混雑情報提供システム及び方法
【課題】1台のカメラで混雑状況の判別ができ、かつ個人認識する場合に比べて処理速度が速くよりリアルタイム性を確保できる混雑情報提供システム及び方法を提供することを目的とする。
【解決手段】混雑状況を観測するための定点カメラ10と、定点カメラ10に接続された混雑情報演算装置20と、混雑情報を表示する情報表示装置40とを備える。混雑情報演算装置20は、定点カメラ10が撮影した画像に含まれる人物領域を検出するための人物検出手段と、人物検出手段が検出した人物領域に基づいて前記画像中の人物の数を計測する計測手段と、前記計測手段の計測結果に基づく混雑情報を利用者に提供する提供手段と、を備える。
【解決手段】混雑状況を観測するための定点カメラ10と、定点カメラ10に接続された混雑情報演算装置20と、混雑情報を表示する情報表示装置40とを備える。混雑情報演算装置20は、定点カメラ10が撮影した画像に含まれる人物領域を検出するための人物検出手段と、人物検出手段が検出した人物領域に基づいて前記画像中の人物の数を計測する計測手段と、前記計測手段の計測結果に基づく混雑情報を利用者に提供する提供手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混雑情報提供システム及び方法に係り、人が集まる場所の混雑情報を利用者に提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定点カメラを観測地点に設置し、その画像に基づいて通行量や通過時間などを把握することが行われている。例えば、特許文献1には、測定開始点及び測定終了点にそれぞれカメラを設置し、測定開始点で撮影した画像からランダムに人物を抽出し、その顔特徴を記憶部に記憶する。また、測定終了点のカメラで撮影した画像から抽出した歩行者を抽出し、かつその顔特徴を抽出する。そして、記憶部に記録されている顔特徴と照合し顔特徴が一致した歩行者の測定開始点と測定終了点における画像取得時刻に基づいて通過情報を出力する。
【特許文献1】特開2003−346279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1では、以下の問題がある。第一に、画像中において顔が重なり顔の特徴点が十分に抽出できず、同一人物の判別率が低下する。第二に、複数人数の顔の特徴点情報を一定時間保存するための記憶容量が必要になったり、顔特徴情報を用いることによるプライバシーの問題が生じたりする。第三に、個人識別のため処理時間が増えリアルタイム性に欠ける。第四に、測定するために複数のカメラが必要で、1台のカメラでは測定できない。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、1台のカメラで混雑状況の判別ができ、かつ個人認識する場合に比べて処理速度が速くよりリアルタイム性を確保できる混雑情報提供システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、混雑状況を観測するための定点カメラと、前記定点カメラが撮影した画像に含まれる人物領域を検出するための人物検出手段と、前記人物検出手段が検出した人物領域に基づいて前記画像中の人物の数を計測する計測手段と、前記計測手段の計測結果に基づく混雑情報を利用者に提供する提供手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
これにより、定点カメラの撮影画像から人物検出のみを行い混雑状況を把握することができる。
【0007】
また、前記人物の数が所定の閾値以上であれば混雑していると判別し、前記人物の数が所定の閾値未満であれば混雑していないと判別する判別手段を更に備えてもよい。
【0008】
これにより、人物の数と閾値との比較に基づいて混雑しているか否かを判別し、その結果を提供することができる。
【0009】
また、前記画像内における徒歩可能領域の面積を検出する検出手段と、前記画像内における一人当たりの人物が占有する人物占有領域の面積を設定する設定手段と、を更に備え、前記判別手段は、前記徒歩可能領域の面積に対する前記人物占有領域の面積の割合に応じて前記所定の閾値を変更してもよい。
【0010】
これにより、撮影エリアを変えた場合、例えば広域撮影やズーム撮影を行った場合に、その縮尺に応じた閾値を設定することができる。
【0011】
また本発明は、混雑状況を観測するための定点カメラと、前記定点カメラにより観測地点に全く人がいない状況下で撮影された基準画像を格納する格納手段と、前記定点カメラにより混雑状況の観測時点において撮影された観測時画像と、前記基準画像との差分処理を行う差分手段と、前記差分処理の結果に基づく混雑情報を利用者に提供する提供手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
これにより、基準画像と観測時画像との差分結果に基づいた混雑情報を提供することができる。
【0013】
また、前記差分処理の結果に基づいて前記基準画像と前記観測時画像との相違量を示す差分値を算出し、該差分値が所定の閾値以上であれば混雑していると判別し、前記差分値が所定の閾値未満であれば混雑していないと判別する判別手段を更に備えてもよい。
【0014】
これにより、差分結果に基づいて混雑状況を判別した結果を提供することができる。
【0015】
また、前記基準画像は、前記観測地点の通行面を撮影した画像であり、前記差分手段は、前記観測時画像から前記基準画像を差分処理した差分画像を生成し、前記判別手段は、前記基準画像における通行面が撮影された通行面領域と前記差分画像に含まれる差分領域とのそれぞれの面積を計測し、前記通行面領域面積から前記差分領域面積を減算した通行面露出面積を前記差分値として算出してもよい。
【0016】
また、前記提供手段は、前記利用者が操作する端末装置から前記混雑情報の送信要求情報を受信し、該送信要求情報に応じて前記混雑情報を前記端末装置に送信する送受信手段と、前記利用者が操作する端末装置に対して一方的に前記混雑情報を配信する手段と、前記混雑情報をホームページに掲載する手段と、定位置に設置された前記混雑情報を表示するための公衆表示装置と、のうちの少なくとも一つにより構成してもよい。
【0017】
これにより、端末装置やホームページ上で混雑情報を提供する場合には、遠隔地にいる利用者にも混雑状況を提供することができ、公衆表示装置に表示する場合には、公衆表示装置を視認できるすべて者に対して混雑情報を提供することができる。
【0018】
また、前記混雑情報を生成した時刻を計時して時刻情報を生成する計時手段と、前記時刻情報と前記混雑情報とに基づいて、ある時刻における混雑状況の予測情報を算出する予測手段と、を更に備え、前記提供手段は、前記予測情報を更に提供してもよい。
【0019】
これにより、混雑を予測し、混雑緩和を図ることができる。
【0020】
また、前記定点カメラは、広域空間を複数に分割する区間毎に設置され、前記区間毎の混雑情報に基づいて前記広域空間内における混雑状況の分布を示す分布情報を生成する分布情報生成手段を更に備えてもよい。
【0021】
