説明

減速機付モータ

【課題】小型化、軽量化を図ることができる減速機付モータを提供する。
【解決手段】クラッチ機構130は、回転軸の回転が入力されるウォームホイール34と、ウォームホイール34と係合し、このウォームホイール34の回転力を出力するドライブユニット35と、ドライブユニット35に連結され、このドライブユニット35と一体となって回転する出力回転体134と、ウォームホイール34よりもクラッチ機構収納部37の底部37a側に固定され、クラッチ機構収納部37の周壁37bに沿うように環状に形成されたハウジング131と、出力回転体134の外周面と、ハウジング131の内周面との間に設けられた円柱コロ132とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、車両等に搭載される減速機付モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される減速機付モータとしては、例えば、自動車のパワーウインド装置に用いられるものがある。この種の減速機付モータは、ウォーム減速機構と電動モータとが連結されている。ウォーム減速機構は、電動モータの回転軸に連結されるウォームと、このウォームに噛合されるウォームホイールとを備えている。そして、このウォームホイールをパワーウインド装置の出力軸に連結することにより、ウインドガラスの開閉動作を行うことができるようになっている。
【0003】
ところで、電動モータの回転軸にウインドガラスの自重や車両走行時の振動等の外力による回転力が作用し、ウインドガラスが開いてしまう場合がある。そこで、外力による回転力によって電動モータの回転軸が回転してしまうことを防止するために、ウォーム減速機構にクラッチ機構を内装する技術が提案されている。
クラッチ機構としては、例えば、ウォームホイールと一体的に回転する駆動回転体と、駆動回転体に係合すると共に出力軸に連結される従動回転体と、従動回転体の周囲を取り囲むように形成された外輪と、従動回転体と外輪との間に設けられた円柱状のコロとを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ここで、ウォーム減速機構は、クラッチ機構を収納可能な略有底筒状のハウジングを有している。そして、クラッチ機構は、ハウジングの底部にウォームホイールを収容し、その上(開口部側)にハウジングの底部側から駆動回転体、従動回転体の順で配置されている。また、外輪は、ハウジングの周壁に沿うように形成され、コロと共に駆動回転体の従動回転体側、つまり、ハウジングの開口部側に配置された状態になっている。
【0005】
このように構成されたクラッチ機構は、電動モータによって駆動回転体が回転したとき、コロはフリー状態に維持されつつ駆動回転体の軸心の周りで周回する。このため、従動回転体と駆動回転体とが一体となって回転し、ウインドガラスの開閉動作が行われる。
一方、ウインドガラスの自重や車両走行時の振動等の外力により従動回転体が回転すると、コロは従動回転体と外輪との間に挟持された状態になり、これによって従動回転体の回転が阻止される。このため、ウインドガラスが自重や車両走行時の振動等によって開いてしまうことを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2000/08349号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、従動回転体の回転を阻止する際、従動回転体がコロを径方向外側に向かって押圧することになるので、この押圧力がハウジングの開口部にかかることになる。このため、ハウジングは、開口部が径方向外側に向かって押し拡げられないように高い剛性が必要となる。よって、ハウジングが大型化すると共に、重量増となり、減速機付モータ全体が大型化、重量化してしまうという課題がある。また、ハウジングを覆うカバーについても同様に高い剛性が必要となるという課題がある。
【0008】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、小型化、軽量化を図ることができる減速機付モータを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、電動モータと、この電動モータの回転軸の回転を減速させて出力する減速機構とを備え、前記減速機構は、有底筒状のケーシングを有し、このケーシング内に、前記回転軸の回転が伝達される出力部材と、前記出力部材からの回転による前記回転軸の回転を防止するためのクラッチ機構とを設けた減速機付モータであって、前記クラッチ機構は、前記回転軸の回転が入力される入力回転体と、前記入力回転体からの回転は前記出力部材へ伝達し、前記出力部材からの回転は前記入力回転体へ伝達することを防ぐ係止手段とを有し、前記係止手段は、前記入力回転体よりも前記ケーシングの底部側に配置されていることを特徴とする。
また、請求項2に記載した発明は、前記入力回転体は、前記回転軸の回転を減速するウォームホイールであり、前記係止手段は前記ウォームホイールよりも前記ケーシングの底部側に配置されていることを特徴とする。
また、請求項3に記載した発明は、前記クラッチ機構は、さらに、前記出力部材に連結され、この出力部材と一体となって回転する出力回転体と、前記入力回転体よりも前記ケーシングの底部側に固定され、前記ケーシングの内周面に沿うように環状に形成された固定部材と、前記出力回転体の外周面と、前記固定部材の内周面との間に設けられ、前記出力部材からの回転が前記入力回転体に伝達することを阻止する逆転防止部材とを有し、前記係止手段は、前記出力回転体、前記固定部材および前記逆転防止部材のうち少なくともいずれか1つから構成されることを特徴とする。
また、請求項4に記載した発明は、前記クラッチ機構は、前記電動モータが駆動することにより前記入力回転体が回転するとき、この入力回転体が前記出力回転体および前記逆転防止部材に回転を伝達するように構成されている一方、外力により、前記入力回転体よりも先に前記出力回転体が回転するとき、前記逆転防止部材が前記出力回転体の外周面と前記固定部材の内周面とに挟持されることで、前記出力回転体の回転を阻止するように構成されていることを特徴とする。
また、請求項5に記載した発明は、電動モータと、この電動モータの回転軸の回転を減速させて出力する減速機構とを備え、前記減速機構は、有底筒状のケーシングを有し、このケーシング内に、外力による前記回転軸の回転を防止するためのクラッチ機構を設けた減速機付モータであって、前記クラッチ機構は、前記回転軸の回転が入力される入力回転体と、前記入力回転体と係合し、この入力回転体の回転力を出力する出力部材と、前記出力部材に連結され、この出力部材と一体となって回転する出力回転体と、前記入力回転体よりも前記ケーシングの底部側に固定され、前記ケーシングの内周面に沿うように環状に形成された固定部材と、前記出力回転体の外周面と、前記固定部材の内周面との間に設けられた逆転防止部材とを有し、前記電動モータが駆動することにより前記入力回転体が回転するとき、この入力回転体が前記出力回転体および前記逆転防止部材に回転を伝達し、外力により、前記入力回転体よりも先に前記出力回転体が回転するとき、前記逆転防止部材が前記出力回転体の外周面と前記固定部材の内周面とに挟持され、前記出力回転体の回転を阻止することで前記回転軸の回転を防ぐように構成されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、出力回転体の外力による回転を阻止する際、出力回転体、および逆転防止部材によって作用する径方向外側への押圧力は、ケーシングの内周面における底部近傍にかかることになる。このため、従来のようにハウジングの開口部近傍にコロが配置されている場合と比較して、ケーシングの逆転防止部材が配置されている箇所に対応する部位の強度を確保しやすい。よって、ケーシングの小型化、軽量化を図ることができ、この結果、減速機付モータ全体の小型化、軽量化を図ることができる。
