説明

測位方法、プログラム、測位装置及び電子機器

【課題】測位位置の位置飛びを考慮して、適切な位置出力を行うこと。
【解決手段】GPS衛星から発信されているGPS衛星信号に基づいて携帯型電話機1の
現在位置及び移動速度ベクトルが間欠的に計測される。また、今回測位位置を位置飛びと
判定しない認容位置領域が計測結果に基づいて設定され、認容位置領域内に今回測位位置
が位置するか否かによって位置飛びが判定される。そして、位置飛びと判定されなかった
場合に、従前の計測結果から算出した予想位置を用いて今回測位位置を補正する補正処理
が行われ、今回出力位置が決定されて出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測位方法、プログラム、測位装置及び電子機器に関する。
【0002】
人工衛星を利用した測位システムとしては、GPS(Global Positioning System)が
広く知られており、携帯型電話機やカーナビゲーション装置等に内蔵された測位装置に利
用されている。GPSでは、自機の位置を示す3次元の座標値と、時計誤差との4つのパ
ラメータの値を、複数のGPS衛星の位置や各GPS衛星から自機までの擬似距離等の情
報に基づいて求める測位演算を行うことで、自機の現在位置を測位する。
【0003】
GPSによる測位では、種々の誤差要因により、測位装置の現在位置を正確に求めるこ
とが困難であるため、測位誤差を低減させるための様々な技術が考案されている。その一
例として、特許文献1には、いわゆる推測航法により求めた推測位置と、GPSによる測
位位置とを加重平均して、測位装置の現在位置を算出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平8−68651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている技術は、測位位置の位置飛びを考慮したものでは
なかった。すなわち、今回のGPS測位により求められた測位位置(今回測位位置)が、
前回のGPS測位により求められた測位位置(前回測位位置)から、測位時間間隔と移動
速度との関係から定められた移動可能限界距離以上離れているような場合(このような場
合を本明細書では「位置飛び」と称する。)には、今回測位位置は測位装置の真位置から
大きく外れていると言える。しかし、このような場合であっても、推測位置と測位位置と
を単純に加重平均して現在位置を算出するため、測位装置の真位置とは大きく異なる位置
が出力されてしまう可能性があった。
【0005】
本発明は、上述した課題に鑑みて為されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するための第1の発明は、測位装置が、測位用衛星から発信されてい
る測位用信号に基づいて自測位装置の現在位置及び自測位装置の移動速度ベクトルを間欠
的に計測することと、今回計測された測位位置が位置飛びしていないか否かを判定するた
めの今回用の認容位置領域を計測結果に基づいて設定し、前記認容位置領域内に今回計測
された測位位置が位置するか否かによって位置飛びを判定することと、位置飛びと判定さ
れなかった場合に、従前の計測結果を用いて今回計測された測位位置を補正する所定の補
正処理を実行することで今回の出力位置を求めて出力することと、を含む測位方法である

【0007】
また、第9の発明として、測位用衛星から発信されている測位用信号に基づいて自測位
装置の現在位置及び自測位装置の移動速度ベクトルを間欠的に計測する計測部と、今回計
測された測位位置が位置飛びしていないか否かを判定するための今回用の認容位置領域を
計測結果に基づいて設定し、前記認容位置領域内に今回計測された測位位置が位置するか
否かによって位置飛びを判定する判定部と、位置飛びと判定されなかった場合に、従前の
計測結果を用いて今回計測された測位位置を補正する所定の補正処理を実行することで今
回の出力位置を求めて出力する出力部と、を備えた測位装置を構成してもよい。
【0008】
この第1の発明等によれば、測位用衛星から発信されている測位用信号に基づいて自測
位装置の現在位置及び移動速度ベクトルが間欠的に計測される。また、今回計測された測
位位置が位置飛びしていないか否かを判定するための今回用の認容位置領域が計測結果に
基づいて設定され、認容位置領域内に今回計測された測位位置が位置するか否かによって
位置飛びが判定される。そして、位置飛びと判定されなかった場合に、従前の計測結果を
用いて今回計測された測位位置を補正する所定の補正処理が実行されることで、今回の出
力位置が求められて出力される。
【0009】
第2の発明は、測位装置が、測位用衛星から発信されている測位用信号に基づいて自測
位装置の現在位置及び自測位装置の移動速度ベクトルを間欠的に計測することと、今回計
測された測位位置が位置飛びしていないか否かを判定するための今回用の認容位置領域を
計測結果に基づいて設定し、前記認容位置領域内に今回計測された測位位置が位置するか
否かによって位置飛びを判定することと、位置飛びと判定されなかった場合に、今回計測
された測位位置を今回の出力位置として出力することと、を含む測位方法である。
【0010】
また、第10の発明として、測位用衛星から発信されている測位用信号に基づいて自測
位装置の現在位置及び自測位装置の移動速度ベクトルを間欠的に計測する計測部と、今回
計測された測位位置が位置飛びしていないか否かを判定するための今回用の認容位置領域
を計測結果に基づいて設定し、前記認容位置領域内に今回計測された測位位置が位置する
か否かによって位置飛びを判定する判定部と、位置飛びと判定されなかった場合に、今回
計測された測位位置を今回の出力位置として出力する出力部と、を備えた測位装置を構成
してもよい。
【0011】
この第2の発明等によれば、測位用衛星から発信されている測位用信号に基づいて自測
位装置の現在位置及び移動速度ベクトルが間欠的に計測される。また、今回計測された測
位位置が位置飛びしていないか否かを判定するための今回用の認容位置領域が計測結果に
基づいて設定され、認容位置領域内に今回計測された測位位置が位置するか否かによって
位置飛びが判定される。そして、位置飛びと判定されなかった場合に、今回計測された測
位位置が今回の出力位置として出力される。