これにより、利用者が広域空間の混雑分布を把握することができる。
【0022】
また、本発明に係る混雑情報提供方法は、定点カメラにより混雑状況の観測地点の画像を撮影するステップと、前記画像に含まれる人物領域を検出するステップと、前記人物領域に基づいて前記画像中の人物の数を計測するステップと、前記計測した結果に基づく混雑情報を利用者に提供するステップと、を含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る混雑情報提供方法は、定点カメラにより混雑状況の観測地点の画像を、該観測地点に全く人がいない状況下で撮影し、基準画像として格納するステップと、前記定点カメラにより 混雑状況の観測時に前記観測地点を撮影した観測時画像を生成するステップと、前記基準画像を読出し、該基準画像と前記観測時画像との差分処理を行うステップと、前記差分処理の結果に基づく混雑情報を利用者に提供するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、1台のカメラで混雑状況を把握することができる。更に、特定の人物を検出するための顔認識処理ことなく混雑状況を観測するため、顔認識処理をする場合に比べて処理速度が速くよりリアルタイム性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下添付図面に従って本発明に係る混雑情報提供システム及び方法について詳説する。
【0026】
<第一実施形態>
図1は、本発明を適用した混雑情報提供システム1の概念図である。混雑情報提供システム1は、定点カメラ10を混雑状況の観測地点に設置し、撮影エリア11内の通行人の人数を計測し、これに基づいて混雑状況を判別する。画像12は、定点カメラ10で撮影された画像であり、画像12には、建物や壁などの構造物があることにより徒歩不可能な領域13と、徒歩可能な歩道領域14とが撮影されている。また、点線の丸印は、検出された人物を示す。定点カメラ10を駅の改札口やプラットホーム、遊園地アトラクション前、チケットブース、ショッピングストリート飲食店店舗前などに設置することにより、各場所の混雑状況を遠隔地にいる利用者が把握することができる。
【0027】
図2は、第一実施形態に係る混雑情報提供システム1の概略構成を示すブロック図である。混雑情報提供システム1は、定点カメラ10と定点カメラ10の画像に基づいて混雑状況を判別する混雑情報演算装置20と、混雑情報演算装置20による混雑情報を表示する情報表示装置40と、を備える。情報表示装置40は、ユーザが操作する端末装置、例えば携帯電話、PDA、PCや、街頭や施設等に設置した表示装置等、配信された混雑情報を受信して表示できる装置でも良いし、混雑情報をホームページに掲載し、ユーザが端末装置を操作してホームページを閲覧してもよい。定点カメラ10と混雑情報演算装置20と情報表示装置40とは、インターネット、公衆回線網、無線通信網などの既存の通信ネットワーク41により互いに接続される。
【0028】
なお、本実施形態では、定点カメラ10と混雑情報演算装置20とを通信ネットワーク41を介して接続するが、通信ネットワークを介さず、定点カメラ10と混雑情報演算装置20とを有線接続してもよい。この場合、混雑情報演算装置20はカメラI/Fを備え、カメラI/Fを介して画像を取得する。
【0029】
図3は、第一実施形態に係る混雑情報演算装置20の機能ブロック図である。混雑情報演算装置20は、通信ネットワーク41を介して画像データや混雑情報を送受信するための通信インターフェース(以下「通信I/F」という)21と、定点カメラ10の画像を読み込む画像取得部22と、定点カメラ10の画像から人物を検出するための人物検出アルゴリズムを実行する人物検出部23と、検出した人物数を計測する計測部24と、計測部24の計測結果に基づいて混雑状況のレベルを判別する判別部25と、撮影される画像に含まれる徒歩可能領域を検出する検出部26と、撮影される画像において人一人が占有する面積を設定する設定部27と、徒歩可能領域の面積から人一人が占有する面積を除算した値に基づいて判別部25が用いる閾値を算出する算出部28と、判別部25が混雑状況を判別した日時情報を計測する計時部29と、計時部29が計測した日時と判別部24が出力する混雑情報とを関連づけたログ情報を格納するログ情報格納部30と、ログ情報に基づいて混雑状況を予測した予測情報を生成する予測部31と、混雑情報や予測情報をユーザに提供する提供部32と、を備える。
【0030】
次に図4に基づいて本実施の形態に係る混雑情報提供システム1が実行する混雑状況の観測を説明する。図4は、第一実施形態に係る混雑状況の観測処理の流れを示すフローチャートである。
【0031】
ステップS1では、混雑情報演算装置20が、ネットワーク41及び通信I/F21を介して定点カメラ10が撮影した画像を取得する(S1)。画像取得部22は、撮影された画像を読み込む。
【0032】
ステップS2では、人物検出部23がS1で読み取った画像に対し、人物検出アルゴリズムを適用して人物検出を行う(S2)。人物検出アルゴリズムの例として、例えば定点カメラ10が可視光カメラである場合には、撮影画像の肌色領域を検出し、その検出した領域が人物の顔領域と想定しうる所定の大きさ又は形状を有しているかに基づいて人物検出を行っても良い。また、撮影画像に対し輪郭抽出処理を行い、抽出した輪郭線に外接する長方形の形状を用いて人物検出してもよい。また、定点カメラ10として物体の表面温度を検知して表面温度の違いを色画像で表す赤外線サーモグラフィカメラを使用し、人の体温を示す領域を抽出して人物検出を行ってもよい。その他、公知の人物検出アルゴリズムを用いてもよい。
【0033】
ステップS3では、計測部24が、S3で検出された人物の数を計測する(S3)。
【0034】
ステップS4では、判別部25が、S3で検出された人物の数に基づいて混雑状況を判別する(S4)。混雑状況を例えば3段階、「混雑」、「普通」、「空き」で判別する場合には、第一閾値と、第一閾値よりも小さい第二閾値とを予め設定しておく。そして、判別部25は、S3の人物の数が第一閾値以上であれば「混雑」と判別し、第二閾値以上第一閾値未満であれば「普通」と判別し、第二閾値未満であれば「空き」と判別する。判別部25は、判別した内容を示す混雑情報を生成する。上記第一閾値及び第二閾値は、混雑情報提供システム1の管理者が混雑していると思われる人数で任意に設定しても良いし、後述する閾値設定処理により自動的に設定してもよい。
【0035】
ステップS5では、計時部29が、S4で混雑情報が生成された日時情報を計時し、その日時情報と混雑情報とを関連づけたログ情報を生成し、ログ情報格納部30に格納する(S5)。
【0036】
ステップS6では、提供部32がS4で生成した混雑情報をユーザに提供する(S6)。提供部32は、ユーザが操作する情報端末装置からのリクエストに応じて混雑情報を送信しても良いし、一方的に情報端末装置に混雑情報を配信してもよい。また、街頭や駅構内、遊園地などに設置された公衆表示装置に混雑情報を表示したり、ホームページ上に掲載したりしてもよい。
【0037】
