説明

温調プレートおよびその製造方法

【課題】容易に製造でき、熱媒体を漏らさず高効率で機能する温調プレートおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】熱媒体を流通させる屈曲した経路を有する金属製の管部20と、管部20が埋設され、金属基複合材料で形成された本体部10と、管部20と本体部10との間に充填された金属製の充填部30と、を備える。本体部10が金属基複合材料で形成されているため、温調プレート1は高強度、高剛性、低熱膨張性を有し、軽量である。また、金属製の管部20が埋め込まれ、その管部20に熱媒体を流通させることができるため、熱媒体が漏れることがない。また、熱媒体を流通させる経路が屈曲しているため、熱媒体への熱伝導性を高くすることで温度調節の効率を向上させることができる。また、充填部30が金属で構成されるため、充填部30により管部20と本体部10との熱膨張の差を吸収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調整のために用いられる温調プレートおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの部品、液晶表示装置の部品を対象とする薄膜形成では、スパッタリングが用いられている。スパッタリングのターゲットは、通常バッキングプレートと呼ばれる裏当て支持材に固定されて、装置内に保持される。バッキングプレートは、ターゲットを支持すると同時に、スパッタリングにより発生する熱を裏面に逃す温調プレートとしても機能する。従来、バッキングプレートには、銅、アルミニウム合金、ステンレス鋼などの金属類が一般的に用いられている。このようなバッキングプレートでは、金属製のプレートに溝を掘り、溝に対して金属の蓋部材を摩擦攪拌接合、溶接、金属箔による接合などをすることにより熱媒体の流通路が形成されている。
【0003】
一方、近年では、金属−セラミックス複合材料を用いたバッキングプレートが提案されている(特許文献1)。特許文献1記載のバッキングプレートは、SiC粉末に有機バインダーを添加し、混合し、成形した後、その成形体の少なくとも一つの表面にSiを接触させ、それを真空中またはアルゴン雰囲気中で1500〜1700℃の温度で加熱し溶融したSiを成形体中に浸透させて作製される。
【0004】
このような金属基複合材料の分野においては、貫通穴を有する複合材料の製造方法が開示されている(特許文献2)。特許文献2記載の複合材料部材は、SUS棒またはSUS管にカーボンシートを巻き付けたものをプリフォーム(セラミックス粉末または繊維からなる多孔質体)の貫通穴に挿入し、その状態でプリフォームにアルミニウム合金を非加圧浸透させた後にSUS棒またはSUS管を抜くことにより製造される。このように、金属基複合材料を温調プレートに用いる技術や、金属基複合材料製の部材に貫通穴を形成する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2002−194537号公報
【特許文献2】特開2006−111923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、金属基複合材料は金属に比べて剛性が高いため、金属基複合材料製の部材を用いてプレートの溝に蓋部材を摩擦攪拌接合するのは困難である。すなわち、摩擦攪拌接合により熱媒体の流通路を形成するのが技術的に難しく、形成できたとしても接合不良が生じやすく、接合不良が生じた部分から熱媒体が漏れる場合がある。また、金属基複合材料はセラミックスとマトリックス金属が混在する組織となっており、溶接や金属箔を用いた接合も困難である。
【0006】
摩擦攪拌接合などに代えて、特許文献2記載のような穴の形成技術を応用して金属基複合材料製のプレートに穴を形成することも考えられるが、温調プレートとしての効率を向上させるためには、熱媒体の流通路はプレート内部で屈曲していることが望ましい。特許文献2記載の穴形成技術では、貫通穴を形成することはできても屈曲した穴を形成することは不可能である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、容易に製造でき、熱媒体を漏らさず高効率で機能する温調プレートおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するため、本発明に係る温調プレートは、熱媒体を流通させる屈曲した経路を有する金属製の管部と、前記管部が埋設され、金属基複合材料で形成された本体部と、前記管部と本体部との間に充填された金属製の充填部と、を備えることを特徴としている。