【0012】
第3の発明は、第1又は第2の発明の測位方法であって、前記計測された移動速度ベク
トルの移動速度の大きさに応じて前記認容位置領域を可変に設定することを更に含む測位
方法である。
【0013】
また、第11の発明として、第9又は第10の発明の測位装置であって、前記判定部は
、前記計測された移動速度ベクトルの移動速度の大きさに応じて前記認容位置領域を可変
に設定する認容位置領域可変設定部を有する測位装置を構成してもよい。
【0014】
この第3の発明等によれば、計測された移動速度ベクトルの移動速度の大きさに応じて
認容位置領域が可変に設定される。すなわち、位置飛びの判定条件が、測位装置の移動速
度に応じて可変されることになる。
【0015】
第4の発明は、第1〜第3の何れかの発明の測位方法であって、前記計測された移動速
度ベクトルの移動速度が大きいほど当該移動速度ベクトルの移動方向に沿った方向の長さ
を長くするように前記認容位置領域を設定することを更に含む測位方法である。
【0016】
また、第12の発明として、第11の発明の測位装置であって、前記認容位置領域可変
設定部は、前記計測された移動速度ベクトルの移動速度が大きいほど当該移動速度ベクト
ルの移動方向に沿った方向の長さを長くするように前記認容位置領域を設定する測位装置
を構成してもよい。
【0017】
この第4の発明等によれば、計測された移動速度ベクトルの移動速度が大きいほど当該
移動速度ベクトルの移動方向に沿った方向の長さを長くするように認容位置領域が設定さ
れる。測位装置が高速で移動しているほど、測位装置は、従前の移動方向に沿った方向に
移動している可能性が高いと考えられるからである。
【0018】
第5の発明は、第1〜第4の何れかの発明の測位方法であって、前記計測された移動速
度ベクトルの移動速度が大きいほど当該移動速度ベクトルの移動方向に直交する方向の長
さを短くするように前記認容位置領域を設定することを更に含む測位方法である。
【0019】
また、第13の発明として、第11又は第12の発明の測位装置であって、前記認容位
置領域可変設定部は、前記計測された移動速度ベクトルの移動速度が大きいほど当該移動
速度ベクトルの移動方向に直交する方向の長さを短くするように前記認容位置領域を設定
する測位装置を構成してもよい。
【0020】
この第5の発明等によれば、計測された移動速度ベクトルの移動速度が大きいほど当該
移動速度ベクトルの移動方向に直交する方向の長さを短くするように認容位置領域が設定
される。前回測位からの経過時間の間に測位装置が移動方向を転換する場合、測位装置の
速度は低減するはずである。ましてや、測位装置が高速で移動している場合には、その移
動方向に直交する方向に同じ速度で急激に方向転換するとは考えられない。従って、測位
装置の移動速度が高速であるほど、測位装置の移動方向に直交する方向の認容位置領域の
長さを短くする。
【0021】
第6の発明は、第1〜第5の何れかの発明の測位方法であって、位置飛びと判定された
場合に、前記計測結果を用いた所定の推測航法に従って現在位置を算出し、今回の出力位
置として出力することを更に含む測位方法である。
【0022】
この第6の発明によれば、位置飛びと判定された場合に、計測結果を用いた所定の推測
航法に従って現在位置が算出され、今回の出力位置として出力される。
【0023】
第7の発明は、第1〜第6の何れかの発明の測位方法であって、前記位置飛びの判定に
は、前回出力した出力位置を基準として今回計測された測位位置が位置飛びしているか否
かの第1の判定と、前回計測された測位位置を基準として今回計測された測位位置が位置
飛びしているか否かの第2の判定とが少なくとも含まれる測位方法である。
【0024】
また、第14の発明として、第9〜第13の何れかの発明の測位装置であって、前記判
定部は、前回出力した出力位置を基準として今回計測された測位位置が位置飛びしている
か否かの第1の判定と、前回計測された測位位置を基準として今回計測された測位位置が
位置飛びしているか否かの第2の判定とを行う測位装置を構成してもよい。
【0025】
この第7の発明等によれば、前回出力した出力位置を基準として今回計測された測位位
置が位置飛びしているか否かの第1の判定と、前回計測された測位位置を基準として今回
計測された測位位置が位置飛びしているか否かの第2の判定との2段階で位置飛びの判定
が行われることになり、位置飛びの判定そのものの確度が向上する。
【0026】
また、第8の発明として、第1〜第7の何れかの発明の測位方法を、測位装置に内蔵さ
れたコンピュータに実行させるためのプログラムを構成してもよいし、第15の発明とし
て、第9〜第14の何れかの発明の測位装置を備えた電子機器を構成してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明に好適な実施形態の一例を説明する。尚、以下では、測
位装置を備えた電子機器として、GPS機能を有する携帯型電話機を例に挙げて説明する
が、本発明を適用可能な実施形態がこれに限定されるわけではない。
【0028】
1.機能構成
図1は、本実施形態における携帯型電話機1の機能構成を示すブロック図である。携帯
型電話機1は、GPSアンテナ10と、GPS受信部20と、TCXO(Temperature Co
mpensated Crystal Oscillator)40と、ホストCPU(Central Processing Unit)5
0と、操作部60と、表示部70と、携帯電話用アンテナ80と、携帯電話用無線通信回
路部90と、ROM(Read Only Memory)100と、RAM(Random Access Memory)1
10とを備えて構成される。
【0029】
GPSアンテナ10は、GPS衛星から発信されているGPS衛星信号を含むRF信号
を受信するアンテナであり、受信した信号をGPS受信部20に出力する。GPS衛星信
号は、C/A(Coarse and Acquisition)コードと呼ばれるスペクトラム拡散変調された
信号であり、1.57542[GHz]を搬送波周波数とするL1帯の搬送波に重畳され
ている。
【0030】
GPS受信部20は、GPSアンテナ10から出力された信号に基づいて携帯型電話機
1の現在位置を測位する測位部であり、いわゆるGPS受信機に相当する機能ブロックで
