくは各2.8〜3.5倍、最も好ましくは垂直方向に少なくとも2.9〜3.5倍および横方向に少なくとも3〜3.5倍、に同時二軸延伸する。次いで延伸後の管状体フィルムを下方に引き出し、一対のピンチローラ間に導入した流体空気により再度バブル状の管状体を形成し、熱処理筒中に保持する。そして、この熱処理筒の吹出し口よりスチームを吹き付け(あるいは温水を噴霧して)、二軸延伸後の管状体フィルムを好ましくは70〜98℃、更に好ましくは75℃〜95℃において、好ましくは1〜20秒、更に好ましくは1.5〜10秒程度熱処理して、管状体フィルムを縦方向(MD)および横方向(TD)に各15〜40%(但し、少なくとも一方向は20%以上)、好ましくは各方向に20〜35%弛緩させる。熱処理後の管状体フィルムは、本発明に用いる底材(A)及び蓋材(B)の熱収縮性を有する多層フィルムに相当するものであり、巻き取りロールに巻き取られる。
【0037】
優れた強度を維持しつつ、低温耐衝撃性の改善で代表される諸特性の改善を実現する上で、MD/TDにおいて、各々好ましくは2.5〜4倍、更に好ましくは2.8〜3.5倍、最も好ましくは、MDに2.9〜3.5倍およびTDに3〜3.5倍、の延伸倍率を確保し、熱容量の大きいスチームあるいは温水によって好ましくは70℃〜98℃、更に好ましくは75℃〜95℃、最も好ましくは80℃〜95℃の低温で、且つ縦横方向に好ましくは15%〜40%(但し一方向において20%以上)、更に好ましくは各方向で20%〜30%弛緩させながら、熱処理をすることが極めて好ましい。より低い延伸倍率では、熱処理後に必要なフィルムの強度が得られず、またフィルムの偏肉も大きくなり、包装適性が得られにくい。他方加熱空気などの熱容量の小さい媒体や、70℃未満のより低い熱処理温度を採用した場合には、弛緩率を大きくすることが困難となり、その結果として必要な低温耐衝撃性の向上効果が得られにくい。一方、98℃を超える高温で熱処理した場合は、シール層であるポリオレフィン樹脂が溶融し易くなり、その結果としてポリオレフィン層の配向が解け、優れた強度が得られにくくなる。熱処理時の弛緩率が15%未満である場合は、所望の低温耐衝撃性で代表される非晶部における充分な配向緩和が得られず、熱処理時の弛緩率が40%を超える場合は、製膜時に皺が入りやすくなる。
【0038】
蓋材(B)を構成する多層フィルムが、共押出多層フィルムに収縮性を有する樹脂フィルムをラミネートする場合は、前記のようにして得た収縮性又は非収縮性の共押出多層フィルムに収縮性を有する樹脂フィルム、例えば収縮性ポリアミドフィルムをドライラミ用の接着剤を介しラミネートすることにより所定の熱水収縮率を有する蓋材(B)用多層フィルムを得ることができる。
【0039】
このようにして得られる熱収縮性の多層フィルムは、ポリアミド系樹脂層の高延伸処理の結果として、引張り強度に代表される基礎的強度を高く維持しつつ、引き続く高弛緩熱処理の結果として底材(A)及び蓋材(B)用多層フィルムとして、90℃における熱水収縮率が縦横各々1〜18%、好ましくは5〜18%、更に好ましくは、5〜15%となり、これらの多層フィルムの130℃における底材(A)を構成する多層フィルムと蓋材(B)を構成する多層フィルムの少なくとも1方向の瞬間収縮力(応力)の差の絶対値が300g/20mm巾以下、好ましくは100〜300g/20mm巾である多層フィルムが本発明の深絞り成形用多層フィルムとなる。このような多層フィルムにおける熱水収縮率は、延伸倍率との関係で、弛緩率を調節する(但し、少なくとも1方向において、20%以上を維持する)ことにより、必要な低熱水収縮率を範囲内で制御できる。その結果、深絞り成形し、内容物を充填した包装体は、ボイル殺菌などの熱処理をした後の蓋材(B)と底材(A)の熱収縮力がバランスした範囲にあり、カールおよび枠シールによる面皺の発生がなく、ピッチ印刷性が確保された包装体となる。
ここで、瞬間熱収縮力は、フィルム材質、各層の厚さ、延伸配向と緩和の程度等により影響されるが、本発明においては130℃における底材(A)を構成する多層フィルムと蓋材(B)を構成する多層フィルムの少なくとも1方向の瞬間熱収縮力の差の絶対値が300g/20mm巾以下であることをもって、本発明の要件の一つとする。
【0040】