【0011】
請求項6に記載した発明は、前記出力部材と前記出力回転体との間に、前記入力回転体を設け、前記入力回転体に、この軸方向に貫通する複数の貫通孔を周方向に沿って配置すると共に、前記出力部材、および前記出力回転体の何れか一方に、前記複数の貫通孔を介して他方と連結される連結部を設けたことを特徴とする。
このように構成することで、連結部を入力回転体と出力回転体との双方と協働させ、これら入力回転体と出力回転体との間で、回転力の伝達、遮断を容易に行うことが可能になる。このため、逆転防止部材をケーシングの底部側に配置しつつ、クラッチ機構の簡素化を図ることが可能になる、
【0012】
請求項7に記載した発明は、前記出力部材に、前記連結部が一体成形されていることを特徴とする。
このように構成することで、連結部を容易に形成することができ、製造コストの低減化を図ることが可能になる。
【0013】
請求項8に記載した発明は、前記逆転防止部材は、複数の円柱コロから成ることを特徴とする。
ここで、例えば、逆転防止部材を複数の球体とした場合、球体と出力回転体との当接位置、および球体と固定部材との当接位置が、減速機付モータの取付け角度に応じて変化してしまう。これは、各部品の製作精度によってクリアランスが生じ、減速機付モータの取付け角度に応じて球体が軸方向、および径方向に移動してしまうからである。このような場合、出力回転体の外力による逆転防止力が不安定となり、確実に出力回転体の回転を阻止することが困難になる虞がある。
しかしながら、本発明のように、逆転防止部材を複数の円柱コロとすることにより、減速機付モータの取付け角度に応じて円柱コロが移動しても、確実に出力回転体の外力による逆転防止力を確保することができる。このため、信頼性の高い減速機付モータを提供することが可能になる。
【0014】
請求項9に記載した発明は、前記ケーシング内に前記複数の円柱コロを保持するための保持部材を設け、各円柱コロは、前記保持部材により所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とする。
このように構成することで、円柱コロを所定の姿勢に確実に保つことができる。このため、より確実に出力回転体の外力による逆転防止力を確保することができ、より信頼性の高い減速機付モータを提供することが可能になる。
【0015】
請求項10に記載した発明は、前記入力回転体の前記底部側の面に、周方向に沿って複数の突起部を形成し、前記複数の突起部は、各円柱コロの間にそれぞれ配置されていることを特徴とする。
このように構成することで、電動モータが駆動することにより入力回転体が回転する際、突起部により円柱コロを押圧することができるので、確実に入力回転体、出力回転体、および円柱コロを同時に回転させることができる。このため、クラッチ機構をより確実に安定動作させることができる。
【0016】
請求項11に記載した発明は、前記減速機構にウォーム軸を設け、前記回転軸に第一係合部を設けると共に、前記ウォーム軸に前記第一係合部と相対回転不能に係合可能な第二係合部を設け、これら第一係合部と第二係合部との接触部に両者の衝撃を緩和するためのダンパ部を設けたことを特徴とする。
このように構成することで、電動モータと減速機構とを分割可能に構成することができ、電動モータの汎用性を高めることができる。
また、回転軸やウォームホイールに作用する衝撃を緩和することができ、製品寿命の延命化を図ることが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、出力回転体の外力による回転を阻止する際、出力回転体、および逆転防止部材によって作用する径方向外側への押圧力は、ケーシングの内周面における底部近傍にかかることになる。このため、従来のようにハウジングの開口部近傍にコロが配置されている場合と比較して、ケーシングの逆転防止部材が配置されている箇所に対応する部位の強度を確保しやすい。よって、ケーシングの小型化、軽量化を図ることができ、この結果、減速機付モータ全体の小型化、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態における減速機付モータの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における減速機付モータの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における電動モータを示し、(a)は分解斜視図、(b)は(a)のアーマチュアの拡大図である。
【図4】本発明の実施形態におけるウォーム減速機構の一部分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態におけるジョイントユニットの斜視図である。
【図6】本発明の実施形態におけるクラッチ機構の分解斜視図である。
【図7】本発明の実施形態におけるクラッチ機構の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態におけるウォームホイールの斜視図である。
【図9】本発明の実施形態におけるクラッチ機構を構成する各部品の組み付け状態を示す断面図である。
【図10】本発明の実施形態におけるクラッチ機構を構成する各部品の組み付け状態を示す断面図である。
【図11】本発明の実施形態における減速機付モータが停止した状態の場合の説明図である。
【図12】本発明の実施形態における減速機付モータが駆動した場合の動作説明図である。
【図13】本発明の実施形態における減速機付モータが駆動した場合の動作説明図である。
【図14】本発明の実施形態における減速機付モータに外力がかかっている場合の動作説明図である。
【図15】本発明の実施形態における減速機付モータに外力がかかっている場合の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(減速機付モータ)
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、減速機付モータ1の斜視図、図2は、減速機付モータ1の分解斜視図、図3は、電動モータ2を示し、(a)は分解斜視図、(b)は(a)のアーマチュア6の拡大図である。
図1〜図3に示すように、減速機付モータ1は、例えば、車両のパワーウインド装置の駆動源として用いられるものであって、電動モータ2と、電動モータ2の回転軸12に連結されるウォーム減速機構3と、電動モータ2とウォーム減速機構3との間に設けられ、電動モータ2に電力を供給するためのコネクタユニット4とを備え、ウォーム減速機構3にクラッチ機構130が内装されている。
