説明

測位装置、携帯端末装置、測位システム及び測位方法

【課題】基地局を信号発信源の一つとして扱う複合測位ができない次世代通信システムにおいて、屋内又は不感地での測位を高精度に実現することができる測位装置、携帯端末装置、測位システム及び測位方法を提供すること。
【解決手段】測位システムは、GPS衛星を用いた測位装置110を有する携帯電話機100と、GPSが受信できないエリア(屋内、不感地エリアなど)に設置され自機の位置情報を発信する位置情報発信機200とを備え、位置情報発信機200は、GPS信号周波数と同一周波数帯域の無線信号を発信し、測位装置110のGPS信号受信回路120は、GPS衛星信号と位置情報発信機200の位置情報の信号を同じ受信回路により受信し、位置算出部150は、GPS測位計算結果と位置情報発信機200の位置情報に基づいて携帯電話機100の位置を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星測位システムの測位衛星信号を迅速に捕捉する測位装置、携帯端末装置、測位システム及び測位方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GPS(Global Positioning System)を代表とするSPS(Satellite Positioning System:衛星測位システム)の受信装置を搭載した車載用ナビゲーション装置やSPS受信機能付き携帯電話装置などのSPS受信装置搭載移動通信端末装置が実用化されている。衛星を利用する測位装置では、通常4個以上の衛星の信号を同時に受信し、搬送波を捕捉して拡散符号を追尾し、スペクトラム逆拡散処理を行って衛星信号から航法データを復調する。また航法データなどを用いて衛星が信号送信した時刻を算出して各衛星毎の擬似距離(衛星信号が測位装置に到達するのに要した時間)を求め、求めた擬似距離に基づいて測位装置の位置を決定する。このGPSの特徴として、移動通信システムにおける基地局との位置関係を考慮することなく、移動端末の絶対的な位置を比較的高精度に求めることができる。
【0003】
移動端末は様々な場所で利用されるため、ビル街や屋内においても使用される。このような環境では、微弱な電波であるGPS衛星からの電波を捉えることは難しく、観測できる衛星数が4個未満となることが多い。受信できる衛星数が4未満になるとGPS衛星のみでの位置測定が不能となる。この対策として、受信可能な衛星数が4未満の場合でも位置測定ができるようにする測位方式が提案されている。例えば、GPSのみによる位置計算ではなく、セルラ基地局を信号発信源の一つとして扱い、セルラ基地局から送信されている信号の受信タイミングを測定することでセルラ基地局をあたかもGPS衛星と同等に扱い、信号源の数が4以下にならないように工夫して様々な場所で位置測定が可能となる複合測位方式がある。特別な場合として、GPS衛星が0の場合でも基地局が4以上受信できれば同様の方法で位置測定が可能である。
【0004】
図15は、従来の測位装置を備える携帯端末装置の通信システムの構成を示す図であり、図15(a)は、測位装置が使用される屋外環境を、図15(b)(c)は、屋内環境又は不感地エリアで使用される複合測位をそれぞれ示す。
【0005】
図15(a)の屋外環境では、通信システム1は、携帯電話機10と、無線基地局2,3と、携帯電話機10の上空に配置されたGPS(SPS)衛星4(ここでは、4つのGPS衛星のうち3つを示す)と、から主に構成される。
【0006】
携帯電話機10は、無線基地局2,3と無線信号を送受信することによって、図示しない他の携帯電話機や固定電話機あるいは情報サーバと通信を行う。また、4つのGPS衛星4のそれぞれから送出されるGPS信号を捕捉し、各GPS信号から情報を抽出することによって測位を行う。このGPS信号は、1,57542GHzの同一の周波数の搬送波に、GPS信号ごとに異なるC/Aコード(Coarse/Acquisition Code)やPコード(Precise CodeもしくはProtected Code)といったPRNコードを重畳したものである。
【0007】
図15(b)の屋内環境では、GPS信号が小さい所は基地局2,3も利用する複合測位を行う。図15(b)では、携帯電話機10に無線基地局2から基地局位置(x10,y10)を、無線基地局3から基地局位置(x11,y11)をそれぞれ通知し、携帯電話機10は、この基地局位置(x10,y10),(x11,y11)用いて位置を計算する。
【0008】
さらに、図15(c)の不感地エリアには、無線基地局3と光伝送により接続される無線基地局5が設置されている。不感地エリアでは、無線基地局5から携帯電話機10に基地局位置(x11,y11)を通知し、携帯電話機10は、この(x11,y11)用いて位置を計算する。
【0009】
特許文献1には、PHS(Personal Handy-Phone System)端末がどの基地局エリアに属するかによって端末位置を自動登録し、端末は登録された位置情報データベースと地図情報を受信することで自端末位置を知るシステムが開示されている。
【0010】
特許文献2には、WLAN(Wireless Local Area Network)などの無線通信端末が、接続されたアクセスポイントの位置や、GPS測位を組み合わせて、自端末位置を知るシステムが開示されている。
【特許文献1】特開平10−229576号公報
【特許文献2】特表2007−506105号公報
【非特許文献1】“Global Positioning System Standard Positioning Service Signal Specification,2ndEdition,June1995”
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の測位装置を備える通信システムにあっては、以下のような課題がある。
【0012】
(1)次世代通信方式(LTE及び4G)ではOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式となるため、測位に必要な受信信号の遅延時間を正確に測定することができない。将来的には、複合測位の代替案が必須になる。
【0013】
(2)図15(b)(c)の屋内環境又は不感地エリアで使用される複合測位は、GPS測位に比べて測位精度そのものが低いという課題がある。
【0014】
(3)特許文献1記載のシステムでは、PHS基地局エリアサイズの位置精度でしか自位置を知ることができない欠点がある。
【0015】
(4)特許文献2記載のシステムでは、端末がWLANの送受信回路を搭載することが前提となる。携帯電話機などでは、このWLAN機能は必ずしも搭載されていない。
