説明

渋滞判定装置、及び車両制御装置

【課題】渋滞区間内の車両の走行状態を精度よく判定できる渋滞判定装置、及び車両制御装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る渋滞判定装置1は、車両の走行状態に関する走行情報を取得する走行情報取得部21と、走行情報取得部21により取得された現在の走行情報に基づいて、車両が中心区間を含む少なくとも3つの区間から構成される渋滞区間のいずれの区間を走行中であるかを判定する走行区間判定部23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、渋滞判定装置、及び車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、交通情報や走行パターンに応じて渋滞を判断し、その判断結果に基づいて車両を走行させる車両制御装置が知られている。例えば、下記の特許文献1に記載の車両制御装置では、渋滞情報又は走行パターンによって渋滞長を算出し、渋滞長が所定以上の場合に、車両の自動運転を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−324661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の車両制御装置は、交通情報の遅延や走行パターンの誤判定などにより、十分な精度で渋滞を判断することができなかった。また、上記特許文献1に記載の車両制御装置は、渋滞長に基づいて車両の自動運転を行うか否かを判断しているため、渋滞内の様々な車両の走行状態に適応することができなかった。
【0005】
そこで本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、渋滞内の車両の走行状態を精度よく判定し、渋滞内の車両の走行状態に応じて車両の走行制御を行うことを可能とする渋滞判定装置、及び車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る渋滞判定装置は、車両の走行状態に関する走行情報を取得する走行情報取得手段と、走行情報取得手段により取得された現在の走行情報に基づいて、車両が中心区間を含む少なくとも3つの区間から構成される渋滞区間のいずれの区間を走行中であるかを判定する走行区間判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明では、車両の走行状態に基づいて、渋滞区間を少なくとも3つの区間に分類できることを見出した。そして本発明によれば、現在の走行情報に基づいて、車両が少なくとも3つの区間のうちいずれの区間を走行中であるかを判定することによって、車両が現在走行していると判定された区間により、車両がどのような走行状態であるか推測できる。さらに、例えば、渋滞区間内の走行区間に応じて適切な運転支援を行う等、渋滞区間内の走行区間に応じた制御を行うことが可能となる。その結果、車両の燃費向上を実現することが可能となる。
【0008】
また本発明に係る渋滞判定装置において、走行情報取得手段は、複数の車両から走行情報を取得し、走行区間判定手段は、走行情報取得手段により取得された複数の車両の走行情報及び車両の現在の走行情報に基づいて、車両が渋滞区間のいずれの区間を走行中であるかを判定するのが好ましい。これによれば、複数の車両の走行情報に基づいて、車両の走行区間を判定することができ、より高い精度で判定することが可能となる。
【0009】
また本発明に係る渋滞判定装置において、走行情報取得手段により取得された複数の走行情報を解析し、渋滞区間を少なくとも3つの区間に分類する走行情報解析手段をさらに備えるのが好ましい。これによれば、複数の走行情報に基づいて、渋滞区間を少なくとも3つの区間に分類することで、分類の精度を向上でき、車両が渋滞区間のどの区間を現在走行しているかをより精度よく判定することができる。
【0010】
また本発明に係る渋滞判定装置において、走行情報解析手段は、車両の速度に関する多変量解析を行うことで、渋滞区間を少なくとも3つの区間に分類するのが好ましい。これによれば、車両の速度に関する多変量解析により、分類の精度を向上でき、車両が渋滞区間のどの区間を現在走行しているかをより精度よく判定することができる。