【0020】
(電動モータ)
電動モータ2は、有底筒状のモータケース5内にアーマチュア6が回転自在に設けられ、モータケース5の開口部5a側にブラシホルダユニット7が内嵌固定されたものである。
モータケース5は、金属板をプレス加工等によって深絞り成型したものであって、有底筒状のヨーク部8と、ヨーク部8の開口部端に一体形成された長円形状のブラシホルダ収納部9とで構成されている。つまり、ブラシホルダ収納部9の開口部がモータケース5の開口部5aになっている。
【0021】
ヨーク部8の周壁81は、軸方向平面視略6角形状に形成されており、6つの平坦部81aを有している。各平坦部81aの内面には、それぞれ平板状に形成された不図示のセグメント型の永久磁石10が設けられている。
ヨーク部8の底壁82には、径方向略中央に軸方向外側に向かって突出する有底筒状の軸受け部11が一体形成されている。軸受け部11は、回転軸12の一端を回転自在に支持するものである。底壁82は、軸受け部11の周囲に略円形に形成された平面により形成されている。また、周壁81の底壁82近傍から軸受け部11に至る間の範囲には、軸方向平面視略円形状の円形部16が形成されている。
【0022】
ヨーク部8の開口部端に一体形成されたブラシホルダ収納部9は、軸方向略長円形状に形成されたものであって、軸方向に直交する方向に沿って長くなっている。ブラシホルダ収納部9は、回転軸12を中心にして対向配置され平面視長方形状の1対の平坦壁91,91と、平坦壁91,91の周方向両端、つまり、長手方向両端を連結する1対の弧状壁92,92とを有している。
【0023】
1対の平坦壁91,91は、それぞれ回転軸12を中心にして対向配置されたヨーク部8の平坦部81aと面一になるように設けられている。
ブラシホルダ収納部9の開口部端には、電動モータ2をウォーム減速機構3に締結固定するための外フランジ部17が形成されている。外フランジ部17には、複数のボルト孔18が形成されている。
【0024】
図3に示すように、モータケース5内に回転自在に設けられたアーマチュア6は、回転軸12のヨーク部8に対応する位置に外嵌固定されたアーマチュアコア61と、アーマチュアコア61に巻装されたアーマチュアコイル62と、回転軸12の他端側に配置され、かつブラシホルダ収納部9に対応する位置に外嵌固定されたコンミテータ63とを備えている。アーマチュアコア61は、リング状の金属板64を軸方向に複数枚積層したものである。
【0025】
金属板64の外周部にはT字型の9つのティース65が周方向に沿って等間隔で放射状に形成されている。ティース65の先端部は周方向に沿って延在しており、アーマチュアコア61の外周部を形成している。すなわち、ティース65の先端部は、ヨーク部8の周壁81に配設されている永久磁石10に径方向で対向した状態になっている。
【0026】
また、複数枚の金属板64を回転軸12に外嵌固定することにより、アーマチュアコア61の外周には、隣接するティース65間に、軸方向に沿って延びる蟻溝状のスロット66が9つ形成されている。さらに、ティース65には、絶縁性のインシュレータ67が装着されている。そして、スロット66間にエナメル被覆の巻線62aを挿通し、ティース65にインシュレータ67の上から巻線62aが巻装される。これにより、アーマチュアコア61の外周に、複数のアーマチュアコイル62が形成される。
【0027】
コンミテータ63は、回転軸12の他端側に外嵌固定されている。コンミテータ63の外周面には、導電材で形成されたセグメント68が9枚取り付けられている。
セグメント68は軸方向に長い板状の金属片からなり、互いに絶縁された状態で周方向に沿って等間隔に並列に固定されている。
したがって、この実施形態の電動モータ2は、永久磁石10が6つ、スロット66が9つ、セグメント68が9枚の6極9スロット9セグメントで構成された電動モータとなっている。
【0028】
各セグメント68のアーマチュアコア61側の端部には、外径側に折り返す形で折り曲げられたライザ69が一体成形されている。ライザ69には、アーマチュアコイル62の巻き始め端部と巻き終わり端部となる巻線62aが掛け回わされ、巻線62aはヒュージングによりライザ69に固定されている。これにより、セグメント68とこれに対応するアーマチュアコイル62とが導通される。
【0029】
セグメント68には、ブラシホルダ収納部9に収納されているブラシホルダユニット7に設けられた不図示のブラシが摺接されている。ブラシホルダユニット7は、アーマチュアコア61側が開口された箱状のユニット本体70を有している。このユニット本体70内に、不図示のブラシがセグメント68に向かって付勢された形で設けられている。ブラシ22は、コンミテータ63のセグメント68に摺接し、アーマチュアコイル62に電流を供給するためのものである。
【0030】
また、ユニット本体70の底壁71には、中央部に軸方向外側に向かって、つまり、アーマチュアコア61とは反対側に向かって膨出するように、膨出部75が形成されている。この膨出部75の中央には、軸受け部76が一体成形されている。軸受け部76には、回転軸12の他端を回転自在に支持するための不図示のすべり軸受けが圧入されている。
【0031】
ここで、回転軸12の他端は、ブラシホルダユニット7の不図示のすべり軸受けを介してウォーム減速機構3側に向かって突出している。この突出した回転軸12の他端には、三つ又状に形成されたジョイントモータ27が取り付けられている。
ジョイントモータ27は、ウォーム減速機構3に回転軸12の回転力をウォーム減速機構3に伝達するジョイントユニット29(図5参照)の一方を構成するものであって、略円板状の本体部51を有している。本体部51の径方向中央には、この大部分に角孔52が形成されている。
【0032】
一方、回転軸12の他端には、二方面取り部53が形成されており、この二方面取り部53がジョイントモータ27の本体部51の角孔52に圧入されるようになっている。これにより、回転軸12とジョイントモータ27とが相対回転不能、かつ軸方向に移動可能に連結される。
本体部51の外周面には、軸方向平面視略扇状の凸部54が径方向外側に向かって3箇所設けられている。これら凸部54がジョイントユニット29の他方を構成する後述のジョイントフレーム28に着脱自在に係合することにより、回転軸12の回転力がウォーム減速機構3に伝達される。
【0033】
(コネクタユニット)
図1、図2に示すように、このように構成された電動モータ2は、コネクタユニット4を間に挟んでウォーム減速機構3にボルト105を介して締結固定されている。
コネクタユニット4は、不図示の外部電源と減速機付モータ1を電気的に接続するためのものである。コネクタユニット4は、ブラシホルダユニット7の底壁71の形状に対応するように長円形状に形成されたベース部41と、ベース部41の一側に突設されたコネクタ部42とで構成されている。
【0034】
ベース部41には、径方向中央にジョイントモータ27を挿通可能な開口部43が形成されている。また、ベース部41には、開口部43のコネクタ部42側に、ウォーム減速機構3側に向かって略垂直に立ち上がり形成された立ち上がり部44が設けられている。