【0016】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、基地局を信号発信源の一つとして扱うハイブリッド測位ができない次世代通信システムにおいて、屋内又は不感地での測位を高精度に実現することができる測位装置、携帯端末装置、測位システム及び測位方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の測位装置は、SPS衛星からの信号を受信して位置を算出する測位装置であって、前記SPS衛星からの信号を受信するとともに、前記SPS衛星からの信号が受信できない場合に、前記SPS衛星からの信号の周波数と同一周波数帯域の無線信号を発信する位置情報発信機からの信号を受信する受信手段と、前記受信手段により受信した前記SPS衛星からの信号及び/又は前記位置情報発信機からの信号に含まれる位置情報に基づいて位置を算出する算出手段と、を備える構成を採る。
【0018】
本発明の携帯端末装置は、SPS衛星による測位装置を備える携帯端末装置において、前記測位装置は、上記測位装置である。
【0019】
本発明の位置情報発信機は、SPS衛星からの信号が受信できない場所に設置され、該設置場所の位置情報を発信する位置情報発信機であって、前記SPS衛星からの信号の周波数と同一周波数帯域の無線信号により前記位置情報を発信する構成を採る。
【0020】
本発明の測位システムは、SPS衛星からの信号を受信して位置を算出する測位装置と、前記SPS衛星からの信号が受信できない場所に設置され、該設置場所の位置情報を発信する位置情報発信機とを備える測位システムであって、前記位置情報発信機は、前記SPS衛星からの信号の周波数と同一周波数帯域の無線信号により前記位置情報を発信し、前記測位装置は、前記SPS衛星からの信号を受信するとともに、前記SPS衛星からの信号が受信できない場合に、前記SPS衛星からの信号の周波数と同一周波数帯域の無線信号を発信する位置情報発信機からの信号を受信する受信手段と、前記受信手段により受信した前記SPS衛星からの信号及び/又は前記位置情報発信機からの信号に含まれる位置情報に基づいて位置を算出する算出手段と、を備える構成を採る。
【0021】
本発明の測位方法は、SPS衛星からの信号が受信できない場所に設置され、該設置場所の位置情報を発信する位置情報発信機を用いて測位する測位方法であって、前記SPS衛星からの信号を受信するとともに、前記SPS衛星からの信号が受信できない場合に、前記SPS衛星からの信号の周波数と同一周波数帯域の無線信号を発信する前記位置情報発信機からの信号を受信するステップと、受信した前記SPS衛星からの信号及び/又は前記位置情報発信機からの信号に含まれる位置情報に基づいて位置を算出するステップとを有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、GPS衛星信号と位置情報発信機の位置情報の信号を同じ受信回路により受信することにより、複合測位ができない次世代通信システムであっても屋内での測位が可能となる。
【0023】
また、端末のSPS受信機を利用することで、端末のコストアップを避けて実施することができる。また、端末はWLANなどの送受信回路を搭載する必要がなく汎用に実施することができる。
【0024】
また、位置情報発信機の周波数精度は、高精度である必要ないため、発信機を安価に実現でき、設備投資が少ない効果がある。さらに、従来のGPS受信機からの変化点が少なく、デジタル処理の変更のみであるため、容易に実施できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る測位装置が使用される測位システムの構成を示す図であり、図1(a)は、測位装置を備える端末が使用される屋外環境を、図1(b)は、屋内環境で使用される屋内測位方法をそれぞれ示す。本実施の形態1は、測位装置として、GPSシステムによる測位機能を備える携帯端末装置に適用した例である。
【0027】
図1において、測位システムは、携帯電話機100と、位置情報発信機200と、携帯電話機100の上空に配置されたGPS衛星300(ここでは、4つのGPS衛星のうち3つを示す)と、から主に構成される。
【0028】
GPSシステムによる測位機能を備える携帯電話機100は、携帯電話機/PHS(Personal Handy-Phone System)などの移動可能な端末であり、携帯ノート型パソコン,PDA(Personal Digital Assistants)などの携帯情報端末でもよい。本実施の形態1では、測位機能を備える携帯電話機100が、携帯電話機である場合を例に採る。
【0029】
携帯電話機100は、図示しない無線基地局と無線信号を送受信することによって、他の携帯電話機や固定電話機あるいは情報サーバと通信を行う。また、4つのGPS衛星300のそれぞれから送出されるGPS信号を捕捉し、各GPS信号から情報を抽出することによって測位を行う。このGPS信号は、1,57542GHzの同一の周波数の搬送波に、GPS信号ごとに異なるC/AコードやPコードといったPRNコードを重畳したものである。
【0030】
位置情報発信機200は、位置情報発信機200の位置情報を含む情報を、GPS信号周波数(例えば1.5GHz帯)と同一帯域内の無線信号により発信する。上記無線信号は、スペクトル拡散信号であり、以下の特徴を有する。(1)位置情報発信機200のスペクトル拡散符号は、どのGPS衛星の拡散符号とも異なる。(2)位置情報発信機200のスペクトル拡散符号のチップレートが、GPS衛星のチップレートと異なる。(3)位置情報発信機200のスペクトル拡散符号のチップレートが、GPS衛星のチップレートの整数分の1である。すなわち、GPS衛星のチップレートC、任意の整数nとすると、位置情報発信機200の拡散符号のチップレートはC/nである。(4)位置情報発信機200が複数存在する場合は、各位置情報発信機200の中心周波数が異なるように位置情報発信機200の周波数を設定する。
【0031】
このように、位置情報を含む信号は、GPS衛星とチップレートが異なるか又は異なるCDM符号を用いる。上記位置情報には、位置情報発信機200の位置の他に、ローカル地図、地域店舗情報に関する情報などの周辺情報が含まれていてもよい。
【0032】
図2は、上記携帯電話機100の測位機能部の構成を示すブロック図である。この測位機能部を測位装置110と呼称する。
【0033】
図2において、携帯電話機100の測位装置110は、GPS用アンテナ111、GPS信号受信回路120、GPS測位演算部130、発信機位置情報検出部140、及び位置算出部150を備えて構成される。
【0034】
GPS信号受信回路120は、逆拡散部121と、GPS衛星拡散符号DG(n)及び発信機拡散符号D1からなる拡散符号リスト122とを備え、GPS衛星からの信号(GPS信号)と位置情報発信機200からの位置情報の信号を受信する。また、GPS信号受信回路120は、周波数走査部123と、走査周波数Fs発振器124と、RF部125と、を備える。
【0035】
RF部125は、LNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器)により増幅後、乗算器を用いて中間周波数信号を生成する。走査周波数Fs発振器124は、走査周波数Fsを発生させる。周波数走査部123は、走査周波数Fsを用いて周波数走査を行う。逆拡散部121は、受信したGPS衛星信号及び位置情報発信機からの信号(中間周波数信号)の逆拡散を行う。
【0036】
拡散符号リスト122は、逆拡散部121において逆拡散を行うときに用いる逆拡散符号の候補リストであり、GPS衛星の逆拡散符号に加えて、位置情報発信機200の逆拡散符号を含む。