【0009】
このように、本体部が金属基複合材料で形成されているため、本発明の温調プレートは高強度、高剛性、低熱膨張性を有し、軽量である。また、金属製の管部が埋め込まれ、その管部に熱媒体を流通させることができるため、熱媒体が漏れることがない。また、熱媒体を流通させる経路が屈曲しているため、熱媒体への熱伝導性を高くすることで温度調節の効率を向上させることができる。また、充填部が金属で構成されるため、充填部により管部と本体部との熱膨張の差を吸収することができる。
【0010】
(2)また、本発明に係る温調プレートは、前記本体部が、接合された2つの複合材料部材により構成され、前記2つの複合材料部材の少なくとも一方には、接合面上に前記管部を収容可能な溝が設けられていることを特徴としている。
【0011】
このように、本発明の温調プレートは、2つの複合材料部材を接合し、溝内に管部を収容したものであるため、複雑な熱媒体の流通経路を設けることができる。その結果、流通経路の面積を大きくして熱媒体への熱伝導性を高くすることで温度調節の効率を向上させることができる。
【0012】
(3)また、本発明に係る温調プレートは、前記本体部が、一方の面に前記管部を収容可能な溝を有する複合材料部材により構成され、前記充填部が、前記本体部の溝を有する面を被覆することを特徴としている。
【0013】
このように、本発明の温調プレートは、複合材料部材が有する溝内に管部を収容したものであるため、複雑な熱媒体の流通経路を実現することができる。その結果、流通経路の面積を大きくして熱媒体への熱伝導性を高くすることで温度調節の効率を向上させることができる。また、形成される複合材料部材が一つだけであるため、製造が容易である。
【0014】
(4)また、本発明に係る温調プレートは、前記本体部の開気孔率が、1%未満であることを特徴としている。これにより、本発明の温調プレートは高強度、高剛性を有するため、破損等が防止される。また、その熱伝導性を向上させ、熱媒体への熱伝導性を高くすることで温度調節の効率を向上させることができる。
【0015】
(5)また、本発明に係る温調プレートは、前記充填部が、前記本体部に金属基として用いられる金属と同一の金属により構成されていることを特徴としている。これにより、充填部は本体部と一体的に形成されるため、充填部の強度が向上する。
【0016】
(6)また、本発明に係る温調プレートは、前記管部が、前記充填部を構成する金属より融点の高い金属により構成されていることを特徴としている。これにより、金属を加圧浸透して充填部を形成することが可能となる。すなわち管部の金属の融点以下の温度で加圧浸透することが可能となり、管部の変形を防止することが可能となる。
【0017】
(7)また、本発明に係る温調プレートの製造方法は、屈曲した配管経路が形成されたセラミックス製のプリフォームを作製するプリフォーム作製工程と、両端を一時的に塞いだ金属製の管を前記プリフォームの配管経路に設置し、金属製の管とともに前記プリフォームを密閉可能な金型内に設置する設置工程と、前記金型に熔融金属を流し込む注湯工程と、前記金型内を密閉し、加圧する加圧工程と、を有し、前記加圧工程により前記熔融金属を前記プリフォームに加圧浸透させ、金属基複合材料を形成することを特徴としている。このようにして、金属基複合材料を用いた温調プレートを製造することができる。
【0018】
(8)また、本発明に係る温調プレートの製造方法は、前記加圧工程において、5MPa以上の圧力で加圧することを特徴としている。これにより、金属基複合材料で形成される部分にポアが発生するのを防止することができる。その結果、温調プレートは高強度、高剛性を有するため、破損等が防止される。また、温調プレートの熱伝導性を向上させ、熱媒体への熱伝導性を高くすることで温度調節の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高強度、高剛性、低熱膨張性を有する、軽量な温調プレートを実現することができる。また、温調プレートから熱媒体が漏れることがなくなり、温度調節の効率を向上させることができる。また、充填部が管部と本体部との熱膨張の差を吸収するため、破損等が生じにくくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。また、説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