立ち上がり部44には、基板45が固定されている。
基板45には、回転軸12の回転位置を検出するための検出素子(不図示)が実装されている(詳細は後述する)。
【0035】
コネクタ部42は、不図示の外部電源などから延びるコネクタ(不図示)を嵌着可能な筒状の受部46を有している。受部46内には、電源用やセンサ用として用いられる複数の端子47の一端が突設されている。各端子47は、受部46からベース部41を介してウォーム減速機構3側に折り曲げられることで基板45に至るまで延在し、基板45と電気的に接続されているものと、受部46からベース部41を介して電動モータ2側に折り曲げられることでブラシホルダユニット7に至るまで延在し、ブラシホルダユニット7の不図示のブラシと電気的に接続されているものとがある。
【0036】
そして、各端子47のうち、基板45に接続されているものは、センサ用の端子として用いられ、ブラシ(不図示)に接続されているものは、電源用の端子として用いられる。これにより、外部電源の電力がブラシホルダユニット7を介して電動モータ2へと供給される。
【0037】
(ウォーム減速機構)
図4は、ウォーム減速機構3の一部分解斜視図である。
図1、図2、図4に示すように、ウォーム減速機構3は、電動モータ2の回転軸に連結されるウォーム軸33と、クラッチ機構130とを収納するためのギヤケーシング30を有している。
ギヤケーシング30は、ウォームギヤ32の一方を構成するウォーム軸33を収納するウォーム軸収納部36と、クラッチ機構130を収納するクラッチ機構収納部37とで構成され、両者36,37が一体成形されている。
【0038】
ウォーム軸収納部36は、略円筒状に形成されたものであって、回転軸12の軸方向に沿って延在している。ウォーム軸収納部36には、電動モータ2側に、コネクタユニット4のベース部41を受入れ可能な受入れ部48が一体成形されている。
受入れ部48は、電動モータ2側が開口した箱状に形成されたものであって、底部48aがウォーム軸収納部36と連通している。
受入れ部48の内周面は、コネクタユニット4のベース部41に対応するように、断面略長円形状に形成されている。また、受入れ部48の周壁48bには、コネクタユニット4のベース部41とコネクタ部42との接続部分を受け入れる凹部49が形成されている。
【0039】
ウォーム軸収納部36の受入れ部48側端には、ウォーム軸33の一端を回転自在に支持するためのすべり軸受け101aが内嵌固定されている。
一方、ウォーム軸収納部36の電動モータ2とは反対側の開口部36aには、この開口部36aを閉塞するエンドナット38が圧入されている。
【0040】
エンドナット38の内側には、ウォーム軸33の他端を回転自在に支持するためのすべり軸受け101b、およびウォーム軸33のスラスト荷重を受けるためのスチールボール102が設けられている。すべり軸受け101bは、ウォーム軸収納部36に圧入固定される。スチールボール102は、エンドナット38によってウォーム軸収納部36からの脱落が防止されるようになっていると共に、エンドナット38によってウォーム軸33のスラスト方向への位置調整を行うことができるようになっている。
【0041】
ここで、ウォーム軸33の一端は、すべり軸受け101aを介して受入れ部48側へと突出した状態になっている。このウォーム軸33の一端であって突出した部位には、スプライン加工が施されており、ここにジョイントユニット29の他方を構成するジョイントフレーム28がスプライン嵌合されている。
【0042】
図5は、ジョイントユニット29の斜視図である。
図4、図5に示すように、ジョイントフレーム28は、略円板状に形成された本体部55を有している。本体部55の径方向中央には、ウォーム軸33の一端を挿通可能な挿通孔56が形成されている。
この挿通孔56には、スプライン加工が施されており、これによってジョイントフレーム28とウォーム軸33とがスプライン嵌合されるようになっている。本体部55の電動モータ2側の面には、軸方向に沿って突出する凸部57が3箇所一体形成されている。
【0043】
各凸部57は、ジョイントモータ27の3つの凸部54の間に介在するように構成されている。すなわち、電動モータ2が駆動することによりジョイントモータ27が回転すると、ジョイントモータ27の凸部54とジョイントフレーム28の凸部57とが周方向で係合し、両者27,28が一体となって回転する。このように、ジョイントモータ27とジョイントフレーム28は、それぞれ互いに軸方向で着脱自在、かつ回転方向(周方向)で係合可能に形成されており、ウォーム軸33に回転軸12の回転力が伝達されるようになっている。
【0044】
ここで、ジョイントフレーム28の凸部57には、ジョイントモータ27の凸部54との係合部に、エラストマ等の弾性材料によって形成されているダンパ部59がインサート成型されている。すなわち、ジョイントモータ27の凸部54とジョイントフレーム28の凸部57は、ダンパ部59を介して周方向で係合する。このため、ジョイントモータ27とジョイントフレーム28とが係合する際に生じる衝撃を緩和することができる。
【0045】
また、ジョイントフレーム28の本体部55には、凸部57とは反対側にセンサマグネット25が設けられている。このセンサマグネット25は、電動モータ2を組付けた状態でコネクタユニット4の基板45に実装されている検出素子(不図示)に対応する位置に配置されるようになっている。この検出素子とセンサマグネット25とが協働して電動モータ2の回転軸12の回転位置が検出され、電動モータ2の回転制御が行われる。
すなわち、回転軸12が回転することにより、ジョイントモータ27を介してジョイントフレーム28が回転すると、検出素子によりセンサマグネット25の磁束の変化が検出される。この検出素子による検出信号は、コネクタ部42を介して外部制御機器に出力される。
【0046】
また、回転軸12とウォーム軸33との間には、スチールボール58が設けられている。このスチールボール58は、回転軸12とウォーム軸33とが直接当接し、各々の摺動抵抗が増大することを防止する役割を有すると共に、各軸12,33の軸方向のずれを許容する役割を有している。
【0047】
(クラッチ機構)
図6は、クラッチ機構130の分解斜視図、図7は、クラッチ機構130の斜視図である。
図6、図7に示すように、ギヤケーシング30のクラッチ機構収納部37は、略有底円筒状に形成されている。クラッチ機構収納部37の底部37aには、径方向略中央に、裏側(図6における下側)から内部に向かって挿入されたセンターシャフト111が突設されている。このセンターシャフト111は、ギヤケーシング30と相対回転不能に固定され、底部37a側から順にウォームギヤ32の他方を構成するウォームホイール34と、車両のパワーウインド装置(不図示)等に減速機付モータ1の動力を出力するドライブユニット35とが回転自在に軸支されている。
【0048】