【0037】
GPS信号受信回路120は、周波数走査部123と逆拡散部121を用いて、GPS信号をサーチ(周波数走査)するとともにこれを捕捉し、逆拡散を行う。具体的には、GPS信号受信回路120は、GPS信号の衛星を、予め設定されるサーチ周波数を基に、拡散符号リスト122に含まれるGPS衛星の逆拡散符号を用いて衛星サーチを行い、コード同期を行う。そして、コード同期がとれた後に、拡散符号リスト122に含まれるGPS衛星の逆拡散符号を用いてGPS信号の逆拡散を行う。なお、GPS信号の捕捉は、4つのGPS衛星の全てについて同様の動作をそれぞれ異なるチャネルで行う。
【0038】
また、GPS信号受信回路120は、周波数走査部123と逆拡散部121を用いて、拡散符号リスト122に含まれる位置情報発信機200の逆拡散符号を用いて位置情報発信機200の信号のサーチ(周波数走査)を行い、コード同期を行う。そして、コード同期がとれた後に、位置情報発信機の逆拡散符号D1を用いて逆拡散を行う。
【0039】
GPS信号受信回路120は、GPS衛星の逆拡散符号を用いてGPS信号の逆拡散を行ったときは、逆拡散を行った信号をGPS測位演算部130に出力する。また、GPS信号受信回路120は、位置情報発信機200の逆拡散符号D1を用いて逆拡散を行ったときは、逆拡散を行った信号を発信機位置情報検出部140に出力する。
【0040】
GPS測位演算部130は、GPS信号受信回路120からの逆拡散を行った信号を基に測位のための演算を行う。この演算は一般的なGPS測位演算と同じである。具体的には、GPS測位演算部130は、GPS信号受信回路120が行った複数チャンネル分のコード同期時のコード位相(=衛星信号到達時間)、周波数、信号レベル等の衛星捕捉情報を基に測位演算を行い、測位結果を出力する。このようにして、GPS信号に含まれる情報(例えば、衛星の種類や衛星信号の到達時間など)を取得する。
【0041】
発信機位置情報検出部140は、GPS信号受信回路120からの逆拡散を行った信号から位置情報発信機200の位置情報データを取得する。このようにして、位置情報発信機200の位置情報データから位置情報発信機200の位置(x,y,z)を検出する。
【0042】
位置算出部150は、GPS測位演算の結果と位置情報発信機200の位置の情報に基づいて携帯電話機100の位置を算出する。例えば、位置算出部150は、屋外環境では、GPS測位により位置を算出する。位置算出部150は、屋内環境では、位置情報発信機200が発するCDM信号をGPS受信機能を用いて受信して位置を知る。また、GPS測位できない場合には、位置情報発信機200の受信結果である、位置情報発信機200の位置(x,y,z)またはその近傍を携帯電話機100の位置とする。
【0043】
図3は、測位装置110AのGPS信号受信回路120までの各段の信号波形を模式的に示している。
【0044】
図3において、測位装置110Aは、GPS用アンテナ111、RF周波数F0局部発振器112、乗算器113、A/D変換器114、走査周波数Fs発振器124、周波数走査部123(図2)を構成する乗算器123A、及び逆拡散部121(図2)を構成する乗算器121Aを備えて構成される。なお、GPS用アンテナ111で受信された衛星信号は、図示しないSAWフィルタにより不要電波を除去し、LNA(Low Noise Amplifier:低雑音増幅器)により増幅後、乗算器113に入力される。
【0045】
RF周波数F0局部発振器112は、所定の周波数信号を発生する。乗算器113は、GPS用アンテナ111からの衛星信号(CDM信号及び位置情報)と、RF周波数F0局部発振器112から供給される発振信号とを乗算することで、中間周波数帯(Intermediate Frequency)にダウンコンバートする。また、図示しないフィルタにより、中間周波数信号に含まれる搬送波成分の除去を行う。
【0046】
周波数走査部123(乗算器123A)は、A/D変換後のIF帯の衛星信号と、走査周波数Fs発振器124から供給される走査周波数Fs信号とを乗算することで、周波数走査を行う。なお、図3では、ディジタル信号処理を用いてこの乗算を行う例を図示している。
【0047】
逆拡散部121(乗算器121A)には、衛星を捕捉するため所定の逆拡散符号が供給される。この逆拡散符号は、GPS衛星拡散符号DG(n)と発信機拡散符号D1の2種類の逆拡散符号である。逆拡散部121は、周波数走査により抽出された信号に上記逆拡散符号を乗算してスペクトラム拡散された信号を逆拡散する(復調する)。具体的には、逆拡散部121は、周波数走査により抽出された中間周波数信号とGPS衛星拡散符号DG(n)とを乗算し、衛星からの拡散符号信号との相関をとる。拡散符号は、各衛星毎に固有の符号であり、上述したC/AコードやL2CMコード、L2CLコード、I5コード、Q5コードなどがある。衛星の拡散符号の捕捉は、まず図示しない制御部で対象衛星の選択を行って、対象衛星の拡散符号と同一の拡散符号を生成する。そして、生成した拡散符号と衛星信号の拡散符号との乗算により相関処理を行い、両方の拡散符号の位相が一致するよう制御する。なお位相を一致させるには、拡散符号には位相が一致したときに相関値が最大で、位相が不一致の時は0となる特性があるため、生成する位相を所定数だけ移相しながら相関処理が行われ、算出する積分値が最大となるまで、つまり対象衛星の拡散符号が捕捉されるまで繰り返す。
【0048】
一方、逆拡散部121は、周波数走査により抽出された中間周波数信号と発信機拡散符号D1とを乗算することによって位置情報発信機200から発信された信号を逆拡散する(復調する)。
【0049】
上記走査周波数Fs発振器124、及び周波数走査部123、逆拡散部121は、図2のGPS信号受信回路120を構成し、GPS信号受信回路120は、CDM信号の復調器としての機能を有する。
【0050】
本実施の形態1では、測位装置110のGPS信号受信回路120は、GPS衛星信号と共に、GPS衛星信号と同一周波数帯域で位置情報発信機200から発信された位置情報を受信することを特徴とする。図3a.に示すように、1.5GHz帯CDMA信号で送信されたGPS衛星信号であるCDM信号、及び位置情報発信機200から発信された位置情報を受信する。CDM信号及び位置情報は、同一周波数帯域の信号であるため、GPS信号受信回路120は、CDM信号の復調器に発信機拡散符号D1を追加して用いる以外は、従来のGPS−RF部と同一構成である。このため、従来と同じGPS受信機(測位装置)を使用することができ、新たな受信機を追加する必要がない。また、位置情報発信機200の周波数精度は、高精度である必要ない。周波数走査機能は、GPS信号受信回路120の周波数走査部123を利用すればよい。
【0051】
図3b.に示すように、A/D変換後のIF帯の衛星信号は、CDM信号と位置情報とからなり、図3c.d.に示す周波数走査についてもCDM信号及び位置情報に対して周波数走査を行う。
【0052】
