説明

測定対象物の位置測定システム

【課題】検知できる測定対象物の投影幅を小さくすることが可能であり、測定対象物サイズの選択自由度を向上させた測定対象物の位置測定システムを提供する。
【解決手段】測定対象物と光センサと光学系とを有する光熱エネルギー検出による測定対象物の位置測定システムにおいて、光センサは、複数の光検出素子の行又は列の配列方向が、測定対象物の一方向に対して45度傾斜されるよう測定対象物と対向して配置されて、光センサと測定対象物との相対的な位置関係が変化することによる、光センサの検出エリア内での測定対象物の一方向の輪郭を、周辺との温度差を追従することで検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサを使った測定対象物の位置測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の温度測定などを目的としたセンサとして熱型赤外線センサが一般的に知られている。該熱型赤外線センサは、測定対象物から放出される赤外線の放射エネルギーを吸収し、その赤外線のもつ熱効果によって赤外線検知素子が暖められ、赤外線検知素子の温度の上昇によって生じる電気的性質の変化を検出するものである。
【0003】
そして、このような赤外線検知素子を使った対象物測定システムの一例として、特許文献1のシステムがあり、同文献の図5には、撮像対象物と、該撮像対象物と正対し配置された熱型赤外線センサと、両者の間に位置し撮像対象物の全体をセンサの検出エリア内に投影されるよう集光するレンズとを有するシステムが記載されている。
【0004】
また、このようなシステムに用いられる赤外線検知素子の一例としてサーモパイルがあり、このサーモパイル単一素子の構造は、例えば特許文献2に記載されている。更に、このようなサーモパイル素子を行列状の二次元に複数配列した赤外線センサは、例えば特許文献3に記載され知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−102091号公報
【特許文献2】特開平5−090646号公報
【特許文献3】特開2001−304655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このようなサーモパイル素子の二次元配列構造を有する赤外線センサを単純に使ったシステムでは、対象物の形状や大きさに依存し、検知が困難な状況が存在する。つまり、各々のサーモパイル素子には、受光した光に対して有効な反応領域(赤外線吸収膜が形成された温接点領域)と、非反応領域(冷接点領域およびその周囲の領域)が存在し、サーモパイル素子を二次元に配列した場合にも該領域はそのまま残る。この課題について図を用いて詳細に説明する。
【0007】

図4は、サーモパイル素子を行列状の二次元に複数配列した赤外線センサの平面図である。各々のサーモパイル素子は反応領域16および非反応領域17を有し、それが行列状の二次元に複数配置されて赤外線センサを構成している。そして、測定対象物を固定状態と仮定し、前述の赤外線センサにより図示のXまたはY方向でスキャン動作させたとする。
【0008】
その場合、各々のサーモパイル素子は非反応領域17を有するため、隣接するサーモパイル素子間では、2つの非反応領域17の幅が足し合わされ、2倍の幅を有する非反応領域が形成されることになる。この非反応領域の2倍の幅を有する領域を、赤外線センサの不感領域18と称する。
【0009】
そして、不感領域18の幅以下の幅を有する細長い測定対象物を該幅方向でスキャンする場合、対象物の存在が特定できたり出来なかったりと不安定な状態になる。また、同幅の対象物が不感領域と一致した状態で、長さ方向にスキャンした場合には、測定対象物が存在するにも係わらず赤外線センサの出力としては無いものと認識される。
【0010】
したがって上述の従来システムでは、不感領域18の存在を考慮し、検出可能な最小サイズ「A」(測定対象物の投影幅)は、単一サーモパイル素子の反応領域幅と不感領域の幅(非反応領域幅の2倍)との合計以上でなければならないという制約がある。この場合には、赤外線センサ上でどこに対象物が位置しても、対象物の幅半分以上はどこかの単一サーモパイル素子の反応領域に架かる。また、安定的な測定を考慮した測定対象物の投影幅の最小サイズ「a」は、単一サーモパイル素子の反応領域幅の2倍と不感領域の幅(非反応領域幅の2倍)との合計以上でなければならないという制約がある。この場合、どこに対象物が位置しても、対象物の幅全体がどこかの単一サーモパイル素子の反応領域全体に架かる。