前記の熱収縮性を有する多層フィルムの製造方法の延伸前あるいは後において、公知の方法により放射線照射することもできる。放射線照射により延伸性や耐熱性、機械的強度などが未照射のものに比べ改善される。放射線照射は、その適度な架橋効果により、延伸製膜性、耐熱性を優れたフィルムにする効果がある。本発明では、α線、β線、電子線、γ線、X線など公知の放射線を使用することができる。照射前後での架橋効果の観点から、電子線やγ線が好ましく、中でも電子線が成形物を製造する上での取扱性や処理能力の高さなどの点で好都合である。
【0041】
放射線の照射条件は、目的とする用途に応じて、適宜設定すればよく、一例をあげるならば、電子線の場合は、加速電圧が150〜500キロボルトの範囲、照射線量が10〜200キログレイ(kGy)の範囲が好ましく、また、γ線の場合は、線量率が0.05〜3kGy/時間の範囲として、10〜200kGyの照射線量を与えることが好ましい。
また、多層フィルムの内表面あるいは外表面もしくは両表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、炎処理をおこなってもよい。
【0042】
このようにして得られる本発明の深絞り成形用多層フィルムは、ボイル処理などの熱による2次処理を経た後でも、カール、枠シールの面皺の発生のない包装体を与えるもので、食品、特にブロックハム、生肉、チーズ、ソーセージ、ベーコン等の深絞り包装に適した多層フィルムとなる。
【0043】
(実施例)
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本明細書に記載した物性の測定法は、以下の通りである。
瞬間熱収縮力
引張試験機のチャック部に幅20mm、長さ10cmの少なくとも1方向(例えば、縦方向(機械方向))に延伸した試料フィルムを固定した後、必要な温度(130℃)に加熱した金属ブロックを瞬間的にサンプルに当て、そのときに生じる収縮力をロードセルで検知し、記録する。
瞬間収縮力差=|底材収縮力−蓋材収縮力|(g/20mm巾)
を130℃における底材(A)を構成する多層フィルムと蓋材(B)を構成する多層フィルムの、例えば、縦方向の瞬間熱収縮力の差の絶対値と云う。
熱水収縮率
フィルムの機械方向(縦方向)および機械方向に垂直な方向(横方向)に10cmの距離で印を付けた試料フィルムを、90℃に調整した熱水に30分間浸漬した後取り出し、直ちに常温の水で冷却した。その後、印をつけた距離を測定し、10cmからの減少値の原長10cmに対する割合を百分率で表示した。1試料について5回試験をおこない、縦方向(MD)および横方向(TD)のそれぞれについて平均値で熱水収縮率を表示した。
Haze
ASTM D1003に準じて測定した。
カール性
充填サンプルを90℃、若しくは73℃の熱水中で30分間ボイルする前後のフランジ部分の長さ20mmの水平位置からのずれを測定した。
下記の基準により、優(○)、劣(×)の判断をした。
○:カールが水平位置より±15mm未満、
×:カールが水平位置より±15mm以上、
90℃熱水浸漬テスト
400gのゴム板を充填した深絞り包装体を90℃熱水中に30分間浸漬した後、包装体のカールの有無及び包装体表面の皺の有無を観察した。
○は、包装体にカールの発生が無く、包装体表面に皺の発生が見られず、美麗な外観を有する。×:カールが発生し、包装体表面に皺が見られ、商品価値として劣る。尚、カールの有無に関しては、前記カール性の基準に従い判断した。
73℃熱水浸漬テスト
150gのゴム板を充填した深絞り包装体を73℃熱水中に30分間浸漬した後、包装体のカールの有無及び包装体表面の皺の有無を観察した。主として、高温を嫌う充填物を包装するときに行う。
○は、包装体にカールの発生が無く、包装体表面に皺の発生が見られず、美麗な外観を有する。×:カールが発生し、包装体表面に皺が見られ、商品価値として劣る。
【0044】
多層フィルムの製造例
(多層フィルムI)