図3e.に示すような2つの逆拡散符号、GPS衛星拡散符号DG(n)及び発信機拡散符号D1、を用いてスペクトラム拡散された信号の復調を行うことで、GPS信号を逆拡散した信号(GPS測位演算に用いる信号)(図3f.参照)と、位置情報発信機200からの位置情報の信号を逆拡散した信号(図3g.参照)とを得る。
【0053】
なお、A/D変換器114は、必ずしも図3に示した位置でなくて、例えば、周波数走査部123と逆拡散部121の間に配置してもよい。また、図3では、受信に中間周波数を用いる例を示したが、中間周波数を用いない、いわゆるダイレクトコンバージョン方式の受信回路を採用することもできる。
【0054】
図4は、位置情報発信機200の構成を示す図である。図中に、位置情報発信機200から発信される信号波形を模式的に示す(図4a.参照。)。
【0055】
図4において、位置情報発信機200は、位置情報格納部210、デジタル変調器220、乗算器230、1.5GHz帯F1局部発振器231、乗算器232、増幅器233、及びGPS用アンテナ240を備えて構成される。
【0056】
位置情報格納部210は、位置情報発信機200の位置情報(x,y,z)を格納する。さらに、位置情報格納部210は、位置情報(x,y,z)以外に、位置情報発信機200の周辺情報を格納する。この周辺情報は、例えば位置情報発信機200近傍のローカル地図、地域店舗情報である。店舗情報は、店舗情報が記載されているURL(Uniform Resource Locator)情報を含む。なお、位置情報格納部210は、情報書き換え機能を備えるとさらによい。
【0057】
デジタル変調器220は、位置情報発信機200の位置情報及び周辺情報を変調する。
【0058】
乗算器230は、デジタル変調された信号と発信機拡散符号D1(チップレートC1)を乗算し、スペクトラム拡散信号を生成する。上記発信機拡散符号D1又はチップレートC1は、GPS衛星拡散符号DG(n)又はチップレートCGとは異なる拡散符号を用いる。すなわち、D1≠DG(n) or C1≠CGである。なお、発信機拡散符号D1、チップレートC1の可変機能を備えるとさらによい。発信機拡散符号D1及びチップレートC1の設定については後述する。
【0059】
乗算器232は、スペクトラム拡散された信号と、1.5GHz帯F1局部発振器231から供給される発振信号とを乗算することで、RF帯搬送波成分を重畳した送信信号を出力する。ここで、周波数走査機能は、携帯電話機100のGPS信号受信回路120を利用すればよいため、1.5GHz帯F1局部発振器231の絶対周波数精度は、それ程高精度でなくてもよい。このため、安い発振器を使用することができる。また、RF帯周波数F1の可変機能を備えるとさらによい。複数の位置情報発信機(A1,A2,…)があるときは、周波数F1,F2,…を変える。
【0060】
増幅器233は、RF帯送信信号を電力増幅し、GPS用アンテナ240により1.5GHz帯CDMA信号として発信する(図4a.参照)。
【0061】
次に、位置情報発信機200の拡散符号の選び方について説明する。
【0062】
1.チップレートがGPS衛星のチップレート(1.023MHz)同じ場合
GPS衛星と同じチップレート(1.023MHz)の場合は、位置情報発信機200の拡散符号D1は、GPS衛星に割り当てられている符号とは異なる符号のいずれか一つを選択する。以下に詳細を説明する。
【0063】
GPSL1波(1.57542MHz)のC/Aコードは、1023ビットからなる擬似ランダム雑音符号(PRNコード)による拡散信号であり、各々ほぼ直交していることから、各GPS衛星の信号を区別して受信することができる。このPRNコードは全部で36種類あり、各GPS衛星に割り当てられており、民間に公開されている(非特許文献1参照)。
【0064】
GPS衛星の数は28基であることから、割り当てられていないPRNコード(PRN番号No.33からNo.36までが地上用として確保されている。)が存在し、その一つを本実施の形態1の位置情報発信機200の拡散符号D1として利用すれば、位置情報発信機200の信号をGPS衛星と区別して受信することが可能である。
【0065】
近接する位置情報発信機が複数ある場合は、上記PRNコードを複数用いて各位置情報発信機に割り当てることも可能であるが、上記PRNコードの数に限りがある。そこで位置情報発信機の周波数を変えることで、各位置情報発信機を区別することができる。設定周波数は、従来のGPS受信機の周波数走査範囲内であればどこを選んでもよく、ランダムに設定してよい。GPS受信機はドップラーシフトを受けた衛星信号を受信する必要があるため、どの周波数であっても検出できる機能が既に備わっているからである。
【0066】
2.チップレートを1.023MHz以外の値にする場合
位置情報発信機200のチップレートをGPS衛星チップレート(1.023MHz)と異なる値にする方法もある。この場合、チップレートは1.023MHzより大きくても小さくてもよいが、1.023MHzに比べて大きくしすぎると、信号帯域が大きくなりGPS受信機の復調帯域幅を外れてしまう。また、信号帯域が大きくなるとA/D変換器やデジタル処理のクロック周波数を高くする必要があり、GPS受信機を設計し直す必要が生じるため、チップレートは1.023MHzより小さい方がよい。
【0067】
位置情報発信機の拡散符号は、一般的に拡散符号として用いられるランダムコードのどれかを選択する。位置情報発信機の拡散符号とGPS衛星の拡散符号がほぼ直交していることが望ましいが、完全に直交していなくても受信は可能である。因みに直交していないと復調信号に雑音劣化が大きくなる。例えば、チップレートを1.023MHz/nとして、整数nを大きくすると、GPS衛星PRNコードが、1.023MHzの周期で平均化の効果が大きく、直交条件に近づく。実際は、GPS衛星がある場合(屋外)では位置情報発信機信号はなく、位置情報発信機信号がある場合(屋内)ではGPS衛星が見えないので、直交条件が満たされない場合でも実使用上は問題ない。
【0068】
近接する位置情報発信機が複数ある場合は、ランダムコードを複数用いて各位置情報発信機に割り当てることも可能であり、位置情報発信機の周波数を変えることで、各位置情報発信機を区別することができる。設定周波数は、従来のGPS受信機の周波数走査範囲内であればどこを選んでもよく、ランダムに設定してよい。GPS受信機はどの周波数であっても検出できる機能が既に備わっているからである。
【0069】
図5は、チップレートを1.023MHz以外の値にする場合の位置情報発信機200の拡散符号の設定を説明する図である。
【0070】
図5(1)(2)は、GPSの拡散符号(チップレート1.023MHz)、図5(x)は、位置情報発信機200の拡散符号(チップレート1.023MHz/n)を示している。
【0071】
上記GPSの拡散符号(1)と位置情報発信機200の拡散符号(x)の積を比較的長い時間Tで平均するとゼロに近くなるので、GPSの拡散符号(1)と位置情報発信機200の拡散符号(x)は直交関係に近い。
【0072】
以下、上述のように構成された測位装置110を備える携帯電話機100の動作を説明する。
【0073】
図6は、測位装置110の測位の動作を示すフローチャートである。図中Sはフローの各ステップを示す。
【0074】