[実施形態1]
(温調プレートの構成)
図1(a)〜(c)は、それぞれ温調プレート1の平面図、縦断面図、横断面図である。図1(b)の縦断面図は、図1(a)のB−B’で温調プレート1を切断したときの断面を矢印の方向から見た図である。また、図1(c)の断面図は、図1(c)のC−C’で温調プレート1を切断したときの断面を矢印の方向から見た図である。
【0022】
図1に示すように、温調プレート1は、本体部10、管部20および充填部30を備えている。本体部10と管部20との隙間は充填部30により充填されており、温調プレート1は、たとえば半導体、液晶の製造用のバッキングプレートとして用いられる。
【0023】
本体部10は、金属基複合材料(金属−セラミックス複合材料)で形成され、管部20が埋設されている。本体部10が金属基複合材料で形成されているため、温調プレート1は高強度、高剛性、低熱膨張性を有し、軽量である。また、熱媒体を流通させる経路が屈曲しているため、熱媒体への熱伝導性を高くすることで温度調節の効率を向上させることができる。管部20が形成する熱媒体の流通経路は、流通面積を大きくするため屈曲していることが好ましい。たとえば、流通経路は、図1に示す例のように2回以上屈曲している。また、流通経路は、折りたたみを繰り返すものであってもよい。なお、管部20は1本のみに限定されず、2本以上埋設されていてもよい。
【0024】
本体部10は、2つの平板状の複合材料部材11、12が接合されて構成されている。2つの複合材料部材11、12の互いに対向する面上には、接合面に対して面対称な経路に沿って屈曲した溝11a、12aが設けられている。屈曲した溝11a、12aには管部20が収容されている。このようにして複雑な熱媒体の流通経路を形成することができる。その結果、熱媒体の流通面積を拡大し、熱伝導性を高くすることで温度調節の効率を向上させることができる。なお、複合材料部材11、12は平板状等の熱媒体の流通面積を広く確保できる形状に形成されていることが好ましい。
【0025】
図2(a)〜(d)は、それぞれ溝形状の異なる温調プレート1の横断面図である。図2(a)に示す例では、断面が矩形の溝11a、12aが各複合材料部材11、12に設けられている。また、図2(b)に示す例では、断面がV字形の溝11a、12aが各複合材料部材11、12に設けられている。図2(c)に示す例では、断面が台形の溝11a、12aが各複合材料部材11、12に設けられており、両者を合わせると六角形の溝断面となっている。図2(d)に示す例では、断面が半円の溝11a、12aが各複合材料部材11、12に設けられており、溝11a、12aの底部の形状が設置された管部20にフィットしている。溝断面の形状は、その他U字形、多角形であってもよい。溝12aの形状が底に向かって狭くなる場合には、管を収容したときに管が安定しやすい。
【0026】
本体部10の金属基複合材料の強化材はSiC、アルミナ、窒化アルミ等のセラミックスにより構成されていることが好ましい。また、金属基(母材)は、アルミニウム単体、アルミニウム合金、銅、マグネシウム等により構成されていることが好ましい。
【0027】
たとえば、本体部10がアルミニウムの金属基とSiC粒子とにより構成されている場合には、密度が3×10kg/m以上であることが好ましい。また、本体部10の開気孔率は、1%未満であることが好ましい。このように本体部10はポアが低減されているため、温調プレート1は高強度、高剛性を有する。その結果、破損等が防止される。また、ポアの低減により温調プレート1の熱伝導性は高くなり温度調節の効率を向上させることができる。
【0028】
管部20は、金属製であり、内部に熱媒体を流通させる屈曲した経路を有しており、本体部10に埋設されている。管内に熱媒体を流通させるため、熱媒体が漏れることがない。また、金属製の管部20に熱媒体を流通させることができるため、熱媒体に熱を伝え易い。管部20は、充填部30を構成する金属より融点の高い金属により構成されている。したがって、金属を加圧浸透して形成された充填部30により管部20を本体部10に埋設することが可能となる。すなわち加圧浸透により管部20が変形することが防止される。
【0029】
たとえば、管部20はSUS、真鍮、銅、鉄等により構成される。銅製とした場合、高い熱伝導性が得られる。管部20は、円筒形の中空管であることが好ましいが、管の断面は多角形または楕円であってもよい。管部20は、温調プレート1を用いる際に外部の流路に連結することが可能となっている。その際には水等の熱媒体を流通させて温調プレート1を用いる。なお、熱媒体として気体を用いてもよい。