また、クラッチ機構収納部37には、この底部37aとウォームホイール34との間に、クラッチ機構収納部37の周壁37bに沿うように略円環状に形成されたハウジング(固定部材)131と、ハウジング131の内周面に沿うように周方向に等間隔に配置された複数(この実施形態では20個)の円柱コロ132と、円柱コロ132を支持するための略円環状に形成された保持部材133と、複数の円柱コロ132よりも径方向内側に配置された略円環状に形成された出力回転体134とが内装されている。これらウォームホイール34、ドライブユニット35、ハウジング131、円柱コロ132、保持部材133、および出力回転体134により、クラッチ機構130が構成されている。また、ハウジング131、円柱コロ132、保持部材133、および出力回転体134により係止手段179が構成されている。
【0049】
図8は、ウォームホイール34の斜視図である。
図6、図8に示すように、ウォームホイール34は、略円板状に形成されたものであって、外周面にウォーム軸33の歯部33aに噛合う歯部34aが形成されている。ウォームホイール34の軸方向両端面には、それぞれ径方向中央の大部分に軸方向平面視略円形状の凹部135a,135bが形成されている。凹部135a,135bの径方向中央には、センターシャフト111を挿通するための挿通孔112が形成されている。
【0050】
また、ウォームホイール34の凹部135a,135bには、挿通孔112の周囲に、軸方向に貫通する係合孔113が周方向に等間隔で複数(この実施形態では5箇所)形成されている。係合孔113は、軸方向平面視で略扇状に形成されている。ウォームホイール34に係合孔113が5箇所形成されることにより、挿通孔112の周囲には係合壁114が周方向に等間隔で5箇所形成されたことになる。各係合壁114は軸方向平面視略扇状であって、径方向内側から径方向外側に向かって末広がりになっている。
【0051】
さらに、ウォームホイール34の外周部には、クラッチ機構収納部37の底部37a側(図8における左側)の面に、複数の突起部140が周方向に等間隔で設けられている。これら突起部140は断面略正方形状に形成されており、各円柱コロ132間に介装される。なお、図6に示すように、ウォームホイール34よりもギヤケーシング30の底部側に、係止手段179として出力回転体134、円柱コロ132、保持部材133、およびハウジング131が配置されている。
【0052】
図9、図10は、クラッチ機構130を構成する各部品の組み付け状態を示す断面図である。
図6、図7、図9に示すように、ハウジング131は、クラッチ機構収納部37の周壁37bに沿うように形成され、かつ断面略コの字状のリング本体136を有している。リング本体136は、クラッチ機構収納部37の底部37aと周壁37bとの連結部近傍に形成されている軸方向平面視略円環状の嵌合凸部39に嵌合している。
【0053】
リング本体136の内周面136aには、クラッチ機構収納部37の底部37a側端に、内フランジ部137が一体形成されている。内フランジ部137の内周縁には、複数の凸部138が周方向に等間隔に形成されている。
一方、クラッチ機構収納部37の底部37aには、ハウジング131の凸部138に対応する位置に、凸部138を受け入れ可能な不図示の凹部が形成されている。この凹部に凸部138が嵌まり込むことによって、ギヤケーシング30に対するハウジング131の回転移動が規制されている。
【0054】
ハウジング131の内フランジ部137上には、略円環状に形成された保持部材133が回転自在に載置されている。保持部材133には、ウォームホイール34側に向かって複数(この実施形態では20個)の支軸139がそれぞれ等間隔に一体成形されている。この支軸139に、円柱コロ132が軸支されている。円柱コロ132には、支軸139を挿通可能な挿通孔141が形成されている。
【0055】
円柱コロ132は、ハウジング131の内フランジ部137上に配置された保持部材133に等間隔に保持されているので、ハウジング131におけるリング本体136の内周面136aに沿って配置された状態になる。
ここで、保持部材133の支軸139は、ここに円柱コロ132を軸支した状態で、周方向に隣接する円柱コロ132,132間に、ウォームホイール34の突起部140が介装可能な間隔で配置されている(図7参照)。また、ウォームホイール34の突起部140の径方向の一辺の長さは、円柱コロ132の直径よりもやや短くなる程度に設定されている。
【0056】
複数の円柱コロ132の径方向内側に配置されている出力回転体134には、外周縁の各円柱コロ132に対応する部位に、それぞれ凹部142が形成されている。各凹部142は、周方向中央から周方向外側に向かうに従って徐々に末広がりとなるように形成されている。出力回転体134の外周縁には、複数の凹部142が形成されることによって、凹部142と凸部143とが周方向に沿って交互に形成された状態になる。
【0057】
ここで、図7に詳示するように、凹部142の周方向中央の頂点142aと、ハウジング131におけるリング本体136の内周面136aとの間の距離L1は、円柱コロ132の直径よりもやや大きくなる程度に設定されている。一方、出力回転体134の凸部143の頂点143aと、リング本体136の内周面136aとの間の距離L2は、円柱コロ132の直径よりもやや小さくなるように、かつ、ウォームホイール34の突起部140との干渉を回避可能な程度に設定されている。
【0058】
また、出力回転体134には、軸方向平面視略扇状の連結孔144が周方向に等間隔で複数形成されている。これら連結孔144は、出力回転体134とドライブユニット35とを連結するためのものである。
【0059】
図6、図7、図10に示すように、ドライブユニット35は、略円板状のベースプレート117を有している。ベースプレート117の直径は、ウォームホイール34の端面に形成されている凹部135aの内径と略一致するように設定されている。このため、ベースプレート117は、ウォームホイール34の凹部135aに収納された状態になっている。
【0060】
ベースプレート117のウォームホイール34側(図7、図10における下側)の面117aには、複数(この実施形態では5個)の連結部118が突設されている。連結部118は、ウォームホイール34に形成されている係合孔113に対応するように配置されている。
連結部118は、ウォームホイール34の係合孔113に挿通される断面略扇状の第1凸部121と、この第1凸部121の先端であって外周側に一体形成されている第2凸部とで構成されている。
【0061】
第1凸部121の周方向の幅W1(図7参照)は、ウォームホイール34の係合孔113の周方向の幅W2(図8参照)よりもやや小さくなる程度に設定されている。第1凸部121は、ウォームホイール34の係合孔113に挿通されているので、ウォームホイール34が回転すると、第1凸部121が係合孔113の内面と係合し、ウォームホイール34の回転力が第1凸部121に伝達されるためウォームホイール34とドライブユニット35とが共回りするようになっている(詳細は後述する)。
【0062】
一方、第2凸部122は、出力回転体134の連結孔144の形状に対応するように、断面略扇状に形成され、連結孔144に内嵌されている。これにより、ドライブユニット35と出力回転体134とが一体となって回転する。すなわち、ドライブユニット35は、これに一体成形されている連結部118がウォームホイール34の係合孔113を介して出力回転体134と連結されているため、ドライブユニット35と出力回転体134は、ウォームホイール34の係合孔113を介して図中上下方向にウォームホイール34を挟むように配置されている。