ある。GPS受信部20は、RF(Radio Frequency)受信回路部21と、ベースバンド
処理回路部30とを備えて構成される。尚、RF受信回路部21と、ベースバンド処理回
路部30とは、それぞれ別のLSI(Large Scale Integration)として製造することも
、1チップとして製造することも可能である。
【0031】
RF受信回路部21は、高周波信号(RF信号)の回路ブロックであり、TCXO40
により生成された発振信号を分周或いは逓倍することで、RF信号乗算用の発振信号を生
成する。そして、生成した発振信号を、GPSアンテナ10から出力されたRF信号に乗
算することで、RF信号を中間周波数の信号(以下、「IF(Intermediate Frequency)
信号」と称す。)にダウンコンバートし、IF信号を増幅等した後、A/D変換器でデジ
タル信号に変換して、ベースバンド処理回路部30に出力する。
【0032】
ベースバンド処理回路部30は、RF受信回路部21から出力されたIF信号に対して
相関処理等を行ってGPS衛星信号を捕捉・抽出し、データを復号して航法メッセージや
時刻情報等を取り出して測位演算を行う回路部である。ベースバンド処理回路部30は、
衛星捕捉・追尾部31と、プロセッサとしてのCPU33と、メモリとしてのROM35
及びRAM37とを備えて構成される。尚、本実施形態においては現在位置の測位演算そ
のものはCPU33で実行することとして説明するが、ホストCPU50で現在位置を測
位演算することとしてもよいのは勿論である。
【0033】
衛星捕捉・追尾部31は、RF受信回路部21から出力されたIF信号をもとに、GP
S衛星信号の捕捉・追尾を行う回路部である。GPS衛星信号の捕捉は、擬似的に発生さ
せた拡散符合(レプリカC/Aコード)とIF信号との相関値を算出し、最も振幅が大き
い周波数成分及び位相成分を抽出する相関処理によって実現する。
【0034】
また、GPS衛星信号の追尾は、例えば遅延ロックループ(DLL(Delay Locked Loo
p))として知られるコードループや、位相ロックループ(PLL(Phase Locked Loop)
)として知られるキャリアループ等の回路によって、GPS衛星信号に含まれるC/Aコ
ード及び搬送波の位相を追尾することで実現する。
【0035】
図2は、ROM35に格納されたデータの一例を示す図である。ROM35には、CP
U33により読み出され、ベースバンド処理(図5、図6参照)として実行されるベース
バンド処理プログラム351が記憶されている。また、ベースバンド処理プログラム35
1には、GPS測位処理として実行されるGPS測位プログラム3511と、停止判定処
理として実行される停止判定プログラム3513と、位置飛び判定処理として実行される
位置飛び判定プログラム3515とがサブルーチンとして含まれている。
【0036】
ベースバンド処理とは、CPU33が、GPS測位処理を行って携帯型電話機1の現在
位置及び移動速度ベクトルを計測し、計測した測位位置の位置飛び(前回測位時の位置出
力からの経過時間と移動速度との関係から定められた移動可能限界距離以上、今回の測位
位置が変化している場合。)を判定する処理である。そして、位置飛びの判定結果に応じ
て、出力位置を可変に決定する。ベースバンド処理については、フローチャートを用いて
詳細に後述する。
【0037】
GPS測位処理とは、CPU33が、衛星捕捉・追尾部31により捕捉・追尾されたG
PS衛星信号から航法メッセージや時刻情報等を復号し、複数の捕捉衛星について算出し
た擬似距離等の情報に基づいて、携帯型電話機1の現在位置を間欠的に計測する処理であ
る。また、CPU33は、捕捉されたGPS衛星信号のドップラー周波数の変化に基づい
て、携帯型電話機1の移動速度ベクトル(移動方向及び移動速度)を間欠的に計測する。
GPS測位処理についても、詳細に後述する。
【0038】
停止判定処理とは、CPU33が、今回及び前回のGPS測位処理により計測された測
位位置と、前回のGPS測位処理により計測された移動速度ベクトルとに基づいて、携帯
型電話機1が停止しているか否かを判定する処理である。停止判定処理についても、詳細
に後述する。
【0039】
位置飛び判定処理とは、CPU33が、位置飛びの判定対象とする位置(以下、「判定
対象位置」と称す。)が位置飛びしていないか否かを判定するための認容位置領域を、G
PS測位処理の計測結果に基づいて設定し、当該認容位置領域内に判定対象位置が位置す
るか否かに応じて、位置飛びの判定を行う処理である。位置飛び判定処理についても、詳
細に後述する。
【0040】
図3は、RAM37に格納されるデータの一例を示す図である。RAM37には、計測
履歴データ371と、予想移動距離データ373と、予想位置データ375とが記憶され
る。
【0041】
図4は、計測履歴データ371のデータ構成例を示す図である。計測履歴データ371
は、出力位置決定時刻3711と、測位位置3713と、移動速度ベクトル3715と、
出力位置3717とが対応付けて新しい順に記憶されたデータであり、ベースバンド処理
において、CPU33により随時更新される。
【0042】
出力位置決定時刻3711は、出力位置3717が決定された時刻である。測位位置3
713は、GPS測位処理により計測された携帯型電話機1の現在位置であり、例えば地
球基準座標系における3次元の座標値で表される。
【0043】
移動速度ベクトル3715は、GPS測位処理により計測された携帯型電話機1の移動
方向及び移動速度でなるベクトルである。移動方向は、例えば地球基準座標系における3
次元の単位ベクトルで表される。また、移動速度は、スカラー量である。
【0044】
出力位置3717は、GPS測位処理により計測された測位位置3713に基づいて、
最終的に出力する位置として決定された位置であり、例えば地球基準座標系における3次
元の座標値で表される。
【0045】
計測履歴データ371のうち、最新の1レコード分の出力位置決定時刻3711、測位
位置3713、移動速度ベクトル3715及び出力位置3717の組合せを「今回測位情
報」、次に新しい1レコード分のデータの組合せを「前回測位情報」、その次に新しい1
レコード分のデータの組合せを「前々回測位情報」と称する。
【0046】