5台の押出機から環状ダイを経て、層構成が、外側から内側へ順に、且つ、カッコ内に示す厚さ(μm)で、PET(3)/mod−VL(2.5)/Ny6・66(17)/EVOH(9)/mod−VL(2.5)/LLDPE(46)、(合計厚さは80μm)となるように各樹脂をそれぞれ押出し、上記層構成となるように共押出し、溶融接合した。ダイ口から流出した溶融管状体を水浴中で、10〜18℃に急冷し、偏平管状体とした。次いで、該偏平管状体を92℃の温水浴を通過させた後、バブル形状の管状体フィルムとし15〜20℃のエアリングで冷却しながらインフレーション法により縦方向(MD)に3.1倍、横方向(TD)に3.1倍の延伸倍率で同時二軸延伸した。次いで該二軸延伸フィルムを、熱処理筒に導き、バブル形状の管状体フィルムとし、吹き出し口より吹き出させたスチームにより90℃に加熱し、縦方向に20%弛緩、横方向に20%弛緩させながら2秒間熱処理し、二軸延伸フィルム(延伸配向多層フィルム)を製造した。得られた多層フィルムの折り幅(偏平幅)は490mmで厚さは55μmであった。得られたフィルムの90℃における熱水収縮率は縦(MD)、横(TD)方向各々7%、8%であった。
【0045】
(多層フィルムII)
多層フィルムIと同様な装置、及び延伸条件を用い、外側から内側へ順に、且つ、カッコ内に示す厚さ(μm)で、PET(3)/mod−VL(2.5)/Ny6・66(13)/EVOH(9)/mod−VL(2.5)/LLDPE(20)、(合計厚さは50μm)の二軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの90℃における熱水収縮率は縦(MD)方向、横(TD)方向、各々11%、12%であった。
(多層フィルムIII)
4台の押出機から環状ダイを経て、層構成が、外側から内側へ順に、且つ、カッコ内に示す厚さ(μm)で、PET(3)/mod−VL(2.5)/Ny6・66(17)/mod−VL(2.5)/LLDPE(55)、(合計厚さは80μm)となるように共押出し、溶融接合した。これを多層フィルムIと同じ条件で二軸延伸し、延伸配向多層フィルムを製造した。得られたフィルムの90℃における熱水収縮率は縦(MD)、横(TD)方向各々10%、11%であった。
【0046】
(多層フィルムIV)
ONyフィルム(興人(株)製、ボニール、BN−SC580、厚さ15μm)と(MDPE(13)/mod−VL(4)/Ny6・66(2)/EVOH(6)/Ny6・66(2)/mod−VL(4)/LDPE(19))の共押出多層フィルムを、ドライラミネート用接着剤(三井武田ケミカル(株)製、タケラックA−315(主剤)、タケネートA−50(硬化剤)、厚さ2μm)を用いて、ドライラミネートし厚さ65μmの多層フィルムを得た。得られたフィルムの90℃における熱水収縮率は縦(MD)、横(TD)方向各々4%、5%であった。
(多層フィルムV)
ONyフィルムをOPPフィルム(東洋紡(株)製、銘柄パイレン、P−2161、厚さ30μm)に変えたこと以外は、多層フィルムIVの製造と同じにして厚さ80μmの表1に示した層構成の多層フィルムを得た。得られたフィルムの90℃における熱水収縮率は縦(MD)、横(TD)方向各々1%、2%であった。
【0047】
(実施例1)
多層フィルムIを底材とし、多層フィルムIIIを蓋材として、深絞り成形機(大森機械(株)製、FV−603)を用いて、ゴム板を模擬充填物として充填して深絞り包装体を得た。得られた包装体について絞り成形直後のカールの有無、枠シール部の面皺の有無を観察、評価し、次いで90℃、30分間の熱水浸漬テストして、カールの有無、枠シール部の面皺の有無を評価した。
(実施例2)
蓋材の多層フィルムIIIを多層フィルムIVにしたこと以外は、実施例1と同様に行い深絞り包装体を得た。得られた包装体について実施例1と同様な評価を行った。
(比較例1)
蓋材の多層フィルムIIIを多層フィルムVにしたこと以外は、実施例1と同様に行い深絞り包装体を得た。得られた包装体について実施例1と同様な評価を行った。
(実施例3)
底材の多層フィルムIを多層フィルムIIにしたこと以外は、実施例1と同様に行い深絞り包装体を得た。得られた包装体について、成形直後のカール性と73℃、30分間の熱水浸漬テストをして、カールの有無、枠シール部の面皺の有無を評価した。
【0048】
(実施例4)
底材の多層フィルムIを多層フィルムIIに、蓋材の多層フィルムIIIを多層フィルムIVにしたこと以外は、実施例1と同様に行い深絞り包装体を得た。得られた包装体について、絞り成形直後のカールの有無、枠シール部の面皺の有無を観察、評価し、次いで90℃、30分間、及び73℃、30分間の熱水浸漬テストをして、カールの有無、枠シール部の面皺の有無を評価した。