【0011】
また本発明に係る渋滞判定装置において、走行区間判定手段は、車両が渋滞区間の末尾区間、中心区間、回復区間のいずれの区間を走行中であるかを判定するのが好ましい。これによれば、渋滞区間を末尾区間、中心区間、回復区間に分類することで、各区間における車両の挙動(走行状態)に応じて適切な運転支援を行う等、各区間に応じた制御を行うことが可能となる。その結果、車両のさらなる燃費向上を実現することが可能となる。
【0012】
また本発明に係る車両制御装置は、上記渋滞判定装置と、走行区間判定手段の判定結果に基づいて車両の運転支援を行う運転支援手段と、を備えることを特徴とする。これによれば、渋滞区間内の走行区間に応じて適切な運転支援を行うことができる。その結果、車両のさらなる燃費向上を実現することが可能となる。
【0013】
また本発明に係る車両制御装置において、他車両の走行状態に関する走行情報を取得する他車両情報取得手段と、他車両情報取得手段により取得された他車両の走行情報と解析手段による解析結果とに基づいて、他車両が渋滞区間を走行中であるか否かを判定する他車両走行区間判定手段と、をさらに備えてもよく、運転支援手段は、他車両走行区間判定手段の判定結果に基づいて、車両の運転支援を行うのが好ましい。これによれば、他車両が渋滞区間を走行しているか否かに応じて適切な運転支援を行うことができる。その結果、車両のさらなる燃費向上を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、渋滞区間内の車両の走行状態を精度よく判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る渋滞判定装置の構成概略図である。
【図2】渋滞区間における経過時間と車速との関係を表す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る渋滞判定装置のサグ渋滞時の走行情報を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る渋滞判定装置により解析された走行領域と判別直線とを示すグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る渋滞判定装置の走行情報を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る渋滞判定装置の走行区間判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る渋滞判定装置の運転支援の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る自車両と先行車両との車間の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本実施形態の渋滞判定装置1の構成概略図を示す図である。渋滞判定装置1は、自車両に搭載され、自車両の走行区間を判定する装置である。図1に示すように渋滞判定装置1は、ECU(Electronic Control Unit)2と、ナビゲーションシステム3と、車速センサ4と、加速度センサ5と、入力装置6と、表示装置7と、通信装置8と、走行情報記憶部9と、車載ECU10と、を含んで構成されている。
【0018】
ECU2は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイス等を含むコンピュータを主体として構成されている。ECU2は、ナビゲーションシステム3、車速センサ4、加速度センサ5、入力装置6、表示装置7、通信装置8、走行情報記憶部9、車載ECU10に接続されている。またECU2は、走行情報取得部21と走行情報解析部22と走行区間判定部23とを備えて構成されている。ECU2は、運転支援部24をさらに備えてもよく、この場合、渋滞判定装置1は、自車両の走行区間に応じた制御を行う車両制御装置として機能する。
【0019】