ステップS7では、観測終了か否かを判断し、終了でなければ「No」に進んでS1に戻り、再度S1〜S7の処理を繰り返す。終了の場合は、「Yes」へ進み、混雑状況の観測処理を終了する。
【0038】
本混雑状況の観測処理によれば、人物の抽出のみで人物の同定処理を行わないため、同定処理を行う場合に比べて誤認率が低く、かつプライバシー侵害の危険もない。また、閾値を用いただけの判別処理なので、処理が容易かつ速度が早く、混雑情報の提供のリアルタイム性に長けている。
【0039】
次に図5に基づいて混雑情報提供システム1が実行する閾値設定処理について説明する。図5は、閾値設定処理の流れを示すためのフローチャートである。
【0040】
ステップS11では、検出部26が、画像取得部22が取得した画像から徒歩可能領域を検出する(S11)。検出部26は、歩行面の色情報に基づいて徒歩可能領域14を自動的に検出しても良いし、混雑情報演算装置20に図示しないモニタ及びマウスを接続し、管理者がモニタに表示された画像のうち徒歩可能領域のエッジをマウスでトレースし、そのエッジ内領域を徒歩可能領域として検出してもよい。
【0041】
ステップS12では、設定部27が撮影画像内において人一人が占有する面積(以下「人物占有面積」という)を設定する(S12)。歩行面を基準とする定点カメラ10の高度や位置(撮影角度)によって、撮影画像内における人物占有面積が異なる。これは、高度がより高ければ人がより小さく撮影されるため人物占有面積が小さくなり、高度がより低ければ人がより大きく撮影されるため人物占有面積が大きくなるためである。また、撮影角度が、歩行者の頭上から撮影する場合と、歩行者の側方または前後方から撮影する場合とでは、一般に頭上から撮影する方が側方または前後方から撮影する場合に比べて人物占有面積が小さくなる。管理者は、平均的な人物が撮影されたと想定した場合の人物占有面積を数値入力し、設定部27が入力された数値に基づいて人物占有面積を設定してもよい。また、設定部27は、人物検出部23が検出した人物領域の面積の平均値を算出し、この値に基づいて人物占有面積を自動設定してもよい。
【0042】
ステップS13では、算出部28が、S11で検出した徒歩可能領域の面積を算出し、徒歩可能領域の面積を人物占有面積で除算した値に応じて判別部25が判別に用いる閾値を算出する(S13)。算出部28は、徒歩可能領域の面積を人物占有面積で除算した値がより大きいほど、徒歩可能領域を通行可能な人数が多いため、より大きな第一閾値及び第二閾値を算出する。反対に、歩可能領域の面積を人物占有面積で除算した値がより小さいほど、徒歩可能領域を通行可能な人数が少ないため、より小さな第一閾値及び第二閾値を算出する。
【0043】
ステップS14では、判別部25がS13で算出した第一閾値及び第二閾値を設定し、混雑状況の判別に使用する(S14)。
【0044】
本閾値設定処理により、定点カメラ10が広域撮影又はズーム撮影など撮影エリアを変更した場合に、その縮尺に応じた閾値が自動設定されるので、混雑情報提供システム1の管理者の手間を省くことができる。
【0045】
次に図6に基づいて本実施の形態に係る混雑情報提供システム1が実行する予測情報提供処理について説明する。図6は、予測情報提供処理の流れを示すフローチャートである。
【0046】
ステップS21では、予測部31がログ情報格納部30に格納されたログ情報を読み出す(S21)。
【0047】
ステップS22では、予測部31が読み出したログ情報に基づいて時刻と混雑状況とを関連づけた近似関数を生成する(S22)。予測部31は、生成した近似関数に基づいてある時刻における混雑の予想情報を生成する。近似関数の算出方法は、図7(a)に示すように横軸に時間を、縦軸に混雑の度合いを示すグラフを用意し、読出したログ情報をプロットする。そして、最小二乗法を用いて近似関数を算出してもよい。また、図7(b)に示すように近似関数を求めることなく、プロットした点の集中度からある時刻における混雑の度合いを求めてもよい。予測部31が予測情報の生成に使用するアルゴリズムは、上記に限らず公知のものを適宜使用することができる。また、予測部31は、近似関数を用いて予想待ち時間情報を算出しても良い。
【0048】
ステップS23では、提供部32がS22で生成した予測情報を情報表示部40に提供する(S23)。
【0049】
ステップS24では、予測情報提供処理が終了したか否かを判断し、終了でなければ「No」に進んでステップS21に戻り、再度S21〜S24の処理を繰り返す。終了の場合は、「Yes」へ進み、予測情報提供処理を終了する。
【0050】
本予測情報提供処理により、混雑している時間又は混雑していない時間をユーザに通知することができ、混雑時の人の流入の抑制及び混雑緩和に資することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、判別部25が混雑状況を判別したが、計測部24が計測した人数を提供部32が提供しても良い。
【0052】
<第二実施形態>
第二実施形態は、定点カメラ10により予め混雑状況の観測地点に人がいない状態を撮影した基準画像を生成し、この基準画像と、観測時に撮影した観測時画像との差分値に基づいて混雑状況を判別する。
【0053】
図8は、第二実施形態に係る混雑情報演算装置20の機能ブロック図である。第二実施形態に係る混雑情報演算装置20は、第一実施形態の混雑情報演算装置20の人物検出部23及び計測部24に代えて、基準画像を格納する基準画像格納部33と、基準画像と観測時画像との差分処理を行う差分部34とを備える。
【0054】
次に図9、10に基づいて本実施の形態に係る混雑情報提供システム1が実行する混雑状況の観測を説明する。図9は、第二実施形態に係る混雑状況の観測処理の流れを示すフローチャートである。図10は、基準画像100、観測時画像101、差分画像102を示す模式図である。
【0055】
本処理は、定点カメラ10が観測地点に人がいない状況で画像を撮影し、この画像を基準画像100として基準画像格納部33に格納しておき、この状態から開始する。
【0056】
ステップS31では、画像取得部22がS1と同様、定点カメラ10から観測時画像101(S1の撮影画像と同一)を取得する。
【0057】
ステップS32では、差分部34が基準画像格納部33から基準画像100を読み出す。
【0058】
ステップS33では、差分部34が基準画像100とS31で取得した観測時画像101との差分処理を行い、差分画像102を生成する。そして差分画像102の画素値に基づいて差分値を算出する。
【0059】
ステップS34では、判別部25がS1と同様、S33の差分値に基づき混雑状況の判別を行う。人が多い観測時画像101ほど基準画像100との差分値が大きくなるため、判別部24は、差分値と所定の閾値とを比較し差分値が所定の閾値以上であればより混雑していると判別し、所定の閾値未満であればより空いていると判別する。
【0060】
ステップS35乃至37は、ステップS5乃至7と同様の処理である。
【0061】
本実施形態によれば、人物検出アルゴリズムを使用することなく、単純な差分処理だけで混雑状況を判別することが出来、処理の速度を早くすることができる。