まず、ステップS1では、GPS信号受信回路120は全てのGPS衛星のCDM信号を検出し、ステップS2でGPS信号受信回路120は位置情報発信機200のCDM信号を検出する。このGPS衛星のCDM信号と位置情報発信機200のCDM信号の検出は、周波数走査とCDM符号の相関演算/復調の繰り返しにより求められる。
【0075】
ステップS3では、GPS信号受信回路120は検出されたGPS衛星のCDM信号の数が3個以上あるか否かを判別する。
【0076】
検出されたGPS衛星のCDM信号の数が3個以上ある場合は、測位装置110を備える携帯電話機100が屋外環境にあると判断してステップS4に進み、検出されたGPS衛星のCDM信号の数が3個より少ない場合は、携帯電話機100が屋内環境にあると判断してステップS5に進む。
【0077】
ステップS4では、GPS測位演算部130は複数のGPS衛星のCDM信号の復調結果(衛星−端末距離r)に基づいて測位演算を行い、位置算出部150は端末位置(x,y,z)を得て本フローを終了する。
【0078】
検出されたGPS衛星のCDM信号の数が3個より少ない場合は、ステップS5で発信機位置情報検出部140は位置情報発信機200からのCDM信号の復調結果に基づいて端末位置情報(x,y,z)を検出し、位置算出部150は端末位置(x,y,z)を得て本フローを終了する。
【0079】
本フローの開始から、GPS測位演算部130による測位演算が行われ端末位置(x,y,z)を得るまでの所要時間は、5〜30秒である。また、本フローの開始から、発信機位置情報検出部140による端末位置の検出が行われ端末位置(x,y,z)を得るまでの測位時間は、30秒未満である。このように、携帯電話機100が屋外環境/屋内環境のいずれにあっても最大30秒以内で端末位置(x,y,z)を得ることができる。
【0080】
なお、図示は省略するが、従来の測位では、検出されたGPS衛星のCDM信号の数が3個より少ない場合は、基地局を信号発信源の一つとして扱う複合測位が実施される。この複合測位では、例えば、全ての基地局からの信号を検出して基地局−端末距離r2を算出し、複数のGPS衛星−端末距離r1と基地局−端末距離r2から測位演算を行い端末位置(x,y,z)を得る。これらの処理は、基地局で行われることになるため、測位時間は30秒〜1分である。
【0081】
図7は、本実施の形態1と従来の複合測位方式とを比較して説明する図である。
【0082】
図7(a)に示すように、端末が屋外環境にある場合は、通常のGPS測位であり、本実施の形態と従来例では、測位精度及び測位時間共に差異はない。測位精度は10〜100m、測位時間は5〜30秒である。
【0083】
一方、端末が屋内環境にある場合は、GPS測位は実施できない。本実施の形態1と従来の複合測位方式との優劣比較となる。図7(b)に示すように、本実施の形態1では測位精度が100m未満であるのに対し、従来例では測位精度100m〜1kmであり、本実施の形態1の測位精度は高い。しかも本実施の形態1は、測位精度が位置情報発信機200の設置間隔に依存するため、位置情報発信機200の設置間隔をより密にすれば、測位精度をいくらでも高めることが可能である。また、測位時間についても本実施の形態では30秒未満であるのに対し、従来例では30秒〜1分であり測位時間も短い。
【0084】
さらに、上記効果に加えて、本実施の形態1は、従来のGPS測位方式から変更点が少なく、低い設備投資で実現できるという優れた効果がある。例えば、従来例と同様の構成のGPS−RF部を利用できる。具体的には、従来例と同様のGPS用アンテナとRFICを用いることができる。但し、図2及び図3のGPS信号受信回路120などデジタル処理部の変更は必要になる。しかし新たな受信機を追加する必要がない点はコスト低減及び実施容易性で極めて有利である。また、位置情報発信機200を設置する必要があるものの、位置情報発信機200には、高い発信機周波数精度は必要ない。このため、位置情報発信機200の設置コストは比較的小さく、本実施の形態1の屋内測位方法の導入は容易であることが期待される。
【0085】
図8は、本実施の形態1の測位装置110を備える携帯電話機100の動作を説明する図である。本実施の形態1は、GPS測位方式の拡張版として捉えることができ、屋内測位方法に特徴がある。図1の全体構成と共に説明する。
【0086】
図1(b)に示すように、屋内では位置情報発信機200を設置し、携帯電話機100は、位置情報発信機200が発するCDM信号をGPS受信機能を用いて受信して位置を知る。
【0087】
GPS測位できない場合には、位置情報発信機200の受信結果である、位置情報発信機200の位置(x,y,z)またはその近傍を端末位置とする。
【0088】
また、位置情報には、位置情報発信機200の位置(x,y,z)以外の、ローカル地図や地域店舗情報に関する情報を含むURL情報も発信する。
【0089】
測位装置110を備える携帯電話機100側では、以下の動作となる。
【0090】
図8に示すように、GPS信号受信回路120は、GPS用アンテナ111により受信した衛星信号(CDM信号及び位置情報)を復調する。具体的には、GPS信号受信回路120は、(1)周波数走査と(2)逆拡散とを、符号情報(GPS衛星拡散符号DG(n)及び拡散符号D1)を用いて行う。上記(1)周波数走査と(2)逆拡散の処理の繰返しの中でGPS測位と位置情報発信機200の位置情報を取得する。
【0091】
CDM信号及び位置情報の復調結果のうち、GPS信号は、GPS測位演算部130に出力され、位置情報発信機200の位置情報は、発信機位置情報検出部140に出力される。GPS測位演算部130は、GPS測位演算を行う。
【0092】
発信機位置情報検出部140は、位置情報発信機200の位置情報(x,y,z)を検出するとともに、送信された周辺情報を基に位置情報発信機200近傍の店舗情報などを出力する。
【0093】
GPS測位演算部130によるGPS測位処理結果及び発信機位置情報検出部140による位置情報発信機200の位置情報(x,y,z)の検出結果は、図示しない位置算出部150に出力され、位置算出部150は、これらの測位結果から端末位置を算出し、測位結果を測位装置110外部に出力する。携帯電話機100は、測位結果を受け取り、例えばLCD表示部(図示略)に表示する。また、位置算出部150は、発信機位置情報検出部140から店舗情報などを携帯電話機100に出力し、携帯電話機100は、URL情報を含む店舗情報などを便利情報としてLCD表示部(図示略)に表示する。
【0094】
上記周辺情報の出力は、LCD表示部による出力のほか、例えば音声による報知、これらの併用でもよい。
【0095】
以上詳細に説明したように、本実施の形態1によれば、測位システムは、GPS衛星を用いた測位装置110を有する携帯電話機100と、GPSが受信できないエリア(屋内、不感地エリアなど)に設置され自機の位置情報を発信する位置情報発信機200とを備え、位置情報発信機200は、GPS信号周波数と同一周波数帯域の無線信号を発信し、測位装置110のGPS信号受信回路120は、GPS衛星信号と位置情報発信機200の位置情報の信号を同じ受信回路により受信し、位置算出部150は、GPS測位計算結果と位置情報発信機200の位置情報に基づいて携帯電話機100の位置を算出するので、複合測位(基地局測位)ができない次世代通信システムであっても屋内での測位を高精度に実現することができる。