また、今回測位情報に含まれる出力位置決定時刻3711、測位位置3713、移動速
度ベクトル3715及び出力位置3717を、それぞれ「今回出力位置決定時刻」、「今
回測位位置」、「今回移動速度ベクトル」及び「今回出力位置」と表現し、前回測位情報
及び前々回測位情報に含まれるデータについても、それぞれのデータ名の語頭に「前回」
及び「前々回」を付して同様に表現するものとする。
【0047】
予想移動距離データ373は、前回出力位置決定時刻からの経過時間と、今回移動速度
ベクトルとに基づいて算出される予想移動距離が記憶されたデータである。ベースバンド
処理において、CPU33は、前回出力位置決定時刻からの経過時間に、今回移動速度ベ
クトルの移動速度を乗算することで予想移動距離を算出し、予想移動距離データ373に
記憶させる。
【0048】
予想位置データ375は、前回出力位置と、今回移動速度ベクトルとに基づいて算出さ
れる予想位置が記憶されたデータである。ベースバンド処理において、CPU33は、前
回出力位置決定時刻からの経過時間に、前回出力位置から今回移動速度ベクトルの移動方
向及び移動速度で移動した位置を予想位置として算出し、予想位置データ375に記憶さ
せる。
【0049】
TCXO40は、所定の発振周波数で発振信号を生成する温度補償型水晶発振器であり
、生成した発振信号をRF受信回路部21及びベースバンド処理回路部30に出力する。
【0050】
ホストCPU50は、ROM100に記憶されているシステムプログラム等の各種プロ
グラムに従って携帯型電話機1の各部を統括的に制御するプロセッサである。ホストCP
U50は、ベースバンド処理回路部30のCPU33から入力した今回出力位置をプロッ
トしたナビゲーション画面を、表示部70に表示させる。
【0051】
操作部60は、例えばタッチパネルやボタンスイッチ等により構成される入力装置であ
り、押下されたキーやボタンの信号をホストCPU50に出力する。この操作部60の操
作により、通話要求やメールの送受信要求等の各種指示入力がなされる。
【0052】
表示部70は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、ホストCPU5
0から入力される表示信号に基づいた各種表示を行う表示装置である。表示部70には、
ナビゲーション画面や時刻情報等が表示される。
【0053】
携帯電話用アンテナ80は、携帯型電話機1の通信サービス事業者が設置した無線基地
局との間で携帯電話用無線信号の送受信を行うアンテナである。
【0054】
携帯電話用無線通信回路部90は、RF変換回路、ベースバンド処理回路等によって構
成される携帯電話の通信回路部であり、携帯電話用無線信号の変調・復調等を行うことで
、通話やメールの送受信等を実現する。
【0055】
ROM100は、ホストCPU50が携帯型電話機1を制御するためのシステムプログ
ラムや、ナビゲーション機能を実現するための各種プログラムやデータ等を記憶している

【0056】
RAM110は、ホストCPU50により実行されるシステムプログラム、各種処理プ
ログラム、各種処理の処理中データ、処理結果などを一時的に記憶するワークエリアを形
成している。
【0057】
2.処理の流れ
図5、図6は、CPU33によりROM35に記憶されているベースバンド処理プログ
ラム351が読み出されて実行されることで、携帯型電話機1において実行されるベース
バンド処理の流れを示すフローチャートである。
【0058】
ベースバンド処理は、RF受信回路部21によるGPS衛星信号の受信と併せて、CP
U33が、操作部60に測位開始指示の操作がなされたことを検出した場合に実行を開始
する処理であり、各種アプリケーションの実行といった各種の処理と並行して行われる処
理である。尚、携帯型電話機1の電源のON/OFFとGPSの起動/停止とを連動させ
、携帯型電話機1の電源投入操作を検出した場合に処理の実行を開始させることにしても
よい。原則として、測位演算は「1秒」毎に行われるものとする。
【0059】
また、特に説明しないが、以下のベースバンド処理の実行中は、GPSアンテナ10に
よるRF信号の受信や、RF受信回路部21によるIF信号へのダウンコンバート、衛星
捕捉・追尾部31によるGPS衛星信号の捕捉・追尾等が随時行われている状態にあるも
のとする。
【0060】
先ず、CPU33は、ROM35に記憶されているGPS測位プログラム3511を読
み出して実行することで、GPS測位処理を行う(ステップA1)。具体的には、衛星捕
捉・追尾部31により捕捉・追尾されたGPS衛星信号から航法メッセージや時刻情報等
を復号し、当該捕捉衛星の位置、移動方向及び移動速度を衛星情報として算出する。そし
て、複数の捕捉衛星の衛星情報や、各捕捉衛星から自機までの擬似距離等の情報に基づい
て、所定の測位演算を行うことで携帯型電話機1の現在位置を計測し、測位位置をRAM
37の計測履歴データ371に記憶させる。
【0061】
尚、測位演算としては、最小二乗法を利用した測位演算(以下、「LS(Least Square
)測位演算」と称す。)と、カルマンフィルタを利用した測位演算(以下、「KF(Kalm
an Filter)測位演算」と称す。)とが広く知られており、何れの測位演算を用いて現在
位置を計測することにしてもよい。また、例えば1回目の測位ではLS測位演算を行い、
2回目以降の測位演算ではKF測位演算を行うといったように、LS測位演算とKF測位
演算とを切り替えながら現在位置を測位することにしてもよい。
【0062】
また、CPU33は、捕捉衛星と携帯型電話機1の相対的な位置変化により生じるGP
S衛星信号のドップラー周波数の変化に基づいて、携帯型電話機1の移動方向及び移動速
度を計測して移動速度ベクトルとし、RAM37の計測履歴データ371に記憶させる。
尚、ドップラー周波数の変化から移動速度ベクトルを計測する技術については公知である
ため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0063】
GPS測位処理を行った後、CPU33は、GPS測位処理が1回目であったか否かを
判定し(ステップA3)、1回目であったと判定した場合は(ステップA3;Yes)、
RAM37の計測履歴データ371に記憶されている今回測位位置を今回出力位置に決定