【0030】
充填部30は、金属により構成されており管部と本体部との間に充填されている。また、充填部30は、複合材料部材11、12の間にも充填され、2つの複合材料部材11、12を接合している。充填部30は金属で構成されるため、充填部30により管部20と本体部との熱膨張の差を吸収することができる。充填部30は、本体部10が有する金属基複合材料部材に金属基として用いられる金属と同一の金属により構成されている。これにより、充填部30は本体部10と一体的に形成され、充填部30周辺の強度が向上する。充填部30には、通常、気孔や隙間は生じない。
【0031】
なお、上記の実施形態では、本体部10は、溝付きの2つの複合材料部材11、12が接合されて形成されているが、溝付きの複合材料部材と平板状の複合材料部材とが接合されて形成されていてもよい。その場合には、溝付きの複合材料部材にのみ管部を収容する溝が形成される。
【0032】
(温調プレートの製造方法)
上記のように構成される温調プレート1の製造方法を、SUS管を設置した炭化ケイ素セラミックス製のプリフォームにアルミニウムを含浸させる場合を例に挙げて説明する。図3(a)〜(e)は、温調プレート1の製造工程の各段階を模式的に示す図である。まず、それぞれ屈曲した配管経路を有する管部20の経路に沿って溝41a、42aが形成されたセラミックス製のプリフォーム41、42を準備する(図3(a))。
【0033】
具体的には、炭化ケイ素セラミックスの粉末にバインダー等を添加して成形体を作製し、200〜1200℃の温度で仮焼し平板状のプリフォーム41、42を2枚作製する。そして、プリフォーム41、42の表面に管部20を設置するための溝41a、42aを生加工することでプリフォーム41、42の準備を行う。溝41a、42aは、配管の経路に応じて加工することができる。
【0034】
次に、プリフォーム42の溝42aに管部20を設置してプリフォーム41を被せ、プリフォーム41、42を互いに密着させて、管部20を挟む(図3(b))。このようにして、レイアップ体48を組み立てる。このとき、管部20の両端は、金属製の円板を溶接する等の手段により塞いでおく。なお、管部20と溝41a、42aとの間に生じる隙間に炭化ケイ素セラミックスの粉末または繊維を充填しておいてもよい。充填するための粉末等は、プリフォーム42、42の材料と同じセラミックスの粉末等であることが好ましい。粉末等を充填して作製した温調プレート1は、図2(d)に示すような断面を有する。
【0035】
次いで、レイアップ体48を500〜900℃で予熱する。一方、容器55内で所定量のアルミニウムの市販のインゴットまたはリサイクル合金を熔融させる。そして、あらかじめ100℃以上の温度に予熱しておいた金型50にレイアップ体48を設置する。次いで、容器55に入った熔融アルミニウム56(熔融金属)を金型50に流し込む(図3(c))。
【0036】
熔融アルミニウム56が注湯された金型50内を密閉し、プレス機により金型50内に圧力をかけ、一定時間以上維持したら、金型50を冷却し、圧力を低下させる(図3(d))。このようにして熔融アルミニウム56をプリフォーム41、42に加圧浸透することで、金属基複合材料の部分にポアが発生するのを防止することができる。加圧浸透された金属基複合材料は脱ガス性に優れ、そこに生じるパーティクルの数も少ない。したがって、このように加圧浸透された金属基複合材料は、真空容器や半導体装置に利用するのに適している。また、加圧浸透を行うことにより管部20と熔融アルミニウム56の反応は生じにくい。
【0037】
次に、金型50から加圧浸透体49をアルミニウムごと取り出し、切削装置59で周囲のアルミニウムを切断し除去して加圧浸透体49を所定の形状に整え、管部20の両端を開ける。このようにして、本体部10が金属基複合材料で構成された温調プレート1を製造することができる。
【0038】
なお、加圧工程においては、5MPa以上の圧力で加圧するのが好ましい。5MPa以上で加圧することで、金属基複合材料内のポアを低減することができる。上記の例では、密度3×10kg/m以上、開気孔率1%未満を実現することが可能である。一方、圧力は管部20の圧縮強度より小さくすることが好ましい。たとえば、管部20にSUS管、熔融金属56にアルミニウム合金を用いる場合には、加圧工程の圧力は100MPa以下であることが好ましい。圧力により管部20が変形したり、プリフォームが割れたりするのを防止するためである。なお、圧力のキープ時間は5〜60分とすることが好ましい。