【0062】
上記ステップS33において、判別部25が、基準画像100の徒歩可能領域の面積から差分画像102に残った差分領域の面積を減算して通行面露出面積を求め、この通行面露出面積が大きいほど空いていると判断しても良い。
【0063】
<第三実施形態>
第三実施形態は、広域空間を複数区間に分割し、各区間に定点カメラ10を配置した実施形態である。
【0064】
図11では、広域空間を東西方向に渡って、Aブロック、Bブロック、Cブロックの3つの区間に分割する。そして、各ブロックに定点カメラ10を設置し、ブロック毎の混雑情報を混雑情報演算装置20に送信する。
【0065】
本実施に係る混雑情報演算装置20は、第一又は第二実施形態に係る混雑情報演算装置20の構成要素に加えて、区間毎の混雑情報に基づいて各区間の位置とその区間の混雑状況とを示す分布情報を生成する分布情報生成部を更に備える。そして、分布情報生成部は、図11のAブロック(混雑)、Bブロック(普通)、Cブロック(空き)の各ブロックの混雑情報を東西方向に並べ、東から西に向かって徐々に混み具合が減るという分布情報を生成する。提供部32は、区間毎の混雑状況及び/又は混雑状況の分布情報を提供する。
【0066】
図12は、情報表示装置40としてのユーザが使用する携帯電話に混雑状況及び予測情報を表示した画面表示例である。携帯電話40には、ブロック毎の混雑状況「混雑、普通、空き」と待ち時間情報「15分待ち、5分待ち、待ち時間0」121と、混雑の分布情報「西口が比較的空いています」122と、予測情報「Aブロックは13時頃に空くと予想されます」123とが表示される。
【0067】
本実施形態により、広域空間としての混雑情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明を適用した混雑情報提供システム1の概念図
【図2】第一実施形態に係る混雑情報提供システム1の概略構成を示すブロック図
【図3】第一実施形態に係る混雑情報演算装置20の機能ブロック図
【図4】第一実施形態に係る混雑状況の観測処理の流れを示すフローチャート
【図5】閾値設定処理の流れを示すためのフローチャート
【図6】予測情報提供処理の流れを示すフローチャート
【図7】予測部31の処理内容を示す模式図
【図8】第二実施形態に係る混雑情報演算装置20の機能ブロック図
【図9】第二実施形態に係る混雑状況の観測処理の流れを示すフローチャート
【図10】図10は、基準画像100、観測時画像101、差分画像102を示す模式図
【図11】第三実施形態に係る混雑情報提供システム1の概略図
【図12】画面表示例の図
【符号の説明】
【0069】
1:混雑情報提供システム、10:定点カメラ、20:混雑情報演算装置、40:情報表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、混雑情報提供システム及び方法に係り、人が集まる場所の混雑情報を利用者に提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定点カメラを観測地点に設置し、その画像に基づいて通行量や通過時間などを把握することが行われている。例えば、特許文献1には、測定開始点及び測定終了点にそれぞれカメラを設置し、測定開始点で撮影した画像からランダムに人物を抽出し、その顔特徴を記憶部に記憶する。また、測定終了点のカメラで撮影した画像から抽出した歩行者を抽出し、かつその顔特徴を抽出する。そして、記憶部に記録されている顔特徴と照合し顔特徴が一致した歩行者の測定開始点と測定終了点における画像取得時刻に基づいて通過情報を出力する。
【特許文献1】特開2003−346279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1では、以下の問題がある。第一に、画像中において顔が重なり顔の特徴点が十分に抽出できず、同一人物の判別率が低下する。第二に、複数人数の顔の特徴点情報を一定時間保存するための記憶容量が必要になったり、顔特徴情報を用いることによるプライバシーの問題が生じたりする。第三に、個人識別のため処理時間が増えリアルタイム性に欠ける。第四に、測定するために複数のカメラが必要で、1台のカメラでは測定できない。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、1台のカメラで混雑状況の判別ができ、かつ個人認識する場合に比べて処理速度が速くよりリアルタイム性を確保できる混雑情報提供システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は、混雑状況を観測するための定点カメラと、前記定点カメラが撮影した画像に含まれる人物領域を検出するための人物検出手段と、前記人物検出手段が検出した人物領域に基づいて前記画像中の人物の数を計測する計測手段と、前記計測手段の計測結果に基づく混雑情報を利用者に提供する提供手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
これにより、定点カメラの撮影画像から人物検出のみを行い混雑状況を把握することができる。
【0007】
また、前記人物の数が所定の閾値以上であれば混雑していると判別し、前記人物の数が所定の閾値未満であれば混雑していないと判別する判別手段を更に備えてもよい。
【0008】
これにより、人物の数と閾値との比較に基づいて混雑しているか否かを判別し、その結果を提供することができる。
【0009】
また、前記画像内における徒歩可能領域の面積を検出する検出手段と、前記画像内における一人当たりの人物が占有する人物占有領域の面積を設定する設定手段と、を更に備え、前記判別手段は、前記徒歩可能領域の面積に対する前記人物占有領域の面積の割合に応じて前記所定の閾値を変更してもよい。
【0010】
これにより、撮影エリアを変えた場合、例えば広域撮影やズーム撮影を行った場合に、その縮尺に応じた閾値を設定することができる。
【0011】
また本発明は、混雑状況を観測するための定点カメラと、前記定点カメラにより観測地点に全く人がいない状況下で撮影された基準画像を格納する格納手段と、前記定点カメラにより混雑状況の観測時点において撮影された観測時画像と、前記基準画像との差分処理を行う差分手段と、前記差分処理の結果に基づく混雑情報を利用者に提供する提供手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
これにより、基準画像と観測時画像との差分結果に基づいた混雑情報を提供することができる。
【0013】
また、前記差分処理の結果に基づいて前記基準画像と前記観測時画像との相違量を示す差分値を算出し、該差分値が所定の閾値以上であれば混雑していると判別し、前記差分値が所定の閾値未満であれば混雑していないと判別する判別手段を更に備えてもよい。
【0014】
これにより、差分結果に基づいて混雑状況を判別した結果を提供することができる。
【0015】