ナビゲーションシステム3は、自車両の走行位置を取得する不図示のGPS(Global Positioning System)受信機と、地図情報を記憶する不図示の地図情報DBと、を備えており、地図情報DBに記憶された地図情報に基づいて、入力された目的地までの経路を算出し、表示装置7や不図示のスピーカなどを用いて経路案内を行うものである。また、ナビゲーションシステム3は、自車両が現在走行している位置に関する走行位置情報や、自車両の走行位置の近傍における地図情報をECU2に送信する。また、ナビゲーションシステム3は、サグ渋滞を生じやすい場所の領域を示す情報である渋滞領域情報を地図情報DBに記憶している。
【0020】
車速センサ4は、例えば自車両の車輪部に設けられ、車輪の回転数を検出しており、検出した車輪の回転数から走行状態の車速を算出する。車速センサ4は、算出した車速に基づく車速情報をECU2に送信する。加速度センサ5は、例えば自車両の前部に設けられており、自車両の前後加速度と横加速度を検出する。加速度センサ5は、各加速度に基づく加速度情報をECU2に送信する。
【0021】
入力装置6は、運転者が渋滞判定装置1に対して各種設定や各種選択等を行うための装置である。本実施形態では、入力装置6は操作パネルである。入力装置6は、リモートコントローラ、ディスプレイを利用したタッチパネル等としてもよい。
【0022】
表示装置7は、視覚を通じてユーザに情報を提供する装置であり、例えば経路案内情報や各種設定情報等を表示する装置である。本実施形態では、表示装置7は液晶ディスプレイであるが、他の表示装置であってもよい。なお、表示装置7とともに、スピーカ等の音声出力部を備える構成としてもよい。
【0023】
通信装置8は、主要道路などに設けられた路側装置や基地局との間で双方向通信を行う装置である。通信装置8は、路側装置や基地局との間における双方向通信によって例えば他車両の走行位置情報及び他車両の車速情報等を含む走行情報を取得する。通信装置8は、路側装置や基地局から取得した他車両の走行情報をECU2に送信する。
【0024】
走行情報記憶部9は、渋滞領域情報が示す領域内において車速センサ4から受信した車速情報とその車速情報を受信した時刻を示す時刻情報とを含む走行情報を、当該渋滞領域情報とともに記憶する記憶手段である。走行情報記憶部9は、ハードディスク、フラッシュメモリ、RAM等の読み書き可能な記憶媒体で構成されている。なお、走行情報記憶部9は、ECU2に内蔵されたRAM等の読み書き可能な記憶媒体により構成されてもよい。
【0025】
車載ECU10は、自車両に搭載されたECU2以外のECUである。車載ECU10は、例えばエンジンECU11、ブレーキECU12、車間制御ECU13、ハイブリッドECU14等である。エンジンECU11は、エンジンの制御を行うECUである。エンジンECU11は、ECU2から送信された加減速度情報を含む制御情報に基づいて、エンジンの制御を行う。ブレーキECU12は、ブレーキの制御を行うECUである。ブレーキECU12は、ECU2から送信された加減速度情報を含む制御情報に基づいて、ブレーキの制御を行う。
【0026】
車間制御ECU13は、先行車両等の他物体との距離に応じた制御を行うECUである。車間制御ECU13は、ECU2から送信された車間制御情報に基づいて、先行車両との車間を制御する。ハイブリッドECU14は、ハイブリッドシステムの制御を行うECUである。ハイブリッドECU14は、ECU2から送信された制御情報に基づいて、ハイブリッドシステムの制御を行う。エンジンECU11、ブレーキECU12、車間制御ECU13、ハイブリッドECU14は、いずれもCPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェイス等を含むコンピュータを主体として構成されている。
【0027】
図2は、車両が渋滞区間に入ってから抜け出すまでの時間と車速との関係を表す図である。区間A0は、車両が自由に走行可能な自由走行区間である。区間A1は、車両が減速傾向を示す区間であって、車両が渋滞区間に入った直後の末尾区間である。区間A2は、車両が安定した速度変動をする区間であって、渋滞区間の中心区間である。区間A3は、車両が加速傾向を示す区間であって、渋滞区間から抜け出す手前の回復区間である。このように、本実施形態の渋滞判定装置1では、車速の変化等の車両の挙動(走行状態)に応じて渋滞区間を複数の区間に分類する。
【0028】
図1に戻って、本実施形態のECU2の各機能について以下に説明を行う。
【0029】