【0096】
また、携帯電話機100のGPS受信機を利用することで、端末のコストアップを避けて実施することができる。また、端末はWLAN、BTなどの送受信回路を搭載する必要がなく汎用に適用可能である。
【0097】
また、位置情報発信機200の周波数精度は、高精度である必要ないため、発信機を安価に実現でき、設備投資が少ない効果がある。
【0098】
さらに、従来のGPS受信機からの変化点が少なく、デジタル処理の変更のみで位置情報発信機200の位置情報を受信することができる。
【0099】
(実施の形態2)
実施の形態1は、説明の簡略化のため位置情報発信機が一つの例で説明したが、実際上は複数設置される。実施の形態2では、位置情報発信機を複数設置し、各位置情報発信機の位置情報(x,y,z)を検出する例について説明する。各位置情報発信機を、A1,A2,…と呼称し、各位置情報発信機A1,A2,…は、図4の位置情報発信機200と同一構成を採る。但し各位置情報発信機同士を区別するため、上述したように位置情報発信機の拡散符号D1/チップレートC1、場合によってはRF帯周波数F1が異なる。
【0100】
図9は、本発明の実施の形態2に係る測位装置が使用される測位システムの位置情報発信機が複数ある場合の区別を説明する図である。
【0101】
図9において、位置情報発信機A1と位置情報発信機A2の拡散符号とチップレートは、同一にして位置情報発信機A1,A2の周波数R1,R2を少しずつ変える。測位装置110を備える携帯電話機100では、周波数の違いで位置情報発信機A1,A2を区別することができる。
【0102】
また、携帯電話機100は、位置情報発信機A1,A2の信号レベルを比較して、信号レベルが大きい方の位置情報(x,y,z)の値を端末の位置とする。
【0103】
又は、携帯電話機100は、位置情報発信機A1,A2の信号レベルを重みにして、位置情報(x,y,z)の重み平均を取り、重み平均から端末の位置を求める。
【0104】
図10は、実施の形態2に係る測位装置が使用される測位システムの構成を示す図であり、図10(a)は、測位装置110を備える携帯電話機100が使用される屋外環境を、図10(b)(c)は、屋内環境又は不感地エリアで使用される屋内測位方法をそれぞれ示す。図1と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。なお、図10は、従来例の図15に対応する図であり、図10(c)の不感地エリアには、無線基地局3と光伝送により接続される無線基地局5が設置されている。不感地エリアでは、無線基地局5から携帯電話機100に基地局位置(x11,y11)を通知し、携帯電話機100は、この(x11,y11)用いて位置を計算することも可能である。
【0105】
図10において、測位システムは、携帯電話機100と、位置情報発信機A1,A2,A3,A4と、携帯電話機100の上空に配置されたGPS衛星300(ここでは、4つのGPS衛星のうち3つを示す)と、から主に構成される。
【0106】
位置情報発信機A1,A2,A3,A4は、GPS信号周波数と同一帯域内の無線信号を発信する発信機であり、位置情報発信機A1,A2は、屋内環境で端末の位置を知るため屋内に設置され、位置情報発信機A3,A4は、不感地エリアで端末の位置を知るため不感地エリアに設置される。位置情報発信機A3,A4は、それぞれ位置情報(x21,y21),(x22,y22)を発信する。
【0107】
図10(b)に示すように、屋内では位置情報発信機A1,A2を設置し、携帯電話機100は、位置情報発信機A1,A2が発信するCDM信号をGPS受信機能を用いて受信して位置を知る。なお、図15の従来例と同様に、携帯電話機100は、無線基地局3からの基地局位置(x11,y11)を用いる基地局測位によっても位置を計算することができる。
【0108】
また、図10(c)に示すように、不感地エリアでは位置情報発信機A3,A4を設置し、携帯電話機100は、位置情報発信機A3,A4が発信するCDM信号をGPS受信機能を用いて受信して位置を知る。なお、図15の従来例と同様に、携帯電話機100は、無線基地局3と光伝送により接続された無線基地局5からの基地局位置(x11,y11)を用いる基地局測位によっても位置を計算することができる。
【0109】
上記、無線基地局3,5を信号発信源の一つとして扱う基地局測位は、次世代移動通信で採用されるOFDM方式では、使用できない。将来的には、基地局測位に代わる本実施の形態2の屋内測位方法が有利となる。
【0110】
図11は、実施の形態2に係る測位装置が使用される測位システムの測位動作を説明する図である。
【0111】
図11において、地下街に位置情報発信機A1,A2,A3を設置する。位置情報発信機A1,A2,A3は、CDM信号により位置情報(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)を発信する。図11破線は位置情報発信機A1,A2,A3の送信エリアである。
【0112】
本実施の形態では、位置情報発信機A1,A2,A3が発信するCDM信号は、1種類とし、位置情報発信機A1,A2,A3の周波数を変えることで、各位置情報発信機A1,A2,A3を区別する。
【0113】
携帯電話機100は、複数の位置情報発信機からCDM信号を受信したときは、受信強度に応じて中間地を計算する、又は受信強度が一番大きい位置情報発信機の位置情報を選ぶ。
【0114】
ここで、位置情報発信機A1,A2,A3から携帯電話機100までの距離測定を行うことは可能である。但し、この距離測定には、位置情報発信機A1,A2,A3の時間精度、周波数精度が要求されるので、位置情報発信機のコストアップ要因となる。したがって、必要に応じて実施すればよい。
【0115】
また、実施の形態1と同様に、位置情報発信機A1,A2,A3は、CDM信号に位置情報(x,y)以外に、地下街情報や店舗情報を付加して発信することも可能である。店舗情報は、例えば各施設のHPのURLなどである。このようにすれば、宣伝効果とそれに伴う集客効果、販売促進効果を期待することができる。また、この販売促進効果は、位置情報発信機の設置費用負担などに有効である。
【0116】
このように、屋内(地下街)に位置情報発信機A1,A2,A3を設置することで、ハイブリッド測位を行うことなく、屋内での測位が可能となる。
【0117】
また、携帯電話機100のGPS受信機を利用することで、端末のコストアップにならない。また、位置情報発信機の出力パワーは小さくてよく、消費電力低減が可能である。
【0118】
また、RFタグ、BT(Bluetooth)(登録商標)などによる位置情報取得では、近距離通信のためタグなど探す手間が必要であった。これに対して、本実施の形態では、GPSの測位手続きの一環として、自動的に屋内でも測位できるメリットがある。
【0119】
(実施の形態3)
図12は、本発明の実施の形態3に係る測位装置の構成を示すブロック図である。図2と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0120】