また、前記基準画像は、前記観測地点の通行面を撮影した画像であり、前記差分手段は、前記観測時画像から前記基準画像を差分処理した差分画像を生成し、前記判別手段は、前記基準画像における通行面が撮影された通行面領域と前記差分画像に含まれる差分領域とのそれぞれの面積を計測し、前記通行面領域面積から前記差分領域面積を減算した通行面露出面積を前記差分値として算出してもよい。
【0016】
また、前記提供手段は、前記利用者が操作する端末装置から前記混雑情報の送信要求情報を受信し、該送信要求情報に応じて前記混雑情報を前記端末装置に送信する送受信手段と、前記利用者が操作する端末装置に対して一方的に前記混雑情報を配信する手段と、前記混雑情報をホームページに掲載する手段と、定位置に設置された前記混雑情報を表示するための公衆表示装置と、のうちの少なくとも一つにより構成してもよい。
【0017】
これにより、端末装置やホームページ上で混雑情報を提供する場合には、遠隔地にいる利用者にも混雑状況を提供することができ、公衆表示装置に表示する場合には、公衆表示装置を視認できるすべて者に対して混雑情報を提供することができる。
【0018】
また、前記混雑情報を生成した時刻を計時して時刻情報を生成する計時手段と、前記時刻情報と前記混雑情報とに基づいて、ある時刻における混雑状況の予測情報を算出する予測手段と、を更に備え、前記提供手段は、前記予測情報を更に提供してもよい。
【0019】
これにより、混雑を予測し、混雑緩和を図ることができる。
【0020】
また、前記定点カメラは、広域空間を複数に分割する区間毎に設置され、前記区間毎の混雑情報に基づいて前記広域空間内における混雑状況の分布を示す分布情報を生成する分布情報生成手段を更に備えてもよい。
【0021】
これにより、利用者が広域空間の混雑分布を把握することができる。
【0022】
また、本発明に係る混雑情報提供方法は、定点カメラにより混雑状況の観測地点の画像を撮影するステップと、前記画像に含まれる人物領域を検出するステップと、前記人物領域に基づいて前記画像中の人物の数を計測するステップと、前記計測した結果に基づく混雑情報を利用者に提供するステップと、を含むことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る混雑情報提供方法は、定点カメラにより混雑状況の観測地点の画像を、該観測地点に全く人がいない状況下で撮影し、基準画像として格納するステップと、前記定点カメラにより 混雑状況の観測時に前記観測地点を撮影した観測時画像を生成するステップと、前記基準画像を読出し、該基準画像と前記観測時画像との差分処理を行うステップと、前記差分処理の結果に基づく混雑情報を利用者に提供するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、1台のカメラで混雑状況を把握することができる。更に、特定の人物を検出するための顔認識処理ことなく混雑状況を観測するため、顔認識処理をする場合に比べて処理速度が速くよりリアルタイム性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下添付図面に従って本発明に係る混雑情報提供システム及び方法について詳説する。
【0026】
<第一実施形態>
図1は、本発明を適用した混雑情報提供システム1の概念図である。混雑情報提供システム1は、定点カメラ10を混雑状況の観測地点に設置し、撮影エリア11内の通行人の人数を計測し、これに基づいて混雑状況を判別する。画像12は、定点カメラ10で撮影された画像であり、画像12には、建物や壁などの構造物があることにより徒歩不可能な領域13と、徒歩可能な歩道領域14とが撮影されている。また、点線の丸印は、検出された人物を示す。定点カメラ10を駅の改札口やプラットホーム、遊園地アトラクション前、チケットブース、ショッピングストリート飲食店店舗前などに設置することにより、各場所の混雑状況を遠隔地にいる利用者が把握することができる。
【0027】
図2は、第一実施形態に係る混雑情報提供システム1の概略構成を示すブロック図である。混雑情報提供システム1は、定点カメラ10と定点カメラ10の画像に基づいて混雑状況を判別する混雑情報演算装置20と、混雑情報演算装置20による混雑情報を表示する情報表示装置40と、を備える。情報表示装置40は、ユーザが操作する端末装置、例えば携帯電話、PDA、PCや、街頭や施設等に設置した表示装置等、配信された混雑情報を受信して表示できる装置でも良いし、混雑情報をホームページに掲載し、ユーザが端末装置を操作してホームページを閲覧してもよい。定点カメラ10と混雑情報演算装置20と情報表示装置40とは、インターネット、公衆回線網、無線通信網などの既存の通信ネットワーク41により互いに接続される。
【0028】
なお、本実施形態では、定点カメラ10と混雑情報演算装置20とを通信ネットワーク41を介して接続するが、通信ネットワークを介さず、定点カメラ10と混雑情報演算装置20とを有線接続してもよい。この場合、混雑情報演算装置20はカメラI/Fを備え、カメラI/Fを介して画像を取得する。
【0029】
図3は、第一実施形態に係る混雑情報演算装置20の機能ブロック図である。混雑情報演算装置20は、通信ネットワーク41を介して画像データや混雑情報を送受信するための通信インターフェース(以下「通信I/F」という)21と、定点カメラ10の画像を読み込む画像取得部22と、定点カメラ10の画像から人物を検出するための人物検出アルゴリズムを実行する人物検出部23と、検出した人物数を計測する計測部24と、計測部24の計測結果に基づいて混雑状況のレベルを判別する判別部25と、撮影される画像に含まれる徒歩可能領域を検出する検出部26と、撮影される画像において人一人が占有する面積を設定する設定部27と、徒歩可能領域の面積から人一人が占有する面積を除算した値に基づいて判別部25が用いる閾値を算出する算出部28と、判別部25が混雑状況を判別した日時情報を計測する計時部29と、計時部29が計測した日時と判別部24が出力する混雑情報とを関連づけたログ情報を格納するログ情報格納部30と、ログ情報に基づいて混雑状況を予測した予測情報を生成する予測部31と、混雑情報や予測情報をユーザに提供する提供部32と、を備える。
【0030】
次に図4に基づいて本実施の形態に係る混雑情報提供システム1が実行する混雑状況の観測を説明する。図4は、第一実施形態に係る混雑状況の観測処理の流れを示すフローチャートである。
【0031】
ステップS1では、混雑情報演算装置20が、ネットワーク41及び通信I/F21を介して定点カメラ10が撮影した画像を取得する(S1)。画像取得部22は、撮影された画像を読み込む。
【0032】
ステップS2では、人物検出部23がS1で読み取った画像に対し、人物検出アルゴリズムを適用して人物検出を行う(S2)。人物検出アルゴリズムの例として、例えば定点カメラ10が可視光カメラである場合には、撮影画像の肌色領域を検出し、その検出した領域が人物の顔領域と想定しうる所定の大きさ又は形状を有しているかに基づいて人物検出を行っても良い。また、撮影画像に対し輪郭抽出処理を行い、抽出した輪郭線に外接する長方形の形状を用いて人物検出してもよい。また、定点カメラ10として物体の表面温度を検知して表面温度の違いを色画像で表す赤外線サーモグラフィカメラを使用し、人の体温を示す領域を抽出して人物検出を行ってもよい。その他、公知の人物検出アルゴリズムを用いてもよい。