【0039】
[実施形態2]
上記の実施形態では、本体部10は、2つの複合材料部材11、12が接合されて形成されているが、1つの複合材料部材のみで形成されていてもよい。図4(a)〜(d)は、1つの複合材料部材に管を埋設して形成された温調プレート61の横断面図である。図4(a)〜(d)は、それぞれ溝形状の異なる温調プレート61の横断面図を示している。温調プレート61の本体部70は、平板状の複合材料部材のみで形成されている。管部20を収容可能な溝70aは、充填部80により充填され、さらに本体部70の表面が充填部80により被覆されている。
【0040】
図4(a)に示す例では、断面が矩形の溝70aが本体部70に設けられている。また、図4(b)に示す例では、断面がV字形の溝70aが本体部70に設けられている。図4(c)に示す例では、断面が台形の溝70aが本体部70に設けられている。図4(d)に示す例では、断面がU字形の溝70aが本体部70に設けられている。溝断面の形状は、その他の多角形であってもよい。
【0041】
このような温調プレート61は、溝付きのプリフォームの溝に管部を設置して、レイアップ体とし、加圧浸透後、溝側の表面に金属層を残して加圧浸透体を切削加工することで作製することができる。
【0042】
温調プレート61は、溝70a内に管部20を収容したものであるため、複雑な熱媒体の流通経路を実現することができる。なお、本発明の温調プレートは、半導体や液晶の製造工程で用いるのに適しているが、必ずしもこのような用途に限定されない。
【0043】
[実施形態3]
上記の実施形態に限らず、本体部は、凹状の複合材料部材に凸状の複合材料部材が接合されて構成されていてもよい。図5(a)は、本体部90が、凹状の複合材料部材91および凸状の複合材料部材92により構成されている温調プレート81の断面図である。凸状の複合材料部材92は、凸部92bに溝92aを有している。このように、本体部90が、凹状の複合材料部材91および凸状の複合材料部材92により構成されているため、温調プレート81の製造が容易になる。
【0044】
図5(b)は、実施形態3に係る温調プレートの製造工程の1段階を模式的に示す図である。図5(b)が示す状態は、図3(a)に示す状態に該当し、プリフォーム101、102を組み立てる工程を模式的に示している。まず、管部20を、プリフォーム102の凸部102bに形成された溝102aに設置する。そして、プリフォーム102の凸部102bにプリフォーム101の凹部101bを嵌め込んで、2つのプリフォームを密着させる。そして実施形態1で説明した製造方法に従い工程を進めることで、温調プレート81の製造ができる。プリフォームの凹部に凸部を嵌め込むため、位置合わせが容易となり、温調プレート81の製造が容易になる。
【実施例】
【0045】
実際に、温調プレート1を製造し、その特性を検証した。まず、炭化ケイ素セラミックスの粉末にバインダー等を添加して成形体を作製し、1000℃の温度で仮焼した。そして、平板状のプリフォーム41、42を2枚作製した。そのプリフォーム41、42の表面に溝41a、42aを生加工し、プリフォーム41、42および溝41a、42aを図1(a)〜(c)に示す本体部10の形状に形成した。そして、SUS管の両端を、金属製の円板を溶接して塞ぎ、溝42aにSUS管を設置してプリフォーム41を被せ、レイアップ体48を組み立てた。
【0046】
レイアップ体48を500℃で予熱し、その一方で、容器55内で所定量のアルミニウムの市販のインゴットを熔融させた。そして、あらかじめ300℃の温度に予熱しておいた金型50にレイアップ体48を設置し、容器55に入った熔融アルミニウム56を金型50に流し込んだ。熔融アルミニウム56が注湯された金型50内を密閉し、プレス機により金型50内に圧力をかけ、5MPaで10分キープした。その後、金型50を冷却し、圧力を低下させ、金型50から加圧浸透体49をアルミニウムごと取り出した。そして、周囲のアルミニウムを切除し、SUS管の両端を開けて温調プレート1を作製した。
【0047】
このようにして、作製された温調プレート1の管部20内に水を流したところ、水の漏れは生じなかった。また、作製された温調プレート1の本体部10について、密度を測定したところ、3.05×10kg/mであった。また、本体部10について、JIS−R1601による強度試験を行ったところ320MPaであった。また、JIS−R1602により本体部10のヤング率を測定したところ、230GPaであった。
