説明

温度調整機構

【課題】 2系列の現像液配管を擁する現像装置に適用して効果的な温度調整機構を提供する。
【解決手段】 温度調整機構6のジャケット10内は一端が開放された仕切板14によって内部を2つの流路10a、10bに分割し、これら流路10a、10bは仕切板14の開放された端部の箇所でつながっている。仕切板14の開放されていない側の一方のジャケット10端部には温調水流入口15が、また同じ端部の下側には温調水排出口16が設けられている。そして、仕切板14によって2分割されて形成された夫々の流路10a、10bには、前記薬液配管11,12が貫通している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばホトレジストを現像処理するために2系列の現像液を同時に使用する現像装置に適用する温度調整機構に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被処理基板にホトレジストを塗布し、ホトリソグラフィ技術を用いることで回路パターンをホトレジストに転写して、更に潜像パターン形成面に現像液を供給することにより、塗布レジスト膜を現像して被処理基板の表面に顕像パターンを形成して回路を形成することが知られている。
【0003】
現像装置としては、現像液中に被処理基板を浸漬する現像装置、現像液を被処理基板表面にシャワー状に流す現像装置、および被処理基板表面のホトレジストの上に現像液を盛り付け、所定時間経過後に被処理基板を回転させて現像液を振り切るパドル型現像装置がある。この現像液を、例えば30℃〜60℃の範囲のうち、40℃、50℃のように特定の温度に保つことができれば、ホトレジストの上に散布した現像液を少量で効率良く私用することができる。現像液を均一温度に保つための温度調整機構は、例えば特許文献1および特許文献2の図5に温水を使用したものが記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−24278号公報
【特許文献2】特開2004−274028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記現像液を送液するための配管を2系列配備しておくと、一方の現像液配管のメンテナンスを行ないながら他方の現像液配管を交代使用できるため、現像装置を連続運転できるという利点がある。しかし、2系列の現像液配管それぞれに特許文献1あるいは2に記載される保温機構を設けると、その分、メンテナンス用スペースを広くしなければならず、結果として装置全体が大きくなるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく本発明に係る温度調整機構は、温調用液体が流れるジャケットに薬液が流れる配管を貫通せしめ、該ジャケット内は仕切板にて2つの温調用液体用の流路に分けられ、これら温調用液体用の流路はジャケット内の一端にて連通し、夫々の温調用液体用の流路には薬液が流れる薬液配管が貫通し、また前記ジャケットの一端には一方の温調用液体用の流路に温調用液体を供給する供給口と、他方の温調用液体用の流路から温調用液体を排出する排出口が設けられた構成とした。このような構成とすることで、温度調整機構がコンパクトになる。
【0007】
また、前記仕切板をテフロン(登録商標)シートなどの柔軟性の有る材料から構成することで、2つの温調用液体用の流路間に圧力差が生じてもそれが吸収され、温調用液体がスムーズに流れる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る温度調整機構によれば、例えば2系列の現像液配管(薬液配管)を同時に温度制御可能なため、一方の現像液配管のメンテナンスを行ないながら他方の現像液配管を使用して現像装置を連続運転することができる。
【0009】
また、仕切板によって2分割された温調管内のそれぞれに現像液配管(薬液配管)を貫通させ、2系列の現像液の温度制御を行うことが可能なため、温度調整機構そのものがコンパクトであり、メンテナンス用のスペースも、従来の1系列型温度調整機構を1つ設置した場合とさほど変わらない程度に納めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る温度調整機構を適用した現像装置の全体配管図である。
現像装置1はケース2内にチャック装置3を配置し、現像装置1外にホットプレート(加熱装置)4、送風機5及び温度調整機構6を配置している。ホットプレート4は処理前の被処理基板Wの予備加熱を行い、送風機5は30℃以上60℃未満に調整されたエアを送風管7、フィルター8を介して現像装置1内に送り込む。
【0011】