【0033】
ステップS3では、計測部24が、S3で検出された人物の数を計測する(S3)。
【0034】
ステップS4では、判別部25が、S3で検出された人物の数に基づいて混雑状況を判別する(S4)。混雑状況を例えば3段階、「混雑」、「普通」、「空き」で判別する場合には、第一閾値と、第一閾値よりも小さい第二閾値とを予め設定しておく。そして、判別部25は、S3の人物の数が第一閾値以上であれば「混雑」と判別し、第二閾値以上第一閾値未満であれば「普通」と判別し、第二閾値未満であれば「空き」と判別する。判別部25は、判別した内容を示す混雑情報を生成する。上記第一閾値及び第二閾値は、混雑情報提供システム1の管理者が混雑していると思われる人数で任意に設定しても良いし、後述する閾値設定処理により自動的に設定してもよい。
【0035】
ステップS5では、計時部29が、S4で混雑情報が生成された日時情報を計時し、その日時情報と混雑情報とを関連づけたログ情報を生成し、ログ情報格納部30に格納する(S5)。
【0036】
ステップS6では、提供部32がS4で生成した混雑情報をユーザに提供する(S6)。提供部32は、ユーザが操作する情報端末装置からのリクエストに応じて混雑情報を送信しても良いし、一方的に情報端末装置に混雑情報を配信してもよい。また、街頭や駅構内、遊園地などに設置された公衆表示装置に混雑情報を表示したり、ホームページ上に掲載したりしてもよい。
【0037】
ステップS7では、観測終了か否かを判断し、終了でなければ「No」に進んでS1に戻り、再度S1〜S7の処理を繰り返す。終了の場合は、「Yes」へ進み、混雑状況の観測処理を終了する。
【0038】
本混雑状況の観測処理によれば、人物の抽出のみで人物の同定処理を行わないため、同定処理を行う場合に比べて誤認率が低く、かつプライバシー侵害の危険もない。また、閾値を用いただけの判別処理なので、処理が容易かつ速度が早く、混雑情報の提供のリアルタイム性に長けている。
【0039】
次に図5に基づいて混雑情報提供システム1が実行する閾値設定処理について説明する。図5は、閾値設定処理の流れを示すためのフローチャートである。
【0040】
ステップS11では、検出部26が、画像取得部22が取得した画像から徒歩可能領域を検出する(S11)。検出部26は、歩行面の色情報に基づいて徒歩可能領域14を自動的に検出しても良いし、混雑情報演算装置20に図示しないモニタ及びマウスを接続し、管理者がモニタに表示された画像のうち徒歩可能領域のエッジをマウスでトレースし、そのエッジ内領域を徒歩可能領域として検出してもよい。
【0041】
ステップS12では、設定部27が撮影画像内において人一人が占有する面積(以下「人物占有面積」という)を設定する(S12)。歩行面を基準とする定点カメラ10の高度や位置(撮影角度)によって、撮影画像内における人物占有面積が異なる。これは、高度がより高ければ人がより小さく撮影されるため人物占有面積が小さくなり、高度がより低ければ人がより大きく撮影されるため人物占有面積が大きくなるためである。また、撮影角度が、歩行者の頭上から撮影する場合と、歩行者の側方または前後方から撮影する場合とでは、一般に頭上から撮影する方が側方または前後方から撮影する場合に比べて人物占有面積が小さくなる。管理者は、平均的な人物が撮影されたと想定した場合の人物占有面積を数値入力し、設定部27が入力された数値に基づいて人物占有面積を設定してもよい。また、設定部27は、人物検出部23が検出した人物領域の面積の平均値を算出し、この値に基づいて人物占有面積を自動設定してもよい。
【0042】
ステップS13では、算出部28が、S11で検出した徒歩可能領域の面積を算出し、徒歩可能領域の面積を人物占有面積で除算した値に応じて判別部25が判別に用いる閾値を算出する(S13)。算出部28は、徒歩可能領域の面積を人物占有面積で除算した値がより大きいほど、徒歩可能領域を通行可能な人数が多いため、より大きな第一閾値及び第二閾値を算出する。反対に、歩可能領域の面積を人物占有面積で除算した値がより小さいほど、徒歩可能領域を通行可能な人数が少ないため、より小さな第一閾値及び第二閾値を算出する。
【0043】
ステップS14では、判別部25がS13で算出した第一閾値及び第二閾値を設定し、混雑状況の判別に使用する(S14)。
【0044】
本閾値設定処理により、定点カメラ10が広域撮影又はズーム撮影など撮影エリアを変更した場合に、その縮尺に応じた閾値が自動設定されるので、混雑情報提供システム1の管理者の手間を省くことができる。
【0045】
次に図6に基づいて本実施の形態に係る混雑情報提供システム1が実行する予測情報提供処理について説明する。図6は、予測情報提供処理の流れを示すフローチャートである。
【0046】
ステップS21では、予測部31がログ情報格納部30に格納されたログ情報を読み出す(S21)。
【0047】
ステップS22では、予測部31が読み出したログ情報に基づいて時刻と混雑状況とを関連づけた近似関数を生成する(S22)。予測部31は、生成した近似関数に基づいてある時刻における混雑の予想情報を生成する。近似関数の算出方法は、図7(a)に示すように横軸に時間を、縦軸に混雑の度合いを示すグラフを用意し、読出したログ情報をプロットする。そして、最小二乗法を用いて近似関数を算出してもよい。また、図7(b)に示すように近似関数を求めることなく、プロットした点の集中度からある時刻における混雑の度合いを求めてもよい。予測部31が予測情報の生成に使用するアルゴリズムは、上記に限らず公知のものを適宜使用することができる。また、予測部31は、近似関数を用いて予想待ち時間情報を算出しても良い。
【0048】
ステップS23では、提供部32がS22で生成した予測情報を情報表示部40に提供する(S23)。
【0049】
ステップS24では、予測情報提供処理が終了したか否かを判断し、終了でなければ「No」に進んでステップS21に戻り、再度S21〜S24の処理を繰り返す。終了の場合は、「Yes」へ進み、予測情報提供処理を終了する。
【0050】
本予測情報提供処理により、混雑している時間又は混雑していない時間をユーザに通知することができ、混雑時の人の流入の抑制及び混雑緩和に資することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、判別部25が混雑状況を判別したが、計測部24が計測した人数を提供部32が提供しても良い。
【0052】
<第二実施形態>
第二実施形態は、定点カメラ10により予め混雑状況の観測地点に人がいない状態を撮影した基準画像を生成し、この基準画像と、観測時に撮影した観測時画像との差分値に基づいて混雑状況を判別する。
【0053】
図8は、第二実施形態に係る混雑情報演算装置20の機能ブロック図である。第二実施形態に係る混雑情報演算装置20は、第一実施形態の混雑情報演算装置20の人物検出部23及び計測部24に代えて、基準画像を格納する基準画像格納部33と、基準画像と観測時画像との差分処理を行う差分部34とを備える。