走行情報取得部21は、車両の走行状態に関する走行情報を取得する走行情報取得手段として機能するものである。走行情報取得部21は、ナビゲーションシステム3から渋滞領域情報を取得し、自車両がその渋滞領域情報により示される領域を走行する場合、その領域内において車速センサ4から受信した車速情報とその車速情報を受信した時刻を示す時刻情報とを含む走行情報を、当該渋滞領域情報とともに走行情報記憶部9に記憶する。
【0030】
走行情報解析部22は、走行情報取得部21により取得された複数の走行情報を解析する走行情報解析手段として機能するものである。走行情報解析部22は、運転者によって入力装置6が操作されてサグ渋滞を生じやすい場所(渋滞領域)を特定する情報が入力されることにより、走行情報記憶部9からその渋滞領域に対応する複数の走行情報を読み出す。図3は、N回分のサグ渋滞時の走行情報を示す図である。走行情報解析部22は、図3に示すように、読み出したN回分の走行情報を、それぞれ時間の経過と車速との関係を示すグラフとして表示装置7に表示する。
【0031】
表示装置7に表示されたグラフに対して、運転者が渋滞区間の末尾区間、中心区間、回復区間を設定すると、走行情報解析部22は、各区間に含まれる走行情報からそれぞれt秒ごとにT秒間の走行情報を期間走行情報として抽出する。走行情報解析部22は、各期間走行情報について、車速の平均、標準偏差、尖度、歪度、平均速度差、標準誤差、分散、最頻値、中央値、最大値、最小値、範囲等の基本統計量を算出する。そして、走行情報解析部22は、基本統計量のうち、例えば、車速の平均、標準偏差、尖度、歪度及び平均速度差に基づいて期間走行情報の多変量解析を行う。
【0032】
具体的には、走行情報解析部22は、多変量解析により、使用する複数の統計量を2つの変数Z1及び変数Z2に纏めるため、各統計量から変数Z1及び変数Z2を算出するための係数を統計量ごとに算出する。変数Z1及び変数Z2は、例えば以下の式(1)及び式(2)で示される判別関数により求められる。a11,a12,a13,a14,a15は、変数Z1を算出するための係数である。a21,a22,a23,a24,a25は、変数Z2を算出するための係数である。C1及びC2は、それぞれ変数Z1、変数Z2を算出するための定数である。
Z1=a11×(平均値)+a12×(標準偏差)+a13×(尖度)+a14×(歪度)+a15×(平均速度差)+C1…(1)
Z2=a21×(平均値)+a22×(標準偏差)+a23×(尖度)+a24×(歪度)+a25×(平均速度差)+C2…(2)
【0033】
走行情報解析部22は、末尾区間、中心区間、及び回復区間に含まれる各期間走行情報をこの判別関数に基づいて変数Z1及び変数Z2の座標空間にそれぞれ変換する。そして、走行情報解析部22は、変数Z1及び変数Z2の座標空間における判別直線B1、判別直線B2、判別直線B3を算出する。判別直線B1は、末尾区間と中心区間との境界線である。判別直線B2は、中心区間と回復区間との境界線である。判別直線B3は、回復区間と末尾区間との境界線である。
【0034】
図4は、各走行区間と、各走行区間の境界線である判別直線とを示す図である。領域C1は、末尾区間を示す領域であって、判別直線B3と判別直線B1とで区切られている。領域C2は、中心区間を示す領域であって、判別直線B1と判別直線B2とで区切られている。領域C3は、回復区間を示す領域であって、判別直線B2と判別直線B3とで区切られている。
【0035】
例えば、第1番目及び第2番目の期間走行情報を判別関数(1)及び(2)により変換した座標は、領域C1に属している。第i番目及び第i+1番目の期間走行情報を判別関数(1)及び(2)により変換した座標は、領域C2に属している。第j番目及び第j+1番目の期間走行情報を判別関数(1)及び(2)により変換した座標は、領域C3に属している。このように、走行情報解析部22は、変数Z1及び変数Z2の座標空間において、期間走行情報に設定されている走行区間に応じて、期間走行情報が分類されるように、判別関数(1)及び(2)の係数及び定数を設定する。
【0036】
走行区間判定部23は、走行情報取得部21により取得された現在の走行情報と走行情報解析部22による解析結果とに基づいて、車両が渋滞区間の少なくとも3つの区間のうちいずれの区間を走行中であるかを判定する走行区間判定手段として機能するものである。走行区間判定部23は、走行情報取得部21により取得された車速情報が示す車速が、渋滞開始閾値V1以下となった場合に、自車両が渋滞区間に入ったものと判定し、まず渋滞区間の末尾区間を走行しているものと判定する。