し(ステップA5)、計測履歴データ371に記憶させる。
【0064】
その後、CPU33は、計測履歴データ371に記憶されている今回出力位置をホスト
CPU50に出力する(ステップA7)。そして、操作部60に対してユーザによる測位
終了指示がなされたか否かを判定し(ステップA9)、なされなかったと判定した場合は
(ステップA9;No)、ステップA1に戻る。また、測位終了指示がなされたと判定し
た場合は(ステップA9;Yes)、ベースバンド処理を終了する。
【0065】
一方、ステップA3においてGPS測位処理が2回目以降であったと判定した場合は(
ステップA3;No)、CPU33は、計測履歴データ371に記憶されている前回出力
位置決定時刻からの経過時間が「10秒」よりも長いか否かを判定する(ステップA11
)。
【0066】
そして、経過時間が「10秒」以下であると判定した場合は(ステップA11;No)
、CPU33は、計測履歴データ371に記憶されている今回移動速度ベクトルの移動速
度に、前回出力位置決定時刻からの経過時間を乗算することで予想移動距離を算出し(ス
テップA13)、RAM37の予想移動距離データ373に記憶させる。
【0067】
次いで、CPU33は、ステップA13で算出した予想移動距離が「30m」よりも大
きいか否かを判定し(ステップA15)、「30m」以下であると判定した場合は(ステ
ップA15;No)、ROM35に記憶されている停止判定プログラム3513を読み出
して実行することで、停止判定処理を行う(ステップA17)。
【0068】
図7は、停止判定処理における停止判定の原理を説明するための図である。
停止判定は、前回出力位置と、今回測位位置と、前回移動速度ベクトルとに基づいて行
う。具体的には、前回出力位置を始点とし、今回測位位置を終点とするベクトル(図7の
破線で示すベクトル)と、前回移動速度ベクトルの始点を前回出力位置とした場合のベク
トル(図7の実線で示すベクトル)との成す角度「α」(但し、0°≦α≦180°)を
算出する。そして、算出した角度「α」が所定の閾値角度(例えば「100°」)よりも
大きい場合に(α>100°)、携帯型電話機1は停止しているものと判定する。
【0069】
停止判定処理において携帯型電話機1が停止していると判定した場合は(ステップA1
9;Yes)、CPU33は、計測履歴データ371に記憶されている今回移動速度ベク
トルを移動速度「0」の0ベクトルとする(ステップA21)。また、計測履歴データ3
71に記憶されている前回出力位置を今回出力位置に決定し(ステップA23)、計測履
歴データ371に記憶させる。そして、CPU33は、ステップA7へと処理を移行する

【0070】
一方、停止判定処理において携帯型電話機1が停止していない、すなわち移動している
と判定した場合は(ステップA19;No)、CPU33は、計測履歴データ371に記
憶されている前回出力位置と今回移動速度ベクトルとに基づいて予想位置を算出し(ステ
ップA25)、RAM37の予想位置データ375に記憶させる。
【0071】
次いで、CPU33は、計測履歴データ371に記憶されている前回出力位置を基準位
置とし(ステップA27)、今回測位位置を判定対象位置とする(ステップA29)。そ
して、ROM35に記憶されている位置飛び判定プログラム3515を読み出して実行す
ることで、位置飛び判定処理を行う(ステップA31)。
【0072】
図8、図9は、位置飛び判定処理における位置飛び判定の原理を説明するための図であ
る。位置飛び判定では、最初に平均移動速度ベクトルの移動速度の大きさに応じて、認容
位置領域を可変に設定する。そして、判定対象位置が認容位置領域に含まれるか否かを判
定し、含まれると判定した場合は、判定対象位置が位置飛びしていないと判定する。一方
、判定対象位置が認容位置領域に含まれない場合は、判定対象位置が位置飛びしていると
判定する。
【0073】
平均移動速度ベクトルは、計測履歴データ371において基準位置に対応付けられてい
る移動速度ベクトルと、判定対象位置に対応付けられている移動速度ベクトルとを平均し
て求める。例えば、基準位置が前回出力位置であり、判定対象位置が今回測位位置である
場合は、前回移動速度ベクトルと今回移動速度ベクトルとを平均したベクトルを、平均移
動速度ベクトルとする。
【0074】
認容位置領域は、例えば、平均移動速度ベクトルの始点を基準位置とした場合に、当該
平均移動ベクトルの終点を中心とする楕円領域として設定する。この際、平均移動速度ベ
クトルの移動方向に沿った方向を長軸方向とし、平均移動速度ベクトルの移動方向に直交
する方向を短軸方向とする。
【0075】
認容位置領域の長軸の長さは、平均移動速度ベクトルの移動速度が大きいほど長くなる
ようにし、短軸の長さは、平均移動速度ベクトルの移動速度が大きいほど短くなるように
する。長軸及び短軸の長さは適宜設計することができるが、一例として本実施形態では、
平均移動速度ベクトルの移動速度を「v」とした場合、長軸の長さ「m」及び短軸の長さ
「n」を、次式(1)及び(2)に従って算出・決定することとする。
m=2.5v ・・・(1)
n=A/v ・・・(2)
但し、「A」は定数である。
【0076】
ここで、長軸の長さ「m」を平均移動速度ベクトルの2.5倍としたのは、基準位置を
認容位置領域に包含し、基準位置から周囲360度方向への移動を許容(但し、移動方向
によって許容する移動距離が大きく異なる。)したためである。但し、この2.5倍とい
う数値はあくまでも一例である。また、定数「A」の値は、平均移動速度ベクトルの大凡
の範囲に基づいて、実験的に決定することが望ましい。
【0077】
図8は、平均移動速度ベクトルの移動速度が図9に比べて小さい場合の認容位置領域を
示しており、図9は、平均移動ベクトルの移動速度が図8に比べて大きい場合の認容位置
領域をそれぞれ示している。図8では、平均移動速度ベクトルの移動速度を「v1」、長
軸の長さを「m1」、短軸の長さを「n1」とし、図9では、平均移動速度ベクトルの移動
速度を「v2」、長軸の長さを「m2」、短軸の長さを「n2」として図示している。
【0078】
「v2>v1」である場合、式(1)より「m2(=2.5v2)>m1」の関係が成立し
、式(2)より「n2(=A/v2)<n1」の関係が成立する。その結果、図9の認容位