【0048】
さらに、JIS−R1618により本体部10の熱膨張率を測定したところ、8.0ppmであった。また、実装試験として、温水を循環させ、接触式温度計でワーク表面を測定することにより温調プレート1の均熱性を測定したところ、目標値の80±5℃以内であった。このように、作製された温調プレート1は、熱媒体の漏れを生じさせず、高強度、高剛性、低熱膨張性、均熱性を有していることが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)実施形態1に係る温調プレートの平面図である。(b)実施形態1に係る温調プレートの断面図である。(c)実施形態1に係る温調プレートの断面図である。
【図2】(a)〜(d)実施形態1に係る温調プレートの断面図である。
【図3】(a)〜(e)実施形態1に係る温調プレートの製造工程の各段階を模式的に示す図である。
【図4】(a)〜(d)実施形態2に係る温調プレートの断面図である。
【図5】(a)実施形態3に係る温調プレートの断面図である。(b)実施形態3に係る温調プレートの製造工程の1段階を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1、61、81 温調プレート
10、70、90 本体部
11、12、70、91、92 複合材料部材
11a、12a、72a、92a 溝
20 管部
30、80 充填部
41、42、101、102 プリフォーム
41a、42a、102a 溝
48 レイアップ体
49 加圧浸透体
50 金型
55 容器
56 熔融アルミニウム(熔融金属)
59 切削装置
61 温調プレート
91b 凹部
92b 凸部
101b 凹部
102b 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を流通させる屈曲した経路を有する金属製の管部と、
前記管部が埋設され、金属基複合材料で形成された本体部と、
前記管部と本体部との間に充填された金属製の充填部と、を備えることを特徴とする温調プレート。
【請求項2】
前記本体部は、接合された2つの複合材料部材により構成され、
前記2つの複合材料部材の少なくとも一方には、接合面上に前記管部を収容可能な溝が設けられていることを特徴とする請求項1記載の温調プレート。
【請求項3】
前記本体部は、一方の面に前記管部を収容可能な溝を有する複合材料部材により構成され、
前記充填部は、前記本体部の溝を有する面を被覆することを特徴とする請求項1記載の温調プレート。
【請求項4】
前記本体部の開気孔率は、1%未満であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の温調プレート。
【請求項5】
前記充填部は、前記本体部に金属基として用いられる金属と同一の金属により構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の温調プレート。
【請求項6】
前記管部は、前記充填部を構成する金属より融点の高い金属により構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の温調プレート。
【請求項7】
屈曲した配管経路が形成されたセラミックス製のプリフォームを作製するプリフォーム作製工程と、
両端を一時的に塞いだ金属製の管を前記プリフォームの配管経路に設置し、金属製の管とともに前記プリフォームを密閉可能な金型内に設置する設置工程と、
前記金型に熔融金属を流し込む注湯工程と、
前記金型内を密閉し、加圧する加圧工程と、を有し、
前記加圧工程により前記熔融金属を前記プリフォームに加圧浸透させ、金属基複合材料を形成することを特徴とする温調プレートの製造方法。
【請求項8】
前記加圧工程において、5MPa以上の圧力で加圧することを特徴とする請求項7記載の温調プレートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−62593(P2009−62593A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232649(P2007−232649)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(391005824)株式会社日本セラテック (200)
【出願人】(000000240)太平洋セメント株式会社 (1,449)
【Fターム(参考)】