【0037】
走行区間判定部23は、自車両が渋滞区間を走行していると判定すると、図5に示すように、走行情報取得部21により取得されている自車両の車速情報をT秒間の期間走行情報として、t秒ごとに抽出する。そして、期間走行情報ごとに車速の平均、標準偏差、尖度、歪度、平均速度差を算出し、算出した各統計量と走行情報解析部22により算出された判別関数とに基づいて、変数Z1及び変数Z2の値を算出する。走行区間判定部23は、算出した変数Z1及び変数Z2の値により示される座標が、図4で示されるいずれの領域に属するか判定し、自車両が渋滞区間の末尾区間、中心区間、回復区間のいずれの区間を走行しているか判定する。
【0038】
運転支援部24は、車両の運転支援を行う運転支援手段として機能するものである。運転支援部24は、走行区間判定部23によって判定された走行区間に応じて、自車両の運転支援を行う。運転支援の具体例については、後述する。なお、渋滞判定装置1は、ECU2が運転支援部24を備える場合、車両制御装置として機能する。
【0039】
続いて、図6のフローチャートを用いて、本実施形態に係る渋滞判定装置1における走行区間判定処理の手順について説明する。
【0040】
走行区間判定部23は、走行情報取得部21によって取得された車速情報が示す車速が予め設定された渋滞開始閾値V1以下となったか否かを所定周期で判定する(S1)。ここで、渋滞開始閾値V1は、車両が渋滞区間に入ったと判断可能な速度であって、例えば40km/hである。自車両の車速が渋滞開始閾値V1より大きい場合(S1;No)、この判定処理が所定周期で繰り返される。一方で、自車両の車速が渋滞開始閾値V1以下の場合(S1;Yes)、走行区間判定部23は、自車両が渋滞区間に入ったものと判定し、自車両が渋滞区間の末尾区間を走行しているものと判定する(S2)。
【0041】
次に、走行区間判定部23は、走行情報取得部21によって取得されている自車両の車速情報をT秒間の期間走行情報として、t秒ごとに抽出する。そして、走行区間判定部23は、期間走行情報ごとに車速の平均、標準偏差、尖度、歪度及び平均速度差を算出し、走行情報解析部22により算出された判別関数に基づいて変数Z1及び変数Z2の値をそれぞれ算出する。そして、走行区間判定部23は、走行情報解析部22によって算出された末尾区間と中心区間との判別直線B1と、中心区間と回復区間との判別直線B2とに基づいて、当該期間走行情報が中心区間を示す領域C2に属するか否かの判定を行う(S3)。期間走行情報が中心区間を示す領域C2に属すると判定された場合(S3;Yes)、走行区間判定部23は、自車両が渋滞区間の中心区間を走行していると判定する(S4)。
【0042】
一方で、期間走行情報が中心区間を示す領域C2に属さないと判定された場合(S3;No)、走行区間判定部23は、走行情報解析部22によって算出された中心区間と回復区間との判別直線B2と、回復区間と末尾区間との判別直線B3とに基づいて、当該期間走行情報が回復区間を示す領域C3に属するか否かの判定を行う(S5)。期間走行情報が回復区間を示す領域C3に属すると判定された場合(S5;Yes)、走行区間判定部23は、自車両が渋滞区間の回復区間を走行していると判定する(S6)。一方で、期間走行情報が回復区間を示す領域C3に属さないと判定された場合(S5;No)、走行区間判定部23は、自車両が末尾区間を走行していると判定する(S7)。
【0043】
次に、走行区間判定部23は、走行情報取得部21によって取得された車速情報が示す車速が予め設定された渋滞終了閾値V2以下か否かを判定する(S8)。ここで、渋滞終了閾値V2は、車両が渋滞区間から抜け出たと判断可能な速度であって、例えば80km/hである。自車両の車速が渋滞終了閾値V2以下の場合(S8;Yes)、S3の処理に戻って、再度走行区間の判定処理を行う。一方で、自車両の車速が渋滞終了閾値V2より大きい場合(S8;No)、走行区間判定部23は、自車両が渋滞区間から抜け自由走行しているものと判定して(S9)、走行区間判定処理を終了する。
【0044】