【0063】
また、ベースプレート117のウォームホイール34とは反対側(図7、図10における上側)の面117bには、径方向略中央の大部分に、断面略円径状の台座部119が一体成形されている。この台座部119の大部分には、例えば、車両のパワーウインド装置(不図示)に連結される歯車部120が突設されている。
【0064】
これら台座部119、歯車部120、およびベースプレート117は、互いに同心円上に配置されている。そして、それぞれ台座部119、歯車部120、およびベースプレート117の径方向中央に軸方向に貫通する貫通孔123が形成されている。この貫通孔123にセンターシャフト111が挿通され、ドライブユニット35が回転自在に軸支される。
【0065】
また、歯車部120の先端面には、軸方向平面視で略円形状の凹部124が形成されている。この凹部124には、平ワッシャ125とC型止め輪126とがこの順で収納されている。C型止め輪126は、センターシャフト111に係合している。これら平ワッシャ125とC型止め輪126とによって、ドライブユニット35の抜け方向への移動が規制される。
【0066】
ドライブユニット35は、このドライブユニット35の回転力を歯車部120を介して、例えば、車両のパワーウインド装置(不図示)に伝達する。すなわち、クラッチ機構130において、ウォームホイール34は、電動モータ2の回転軸12の回転がウォーム軸33を介して入力される入力回転体としての役割を有し、ドライブユニット35は、入力回転体であるウォームホイール34の回転力を例えば、車両のパワーウインド装置(不図示)に出力する出力部材としての役割を有している。
【0067】
また、図1、図2に示すように、クラッチ機構収納部37には、この開口部37cを閉塞する略円環状のカバー151が設けられている。カバー151は、クラッチ機構収納部37内への塵埃や水滴などの浸入を防止する役割を有している。カバー151は、略円環状に形成されたカバー本体152を有し、このカバー本体152の中央からドライブユニット35の台座部119、および歯車部120が突出するようになっている。
【0068】
カバー151の内周縁には、クラッチ機構収納部37の内部の密閉性を高めるためにゴム製のシール部材153が設けられている。このシール部材153と台座部119とが摺接することにより、クラッチ機構収納部37の内部への塵埃や水滴などの浸入を防止できる。
【0069】
一方、カバー151の外周縁には、係止片154が複数設けられている。係止片154は弾性変形可能に形成されたものであって、クラッチ機構収納部37の周壁37bに沿うようにして、クラッチ機構収納部37の底部37aに向かって延出している。
また、クラッチ機構収納部37の周壁37bには、係止片154に対応する部位に、係止突起155が形成されている。この係止突起155と係止片154とが係合することで、カバー151が固定される。
【0070】
この他に、ギヤケーシング30には、ウォーム軸収納部36にボルト座21aが1箇所形成され、クラッチ機構収納部37にボルト座21bが2箇所形成されている。
これらボルト座21a,21bは、例えば、不図示のパワーウインド装置に減速機付モータ1を締結固定するために用いられるものである。各ボルト座21a,21bには、それぞれ不図示のボルトを挿通するための挿通孔22a,22bが形成されている。これら挿通孔22a,22bには、フランジ付ブッシュ23が挿入されている。
【0071】
(作用)
次に、図11〜図15に基づいて、クラッチ機構130の動作について説明する。
なお、以下の説明において、減速機付モータ1を車両に搭載されているパワーウインド装置に用いたものとして説明する。また、クラッチ機構130の複数の円柱コロ132は、何れも同じように作用するので、以下の図11〜図15においては、複数の円柱コロ132のうち、一部のみ図示して説明する。
【0072】
図11は、減速機付モータ1が停止した状態の場合の説明図である。
同図に示すように、減速機付モータ1の電動モータ2を停止させた状態にあっては、クラッチ機構130のハウジング131上において、出力回転体134の外周縁に形成されている凹部142に対応する位置に、円柱コロ132が配置された状態になっている。また、出力回転体134の凸部143に対応する位置に、ウォームホイール34の突起部140が配置された状態になっている。このため、円柱コロ132は、フリーな状態になっている。
【0073】
図12、図13は、減速機付モータ1が駆動した場合の動作説明図である。
図12、図13に示すように、減速機付モータ1の電動モータ2を駆動させると、電動モータ2の回転軸12、およびウォーム軸33を介してウォームホイール34が回転する(図12における矢印Y1参照)。また、ウォームホイール34の回転に伴って、ウォームホイール34の突起部140が周方向に沿って移動する(図12における矢印Y2参照)。
【0074】
すると、ウォームホイール34に形成されている突起部140の周方向側面が円柱コロ132に当接する(図12参照)。また、ウォームホイール34に形成されている係合孔113の周方向側面がドライブユニット35に一体成形されている連結部118のうち、第1凸部121の周方向側面に当接する(図13参照)。
そして、このままの状態でさらにウォームホイール34が回転すると、円柱コロ132、ドライブユニット35、およびドライブユニット35に連結されている出力回転体134がそれぞれ一体となって回転する。
【0075】
このため、ウォームホイール34が回転し続ける場合であっても円柱コロ132と出力回転体134との相対位置が変化しない。すなわち、ウォームホイール34に形成された係合孔113と突起部140は、ウォームホイール34の回転時に円柱コロ132が出力回転体134の凹部142に配置されるように設定され、円柱コロ132は、ウォームホイール34の回転時にフリー状態のままハウジング131の内周を周回する。よって、電動モータ2の回転がドライブユニット35の歯車部120を介してパワーウインド装置に出力される。これにより、パワーウインド装置が駆動し、車両のウインドガラスの開閉動作が行われる。
【0076】
図14、図15は、減速機付モータ1が停止し、かつ減速機付モータ1に外力がかかっている場合の動作説明図である。
図14、図15に示すように、ウインドガラスの自重や車両走行時の振動等の外力により、ウインドガラスが開こうとすると、パワーウインド装置を介してドライブユニット35に回転力が作用する。このため、ウォームホイール34、および円柱コロ132が停止したままの状態で、ドライブユニット35、およびこれに連結されている出力回転体134が回転し始める(図14における矢印Y3参照)。
【0077】
すると、円柱コロ132が停止したままの状態であるので、出力回転体134に形成されている凹部142の凸部143近傍が円柱コロ132に当接する。出力回転体134は、この凹部142が円柱コロ132の当接した後、さらに回転しようとする。
ここで、各凹部142は、周方向中央から周方向外側に向かうに従って徐々に末広がりとなるように形成されているので、円柱コロ132に径方向外側への力が作用する。すなわち、出力回転体134が円柱コロ132をハウジング131の内周面136aに向かって押し付ける。