(比較例2)
底材の多層フィルムIを多層フィルムIIに、蓋材の多層フィルムIIIを多層フィルムVにしたこと以外は、実施例1と同様に行い深絞り包装体を得た。得られた包装体について、絞り成形直後のカールの有無、枠シール部の面皺の有無を観察、評価し、次いで90℃、30分間、及び73℃、30分間の熱水浸漬テストをして、カールの有無、枠シール部の面皺の有無を観察、評価した。
(実施例5)
底材の多層フィルムIを多層フィルムIIIに、蓋材の多層フィルムIIIを多層フィルムIVにしたこと以外は、実施例1と同様に行い深絞り包装体を得た。得られた包装体について、絞り成形直後のカールの有無、枠シール部の面皺の有無を観察、評価し、次いで90℃、30分間、及び73℃、30分間の熱水浸漬テストをして、カールの有無、枠シール部の面皺の有無を観察、評価した。
(実施例6)
蓋材の多層フィルムIIIを多層フィルムIIにしたこと以外は、実施例1と同様に行い深絞り包装体を得た。得られた包装体について、絞り成形直後のカールの有無、枠シール部の面皺の有無を観察、評価し、次いで90℃、30分間、及び73℃、30分間の熱水浸漬テストをして、カールの有無、枠シール部の面皺の有無を観察、評価した。評価結果を表2に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
底材(A)を構成する多層フィルム及び蓋材(B)を構成する多層フィルムの各々の90℃における熱水収縮率が縦横各々1〜18%であり、130℃における底材(A)を構成する多層フィルムと蓋材(B)を構成する多層フィルムの少なくとも1方向の瞬間熱収縮力の差の絶対値が300g/20mm巾以下である深絞り成形用多層フィルム。
【請求項2】
底材(A)を構成する多層フィルムの層構成が蓋材(B)を構成する多層フィルとは異なる層構成である請求項1記載の深絞り成形用多層フィルム。
【請求項3】
底材(A)を構成する多層フィルムが、熱可塑性樹脂からなる表面層(a)、ポリアミド系樹脂からなる中間層(b)、及びシール可能な樹脂からなる表面層(c)の少なくとも3層からなり、130℃における該多層フィルムの少なくとも1方向の瞬間熱収縮力が100〜400g/20mm巾である請求項1または2記載の深絞り成形用多層フィルム。
【請求項4】
底材(A)を構成する多層フィルムの表面層(a)がポリエステル樹脂からなる請求項3記載の深絞り成形用多層フィルム。
【請求項5】
底材(A)を構成する多層フィルムが親水性ガスバリア性樹脂層(d)を有する共押出多層フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載の深絞り成形用多層フィルム。
【請求項6】
蓋材(B)を構成する多層フィルムが親水性ガスバリア性樹脂層(d)を有する共押出多層フィルムと90℃における熱水収縮率が縦横各々5〜18%であるポリアミドフィルムとのラミネートフィルムである請求項1記載の深絞り成形用多層フィルム。
【請求項7】
親水性ガスバリア性樹脂がポリアミド系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、およびこれらの混合物から選ばれた樹脂である請求項5又は6記載の深絞り成形用多層フィルム。
【請求項8】
蓋材(B)を構成する多層フィルムが熱収縮性ポリアミドフィルムにガスバリア性フィルムおよびシール可能なポリオレフィン樹脂層からなる非収縮性フィルムをラミネートした多層フィルムである請求項1記載の深絞り成形用多層フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の多層フィルムから形成された底材(A)と蓋材(B)からなる深絞り包装用容器。

【公開番号】特開2006−224470(P2006−224470A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41335(P2005−41335)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】