なお、期間走行情報が中心区間を示す領域C2に属するか否かの判定(S3)と期間走行情報が回復区間を示す領域C3に属するか否かの判定(S5)との処理に代えて、期間走行情報が末尾区間を示す領域C1、中心区間を示す領域C2、回復区間を示す領域C3のいずれの領域に属するかの判定を行うようにしてもよい。
【0045】
続いて、本実施形態に係る渋滞判定装置1における運転支援の具体例について以下に説明を行う。
【0046】
図7は、渋滞判定装置1における運転支援の一例を示す図である。運転支援部24は、走行区間判定部23によって判定された自車両が走行している区間に応じて、推奨速度を設定する。渋滞区間の末尾区間では、車速は低周波で変動し、変動幅が大きい傾向にある。このため、運転支援部24は、自車両が末尾区間を走行していると判定された場合、走行情報記憶部9に記憶されている過去の走行情報に基づいて末尾区間における平均速度を算出し、算出した平均速度を末尾区間における推奨速度に設定する。
【0047】
また、渋滞区間の中心区間では、車速は安定した変動を示す傾向にある。このため、運転支援部24は、自車両が中心区間を走行していると判定された場合、走行情報取得部21によって取得された車速情報が示す車速に基づいて長期間(例えば、200秒)での平均速度を算出する。そして、運転支援部24は、算出した平均速度を中心区間における推奨速度に設定する。また、渋滞区間の回復期間では、車速は上昇を基調とした変動を示す傾向にある。このため、運転支援部24は、自車両が回復区間を走行していると判定された場合、走行情報取得部21によって取得された車速情報が示す車速に基づいて短期間(例えば、50秒)での平均速度を算出する。
【0048】
そして、運転支援部24は、算出した平均速度を回復区間における推奨速度に設定する。図7の曲線Vrは、このようにして設定した推奨速度を示す。運転支援部24は、例えば設定した推奨速度を中心速度として、加減速制御を行うよう、エンジンECU11及びブレーキECU12に加減速度情報を送信する。また、運転支援部24は、設定した推奨速度を表示装置7に表示し、自車両の車速が推奨速度を超える場合に警告を表示する等してもよい。このように、自車両が走行している区間に応じて推奨速度を設定することで、自車両が無駄な加速を行わないように誘導することができる。このため、自車両の燃費を向上でき、効率的な走行を行うことができる。
【0049】
運転支援部24は、先行車両との車間制御をバネマス系運動として、車間制御ECU13に制御を行うように指示してもよい。具体的に説明すると、運転支援部24は、走行情報解析部22によって算出された車速の標準偏差に応じて、ばね定数k、減衰係数Cを変更する。運転支援部24は、ばね定数k、減衰係数Cを含む車間制御情報を車間制御ECU13に送信する。このようにすることで、渋滞状態を加味した車間制御が可能となる。
【0050】
運転支援部24は、走行区間判定部23によって判定された自車両が走行している区間に応じて、車間制御ECU13に車間距離の制御を行うように指示してもよい。図8(a)は、末尾区間における自車両Mと先行車両Mとの車間の一例を示す図である。図8(a)に示すように、車間dは、自車両Mが通常走行している場合の先行車両Mとの目標車間である。車間dは、自車両Mが渋滞区間の末尾区間を走行している場合の先行車両Mとの目標車間である。自車両Mが渋滞区間の末尾区間を走行していると判定された場合、自車両Mは減速すると考えられる。したがって、通常走行時の車間dよりも大きい車間dを許容する。運転支援部24は、この車間dを含む車間制御情報を車間制御ECU13に送信する。
【0051】
図8(b)は、回復区間における自車両Mと先行車両Mとの車間の一例を示す図である。図8(b)に示すように、車間dは、自車両Mが通常走行している場合の先行車両Mとの目標車間である。車間dは、自車両Mが渋滞区間の回復区間を走行している場合の先行車両Mとの目標車間である。自車両Mが渋滞区間の回復区間を走行していると判定された場合、自車両Mは速度回復(加速)すると考えられる。したがって、通常走行時の車間dよりも小さい車間dを許容する。運転支援部24は、この車間dを含む車間制御情報を車間制御ECU13に送信する。
【0052】
自車両Mが中心区間を走行している場合、運転支援部24は、走行情報取得部21によって取得された車速情報が示す車速に基づいて平均速度を算出する。そして、運転支援部24は、算出した平均速度に所定の加算値を加えた速度を上限速度として加減速制御を行うよう、エンジンECU11及びブレーキECU12に加減速度情報を送信するようにしてもよい。