【0078】
出力回転体134が円柱コロ132を押し付けることによって、出力回転体134とハウジング131とで円柱コロ132を挟持した状態になる。このときに生じる摩擦力がドライブユニット35の回転力よりも大きくなり、ドライブユニット35の回転が阻止される。すなわち、ドライブユニット35の回転が阻止されるため、入力回転体としてのウォームホイール34には回転力が伝達されず、回転軸12は回転しない。
ここで、出力回転体134に形成されている凹部142の傾斜角度θは、ドライブユニット35の回転力よりも円柱コロ132を出力回転体134とハウジング131とで挟持した場合に生じる摩擦力が大きくなるように設定される。
【0079】
また、図7、図8、図15に示すように、ドライブユニット35の連結部118を構成している第1凸部121の周方向の幅W1、およびウォームホイール34の係合孔113の周方向の幅W2は、出力回転体134とハウジング131とで円柱コロ132を挟持した状態のとき、第1凸部121と係合孔113との間に、僅かにクリアランスKが生じるように設定されている。このため、ドライブユニット35が外力により回転する際、ドライブユニット35の回転力がウォームホイール34に伝達される前にドライブユニット35の回転が阻止される。
【0080】
(効果)
したがって、上述の実施形態によれば、ウインドガラスの自重や車両走行時の振動等の外力による減速機付モータ1の逆転を確実に防止でき、ウインドガラスが不意に開いてしまうのを防止できる。
このとき、出力回転体134が円柱コロ132をハウジング131に向かって押し付けることによって、クラッチ機構収納部37の周壁37bに、径方向外側に向かう荷重がかかる。しかしながら、ハウジング131がクラッチ機構収納部37の底部37aに設けられているので、クラッチ機構収納部37の周壁37bのうち、底部37a近傍に出力回転体134による荷重がかかる。このため、底部37aが周壁37bの強度を補強するリブの役割を果たすので、周壁37bの強度を必要以上に高める必要がない。よって、クラッチ機構収納部37の小型化、軽量化を図ることができ、この結果、減速機付モータ1全体の小型化、軽量化を図ることができる。
【0081】
これに加え、ハウジング131は、断面略コの字状のリング本体136を有している一方、クラッチ機構収納部37の底部37aと周壁37bとの連結部近傍に嵌合凸部39が形成され、この嵌合凸部39にリング本体136が嵌合している。すなわち、円柱コロ132から受ける押圧力は、一旦嵌合凸部39が受けた後にクラッチ機構収納部37の周壁37bに伝達されることになる。このため、周壁37bの薄肉化が可能になる。
【0082】
また、ウォームホイール34に軸方向に貫通する係合孔113を形成すると共に、ドライブユニット35に連結部118を形成し、係合孔113に連結部118を挿通してこの連結部118と出力回転体134とを連結している。このため、連結部118をウォームホイール34と出力回転体134との双方と協働させ、ウォームホイール34の回転をドライブユニット35に伝達させたり、ドライブユニット35の外力による回転を阻止させたりすることができる。よって、ハウジング131、および出力回転体134をクラッチ機構収納部37の底部37a側に配置しつつ、クラッチ機構130の簡素化を図ることが可能になる、
さらに、ドライブユニット35に連結部118を一体成形しているので、連結部118を別途に形成するよりも部品点数を減少させることができ、クラッチ機構130の低コスト化を図ることができる。
【0083】
そして、クラッチ機構130に円柱コロ132を用い、この円柱コロ132を利用してドライブユニット35の逆転を防止するようになっている。
ここで、例えば、円柱コロ132に代えて、球体を利用してドライブユニット35の逆転を防止しようとした場合、球体と出力回転体134との間のガタ、および球体とウォームホイール34との間のガタによって、減速機付モータ1の取り付け角度に応じて、球体の位置が変化する。このため、出力回転体134によって、確実に球体をハウジング131側に押し付けることが困難になる虞がある。
しかしながら、本実施形態のように、円柱コロ132を用いることにより、減速機付モータ1の取付け角度に応じて円柱コロ132が移動しても、確実に出力回転体134によって円柱コロ132をハウジング131側に押し付けることが可能になる。信頼性の高い減速機付モータ1を提供することが可能になる。
また、複数の円柱コロ132を配置することで、ひとつの円柱コロ132にかかる荷重を分散することができる。これにより円柱コロ132を小型化することができ、クラッチ機構130を小型化することが可能となる。
【0084】
また、クラッチ機構130は、円柱コロ132を保持部材133の支軸139に軸支させているので、円柱コロ132の姿勢を確実に保つことができる。このため、より確実にドライブユニット35の逆転防止力を確保することができ、より信頼性の高い減速機付モータ1を提供することが可能になる。
【0085】
さらに、ウォームホイール34に、複数の突起部140を設け、これら突起部140を各円柱コロ132間に介装している。このため、電動モータ2が駆動することによりウォームホイール34が回転する際、突起部140が円柱コロ132を押圧することになる。このため、確実にウォームホイール34、ドライブユニット35、および円柱コロ132を同時に回転させ、円柱コロ132のフリー状態を維持することができる。よって、クラッチ機構130をより確実に安定動作させることができる。
【0086】
そして、ウォーム減速機構3に回転軸12と、ウォーム減速機構3のウォーム軸33とをジョイントユニット29を介して連結している。このため、電動モータ2とウォーム減速機構3とを分割可能に構成することができ、電動モータ2の汎用性を高めることができる。
【0087】
また、ジョイントユニット29の他方を構成するジョイントフレーム28の凸部57に、エラストマ等の弾性材料によって形成されているダンパ部59をインサート成型している。そして、ジョイントユニット29の一方を構成するジョイントモータ27の凸部54と、ジョイントフレーム28の凸部57をダンパ部59を介して周方向で係合させている。
このため、ジョイントモータ27とジョイントフレーム28とが係合する際に生じる衝撃を緩和することができ、減速機付モータ1の製品寿命の延命化を図ることが可能になる。
【0088】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、減速機付モータ1は、車両のパワーウインド装置等に用いられるものである場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、さまざまな装置に用いることが可能である。
【0089】
また、上述の実施形態では、ドライブユニット35に連結部118を一体成形し、ドライブユニット35と出力回転体134とを連結した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、出力回転体134に、これとドライブユニット35とを連結するための連結部118を設けてもよい。この場合、ドライブユニット35には、連結部118に対応する部位に、連結部118を構成する第2凸部122と嵌合可能な孔、または凹部が形成される。