温度調整機構6のジャケット10からは2系列の薬液供給管11,12が導出され、これら薬液供給管11,12の先端にはノズル11a、12aが取り付けられ、基板W表面に異なる成分或いは濃度の現像液を選択的に供給できるようにしている。または同じ現像液を交互にノズル11a、12aから噴出するようにすることもできる。
【0012】
また、ジャケット10には30℃以上60℃未満の範囲で適宜調整された温調水の循環経路が接続されている。更に、ジャケット10の外側には更に保温部材を設けてもよい。
【0013】
図2は本発明の温度調整機構の一例を示す正面断面図である。温度調整機構6のジャケット10は、ボックス状或いは両端を閉じた円筒状をなし、断熱性に優れた材料によって構成されている。またジャケット10内は一端が開放された仕切板14によって内部を2つの流路10a、10bに分割し、これら流路10a、10bは仕切板14の開放された端部の箇所でつながっている。
【0014】
仕切板14の材料としての制限はないが、例えば適度に柔軟性のあるポリテトラフルオロエチレン製等のポリマーシートが、汚れがつきにくく交換も容易であるため好ましい。
【0015】
また、仕切板14の開放されていない側の一方のジャケット10端部には温調水流入口15が、また同じ端部の下側には温調水排出口16が設けられている。そして、仕切板14によって2分割されて形成された夫々の流路10a、10bには、前記薬液配管11,12が貫通している。
【0016】
上記2系列の薬液配管11,12は、例えば連続運転用として一方を使用し、他方を洗浄して交代用に整備しておく使い方があるが、その他に、図1に示すケース内にチャック装置とノズル装置とをそれぞれ2系列設け、デュアル方式でスピンコーティングを行うことも可能である。
【0017】
本発明の温度調整機構6を使用する場合、温調水を温調水流入口15から流し込み、温調水排出口16から排出させることでジャケット10内を一定の温度に保つことができる。このため、ジャケット10内を貫通する薬液配管11,12内を流れる現像液が温度調整機構6から出て行くときには、常に一定の温度に調整されている。
【0018】
(実施例)
以下に、本発明の温度調整機構を使用した実施例を示す。
本発明に係るジャケットに40℃の温調水を通すことで、現像液配管内の現像液を40℃に保っておいた。そして、1分間ごとに70ccの現像液を抜き取りウェーハ上に滴下した。これを20分(合計21回)繰り返し、次に、10分置いた後の現像液を同様にウェーハ上に滴下した。上記20分のときの現像液温度を測定したところ40.0℃、さらに上記10分置いた後の温度は39.7℃であった。以上から本発明の温度調整機構を使用すれば、安定した温度を保った現像液を供給できることが判った。
【0019】
(比較例)
上記20分経過後にはジャケット内への温水供給を止めて10分置いた以外は実施例と同様の操作を行った。この結果、上記20分のときの現像液温度は39.8℃であったが、さらに10分置いた後の温度は39.2℃と低下していた。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る温度調整機構を適用した現像装置の全体配管図
【図2】本発明の温度調整機構の一例を示す正面断面図
【符号の説明】
【0021】
1…現像装置、2…ケース、3…チャック、4…ホットプレート、5…送風機、6…温度調整機構、7…送風管、8…フィルター、10…ジャケット、10a,10b…温調水の流路、11,12…薬液供給管、11a,12a…ノズル、14…仕切板、15…温調水流入口、16…温調水排出口、W…基板。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
温調用液体が流れるジャケットに薬液が流れる配管を貫通せしめた温度調整機構において、前記ジャケット内は仕切板にて2つの温調用液体用の流路に分けられ、これら温調用液体用の流路はジャケット内の一端にて連通し、夫々の温調用液体用の流路には薬液が流れる薬液配管が貫通し、また前記ジャケットの一端には一方の温調用液体用の流路に温調用液体を供給する供給口と、他方の温調用液体用の流路から温調用液体を排出する排出口が設けられていることを特徴とする温度調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載の温度調整機構において、前記仕切板は柔軟性の有る材料から構成されることを特徴とする温度調整機構。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−156628(P2006−156628A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343614(P2004−343614)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【出願人】(397057234)イーティーシステムエンジニアリング株式会社 (4)
【Fターム(参考)】