【0053】
このように、本実施形態の渋滞判定装置によれば、複数の走行情報を解析し、現在の走行情報と解析結果とに基づいて、車両が渋滞区間の末尾区間、中心区間、回復区間のうちいずれの区間を走行中であるかを判定することによって、車両が渋滞区間のどの区間を現在走行しているか認識できる。このため、例えば、渋滞区間の走行区間に応じて適切な運転支援を行う等、渋滞区間の走行区間に応じた制御を行うことが可能となる。その結果、車両の燃費向上を実現することが可能となる。
【0054】
なお、本発明に係る渋滞判定装置、及び車両制御装置は上記実施形態に記載したものに限定されるものではない。
【0055】
例えば、上記実施形態では、走行情報取得部21は、車速センサ4から車速情報を受信しているが、通信装置8を介して他車両や情報センター(サーバ)等から渋滞領域情報により示される領域に関する車速情報等の走行情報を取得してもよい。このようにすることで、より多くの走行情報に基づいて解析を行うことができ、解析の精度を高めることができる。その結果、走行区間の判定精度を高めることが可能となる。また、他車両又は情報センター(サーバ)等から走行情報を取得する場合、走行区間判定部23は、各他車両が渋滞区間の少なくとも3つの区間のうちいずれの区間を走行中であるかを判定するようにしてもよい。
【0056】
上記実施形態では、渋滞区間を末尾区間、中心区間、回復区間の3つの走行区間に分類しているが、これに限定されるものではなく、車両の走行状態に基づいてさらに複数の走行区間に分類してもよい。また、走行情報解析部22は、車速情報に基づいて渋滞区間を複数の走行区間に分類しているが、加速度情報等の走行情報に基づいて渋滞区間を複数の走行区間に分類してもよい。また、走行情報解析部22は、複数の走行情報に基づいて渋滞区間を複数の走行区間に分類してもよい。また、走行情報解析部22は、多変量解析により渋滞区間を複数の走行区間に分類しているが、他の解析方法を用いて渋滞区間を複数の走行区間に分類してもよい。
【0057】
上記実施形態では、N回分の走行情報に対して、運転者が渋滞区間の末尾区間、中心区間、回復区間を設定しているが、走行情報解析部22が、走行状態の変化に応じて末尾区間、中心区間、回復区間を設定するようにしてもよい。
【0058】
走行情報解析部22は、渋滞領域情報により示される領域ごとに判別関数を求め、渋滞領域情報により示される領域ごとに判別直線を求めるのが好ましい。また、走行情報解析部22は、時間帯ごとに判別関数を求め、時間帯ごとに判別直線を求めてもよい。このようにすることで、走行区間の判定精度をより一層高めることが可能となる。
【0059】
走行区間判定部23は、走行情報解析部22の解析結果に代えて、他車両における解析結果(例えば、判別関数及び判別直線)、又は、不図示の情報センターにおける解析結果(例えば、判別関数及び判別直線)に基づいて、車両が渋滞区間の少なくとも3つの区間のうちいずれの区間を走行中であるかを判定するようにしてもよい。また、判別関数及び判別直線を予め設定しておいてもよい。かかる場合には、渋滞判定装置1は、走行情報解析部22を備える必要はない。
【0060】
さらに、渋滞判定装置1は、他車両の走行状態に関する走行情報を取得する他車両情報取得部(他車両情報取得手段)と、他車両が渋滞区間を走行しているか否かを判定する他車両走行区間判定部(他車両走行区間判定手段)と、をさらに備えてもよい。他車両情報取得部は、不図示の車載カメラから受信した画像情報、不図示のレーダから受信した他車両までの距離情報等に基づいて、他車両の位置、速度、加速度等の他車両の走行情報を算出する。あるいは、他車両情報取得部は、通信装置8を介して他車両の走行情報を取得する。
【0061】
そして、他車両走行区間判定部は、走行区間判定部23と同様にして、他車両の車速が渋滞開始閾値V1以下となったか否かを判定することにより、他車両が渋滞区間を走行しているか否かを判定する。また、他車両走行区間判定部は、渋滞終了閾値V2以下か否かを判定することにより、他車両が渋滞区間から抜け出したか否かを判定する。
【0062】