置領域は、図8の認容位置領域と比べて、長軸方向が長く、短軸方向が短くなっている。
すなわち、移動速度ベクトルの移動速度が大きいほど、長軸方向に対しては位置飛びして
いないとする判定条件が緩くなり、位置飛びと判定されにくくなるのに対し、短軸方向に
対しては位置飛びしていないとする判定条件が厳しくなり、位置飛びと判定され易くなる

【0079】
このことは、移動速度が大きいほど、急激な方向転換の可能性が低くなり、急激な方向
転換には移動速度の低減が必要であることを表す。すなわち、移動速度が大きいほど、従
前の移動方向に沿った方向(長軸方向)に移動し続け、従前の移動方向に直交する方向(
短軸方向)に移動する可能性が低く、従前の移動方向に直交する方向(短軸方向)に移動
する場合には、速度を低減させた上で方向転換することを意味する。
【0080】
例えば、図8及び図9それぞれに、基準位置からの短軸方向の距離が同じで、且つ、基
準位置からの長軸方向への距離を平均移動速度ベクトルの移動速度の1.75倍程度とす
る位置に、判定対象位置を図示した。図8では、判定対象位置が認容位置領域に含まれて
いるため、位置飛びと判定されないが、図9では、短軸方向に対する位置飛びしていない
とする判定条件が厳しくなっているために、判定対象位置が認容位置領域に含まれなくな
り、その結果、位置飛びと判定されることになる。
【0081】
図6のベースバンド処理に戻って、ステップA31において位置飛び判定処理を行った
後、CPU33は、位置飛びと判定しなかった場合には(ステップA33;No)、RA
M37の予想位置データ375に記憶されている予想位置を用いて、計測履歴データ37
1に記憶されている今回測位位置を補正する補正処理を行って、今回出力位置を決定する
(ステップA35)。
【0082】
ここで、今回測位位置の補正処理としては、公知の手法を用いて実現することができる
。例えば、いわゆるPVフィルター法に基づいて、予想位置と今回測位位置とを結ぶ線分
を「m:n」に内分する位置を今回出力位置に決定することができる。また、特開200
7−24620号公報に開示されているように、捕捉衛星からのGPS衛星信号の受信環
境に基づいて、予想位置と今回測位位置との重視の比率を算出し、当該比率に従って予想
位置と今回測位位置とを内分することで、今回出力位置を決定することにしてもよい。
【0083】
ステップA35において今回測位位置の補正処理を行った後、CPU33は、ステップ
A7へと処理を移行する。
【0084】
また、ステップA33において位置飛びと判定した場合は(ステップA33;Yes)
、CPU33は、前々回出力位置を基準位置とし(ステップA37)、前回出力位置を判
定対象位置とする(ステップA39)。そして、ROM35に記憶されている位置飛び判
定プログラム3515を読み出して実行することで、位置飛び判定処理を行う(ステップ
A41)。
【0085】
ステップA41の位置飛び判定処理において位置飛びと判定しなかった場合は(ステッ
プA43;No)、CPU33は、RAM37の予想位置データ375に記憶されている
予想位置を今回出力位置に決定する(ステップA45)。そして、CPU33は、ステッ
プA7へと処理を移行する。
【0086】
今回測位位置が前回出力位置から位置飛びしたものであったとしても(ステップA33
;Yes)、前回出力位置が前々回出力位置から位置飛びしたものでない場合は(ステッ
プA43;No)、前回出力位置を信頼することとし、前回出力位置と今回移動速度ベク
トルとから算出した予想位置を、今回出力位置に決定することにしている。
【0087】
また、ステップA43において位置飛びと判定した場合は(ステップA43;Yes)
、CPU33は、前回測位位置を基準位置とし(ステップA47)、今回測位位置を判定
対象位置とする(ステップA49)。そして、ROM35に記憶されている位置飛び判定
プログラム3515を読み出して実行することで、位置飛び判定処理を行う(ステップA
51)。
【0088】
ステップA51の位置飛び判定処理において位置飛びと判定しなかった場合は(ステッ
プA53;No)、CPU33は、ステップA5へと処理を移行する。また、位置飛びと
判定した場合は(ステップA53;Yes)、ステップA45へと処理を移行する。
【0089】
今回測位位置が前回出力位置から位置飛びしたものであったとしても(ステップA33
;Yes)、前回測位位置から位置飛びしたものでない場合は(ステップA53;No)
、今回測位位置を信頼することとし、今回測位位置を今回出力位置に決定することにして
いる。また、今回測位位置が前回出力位置から位置飛びしたものであり(ステップA33
;Yes)、前回測位位置からも位置飛びしたものである場合は(ステップA53;Ye
s)、今回出力位置を信頼せずに、前回出力位置と今回移動速度ベクトルとから算出した
予想位置を、今回出力位置に決定することにしている。
【0090】
一方、ステップA11において前回出力位置決定時刻からの経過時間が「10秒」より
も長いと判定した場合(ステップA11;Yes)、又は、ステップA15において予想
移動距離が「30m」よりも大きいと判定した場合は(ステップA15;Yes)、CP
U33は、ステップA5へと処理を移行する。
【0091】
前回出力位置が決定されてから長い時間が経過している場合は、携帯型電話機1は前回
出力位置から大きく離れた場所に位置している可能性が高い。また、予想移動距離が大き
い場合は、携帯型電話機1は高速で移動しているものと考えられる。そこで、これらの場
合には、今回測位位置を信頼して、今回測位位置を今回出力位置に決定することにしてい
る。
【0092】
3.作用効果
本実施形態によれば、GPS衛星から発信されているGPS衛星信号に基づいて携帯型
電話機1の現在位置及び移動速度ベクトルが間欠的に計測される。また、今回測位位置が
位置飛びしていないか否かを判定するための今回用の認容位置領域が計測結果に基づいて
設定され、認容位置領域内に今回測位位置が位置するか否かによって位置飛びが判定され
る。そして、位置飛びと判定されなかった場合に、従前の計測結果から算出した予想位置
を用いて今回測位位置を補正する補正処理が行われ、今回出力位置が決定されて出力され
る。
【0093】
今回測位位置が位置飛びと判定されなかった場合は、予想位置を用いて今回測位位置が