【0054】
次に図9、10に基づいて本実施の形態に係る混雑情報提供システム1が実行する混雑状況の観測を説明する。図9は、第二実施形態に係る混雑状況の観測処理の流れを示すフローチャートである。図10は、基準画像100、観測時画像101、差分画像102を示す模式図である。
【0055】
本処理は、定点カメラ10が観測地点に人がいない状況で画像を撮影し、この画像を基準画像100として基準画像格納部33に格納しておき、この状態から開始する。
【0056】
ステップS31では、画像取得部22がS1と同様、定点カメラ10から観測時画像101(S1の撮影画像と同一)を取得する。
【0057】
ステップS32では、差分部34が基準画像格納部33から基準画像100を読み出す。
【0058】
ステップS33では、差分部34が基準画像100とS31で取得した観測時画像101との差分処理を行い、差分画像102を生成する。そして差分画像102の画素値に基づいて差分値を算出する。
【0059】
ステップS34では、判別部25がS1と同様、S33の差分値に基づき混雑状況の判別を行う。人が多い観測時画像101ほど基準画像100との差分値が大きくなるため、判別部24は、差分値と所定の閾値とを比較し差分値が所定の閾値以上であればより混雑していると判別し、所定の閾値未満であればより空いていると判別する。
【0060】
ステップS35乃至37は、ステップS5乃至7と同様の処理である。
【0061】
本実施形態によれば、人物検出アルゴリズムを使用することなく、単純な差分処理だけで混雑状況を判別することが出来、処理の速度を早くすることができる。
【0062】
上記ステップS33において、判別部25が、基準画像100の徒歩可能領域の面積から差分画像102に残った差分領域の面積を減算して通行面露出面積を求め、この通行面露出面積が大きいほど空いていると判断しても良い。
【0063】
<第三実施形態>
第三実施形態は、広域空間を複数区間に分割し、各区間に定点カメラ10を配置した実施形態である。
【0064】
図11では、広域空間を東西方向に渡って、Aブロック、Bブロック、Cブロックの3つの区間に分割する。そして、各ブロックに定点カメラ10を設置し、ブロック毎の混雑情報を混雑情報演算装置20に送信する。
【0065】
本実施に係る混雑情報演算装置20は、第一又は第二実施形態に係る混雑情報演算装置20の構成要素に加えて、区間毎の混雑情報に基づいて各区間の位置とその区間の混雑状況とを示す分布情報を生成する分布情報生成部を更に備える。そして、分布情報生成部は、図11のAブロック(混雑)、Bブロック(普通)、Cブロック(空き)の各ブロックの混雑情報を東西方向に並べ、東から西に向かって徐々に混み具合が減るという分布情報を生成する。提供部32は、区間毎の混雑状況及び/又は混雑状況の分布情報を提供する。
【0066】
図12は、情報表示装置40としてのユーザが使用する携帯電話に混雑状況及び予測情報を表示した画面表示例である。携帯電話40には、ブロック毎の混雑状況「混雑、普通、空き」と待ち時間情報「15分待ち、5分待ち、待ち時間0」121と、混雑の分布情報「西口が比較的空いています」122と、予測情報「Aブロックは13時頃に空くと予想されます」123とが表示される。
【0067】
本実施形態により、広域空間としての混雑情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明を適用した混雑情報提供システム1の概念図
【図2】第一実施形態に係る混雑情報提供システム1の概略構成を示すブロック図
【図3】第一実施形態に係る混雑情報演算装置20の機能ブロック図
【図4】第一実施形態に係る混雑状況の観測処理の流れを示すフローチャート
【図5】閾値設定処理の流れを示すためのフローチャート
【図6】予測情報提供処理の流れを示すフローチャート
【図7】予測部31の処理内容を示す模式図
【図8】第二実施形態に係る混雑情報演算装置20の機能ブロック図
【図9】第二実施形態に係る混雑状況の観測処理の流れを示すフローチャート
【図10】図10は、基準画像100、観測時画像101、差分画像102を示す模式図
【図11】第三実施形態に係る混雑情報提供システム1の概略図
【図12】画面表示例の図
【符号の説明】
【0069】
1:混雑情報提供システム、10:定点カメラ、20:混雑情報演算装置、40:情報表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
混雑状況を観測するための定点カメラと、
前記定点カメラが撮影した画像に含まれる人物領域を検出するための人物検出手段と、
前記人物検出手段が検出した人物領域に基づいて前記画像中の人物の数を計測する計測手段と、
前記計測手段の計測結果に基づく混雑情報を利用者に提供する提供手段と、
を備えることを特徴とする混雑情報提供システム。
【請求項2】
前記人物の数が所定の閾値以上であれば混雑していると判別し、前記人物の数が所定の閾値未満であれば混雑していないと判別する判別手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の混雑情報提供システム。
【請求項3】
前記画像内における徒歩可能領域の面積を検出する検出手段と、
前記画像内における一人当たりの人物が占有する人物占有領域の面積を設定する設定手段と、を更に備え、
前記判別手段は、前記徒歩可能領域の面積に対する前記人物占有領域の面積の割合に応じて前記所定の閾値を変更する、
ことを特徴する請求項2に記載の混雑情報提供システム。
【請求項4】
混雑状況を観測するための定点カメラと、
前記定点カメラにより観測地点に全く人がいない状況下で撮影された基準画像を格納する格納手段と、
前記定点カメラにより混雑状況の観測時点において撮影された観測時画像と、前記基準画像との差分処理を行う差分手段と、
前記差分処理の結果に基づく混雑情報を利用者に提供する提供手段と、
を備えることを特徴とする混雑情報提供システム。
【請求項5】
前記差分処理の結果に基づいて前記基準画像と前記観測時画像との相違量を示す差分値を算出し、該差分値が所定の閾値以上であれば混雑していると判別し、前記差分値が所定の閾値未満であれば混雑していないと判別する判別手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の混雑情報提供システム。
【請求項6】
前記基準画像は、前記観測地点の通行面を撮影した画像であり、
前記差分手段は、前記観測時画像から前記基準画像を差分処理した差分画像を生成し、
前記判別手段は、前記基準画像における通行面が撮影された通行面領域と前記差分画像に含まれる差分領域とのそれぞれの面積を計測し、前記通行面領域面積から前記差分領域面積を減算した通行面露出面積を前記差分値として算出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の混雑情報提供システム。
【請求項7】