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、従来よりも検知できる測定対象物の投影幅(レンズが固定されている場合は、測定対象物自体の幅)を小さくすることが可能であり、測定対象物サイズの選択自由度を向上させた測定対象物の位置測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の測定対象物の位置測定システムは、測定対象物と、各々が矩形形状の光検出領域を有し、該矩形形状の互いに交差する2辺にそれぞれ平行な方向を行および列とする、行列格子状に複数配列された光検出素子群とを含む光センサと、前記測定対象物と前記光センサとの間に配置され、前記測定対象物の一方向の輪郭が前記光センサの検出エリア内に位置するよう集光させる光学系と、を有する光熱エネルギー検出による測定対象物の位置測定システムにおいて、前記光センサは、前記複数の光検出素子の行又は列の配列方向が、前記測定対象物の前記一方向に対して45度傾斜されるよう前記測定対象物と対向して配置されており、前記光センサと前記測定対象物との相対的な位置関係が変化することによる、前記光センサの検出エリア内での前記測定対象物の前記一方向の輪郭を、周辺との温度差を追従することで検出することを特徴とする。
【0013】
また、前記光センサ上に投影される前記測定対象物の幅を、前記光検出領域ひとつの対角線長さ以下にすることにより、投影された前記測定対象物が、ある連続した光検出領域群内に納まる確度を上げ、測定温度の信頼性を高めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の測定対象物の位置測定システムによれば、光センサ内での複数の光検出素子の行又は列の配列方向が、測定対象物の一方向(幅W)に対して45度傾斜されるよう測定対象物と対向して配置して、測定対象物との相対的な位置関係の変化を測定するため、XまたはY方向(測定対象物の幅に対する水平または垂直方向)及び回転方向の位置変化に関しては不感領域は無くなり、検知できる測定対象物の投影幅を小さくすることが可能になり、測定対象物サイズの選択自由度を向上させることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる測定対象物の位置測定システムを示す概略的な構成図であり、図2は、図1に示した赤外線センサの概略的な構造およびレイアウトを示す平面図である。
【0016】
測定対象物の位置測定システム10は、測定対象物1と、光センサ2と、測定対象物1と光センサ2との間に配置され、測定対象物の一方向の輪郭が光センサの検出エリア内に位置するよう集光させる光学レンズ3(集光ミラーへの代替も可)とを有する。光センサ2と光学レンズ3とは同じ筐体4内に配置されている。
【0017】
図1中で測定対象物の位置測定システム10の右側に番号2aとして示した図は、測定対象物側から見た光センサ2の正面図であり、光センサ内での複数の光検出素子の行又は列の配列方向が、測定対象物の一方向(幅W)に対して45度傾斜されるよう対面している。また、配置方向の理解を容易にするために測定対象物1 のみ斜視図として表しているが、これは測定対象物1 の右側の面1 aが、光学レンズ3及び光センサ2と対面する面であり、測定対象物1 の右側の面1aが光センサの面2a対面していることを表している。図中、X方向は測定対象物1の幅W方向を表し、Y方向は測定対象物1の長さ方向を表している。
【0018】
ここで使われる光センサ2は、一例として、光検出素子5としてサーモパイル素子からなる赤外線センサであり、各々のサーモパイル素子は、前述の特許文献2に示されたような一般的な構造を有し、受光した赤外線に対して有効な反応領域6(赤外線吸収膜が形成された温接点領域)と非反応領域7(冷接点領域およびその周囲の領域)を有する。尚、光検出素子としては、ボロメーター、フォトダイオード、焦電センサなどでも可能である。
【0019】
光検出素子5(サーモパイル素子)は、図2に示される平面図の通りの形状およびレイアウトを有しており、各々が矩形形状の光検出素子5を有し、該矩形形状の互いに交差する2辺にそれぞれ平行な方向を行および列とする行列格子状に複数配列され、光検出素子群を構成する。また、図2で示されたX方向及びY方向は、図1中のX方向及びY方向に対応している。
【0020】
そして、測定においては、光センサ2及び光学レンズ3が配置された筐体4が、固定された測定対象物1に対して光センサのX方向と同方向にスキャン動作し、光センサの検出エリア内での測定対象物1の一方向(幅W方向)の輪郭を、周辺との温度差を追従することで検出する。
【0021】