補正されるため、単純に今回測位位置を出力する場合に比べて、より信頼性の高い位置を
出力することができる。また、今回測位位置が位置飛びと判定された場合は、今回測位位
置を出力するのではなく、推測航法により求めた予想位置を出力することにしているため
、測位位置の位置飛びを考慮して、適切な位置出力を行うことが可能となる。
【0094】
また、位置飛び判定処理では、平均移動ベクトルの移動速度の大きさに応じて認容位置
領域が可変に設定される。具体的には、平均移動速度ベクトルの移動速度が大きいほど、
当該平均移動速度ベクトルの移動方向に沿った方向の長さを長くするように認容位置領域
が設定され、当該平均移動速度ベクトルの移動方向に直交する方向の長さを短くするよう
に認容位置領域が設定される。
【0095】
従って、携帯型電話機1が高速で移動しているほど、携帯型電話機1の移動方向に沿っ
た方向に対しては位置飛びしていないとする判定条件が緩和されることとなり、当該方向
に対しては位置飛びしていないと判定され易くなるのに対し、携帯型電話機1の移動方向
に直交する方向に対しては位置飛びしていないとする判定条件が厳しくなり、当該方向に
対しては位置飛びしていないとは判定されにくくなる。
【0096】
4.変形例
4−1.電子機器
本発明は、測位装置を備えた電子機器であれば何れの電子機器にも適用可能である。例
えば、ノート型パソコンやPDA(Personal Digital Assistant)、カーナビゲーション
装置等についても同様に適用可能である。
【0097】
4−2.衛星測位システム
上述した実施形態では、衛星測位システムとしてGPSを例に挙げて説明したが、WA
AS(Wide Area Augmentation System)、QZSS(Quasi Zenith Satellite System)
、GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System)、GALILEO等の他の衛
星測位システムであってもよい。
【0098】
4−3.処理の分化
CPU33が行う処理の一部又は全部を、ホストCPU50が行うことにしてもよい。
例えば、ホストCPU50が停止判定処理及び位置飛び判定処理を行うこととし、その判
定結果に基づいて、CPU33が今回出力位置を決定するようにする。また、GPS測位
処理も含めてホストCPU50が行うことにしてもよい。
【0099】
4−4.認容位置領域
上述した実施形態では、位置飛び判定処理において、楕円形状の認容位置領域を設定す
るものとして説明したが、他の形状の認容位置領域を設定することにしてもよい。
【0100】
図10は、認容位置領域の他の形状の一例を示す図である。図10において、認容位置
領域は、複数の扇形領域が重畳された形状に形成されている。具体的には、基準位置を中
心とする平均移動速度ベクトルの移動方向に広がる扇形領域であって、基準位置寄りであ
るほど半径「r」が小さくなり、中心角「θ」が大きくなるような複数の扇形領域によっ
て、認容位置領域が構成されている。
【0101】
図11は、図10の認容位置領域を構成する各扇形領域の半径「r」及び中心角「θ」
の関係を示す図である。半径「r」については、最も基準位置寄りに位置する扇形領域R
1で「v」、次の扇形領域R2で「1.25v」、次の扇形領域R3で「1.5v」、次
の扇形領域R4で「1.75v」、最も基準位置から離れた扇形領域R5で「2v」であ
り、基準位置から離れた扇形領域ほど、半径「r」は大きくなっていく。
【0102】
一方、中心角「θ」については、最も基準位置寄りに位置する扇形領域R1で「B/v
」、次の扇形領域R2で「B/1.5v」、次の扇形領域R3で「B/2v」、次の扇形
領域R4で「B/2.5v」、最も基準位置から離れた扇形領域R5で「B/3v」であ
り、基準位置から離れた扇形領域ほど、中心角「θ」は小さくなっていく。但し、「B」
は定数であり、平均移動ベクトルの移動速度に応じて実験的に決定される値である。
【0103】
図10では、判定対象位置が、認容位置領域を構成する扇形領域R5に含まれている。
従って、位置飛び判定処理では、判定対象位置は位置飛びしていないと判定されることに
なる。
【0104】
尚、ここでは、5個の扇形領域R1〜R5によって1つの認容位置領域を形成する場合
を例に挙げて説明したが、扇形領域の個数は設計事項であり、適宜変更可能である。但し
、扇形領域を密にするほど位置飛び判定の確実性を高めることができるため、扇形領域の
個数は多くすることが望ましい。
【0105】
また、上述した実施形態では、平均移動速度ベクトルを用いて認容位置領域を設定する
ものとして説明したが、基準位置に対応付けられている移動速度ベクトルや、判定対象位
置に対応付けられている移動速度ベクトルを用いて、同様に認容位置領域を設定すること
にしてもよい。例えば、基準位置が前回出力位置であり、判定対象位置が今回測位位置で
ある場合は、前回移動速度ベクトルと今回移動速度ベクトルとの何れかのベクトルを用い
て、認容位置領域を設定するようにする。
【0106】
4−5.今回出力位置の決定
上述した実施形態では、今回測位位置が前回出力位置から位置飛びしたものでない場合
は、予想位置を用いて今回測位位置を補正する補正処理を実行して今回出力位置を求める
ものとして説明したが、補正処理を行わずに、今回測位位置を今回出力位置に決定するこ
とにしてもよい。
【0107】
4−6.位置飛び判定
また、上述した実施形態では、3段階の位置飛びの判定を行うものとして説明したが、
これを1段階の位置飛び判定としてもよいし、2段階の位置飛び判定としてもよい。例え
ば、図6のベースバンド処理のステップA37〜A43の処理を省略し、前回出力位置を
基準として今回測位位置が位置飛びしているか否かの第1の判定(ステップA27〜A3
3の処理)と、前回測位位置を基準として今回測位位置が位置飛びしているか否かの第2
の判定(ステップA47〜A53の処理)との2段階の位置飛び判定のみを行うことにし
てもよい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】携帯型電話機の機能構成を示すブロック図。
【図2】ROMに格納されたデータの一例を示す図。
【図3】RAMに格納されたデータの一例を示す図。