図12において、測位装置410は、GPS用アンテナ111、GPS信号受信回路120、GPS測位演算部130、発信機位置情報検出部440、及び位置算出部450を備えて構成される。
【0121】
GPS用アンテナ111は、複数の位置情報発信機200A,200Bが発信するCDM信号を受信する。位置情報発信機200A,200Bは、GPS用アンテナ240A,240Bを備え、図4の位置情報発信機200と同一構成を採る。
【0122】
発信機位置情報検出部440は、位置情報発信機200A,200Bの位置情報(x,y,z)を検出する。また、発信機位置情報検出部440は、信号レベル検出部441を備え、信号レベル検出部441は、無線信号の中心周波数がそれぞれ異なっている複数の位置情報発信機200A,200Bの受信信号レベルを測定する。
【0123】
位置算出部450は、GPS測位計算結果と位置情報発信機200A,200Bの位置情報に基づいて携帯電話機の位置を算出する。位置算出部450は、屋外環境では、GPS測位により位置を算出する。位置算出部450は、屋内環境では、位置情報発信機200A,200Bが発するCDM信号をGPS受信機能を用いて受信して位置を知る。また、GPS測位できない場合には、位置情報発信機200A,200Bの位置(x,y,z)を携帯電話機の位置とする。
【0124】
また、位置算出部450は、位置情報発信機200A,200Bの受信信号レベルから、測位精度を算出して、基地局のレファレンスポジションの精度よりも低い場合には、基地局のレファレンスポジションを携帯電話機の位置とする。
【0125】
また、位置算出部450は、受信できる複数の位置情報発信機200A,200Bの信号がある場合には、受信レベルが最も大きい位置情報発信機の位置座標を端末の位置とする。あるいは、受信レベルが最も大きい位置情報発信機の位置座標を測位装置410の位置の候補として保存する。
【0126】
また、位置算出部450は、各位置情報発信機200A,200Bの位置に対して受信レベルの強度で重み付けした値から、より正確な位置を算出するようにしてもよい。
【0127】
(実施の形態4)
図13は、本発明の実施の形態4に係る測位装置の構成を示すブロック図である。図2と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0128】
図13において、測位装置510は、GPS用アンテナ111、GPS信号受信回路120、GPS測位演算部130、発信機位置情報検出部140、及び位置算出部550を備えて構成される。
【0129】
位置算出部550は、GPS測位計算結果と位置情報発信機200の位置情報に基づいて携帯電話機の位置を算出する。位置算出部550は、屋外環境では、GPS測位により位置を算出する。位置算出部550は、屋内環境では、位置情報発信機200が発するCDM信号をGPS受信機能を用いて受信して位置を知る。また、GPS測位できない場合には、位置情報発信機200の位置(x,y,z)を携帯電話機の位置とする。
【0130】
位置算出部550は、GPS信号受信回路120が位置情報発信機200のCDM信号を復調したのち、位置情報発信機200の位置情報(座標)を携帯電話機の位置の候補として保存する。位置算出部550は、GPS衛星による測位結果が所定時間内で得られなかった場合には、位置情報発信機200の位置情報を、携帯電話機の位置とする。
【0131】
図14は、測位装置510の測位の動作を示すフローチャートである。
【0132】
まず、ステップS11では、GPS信号受信回路120は全てのGPS衛星のCDM信号を検出し、ステップS12でGPS測位演算部130はGPS衛星による測位演算を行う。
【0133】
ステップS13では、位置算出部550はGPS衛星による測位時間Tが所定時間T0以内か否かを判別し、測位時間Tが所定時間T0以内の場合は測位が所定時間内に完了したと判断してステップS14に進み、測位時間Tが所定時間T0より大きい場合は測位が所定時間内に完了しなかったと判断してステップS15に進む。
【0134】
ステップS14では、位置算出部550はGPS測位結果を端末の位置座標に決定して本フローを終了する。
【0135】
ステップS15では、位置算出部550は位置情報発信機200の位置情報(座標)を携帯電話機の位置座標に決定して本フローを終了する。
【0136】
一方、本フローがスタートすると、ステップS21も起動する。ステップS21では、GPS信号受信回路120は位置情報発信機200のCDM信号を検出し、ステップS22でGPS信号受信回路120は位置情報発信機200の位置座標(x,y)を復調する。次いで、ステップS23で位置算出部550は位置情報発信機200の位置座標(x,y)を携帯電話機の位置の候補として保存する。
【0137】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0138】
上記各実施の形態では、携帯電話機に適用した例であるが、測位装置を有する端末であればどのような装置にも適用できる。例えば、携帯電話機/PHSは勿論のこと、PDA等の携帯情報端末、ノート型パソコン等の情報処理装置、更には携帯ゲーム機、携帯型AVプレーヤなどにも適用可能である。
【0139】
また、上記各実施の形態では、測位装置、携帯端末装置、位置情報発信機及び測位方法という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、測位用受信装置、携帯無線機、発信機、複合測位方法等でもよいことは勿論である。
【0140】
また、上記携帯無線機、を構成する各回路部の種類、数及び接続方法などは前述した実施の形態に限られない。
【0141】
また、以上説明した測位装置及び測位方法は、この測位装置の測位方法を機能させるためのプログラムでも実現される。このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されている。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明に係る測位装置、携帯端末装置、測位システム及び測位方法は、GPSなどの測位衛星から送出される信号を捕捉する測位装置及び測位システムに有用である。また、この測位装置及び測位方法を搭載する携帯電話機やPHSなどの携帯端末装置などに有用である。また、GPS測位システムだけでなくガリレオシステム、ロシアのGLONASS、米国のWAAS、日本のMSAS、欧州のEGNOSなど同期した複数の変調コードによってスペクトラム拡散された複数の衛星信号が送信される測位システムに広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0143】
【図1】本発明の実施の形態1に係る測位装置が使用される測位システムの構成を示す図
【図2】上記実施の形態1に係る測位装置の構成を示すブロック図
【図3】上記実施の形態1に係る測位装置のGPS受信回路までの各段の信号波形を模式的に示す図
【図4】上記実施の形態1に係る測位装置の位置情報発信機の構成を示す図