このような測定対象物の位置測定システムによれば、光センサ2内での複数の光検出素子5の行又は列の配列方向が、測定対象物の一方向(幅)に対して45度傾斜されるよう測定対象物と対向して配置されているため、測定対象物の幅に対する水平方向のスキャン動作(位置変化)に対して不感領域は無くなる。すなわち、幅方向(X方向)で光検出素子5の配列を見た場合、例えば、光検出素子5Aと光検出素子5Bは間隔がなく隣接している。これにより、検知できる測定対象物の投影幅を小さくすることが可能になり、測定対象物サイズの選択自由度を向上させることが出来る。
【0022】
また、検出可能な最小サイズ(光センサ上でどこに対象物が位置しても、対象物の幅半分以上はどこかの単一光検出素子5の反応領域6に架かる測定対象物の投影幅)と、安定的な測定の最小サイズ(どこに対象物が位置しても、対象物の幅輪郭全体がどこかの単一光検出素子の反応領域6全体に架かる測定対象物の投影幅)とを、図2中でそれぞれB、bとして示した。このB、bは、図4に示す従来技術におけるA、aと比較し小さくなっている。
【0023】
更に、従来技術で知られている矩形形状の外形を有する光センサを45度傾斜させて本願発明のシステムに適用した場合には、幅方向(X方向)での検出可能範囲すなわち画角が広がるという効果も有している。
【0024】
上述の実施の形態においては、対象物測定のためのスキャン動作をX方向で行うことで説明したが、Y方向または回転方向で行うことも可能である。すなわち、対象物が細長い形状であり、その長さ方向(Y方向)にスキャンした場合であっても、45度傾斜させて配置された光センサには、Y方向でも不感領域は存在しないため、測定は可能である。
【0025】
そして、本発明は光センサをスキャン動作させること自体は必須ではなく、測定対象物と光センサとの相対的な位置関係が変化することが重要である。したがって、光センサが固定された状態であって、測定対象物が動く場合にも発明は適用可能である。
【0026】
更に、半導体チップ上で光検出素子5のレイアウトは、図2に示された実施の形態のレイアウトに限られるものではなく、正方形の半導体チップに対してメッシュ状にエリア化して配置するものであってもよい。光検出素子をメッシュ状にレイアウトした光センサの平面図を図3に示す。このように、矩形形状の光検出素子5の互いに交差する2辺にそれぞれ平行な行方向又は列方向が、対象物の幅方向に対して45度傾斜させて配置されれば上述と同様の効果を達成することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態に係わる測定対象物の位置測定システムの概略的な構成図である。
【図2】図1に示した赤外線センサの概略的な構造およびレイアウトを示す平面図である。
【図3】本発明に係わる光検出素子をメッシュ状にレイアウトした光センサの平面図である。
【図4】サーモパイル素子を行列状の二次元に複数配列した赤外線センサの平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 測定対象物
2 光センサ
3 光学レンズ
4 筐体
5 光検出素子
6、16 反応領域
7、17 非反応領域
10 位置測定システム
18 不感領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物と、
各々が矩形形状の光検出領域を有し、該矩形形状の互いに交差する2辺にそれぞれ平行な方向を行および列とする、行列格子状に複数配列された光検出素子群とを含む光センサと、
前記測定対象物と前記光センサとの間に配置され、前記測定対象物の一方向の輪郭が前記光センサの検出エリア内に位置するよう集光させる光学系と、を有する光熱エネルギー検出による測定対象物の位置測定システムにおいて、
前記光センサは、前記複数の光検出素子の行又は列の配列方向が、前記測定対象物の前記一方向に対して45度傾斜されるよう前記測定対象物と対向して配置されており、前記光センサと前記測定対象物との相対的な位置関係が変化することによる、前記光センサの検出エリア内での前記測定対象物の前記一方向の輪郭を、周辺との温度差を追従することで検出する測定対象物の位置測定システム。
【請求項2】
前記光センサ上に投影される前記測定対象物の幅を、前記光検出領域ひとつの対角線長さ以下にすることにより、投影された前記測定対象物が、ある連続した光検出領域群内に納まる確度を上げ、測定温度の信頼性を高めることを特徴とする測定対象物の位置測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−150699(P2009−150699A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−327256(P2007−327256)
【出願日】平成19年12月19日(2007.12.19)
【出願人】(390009667)セイコーNPC株式会社 (161)
【Fターム(参考)】