【図4】計測履歴データのデータ構成例を示す図。
【図5】ベースバンド処理の流れを示すフローチャート。
【図6】ベースバンド処理の流れを示すフローチャート。
【図7】停止判定の原理を説明するための図。
【図8】位置飛び判定の原理を説明するための図。
【図9】位置飛び判定の原理を説明するための図。
【図10】認容位置領域の形状の一例を示す図。
【図11】認容位置領域を構成する各扇形領域のパラメータ値の一例を示す図。
【符号の説明】
【0109】
1 携帯型電話機 、 10 GPSアンテナ、 20 GPS受信部、
21 RF受信回路部、 30 ベースバンド処理回路部、 31 衛星捕捉・追尾部、
33 CPU、 35 ROM、 37 RAM、 40 TCXO、
50 ホストCPU、 60 操作部、 70 表示部、 80 携帯電話用アンテナ、
90 携帯電話用無線通信回路部、 100 ROM、 110 RAM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測位装置が、
測位用衛星から発信されている測位用信号に基づいて自測位装置の現在位置及び自測位
装置の移動速度ベクトルを間欠的に計測することと、
今回計測された測位位置が位置飛びしていないか否かを判定するための今回用の認容位
置領域を計測結果に基づいて設定し、前記認容位置領域内に今回計測された測位位置が位
置するか否かによって位置飛びを判定することと、
位置飛びと判定されなかった場合に、従前の計測結果を用いて今回計測された測位位置
を補正する所定の補正処理を実行することで今回の出力位置を求めて出力することと、
を含む測位方法。
【請求項2】
測位装置が、
測位用衛星から発信されている測位用信号に基づいて自測位装置の現在位置及び自測位
装置の移動速度ベクトルを間欠的に計測することと、
今回計測された測位位置が位置飛びしていないか否かを判定するための今回用の認容位
置領域を計測結果に基づいて設定し、前記認容位置領域内に今回計測された測位位置が位
置するか否かによって位置飛びを判定することと、
位置飛びと判定されなかった場合に、今回計測された測位位置を今回の出力位置として
出力することと、
を含む測位方法。
【請求項3】
前記計測された移動速度ベクトルの移動速度の大きさに応じて前記認容位置領域を可変
に設定することを更に含む請求項1又は2に記載の測位方法。
【請求項4】
前記計測された移動速度ベクトルの移動速度が大きいほど当該移動速度ベクトルの移動
方向に沿った方向の長さを長くするように前記認容位置領域を設定することを更に含む請
求項1〜3の何れか一項に記載の測位方法。
【請求項5】
前記計測された移動速度ベクトルの移動速度が大きいほど当該移動速度ベクトルの移動
方向に直交する方向の長さを短くするように前記認容位置領域を設定することを更に含む
請求項1〜4の何れか一項に記載の測位方法。
【請求項6】
位置飛びと判定された場合に、前記計測結果を用いた所定の推測航法に従って現在位置
を算出し、今回の出力位置として出力することを更に含む請求項1〜5の何れか一項に記
載の測位方法。
【請求項7】
前記位置飛びの判定には、前回出力した出力位置を基準として今回計測された測位位置
が位置飛びしているか否かの第1の判定と、前回計測された測位位置を基準として今回計
測された測位位置が位置飛びしているか否かの第2の判定とが少なくとも含まれる請求項
1〜6の何れか一項に記載の測位方法。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の測位方法を、測位装置に内蔵されたコンピュータに
実行させるためのプログラム。
【請求項9】
測位用衛星から発信されている測位用信号に基づいて自測位装置の現在位置及び自測位
装置の移動速度ベクトルを間欠的に計測する計測部と、
今回計測された測位位置が位置飛びしていないか否かを判定するための今回用の認容位
置領域を計測結果に基づいて設定し、前記認容位置領域内に今回計測された測位位置が位
置するか否かによって位置飛びを判定する判定部と、
位置飛びと判定されなかった場合に、従前の計測結果を用いて今回計測された測位位置
を補正する所定の補正処理を実行することで今回の出力位置を求めて出力する出力部と、
を備えた測位装置。
【請求項10】
測位用衛星から発信されている測位用信号に基づいて自測位装置の現在位置及び自測位
装置の移動速度ベクトルを間欠的に計測する計測部と、
今回計測された測位位置が位置飛びしていないか否かを判定するための今回用の認容位
置領域を計測結果に基づいて設定し、前記認容位置領域内に今回計測された測位位置が位
置するか否かによって位置飛びを判定する判定部と、
位置飛びと判定されなかった場合に、今回計測された測位位置を今回の出力位置として
出力する出力部と、
を備えた測位装置。
【請求項11】
前記判定部は、前記計測された移動速度ベクトルの移動速度の大きさに応じて前記認容
位置領域を可変に設定する認容位置領域可変設定部を有する請求項9又は10に記載の測
位装置。
【請求項12】
前記認容位置領域可変設定部は、前記計測された移動速度ベクトルの移動速度が大きい
ほど当該移動速度ベクトルの移動方向に沿った方向の長さを長くするように前記認容位置
領域を設定する請求項11に記載の測位装置。
【請求項13】
前記認容位置領域可変設定部は、前記計測された移動速度ベクトルの移動速度が大きい
ほど当該移動速度ベクトルの移動方向に直交する方向の長さを短くするように前記認容位
置領域を設定する請求項11又は12に記載の測位装置。
【請求項14】
前記判定部は、前回出力した出力位置を基準として今回計測された測位位置が位置飛び
しているか否かの第1の判定と、前回計測された測位位置を基準として今回計測された測
位位置が位置飛びしているか否かの第2の判定とを行う請求項9〜13の何れか一項に記
載の測位装置。
【請求項15】
請求項9〜14の何れか一項に記載の測位装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−97898(P2009−97898A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267486(P2007−267486)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】