【図5】上記実施の形態1に係る測位システムのチップレートを1.023MHz以外の値にする場合の位置情報発信機の拡散符号の設定を説明する図
【図6】上記実施の形態1に係る測位装置の測位の動作を示すフロー図
【図7】上記実施の形態1に係る測位装置と従来の複合測位方式とを比較して説明する図
【図8】上記実施の形態1に係る測位装置を備える携帯電話機の動作を説明する図
【図9】本発明の実施の形態2に係る測位装置が使用される測位システムの位置情報発信機が複数ある場合の区別を説明する図
【図10】上記実施の形態2に係る測位装置が使用される測位システムの構成を示す図
【図11】上記実施の形態2に係る測位装置が使用される測位システムの測位動作を説明する図
【図12】本発明の実施の形態3に係る測位装置の構成を示すブロック図
【図13】本発明の実施の形態4に係る測位装置の構成を示すブロック図
【図14】上記実施の形態4に係る測位装置の測位の動作を示すフロー図
【図15】従来の測位装置を備える携帯端末装置の通信システムの構成を示す図
【符号の説明】
【0144】
100 携帯電話機
110,410,510 測位装置
111,240 GPS用アンテナ
112 RF周波数F0局部発振器
113,230,232 乗算器
114 A/D変換器
120 GPS信号受信回路
121 逆拡散部
122 拡散符号リスト
123 周波数走査部
124 走査周波数Fs発振器
125 RF部
130 GPS測位演算部
140,440 発信機位置情報検出部
150,450,550 位置算出部
200,200A,200B 位置情報発信機
210 位置情報格納部
220 デジタル変調器
231 1.5GHz帯F1局部発振器
233 増幅器
A1〜A4 位置情報発信機
300 GPS衛星
441 受信レベル検出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
SPS(Satellite Positioning System)衛星からの信号を受信して位置を算出する測位装置であって、
前記SPS衛星からの信号を受信するとともに、前記SPS衛星からの信号が受信できない場合に、前記SPS衛星からの信号の周波数と同一周波数帯域の無線信号を発信する位置情報発信機からの信号を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した前記SPS衛星からの信号及び/又は前記位置情報発信機からの信号に含まれる位置情報に基づいて位置を算出する算出手段と、
を備える測位装置。
【請求項2】
前記受信手段は、前記SPS衛星の拡散符号とは異なる前記位置情報発信機のスペクトル拡散符号を受信する請求項1記載の測位装置。
【請求項3】
前記受信手段は、前記SPS衛星の拡散符号のチップレートとは異なるチップレートの前記位置情報発信機のスペクトル拡散符号を受信する請求項1記載の測位装置。
【請求項4】
前記受信手段は、前記SPS衛星の拡散符号のチップレートの整数分の1のチップレートの前記位置情報発信機のスペクトル拡散符号を受信する請求項1記載の測位装置。
【請求項5】
前記受信手段は、周波数走査機能を有し、受信信号の逆拡散符号の候補リストに、前記位置情報発信機の逆拡散信号を含む請求項1記載の測位装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記受信手段による前記位置情報発信機の無線信号の復調後、前記位置情報発信機の位置情報を位置の候補として保存し、前記SPS衛星による測位が所定時間内に完了しなかった場合には、前記位置情報発信機の位置情報を基に位置を決定する請求項1記載の測位装置。
【請求項7】
前記算出手段は、前記受信手段による前記位置情報発信機の無線信号の復調後、前記位置情報発信機の位置座標情報を位置の候補として保存し、前記SPS衛星による測位ができなかった場合には、前記位置情報発信機の位置座標を基に位置を決定する請求項1記載の測位装置。
【請求項8】
前記受信手段は、前記位置情報発信機の位置情報に含まれる周辺情報を受信し、
取得した前記周辺情報を出力する出力手段をさらに備える請求項1記載の測位装置。
【請求項9】
前記受信手段は、中心周波数が異なる複数の前記位置情報発信機の無線信号を受信し、
複数の前記位置情報発信機の受信レベルを検出する検出手段をさらに備え、
前記算出手段は、前記受信レベルが最も大きい位置情報発信機の位置情報を位置の候補として保存する請求項1記載の測位装置。
【請求項10】
SPS衛星による測位装置を備える携帯端末装置において、
前記測位装置は、請求項1記載乃至請求項9のいずれかに記載の測位装置である携帯端末装置。
【請求項11】
SPS衛星からの信号が受信できない場所に設置され、該設置場所の位置情報を発信する位置情報発信機であって、
前記SPS衛星からの信号の周波数と同一周波数帯域の無線信号により前記位置情報を発信する位置情報発信機。
【請求項12】
前記SPS衛星の拡散符号とは異なるスペクトル拡散符号を発信する請求項11記載の位置情報発信機。
【請求項13】
前記SPS衛星の拡散符号のチップレートとは異なるチップレートのスペクトル拡散符号を発信する請求項11記載の位置情報発信機。
【請求項14】
前記SPS衛星の拡散符号のチップレートの整数分の1のチップレートのスペクトル拡散符号を発信する請求項11記載の位置情報発信機。
【請求項15】
SPS衛星からの信号を受信して位置を算出する測位装置と、前記SPS衛星からの信号が受信できない場所に設置され、該設置場所の位置情報を発信する位置情報発信機とを備える測位システムであって、
前記位置情報発信機は、
前記SPS衛星からの信号の周波数と同一周波数帯域の無線信号により前記位置情報を発信し、
前記測位装置は、
前記SPS衛星からの信号を受信するとともに、前記SPS衛星からの信号が受信できない場合に、前記SPS衛星からの信号の周波数と同一周波数帯域の無線信号を発信する位置情報発信機からの信号を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した前記SPS衛星からの信号及び/又は前記位置情報発信機からの信号に含まれる位置情報に基づいて位置を算出する算出手段と、
を備える測位システム。
【請求項16】
SPS衛星からの信号が受信できない場所に設置され、該設置場所の位置情報を発信する位置情報発信機を用いて測位する測位方法であって、
前記SPS衛星からの信号を受信するとともに、前記SPS衛星からの信号が受信できない場合に、前記SPS衛星からの信号の周波数と同一周波数帯域の無線信号を発信する前記位置情報発信機からの信号を受信するステップと、
受信した前記SPS衛星からの信号及び/又は前記位置情報発信機からの信号に含まれる位置情報に基づいて位置を算出するステップと
を有する測位方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−174922(P2009−174922A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11943(P2008−11943)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】