さらに、ドライブユニット35と連結部118とを一体成形とせず、それぞれ別体に形成してもよい。
【0090】
そして、上述の実施形態では、ジョイントユニット29の他方を構成するジョイントフレーム28の凸部57に、エラストマ等の弾性材料によって形成されているダンパ部59をインサート成型し場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ダンパ部59を別体で形成してもよい。また、ジョイントユニット29の一方を構成するジョイントモータ27の凸部54にダンパ部59を設けてもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 減速機付モータ
2 電動モータ
3 ウォーム減速機構(減速機構)
12 回転軸
27 ジョイントモータ(第一係合部)
28 ジョイントフレーム(第二係合部)
29 ジョイントユニット
30 ギヤケーシング(ケーシング)
34 ウォームホイール(入力回転体)
35 ドライブユニット(出力部材)
37 クラッチ機構収納部
37a 底部
37b 周壁
37c 開口部
59 ダンパ部
113 係合孔(貫通孔)
118 連結部
121 第1凸部
122 第2凸部
130 クラッチ機構
131 ハウジング(固定部材)
132 円柱コロ
133 保持部材
134 出力回転体
140 突起部
179 係止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
この電動モータの回転軸の回転を減速させて出力する減速機構とを備え、
前記減速機構は、有底筒状のケーシングを有し、
このケーシング内に、前記回転軸の回転が伝達される出力部材と、前記出力部材からの回転による前記回転軸の回転を防止するためのクラッチ機構とを設けた減速機付モータであって、
前記クラッチ機構は、
前記回転軸の回転が入力される入力回転体と、
前記入力回転体からの回転は前記出力部材へ伝達し、前記出力部材からの回転は前記入力回転体へ伝達することを防ぐ係止手段とを有し、
前記係止手段は、前記入力回転体よりも前記ケーシングの底部側に配置されていることを特徴とする減速機付モータ。
【請求項2】
前記入力回転体は、前記回転軸の回転を減速するウォームホイールであり、前記係止手段は前記ウォームホイールよりも前記ケーシングの底部側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の減速機付モータ。
【請求項3】
前記クラッチ機構は、さらに、
前記出力部材に連結され、この出力部材と一体となって回転する出力回転体と、
前記入力回転体よりも前記ケーシングの底部側に固定され、前記ケーシングの内周面に沿うように環状に形成された固定部材と、
前記出力回転体の外周面と、前記固定部材の内周面との間に設けられ、前記出力部材からの回転が前記入力回転体に伝達することを阻止する逆転防止部材とを有し、
前記係止手段は、
前記出力回転体、前記固定部材および前記逆転防止部材のうち少なくともいずれか1つから構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の減速機付モータ。
【請求項4】
前記クラッチ機構は、
前記電動モータが駆動することにより前記入力回転体が回転するとき、この入力回転体が前記出力回転体および前記逆転防止部材に回転を伝達するように構成されている一方、
外力により、前記入力回転体よりも先に前記出力回転体が回転するとき、前記逆転防止部材が前記出力回転体の外周面と前記固定部材の内周面とに挟持されることで、前記出力回転体の回転を阻止するように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れかに記載の減速機付モータ。
【請求項5】
電動モータと、
この電動モータの回転軸の回転を減速させて出力する減速機構とを備え、
前記減速機構は、有底筒状のケーシングを有し、
このケーシング内に、外力による前記回転軸の回転を防止するためのクラッチ機構を設けた減速機付モータであって、
前記クラッチ機構は、
前記回転軸の回転が入力される入力回転体と、
前記入力回転体と係合し、この入力回転体の回転力を出力する出力部材と、
前記出力部材に連結され、この出力部材と一体となって回転する出力回転体と、
前記入力回転体よりも前記ケーシングの底部側に固定され、前記ケーシングの内周面に沿うように環状に形成された固定部材と、
前記出力回転体の外周面と、前記固定部材の内周面との間に設けられた逆転防止部材とを有し、
前記電動モータが駆動することにより前記入力回転体が回転するとき、この入力回転体が前記出力回転体および前記逆転防止部材に回転を伝達し、
外力により、前記入力回転体よりも先に前記出力回転体が回転するとき、前記逆転防止部材が前記出力回転体の外周面と前記固定部材の内周面とに挟持され、前記出力回転体の回転を阻止することで前記回転軸の回転を防ぐように構成されていることを特徴とする減速機付モータ。
【請求項6】
前記出力部材と前記出力回転体との間に、前記入力回転体を設け、
前記入力回転体には、この軸方向に貫通する複数の貫通孔が周方向に沿って配置されると共に、
前記出力部材、および前記出力回転体の何れか一方には、前記複数の貫通孔を介して他方と連結される連結部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の減速機付モータ。
【請求項7】
前記連結部は、前記出力部材に一体成形されていることを特徴とする請求項6に記載の減速機付モータ。
【請求項8】
前記逆転防止部材は、複数の円柱コロから成ることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載の減速機付モータ。
【請求項9】
前記ケーシング内に前記複数の円柱コロを保持するための保持部材を設け、
各円柱コロは、前記保持部材により所定の間隔をあけて配置されていることを特徴とする請求項8に記載の減速機付モータ。
【請求項10】
前記入力回転体は、前記ケーシングの前記底部側と対向する面に、周方向に沿って複数の突起部が形成され、
前記複数の突起部は、各円柱コロの間にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の減速機付モータ。
【請求項11】
前記減速機構にウォーム軸を設け、
前記回転軸に第一係合部を設けると共に、前記ウォーム軸に前記第一係合部と相対回転不能に係合可能な第二係合部を設け、
これら第一係合部と第二係合部との接触部に両者の衝撃を緩和するためのダンパ部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項10の何れかに記載の減速機付モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−36004(P2011−36004A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178375(P2009−178375)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】