前記提供手段は、前記利用者が操作する端末装置から前記混雑情報の送信要求情報を受信し、該送信要求情報に応じて前記混雑情報を前記端末装置に送信する送受信手段と、前記利用者が操作する端末装置に対して一方的に前記混雑情報を配信する手段と、前記混雑情報をホームページに掲載する手段と、定位置に設置された前記混雑情報を表示するための公衆表示装置と、のうちの少なくとも一つにより構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の混雑情報提供システム。
【請求項8】
前記混雑情報を生成した時刻を計時して時刻情報を生成する計時手段と、
前記時刻情報と前記混雑情報とに基づいて、ある時刻における混雑状況の予測情報を算出する予測手段と、を更に備え、
前記提供手段は、前記予測情報を更に提供する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の混雑情報提供システム。
【請求項9】
前記定点カメラは、広域空間を複数に分割する区間毎に設置され、
前記区間毎の混雑情報に基づいて前記広域空間内における混雑状況の分布を示す分布情報を生成する分布情報生成手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の混雑情報提供システム。
【請求項10】
定点カメラにより混雑状況の観測地点の画像を撮影するステップと、
前記画像に含まれる人物領域を検出するステップと、
前記人物領域に基づいて前記画像中の人物の数を計測するステップと、
前記計測した結果に基づく混雑情報を利用者に提供するステップと、
を含むことを特徴とする混雑情報提供方法。
【請求項11】
定点カメラにより混雑状況の観測地点の画像を、該観測地点に全く人がいない状況下で撮影し、基準画像として格納するステップと、
前記定点カメラにより、混雑状況の観測時に前記観測地点を撮影した観測時画像を生成するステップと、
前記基準画像を読出し、該基準画像と前記観測時画像との差分処理を行うステップと、
前記差分処理の結果に基づく混雑情報を利用者に提供するステップと、
を含むことを特徴とする混雑情報提供方法。
【請求項1】
混雑状況を観測するための定点カメラと、
前記定点カメラが撮影した画像に含まれる人物領域を検出するための人物検出手段と、
前記人物検出手段が検出した人物領域に基づいて前記画像中の人物の数を計測する計測手段と、
前記計測手段の計測結果に基づく混雑情報を利用者に提供する提供手段と、
を備えることを特徴とする混雑情報提供システム。
【請求項2】
前記人物の数が所定の閾値以上であれば混雑していると判別し、前記人物の数が所定の閾値未満であれば混雑していないと判別する判別手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の混雑情報提供システム。
【請求項3】
前記画像内における徒歩可能領域の面積を検出する検出手段と、
前記画像内における一人当たりの人物が占有する人物占有領域の面積を設定する設定手段と、を更に備え、
前記判別手段は、前記徒歩可能領域の面積に対する前記人物占有領域の面積の割合に応じて前記所定の閾値を変更する、
ことを特徴する請求項2に記載の混雑情報提供システム。
【請求項4】
混雑状況を観測するための定点カメラと、
前記定点カメラにより観測地点に全く人がいない状況下で撮影された基準画像を格納する格納手段と、
前記定点カメラにより混雑状況の観測時点において撮影された観測時画像と、前記基準画像との差分処理を行う差分手段と、
前記差分処理の結果に基づく混雑情報を利用者に提供する提供手段と、
を備えることを特徴とする混雑情報提供システム。
【請求項5】
前記差分処理の結果に基づいて前記基準画像と前記観測時画像との相違量を示す差分値を算出し、該差分値が所定の閾値以上であれば混雑していると判別し、前記差分値が所定の閾値未満であれば混雑していないと判別する判別手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の混雑情報提供システム。
【請求項6】
前記基準画像は、前記観測地点の通行面を撮影した画像であり、
前記差分手段は、前記観測時画像から前記基準画像を差分処理した差分画像を生成し、
前記判別手段は、前記基準画像における通行面が撮影された通行面領域と前記差分画像に含まれる差分領域とのそれぞれの面積を計測し、前記通行面領域面積から前記差分領域面積を減算した通行面露出面積を前記差分値として算出する、
ことを特徴とする請求項5に記載の混雑情報提供システム。
【請求項7】
前記提供手段は、前記利用者が操作する端末装置から前記混雑情報の送信要求情報を受信し、該送信要求情報に応じて前記混雑情報を前記端末装置に送信する送受信手段と、前記利用者が操作する端末装置に対して一方的に前記混雑情報を配信する手段と、前記混雑情報をホームページに掲載する手段と、定位置に設置された前記混雑情報を表示するための公衆表示装置と、のうちの少なくとも一つにより構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の混雑情報提供システム。
【請求項8】
前記混雑情報を生成した時刻を計時して時刻情報を生成する計時手段と、
前記時刻情報と前記混雑情報とに基づいて、ある時刻における混雑状況の予測情報を算出する予測手段と、を更に備え、
前記提供手段は、前記予測情報を更に提供する、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の混雑情報提供システム。
【請求項9】
前記定点カメラは、広域空間を複数に分割する区間毎に設置され、
前記区間毎の混雑情報に基づいて前記広域空間内における混雑状況の分布を示す分布情報を生成する分布情報生成手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の混雑情報提供システム。
【請求項10】
定点カメラにより混雑状況の観測地点の画像を撮影するステップと、
前記画像に含まれる人物領域を検出するステップと、
前記人物領域に基づいて前記画像中の人物の数を計測するステップと、
前記計測した結果に基づく混雑情報を利用者に提供するステップと、
を含むことを特徴とする混雑情報提供方法。
【請求項11】
定点カメラにより混雑状況の観測地点の画像を、該観測地点に全く人がいない状況下で撮影し、基準画像として格納するステップと、
前記定点カメラにより、混雑状況の観測時に前記観測地点を撮影した観測時画像を生成するステップと、
前記基準画像を読出し、該基準画像と前記観測時画像との差分処理を行うステップと、
前記差分処理の結果に基づく混雑情報を利用者に提供するステップと、
を含むことを特徴とする混雑情報提供方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−201556(P2007−201556A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14369(P2006−14369)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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