運転支援部24は、他車両走行区間判定部の判定結果に基づいて、運転支援を行ってもよい。具体的に説明すると、他車両走行区間判定部によって他車両が渋滞区間を走行していると判定した場合、例えば、減速支援を行うか否かの判定に用いられる自車両と他車両との車間距離の閾値を、他車両が通常走行している場合よりも小さくする。このように、他車両が渋滞区間を走行しているか否かに応じて、自車両の運転支援を変更することで、より適切な運転支援を行うことが可能となる。
【0063】
また、上記実施形態では、渋滞判定装置1は自車両に搭載されているが、これに限定されない。例えば不図示の情報センターが、渋滞判定装置1を備えるようにしてもよい。この場合、情報センターは、各車両から走行情報を取得し、複数の走行情報の解析を行って、例えば、判別関数及び判別直線を算出するようにしてもよい。そして、情報センターは、判別関数及び判別直線に基づいて、各車両の現在の走行情報から、各車両が渋滞区間の末尾区間、中心区間、回復区間のうちいずれの区間を走行中であるかを判定するようにしてもよい。このように、情報センターは、複数の車両の走行情報の解析を行って、判別関数及び判別直線を算出することができる。このため、より精度の高い解析を行うことが可能となる。また、各車両が渋滞判定装置1を備えていなくても、各車両の渋滞区間における走行区間を判定することが可能となる。
【符号の説明】
【0064】
1…渋滞判定装置(車両制御装置)、2…ECU、3…ナビゲーションシステム、4…車速センサ、5…加速度センサ、6…入力装置、7…表示装置、8…通信装置、9…走行情報記憶部、10…車載ECU、21…走行情報取得部(走行情報取得手段)、22…走行情報解析部(走行情報解析手段)、23…走行区間判定部(走行区間判定手段)、24…運転支援部(運転支援手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態に関する走行情報を取得する走行情報取得手段と、
前記走行情報取得手段により取得された現在の走行情報に基づいて、前記車両が中心区間を含む少なくとも3つの区間から構成される渋滞区間のいずれの区間を走行中であるかを判定する走行区間判定手段と、
を備える渋滞判定装置。
【請求項2】
前記走行情報取得手段は、複数の車両に関する前記走行情報を取得し、
前記走行区間判定手段は、前記走行情報取得手段により取得された前記複数の車両に関する前記走行情報に基づいて、前記複数の車両の各々が前記渋滞区間のいずれの区間を走行中であるかを判定する、
請求項1に記載の渋滞判定装置。
【請求項3】
前記走行情報取得手段により取得された複数の走行情報を解析し、渋滞区間を前記少なくとも3つの区間に分類する走行情報解析手段をさらに備える、
請求項1又は2に記載の渋滞判定装置。
【請求項4】
前記走行情報解析手段は、車両の速度に関する多変量解析を行うことで、渋滞区間を前記少なくとも3つの区間に分類する、
請求項3に記載の渋滞判定装置。
【請求項5】
前記走行区間判定手段は、前記車両が渋滞区間の末尾区間、中心区間、回復区間のうちいずれの区間を走行中であるかを判定する、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の渋滞判定装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の渋滞判定装置と、
前記走行区間判定手段の判定結果に基づいて前記車両の運転支援を行う運転支援手段と、
を備える車両制御装置。
【請求項7】
他車両の走行状態に関する走行情報を取得する他車両情報取得手段と、
前記他車両情報取得手段により取得された前記他車両の走行情報と前記走行情報解析手段による解析結果とに基づいて、前記他車両が渋滞区間を走行中であるか否かを判定する他車両走行区間判定手段と、
をさらに備え、
前記運転支援手段は、前記他車両走行区間判定手段の判定結果に基づいて、前記車両の運転支援を行う、
請求項6に記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−164025(P2012−164025A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22019(P2011−22019)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】